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24 III. 我が国と欧州各国の労働時間の差(検討課題 21 労働時間に関する国際統計と日本の統計の比較 (特徴と比較に当たっての留意点) 本節では、我が国及び欧州各国において、労働時間を調査している統計を調べ、その特 徴を概観する。その上で、我が国と欧州の労働時間を比較する上で有用な統計をピックア ップする。 11 欧米諸国及び日本における労働時間を計測している調査 我が国及び欧州各国の政府機関等によって、労働時間の調査が実施されている。労働に 関する調査は、大きく分けて、1)企業・事業所を対象に行う調査と2)個人・世帯を対 象に行う調査の 2 種類がある。 さらに、2)個人・世帯を対象に行う調査については、(ア)労働者(失業者を含む)を 対象とした「労働力調査」や「就業構造基本調査」と、(イ)労働時間以外も含めた生活時 間全般を調査した「生活時間調査」の2種類が存在する。 1-1-1 企業・事業所を対象に行う調査 日本における「毎月勤労統計調査」のように、欧州各国では、企業・事業所を対象に、 産業別企業数、賃金、労働時間、出勤日数、労働者数等を把握している統計調査が存在す る。 欧州各国の企業・事業所調査の調査概要、調査対象、調査項目等は、国際労働機関(ILOによってまとめられ、ホームページで公開されている。各国の企業・事業所を対象とした 調査の概要を、図表 III-1に整理した。 各国の労働時間を比較するために、企業・事業所調査を用いる際の課題として、以下の ことが挙げられる。 (ア)労働時間の定義が、国によって異なっている。日本、フランス、スウェーデンな どでは「実労働時間」(実際に労働した時間)が対象となっているが、英国、ドイ ツなどでは「支払労働時間」(賃金の支払い対象となる時間。実際に就業した時間 (実労働時間)以外に有給休暇等も含まれる)が対象となっているため、単純な 比較は難しい。

1 労働時間に関する国際統計と日本の統計の比較 特 …24 III. 我が国と欧州各国の労働時間の差(検討課題2) 1 労働時間に関する国際統計と日本の統計の比較

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III. 我が国と欧州各国の労働時間の差(検討課題 2)

1 労働時間に関する国際統計と日本の統計の比較

(特徴と比較に当たっての留意点)

本節では、我が国及び欧州各国において、労働時間を調査している統計を調べ、その特

徴を概観する。その上で、我が国と欧州の労働時間を比較する上で有用な統計をピックア

ップする。

1-1 欧米諸国及び日本における労働時間を計測している調査 我が国及び欧州各国の政府機関等によって、労働時間の調査が実施されている。労働に

関する調査は、大きく分けて、1)企業・事業所を対象に行う調査と2)個人・世帯を対

象に行う調査の 2種類がある。 さらに、2)個人・世帯を対象に行う調査については、(ア)労働者(失業者を含む)を

対象とした「労働力調査」や「就業構造基本調査」と、(イ)労働時間以外も含めた生活時

間全般を調査した「生活時間調査」の2種類が存在する。 1-1-1 企業・事業所を対象に行う調査

日本における「毎月勤労統計調査」のように、欧州各国では、企業・事業所を対象に、

産業別企業数、賃金、労働時間、出勤日数、労働者数等を把握している統計調査が存在す

る。 欧州各国の企業・事業所調査の調査概要、調査対象、調査項目等は、国際労働機関(ILO)によってまとめられ、ホームページで公開されている。各国の企業・事業所を対象とした

調査の概要を、図表 III-1に整理した。 各国の労働時間を比較するために、企業・事業所調査を用いる際の課題として、以下の

ことが挙げられる。 (ア)労働時間の定義が、国によって異なっている。日本、フランス、スウェーデンな

どでは「実労働時間」(実際に労働した時間)が対象となっているが、英国、ドイ

ツなどでは「支払労働時間」(賃金の支払い対象となる時間。実際に就業した時間

(実労働時間)以外に有給休暇等も含まれる)が対象となっているため、単純な

比較は難しい。

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(イ)企業・事業所が回答する形式であるため、不払い労働時間2が正確に反映されてい

ないおそれがある。 (ウ)対象産業が製造業等に限定されている国(英国、スウェーデン)があり、また従

業員規模が国によって異なることから、単純な比較が困難である。 (エ)雇用形態別に労働時間を見る場合、日本の調査では、男女合算の値しか得ること

ができない。また欧州の調査についても、WEBで公開されている情報を見る限り、スウェーデンでは同様に雇用形態別×性別のデータが得られない。さらにフラン

ス、ドイツでは、調査対象をフルタイム雇用者のみとしており、パートタイム雇

用者の情報を得ることができない。このように、雇用形態別×性別というカテゴ

リー別に労働時間の比較を行うのは困難である。 このように、各国の統計データの定義などに相違点が多いことから、国際比較のデータ

として用いることには多くの課題が残る。

2 労働政策研究・研修機構(2005)「日本の長時間労働・不払い労働時間の実態と実証分析」(労働政策研究報告書 No.22)は、不払い労働時間を「時間外労働手当の支給対象となる労働者の業務で、残業、早出、休日出勤、自宅での作業などとして行われた労働時間のうち、時間外労働手当が支給されなかった全ての

労働時間」と定義している。

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図表 III-1 各国の企業・事業所を対象とした調査の概要

日本 英国 フランス ドイツ

調査名 毎月勤労統計調査Short-Term (Monthly and Quarterly) EmploymentStatistics

Quartery survey on the economic activity andworking conditions of the labour force

Survey of Earnings in Industry and Commerce

調査担当機関 厚生労働省 Employment DepartmentMinistere de l'Emploi et de la FormationProfessionnelle

Federal Statistical Office (Statistisches Bundesamt),

調査対象地域

全国毎月統計:ブリテン島のみ四半期統計:全国

全国(ヨーロッパ内の領土) 全国

調査頻度(調査時期) 毎月 毎月及び毎四半期 毎四半期(1月、4月、7月、10月) 毎四半期(1月、4月、7月、10月)

労働時間の測定期間 1ヶ月間 特定の1週間 最初の1週間 1ヶ月間

調査対象(産業、従業員規模)・農林水産業、家庭従業、政府サービスを除く全産業・従業員5人以上を対象

・毎月統計:製造業のみ四半期統計:農業、建築、サービス業・従業員規模による区別はなし。

・農業、鉱業、公的機関、家事労働、大使館、国際機関を除く全産業・従業員11人以上

・工業(鉱業含む)、商業、金融、保険・対象企業の従業員規模は以下の通り-工業(鉱業除く):10人以上-鉱業:区別なし-商業、金融、保険:5人以上

労働時間の指標の定義

1か月の総実労働時間※所定の労働時間と所定外労働時間を別々に 集計。ただし食事時間、短時間休憩などは 除く

1か月の支払労働時間(以下の時間を問う) -1か月の規定の労働時間に満たない時間 (hours lost on short-time) -1か月の残業時間(overtime hours)

1週間の実労働時間(actual hours of work per week)※1か月の基礎労働時間(basic monthly hoursof work)も問う。

1か月の支払い労働時間(hours paid for)※実際に働いた時間、残業時間、病気休暇などの 働いてはいないが給与が支払われる時間を 含む。

雇用形態別のデータ・雇用形態で区分されたデータが入手可能。・性別で区分されたデータが入手可能。・雇用形態×性別のデータは得ることができない。

・フルタイム雇用者とパートタイム雇用者は別々に 集計される。・性別では区分されない

・フルタイム雇用者のみ・性別による区分は不明

・フルタイム雇用者のみ・性別で区分される。

オランダ スウェーデン スペイン

調査名 Annual Earnings SurveyWages and Employment in mining, quarrying andmanufacturing (Monthly)

Survey of Wages in Industry and theServices(Quarterly)

担当行政機関 Central Bureau of Statistics Statistics Sweden Instituto Nacional de Estadistica

調査対象地域

全国 全国 全国

調査頻度(調査時期) 10月 毎月 四半期

労働時間の測定期間 1ヶ月間(10月)及び1年間 1ヶ月間(不可能であれば、最低2週間) 特定の1カ月間

調査対象(産業、従業員規模)

・大使館、領事館、国際機関、家事労働は除く・従業員規模による区別はなし。

・鉱業、製造業・従業員5人以上を対象

・農林水産業、不動産業とそれに係るサービス、ボランティアは除く・従業員5人以上

労働時間の指標の定義 1週間の支払い労働時間(hours paid for per week)1か月の実労働時間(hours actually worked)※ 通常の労働時間と時間外労働時間は別々に集計)

