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●0バイアス駆動,3パラ化で出力2.5W
6AS7Gx3SEPP
OTLアンプの製作
池田敏弘
21世紀の真空管OTL
球自身のサウンドを維持しつつ物
理的出力の向上と地球環覧ECO(省
エネ)とを両立することが,21世紀
の真空管アンプに求められます.本
誌09年12月号で発表した真空管
OTLは「低電圧,0バイアス駆動,
PP方式」というこれまでにない独
自の仕様により,前述の両立を実現
しました.
さらに,製作も容易で無調整の動
作も可能にしましたので,憧れてい
ても速い存在であった真空管OTL
をより身近なものにしたと思いま
す.多くの読者のかたがたからも同
様なご意見やお褒めの言葉をいただ
いています.
同時に,本誌09年2月号に発表
した6AS7Gカソード・フォロア
OTLを製作されたかたからは,ト
リプルPP化のお問い合わせもい
ただいています.
そこで今回カソード・フォロア
出力OTLアンプそのものを低電
圧,0バイアス駆動,PP方式の
OTLアンプへ改造し,具体的な変‾
更内容をご紹介させていただこうと
思います.
MAR. 2010
低電圧,0バイアス駆動,PP
方式の特徴
第1図に09年2月号に発表した
6AS7Gカソード・フォロアOTL
の回路図を示します.ここで動作
理解のため,わかりやすい回路に書
き直しますと,第2図に示すような
基本回路となり,電圧増幅段と3極
管カソード・フォロアからなる非常
にシンプルな構成のOTLアンプと
なっています.
出力段はシングルA級動作で出
力電位(0V)基準に対してのバイア
スとなります.使用プレート電圧で
の0バイアス付近の電流値にカソー
ド抵抗を設定し,出力から電圧増幅
段の反転入力に100%DC帰還をか
けることで安定した真空管OTL
動作を実現しています.
0バイアスで使用することによ
り,電源亀圧の利用率はよく,球そ
のものの特性が際だち,偶数次ブ暗
線特性によるハーモニタス効果が得
られるOTLアンプですが,唯一の
欠点はカソード側抵抗の電力ロスと
なります.
これを解決した手段が低電圧0バ
イアス駆動PP方式です.第3回に
基本回路を示します.パッシブな抵
抗であった負電圧側をアクティブな
3極管出力に変更し,物理的最大出
力のアップとさらなる効率化を図り
ました.
さらに,SEPPを構戒する大容量
の出力管を強力に確実にドライブす
るため,直結駆動としています.
正電圧側の正相カソード出力カソ
ード・フォロアは,0V基準の0パイ
41
NJM2147D 2SC3421 6AS7Gx3
額
〇十26、5V
470011/esV
十
〇 〇一一〇
330 Q 10㌦/25V
eW
0 -26.5V ′
〈第1図〉ドライヴ段にエミッタ・フォロワを加えた6AS7G6パラOTLアンプの回路図
W c W c
入力
+
∨昧
◎
R
ノ
R o
V EE
R
C
′
アス動作の非反転増幅器により駆動
し,一方,負電圧側の逆相プレート
出力カソード接地は,-Ⅴ騰基準の
0バイアス動作の反転増幅器により
駆勤しまず.
また,スピーカ出力から非反転増
幅器の反転入力へ100%DC帰還を
施すことでDCオフセットを0V
とし,動作的にも安定なOTLアン
プを実現しています.
PP方式の真空管OTLにも関わ
らず製作が容易で無調整化も実現
し,電源ON/OFF時の操作でも,
リレーやタイマーなどによる動作タ
イミングの対処をする必要がないと
いう,従来の方式の真空管OILから
は考えられない特長ももっています.
回路のあらまし
トリプルPP化した増幅部回路
と電源回路を第4図に示します.
非反転増幅器と反転増幅器には,
高電圧対応Opアンプで入手容易な
42
〈第2図〉第1図の回路の基本権威
NJM2147Dを用いています.
