8
18 回数値流体力学シンポジウム D4-2 Copyright © 2004 by JSFM 1 二相流界面追跡シミュレーションのための フェーズフィールドモデルと格子ボルツマンスキームの検討 Examination of Phase-Field Model and Lattice-Boltzmann Scheme for Interface-Tracking Simulation of Two-Phase Flow 高田尚樹, 産総研, 305-8569 茨城県つくば市小野川 16-1, E-mail: [email protected] 三澤雅樹, 産総研, 305-8564 茨城県つくば市並木 1-2, E-mail: [email protected] Naoki TAKADA, National Institute of Advanced Industrial Sci. Technol.(AIST), 16-1, Onogawa, Tsukuba, 305-8569,Japan. Masaki MISAWA, AIST, 1-2, Namiki, Tsukuba, 305-8564, Japan. A phase-field model (PFM) and finite-difference schemes of the lattice Boltzmann Method (LBM) have been examined for interface-tracking simulation of two-phase flow. PFM makes use of the Cahn-Hilliard free energy theory not only to define surface tension but also to reconstructs diffuse interface, which appears as a finite volume where physical properties of fluid vary steeply but continuously between two phases. In interface-tracking simulations, it is confirmed that (1) the proposed method gives good predictions of motion of liquid column collapse, (2) a single liquid drop falling through a stagnant gas and merging into a stagnant liquid film was simulated well, (3) the flux driven by chemical potential gradient plays important role in advection and reconstruction of interface, and (4) for the kinetic equation of LBM, a semi-Lagrangian discretization with second-order accuracy realizes much better conservations of volume and interface shape than conventional second- and third-order upwind difference schemes. 1 はじめに 本論文では, 従来とは異なる物理的アプローチにより二相流界 面をより高精度かつ高効率に追跡できる数値計算法の開発を目的 として,近年利用が進められるフェーズフィールドモデル Phase-Field Model, PFM(1),(2) と格子ボルツマン法(Lattice Boltzmann Method, LBM(3),(4) の時空間離散化スキームを, 界面追 跡計算精度の点から検討する. PFM (1),(2) は,二相流体 (5),(6) ,高分子 薄膜 (7) ,二元合金 (8) など多相・多成分物質系内で生じるメゾスケー ルの複雑な組織形成過程を効率的に再現できる,非平衡統計熱力 学に基づくモデルである.一方の LBM (3),(4) も統計熱力学に基づい ており,流体を構成する仮想的なメゾスケール流体粒子の並進運 動と相互作用(衝突)を計算することにより,マクロスケールの 流体現象を再現する数値流体力学手法である. LBM の二相流モデ ルの中では,PFM を導入したものが現在主流となっている (9)-(21) 以下の本文は次の内容で構成される.まず,第 2 章で PFM 概要を述べた後,第 3 章において著者らが提案した PFM を組み 込んだ高密度比二相流数値計算手法 (22),(23) を説明する.尚,本手法 は稲室らの LBM (15),(17) を基礎として開発されたものである.第 4 章では,この PFM 計算法 (23) を用いて実施した,重力下における 液柱崩壊および自由落下液滴と液膜の衝突合体の数値シミュレー ションの結果について報告する. LBM の離散化スキームは,続く 5 章において簡単な 2 次元界面の非定常移流ベンチマーク計算 を通して界面形状と体積の保存性の計算精度について検討される. 本論文の結論は最後の第 6 章で述べられる. 2 フェーズフィールドモデル( PFM ) 2. 1 PFM の概要と利点 PFM に基づく界面追跡可能な二相流計算法には, (1) ナビエ・ス トークス(NS)式の数値解法(NS-PFM(5),(6),(23) と, (2) 流体粒子 の数密度の速度分布の時間発展を求める LBM および格子ガスオ ートマトン(LGCA) (3),(4) が挙げられる.いずれも「系の自由エネ ルギーを最小にする」という統計熱力学的アルゴリズム (1),(2) に基 づき界面形状を自律的に決定するため, 界面の境界条件を要しな い.これら PFM 法に共通する主な特徴(表 1)は,以下のように Volume of Fluid (VOF) (24) 等の NS 式を用いる従来の界面追跡法 (25) と異なる. (1) 界面は,流体の物性(密度,粘性等)が連続的に変化する, 空間セル複数個分の有限領域に相当する(Diffuse Interface) (1),(2) (2) 表面張力は,質量密度(または相・成分濃度)の勾配に起因 する界面の自由エネルギー増分として与えられる (5),(6) (3) 界面移流計算では,非平衡系の瞬時局所的な化学ポテンシャ ルの勾配を考慮して界面再構成を行う (5),(22),(23) 上記の特徴は,次のような 2 つの計算プロセスを実現可能にする. (1) 表面張力が複雑な幾何計算 (25),(26) を行わずに考慮される. (2) Donor-Accepter (DA) (24) , MARS (27) CIP (28),(29) 等の特別なアルゴ リズム (25) を用いない,界面の輸送と形状再構成. 以上の結果,PFM 計算法は次の利点を有すると考えられる (23) (1) 面追跡計算の簡素化とコードの平易な 3 次元への拡張 (4),(5) (2) 相変化や溶解に伴う界面移動現象の自律的な再現 (5) (3) 固体表面の濡れ性境界条件 (4) の容易な実行. (4) 合体・分裂を繰り返す液滴・気泡群挙動解析における,多数 の複雑形状界面に対する,従来よりも高効率な追跡計算. これまでのNS-PFM 法が質量密度比の小さい二相流体を対象と していた (5), (6) のに対して,PFM に基づく LBM (3), (4) では,Swift 気液モデル (9)-(11) を発展させた稲室らの二相流モデル (15),(17) が,界面 形状を表す指標関数の導入と圧力の収束計算によって,数値的に 安定した高密度比二相流の計算に成功している (17) 2. 2 PFM の二相流体界面 PFM (1),(2) , 自由エネルギーΨ 2 を用いて物質系の微視的な組織 形成過程を記述し,系の平衡状態をΨ 2 の最小値として定義する. 本研究では他の文献同様,以下の最も簡潔な形式のΨ 2 を使用する. ( ) 2 2 2 2 2 V dV κ ψ φ φ Ψ = + (1) Table 1 Comparison of interface(I.F.)-tracking CFD methods. Surface Tension I.F. Re- Construction I.F.-Tracking Method Conventional (NS eq.) Continuum Surface Force FLAIR CIP PLIC TVD DA I.F. Width VOF 0, or ≈∆x Level Set Front Tracking MAC MARS SURFER CSFSurface Tension I.F. Re- Construction I.F.-Tracking Method Conventional (NS eq.) Continuum Surface Force Chemical Potential Gradient Flux FLAIR CIP PLIC TVD DA Phase-Field Modeling I.F. Width VOF 0, or ≈∆x Level Set Front Tracking LBM LGCA NS-PFM Several cells Interface Free Energy MAC MARS SURFER CSFby Density Gradient) 2

18 D4-2 二相流界面追跡シミュレーションのための … · の) ∂ +⋅∇=− − ∂ ∑ ∑ =∑ . ( , ) ( ,) ( ,) ( ,) ∆ = / (-’)/(∆) (∆=∆=∆=) / (

  • Upload
    lamtruc

  • View
    257

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 18 D4-2 二相流界面追跡シミュレーションのための … · の) ∂ +⋅∇=− − ∂ ∑ ∑ =∑ . ( , ) ( ,) ( ,) ( ,) ∆ = / (-’)/(∆) (∆=∆=∆=) / (

第 18 回数値流体力学シンポジウム D4-2

Copyright © 2004 by JSFM 1

二相流界面追跡シミュレーションのための

フェーズフィールドモデルと格子ボルツマンスキームの検討

Examination of Phase-Field Model and Lattice-Boltzmann Scheme for Interface-Tracking Simulation of Two-Phase Flow

○ 高田尚樹, 産総研, 〒305-8569 茨城県つくば市小野川 16-1, E-mail: [email protected]

三澤雅樹, 産総研, 〒305-8564 茨城県つくば市並木 1-2, E-mail: [email protected] Naoki TAKADA, National Institute of Advanced Industrial Sci. Technol.(AIST), 16-1, Onogawa, Tsukuba, 305-8569,Japan. Masaki MISAWA, AIST, 1-2, Namiki, Tsukuba, 305-8564, Japan.

