5
(49)尾 ・山 田:N,ノVLtt'ス(2一 ア ミノア ル キ ル)マgeソア ミダ 欄(の お よび 二eケ ル(1)ra体の 合 成4) 素 の 挙 動 を 検 討 し た 結 果,反 応は通常の乳化重合の機構で進行し て い る こ と,水 索はシアノコバル ト(1)錯体 を 介 して,重 合の開 始 お よ び 停 止 の 両 反 応 で 重 合 体1分 子 あ た りの2原 子導入されて い る こ とを証 明 した1の◎ した が っ てケ イ皮 酸 ナ トリウムの水素化 の さい に も,ス チレンの場合と同様の反応機構をとることが想像 さ れ,水 素はつぎのような過程でケイ皮酸ナトリウムの有する二 重結合を飽和していくと考えることがもうとも妥当であると思わ れ る。 2[Co(CN)5]3"'十H2-→2[Co(CN)sH]s-(1) [Co(CN)sH]9-十A-→HA・ 十fCo(CN)5]B-・ 一(2) [Co(CN)sH]s-十HA・ 一 →HAH十[Co(CN)5〕3-(3) こ こ に,Aは ケイ皮酸ナ トリ ウ ム,HA・ は 【Co(CN)s]9一 とケ ィ 皮 酸 と の 反 応 に よ っ て で き る ラ ジ カ ル を,ま た,HAHは β一 フ ェニ ル プ ロ ピォ ン酸 を示 す。 なお,(3)式 でケィ皮酸ナ トリウ ム と反 応 し て水 紫 の とれ た 錆 体 は,(董)式の 反 応 で また 水 素 と反 応 して,活 性 種rCo(CN)sHls"一 を再 生 す る。 す な わ ち,水 素 を 吸収 した シアノコパル ト(1>錯体 が ラジカル反応の開飴 剤 とな っ て,ケ イ皮 酸 の 水 素化 反 応 が 進 行 す ると考 え られ る◎ ま た,水 田 らの は 同位 体 交換 法 に よ る実 験 で この 錯 体 に吸 収 され た 水 妻 の 解 離 が 塩化 カ リウ ムの 存 在 で 促 進 され る こ と を報 じて お り,上 配 の ラ ジカ ル機 構 の妥 当 性 を 示 唆 す る もの と して 興 味 深 く思 われ る。 さら に,Simandiら のは 水 素化 反応 速度 が 添 加 物 の イ オ ン強 度 に よっ て影 響 され る こ とを 綴 告 してお り,著 者 ら も種 々 の 濃 度 の塩 化 カ リウ ム を加 え た と きのRと 反 応 液 の イ オ ン 強 度(μ)の関 係 を 求めたところ,水素化速度の対数はイオン強度の平方根に比例す る こ とが 認 め られ た が,イ オ ン強 度 の変 化 が ラ ジ カ ル 機構 に どの よ うな 変化 を もた らす か につ い て は 目下 検 射 を進 め て い る。 11)水 田 泰 一,管 孝 男,日 化,86,1010(1965). 10)高 視,飯 駕, 竹田 政 民,工 化,71,1250(1968)、 N,A17一 ビス(2一ア ミノアルキル)マ ロンア ミダ ト銅(II)お よ び ニ ッケ ル(II)錯 体 の 合成 和44年8月18日 平次郎 ・山 喜代子 2種類 の新 配 位 子・Aお よびBを 合 成 し,そ れ ぞれ を アル カ リ溶液 中 で銅(I) ,ま た はニッケル(I)イ オ ン と反 応 させ る こ と に よ りCu-A,Cu-B,Ni-A,お よびNi-B(図1)を 単離した。 これらの構造は元素分析 ,IRお よ びUV吸 収 スペ ク トル,磁 率, お よび電 気 伝 導度 な ど の結 果 に よ り確 か め られ た。 報の配位子,C,DおよびE(表3)を含め,競争反応(配位子F(表3を基 準 物 質 とする)によ り生 成 錯 体 の相対的 安 定 度を比較した。結果を表3 6-6-6員 縮合 キ レ一 トの生 成 が 予 想 され る配 位子Gに つ い て調 べ た と ころ錯 形成 能 を も た な い こ とが わ か った。 1緒 ア ミドグル ー プの 金 属 イ オ ンに 対 す る 挙 動 に は2種 類 あ る (玉)中性お よび弱酸性溶液 中ではア ミい グル ープはそのカル ボニ ル酸素の 非共有電子対 によって 金 属イ'オンへ配位 し1) ,一 方, *1こ の 報 文 を``アミ ド窒 素 ア ニオ ンで配 位 した 金 属錯 体 の 合 成 と性 質(第7報)"と す る. *2前 報(第6報) ・尾 嶋 平 次 郎,山 田 喜 代 子,日 化,89,490 (1968). *3Heijir OJIMA ・Kiyoko YAMADA愛 知 教 育 大 学化 学 教 室,岡 崎市明大寺町 1) a) W. E. Bull, S . K. Madan, J. E. Willis, Inorg. Chem., 2, 303(1963); 4, 18(1965); 6 , 421(1967). b) C. S. Kraihanzel, S. C . Grenda, D. N. Stehly, ibid., 4, 1037 (1965) ; 6, 277 (1967) . c) S. K. Madan, H. H. Denk, A. M . Donohue, J. A. Sturr, J. Inorg. Nucl. Chem ., 27, 1049(1965) ; 28, 1617(1966); 29, 1669(1967) . d) M. Sekizaki , M. Tanase, K. Yamasaki, Bull. Chem. Soc. fop., 38, 2206 (1965) ; 42 , 399 (1969) ; K . Nagano, H. Kinoshita , A. Hirakawa, Chem. Ph arm. Bull., 12, 1198(1964); A . Masuko, T. N omura, Y. Nawata, H . Iwasaki, Y. Saito, Bull . Ch em. Soc. fop., 40, 511 , 515(1967); E. Uhlig, V . Neugebauer, Z . Anorg. Allgem. Chem ., 351, 286(1967) . (2)アル カ リ性 溶液 中ではア ミド水素の酸解離を ともな うて窒 素 アニオン として金属 イオ ンへ配位す るt)。ただ し,後 者は偽 の官 能基 と の間 で キ レ ー トを形 成 す る 場合 に か ぎ られ る。 -1ざ』-1ざL- M蘭 著者らは後者に属する錯体の合成,性 質の解明をつづけている 2)文 献1d沖 のM・ Sekizakiら ,お よび A.MaSuk。ら. 関 崎 正 雄,山 崎 一 雄,日 化,町,1053(1966). a) H. Dobbie, W. 0. Kermack , Bloch's'. J., 59, 246, 257 (1955) ; A. E. Martel et al ., Biathron., 3, 1169 (1964) ; Y. Nakao , K. Sakurai, A. Nakahara, Bull. Chem. Soc. Jap., 39 , 1608 (1966) . b) P. X. Arrnendaret, K . Nakamoto, hears. Chem , 5 , 796(1966). c)尾 嶋 平次 郎,山 田喜代子 ,日 化,88,329,333,952, 1056(1967);89,490(1968) . d) A. Zuberbahler , S. Fallab, Th. Kaden, Heir. Chim. Ada, 50, 889(1967); 51 , 179B, 1805(1968); R. Grimmer, S . Fallab, Ckintia, 22, 90(1968) . e) H. A. 0. Hill, K. A . Raspin, J. Chem. Sic, A . 1969 , 619.