NJM2147内部等価回路は,09
年2月号で紹介したとおり,初段が
カレント・ミラ一定電流負荷の
PNP差動回路,2段目は定電流負
荷のNPNエミッタ接地回路,出力
段はNPN/PNPによるSEPP回
路という構成となっています.「股
的なOpアンプと比較しますと,初
第2図のカツー
抗の代りに
れて出力を増大さ
段のつぎに設けられるNPNエミ
ッタ・フォロアがない形です.
反転増幅器は,入力を電解コンデ
ンサでDCカットし,-VEE基準に
レベル・シフトしています.
つぎに,ドライバ段を設けていま
す.その理由は,出力管は0バイア
ス付近で動作しますので グリッド
が+側に振られるときはグリッド電
流が流れることになり,2147では電
流供給能力が小さいため,エミッ
タ・フォロアのドライバを設け,直
結ドライブします.
デバイスとしては,こちらもお馴
染みNPN型の2SC3421Yを使
用しています.
出力は6AS7Gを片ch3本用
い,トリプルPPとなります.基本
WcW c
入力
+
VEE
/
:3図〉 吉事
○嘉;側抵
手を入
せる ′
+
VEE V 随2
VEE
ラ ジオ技術
力
IUM214D 2SC3421YX2 6AS7GX3
6AS763パラ
SEPPOTLアンプ
路
4I叩 /JeVX 4 slOVSlol 20V‾ 幸 平
_力 牢 牢 ‾ 一H -
UleC X Z 2200u50V
打図〉 228続
レ)レ
○
+
L lの全回 12V
-54V く く …
的には球1本でPPを構成するよ
うに接続します.これによってDC
オフセットの安定化だげでなく,球
の抜き差しだけで年中楽しめる真空
管OTL力珂能です.夏は2本使用,
春秋は4本使用,冬は6本使用と,
温度環寛が変化しても,暑さを我慢
することなく心地よいOTLサウン
ドを楽しめます.冬はちょっとした
暖房にもなります.
音声帯域の電圧ゲインは,オーパ
オールのNFBをかけていますの
で帰還抵抗値により決定されます.
閉ループ電圧ゲインA,は次式で近
似されます.
A,=(3.3k+10k)/3.3k≒4
入力抵抗が存在しますので,総合
電圧ゲインAば,つぎのようになり
ます.
A=33k/(lk+33k)・Al≒3.9
NJM2147Dの開ループ電圧利
得がM5219に比べ20-25dB劣
り,高域の周波数特性が伸びなくな
るので閉ループ・ゲインは低めに
MAR. 2010
設定しています.
NFB回路の電解コンデンサのイ
ンピーダンスがDCでは無限大と
なりますので,DCゲインはほぼ1
倍となり,入力オフセット電圧が
DCオフセット電圧となり,動作安
定な真空管OTLアンプとなりま
す.真空管が暖まればDC帰還がか
かり,DCオフセット電圧はほぼ0
Vとなり,直接スピーカをドライブ
することが可能です.
ただ,今回も万一の取り扱いまち
がいなどを考慮し,カップリング・
コンデンサを接続しています.この
コンデンサとスピーカのインピーダ
ンスとで低域の時定数を形成します
から,低域常陸を考慮すると,容量
が大きなものが望ましくなります.
4700I/F以上あれば出力直結時と
ほほ変わらない音質を楽しめると考
えます.高域の音質にこだわるかた
はフイルム・コンデンサを接続され
るとよいでしょう.
電源トランスには,ヒ一夕用と増
幅器用の2つを使用しています.ヒ
一夕用には,AC12V(6VCTつき)
10Aの仕様の大阪高波HST-1210
Bを使用し,Lch側,Rch側のヒ一
夕を直列接続し,交流点火としてい
ます.
‘増幅器用電源トランスとしては,
NJM2147Dの最大定格電圧を超
えることがなく,なるべく高めで使
えるということから,AC20V~0
V~20V2.5Aの仕様のデジット
DO25を使用しています.これをブ
リッジ・ダイオードと大容量ケミコ
ンとで単純な全波整流回路を構戒さ
せ,約±27Vを生戒しています.反
転増幅器用の負電圧は,倍電圧整流
回路により約一54Vを生成してい
ます.