A phase-field model (PFM) and finite-difference schemes of the lattice Boltzmann Method (LBM) have been examined for interface-tracking simulation of two-phase flow. PFM makes use of the Cahn-Hilliard free energy theory not only to define surface tension but also to reconstructs diffuse interface, which appears as a finite volume where physical properties of fluid vary steeply but continuously between two phases. In interface-tracking simulations, it is confirmed that (1) the proposed method gives good predictions of motion of liquid column collapse, (2) a single liquid drop falling through a stagnant gas and merging into a stagnant liquid film was simulated well, (3) the flux driven by chemical potential gradient plays important role in advection and reconstruction of interface, and (4) for the kinetic equation of LBM, a semi-Lagrangian discretization with second-order accuracy realizes much better conservations of volume and interface shape than conventional second- and third-order upwind difference schemes.

1 はじめに

本論文では, 従来とは異なる物理的アプローチにより二相流界

面をより高精度かつ高効率に追跡できる数値計算法の開発を目的

として,近年利用が進められるフェーズフィールドモデル

(Phase-Field Model, PFM)(1),(2)と格子ボルツマン法(Lattice Boltzmann Method, LBM)(3),(4)の時空間離散化スキームを, 界面追

跡計算精度の点から検討する.PFM(1),(2)は,二相流体(5),(6),高分子

薄膜(7),二元合金(8)など多相・多成分物質系内で生じるメゾスケー

ルの複雑な組織形成過程を効率的に再現できる,非平衡統計熱力

学に基づくモデルである.一方のLBM(3),(4)も統計熱力学に基づい

ており,流体を構成する仮想的なメゾスケール流体粒子の並進運

動と相互作用(衝突)を計算することにより,マクロスケールの

流体現象を再現する数値流体力学手法である.LBMの二相流モデ

ルの中では,PFMを導入したものが現在主流となっている(9)-(21). 以下の本文は次の内容で構成される.まず,第 2 章で PFM の

概要を述べた後,第 3 章において著者らが提案した PFM を組み

込んだ高密度比二相流数値計算手法(22),(23)を説明する.尚,本手法

は稲室らの LBM(15),(17)を基礎として開発されたものである.第 4章では,この PFM 計算法(23)を用いて実施した,重力下における

液柱崩壊および自由落下液滴と液膜の衝突合体の数値シミュレー

ションの結果について報告する.LBMの離散化スキームは,続く

第5章において簡単な2次元界面の非定常移流ベンチマーク計算

を通して界面形状と体積の保存性の計算精度について検討される.

本論文の結論は最後の第6章で述べられる. 2 フェーズフィールドモデル( PFM )

2. 1 PFMの概要と利点

PFMに基づく界面追跡可能な二相流計算法には,(1)ナビエ・ス

トークス(NS)式の数値解法(NS-PFM)(5),(6),(23)と,(2) 流体粒子

の数密度の速度分布の時間発展を求める LBM および格子ガスオ

ートマトン(LGCA)法(3),(4)が挙げられる.いずれも「系の自由エネ

ルギーを最小にする」という統計熱力学的アルゴリズム(1),(2)に基

づき界面形状を自律的に決定するため, 界面の境界条件を要しな

い.これらPFM法に共通する主な特徴(表1)は,以下のように

Volume of Fluid (VOF) 法(24)等のNS式を用いる従来の界面追跡法(25)と異なる.

(1) 界面は,流体の物性(密度,粘性等)が連続的に変化する,

空間セル複数個分の有限領域に相当する(Diffuse Interface) (1),(2), (2) 表面張力は,質量密度(または相・成分濃度)の勾配に起因

する界面の自由エネルギー増分として与えられる(5),(6), (3) 界面移流計算では,非平衡系の瞬時局所的な化学ポテンシャ

ルの勾配を考慮して界面再構成を行う(5),(22),(23),

上記の特徴は,次のような2つの計算プロセスを実現可能にする. (1) 表面張力が複雑な幾何計算(25),(26)を行わずに考慮される. (2) Donor-Accepter (DA)(24), MARS(27),CIP(28),(29)等の特別なアルゴ

リズム(25)を用いない,界面の輸送と形状再構成. 以上の結果,PFM計算法は次の利点を有すると考えられる(23). (1) 面追跡計算の簡素化とコードの平易な3次元への拡張(4),(5). (2) 相変化や溶解に伴う界面移動現象の自律的な再現(5). (3) 固体表面の濡れ性境界条件(4)の容易な実行. (4) 合体・分裂を繰り返す液滴・気泡群挙動解析における,多数

の複雑形状界面に対する,従来よりも高効率な追跡計算. これまでのNS-PFM法が質量密度比の小さい二相流体を対象と

していた(5), (6)のに対して,PFM に基づくLBM(3), (4)では,Swift の気液モデル(9)-(11)を発展させた稲室らの二相流モデル(15),(17)が,界面

形状を表す指標関数の導入と圧力の収束計算によって,数値的に

安定した高密度比二相流の計算に成功している(17). 2. 2 PFMの二相流体界面

PFM(1),(2)は, 自由エネルギーΨ2 を用いて物質系の微視的な組織

形成過程を記述し,系の平衡状態をΨ2 の最小値として定義する.

本研究では他の文献同様,以下の最も簡潔な形式のΨ2を使用する.

( ) 222 2 2V

dVκψ φ φ⎡ ⎤Ψ = + ∇⎢ ⎥⎣ ⎦∫ (1)

Table 1 Comparison of interface(I.F.)-tracking CFD methods.

Surface TensionI.F. Re-

Construction

I.F.-Tracking Method

Conventional (NS eq.)

Continuum Surface Force

Chemical Potential Gradient Flux

FLAIRCIPPLIC TVD

DA

Phase-Field Modeling

I.F. Width

VOF

0, or ≈∆x

Level SetFront Tracking LBM LGCANS-PFM

Several cellsInterface Free Energy

MAC

MARSSURFER

(CSF) by (Density Gradient)2Surface TensionI.F. Re-

Construction

I.F.-Tracking Method

Conventional (NS eq.)

Continuum Surface Force

Chemical Potential Gradient Flux

FLAIRCIPPLIC TVD

DA

Phase-Field Modeling

I.F. Width

VOF

0, or ≈∆x

Level SetFront Tracking LBM LGCANS-PFM

Several cellsInterface Free Energy

MAC

MARSSURFER

(CSF) by (Density Gradient)2

Page 2: 18 D4-2 二相流界面追跡シミュレーションのための … · の) ∂ +⋅∇=− − ∂ ∑ ∑ =∑ . ( , ) ( ,) ( ,) ( ,) ∆ = / (-’)/(∆) (∆=∆=∆=) / (

第 18 回数値流体力学シンポジウム D4-2

Copyright © 2004 by JSFM 2

V は系の体積を意味する.スカラー変数φ は,二相を識別し界面

形状を表す指標(17)の役割を持ち,秩序変数とも呼ばれる(1),(2).φ に関する二重井戸形式の関数ψ 2 はバルク自由エネルギー,係数κ 2は界面厚さに関係する.二相共存の平衡状態は,以下に示す化学

ポテンシャルη の勾配に起因するφ の流束によって到達される.

22 22

δ ψη κ φδ φ φΨ ∂

= = − ∇∂

(2)

指標関数φ の時間発展は,瞬時局所的な流体速度u とη による

流束を含むCahn-Hilliard(C-H)方程式(3)(30)によって記述される(1),(2).