1か月実労働時間(hours actually worked)※1か月の契約上の労働時間(the hourslaid down in the contract between the workerand the employer)も問う

雇用形態別のデータ・フルタイム雇用者とパートタイム雇用者は別々に集計される。・性別により区分される

・パートタイム労働者を含めている。・性別では区分されない

・フルタイム雇用者とパートタイム雇用者は別々に集計される。・性別による区分は、年に1度公表される。

※雇用形態別のデータは、インターネットで入手できる情報を対象としている。

出所:厚生労働省資料、ILOホームページ掲載情報より作成

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1-1-2 個人(世帯)を対象とした調査

個人・世帯を対象に行う調査については、(ア)労働者を対象とした「労働力調査」や「就業構造基本

調査」と、(イ)労働時間以外も含めた生活時間全般を調査した「生活時間調査」が存在する。 ただし、「労働力調査」及び「生活時間調査」が労働時間を直接記入する形式になっているのに対し、

「就業構造基本調査」は、数時間ごとに区分された選択肢から選択する形式となっており、労働時間の

実数は得られない。したがって、「就業構造基本調査」では労働時間の長さを正確に把握することは難し

いため、ここでは「労働力調査」と「生活時間調査」に焦点を当て、それぞれの特徴をみる。 (ア) 労働力調査

日本における「労働力調査」のような個人(世帯)を対象とした調査を概観する。同様の調査として

欧州各国では、Labour Force Surveyが実施されている。Labour Force Surveyは、EUROSTAT(欧州委員会統計局)によってガイドラインが策定されており、EU各国はそのガイドラインに準拠した調査を行っている。その概要は図表 III-2の通りである。 これらの調査は、企業・事業所を対象とした調査における 4 つの問題点をクリアしている。まず労働を行っている個人・世帯に直接問う形式の調査であるため、どの国でも原則として実労働時間のデータ

を得ることができる。また実労働時間のデータであることから、不払い労働時間も含んだデータがとら

れていると考えられる。さらに若干の違いはあるものの、対象とする個人が属する企業の産業はどの国

もほぼ全産業であり、また従業員規模も問われない。最後に、雇用形態別(日本では正規労働者とパー

トタイムを含む非正規労働者別、EUではフルタイムとパートタイム別)の労働時間を、それぞれ男女別に見ることができる。 調査時期については、Labour Force Surveyは、EU諸国は四半期(=13週間)調査、日本の調査は毎月調査である点で違いがある(スウェーデンは毎月調査であるが、四半期データも集計、公表されて

いる)。また、EU 諸国は同一四半期内で調査サンプルの割合が偏らないように、各週でほぼ同数の調査対象数を割り振って調査していることも特徴である3。一方で日本の労働力調査は毎月末の1週間のみで

ある。このことから、日本の調査は月内の労働時間の差異が反映されていない可能性、及び月末に休日

が含まれている場合の過小表記の可能性もある(反対に月末が多忙である場合の過大標記の可能性もあ

る)ことに注意を要する。また水野谷(2005)は注意点として、世帯員が回答する世帯調査であるため、不正確な労働時間が回答される可能性を指摘している4。 なお、これらの調査から把握できるのは労働時間の長さのみであり、「いつ働いたか」「どこで働いた

か」という情報までは入手できない。また、労働時間以外の生活時間(家事時間や余暇時間など)につ

いても調査はされていない。

3 このように年間を通じ、調査サンプルを均一に割り振って行う調査方法は、EU理事会規則(COUNCIL REGULATION (EC) No 577/98)により 1998年に規定された。その後、年次調査(春季のみ実施)を行っていた各国はこの規定に従い、従来の年次調査からの切り替えを行った(切り替えの時期は、各国によって異なる。ただし水野谷(2005)で採用されたドイツのデータについては、切り替え前のものであった。2009年時点では、P53に紹介した欧州各国の全てが、この規定に従って調査を実施している)。これにより、従来の調査における、調査時期が各国でまちまちであるという欠点は解消さ

れた。 4 水野谷武志 『雇用労働者の労働時間と生活時間』2005年 10月、御茶の水書房

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図表 III-2 各国の個人を対象とした労働調査の概要 日本 英国 フランス ドイツ

調査名 労働力調査 Labour Force Survey Labour Force Survey Labour Force Survey

調査担当機関 総務省統計局 Office for National StatisticsNational Institute of Statistics and Economic Studies(INSEE)

Federal Statistical Office (Statistisches Bundesamt)and State Statistical Offices (Statistische Landesamter).

調査対象地域 全国 全国 全国(ただし海外領は除く) 全国

調査頻度(調査時期) 毎月 毎月及び毎四半期 毎四半期(1月、4月、7月、10月) 毎四半期(1月、4月、7月、10月)

労働時間の測定期間毎月、月末の1週間(ただし12月は20~26日)

特定の週に集中しないように、調査時期を分散する。 特定の週に集中しないように、調査時期を分散する。 特定の週に集中しないように、調査時期を分散する。

調査対象(年齢、ステータス)

・15歳以上・3か月以上国内に居住している者・外国人含む(ただし大使館、海外の軍隊隊員は除く)

・16歳以上・軍隊員、学生、国営医療サービス従事者、病院 スタッフを含む。その他の公的施設の人員は除く。.

・15歳以上・施設収容者は、家庭とのつながりがないものは除く。

・15歳以上・調査時点で雇用されている者のみ

労働時間の指標の定義 ・実労働時間(平均週間就業時間)

・主労働の通常勤務時間(Hours usually worked in main job)・調査時の主労働、副労働の実労働時間(actual number of hours worked in the referenceweek in the main job and in the second job)

・主労働の通常勤務時間(Hours usually worked in main job)・調査時の主労働、副労働の実労働時間(actual number of hours worked in the referenceweek in the main job and in the second job)

・主労働の通常勤務時間(Hours usually worked in main job)・調査時の主労働、副労働の実労働時間(actual number of hours worked in the referenceweek in the main job and in the second job)

雇用形態別のデータ 雇用形態別×性別に集計したデータが入手可能。 雇用形態別×性別に集計したデータが入手可能。 雇用形態別×性別に集計したデータが入手可能。 雇用形態別×性別に集計したデータが入手可能。

オランダ スウェーデン スペイン

調査名 Labour Force Survey Labour Force Survey Labour Force Survey

担当行政機関 Central Bureau of Statistics Statistics Sweden National Institute of Statistics

調査対象地域 全国 全国 全国(セウタ、メリリャを含む)

調査頻度(調査時期) 毎四半期 毎月 毎四半期(1月、4月、7月、10月)

労働時間の測定期間 特定の週に集中しないように、調査時期を分散する。 特定の週に集中しないように、調査時期を分散する。 特定の週に集中しないように、調査時期を分散する。

調査対象(年齢、ステータス)

・15歳以上・15~74歳・市民登録を受けた者・ボランティア、軍隊隊員を含む

・16歳以上・ほぼ通年、国内1箇所に居住する、国民もしくは永住者

労働時間の指標の定義

・主労働の通常勤務時間(Hours usually worked in main job)・調査時の主労働、副労働の実労働時間(actual number of hours worked in the referenceweek in the main job and in the second job)

・主労働の通常勤務時間(Hours usually worked in main job)・調査時の主労働、副労働の実労働時間(actual number of hours worked in the referenceweek in the main job and in the second job)

・主労働の通常勤務時間(Hours usually worked in main job)・調査時の主労働、副労働の実労働時間(actual number of hours worked in the referenceweek in the main job and in the second job)

雇用形態別のデータ 雇用形態別×性別に集計したデータが入手可能。 雇用形態別×性別に集計したデータが入手可能。 雇用形態別×性別に集計したデータが入手可能。

出所:ILOホームページ掲載情報、EUROSTATガイドラインより作成

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※参考:企業・事業所調査と家計調査の労働時間(週平均時間、フルタイム雇用者、男女計)

企業調査(2006年)

注:製造業のみ

労働力調査(2006年度第2期)

スウェーデン 37.7 41.1フィンランド - 40.5ノルウェー - 39.5スペイン - 42.2フランス 37.1 41.1イタリア - 41.3ドイツ 37.9 41.7イギリス 40.7 43.1日本(※) 38.7 46.8

