Upload
others
View
5
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
1.コイルが1つのときの発電波形
図1 界磁石とコイル
2つの磁石,すなわち磁界の間に,コイルAを図1のように置く.Oを中心にコイルを等速度で回転させる.コイルの角度をθ とする.コイルには電磁誘導により,VAの起電力が発生する.
図2 起電力
VAをθ に対して示すと,図2のようになる.コイルを貫く磁束は,cosθに比例するので,起電力は,sinθに比例する.
図3 コイルと整流子
コイルの端を,図3のようにコイルと一緒に回転する整流子(commutator)(1),(2)につなぐ.
図4 整流子間電圧
整流子(1)-(2),(2)-(1)間の電圧を図4に示す.もちろん,(1)-(2)間電圧と(2)-(1)間電圧では極性が反転している.
図5 整流子と刷子
起電力は整流子から,固定された刷子(brush)を介して図5のように取り出す.
図6 整流子間電圧と整流子の角度
図5(a)ではθ = 90deg.で整流子(1)-(2)間電圧が刷子間に現われ,(b)ではθ = 270deg.で整流子(2)-(1)間電圧が刷子間に現われる.これを図4とともに表すと,図6のようになる.
図7 刷子間電圧
結局,刷子間電圧,すなわち出力電圧は,図7の黒線のようになる.全波整流波形となっていて,完全な直流ではない. なお,整流子と刷子は,ダイオード4個と同じ働きをしていることがわかる.言い換えれば,・整流子と刷子を使った直流発電機と・交流発電機とダイオード4個は同じ働きをする.
2.コイルが3つのときの発電波形
図8 界磁石とコイル
2つの磁石,すなわち磁界の間に,3つの等しいコイルA,B,Cを互いに120deg.の角度で図8のように置く.Oを中心に3つのコイルを等速度で回転させる. Aのコイルの角度をθ とする.3つのコイルA,B,Cには電磁誘導により,それぞれVA,VB,VCの起電力が発生する.
図9 起電力
VA,VB,VCをθ に対して示すと,図9のようになる.VA,VB,VCは大きさが同じで,互いに120deg.の位相差があり,三相交流となっている.したがって,
VA = −VB − VC
VB = −VC − VA
VC = −VA − VB
の関係がある.
図10 コイルと整流子
3つのコイルA,B,Cを図10のように配線し,コイルと一緒に回転する整流子(commutator)(1),(2),(3)につなぐ.VA = −VB − VC,VB = −VC − VA,VC = −VA − VB
の関係があるので,コイル間で電流は流れない.
(a)
(b)
図11 整流子間電圧
整流子(1)-(2),(2)-(3),(3)-(1)間の電圧を図11(a)に示す.また,整流子(1)-(3),(2)-(1),(3)-(2)間の電圧を(b)に示す.もちろん,(1)-(2)間電圧と(2)-(1)間電圧では極性が反転している.
図12 整流子と刷子
起電力は整流子から,固定された刷子(brush)を介して図12のように取り出す.
図13 整流子間電圧と整流子の角度
図12(a)ではθ = 90deg.で整流子(1)-(2)間電圧が刷子間に現われ,(b)ではθ =150deg.で整流子(1)-(3)間電圧が刷子間に現われ,,・・・,(f)ではθ = 390deg.で整流子(3)-(2)間電圧が刷子間に現われる.これを図11とともに表すと,図13のようになる.
図14 刷子間電圧
結局,刷子間電圧,すなわち出力電圧は,図14の黒線のようになる. コイルが1つの場合,全波整流波形となるが,コイルが3つの場合,図14のような三相交流全波整流波形となって,電圧の脈動が軽減されている. なお,この場合も,三相交流発電機とダイオード6個の場合と同じである.
3.軟磁性磁芯をいれる理由
(a)
(b)
図15 コイルと軟磁性磁芯
電機子(armature)コイルは,図15(a)のように空芯でもよいが,通常(b)のように鉄などの軟磁性磁芯をいれる.コイルは磁芯に巻かれるので,磁芯はコイルと一緒に回転する.ここでは,軟磁性磁芯をいれる理由を考える.なお,軟磁性磁芯は,磁化が大きく,保磁力や磁気異方性が小さい軟磁性体で作られる.
図16 界磁石と磁界H
界磁石は図16のように磁界H をつくる.
(a)
(b)
図17 軟磁性磁芯と磁化M
界磁石の磁界によって,軟磁性磁芯は図17(a)のように磁化され,軟磁性磁芯の磁化Mが(b)のように向く.
図18 磁極と反磁界Hd
軟磁性磁芯の磁化の先端に磁極(+,-)が発生し,その磁極が図18のように反磁界Hd をつくる. 結局,コイルの位置における磁束密度B0 は,空芯の場合,
B0 = H
軟磁性磁芯をいれた場合の磁束密度B1は,
B1 = H + 4πM − Hd
となる. 一般に,
4πM > Hd
であるので,
B1 > B0
となり,軟磁性磁芯をいれた方が磁束密度が大きくなる. たとえば,軟磁性磁芯が円柱の場合,Hd は近似的に,
Hd =1
2⋅ 4πM = 2πM
となるので,
B1 = H + 4πM − Hd = H + 4πM − 2πM = H + 2πM
となって,
B1 > B0
となる. 電磁誘導による起電力は,コイルを貫く磁束の時間変化に比例するので,軟磁性磁芯をいれて磁束密度を大きくした方が,起電力が高くなる.
(a)
(b)
図19 軟磁性磁芯の磁化変化
なお,軟磁性磁芯はコイルと一緒に回転するが,軟磁性体からできているので,図19(a),(b)に示すように,軟磁性磁芯の磁化は常に界磁石の磁界の方向を向く.
4.軟磁性磁芯を分割する理由
図20 軟磁性磁芯
軟磁性磁芯が鉄のような金属の場合には電流が流れることができるので,注意が必要である.図15(b)を上から見た図を図20に示す.このように金属磁芯が一体でできている場合,磁芯はショートされたコイルと考えることができる.
図21 渦電流の流れる軟磁性磁芯
すなわち,図21に示すように,発電時にコイルの起電力を整流子,刷子を介して外部に取り出す.同時に,金属磁芯が一体でできている場合には,図に示すように磁芯に渦電流が流れ,ジュール熱が発生し,損失となる.
図22 渦電流の流れない軟磁性磁芯
そこで,図22に示すように,薄い板を用いて,板と板の間を絶縁して重ねて金属磁芯を作る.板と板の間が絶縁されているので,渦電流が流れなくなり,損失を大幅に減らすことが可能になる.