( ) ( )tφ φ φ η∂

⎡ ⎤+ ∇⋅ = ∇⋅ Γ ∇⎣ ⎦∂u (3)

本研究では,右辺の易動度(Mobility)Γ(φ )は,稲室らによる二相流

LBM(15),(17)と同様な,φ の一次関数として与えられる.

( ) 0φ φΓ = Γ (4)

ただしΓ0は,前者のLBMと異なり,任意の正の値を取り得る. 本研究では, 式(1)のψ2に,臨界点近傍の一成分二相系の振舞い

を簡潔に記述するvan der Waals(vdW)Model (9), (10),(17)を適用する.

( )2 ln1

T ab

φψ φ φ φφ

⎡ ⎤⎛ ⎞= −⎢ ⎥⎜ ⎟−⎝ ⎠⎣ ⎦

(5)

定数aとbは各々,系2の粒子同士の長距離引力作用,短距離反

発作用の強さを意味する.vdW Modelでは,温度Tを臨界温度TC

= 8a/(27b)より低く設定することによって相分離を示す非一様なφ の分布を形成し,最大値φ maxおよび最小値φ minの領域が発生する. ここで,PFMにおける界面厚さの特徴を述べる.簡単のために

x 軸に垂直で平坦な界面を想定し,界面の垂直断面内の指標関数

φ(x)を以下のように求める.まず,式(5)でa,b,Tの値を与えて,

次の二相共存平衡条件を満たすようにφ maxとφ minを求める.

( ) ( )max minη φ η φ= (6)

上式は, 次のMaxwell Construction条件(13)から導かれる.

{ }1

min

1max

01( ) 0U U d

φ

φφ

φ

⎛ ⎞− =⎜ ⎟

⎝ ⎠∫ (7)

UおよびU0は, 系2における擬似的な圧力を意味する.

22

( )( ) ( )U ψ φφ φ ψ φφ

∂= −

∂ (8)

0 ( ) ( )min maxU U Uφ φ= = (9)

式(7)は, 図 1 において実線と破線で囲まれた 2 つの領域(A)と(B)の両面積が等しいことを意味する.次に,式(2)でκ 2を与えて,式

(5)と同様の条件(10)を解いてφ (x)を得る.

( ) constantη φ = (10)

図 2 に式(10)から得られる関数φ の理論解を示す(23).φ が連続

的に変化する領域である界面の厚さはκ2 の値とともに増加する.

ここで,φ の直線近似に基づく界面代表厚さ lφ を次式で定義する.

( )12

2max minl dx

xφφφ φ

−+∞

−∞

⎡ ⎤⎛ ⎞∂⎢ ⎥= − ⎜ ⎟∂⎢ ⎥⎝ ⎠⎣ ⎦∫ (11)

表2には,κ2の各値に対するφ の勾配の最大値,界面自由エネル

ギーの積分値および厚さ lφを示す.自由エネルギー理論(30)で良く

知られているように,界面厚さ はκ21/2に比例することが確認でき

る.尚,後述の数値計算結果では,a = b =1,T =0.293, κ2 =0.1と設

定し(23),界面をφminとφmaxの中間等値面として流れ場に描く.

3 PFMに基づく高密度比二相流計算法

PFMを組み込んだナビエ・ストークス(NS)方程式を解く二相

流計算法(NS-PFM法) (5), (6) は,これまで主に低密度比の二相流

を対象としてきた.著者らは,既存のNS-PFM手法と,稲室らが

開発した二相流体LBM (17) を基礎に,空気-水のような高密度比の

二相流の取り扱いが可能なNS-PFM法を提案し,(1)より効率的で

安定した高密度比二相流計算,(2)要求精度に応じた離散化スキー

ムと計算アルゴリズムの柔軟な選択,の実現を目指している(22),(23).

本法では, 相変化のない等温・非圧縮性二相流を対象として,以

下に示す連続の式とNS方程式にC-H方程式(3)をカップリングさ

せて数値的に解くことにより(5),(23), 瞬時局所の流速,圧力,およ

び界面形状を求める.

0tρ ρ∂

+ ⋅∇ =∂

u (12)

( ) ( )( ) T

tρ µ ρ

⎡ ⎤∂ ⎡ ⎤+ ⋅∇ = −∇⋅ + ∇⋅ ∇ + ∇⎢ ⎥ ⎣ ⎦∂⎣ ⎦

u u u P u u

( )kρ ρ+ − g ( k=G or L ) (13)

上式の右辺最終項は重力加速度gと二相の質量密度差による浮力

を表す.質量密度ρ は,気相Gと液相L中で各 ρ々 G , ρ Lとなる一

方,界面領域内では次式によってφ の関数として与えられる(17).

2.5 3 3.5 4

0.0352

0.0354

0.0356

0.0358

Specific volume

Pseu

do p

ress

ure

U

abT

=1=1=0.293

van-der-Waals model

φ-1

(A)

(B)

1−maxφ 1−

minφ

0U

Fig.1 Pseudo pressure U(φ) used in the Maxwell construction.

-10 0 10

0.3

0.35

0.4

x coordinate

Inde

x fu

nctio

n φ

0.010.020.050.1

κ2

van der Waals model= 1= 1= 0.293

abTφmin = 0.265φmax = 0.405

Fig.2 Profile of index function φ across a flat interface.

8.962.19 10-35.50 10-40.10

6.333.10 10-31.10 10-30.05

4.014.91 10-32.75 10-30.02

2.836.94 10-35.50 10-30.01

Thickness lφIntegral (dφ/dx) 2Max.|dφ /dx|κ2

8.962.19 10-35.50 10-40.10

6.333.10 10-31.10 10-30.05

4.014.91 10-32.75 10-30.02

2.836.94 10-35.50 10-30.01

Thickness lφIntegral (dφ/dx) 2Max.|dφ /dx|κ2

×

×

×

×

×

×

×

×

×

×

×

×

×

×

×

×

Table 2 Characteristics of flat interface in a phase-field model.

Page 3: 18 D4-2 二相流界面追跡シミュレーションのための … · の) ∂ +⋅∇=− − ∂ ∑ ∑ =∑ . ( , ) ( ,) ( ,) ( ,) ∆ = / (-’)/(∆) (∆=∆=∆=) / (

第 18 回数値流体力学シンポジウム D4-2

Copyright © 2004 by JSFM 3

( ) / 2sin

2 2A BL G L G

A B

φ φ φρ ρ ρ ρρ πφ φ

⎛ ⎞+ −+ −= + ⎜ ⎟⎜ ⎟−⎝ ⎠

for A Bφ φ φ< < (14)

φA, φΒ は各々,関数φ が連続的に分布する空間内で 液相と気相を

識別するための任意の閾値である.本研究では,φA=2.75×10-1, φΒ =3.80×10-1を用いてρ の空間分布を求めた. 式(13)右辺のPは表面張力σ を反映した圧力テンソル(2)である.

( )21 1'P κ ρ κ ρ ρ= − ∇ + ∇ ⊗∇P I (15)

ここで P’は界面エネルギーκ1|∇ρ |2を加味した実効圧力である(23).

本研究では,所定の表面張力σ が得られるように,x 軸に垂直で

平坦な界面に対する以下の定義(2)によって定数κ 1の値を設定した.