※企業調査:対象は一般労働者

労働力調査:対象は役員を除く雇用者のうち、正規の職員・従業員

出所

企業調査:ILO LABORSTAホームページ(http://laborsta.ilo.org/)

*スウェーデン、フランス、日本は実労働時間、ドイツ、イギリスは支払労働時間。

*スウェーデンはパートタイムを含む可能性あり

*フランスは第4四半期の値

労働力調査:日本は総務省統計局「労働力調査」、その他の国はEUROSTAT "Labour Force Survey"の

データベース

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(イ) 生活時間調査

日本及び欧州各国においては、睡眠時間や余暇時間等を含む「生活時間」に関する調査も実施されて

いる。日本国内の生活時間調査には、政府が実施している調査として、総務省統計局が実施している「社

会生活基本調査」がある。一方、欧州においては、EUROSTATが生活時間調査について、2000年に統一調査方法に関するガイドラインを発表しており、そのガイドラインに基づいた調査が各国で実施され

ている(欧州統一生活時間調査(Harmonised European Time Use Survey:HETUS))。 また、日本においても、平成 13年の「社会生活基本調査」より「欧州統一生活時間調査」との比較可

能性を意識した調査設計がなされており、国際比較に向けた環境が整備されつつある。 各国の調査概要は図表 III-3及び図表 III-4の通りである。

●社会生活基本調査(日本) ・HPアドレス:http://www.stat.go.jp/data/shakai/2006/index.htm (平成 18年度版) ・概要: 総務省統計局が実施している調査。昭和 51 年度(1976 年度)に第1回調査を実施、以後5年に1度実施している。最新の調査は平成 18年度(2006年度)に実施された。

・入手可能なデータ: WEB 上では、直近3回分(平成 8 年度、平成 13 年度、平成 18 年度)の、集計結果が入手可能。

●欧州統一生活時間調査(Harmonised European Time Use Survey:HETUS) ・HPアドレス:https://www.h2.scb.se/tus/tus/default.htm ・概要: ヨーロッパ各国の統計局により集計された生活時間調査を、欧州委員会統計局(EUROSTAT)が中心となり、比較可能な形式のデータとして構築。 ・入手可能なデータ: 簡単な集計データは、EUROSTATのリンク先から入手可能。また登録されたユーザーに対しては、欧州 19カ国の生活時間を比較可能な統計表を算出・作成するアプリケーション・システムが提供されている。

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生活時間調査も、(ア)の労働力調査と同じく、個人・世帯に直接問う形式の調査であるため、実労

働時間のデータを得ることができる、不払い労働時間や持ち帰り残業時間も含んだデータがとられて

いる、個人が属する企業の産業や従業員規模に制限がない、就業形態別×性別の労働時間が公表され

ているといった特徴があり、企業・事業所を対象とした調査が持つ 4つの問題点をクリアしている。 調査時期については、欧州各国では、ガイドラインに基づき、約 1年間をかけて調査するのに対し、日本の調査は 10月の第 3週に調査を行うという点で違いがみられる(なお、日本の調査時期は、繁忙・閑散のブレが少ないという理由から 10 月第 3 週が調査期間として選ばれている)。また、欧州各国では Labour Force Surveyと同様、調査サンプルの割合が偏らないように、調査対象数を調査期間内でほぼ均等に割り振って調査を行っている。 調査方法は、1~3日のダイアリー型調査であり、労働時間以外を含め、(睡眠)~起床~就寝まで、

1日の行動を全て記載する調査であるのが特徴である。すなわち、労働に入る前後の連続した行動(例えば出勤・退勤の移動時間など)も記載するため、労働時間の長さ以外にも、睡眠時間や余暇時間な

どを知ることができる。さらに、労働時間を含む各時間について「いつ、どこで」その活動をしてい

たかを詳細に知ることができることも特徴である。この点で、労働力調査よりも多くの情報・示唆を

得ることが期待できる。ただし、黒田(2009)は、(ア)15分未満の行動については把握できない、(イ)

同時点に 2つ以上の行動を行う場合は主として行った行動のみが計測される、(ウ)15分ごとの行動を

記入する細かな調査のため忙しい人の回答が得られにくい可能性がある、等を指摘している5。 さらに、EU諸国の統計については、登録されたユーザーに対しては、欧州 19カ国の生活時間を比較可能な統計表を算出・作成するアプリケーション・システムが提供されており、より詳細な分析環

境が整っていることも特徴といえる。

5 黒田祥子『日本人の労働時間は減少したか?―― 1976-2006年タイムユーズ・サーベイを用いた 労働時間・余暇時間の計測 ――』ISS Discussion Paper Series, 2009年 7月

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図表 III-3 各国の個人(世帯)を対象とした生活時間調査の概要

日本 英国 フランス ドイツ

調査名 社会生活基本調査 Harmonised European Time Use Survey Harmonised European Time Use Survey Harmonised European Time Use Survey

調査担当機関 総務省統計局 Office for National StatisticsNational Institute of Statistics and Economic Studies(INSEE)

Federal Statistical Office Germany

調査対象地域 全国 全国 全国 全国

調査頻度(調査時期) 2006年10月 2000年6月~2001年9月 1998年2月~1999年2月 2001年4月~2002年3月

労働時間の測定期間 連続する2日(調査区ごとに指定) 2日(平日と週末の各1日) 1日 3日(平日2日と土曜日又は日曜日)

調査対象(年齢、ステータス)

10歳以上※所属企業の業種、従業員規模などの制限はない。

8歳以上※所属企業の業種、従業員規模などの制限はない。

15歳以上※所属企業の業種、従業員規模などの制限はない。

10歳以上※所属企業の業種、従業員規模などの制限はない。

労働時間の指標の定義対象調査日の実労働時間(Time used forWork)

対象調査日の実労働時間(Time used forWork)

対象調査日の実労働時間(Time used forWork)

対象調査日の実労働時間(Time used forWork)

雇用形態別のデータ 雇用形態別×性別に集計したデータが入手可能。 雇用形態別×性別に集計したデータが入手可能。 雇用形態別×性別に集計したデータが入手可能。 雇用形態別×性別に集計したデータが入手可能。

オランダ スウェーデン スペイン

調査名 Harmonised European Time Use Survey Harmonised European Time Use Survey Harmonised European Time Use Survey

担当行政機関 Central Bureau of Statistics Statistics Sweden Instituto Nacional de Estadistica

調査対象地域 全国 全国 全国

調査頻度(調査時期) 2001年1月~2001年12月 2000年10月~2001年9月 2002年9月~2003年9月

労働時間の測定期間 平日の1日 不明 1日

調査対象(年齢、ステータス)

12歳以上※所属企業の業種、従業員規模などの制限はない。

20~84歳※所属企業の業種、従業員規模などの制限はない。

10歳以上※所属企業の業種、従業員規模などの制限はない。

労働時間の指標対象調査日の実労働時間(Time used forWork)

対象調査日の実労働時間(Time used forWork)

対象調査日の実労働時間(Time used forWork)

雇用形態別のデータ 雇用形態別×性別に集計したデータが入手可能。 雇用形態別×性別に集計したデータが入手可能。 雇用形態別×性別に集計したデータが入手可能。

出所:EUROSTAT公表資料及び総務省統計局資料より作成

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図表 III-4 日本、フランス、英国、ドイツの個人(世帯)向け生活時間調査の詳細(研究会資料)

日本 フランス 英国 ドイツ

調査名 平成18年社会生活基本調査生活時間調査1998-1999(Enquete Emploi du Temps 1998-1999)

全国生活時間調査(National Survey of Time Use)

生活時間調査2001/2002(2001/2002 Time Use Survey)

実施組織 総務省統計局国立統計経済研究所(INSEE: Institut National de la Statistique et desEtudes Economiques)

国家統計局 (ONS: Office for NationalStatistics)ただし,実査は,民間調査会社(Ipsos-RSL)なお,資金を拠出したのは,国家統計局,経済社会研究審議

連邦統計局(Federal Statistical Office)

目的・背景等

・国民の生活時間の配分及び自由時間等における主な活動(インターネットの利用,学習・研究,スポーツ,趣味・娯楽,ボランティア活動,旅行・行楽)について調査し,国民の社会生活の実態を明らかにすることにより,各種行政施策の基礎資料を得ることを目的としている。・1976年から5年ごとに行われており、2006年は7回目にあたる。次回は2011年。