-1ざ』-1ざL- - JST

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(49)尾 嶋 ・山 田:N,ノVLtt'ス(2一 ア ミノア ル キ ル)マgeソ ア ミダ 欄(の お よび 二eケ ル(1)ra体 の 合 成4)

素 の挙 動 を検 討 した 結 果,反 応 は通 常 の乳 化 重 合 の 機構 で進 行 し

て い る こ と,水 索 は シ ア ノ コバ ル ト(1)錯 体 を 介 して,重 合 の 開

始 お よび停 止 の両 反応 で 重 合 体1分 子 あ た りの2原 子 導 入 され て

い る こ とを証 明 した1の◎ した が っ てケ イ皮 酸 ナ トリウ ムの 水 素化

の さい に も,ス チ レンの 場 合 と同 様 の 反 応 機構 を と る こ とが 想像

され,水 素 は つ ぎの よ うな過 程 で ケ イ 皮 酸 ナ ト リウ ムの有 す る二

重結 合 を飽 和 し てい く と考 え る こ とが もう と も妥 当 で あ る と思 わ

れ る。

2[Co(CN)5]3"'十H2-→2[Co(CN)sH]s-(1)

[Co(CN)sH]9-十A-→HA・ 十fCo(CN)5]B-・ 一(2)

[Co(CN)sH]s-十HA・ 一 →HAH十[Co(CN)5〕3-(3)

