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内容
第3章運動量と力積: 応用[1]雨滴の落下
·雨滴の落下の問題を,運動量方程式を用いて考える.[2]ロケットの運動
·ロケットの推進の原理を,運動量の保存から考える.
momentum2 – p. 1/13
雨滴の落下の問題: 問題の設定
大気中を落下する水滴は球形をしており,雲の中を通る時,その断面積に比例して質量が増加する.ここで,水の密度 ρ0 は一定値とする.又,鉛直下方には一様な重力が働いている.[1]時刻 tにおける水滴の半径を求めよ.ただし,t = 0で半径は 0とする.[2]時刻 tにおける速度を求めよ.ただし,t = 0で速度は 0とする.
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雨滴の落下の問題: 解法の要点
題意の条件は,(i)水滴は球形,(ii)水滴の質量は球の断面積に比例して増加,(iii)力としては重力のみが作用の 3 つからなる.これらの条件は,以下のように定式化される.条件 (i):水滴の半径を rとおくと,その体積 V は,
V =4
3πr3
である.密度の定義(単位体積あたりの質量)より,質量mは,m = ρ0V と表されるから,
m =4
3πρ0r
3 (1)
となる.条件 (ii):質量mの単位時間あたりの増加率は,時間微分 dm
dtで表される.それが球の断面積(断面
は円) πr2 に比例する.比例係数を aとおくと,本条件は,dm
dt= πar2 (2)
と表される.条件 (iii):速度を v (落下するだけなので,鉛直下向きを正と定義)とおくと,運動量方程式は,重力のみが作用する場合,
d
dt(mv) = mg (3)
となる.以上の 式を連立させて解けばよい.
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雨滴の落下の問題: [1]雨滴の半径の解
(1)を時間について微分する.ここで,右辺は,合成関数の微分として扱うことに留意する.dm
dt=
4
3πρ0
d
dt
(
r3)
=4
3πρ0
d
dr
(
r3)
·
dr
dt
∴
dm
dt= 4πρ0r
2dr
dt(4)
一方,(2) が成り立つから,これを (4)左辺へ適用すると,
πar2 = 4πρ0r2dr
dt
となる.これを整理すると,球の半径に関する微分方程式に帰着する.dr
dt=
a
4ρ0(5)
右辺は定数なので,これは簡単に積分できる.与えられた初期条件より,
r =a
4ρ0t (6)
となる.
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雨滴の落下の問題: [2]運動量方程式の解
運動量方程式 (3) を,初期の時刻 0から任意の時刻 tまで積分する.
m(t)v(t)−m(0)v(0) = g
∫
t
0
m(t)dt (7)
これは,重力による力積が雨滴の運動量の変化を引き起こすことを示す.質量mの関数形は, (6)を(1)に代入することで,
m(t) =πa3
48ρ20
t3 (8)
と求まる.これを (7)に代入し,更に初期条件 v(0) = 0を適用する.πa3
48ρ20
t3 · v(t) = gπa3
48ρ20
∫
t
0
t3dt = gπa3
48ρ20
·
g
4t4
従って,速度は,
v(t) =g
4t
と求まる.
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雨滴の落下の問題: 運動量の変化
運動量方程式 (3)は用いない.水滴が付け加わる前と後の運動量の変化を考える.時刻 tにおける雨滴の質量,速度をそれぞれm, v,時刻 t+∆tにおける雨滴の質量,速度をそれぞれm+∆m, v +∆vとおくと,時刻 tから t+∆tまでの間の,雨滴の運動量の変化は,
(m+∆m)(v +∆v)−mv,
となる.時刻 tにおいては,付け加わる水滴の速度が 0であるから,その運動量は 0である.時刻 t+∆tにおいては,水滴は雨滴と合体し,水滴としては消滅したので,その運動量は 0である.重力という外力が存在する場合,重力の力積が作用し,雨滴と付け加わる水滴なる系の運動量の変化は,重力の力積に等しくなる.
(m+∆m)(v +∆v)−mv = mg∆t,
m∆v
∆t+
∆m
∆tv +
∆m
∆t
∆v
∆t∆t = mg
∆t → 0の極限をとると,
mdv
dt+
dm
dtv = mg
に帰着する.これは (3)である.
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雨滴の落下の問題: エネルギーの保存性
(3)の両辺に速度 v を掛け変形すると,d
dt
(
1
2mv2
)
= −
1
2v2
dm
dt+mgv (9)
に帰着する.ここで雨滴の落下距離を xとすると,v = xであるから,右辺第 2 項は,重力のポテンシャルエネルギーの形に変形できて,
d
dt
(
1
2mv2 −mgx
)
= −
1
2v2
dm
dt(10)
となる.ただし,x = 0でポテンシャルエネルギーを 0と定めた.今の問題では, dmdt
> 0なので,右辺は負となり,全エネルギーは落下に従い,減少する.これは鎖の落下の問題と同様である.