・生活時間調査1998-1999は,INSEEが実施する生活時間調査の4回目に当たる。(過去3回は,1965年~66年,1974年~75年,1985年~86年に実施。次回は2009年に予定。)・調査の費用は,国立統計経済研究所(INSEE)と労働・団結省調査統計研究部(DARES:Direction de l'Animation, de la Recherche et desEtudes Statistiques du Ministere du travail et dela solidarite)と総合計画委員会CGP(Commissariat General au Plan)が負担。

・調査の主な目的は,イギリスの人によって過ごされる時間を様々な行動に関して測定すること。・この調査は,イギリスで行われた大規模なこの種の調査としては,初めてのもの。・ヨーロッパ統一生活時間調査の一貫として実施された他のヨーロッパ諸国の調査と比較可能なように設計された調査である。

・人口グループと世帯のタイプごとの時間利用の構造を明らかにすること。特に女性と家族に関する事項について。・国民経済計算の世帯の生産に関するサテライト勘定を構築することを可能にすること。・人々の現在の時間利用の状況を明らかにするのみでなく,1991年から1992年に行った調査の結果との比較可能性に対する要請や,ヨーロッパ内での比較可能性の向上をめざしたユーロスタットによる方法論的要請にもこたえられるように調査を設計した。

調査期間2006年10月14日(土)~2001年10月22日(日)(9日間)

1998年2月~1999年2月(8月1日~16日及び12月21日~1月4日は除く)

2000年6月から12か月間 2001年4月~2002年3月

調査対象 10歳以上人口・15歳以上人口・休暇を取っている人は,休暇を家で過ごしている人のみを対象とした。

8歳以上人口(ただし,個人(private)世帯に住む人のみ。)

10歳以上人口

データの収集方法・自計式(記入者が,調査票に記入。)・調査員が調査票の配布および取集を行う。

・自計式(記入者が,調査票に記入。)・調査員が調査世帯を2回訪問する。最初の訪問では,調査世帯に日誌の記入を依頼するとともに,世帯や個人の属性情報を調査票に記入する。2度目の訪問は,日誌への記入日後のできるだけ早い日に行われ,記入済みの調査票を受け取る。

自計式(記入者が,調査票に記入。) 自計式(記入者が,調査票に記入。)

調査票

・調査票A(プリコード方式)・調査票B(アフターコード方式)・調査票A、Bともに個人向け、世帯向けのフェイス事項あり、Aでは生活行動についても調査している。

・調査票は,EUROSTATにより勧告されたものに準拠。・世帯票・個人票・日誌・週間仕事記入票

・世帯調査票:主に背景情報と属性情報を得るためのもの。・個人調査票:主に背景情報と属性情報を得るためのもの。・日誌(大人用及び子供用):一人の世帯員が,2日分の調査票に記入。日誌には,主な行動と二次的(同時)行動,場所,一緒にいた人を記入してもらった。・一週間の仕事と教育時間シート:その週の仕事とフルタイムの教育を記入してもらった。

・世帯調査票・個人調査票・日誌

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34

日本 フランス 英国 ドイツ

子供用調査票 子供用の調査票はなし。 子供用調査票はない模様。8歳から13歳の子供について,子供用調査票を使用。

標本設計

・層化2段抽出法による。・第1次抽出単位は,国勢調査の調査区。人口による確率比例抽出法により調査区を抽出。・第2次抽出単位は,世帯。各調査区から無作為に12世帯を抽出。その世帯にふだん居住する10歳以上の世帯員が対象。・調査区を無作為に8つのグループに分け、グループごとに連続する2日間を調査日とした。・標本の各曜日への配分は,結果表章の精度を考慮して,平日:土曜日:日曜日=6:5:5とした。

・調査日は,各季節・各曜日に渡るように年間を通じて配分されている。・ただし,年間のうち,8月の上旬2週間とクリスマス休暇の15日間の合計4週間は除外。

標本の第一次抽出単位は,郵便番号区から成る。これらの郵便区内では,人口密度と世帯主の社会経済グループが考慮された。(各地区から1世帯が無作為に抽出された。)抽出された世帯では,8歳以上の世帯員が個人調査票,2日分の日誌,一週間の仕事と教育時間シートに記入することを求められた。平日と週末について,標本の分布を等しくする必要であったので,調査世帯の世帯員には,無作為に選ばれた調査票の記入日(2日分)が与えられた。ただし,その2日の間隔は最小になるようにされた。(平日と週末の各1日)

・抽出された世帯に居住する10歳以上の全ての世帯員が調査の対象。

標本数調査票A:66344調査区,796,128世帯,約18万人調査票B:352調査区,4224世帯,約1万人

12,000戸,10,330世帯。(調査に回答したのは,8,186世帯の15,441人)

標本数は,10,500世帯に住む14,400人。日誌の数は,一人の人が2日分を記入するので,28,800(14,400×2)。ただし,当初から24,000の日誌を得ることを目標としていた。

約5,000世帯、12,600人から3日間ずつ行動記録(37,700部)

調査日数(日誌を書く日)

連続する2日(調査区ごとに指定) 1日 2日(平日と週末の各1日) 3日(平日2日と土曜日又は日曜日)

1日の測り方 午前0時から翌日午前0時まで前日の午後9時から当日午後12時までについて調査票に記入してもらうが,実際の統計作成に使用するのは,午前0時から午後12時まで。

午前4時から翌日午前4時までを1日としている。

時間単位の記入 15分 10分 10分(大人用調査票,子供用調査票ともに。) 10分

行動分類

調査票A:20分類調査票B:大6、中22、小85分類(2001年調査は小のみ62分類)(ユーロスタットの行動分類との整合性を考慮

している)

大分類9,中分類32,小分類139大分類10,中分類33,小分類179,細分類261。(ユーロスタットのガイドラインに準拠。ただし,全く同一ではない。)

行動分類格付け方法

調査票A:回答者が自分で調査票に記載された行動分類を選択する(プリコード方式)調査票B:回答者は調査票に行動を言葉で記入し,行動分類への格付は集計の際に行う(アフターコード方式)

自動格付により行った。(アフターコード方式)

アフターコード方式 アフターコード方式

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35

日本 フランス 英国 ドイツ

同時行動 調査票Bのみ同時行動も把握している。 同時行動も把握している。大人については,同時行動を把握。子供(8~13歳)については,把握せず。

同時行動も把握している。

行動の場所<調査票Bのみ>自宅 /学校・職場 /移動中/その他(2001年は移動中・その他は1分類)

場所/移動の区分として予め5分類を用意し,回答者がそれを選択する。

行動の場所も把握。(大人及び子供用調査票。)場所についてもアフターコード方式。

行動の場所と移動について,主な行動に関連して把握している。

一緒にいた人

<調査票A>一人で / 家族 / 学校・職場の人 / その他の人<調査票B>一人で / 父 / 母 / 子 / 配偶者 / その他の家族 / 学校・職場・その他の人

・以下の選択肢から回答者が選択(チェック)する一人で / 世帯員の人と / よく知っている人と/ その他の人と

(該当する選択肢をチェックする)(大人用調査票)一人で又は知らない人と / 一緒に住んでいる9歳以下の子供と / 一緒に住んでいる10歳から14歳の子供と / 他の世帯員の人と / 他の知人と(子供[8-13歳]用調査票)一人で又は知らない人と / 親と / 世帯内の他の人と / 他の知人と

・以下の選択肢から回答者が選択(チェック)する10歳未満の子供と / 配偶者・パートナーと /他の世帯員の人と / 他の知っている人と

回答率約98%(世帯単位での回答率。当初標本から回答が得られない場合,代替標本を抽出している。)

世帯回答率は,79.2%。(個人回答率は,88.3%:未確認情報)。

回答率は,45%。標本数10,500世帯のうち,6,500世帯が回答。これらの世帯に住む14,400人のうち,11,700人が個人調査票に記入して回答。

ウェイト付けの方法男女・年齢階級別のベンチマーク人口に合致するようにウェイトを調整している。

・非回答分を補正するため,ウェイトを調整している。

・非回答分を補正するため,ウェイトを調整している。・補正の方法としては,男女,年齢,地域ごとに,母集団に合致するよう補正。・各季節の結果が正しく全体を代表するよう修正するためのウェイトも使用。

備考・調査票B(アフターコード方式)による調査は,2001年調査が初めて。

・生活時間記入の単位は,従前の調査では,5分としていたが,ヨーロッパ統一時間調査に合わせて10分とした。・従前の調査では,抽出された世帯から調査対象者を1名無作為に抽出していたが,今回の調査では,抽出された世帯の15歳以上の人全てを調査した。・従前の調査では,生活行動分類の格付は,人手により行っていた。