∫∞+

∞− ⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛∂∂

≡ dxx

2

1ρκσ (16)

また,NS式右辺第2項の粘性係数µ は,界面領域内では気相と液

相の各値µG , µ Lの間で密度ρ の一次関数で補間される(17). 式(3)と(13)に対しては,既存の離散化スキームと計算アルゴリ

ズムを適用できる.本研究(23)では,スカラー・ベクトル各変数を

スタガード状に配置し,式(13)の対流項を河村・桑原スキーム(22),

実効圧力P’の勾配を4次精度中心差分,粘性項を2次精度中心差

分で離散化した.P’と流速 u は,Projection 法と SOR 法を用いて

計算した.時間進行では,式(3),(13)各々に 2 段階 Runge-Kutta法を適用し,u と指標関数φ を更新する.C-H 式(3)の移流項は,

有限体積法(FVM)に基づき4次精度中心差分で近似された(23). 4 PFM法による気液二相流数値シミュレーション

ここでは,前章で示した高密度比二相流NS-PFM手法(23)の適用

可能性を検討するため行った,2 種類の二相流数値シミュレーシ

ョンの結果を述べる.対象は,常温,大気圧の空気-水系と同じ密

度比ρ L /ρ G =801.7と粘性比µ L /µ G =73.76を持つ二相流体とした.

表面張力σ の値は,水-空気の挙動が再現されるよう,入力する密

度と粘性の値,重力加速度|g|=g=2×10-3および空間解像度に合わせ

て設定された.計算領域は3次元デカルト座標系( x, y, z )に置かれ,

幅∆x=∆y=∆z=1 の立方メッシュで一様に離散化された.尚,浮力

を表す式(13)右辺最終項は,液相側(ρ >(ρ L +ρ G)/ 2)にのみ加え

た.計算時刻は,一定幅∆t=1.25×10-2で進行させた.本計算では全

て,易動度(4)で定数Γ0=12.0を設定した. 4. 1 重力下における液柱の崩壊 最初に,重力下における柱状液体の挙動の数値シミュレーショ

ン結果を述べる.初期条件では,図 3 に示すように,液体は x-z平面上で幅a,高さHの矩形状を取り,平坦な固体壁で囲まれた

計算空間内の左側に配置されている.固体壁境界上では,接線方

向の速度に滑り無し,法線方向に関しては速度0,式(15)の圧力P’と指標関数φ に関しては勾配無しの条件を与えた.y 方向境界は

周期的につながっており,2次元的な流れを再現する.

表3には,各計算条件におけるパラメータの値を示す.液柱には,

空気-水系の実寸換算で10mm~146mmに相当する幅a,アスペク

ト比n2 = 1, 2, 4の高さHを与えた. 提案したNS-PFM計算法により得られた液柱挙動シミュレーシ

ョンの結果を以下に述べる.図4は,下部の固体壁面上を移動す

る液柱界面の先端位置Xの時間履歴を示す.横軸の時刻T1はa, g, n2で無次元化されている.比較として同図に示す既存の実験結果(31)同様,下部界面の先端位置は液柱の実寸に関係なくアスペクト

比n2によって決まり,n2の増加にしたがって界面の移動速度は減

少した.どのn2 の値でも,本計算では界面先端が実験よりも早く

移動したが,この違いは初期時刻における固体表面の濡れ性の影

響がひとつの原因と考えられる.ただし,界面の移動速度は本計

算結果と実験結果で良く一致している.次の図5には,液柱の上

端界面位置Zの時間履歴を示す.横軸T2は,aとgで無次元化さ

れた時刻である.液柱下部の前縁と同様に,各 n2 の値に対して,

Table 3 Input data for simulations of collapse of liquid column for |g|=g=2×10-3, ρ L = 1, ρ G = 1.25×10-3.

a (mm) a (Calc) n 2=H /a Dimensions(x,y,z) σ μG μL

10 20Δx 2 80 x 20 x 60

20 40Δx 2 160 x 20 x 120 6.06×10-2 2.26×10-5 1.67×10-3

30 60Δx 2 240 x 20 x 180

57.2 40Δx 1 160 x 20 x 120

114.3 80Δx 1 320 x 20 x 120

28.6 20Δx 2 160 x 20 x 120 7.42×10-3 4.96×10-6 3.46×10-4

57.2 40Δx 2 160 x 20 x 120

28.6 20Δx 4 160 x 20 x 120

20Δx 80 x 11 x 60 2.84×10-4 4.06×10-7 2.99×10-5

146 40Δx 2 160 x 11 x 120 1.14×10-3 1.15×10-6 8.47×10-5

60Δx 240 x 11 x 180 2.56×10-3 2.11×10-6 1.56×10-4

H

aX

Z

Liquid

Gas g

xz

Non-slip wall

H

aX

Z

Liquid

Gas g

xz

xz

Non-slip wall

Fig.3 Schematic of computational domain.

0 1 2 31

2

3

4

n2=1, a=4.5in.

n2=4, a=1.125in.

n2=1, a=2.25in.n2=2, a=2.25in.n2=2, a=1.125in.

Exp. (Martin&Moyce,1952)

n2=2, a=0.01m

n2=1, a=5.72×10-2m

n2=2, a=0.02mn2=2, a=0.03m

n2=1, a=1.14×10-1m

Cal. ( PFM )

n2=4, a=2.86×10-2mn2=2, a=5.72×10-2mn2=2, a=2.86×10-2m

Dimensionless time 1 /T nt g a=

X/ a

Lead

ing-

edge

pos

ition

0 1 2 31

2

3

4

n2=1, a=4.5in.

n2=4, a=1.125in.

n2=1, a=2.25in.n2=2, a=2.25in.n2=2, a=1.125in.

Exp. (Martin&Moyce,1952)

n2=2, a=0.01m

n2=1, a=5.72×10-2m

n2=2, a=0.02mn2=2, a=0.03m

n2=1, a=1.14×10-1m

Cal. ( PFM )

n2=4, a=2.86×10-2mn2=2, a=5.72×10-2mn2=2, a=2.86×10-2m

n2=2, a=0.01m

n2=1, a=5.72×10-2mn2=1, a=5.72×10-2m

n2=2, a=0.02mn2=2, a=0.03m

n2=1, a=1.14×10-1mn2=1, a=1.14×10-1m

Cal. ( PFM )

n2=4, a=2.86×10-2mn2=2, a=5.72×10-2mn2=2, a=2.86×10-2m

Dimensionless time 1 /T nt g a=

X/ a

Lead

ing-

edge

pos

ition

Fig.4 Time series of position of the leading edge in collapse of liquid column for density ratio ρ L / ρ G = 801.7.

Page 4: 18 D4-2 二相流界面追跡シミュレーションのための … · の) ∂ +⋅∇=− − ∂ ∑ ∑ =∑ . ( , ) ( ,) ( ,) ( ,) ∆ = / (-’)/(∆) (∆=∆=∆=) / (

第 18 回数値流体力学シンポジウム D4-2

Copyright © 2004 by JSFM 4

本計算結果は実験結果と良く一致した.さらに,NS-PFM 法によ

る結果を,n2=2 の液柱下部の前縁位置X に関してVOF 法(24)なら

びに MPS 法(32)-(34)による既存の数値結果と比較した.NS-PFM 法

では,計算精度の検証のため,MPS 法とほぼ同じ実寸 146mm 相

当のaに対する3種類の空間解像度(20∆x, 40∆x, 60∆x)で計算を

実施している.図6に見られるように,本NS-PFM法で得られる

界面前縁は,どの解像度においてもVOF法およびMPS法よりも

遅れて動いたが,その移動の傾向は他の計算法での結果に沿って

いる.また,無次元時刻 T1=0 から 3 の範囲では前縁位置 X に対

する空間解像度の違いの影響はほとんど見られない.