こ こに,Aは ケ イ皮 酸 ナ トリウ ム,HA・ は 【Co(CN)s]9一 とケ

ィ皮 酸 との反 応 に よ って で きる ラ ジ カル を,ま た,HAHは β一

フ ェニ ル プ ロ ピォ ン酸 を示 す。 なお,(3)式 でケ ィ皮 酸 ナ トリウ

ム と反応 して水紫の とれた錆体は,(董)式 の反応で また水 素 と反

応 して,活 性種rCo(CN)sHls"一 を再生 す る。 すなわち,水 素 を

吸収 した シアノコパル ト(1>錯 体 が ラジカル反応の開飴 剤 とな っ

て,ケ イ皮酸 の水素化反応が進行 す ると考 えられ る◎ また,水 田

らのは同位体 交換法 による実験で この錯体 に吸収 された水 妻の解

離が塩化 カ リウムの存在で促進 され ることを報 じてお り,上 配の

ラジカル機構 の妥当性を示唆す るもの として興味深 く思 われ る。

さらに,Simandiら のは水素化 反応 速度 が添加物のイ オン強度 に

よって影響 され ることを綴告 してお り,著 者ら も種々の濃度 の塩

化 カ リウムを加 えた ときのRと 反応液のイオン強度(μ)の 関係 を

求めた ところ,水 素化速度 の対数 はイオン強度 の平方根 に比例す

ることが認め られた が,イ オン強度 の変化 がラジカル機構 に どの

ような変化 を もた らすか につい ては目下検射 を進 めてい る。

11)水 田 泰 一,管 孝 男,日 化,86,1010(1965).

10)高 橋 三 視,飯 村 一 駕, 竹 田政 民,工 化,71,1250(1968)、

N,A17一 ビス(2一ア ミノアルキル)マ ロンア ミダ ト銅(II)お よび ニ ッケ ル(II)錯 体 の合成

昭 和44年8月18日 受 理

尾 嶋 平次郎 ・山 田 喜代子

2種 類の新配位子・Aお よびBを 合成 し,そ れぞれ をアル カ リ溶液中で銅(I),ま たはニッケル(I)イ オンと反応 させ ることに

よりCu-A,Cu-B,Ni-A,お よびNi-B(図1)を 単離 した。 これ らの構造は元素分析,IRお よびUV吸 収 スペ ク トル,磁 化率,

お よび電気伝導度 などの結果によ り確かめられ た。

報の配位子,C,DおよびE(表3)を含め,競争反応(配位子F(表3を基準物質 とする)に よ り生 成錯体の相対的 安定度を比較した。結果を表3に示す。

6-6-6員 縮合 キレ一 トの生成が予想され る配位子Gに つい て調べた ところ錯 形成能 をもたない ことがわかった。

1緒 言

ア ミドグループの 金 属イオンに 対 する 挙動には2種 類あ る。

(玉)中性お よび弱酸性溶液 中ではア ミい グル ープはそのカル ボニ

ル酸素の 非共有電子対 によって 金 属イ'オンへ配位 し1),一 方,

*1こ の 報 文 を``ア ミ ド窒 素 ア ニオ ンで配 位 した 金 属錯 体 の

合 成 と性 質(第7報)"と す る.*2前 報(第6報)

・尾 嶋 平 次 郎,山 田喜 代 子,日 化,89,490

(1968).*3Heijir OJIMA

・Kiyoko YAMADA愛 知 教 育 大 学化 学 教

室,岡 崎市 明 大 寺 町

1) a) W. E. Bull, S. K. Madan, J. E. Willis, Inorg. Chem., 2, 303(1963); 4, 18(1965); 6, 421(1967).

b) C. S. Kraihanzel, S. C. Grenda, D. N. Stehly, ibid., 4, 1037 (1965) ; 6, 277 (1967) .

c) S. K. Madan, H. H. Denk, A. M. Donohue, J. A. Sturr, J. Inorg. Nucl. Chem., 27, 1049(1965) ;

28, 1617(1966); 29, 1669(1967) . d) M. Sekizaki , M. Tanase, K. Yamasaki, Bull.

Chem. Soc. fop., 38, 2206 (1965) ; 42, 399 (1969) ; K. Nagano, H. Kinoshita , A. Hirakawa, Chem. Pharm. Bull., 12, 1198(1964); A. Masuko, T. N

omura, Y. Nawata, H. Iwasaki, Y. Saito, Bull. Chem. Soc. fop., 40, 511, 515(1967); E. Uhlig, V. Neugebauer, Z. Anorg. Allgem. Chem., 351, 286(1967)

.

(2)ア ル カ リ性 溶液 中ではア ミド水素の酸解離を ともな うて窒 素

アニオン として金属 イオ ンへ配位す るt)。 ただ し,後 者は偽 の官

能基 との間で キレー トを形成す る場合 にか ぎられ る。

-1ざ 』-1ざL-M蘭

著者 らは後者 に属す る錯体の合成,性 質の解 明をつづけてい る

2)文 献1d沖 のM・  Sekizakiら,お よび A. MaSuk。 ら.