・ドイツ連邦統計局は,1991年から1992年にかけて初めて生活時間調査を行った。・2001年から2002年にかけて行った生活時間調査は,2回目。・1991年から1992年にかけて行った調査では,12歳以上を対象とし,連続する2日について調査していた。(時間利用の把握の単位は5分)

出所:総務省統計局資料より作成

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【参考】

上記で挙げた調査以外にも、下記のような生活時間調査が行われている。

1)欧州各国の調査 ●多国間生活時間研究(The Multinational Time Use Study:MTUS) ・HPアドレス:http://www.timeuse.org/mtus/ ・概要: 国際的な生活時間研究の第一人者である Gershunyによって、1980年代はじめに英国のエセッ クス大学・社会経済研究所で始められた、欧州各国や米国等の生活時間に関する研究を行うプ ロジェクト。2006年からはオックスフォード大学・生活時間研究センター(Centre for Time Use Research: CTUR)に引き継がれ、研究が続行されている。

・入手可能なデータ: 分析結果や論文は、アカデミックな研究を行っている研究者の申請によってのみ入手可能。分 析に使用したデータは EUROSTATにリンクされている。

2)日本の調査 ●NHK国民生活時間調査(NHK放送文化研究所) ・HPアドレス:http://www.nhk.or.jp/bunken/research/life/life_20060210.pdf ・概要: 上掲の社会生活基本調査とは別に、NHK放送文化研究所が独自に実施する調査。

・入手可能なデータ: 2005年度調査の結果報告書がホームページより入手可能。

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1-2 日本及び欧州各国での比較に用いる調査の検討 国際的に、全て統一された基準によって労働時間を計る調査は存在しない。そこでまず本研究のため

に、上記のどの調査を用いて労働時間を比較分析するのが適当かを検討する必要がある。なお、本研究

の中心テーマはワーク・ライフ・バランスであり、中でもフルタイム雇用者の働き方を中心に研究を行

う。この点を考慮して、使用する調査を検討する。 下記に、それぞれの調査のメリット・デメリットをまとめた(欧州は、英仏独の 3カ国を抽出し比較)。

図表 III-5 それぞれの調査の特徴(日本、イギリス、フランス、ドイツ)

日本 イギリス フランス ドイツ 日本 イギリス フランス ドイツ 日本 イギリス フランス ドイツ

残業(支払)

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

× × × × × × × × ○ ○ ○ ○

× × × × × × × × ○ ○ ○ ○

×

○ ○ ○

×

不払い労働

時間 × × ○ ○

×

× ○ ○ ○

× ○

×

実労働

時間

実労働

時間

実労働

時間

支払労働

時間

支払労働

時間

実労働

時間

実労働

時間

実労働

時間

実労働

時間

無し

ワーク・ライフ・バラン

スの観点からのフルタイ

ム雇用者の国際比較の適

用可能性

労働時間に含まれる内容が各国バラバラで

ある。また、業種や事業所規模の制限等も

あり、単純な比較は難しい。

労働時間の比較は可能であると考えられる

が、労働以外の時間を知ることができず、

また24時間のうちいつ働いているかを見る

ことはできない。

調査時期や調査対象数の違いは存在する

が、ほぼ各国で同じ条件で労働時間が抽出

できるほか、労働時間以外も抽出可能であ

る。また、「いつ働いているか」を知ることができるため、ワーク・ライフ・バラン

スの観点からの比較には相対的に適当であ

ると思われる。

無し 無し 無し 無し

いつ、どこで働いていた

かを知ることは可能か?

無し

× ×

実労働

時間

実労働

時間

無し

× × ×

実労働

時間

無し 無し 無し 無し 無し

労働時間の定義

以下の時間

は、労働時

間に含まれ

るか?

有給休暇

× ○

無し 無し

×※

無し

事業所規模の制限有り 無し 有り 有り

無し

労働時間以外の時間配分

は抽出可能か?

業種の制限ほぼ無し 有り ほぼ無し 有り

× × ×フルタイム×性別のデータは入手可能か? ○ ○○

※ ○ ○ ○ ○○※

※日本の調査において、「毎月勤労統計調査」では一般労働者と

パートタイム労働者、「労働力調査」及び「生活時間調査」では、正規

労働者と非正規労働者という区分になっている。

その他の特徴

・各国が独自の調査基準を策定し、調査を

行っている。

・調査頻度が多い。

・EU各国では、EUROSTATが労働力調査のガ

イドラインを策定しているため、各国間で

の労働時間の比較が可能。

・調査頻度が多い。

・日本の調査は月末の1週間のみを調査対

象としており、月内の労働時間の差を反映していない可能性がある。また月末に休日

があった際には、労働時間が短く集計され

る可能性がある。

・EU各国では、EUROSTATが労働力調査のガ

イドラインを策定しているため、各国間での労働時間の比較が可能。また日本の「社

会基本調査」は欧州のHETUSにおける結果と

比較ができるように設計されている。

・欧州統一生活基本調査は、ウェブ上で集計表をカスタマイズ、作成できるデータ

ベースが利用可能。

企業・事業所を対象とした労働時間調査 個人を対象とした労働時間調査 個人を対象とした生活時間調査

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先に述べたように、企業・事業所を対象とした調査は、各国によって得られるデータの定義が異なる

こと、不払い労働時間が正確に反映されていないおそれがあること、対象産業が限定されている国があ

り、また対象となる企業の従業員規模が国によって異なること、日本の調査では性別・雇用形態別の労

働時間を得ることはできないことなど、労働時間の国際比較を行うには多くの課題が残るといえる。 次に、個人(世帯)を対象とした労働力調査であるが、これらは企業・事業所を対象とした調査にお

ける問題点をクリアしており、かつ欧州各国での調査仕様の統一が図られてきているなど「労働時間の

長さ」の比較については、より同一の基準での比較が可能となっている。ただし、本研究の検討課題に

即して考えた場合には、「労働時間の長さ」以外の情報が入手できないため、「働き方(いつ、どこで働

いているか)」や「労働時間以外の時間の過ごし方」に関する国際比較はできないという課題は残る。 最後に社会生活基本調査(EU各国における生活時間調査)では、労働力調査と同様に企業・事業所調査の4つの課題はクリアされており、同一性の高い基準での比較が可能となっている。特に、欧州各国

の生活時間調査は EUROSTAT によって策定された統一的ガイドラインに従って実施されており、我が国の社会生活基本調査も、平成 13年度調査より、行動項目分類を欧州統一生活時間調査の項目と一致させる等、欧州との比較を意識した調査設計が行われている。このため、国際比較した際の高い整合性が

期待できる。 また、ワーク・ライフ・バランスに関する研究を行うにあたっては、「働き方(どのような時間帯に、

どのような場所で働いているのか)」や、「労働以外の生活時間の過ごし方」といった項目を広くみなけ

れば、「バランス」面の把握は難しいが、生活時間調査ではこれらの比較も可能である。加えて、欧州統

一生活時間調査では、分析者がアプリケーション・システムを用い、カスタマイズ集計を行うことが可

能というメリットもある。 上記のような長所を備えていることから、本研究においては、日欧の生活時間調査を用いた比較分析

を行うことによって、労働供給側からとった労働時間の比較を行うとともに、属性による違い、労働時

間以外の生活時間の内容比較などにより労働供給側の意識・行動の違いに迫る。 なお、労働時間の国際比較を行う際には、どの期間(1日、1月、1年など)での比較を行うのかということも重要な視点である。本研究の関心事項は、労働時間の長短の比較のみならず、雇用者の 1 日の勤務における労働時間の使い方や生活時間とのバランスの国際比較にある。また月単位や年単位など長

期間の労働時間の比較には、休日・祝日をどのように扱うかといった課題もある。そこで、本研究では、

1日(特に平日・勤務日)の労働時間・生活時間に焦点をあてて比較を行うこととする。日欧の労働者が、平日の勤務日にどのような時間の使い方を行っているかを詳細にみていく。 平成 21年度研究においては、日本の社会生活基本調査については、公表されているデータの範囲で分析を行う。欧州統一生活時間調査については、前述のアプリケーション・システムを用いたカスタマイ

ズ集計での分析を行う。平成 22年度研究においては、社会生活基本調査の個票データでの分析と、欧州統一生活時間調査結果による比較を行うこととする。

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2 社会生活基本調査と欧州統一生活基本調査の公表データを用いた分析