図6で示したa=20∆xおよび60∆xの場合の液柱形状を質量密度

ρ の空間分布の図7に示す.青色の領域が液相(ρ =ρL =1),白

色領域が気相(ρ =ρG =1.25×10-3)を表し,表示時刻は水-空気系換

算で0.1, 0.2, 0.3秒に相当する.低解像度の場合(図中左側の列)

では界面領域が相対的に厚く見えるものの,液柱の下部前縁位置

と高さ,および界面の全体的な曲線形状はどちらの解像度でも同

じように現れた.以上により,本研究のNS-PFM法で今回設定し

たパラメータでは,146mm×292mm の液柱の崩壊を 0.3 秒(T1

で約3.46)まで捉えるのには40×80=3200個程度で十分であると

言える.図8は,a=40∆x, n2=2の液柱崩壊における,計算領域内

の圧力分布(カラーコンター)と界面形状(白線)および最大実

効圧力 P’max の時間変化を示す.P’max のグラフの圧力値は,初期

値P’0と位置エネルギー( ρL-ρG ) gHで無次元化されている.重力

による静圧発生で増加する圧力は,液柱が接する領域下部の角部

で最大値(分布図(B))を取った後,液柱崩壊に従って減少するが,

前縁が到達する領域下部の右側角部近傍で急激に増加した(同図

(D)). 以上のように,提案した NS-PFM 法(23)は,空気-水系に相当す

る高密度比二相流の界面挙動を他の計算法と同様に高精度に再現

0 1 2 30.2

0.4

0.6

0.8

1.0

n2=4, a=1.125in.

n2=1, a=2.25in.n2=2, a=2.25in.

Exp. (Martin&Moyce,1952)

n2=1, a=5.72×10-2mCal. ( PFM )

n2=4, a=2.86×10-2mn2=2, a=5.72×10-2m

Dimensionless time 2 /T t g a=

Z/ H

Hei

ght o

f liq

uid

colu

mn

0 1 2 30.2

0.4

0.6

0.8

1.0

n2=4, a=1.125in.

n2=1, a=2.25in.n2=2, a=2.25in.

Exp. (Martin&Moyce,1952)

n2=1, a=5.72×10-2mCal. ( PFM )

n2=4, a=2.86×10-2mn2=2, a=5.72×10-2mn2=1, a=5.72×10-2mn2=1, a=5.72×10-2m

Cal. ( PFM )

n2=4, a=2.86×10-2mn2=2, a=5.72×10-2m

Dimensionless time 2 /T t g a=

Z/ H

Hei

ght o

f liq

uid

colu

mn

Fig.5 Time series of position of the top edge in collapse of liquid column for density ratio ρ L / ρ G = 801.7.

Fig.6 Comparison of present numerical results of collapse of liquid column with other data by VOF and MPS methods.

0 1 2 31

2

3

4

VOF (a=10∆x,∆z=0.025)

2 2n =Aspect ratio

Dimensionless time 1 /T nt g a=

X/ a

Lead

ing-

edge

pos

ition

VOF (a=10∆x,∆z=0.05)

MPS (a=18∆x, 144mm.)NS-PFM (a=20∆x,146mm)

NS-PFM (a=40∆x,146mm)

NS-PFM (a=60∆x,146mm)

NS-PFM (a=20∆x,146mm)

NS-PFM (a=40∆x,146mm)

NS-PFM (a=60∆x,146mm)

Fig.7 Snapshots of collapsing liquid column for n2=2, a=20∆x (left column ) and 60∆x (right column), both of which correspond to 146mm in air-water system.

(a) 0.1sec T1=1.16 (t=6600∆t) T1=1.16 (t=11400∆t)

(b) 0.2sec T1=2.30 (t=13100∆t) T1=2.31 (t=22700∆t)

(c) 0.3sec T1=3.46 (t=19700∆t) T1=3.47 (t=34100∆t)

Page 5: 18 D4-2 二相流界面追跡シミュレーションのための … · の) ∂ +⋅∇=− − ∂ ∑ ∑ =∑ . ( , ) ( ,) ( ,) ( ,) ∆ = / (-’)/(∆) (∆=∆=∆=) / (

第 18 回数値流体力学シンポジウム D4-2

Copyright © 2004 by JSFM 5

するとともに,液体の壁面への衝突に伴う局所的で急激な圧力の

時間変化を数値的に安定して捉える能力を有することを確認した.

4. 2 自由落下液滴と液膜の衝突・合体 次に,NS-PFM 法の 3 次元二相流数値解析の実行可能性を検証

するため,気相中を自由落下する単一液滴と水平固体表面上の液

膜との衝突・合体のシミュレーションを実施した.計算領域の図

9 に示すように,初期条件では,直径 dD=2R=20∆x の液滴が下部

固体壁面から高さ3.25dDに配置され,その壁面上には厚さ4∆zの液膜が一様に広がっている.本計算では,空気-水系に換算した液

滴径 dDが 10mm に相当するよう,表 3 の最上段に示す a=10mmの場合と同じ粘性と表面張力の値を使用した.

図10に,界面( φ=(φmin+φmax)/2の等値面 )の3次元形状と実

効圧力の最大値P’maxの時間変化を示す.尚,圧力は,気相中の初

期値P’0,表面張力σ による増加分2σ /R,および位置エネルギー

(ρL-ρG )gh で無次元化されている.圧力は,無次元時刻(A)t*=1.2までほとんど一定であるが,落下する液滴が液膜と接触した瞬間

(B)t*=1.29に急激に上昇し時刻(C)t*=1.35で最大に達する.このグ

ラフより,その圧力増加量は液滴が初期に持っていた位置エネル

ギーにほぼ等しいことがわかる.最大圧力の時刻(C)では,液滴の

半分は液膜と合体し,ほぼ元の値まで圧力が減少した時刻(D)

t*=1.66で合体地点を中心に生じた円環上の波紋が,次第に周囲へ

伝播する様子(図(E) t*=2.0)が捕えられた.以上より,提案した

NS-PFM 法は高密度比二相流の3 次元解析も実行可能であり,界

面の合一と変形を数値的に安定して捕捉できることを確認した.

また,上記の圧力時間変化と界面挙動の関係は同様の2次元解析

でも得られており(23),このことから本計算結果は定性的に妥当で

あると考えられる.

5 二相流界面追跡のための格子ボルツマンスキームの検討

格子ボルツマン法(LBM)(3),(4)は,流体を構成する仮想粒子の

並進と衝突を計算することにより,マクロスケールの流体現象を

再現する手法である.本章では,単純な2次元界面移流問題のベ

ンチマーク計算(23)を通して,LBM における時空間離散化スキー

ム(Lattice-Boltzmann Scheme, LBS)の特徴を明らかにするととも

に,LBSの二相流界面追跡能力を検証する. PFMを導入して非混和性二成分二相流体を扱うLBMでは,C-H

方程式(3)と巨視的に等価になる,離散速度eaを持つ仮想的なメゾ

スケール流体粒子密度の速度分布関数 gaの時間発展式(17)を解く.

( )1 eqaa a a a

g g g gt τ

∂+ ⋅∇ = − −

∂e (17)

ここで, 上付添字eqは瞬時局所的な平衡状態を, τ はBGK近似(35)

の衝突緩和時間を示す.以下では,式(17)を格子ボルツマン方程

式(Lattice Boltzmann Equation, LBE)と呼ぶことにする.指標関数

φとその運動量は,分布関数gaを用いて次のように定義される.

eqa aa a

g gφ = =∑ ∑ (18) eqa aa

gφ = ∑u e (19)

尚,本研究では,易動度Γ(4)を持つC-H 式(3)をLBE(17)から導出

できる,稲室らが開発した平衡分布関数gaeq (15),(17)を用いる.

5. 1 セミ・ラグランジュ型格子ボルツマンスキーム( SL-LBS ) 一般に良く知られる従来型LBMでは, LBE (17)を時間・空間2

次精度の陽的なSemi-Lagrange(SL)形式に離散化する(3),(4).

( , ) ( , ) ( , ) ( , )eqa a a a a

tg t t t g t g t g tτ∆ ⎡ ⎤+ ∆ + ∆ = − −⎣ ⎦x e x x x

(20) 本研究では,指標関数φ の時間発展を記述する LBE(20)の離散化

スキームを,セミ・ラグランジュ型格子ボルツマンスキーム

h=65Δz

120Δy120Δx

80Δz

4Δz

dD=20

Liquid film

Dropg

y

x

z

∆x=∆y=∆z=1

h=65Δzh=65Δz

120Δy120Δx

80Δz

4Δz

dD=20

Liquid film

Dropg

y

x

zy

x

z

∆x=∆y=∆z=1

Fig.9 Schematics of three-dimensional computational domain for simulation of single water drop with 10mm diameter falling freely through stagnant air.