    関崎 正 雄,山 崎 一 雄,日 化,町,1053(1966).

a) H. Dobbie, W. 0. Kermack , Bloch's'. J., 59, 246, 257 (1955) ; A. E. Martel et al ., Biathron., 3,

1169 (1964) ; Y. Nakao , K. Sakurai, A. Nakahara, Bull. Chem. Soc. Jap., 39 , 1608 (1966) .

b) P. X. Arrnendaret, K . Nakamoto, hears. Chem , 5, 796(1966).

c)尾 嶋 平次 郎,山 田喜代子,日 化,88,329,333,952,

1056(1967);89,490(1968) .d) A. Zuberbahler , S. Fallab, Th. Kaden, Heir.

Chim. Ada, 50, 889(1967); 51, 179B, 1805(1968); R. Grimmer, S. Fallab, Ckintia, 22, 90(1968) .

e) H. A. 0. Hill, K. A. Raspin, J. Chem. Sic, A. 1969, 619.

Page 2: -1ざ』-1ざL- - JST

50 口 本{ヒ 学 雑 説591巻1号(1970) (50)

錆 休

 表

銅(夏),お よび ニ ッケル(1)錯 体 の分 析 結 果 お よび性 質

0漉蚕伽

の㎝鰯

O

のユ

むぽ

N

N

M N

(%) 結 晶

H£Oの

色調分析値 計算億 分析値 計算値 分析櫨 計算値

23.7923.7320.9120.926.906。73紫 赤

25.3525.40b)00赤

23.0222。8720。1920.170

22.2222。3320.8221。317.00

24.0623,97ゐ)0

17。9717.9516。9017.1315.90

21.5721.51ゐ)0

注a)水 溶液か ら再結晶 しても無水塩が析出する.

0鮮 赤

6.85黄

0黄

16.53黄

0榿

δ)未 測 定.

d-d吸 収 帯 の 分 子 伝 導 度 の 磁 化 率 の

夢cm-i,()εRMcm2(g'-i・m◎1一 ユ)Xg・106ZM・IO6μeff(B.M)(corr.)

19400(60)

19500(62)

22200(70)

22200(66)

3.33

3,70

,5.18

5,18

4.94

ゐ)

1325.2 1.84

4.101137。9L7!

反 磁 性〃

反 磁 性〃

`)水 溶液,濃 度10-2F.d)水 溶 液,濃 度3×10""SF・ の 室 温 ・

が,本 報では配位子A*t,B,お よびそれ らの銅(1),ニ ッケル

(1)錯 体,Cu-A,Cu-B,Ni-・A,お よびNi-B(図1)の 合成,

性質 につい て述ぺ る。なお,前 報で報告した配位子,C,D,お

よびE(表2)を 加え,同 一官能基を もちなが らキレー ト環構 成員

数の異 なるものの配位能の比較を行 なった◎

11,N4H_CH,_NH_c1o\c】晦

]Hab1†CH-NM-c《

」 総

o

翫ノ\感

"

檎M:{恩;籍 臨:会

R:{(YHs:藷裳妾季 会

臨誕箕ぐ

MC}髭

瓢N/'\-c/

」 蚤.、訣M:{霜:譲 鰍:霊

図1NINi・ 一ビ ス(2-・ ア ミ ノ ア ル キ ル)マlr:tン ア ミ ド

お よ び そ の 錯 体 判

2実 験

2.1E位 子の合成

配位子Aお よびBは つ ぎの ような方法で得 られ る。 マ ロン酸 ジ

エチル8.019(O.05mol)の 中へ 無水エチレンジア ミン69(0・1

mo1Xま たはZ,2一プ ロパ ンジア ミン7・419(0・1mo1))一 エタノPt

ルoomiの 混合 物を10~15分 間かけて滴下 し,つ いで110~

12びCで30分 悶加熱す る。 反応物中へ約30mlの 水を加 え,

その まま錯塩の合成 に使用す る。 この場合,か な りの量の副生成

物 も認め られるが,ア ル カ リ性下 で単離で きる錯体(銅(買),ニ

ワケル(夏)の 場合)は1種 類のみであ る。

配位子Aは 単離 した銅α),ま たはニ ッケル(ll)錯 体 を塩酸で

分解 させ ることに よ り塩酸塩 として単離す ることがで きる◎

配位子A分 析億N21・18%

C7HコeOsN4C12と しての計 算値N2L45%

84著 者らの報告(第17回 錆塩化学討論会(1967,広 島))後

に本報中の配位子Aの パ ラジウム鏑体の合成xのお よび同

配位子,そ の他の配位 した 各種金属鐙体の 構造 と安定

度漏)などの報告がな され た.