分析の前に、各国の生活時間調査の概要を見ていく。欧州統一生活時間調査で公表されている各

国の生活時間調査及び日本における社会生活基本調査の調査時期や対象、回収サンプル数、

EUROSTAT研究論文のそれぞれの対象国(欧州各国のみ)は以下の通りである。

図表 III-6 生活時間調査の概要 ベルギー デンマーク フランス オランダ ノルウェー ポルトガル フィンランド スウェーデン 英国 エストニア

1998年12月~

2000年2月

2001年3月、4月、9月、10月

1998年2月~

1999年2月

2001年1月~

2001年12月

2000年2月~

2001年2月

1999年9月、10月

1999年3月~

2000年3月

2000年10月~

2001年9月

2000年6月~

2001年9月

1999年4月~

2000年3月

12~95歳 16~74歳 15歳以上 12歳以上 9~79歳 15歳以上 10歳以上 20~84歳 8歳以上 10歳以上

8,382 2,739 15,441 5,717 3,211 8,133 5,332 3,998 10,366 5,728

1.EUROSTAT(2003a) ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

2.EUROSTAT(2004) ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

3.EUROSTAT(2005) ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

4.EUROSTAT(2006)

ハンガリー ルーマニア スロベニア ドイツ スペイン イタリア ラトビア リトアニア ポーランド 日本

1999年9月~

2000年9月

2000年8月、9月

2000年4月~

2001年3月

2001年4月~

2002年3月

2002年9月~

2003年9月

2002年4月~

2003年3月

2003年2月~8月&

2003年10月~11月

2003年1月~

2003年12月

2003年6月~

2004年5月2006年10月

15~84歳 10歳以上 10歳以上 10歳以上 10歳以上 3歳以上 10歳以上 10歳以上 15歳以上 10歳以上

10,792 17,751 6,190 12,655 46,774 55,760 3,804 4,768 20,264

調査表A:351,202調査表B:18,291

1.EUROSTAT(2003a) ○ ○ ○

2.EUROSTAT(2004) ○ ○ ○

3.EUROSTAT(2005) ○ ○ ○

4.EUROSTAT(2006) △※2 △※2 ○ ○ ○

調査時期

調査対象年齢

回収サンプル数

対象国※1

調査時期

調査対象年齢

回収サンプル数

対象国※1

※1:各研究論文の正式名称は以下の通り ・EUROSTAT(2003a):Time use at different stages of life: Results from 13 European countries.

・EUROSTAT(2004):How European spend their time everyday life of women and men.

・EUROSTAT(2005):

Comparable Time Use Statistics: National tables from 10 European countries.

・EUROSTAT(2006):

Comparable Time Use Statistics: Main results for Spain, Italy, Latvia, Lithuania and Poland.

※2:スペイン、イタリアは雇用別、生活形態別等の詳細なデータは公表されていない。

※3:日本は、直近年度の H18年度調査を対象とした。

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40

我が国の労働時間は欧州各国と比べて長いのか、また、長いとすれば、それはどのような理由に

よるものであるのかを把握するため、社会生活基本調査と、欧州統一生活時間調査のデータを比較

する。 ここでは、主な雇用形態であるフルタイム雇用者(正規雇用者)について、我が国と欧州各国の労働時間を比較することとする。

2-1 日欧の生活時間項目の設定

欧州統一生活時間調査における生活時間の分類項目は、以下のとおりとなっている。

図表 III-7 欧州生活時間調査の生活時間分類項目(大分類/小分類)

大分類Personal care TOTAL(パーソナルケア計)

Sleep(睡眠)

Eating(食事)

Other personal care(その他のパーソナルケア)

Employment TOTAL(労働計)

Main and second job(主業・副業)

Activities related to employment(労働に関連する行動)

Study TOTAL(学習計)

School and university(学校・大学)

Homework(宿題)

Freetime study(自由学習*1)

Domestic TOTALFood preparation(食事の準備)

Dish washing(皿洗いや食卓の清拭など)

Cleaning dwelling(掃除・ゴミの分別など)

(家事計)Other household upkeep(その他家具の操作*2)

Laundry(洗濯)

Ironing(アイロンがけ、服を畳むなど)

Handicraft(手芸)

Gardening(ガーデニング、庭いじり)

Tending domestic animals(家畜の世話)

Caring for pets(ペットの世話)

Walking the dog(犬の散歩)

Construction and repairs(建設・修理・補修)

Shopping and services(買い物やサービスの利用)

Physical care, supervision of child(子どもの世話)

Teaching, reading, talking with child(子どもへの教育・読み聞かせ・会話)

Other domestic work(その他の家事)

Leisure TOTALOrganisational work(ボランティア活動)

Informal help to other households(他の家庭への支援・手伝い)

Participatory activities(無料または少額参加費用の活動*3)

(レジャー計) Visits and feasts(友人宅等への訪問、食事会、冠婚葬祭)

Other social life(その他の社会生活)

Entertainment and culture(エンタテインメント・カルチャー*4)

Resting(休息)

Walking and hiking(散歩やハイキング)

Other sports, outdoor activities(その他スポーツ・野外活動)

Computer and video games(コンピュータの使用・ゲーム)

Other computing(その他のコンピュータ使用*5)

Other hobbies and games(その他の趣味・ゲーム)

Reading books(読書)

Other reading(その他の読み物*6)

TV and video(テレビ・ビデオ鑑賞)

Radio and music(ラジオ・音楽聴取)

Unspecified leisure(その他のレジャー)

Travel TOTALTravel to/from work(出勤・退勤)

Travel related to study(通学)

Travel related to shopping(買い物に関する移動)

(移動計) Transporting a child(子どもの送迎)

Other domestic travel(その他家事に関する移動)

Travel related to leisure(レジャーに関する移動)

Unspecified travel(その他の移動)

Unspecified time use(その他・不明)

Unspecified time use(不明)

*5 労働外のコンピュータによる作業などが例示されている*6 カタログの閲覧や手紙を読むことがなどが例示されている

小分類

*1 語学教室や裁縫教室などが例示されている*2 扉を施錠する、やカーテンを閉める、などが例示されている*3 政治集会や宗教的行動(教会でのお祈り)などが例示されている*4 映画・演劇・スポーツ鑑賞、図書館などが例示されている

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41

なお、我が国社会生活基本調査と、欧州各国生活時間調査の比較にあたって、生活項目分類の対

応は、今回の集計にあたっては以下のとおりとした。 図表 III-8 欧州各国生活時間調査と社会生活基本調査の生活項目の対応(大分類)

(欧州)Personal care TOTAL(パーソナルケア計)

睡 眠身の回り

の 用 事食 事

Employment TOTAL(労働計)

仕 事

Study TOTAL(学習計)

学 業

Domestic TOTAL(家事計)

家 事 介護・看護 育 児 買い物

テ レ ビ・ラ ジ オ・新聞・雑誌

休 養・くつろぎ

学習・研究(学業以外)

趣味・娯楽

スポーツボランティア活動・社会参加活動

交 際・付き合い

受診・療養

Travel TOTAL(移動計)

通勤・通学移 動

(通勤・通学を除く)

Unspecified time use(その他・不明)

その他

Leisure TOTAL(レジャー計)

(日本)

※欧州統一生活時間調査においては、通勤・通学時間が「Travel(移動)」として扱われるため、注意が必要である。 なお、欧州統一生活時間調査による集計では、25票未満の母集団を対象とした集計は無効となるため、出力されない。 ※※参考として、小分類ベースでの対応を行った生活時間(平均時間)を、参考資料として示す。

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42

また、本調査結果をみるのにあたっては、以下のような点に注意を要する。 食事について 昼食については、「Eating(食事)」を主行動としたうえで、「Activities related to

employment(労働関連行動)」を副行動(仕事の昼休み時の食事の場合)とする。但し、仕事中の coffee and other breaks(小休憩)は、「Main and second job(主業・副業」に含むとされている。そのため、仕事の昼休み時の食事は、その摂り

方により大分類「Personal care total(パーソナルケア計)」とするか、大分類「Employment total(労働計)」とするか、扱いに差が生じる。

労働について 「Employment total(労働計)」には、「Activities Related To Employment(労働関連行動)」を含む。これは、Employment(労働)に関連した行動のうち、実労働でない行動が該当する。

日本のデータ全般

について 社会生活基本調査には、調査票 A・調査票 Bの 2種類の調査があるが、ここでは平成 18年調査票 Aによる集計結果を示す。これはサンプル数が多く、信頼性がより高い数値であるためである。 なお、本報告においては、総務省統計局が集計を公表しているもののみを示す。