Fig.8 Snapshots of pressure field and time series of maximum pressure in collapse of liquid column for aspect ratio n2=2 and initial width a=40∆x, which corresponds to 57.2mm in air-water system.

0 1 2 3 40

1

2

3

Dimensionless time 1 /T nt g a=

(P' m

ax-P

’ 0)/(

∆ρ

gH)

(A)(B)

(C)

(D)

(E)

(A) (B)

(C) (D) (E)

Pres

sure

incr

ease

Pressure field

2 / 2n H a= =

Interface

T1=1.0 T1=1.79

T1=3.0 T1=3.09 T1=4.0

40a x= ∆

32 10g −= ×

( )1x y z∆ = ∆ = ∆ =21.25 10t −∆ = ×

0.0 0.5 1.0 1.5 2.00.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

Max

imum

pre

ssur

e in

crea

se

Dimensionless time

P max

-P0

/Δρ

gh(

)

-2σ

/R

t*=t g/h( )0.5

(A)

(B)

(C)

(D) (E)

(A)

(B)

(C) (D) (E)

Fig.10 Snapshots of gas-liquid interface and time series of maximum pressure in simulation of coalescence and merge of single drop and liquid film under gravity.

Page 6: 18 D4-2 二相流界面追跡シミュレーションのための … · の) ∂ +⋅∇=− − ∂ ∑ ∑ =∑ . ( , ) ( ,) ( ,) ( ,) ∆ = / (-’)/(∆) (∆=∆=∆=) / (

第 18 回数値流体力学シンポジウム D4-2

Copyright © 2004 by JSFM 6

(Semi-Lagrangian Lattice Boltzmann Scheme, SL-LBS)と呼ぶ(36).

SL-LBS では,物理空間が粒子速度空間と同期して等方的に離散

化される.そこでの時間幅∆ tは,同一サイズの等方的な格子で一

様に離散化される物理空間で粒子が速度eaで格子点間を移動する

のにかかる時間に相当する.以下で述べる計算では,多くの2次元 SL-LBS 同様に式(20)で∆ t=1 と設定し,2 次元物理空間を幅 1の正方格子で離散化する一方,速度空間を静止状態のほかに速さ

1と21/2を含む9種類の速度に離散化した(3),(4). 5.2 有限差分型格子ボルツマンスキーム( FD-LBS ) 式(20)のSL-LBSを用いる従来型LBMに対して,近年利用が増

えつつある,いわゆる有限差分格子ボルツマン法(Finite Difference-based LBM, FDLBM)(37)は,物理空間を速度空間と切り

離して離散化する.すなわち,SL-LBS と同じ粒子速度集合を使

用しながら,NS 方程式の有限差分解法と同様に任意形状の格子

で物理空間を離散化するとともに,式(17)中の eaによる線形移流

項に任意の(風上)差分スキームを適用し,時間進行アルゴリズ

ムと時間幅∆tの値を任意に選択する(13),(36).厳密に言えば,セミ・

ラグランジュ形式(20)も式(17)の最もシンプルな有限差分近似の

一種と捉えられるが(37),ここで定義するFD-LBSはFDLBMの離

散化スキームのみを指す. 本研究では3種類の陽的なFD-LBSを選択した.時間進行に関

しては,いずれのFD-LBSでもSL-LBSの式(20)と同じ精度になる

よう2段階Runge-Kutta(改良Euler)法を使用し,LBE(17)の移流

項の離散化では,2次精度風上差分,河村・桑原(K-K) 3次精度風

上(38)および以下の3次精度風上差分スキームを使用した.

, 1 , , 1 , 2,

, 1 , , 1 , 2,

2 3 60

62 3 6

06

a i a i a i a ia x

a

a i a i a i a iia x

g g g gfor eg x

g g f fxfor e

x

+ − −

− + +

+ − +⎧>⎪∂ ⎪ ∆≅ ⎨ − − + −∂ ⎪ <⎪ ∆⎩

(21) 最近市販され始めた空力音-単相流体数値解析ソフトウェア

「CFD200/X-flow」は,著者らが文献(39)を元に提案した簡素化平

衡分布関数(40),(41),(42)と内部自由度を有する熱流体(圧縮性)格子ボ

ルツマン法(40),(42),(43)のLBE(17)をFD-LBSに従って離散化している. 5. 3 2次元界面非定常移流問題のベンチマーク計算 本節では,LBMにおける上述の2種類の時間・空間離散化スキ

ーム,SL-LBS および FD-LBS の二相流界面追跡能力を簡単なベ

ンチマーク計算によって検証する.対象には,2次元(x,y)座標に配

置された直径 d=32 の円形界面を選択した.これを,幅∆x=∆y=1の正方形セルで一様に離散化した空間内においてx,y各方向に一

定速度u = vで移動させた.時間幅∆tはCourant数C=u∆t/∆xが0.1となるよう設定された.衝突緩和時間τ には,3 種類の FD-LBSで∆tに等しい値 を与える一方,SL-LBSでは次の値(44)-(46)を与えた.

1 12 2 3

τ = + (22)

尚,参照のためのC-H式(3)の計算では, 第3章で述べた4次精度

中心差分近似のFVMと2段階Runge-Kutta時間進行スキームを用

いた.また,界面厚さの係数κ2,vdWモデルの定数a, b, Tには,

LBMの全スキームと式(3)で共通して第4章と同じ値を設定した. 本ベンチマーク計算の結果を以下に述べる.まず図11に,各ス

キームで得られた移流後の界面形状を示す関数φ の空間分布を

初期状態と合わせて示す.図に見られるように,LBMの4種類の

スキームの中では,SL-LBS が最も高精度に界面の初期形状を保

持しており(図(c)),C-H 式(3)の結果(図(b))(23)と同等の計算精

度を実現した.一方,FD-LBS では,いずれの風上差分スキーム

による結果でも界面形状が崩れており,2 次精度風上差分スキー

ムの結果で最も大きな数値拡散が観察された.また,式(21)の風

上差分スキームの結果(図(e))では,同じ空間3次精度のK-Kス

キームの結果(図(f))より若干改善された界面形状が得られた.

これは,前者のスキームが,数値粘性を与えるgaの4階空間微分

項において,後者よりも小さい係数を持つためである.

次に,本ベンチマーク計算における流体体積の保存性を検証す

るため,円形領域内部に含まれる正方形空間メッシュ数の変動率

の時間履歴を図12に示す.界面形状と同様に,SL-LBSはいずれ

x

y

x y∆ = ∆

u v=

32d x= ∆

φ(a) Initial condition. (b) Finite volume scheme for Eq.(3).

(c) Semi-Lagrangian lattice Boltzmann scheme, Eq.(20).

(d) 2nd-order upwind difference scheme.

(e) 3rd-order upwind difference scheme.

(f) Kawamura-Kuwahara difference scheme.

Fig.11 Snapshots of two-dimensional two-phase fluid interface in linear transfer simulation for Courant number C = u∆t/∆x=0.1.

Fig.12 Volume conservations in benchmark simulations of two- dimensional interface transfer.