配位 子Bに ついて同様 に試みたが結晶化 は不可能で あった。

なお,1,3一 プロパ ンジア ミンとマロン酸 ジェヂル との反応を行

ない,同 様に銅 α)お よびニ ッケル(互)イ オン との反応 を試みた

が反応性 はまった く認め られ なか った。

2.22V,NLビ ス(2一ア ミノエチル)マ ロンア ミダ ト銅(ni)(Cu-

A・H20と 略記す る)を

水酸化銅4。9g(0・05二mQ1)を 配位子Aの 水 溶液 に加 えアル カ リ

性 をたもちなが ら湯 浴上 で加熱す る。 遠心分離 によ り紫赤色溶液

を分離す る、上澄液がほ とん ど着色 しな くなるまで抽出 をく り返

す。抽出液 を合わせ,減 圧下 で濃縮す ると赤紫,リ ン片状結晶が

析出す る。水か ら再結晶すれば一水塩が,ま た・ それ を120。C

で吸引すれ ば赤色 の無水雁が得 られ る。分析値は表1に 示す。

2.31VI,Ni・ 一ビス(2一アミノプ ロピル)マ ロンア ミダ ト銅(ll)

(Cu-Bと 略記す る)そ

配位子溶液B,お よび 水酸化銅 を用いて2・2と 同様 の方法で

目的物が得 られ る。水か ら再結晶して鮮赤色針状結晶(無水塩)が

得 られ る。分析値は表1に 示す。

2。4N,Ni一 ビス(2一ア ミノエチル)マ ロンア ミダ トニ ッケル

(Ni--A・nH20と 略記す る)

配位 子Aの 水溶液,お よび水酸化 ニ ッグル5・5g(O.05mol)を

用い2.2と 同様の方法で 目的物が得 られ る。 水か ら再結晶 して

三水温(巨大柱状結晶)が得 られ,そ れ を空気中(室温)で 放置すれ

ば一水塩 とな り,さ らに塩化 カル シウムデシケーター中で無水塩

(黄色,微 細針状結晶)と なる。分析値は表1に 示す。

2、5.ZV,Ni・一ビス(2一ア ミノ プロピル)マ ロン ア ミダ トニッケル

(口)(Ni-B・nH20と 略記する)

配位 子Bの 水溶液,お よび水酸化 ニ ッケルを用 い2・2と 同様

の方法で 目的物が得 られ る。 水か ら再結晶して三水塩(黄 色針 状

結晶)が得 られ,50。Cで 吸引すれ ば無水塩(燈 色,微 細針状結晶)