そのため、比較にあたり欧州各国のデータと条件が異なる場合があり、注釈にて

表記している。 ※参考資料に示す小分類による集計表は、データの形式上調査票 Bの集計表を用いている。

欧州の集計対象国

について 欧州統一生活時間調査の集計システムでは 15カ国のデータの集計が可能であるが、本研究においては、このうち北欧 3カ国(スウェーデン、フィンランド、ノルウェー)、西欧 5カ国(スペイン、フランス、イタリア、ドイツ、イギリス)の8カ国の、20-74歳の回答者の回答を集計対象とした。

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43

2-2 日欧生活時間の概観 はじめに、日欧それぞれの生活時間を比較する。特に労働時間について着目し、日本の労働時間が

欧州と比べて長いといえるのか確認する。

2-2-1 生活時間(週平均)

フルタイム雇用者(日本については「正規雇用者」)について、休日や勤務日でない日も含めた、週

平均の生活時間ついてみると、日本の労働時間は男性で 7時間 30分、女性で 6時間 25分となっている。 欧州各国についてみると、男性の労働時間は、フィンランド、スペイン、イタリアの 3カ国で 6時

間を超えているものの、その他の国では 6時間未満となっている。女性の労働時間については、フィンランド、スペイン、イタリア、イギリスの 4カ国で 5時間を僅かに上回っているが、その他の国では 5時間未満となっている。 日本の労働時間は、欧州の中で最も長いイタリアと比べても、男性、女性ともにそれぞれ1時間以

上長くなっている。

図表 III-9 生活時間の全体像(フルタイム雇用者・週平均)

(時間:分)

男性 女性 男女計 男性 女性 男女計 男性 女性 男女計パーソナルケア計 9:54 10:25 10:05 9:58 10:16 10:06 9:52 10:13 10:00労働計 5:23 4:28 5:02 6:03 5:01 5:35 5:08 4:22 4:51学習計 0:05 0:05 0:05 0:04 0:06 0:05 0:04 0:05 0:04家事計 2:22 3:08 2:40 1:52 3:05 2:25 2:13 3:03 2:31レジャー計 4:41 4:21 4:33 4:39 4:09 4:26 5:18 4:55 5:09移動計 1:31 1:29 1:30 1:13 1:15 1:14 1:23 1:20 1:22その他・不明 0:05 0:04 0:04 0:10 0:07 0:09 0:03 0:03 0:03

男性 女性 男女計 男性 女性 男女計 男性 女性 男女計パーソナルケア計 10:43 10:34 10:40 11:21 11:28 11:24 10:46 10:38 10:44労働計 6:14 5:09 5:51 5:27 4:55 5:15 6:27 5:19 6:05学習計 0:06 0:09 0:07 0:01 0:02 0:01 0:02 0:03 0:02家事計 1:20 3:17 2:02 2:02 3:23 2:33 1:09 3:24 1:53レジャー計 4:11 3:25 3:55 3:53 3:00 3:33 3:54 3:05 3:38移動計 1:23 1:23 1:23 1:14 1:09 1:12 1:40 1:28 1:36その他・不明 0:02 0:03 0:02 0:02 0:03 0:02 0:02 0:03 0:03

男性 女性 男女計 男性 女性 男女計 男性 女性 男女計パーソナルケア計 10:13 10:27 10:18 10:00 10:23 10:07 9:58 10:12 10:02労働計 5:19 4:47 5:08 5:59 5:08 5:42 7:30 6:25 7:11学習計 0:06 0:11 0:08 0:03 0:04 0:04 0:00 0:00 0:00家事計 1:55 2:37 2:09 1:52 2:47 2:10 0:31 2:05 0:57レジャー計 4:51 4:24 4:42 4:22 3:59 4:15 4:22 3:49 4:13移動計 1:32 1:29 1:31 1:36 1:32 1:35 1:27 1:18 1:24その他・不明 0:04 0:05 0:04 0:07 0:06 0:07 0:10 0:11 0:10

ノルウェー

イタリアフランススペイン

日本※(正規雇用者)ドイツ イギリス

スウェーデン フィンランド

※日本については、正規雇用者の平均時間を使用

Page 21: 1 労働時間に関する国際統計と日本の統計の比較 特 …24 III. 我が国と欧州各国の労働時間の差(検討課題2) 1 労働時間に関する国際統計と日本の統計の比較

44

2-2-2 生活時間(平日勤務日の場合)

平日かつ勤務日における、フルタイム雇用者(日本については、「正規雇用者」)の労働時間につい

てみると、日本では男性で 9時間 51分、女性で 8時間 37分となっているのに対し、欧州各国の労働時間は、男性がおおよそ 8~9 時間程度、女性がおおよそ 7 時間~8 時間程度となっており、男女ともに、日本の労働時間が長いことがわかる。 一方、家事時間についてみると、日本の男性はわずか 11分、女性は 1時間 30分となっているのに

対し、欧州各国ではいずれの国も男性でほぼ 1時間以上、女性でほぼ 2時間以上となっており、日本に比べて欧州の家事時間が長いことがわかる。 また、レジャー時間については、スペインやフランス、日本などで 3時間未満となっているものの、

それ以外の国では 3時間以上となっている。

図表 III-10 生活時間の全体像(フルタイム雇用者・平日・勤務日) (時間:分)

男性 女性 男女計 男性 女性 男女計 男性 女性 男女計パーソナルケア計 8:51 9:17 9:00 9:12 9:27 9:19 9:01 9:22 9:08労働計 8:48 8:11 8:35 8:32 7:38 8:08 8:10 7:18 7:52学習計 0:02 0:02 0:02 0:04 0:05 0:04 0:02 0:05 0:03家事計 1:33 2:09 1:46 1:23 2:20 1:48 1:35 2:23 1:52レジャー計 3:16 2:56 3:09 3:30 3:09 3:21 3:47 3:33 3:42移動計 1:24 1:23 1:24 1:11 1:14 1:12 1:22 1:16 1:20その他・不明 0:04 0:03 0:04 0:08 0:06 0:07 0:03 0:03 0:03

男性 女性 男女計 男性 女性 男女計 男性 女性 男女計パーソナルケア計 9:52 9:49 9:51 10:24 10:28 10:25労働計 8:52 7:23 8:20 8:22 7:53 8:11学習計 0:06 0:10 0:07 0:01 0:02 0:01家事計 0:54 2:49 1:35 1:11 2:14 1:34レジャー計 2:50 2:20 2:39 2:41 2:03 2:27移動計 1:25 1:27 1:26 1:20 1:16 1:19その他・不明 0:02 0:03 0:02 0:02 0:03 0:02

男性 女性 男女計 男性 女性 男女計 男性 女性 男女計パーソナルケア計 9:20 9:33 9:24 9:17 9:36 9:24 9:29 9:45 9:33労働計 7:58 7:22 7:46 8:48 7:59 8:32 9:51 8:37 9:30学習計 0:07 0:11 0:08 0:02 0:03 0:02 0:00 0:00 0:00家事計 1:20 2:05 1:35 1:07 1:54 1:22 0:11 1:30 0:34レジャー計 3:40 3:19 3:33 3:09 2:54 3:04 2:55 2:45 2:53移動計 1:32 1:26 1:30 1:32 1:29 1:31 1:28 1:17 1:25その他・不明 0:03 0:04 0:04 0:06 0:06 0:06 0:04 0:06 0:05

日本※(正規雇用者)

スウェーデン フィンランド ノルウェー

(集計なし)

スペイン フランス イタリア

ドイツ イギリス

※日本については、正規雇用者・平日・勤務日の平均時間を使用している

Page 22: 1 労働時間に関する国際統計と日本の統計の比較 特 …24 III. 我が国と欧州各国の労働時間の差(検討課題2) 1 労働時間に関する国際統計と日本の統計の比較

45

前頁の表のうち、日本、イギリス、フランス、ドイツについてグラフ化したのが図表 III-11および図表 III-12である。日本は男女とも、他国に比べて労働時間が長く、家事時間が短いことが把握できる。

図表 III-11 フルタイム雇用者の労働時間グラフ(平日、勤務日の 1日の平均時間)

日本・男 イギリス・男 フランス・男 ドイツ・男 日本・女 イギリス・女 フランス・女 ドイツ・女

労働時間

10時間

9時間

8時間

7時間

※日本は正規雇用者の労働時間である

図表 III-12 フルタイム雇用者の家事時間グラフ(平日、勤務日の 1日の平均時間)

