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経理情報●2015.7.1(No.1417)32
概 要
日本においては店舗の閉鎖に伴い
発生する費用や損失そのものを想定
した会計基準等はないため、それぞ
れの費用や損失について、個別に関
連する会計基準等に従って、会計処
理を行うことがポイントとなる。店
舗の閉鎖に伴い発生する費用や損失
は会社によってさまざまであると思
われるが、一般的に図表のような費
用や損失が発生する可能性があると
考えられる。
また、これらに関連する主な会計
基準等は図表のとおりであり、当該
会計基準に準拠して、会計処理の検
討を行うことが必要になる。
固定資産の減損損失
閉鎖店舗に関連する固定資産につ
いては、閉鎖の意思決定が取締役会
や常務会等の会議体でなされた時点
において、固定資産の減損の兆候に
該当することになると考えられるた
め、減損損失の検討を行うことが必
要になる。減損損失の検討のための
留意点等については、後掲№13を参
照していただきたい。
未稼働固定資産の減価償却
閉鎖店舗に関連する固定資産につ
いて、遊休資産となっているが、将
来の転用を検討しているために減損
損失を認識しない場合がある。遊休
資産についても残存価額まで減価償
却を行うが、当該減価償却費は原則
として営業外費用として処理するこ
ととされている(「固定資産の減損に
係る会計基準の適用指針」56項、138
項)。その
ため、閉鎖店舗Aの建物等が
このような遊休資産となった場合、
当該減価償却費は営業外費用として
処理することになる。
固定資産の耐用年数の短縮に
よる減価償却
⑴ 耐用年数の短縮
店舗閉鎖の意思決定がなされた場
合、店舗の閉鎖時期が見込まれるこ
とになり、関連する固定資産につい
ても使用見込期間が同様の時期とな
ることが想定されるため減損損失が
認識されない場合は、耐用年数の見
直しを行うことが必要となる。
したがって、閉鎖店舗Aに関連す
る固定資産について、閉鎖後も他の
店舗等で使用する見込みがある資産
であれば、従来の耐用年数に基づい
て減価償却費を計算することも考え
られるが、閉鎖後に使用が見込まれ
ない資産については、閉鎖時点まで
の年数を残存耐用年数として減価償
却費を計算することになる。
⑵ 会計処理
耐用年数の変更は「会計上の見積
りの変更」であるため、耐用年数の
変更の影響が変更期間のみに影響す
る場合には、当該変更期間に会計処
理を行い、当該変更が将来の期間に
も影響する場合には、将来にわたっ
て会計処理を行うこととなる(「会計
当社は既存の商品販売店舗Aを閉鎖することを計画している。店舗の閉
鎖に関連して、どのような費用や損失が発生する可能性があるのか、また、
あわせて発生が見込まれるそれぞれの費用や損失について会計上どのような
処理が必要となるのか教えてほしい。
店舗の閉鎖に伴い発生する費用や損失は、一般的に固定資産の減損損失、
未稼働固定資産の減価償却費、固定資産の耐用年数の短縮による減価償却
費の増加、賃借契約に基づく原状回復費用、賃借契約の解約に伴う中途解
約違約金、移転費用などが考えられる。それぞれの費用について計上時期
等を関連する基準等に照らして個別に検討することに留意する必要がある。
店舗閉鎖に関連する費用・損失
№12(図表) 店舗の閉鎖に伴い発生する費用や損失
と関連する会計基準等費用・損失項目 主な会計基準等
固定資産の減損損失 固定資産の減損に係る会計基準(企業会計審議会)、固定資産の減損に係る会計基準の適用指針
(企業会計基準適用指針6号)
未稼働固定資産の減価償却費
固定資産の減損に係る会計基準、固定資産の減損に係る会計基準の適用指針
固定資産の耐用年数の短縮による減価償却費
会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準
(企 業 会 計 基 準24号 )、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針24号)
賃借契約に基づく原状回復費用
資産除去債務に関する会計基準(企業会計基準18号)、資産除去債務に関する会計基準の適用指針
(企業会計基準適用指針21号)
賃借契約の解約に伴う中途解約違約金
企業会計原則・同注解
移転費用 企業会計原則・同注解