となる。分析値ば袈1に 示す。

2,6測 定装置

日立EPU・-2型 光電分光光度計,日 本分光DS--21型 赤外分光

光度計(nujol-HCBmull法),島 津CT一 型電気伝導度測定装置・

お よび 日本高密100型 電磁石,お よびその 電源装置な どを用い

た。

2.7錯 体の相対的安定度の比較

ここに 合成 した 錯体4種 類,お よび さきに 報告 した類似錯体

(表3参 照)の相互の安定性を比較す るために配位子F(表3)を 基

準配位子 として(2)式 の ような競争反応を行 なわせ,そ の平衡定

Page 3: -1ざ』-1ざL- - JST

(51) 尾 嶋 ・山 田;N,Ni-.ビ ス(2一 ア ミノ アル キル)-VPtン ア ミダ ト銅(1)お よび 二vケ ル(董)餓 体 の 合 成51

数 を比較 した(表3)。 各錯体(O.OlF)を 水溶液(O・1N水 酸化 ナ

トリウム)中で等 モル量の配位 子Fと 混合 し,約1時 間,600Cに

た もったのちd-d吸 収帯 を測定するe一 方,同 一条件下 での各

錯体単独のそれ を測定 し表3に 示 す平衡定数を算出 した。

鱗 蟹 ⊃ 出

ψ

h麟千。ま齢

潤なお,こ こに測定 しようとす る錯体のすべて,お よび配位子F

の銅(五),お よびニッケル(五)錯 体の水溶液中へ広範囲の量のア

ルカ リ(0.01~0.5N水 酸化ナ トリウム)を加 えてもそれ らの吸収

曲線に変化 を与えないことを確 かめた。

3結 果および考察

銅(E)キ レー トのそれ(【Cuent]2÷18200an-i,【Cuト リエチ

レンテ トラ ミン】計17400㎝ 一纂)にくらべて かな りのブル ーシフ

トを示す。 この事実 は この錆体が結晶(無 水)状態 では完 全な四配

位平面 型であ り,水 溶液 中において も錯基のZ軸 からの水分 子の

接近を強 くさまたげていることを示 して いる。

3.1銅er)錯 体の構 造

ここに新 たに得 られ た2種 類 の銅(1)錯 体がCu-A,お よび

Cu--B(図1)に 示 され るように,配 位子が2個 の末端 ア ミノ基お

よび2個 のア ミ ド窒素陰イオ ンとで配位 した 四配位 平面 型錯体 で

あることがつぎの諸事実か ら明らか とな った。孝

(1)元 素 分析 値 は計 算 値 と完 全 に 一 致す る。

(2)水 溶 液 の電 気 伝導 度 はCu-A,3.336/cm2,お よびCu-

B,3・70σ/cm2と な り無 電荷 錯 体 で あ るこ と を示 す。

(3)磁 化 率 の値 はCu-A・H20,L84B.M.(25。C),Cu-

B,L71B・M・(25。C)と な り,強 配位 子 場 を もつ 単 量体 の もっ

値s)に 落 ちつ く。

(4)赤 外 吸収 ス ペ ク トル もそれ らの構 造 を支持 す る の に矛 盾

のな い吸 収 帯が 観 測 され る(表2参 照)。

(5)こ の錯 体 のd--d吸 収 帯 は,1水 溶 液 で はCu-A,19400.

cm備1;Cu-B・19500α 豆一工}こそれ ぞ為 極 大 を あ らわ し(図2お よ

び3),ま た両 錯 体 の結 晶(無 水)は 赤 色 で あ って,一 般 の ア ミン

表2配 位 子A~E,お よび それ ら の銅(ll),お よび

ニ ヅケル(夏)錯 体 の赤 外吸 収 スベ ク トル

錯 体 \ 錯体のyCx・ 配㌣ 謄 塩)ん(c-・)の

賦躍

留躍爵

C

N

C

N

C

N

C

N

C

N

(cm需 二

1587)

}1器1600

(1580

}189

1199

1653

a)

1670

1670

1639

一66

-68

一80

-65

-80

-65

-56

-49

注 の 単 離 不 可能.

の 配 位子 のVCmOの 錯 体 形 成 に よ る シ フ ト.へ3)P・Ray・D・N ・Sen・J・Ind・Chem .Sec.,25,473(1948)

.

勧o£

1520253035ca45

シ(cm-1)×IO-s

図2銅 α)錯 体 の吸 収 スペ ク トル(水 濱 液)

切£

4.e

3.0

2.◎

1.0

1520253035404550

す(㎝ 齢1)×10-3

図3ニ ッケ ル(E)錯 体 の吸 収 スベ ク トル(水 諮 液)'

5""6-5員 縮合 キ レー トを もつCu-Agお よびCteBの ♂4吸

収帯のa値(そ れぞれ60お よび62)が,5-5【5員 縮合 キレ_ト

をもっCu-C・ お よびCu-・Dの それ(125,お よび133 .5)の約半

分 とな ることも既報 の傾向恥)と矛盾 しない。ホイ 吸収帯の強度 を

増加 させ る原因 として"(1)錯 体分子 の対称性 の低下,(2)平 薗

錯体にお いては平面か らのひずみ、 な どによって器 の禁制 が部

分的に破れ るこど 警にあると理解 され ているΦ。 ところが こ こに

取 り上 げてい る錯体 には平面購 造の保持 の障害にな るほ どの立体

的糖 は見あた らないことか ら,こ の両グルつ の 噸 の樋 の

原因をつ ぎの ように考 えた・"銅 ① イオンが ト鵠 員縮 餅 レ

一 トを形 成す る場合 は配位子場 に強いス トレス を生 じ蓼 それが遷

4)H・B・Gray・J・Chem.,Edns,41,2(1964).

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52 日 本 化 学 雑1志91巻1号(tg70) (52)