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雨滴の落下の問題: エネルギーの保存性(付録)
(9)の導出
(3)の両辺に速度 v を掛ける.
vd
dt(mv) = mgv
左辺を順次変形する.d
dt(vmv)−mv
dv
dt= mgv
d
dt(mv2)−m
d
dt
(
1
2v2
)
= mgv
d
dt(mv2)−
d
dt
(
m1
2v2
)
+dm
dt
1
2v2 = mgv
∴
d
dt
(
1
2mv2
)
= −
1
2v2
dm
dt+mgv
momentum2 – p. 8/13
問題の設定
単位時間あたり µの割合で,ガスを,後方へ相対速度 V で噴出することで,直線上を運動するロケットがある.ここで µ, V は正の定数である.[1]時刻 tにおけるロケットの質量mを求めよ.ただし,t = 0 でm = m0 とする.[2]時刻 tにおけるロケットの質量,速度をそれぞれm, v,時刻 t +∆tにおけるロケットの質量,速度をそれぞれm+∆m, v+∆vとおく.ここで,この間に,質量−∆mだけのガスが噴出したと考えた.更に,この時のガスの速度を uとおく.外力が作用しない場合,この間の,ロケットとガスからなる系の運動量の変化は 0となる(系
の運動量は保存する).この運動量の変化の式を示せ.[3]相対速度とは,ロケットに固定した座標系から見たガスの速度のことである.この定義より,
−V = u− v (3.29)
が成り立つ.左辺に負号がつくのは,ガスがロケットの進行方向(速度の正の向き)とは逆向きに噴出するからである.この式を用いて,問 [2]で示した式から uを消去した式を示せ.更に,∆t → 0の極限をとるこ
とで得られる運動方程式を示せ.[4] t = 0で v = 0なる初期条件のもとで,問 [3] で求めた運動方程式の解を求めよ.
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[1]ロケットの質量
「単位時間あたり µの割合でガスを噴出する」ことより,方程式,dm
dt= −µ (3.30)
が成り立つ.初期条件 t = 0 でm = m0 のもとで,これを積分すると,
m = m0 − µt (3.31)
となる.
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[2]運動量の変化
時刻 tにおけるロケットの質量,速度をそれぞれm, v,時刻 t+∆tにおけるロケットの質量,速度をそれぞれm+∆m, v +∆vとおいたことより,時刻 tから t+∆tまでの間の,ロケットの運動量の変化は,
(m+∆m)(v +∆v)−mv,
となる.時刻 tにおいてはガスは噴出していないからその運動量は 0である.時刻 t+∆tにおいて,質量−∆m
のガスが速度 uで噴出したので,その運動量は−∆m · uである.従って,ガスの運動量の変化は,
−∆m · u− 0
となる.なお,ここでは∆m < 0と考えたことになる.重力等の外力が作用しない場合,ロケットとガスからなる系の運動量は保存し,
[(m+∆m)(v +∆v)−mv] + [−∆m · u− 0] = 0
∴ (m+∆m)(v +∆v)−mv −∆m · u = 0 (3.32)
が成り立つ.
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[3]運動方程式
ガスが,ロケットの進行方向(速度の正の向きと定義)とは逆向きに,ロケットに固定した座標系から見て,速さ V で噴出する場合,
u = v − V
となる.これを運動量の保存の式,(3.32)に代入する.
(m+∆m)(v +∆v)−mv −∆m · (v − V ) = 0
左辺を整理すると,
m∆v + V∆m+∆m∆v = 0
となる.両辺を∆tで割り,∆t → 0の極限をとる.
m lim∆t→0
∆v
∆t+ V lim
∆t→0
∆m
∆t+ lim
∆t→0
∆m
∆t
∆v
∆t∆t = 0
この極限は,方程式,
mdv
dt+ V
dm
dt= 0 (3.33)
に帰着する.
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[4]ロケットの速度
(3.33)に (3.30), (3.31)を代入すると,dv
dt=
µV
m0 − µt
が得られる.これを時間積分すると,
v = −V log(m0 − µt) + v0
となる.ここで v0 は積分定数である.t = 0で v = 0なる初期条件を適用すると,v0 = V logm0 と定まる.従って与えられた初期条件を満たす解は,
v = V log
(
m0
m0 − µt
)
となる.
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