前号に発表したカソード・フォロ
ア・シングル方式からトリプルPP
方式への変更点は,反転増幅器と倍
電圧回路の迫力町田力投の回路変更
とオーバオールNFB回路の定数
変更程度となります.
製作と調整
本機の部品の一覧表を第1表に示
します.トリプルPPとなりました
が,部品点数は前回のシングル方式
と大きく変わっていません.反転増
幅器用Opアンプや倍電圧整流回路
の部品が増えましたが,カソード抵
抗がなくなりました.シングル式を
43
O
l
-
o
み
ー
3
倉五二や小策Kヽ
0dB K H z出 L8Q
10 2 4 6 8100 2
使用出力レベルの0.1W付近で
0.06%を切っています.それ以上の
出力でも,低雑音低ひずみ率を維持
し,0.4Wあたりから緩やかに上昇
していく特性です.lW付近でも
0.1%と優れています.
400HzのHPFをオン/オフし
てもほとんど変化はなく,ハムなど
のノイズは見受けられません.
最大出力は,両ch/8(l負荷で約
2.5W+2.5W(0.7%ひずみ)ありま
す.球数,プレート電圧を変えるこ
となく,前回のシングル方式から
PP化することにより,約3.4倍に
パワー・アップされました
低域の制御力がよくなった
試聴には,例によって下記の機器
を用いました.
CDプレーヤは自作,スピーカは
ALTEC CD408-8A(ソニーSS-
7090箱入りバスレフ)とALTEC
CF204-8A(ティアックS-70箱入り
後面バスレフ)です,
再生音は非常に優れており,トリ
4 6 81K 2 4 6 810K 2 4
周 波数(Hz)(ル8 6
〈第6図〉本機の雑音ひずみ牽特憧
(苓)胤をこTP触覚
「
▲
8
6
4
-
0
〈第5図〉
本戦の周波数特注
) i ll i I
■I I ”● ●I
R L = 8 0 l
2 4 6 80.1 2 4 6 81.0 2 4
プルPPの効果なのか低域の制御
カはすぼらしく,心地よい真空管
OTLサウンドを奏でてくれます.
前回のPPと同様に‘‘21世紀の真空
管アンプ’を思わせるほど音がクリ
アです.優秀すぎて(?)高域のハー
モニクス効果はシングル方式に比
べ,ちょこっと物足りなささえ感じ
ました.
高能率(98dB/lW/1m)のCD408
-8Aスピーカから再生される音は
生々しく,圧巻です.CDに記録され
ている音楽信号が正確に再生されて
いるように感じられます.、低域のし
まり具合や結峨I力はトリプル化によ
MAR. 2010
●筆者の視聴風景 CDプレーヤは自作 この環境なら出力2.5Wで十分な音量かえられる
出力(W)
りさらに向上しています.中高域も,
弦楽器,鍵盤楽器,木管楽器,いず
れの楽器でも明確にバランスよく奏
でられています.ボーカルも生々し
く,個々に明確ながらバランスがと
れています.また,聴感パワーも十
分です.
10cmサイズのCF204-8A(95
dB/lW/1m)でも,CD408に比べる
と低域は劣りますが,10cmフレン
ジとは思えないほどの再生音で,ど
の楽器も音声も明確にバランスよく
奏でられています.こちらも十分な
聴感パワーがあります.改めて,低
電圧0バイアス駆動真空管OTLア
ンプのよさを感じました.
また,6AS7Gが6本となり,そ
の視覚的要素には力強さが感じられ
ますので再生される音楽がより素
晴らしく聴こえます.
低電圧・0バイアス駆動PP方式
OTLは,21世紀の真空管アンプに
相応しい仕様といえます.
●ホームページ
http://www.geocities.jp/sey-
che哩_7/
45