移 の禁制 を部分的に破 る。 一 馬5-6-5員,お よび6-5-6員 縮

舎 キ レー トではそのス トレスが解消 され る。"こ の両 グループの

相違 は安定度の上に もあ らわれ る(3.3参 照)。

赤外吸収スペ ク トルで とくに注 目すべ き点は,こ れ らの配位子

のア ミ ド1吸 収帯が錨体形成 によ り異常 なレ ッドシフ トを示す こ

とである(表2)。 比較のために2・一ピリジンカル ボンア ミドを と

り上げてみ る轟)。その配位子 がア ミ ド水素 を解離 させ 窒素陰 イオ

ン配位 した場合の ア ミド亘吸収帯 のシフ トは,そ れぞれ銅 α 〉錯

休 では一34cm--i,お よび ニッケル(ll)錯 体 では一18cm一 菖とな っ

て いる。 この ような異常 なシフ トは 既轍の類似 め錯体幼 につい

て も見 られ るが,こ れ らの原 因は後H検 討 したい。一方,2一 ピ リ

ジンカルポ ンア ミドがカルボニル酸素で配位 した場合は銅(夏),

ニ ッケル α)錯 体 とも逆に2~15cm-i*sの ブルーシフ トが観測

されてい るSの5》。

3.2ニ ッケル(n)鍾 体の構 造

ここに得 られた2種 類 のニ ッケル(夏)錯 体 も,元 素分析,磁 化

率測 定(両 者 とも反磁性),電 気伝導度(両 者 とも 無電荷錯体 とし

ての値を示す),配 位子場吸収帯(両 者 とも四配位平面構造に特有

な吸収帯をあらわす),お よび赤外吸収 スペ ク トルな どの結 果か

らそれぞれNi-A,お よびNi-B(表1)の 構造を もつ平面型 錯体

であ るこ とが わか る。

吸収スペ ク トルについて注 目すべ き点は,既 報のNi-c,Ni-

D,お よびNi-・E(表3参 照)が32500~33800cm-一}こio96≒3.5

な る顕著な 極大(電 荷移動吸収帯)を あらわす のに対 し,本 報 の

Ni・-Aお よびNi-一一Bでは35㎜cm4付 近 にかすかな肩をあらわ

すのみ,と いうこ とである。その両 グループの配位原子はま った

く同 じ,2個 のア ミノ基,お よび2個 のア ミド窒素陰 イオ ンであ

るが,前 者は(a),ま た後者 は〔b⊃な る部分構 造をもつ ことか ら,

前者の もつ顕著な電 荷移動 吸収帯は部分構造(a)に 特有の もの と

考え る。その一般鮭 については今後 さらに検 討 したい、

}

!N

N…

a

/\

(

M、

!O

、O

3.3● 体の相対的安 定度

衷3相 対 的 安 定 度 定 数

\K=K_

企\ 謡諾1著 器 嵩κ 隷

[NiL][F]

をH

O

C

O

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{

-N

Nl

b

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M\

!

A~Eな る5種 の配位子(配位原 子は同じ,キ レー ト構 成員数 を

異 にす る)の銅(蔓),お よび ニ ッケル(1)錯 体の相対的 な安定度

を比較するために基準配位子,N,N'一 ビス(2一ピ リジンカルポ ニ

ル)エ チ レンジア ミン(F)(表3参 照)と 競争反応 をさせ,そ の系

の吸 収スペ ク トルを測定 した。その結果を表3に 示す。同様,第

1,2,お よび3欄 にはそれぞれ,下 紀(3),(4),お よび(5)の

平衡定数を記入 したo

【Ni・"'L]十Cu2+冒 【Cu・一・L】十Ni2や(3)

【Cu一町 十L試 【Cu--L]+F(4)

【Ni-F】 十L:一=一11【Ni-】Ll十F(5)

第1,お よび第2欄 に記入 したすべ ての反応は明確な等吸収点

を示 し,上 紀平衡(3),お よび(4)以 外の化 学種の存在 しない こ

ゆ5

5) M.Sekizaki,K.Yamasaki,Spectrochim.Aeta,25A,

475(1969).

この種 の鎖 体(カ ル ボ 昌ル酸 素配 位)は 陽 イオ ンで あ り,

その 対 イ オ ンの 種 類 に よ りこ の シ フ トの大 き さが 異 な う

てい る.

A

/一 \H2NHN-一

H2NHN-

\_/

\O

O

ノ\/\

H3C\

H、ボ 濠N/O

㌦ り 煮。H8(ン

C

D

E

H2叉,N-\。

HsC\

Oノー}

\洲

一/N馬

H2\,N-\。

HsC!

H2☆HレO

H2ギ 盃N一ノ01

H押H群一L

17,3

O.75

92、9

O>

注 の 未測定.

ゐ)被 検液 の吸収スペ ク トルが錯体

,Ni-Bの それ とほ とんど 一致す

るためにκ値の算出不可能。

の 基準 物質

◎。9

ミ αsぐ

望 編

e.1

0,30

0.52

0,0038

0.026

LO7

[NiF】 〔Lj

114。5

44.8

工43.5

22.3

◎ イ ◎F`))唾⊃◎ ぜ

16!82⑪2226怨

il(cm-一 り ×10""s

(1):Cu-C,(2);Ni-C,

(3):Cu-C十Ni2+ま た は,Ni--C十Cu2"

濃 度:金 属 イ オ ンに つ き5×10'ag・i◎n

錯 体 お よび配 位 子 の記 号 は 喪3参 照.