日本・男 イギリス・男 フランス・男 ドイツ・男 日本・女 イギリス・女 フランス・女 ドイツ・女

家事時間

0時間

1時間

2時間

※日本は正規雇用者の家事時間である

※日本については、正規雇用者・平日・勤務日の平均時間を使用している

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46

2-3 平日・フルタイム雇用者の時間帯別生活時間 前項に示したように、日本の労働時間は、欧州各国に比べて長いことがわかった。そこで、次に、そ

の労働が、平日 1日のどのような時間帯に行われているのかをみることとする。 どういった時間にどういった生活行動が行われているか、時間帯別の状況を俯瞰するための図表とし

て、しばしばエリアグラフ(積み上げ面グラフ)が用いられる。 次頁以降に、各国のフルタイム雇用者の、平日の生活行動時間の平均をとるエリアグラフを示す。 (なお、欧州各国分は、欧州統一生活時間調査サイトから作成した。また、日本のエリアグラフについ

ては、平成 18年社会生活基本調査の行動者率表から作成した)

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47

<スウェーデン>

午後の移動(退勤時間と考えられる)のピークが始まるのが、男女とも 16 時頃であり、労働時間の減少

も午後 4 時頃から始まっている。また、男性も一定の家事を担っていることがわかる(特に午後 4 時以

降)。

○スウェーデン:フルタイム/男性/平日

○スウェーデン:フルタイム/女性/平日

※上記に含まれない領域は、「パーソナルケア」「学習」「その他・不明」の時間である。但し、「学習」「その他・不明」の

時間はごく僅かである。

(%)

凡 例

家事計 レジャー計労働計 移動計

(%)

凡 例

家事計 レジャー計労働計 移動計

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48

<フィンランド>

午後の移動(退勤時間と考えられる)のピークが始まるのは、スウェーデンよりやや早く男女とも午後 3

時以降であり、同時刻から労働時間も減少し始める。

○フィンランド:フルタイム/男性/平日

○フィンランド:フルタイム/女性/平日

※上記に含まれない領域は、「パーソナルケア」「学習」「その他・不明」の時間である。但し、「学習」「その他・不明」の

時間はごく僅かである。

(%)

凡 例

家事計 レジャー計労働計 移動計

(%)

凡 例

家事計 レジャー計労働計 移動計

Page 26: 1 労働時間に関する国際統計と日本の統計の比較 特 …24 III. 我が国と欧州各国の労働時間の差(検討課題2) 1 労働時間に関する国際統計と日本の統計の比較

49

<ノルウェー>

フィンランドと同様、午後の移動(退勤時間と考えられる)のピークが始まるのは、スウェーデンより

やや早く男女とも午後 3時以降であり、労働時間も減少し始める。

○ノルウェー:フルタイム/男性/平日

○ノルウェー:フルタイム/女性/平日

※上記に含まれない領域は、「パーソナルケア」「学習」「その他・不明」の時間である。但し、「学習」「その他・不明」の

時間はごく僅かである。

(%)

凡 例

家事計 レジャー計労働計 移動計

(%)

凡 例

家事計 レジャー計労働計 移動計

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50

<スペイン>

日中の非該当領域時間(主としてパーソナルケア時間である)が他国に比べて長い。その分、帰宅のピ

ークが他国に比べて遅い(夕食の時間も同様である)。また北欧に比べると男性の家事時間は短い。

○スペイン:フルタイム/男性/平日

○スペイン:フルタイム/女性/平日

※上記に含まれない領域は、「パーソナルケア」「学習」「その他・不明」の時間である。但し、「学習」「その他・不明」の

時間はごく僅かである。

(%)

凡 例

家事計 レジャー計労働計 移動計

(%)

凡 例

家事計 レジャー計労働計 移動計

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51

<フランス>

帰宅と考えられる夕方の移動のピークは午後 4~5時毎から始まる。また、女性の家事時間は午後 6時頃

から増加している。

○フランス:フルタイム/男性/平日

○フランス:フルタイム/女性/平日

※上記に含まれない領域は、「パーソナルケア」「学習」「その他・不明」の時間である。但し、「学習」「その他・不明」の

時間はごく僅かである。

(%)

凡 例

家事計 レジャー計労働計 移動計

(%)

凡 例

家事計 レジャー計労働計 移動計

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52

<イタリア>

他の国と比べ、男性の家事時間が極端に少ない。また、午前 8 時頃に移動(出勤と考えられる)が集中

しており、出勤時間が他国に比べて集中している傾向がみられる。

○イタリア:フルタイム/男性/平日

○イタリア:フルタイム/女性/平日

※上記に含まれない領域は、「パーソナルケア」「学習」「その他・不明」の時間である。但し、「学習」「その他・不明」の

時間はごく僅かである。

労働計

(%)

凡 例

家事計 レジャー計 移動計

労働計

(%)

凡 例

家事計 レジャー計 移動計

Page 30: 1 労働時間に関する国際統計と日本の統計の比較 特 …24 III. 我が国と欧州各国の労働時間の差(検討課題2) 1 労働時間に関する国際統計と日本の統計の比較

53

<ドイツ>

欧州各国と比べ、朝の移動時間のピークが、やや早い時間帯(午前 7 時前後)になっている。午後 6 時

前後の男性の家事時間は女性と同程度となっており、スウェーデンと同様に、男性も一定の家事を担っ

ていることがわかる。

○ドイツ:フルタイム/男性/平日

○ドイツ:フルタイム/女性/平日

※上記に含まれない領域は、「パーソナルケア」「学習」「その他・不明」の時間である。但し、「学習」「その他・不明」の

時間はごく僅かである。

労働計

(%)

凡 例

家事計 レジャー計 移動計

労働計

(%)

凡 例

家事計 レジャー計 移動計

Page 31: 1 労働時間に関する国際統計と日本の統計の比較 特 …24 III. 我が国と欧州各国の労働時間の差(検討課題2) 1 労働時間に関する国際統計と日本の統計の比較

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<イギリス>

男女の生活時間に大きな差がなく、午後 4時以降、労働時間が減少し始めている。

○イギリス:フルタイム/男性/平日

.

○イギリス:フルタイム/女性/平日

※上記に含まれない領域は、「パーソナルケア」「学習」「その他・不明」の時間である。但し、「学習」「その他・不明」の

時間はごく僅かである。

労働計

(%)

凡 例

家事計 レジャー計 移動計

労働計

(%)

凡 例

家事計 レジャー計 移動計

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<日本>

男女ともに、朝の移動(出勤と考えられる)の時間が集中している。通勤時間が集中している度合いが、

欧州各国に比べて強い。また、労働時間が減少するタイミングが欧州各国に比べて遅く、午後 6 時以降

においても多くの正規雇用者が労働していることがわかる。

また、男女とも欧州に比べると家事時間が短く、特に男性の家事時間はほとんどみられない。

○日本:正規雇用者/男性/平日

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

4:00 6:00 8:00 10:00 12:00 14:00 16:00 18:00 20:00 22:00 0:00 2:00 4:00

(%)

労働 家事 レジャー 移動

○日本:正規雇用者/女性/平日

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

4:00 6:00 8:00 10:00 12:00 14:00 16:00 18:00 20:00 22:00 0:00 2:00 4:00

(%)

労働 家事 レジャー 移動

※上記に含まれない領域は、「パーソナルケア」「学習」「その他・不明」の時間である。但し、「学習」「その他・不明」の

時間はごく僅かである。

Page 33: 1 労働時間に関する国際統計と日本の統計の比較 特 …24 III. 我が国と欧州各国の労働時間の差(検討課題2) 1 労働時間に関する国際統計と日本の統計の比較

56

2-4 小括

日欧のフルタイム雇用者の生活時間を比較すると、男女ともに、日本の方が欧州に比べて労働時間が

長いことがわかる。 また、平日 1日の時間帯別の状況をみると、欧州では多くの国で、おおむね午後 4時頃から「労働」の割合が減少しているのに対し、日本では、午後 6時頃の段階でも「労働」の割合が高い状態が続いており、欧州各国と比べて遅い時間まで仕事をしている傾向がみられる。 他方で、家事やレジャーに関する時間は欧州の方が長くなっている(特に、男性の家事時間は日本の

方が極めて短い)。 なお、パーソナルケアや学習の時間については、日欧で大きな差は生じていない。