Courant number C =0.1

CH-FVMSL-LBM

FD-LBM (2nd order)FD-LBM (3nd order)FD-LBM (K-K 3rd order)

0 10 20 30 40 50-0.15

-0.1

-0.05

0

0.05

Dimensionless time

Var

iatio

n ra

tio o

f

circ

ular

-sha

ped

phas

e vo

lum

e

t*=tu/d

Page 7: 18 D4-2 二相流界面追跡シミュレーションのための … · の) ∂ +⋅∇=− − ∂ ∑ ∑ =∑ . ( , ) ( ,) ( ,) ( ,) ∆ = / (-’)/(∆) (∆=∆=∆=) / (

第 18 回数値流体力学シンポジウム D4-2

Copyright © 2004 by JSFM 7

のFD-LBSよりも精度良く流体体積を保存するとともに,C-H方

程式(3)のFVMによる計算とほぼ同精度の保存性を実現した.尚,

SL-LBSとC-H式の結果を比較すると,図13のようにSL-LBSの

方が界面の初期形状をより高精度に保持することが確認された.

SL-LBS で用いた式(22)のτ は,式(20)を∆t3オーダーまでTaylor

展開して現れる,4 階空間微分項による数値粘性を打ち消す条件

に相当する(44)-(46).本研究ではさらに,SL-LBSにおいて式(22)以外

の 2 つのτ の値でも上述同様の移流ベンチマーク計算を実施した.

その結果,図14が示すように,式(22)より小さなτ の値(a)では進

行方向の背後の界面で数値拡散が顕著に現れる一方,大きな値(b)では逆に前方側の界面形状が崩れた.以上の結果から,SL-LBSには高精度な二相流界面移流を実現する最適な衝突緩和時間が存

在し,その値は離散化 LBE 式(20)の数値粘性を最小化するもの(44)-(46)であるとともに,式(20)から C-H 式(3)を理論的に導出する(3),(4),(47)ことにより求められ得ることを確認した.

6 まとめ 本論文では, 従来とは異なる統計熱力学的アプローチにより二

相流界面をより高精度かつ高効率に追跡できる数値計算法の開発

を目的として,フェーズフィールドモデル(PFM)(1),(2),格子ボ

ルツマン法(LBM)(3),(4)の時空間離散化スキーム,以上 2 つの数

値計算技術を界面追跡計算精度の点から検討した.前者に関して

は,重力下における液柱崩壊および自由落下液滴と液膜の衝突合

体の数値シミュレーションをナビエ・ストクス(NS)式を扱うPFM計算(NS-PFM)法(22),(23)により実施し,その結果を既存の実験結果(31)

と数値計算結果(24),(32)-(34)と比較した.一方,後者に関しては,簡単

な 2 次元界面の非定常移流ベンチマーク計算を通して LBM にお

ける各種スキームの計算精度を評価した.以上の計算結果から得

られた知見を以下にまとめる.

(1) 著者らが文献(17)に基づき提案した NS-PFM 法(22),(23)は密度比

約800の二相流の数値シミュレーションを安定に実施できる. (2) 本NS-PFM法は,崩壊する液柱の界面挙動に関して,既存の

実験結果に良く一致する結果を与えるとともに,界面追跡可

能な従来の計算法とほぼ同じ計算精度を有する. (3) 気相中を自由落下する液滴と静止液膜の衝突の NS-PFM 計

算において,界面の移流,合一・変形および圧力場に関して

定性的に妥当な結果が得られた. (4) PFMのCahn-Hilliard(C-H)方程式(3)(30)は,非平衡場の瞬時

局所的な化学ポテンシャルバランスを計算することによって,

従来アルゴリズムを用いることなく体積および形状保存性の

良い界面の移流と形状再構成を実現する. (5) C-H 式(3)と等価なLBM の支配方程式LBE(17)に関しては,

Courant数0.1の場合,セミ・ラグランジュ型時空間離散化ス

キーム(SL-LBS)(20)は,体積および界面形状の保存性の点で

他の有限差分型スキーム(FD-LBS)より優れる. (6) 式(20)で示されるSL-LBSは,有限体積法によるC-H式(3)の

直接的な離散化スキームよりも高精度に界面形状を保持する. 以上により,フェーズフィールドモデルおよび格子ボルツマン法

のセミ・ラグランジュ型離散化スキームが二相流界面追跡計算に

有用であることが確認された. FD-LBS では,空間格子幅と時間幅を SL-LBS より柔軟に選択

できるため,数値安定性を容易に改善できることが知られている(37),(48).しかしながら,SL-LBS の数値不安定性の問題は,運動方

程式を再現できる LBE から圧力と流速を求める際に顕著に発生

するものであり,指標関数φ のようなスカラー量の移流拡散を計

算するだけであれば,保存性の点からではFD-LBSよりも古典的

なSL-LBSの方が適切であると考えられる. 尚,使用した PFM 二相流計算手法は,種々の離散化スキーム

や計算アルゴリズムを適用できるため,計算対象の形状や任意の

座標系への拡張,時間・空間精度,数値安定性等に関する種々の

要求にも柔軟に対応できる.また,C-H方程式(3)に対しては,van der Waals モデル(5)以外の二重井戸形式の自由エネルギー関数(10),(11),(16),(18)も適用できる. 謝辞:以上で示した研究成果は,文部科学省・原子力試験研究課

題「微視的数値解析手法による地層環境内の物質拡散現象予測の

高度化」(期間:2002年度~2004年度,実施機関:産業技術総合

研究所,研究者:高田尚樹,三澤雅樹)において得られたもので

ある.関連する研究支援部署の職員の方々をはじめ,研究協力と

ご指導を賜りました神戸大学・教授の冨山明男先生,ならびに二

相流格子ボルツマン法に関する助言を賜りました京都大学・教授

の稲室隆二先生に対して,ここで心より御礼を申し上げます. 参考文献 (1) Bray, A. J., “Theory of phase-ordering kinetics,” Adv. Phys., 43

(1994), pp.357-459. (2) Anderson, D.M., McFadden, G.B., and Wheeler, A.A.,

“Diffuse-interface methods in fluid mechanics”, Annu. Rev. Fluid Mech., 30 (1998), pp.139-165.

(3) Succi, S., “The lattice Boltzmann equation for fluid dynamics and beyond” (2001), Oxford at the Clarendon Press.

(4) Chen, S. and Doolen, G.D., “Lattice Boltzmann method for fluid flows,” Annu. Rev. Fluid Mech., 30 (1998), pp.329-364.

(5) Jacqmin, D., “Calculation of two-phase Navier-Stokes flows using phase-field modeling,” J.Comput.Phys., 155 (1999), pp.96-127.

(6) Jamet, D., Lebaique, O., Coutris, N. and Delhaye, J.M., “The second gradient method for the direct numerical simulation of liquid-vapor

x

y

φ x

y

φx

y

φ x

y

φ

Fig.14 Snapshots of 2D two-phase fluid interface in linear transfer simulation using SL-LBS Eq.(20) for Courant number C = 0.1.

(a) 1 12 4 3

τ = + (b) 1τ =

minφ maxφ

4∆y4∆x

2min maxφ φφ +

=

x

y

x

yminφ maxφ

4∆y4∆x

Fig.13 Snapshots of interface profile drawn as a contour line of the index function φ in 2D transfer benchmark simulation for Courant number C =0.1.

(a) Finite volume scheme for C-H equation(3).

(b) SL-LBS, Eq.(20).

Page 8: 18 D4-2 二相流界面追跡シミュレーションのための … · の) ∂ +⋅∇=− − ∂ ∑ ∑ =∑ . ( , ) ( ,) ( ,) ( ,) ∆ = / (-’)/(∆) (∆=∆=∆=) / (

第 18 回数値流体力学シンポジウム D4-2

Copyright © 2004 by JSFM 8

flows with phase change,” J.Comput.Phys., 169 (2001), pp.624-651. (7) Morita,H., Kawakatsu,T., and Doi,M., “Dynamic density functional

study on the structure of thin polymer blend films with a free surface”, Macromolecules, 34 (2001), pp.8777-8783.

(8) Bi, Z., and Sekerka, R. F., “Phase-field model for solidification of a binary alloy”, Physica, A 261 (1998), pp.95-106.