図4金 属 イ オ ソ の 競 争 反 応

とは 明 らか で あ る◇ 両 平 衡 の代 表例 をそ れ ぞれ 図4お よび5に 示

す 。 一方,第3欄 は,基 準 錯体,εNi-F]の 測 定 の対 象 に す る吸 収

帯 が 肩 で あ り,か つ,被 検 試料 の 吸 収 帯 の位 置 が 接 近 して い るの

で 肥入 した値 が やや 不 正 確 で あ る。 この 表3か ら っ ぎの よ うな 讃

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'53)尾 鳩 ・山 田;N,ノVi-・ ビス(2一 ア ミノア ル キ ル)マPtン ア ミダ ト銅(の お よび 二vケ ル(童)錆 体 の 合成

3

2

α

α

、\。、

16

ヲ(cm一 藍)×10-s

(1):Cu-Fo(2):Cu-A夢

(3):Cu2ちA,お よびFの 等 モル 混合 物

濃度;Cu2÷ に つ き5×10-Sg・ien

錯体 お よび配 位 子 の 記 号 は表3参 照

図5配 位 子 の 競 争 反 応

事実 を指摘す ることがで きる。(1)第1欄 の各値を比較す ると,

5-6-5,ま たは6-5-6員 縮合 キ レー トを形成す るA,B,お よび

Eは 圧倒的に銅(ll)錯 体が安定化す る。 一一方,5-5-5員 縮合 キレ

ー トを形成す るCお よびDの ニ ッケル(ll)錯 体形成能 は銅(1)錯

体形成能 とほぼ対等である。(2)第2欄 の各値から,各 配位 子の

銅(1)錯 体形成能の順序 は,6-5-6>56-5》5-5-5員 縮合 キレー

トとな り,中 原 らがア ミノ酸ShiH塩 基 を配位子 とす る銅(1)錯

体6)・ またペプチ ド類のサ リチルアルデヒ ドShiff塩 基を配位子

とす る銅(1)錯 体?)に ついて得 た一般則 にしたが うものであ る。

そ して,メ チル基の存在 による配位能 の向上が明らか にうかがわ

れる。(3)第3欄 では縮合 キレー ト構成員数 とK値 との間の規

6)A.Nakahara,H.Yamamote,H.Matsumoto,Bull .

Chem.Sec.Jap,37,1137(1964);Y.Nakao,K.Saku.

rai,A.Nakahara,ibid.,38,687(1965);39 ,1471

(1966);42,452(1969).

7)中 尾 安 男,高 野 敏 彦,中 原 昭 次,第18回 錯 塩 化 学討 論

会(1968,京 都);石 橋弘 行,中 尾 安男,中 原昭 次,第19

回錯 塩 化 学 討論 会(1969,仙 台).㍉

則性は認め られ ないが,配 位子A~Eの 形成す る二9ケ ル(1》 錯

体のすべてが基準配位子Fの それ よ りもかな り安定であ る ことが

わか る。

なお,(G)な る配位 子を も合 成 し,ア ル カ リ溶液中で銅(E》,

お よび ニ ッケル(:)イ オ ンとの反応を試みた が前述のA~Eな ど

が示す ような反応性 はまった く見 られなか った。 また,(H)お よ

び(1)な る配位 子 も 同種の 錯体 を 生成 しない こ とが 知られ てい

るs)。 これ らはいずれ も6-6-6員 縮合 キ レー トの生成が期待 で き

る ものであ るが,ア ミド窒 素陰 イオンが関与す る場合 はその よ う

な キレPtト の生成 は不可能 と見え る。一方,(1)に 相 当するShiff

塩基(J)は 銅(1)錯 体形成能 をもってい るoこ の理由 をつ ぎの よ

うに考え る。 銅(1)錯 体が666員 縮合 キレー トを形成す るこ と

,

痙《G》

㍗評α,

雛田}

◎ 一 ・嗣◎.HC=N総HN寓 鍼

)u,

は配位子場 ひずみが増すため にもともと不利であ るが,Shiff塩

基の窒素はX電 子軌道を もち,そ れ が銅(1)イ オ ンの4」 軌道 と

重な り合 うと考えれば配位角度 に関 して はある範囲が許 され る こ

とになる。 ところが 露竃子軌道 をもたない窒案では上述 の許容 条

件がない上 に・ と くに ア ミ ド基(陰 イオン)の非可翻 生h:6・66員

縮合 キレー ト形成 を阻止す るであ ろう。

(1968年12月}第17回 錯塩化学討論会(広 島)鵠 演)

8)尾 嶋平次郎,山 田嘉代子,3未 発表.