(9) Swift, M.R., Osborn, W.R. and Yeomans, J.M., ”Lattice Boltzmann simulation of nonideal fluids,” Phys.Rev.Lett.,75(1995), pp.830-833.

(10) Swift, M. R., Orlandini, E., Osborn W. R., and Yeomans, J. M., “Lattice Bolztammn simulations of liquid-gas and binary fluid systems,” Phys. Rev. E, 54 (1996), pp.5041-5052.

(11) Gonnella, G., Orlandini, E. and Yeomans, J.M., ”Lattice Boltzmann simulations complex fluids,” Int. J. Modern Phys., C 8 (1997), pp.783-792.

(12) Chen, Y., Teng, S. and Ohashi, H., “On the lattice Boltzmann modeling of multi-phase flows”, Proc. 3rd Organized Multiphase Flow Forum ’99, Yokohama, Japan, Dec. 2-3 (1999), 58-64.

(13) 瀬田剛, 高橋亮一, 奥井健一, 竹越栄俊, “二相流に対する熱

流動格子ボルツマンモデルの提案”, 機論 B, 68-672 (2002), pp.2186-2194.

(14) Seta, T., Kono, K., and Chen, S., “Lattice Boltzmann method for two-phase flows,” Int. J. Modern Phys., B 17 (2003), pp.169-172.

(15) Inamuro, T., Tomita, R. and Ogino, F., “Lattice Boltzmann simulations of drop deformation and breakup in shear flows,” Int. J. Modern Phys. B, 17 (2003), pp.21-26.

(16) Ebihara,K., and Watanabe,T., “Lattice Boltzmann simulation of the interfacial growth of the horizontal stratified two-phase flow”, Int. J. Modern Phys. B, 17 (2003), pp.113-117.

(17) Inamuro, T., Ogata, T., Tajima, S., and Konishi, N., “A lattice Boltzmann method for incompressible two-phase flows with large density differences”, J. Comput. Phys., 198 (2004), pp.628-644.

(18) 松隈洋介, “格子ボルツマン法による二相流の乱流解析”, 日本機械学会2004年度年次大会講演資料集, Vol.8, 132-133.

(19) Takada, N., Misawa, M., Tomiyama, A. and Hosokawa, S., “Simulation of bubble motion under gravity by lattice Boltzmann method,” J. Nucl. Sci. Technol., 38 (2001), pp.330-341.

(20) Takada, N., Tomiyama, A., and Hosokawa, S., ”Numerical simulation of drops in a shear flow by a lattice-Boltzmann binary fluid model,” Comput. Fluid Dyn. J., 12 (2003), pp.475-481.

(21) 高田尚樹, 冨山明男, “統計熱力学的界面モデルを用いたせん

断流中における液滴挙動の数値シミュレーション”, 機論 B, 70-699 (2004), No.04-0121(印刷中).

(22) 高田尚樹, “Phase-Fieldモデルに基づく二相流数値解析手法の

研究”, 第17回数値流体力学シンポジウム講演論文集 (2003), No. B9-4.

(23) 高田尚樹, 冨山明男, “PHASE-FIELD MODEL に基づく二相

流数値計算手法”, 機論B, 論文No.04-0186(2004, 掲載決定). (24) Hirt, C.W. and Nichols, B.D., ”Volume of Fluid (VOF) method for

the dynamics of free boundaries,” J.Comput.Phys., 39 (1981), pp.201-225.

(25) 秋山守, 有冨正憲ほか,”新しい気液二相流数値解析‐多次

元流動解析‐” (2002), 150-177, コロナ社. (26) Brackbill, J.U., Kothe, D.B. and Zemach, C., “A continuum

method for modeling surface tension,” J. Comput. Phys., 100 (1992), pp.335-354.

(27) 功刀資彰, “自由界面を含む多相流の直接数値解析手法,” 機論B, 63-609 (1997), pp.1567-1584.

(28) Yabe, T., Ishikawa, T, Wang, P.Y., Aoki, T., Kadota, Y. and Ikeda, F., A Universal Solver for Hyperbolic Equations by Cubic-

Polynomial Interpolation, II. Two- and Three-Dimensional Solvers, Comput. Phys. Commun., 66 (1991), pp. 233-242.

(29) 矢部孝, 内海隆行, 尾形陽一,”CIP法” (2003), 森北出版. (30) Cahn, J.W., and Hilliard, J.E., “Free energy of a nonuniform system

Ⅰ. Interfacial free energy,” J. Chem. Phys., 28 (1958), pp.258- 267. (31) Martin, J. C., and Moyce, W. J., “An experimental study of the

collapse of liquid columns on a rigid horizontal plane”, Philos. Trans. Roy. Soc. London, Ser.A, 244 (1952), pp.312-324.

(32) 越塚誠一, “数値流体力学” (1997), 培風館. (33) S. Koshizuka, H. Tamako and Y. Oka, "A Particle Method for

Incompressible Viscous Flow with Fluid Fragmentation," Comput. Fluid Dyn. J., 4 (1995), pp.29-46.

(34) Koshizuka, S., and Oka, Y., “Moving-particle semi-implicit method for fragmentation of incompressible fluid,” Nucl.Sci.Technol., 123 (1996), pp.421-434.

(35) Bhatnagar, P.L., Gross, E.P. and Krook, M., “A model for collision processes in gases. Small amplitude processes in charged and neutral one-component systems,” Phys. Rev., 94 (1954), pp.511-525.

(36) 瀬田剛, “格子ボルツマン法の非構造格子への適用”, 日本機

械学会2004年度年次大会講演資料集, Vol.8, 128-129. (37) Cao, N., Chen, S., Jin, S., and Martinez, D.,“ Physical symmetry and

lattice symmetry in lattice Boltzmann method,” Phys. Rev. E, 55 (1997), pp.21-24.

(38) Kawamura, T., and Kuwahara, K., “Computation of high Reynolds number flow around a circular cylinder with surface roughness”, AIAA Paper (1984), 84-0340.

(39) Chen, Y., Ohashi, H., and Akiyama, M., “Thermal lattice Bhatnagar-Gross-Krook model without nonlinear deviations in macrodynamic equations”, Phys.Rev. E, 50 (1994), pp.2776-2783.

(40) Takada, N., Tsutahara, M., and Yamakoshi, Y., "Numerical simulation of compressible fluid by lattice Boltzmann method", Proc. The Second Asian Computational Fluid Dynamics Conference, Vol.1, 256-260, No.ACFD2-2C4, Dec.15-18, 1996, Tokyo, Japan.

(41) 高田尚樹, 山越康広, 蔦原道久, “三次元熱流体格子ボルツマ

ン・モデルによる流体解析”, 機論B, 64 (1998), pp.3934-3941. (42) 高田尚樹, “格子ボルツマン法による流体現象の数値シミュ

レーションに関する研究”, 神戸大学博士論文(1998), 66-167. (43) 高田尚樹, 蔦原道久, "格子ボルツマン法における内部自由度

を有する格子BGKモデルの提案”, 機論B, 65 (1999), pp.92-99. (44) Qian, Y.H., and Orszag, S.A., ”Scalings in reaction A+B→C:

Numerical simulation by lattice Boltzmann models”, J.Stat.Phys., 18 (1995), pp.237-253.

(45) Orlandini, E., Swift, M.R., and Yeomans, J.M., “A lattice Boltzmann model of binary-fluid mixtures,” Europhys.Lett., 32 (1995), pp.463-468.

(46) Hirabayashi, M., Chen, Y., and Ohashi, H., “The lattice BGK model for the Poisson equation,” JSME Int. J., Ser.B, 44 (2001), pp.45-52.

(47) 曾根良夫, 青木一生, “分子気体力学” (1994), 朝倉書店. (48) 瀬田剛, 高橋亮一, “FDLBM への半陰解法の適用と数値的安

定性解析”, 機論B, 67-659 (2001), pp.1662-1671.