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平成30年度から、新学習指導要領全面実施に向けた移行措置期間が始まります。小学校では平成32年度から、中学校では
平成33年度から全面施行となります。今回の改訂はこれまで以上に大きな改善が伴うと言われていますが、現行の学習指導要
領から新学習指導要領へ移行する上でのポイントを押さえて実施に向けた備えが大切です。
1,学習指導要領改訂の背景
今日、わたしたちは、産業の発達による成熟した経済や情報化、グローバル化された社会構造や世界情勢の急激な変化の渦の
中に置かれています。このような多様化、複雑化する世の中において、わたしたち自身の感性を豊かに働かせながら、どのよう
な社会や未来を創りあげ、人生をよりよいものにしていくのかが問われています。予測できない未知の時代にあっても、「主体
的に学び続けて自らの能力を引き出し、自分なりに試行錯誤したり、様々な他者との対話や協働をしたりすることにより、新た
な価値を生み出していくことが出来るようになること」が大切であり、そのために、「生きて働く知識と時代に求められる資質
や能力」が必要であるといわれています。これらは学校教育において育成されることがたいへん重要であると考えられ、学校と
社会がこの重要性を共通の認識として共有し実現を目指していくことが求められています。今回の学習指導要領は、来る多様な
変化の時代に対応するための大きな改訂と言えます。
2,学習指導要領改訂の方向性について
今回の改訂では、まずこれからの時代に必要な育成を目指すべ
き資質や能力を「3つの柱」として挙げられています。それは「学
びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう人間性等の涵
養」、「生きて働く知識・技能の習得」、「未知の状況にも対応でき
る思考力・判断力・表現力等の育成」の3つで、これらをバラン
スよく育成するためにカリキュラム・マネジメントの実現や学習
評価の充実、主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)
の視点からの学習過程の改善が求められています。
3,改訂の主な内容(改善事項)について
特に、道徳教育、外国語教育に関しては、今回の大きな改善事
項として捉えることができます。
(道徳教育の充実)
先行する道徳の特別教科化(小:H30年4月、中:H31年4月)による、道徳的価値を自分事として理解し、多面的・多
角的に深く考えたり、議論したりする道徳教育の充実。
(外国語教育の充実)
小学校において、中学年で「外国語活動」を、高学年で「外国語科」を導入。小・中・高等学校一貫した学びの重視、国語教
育との連携を図り日本語の特徴や言語の豊かさに気づく指導の充実。
その他、言語能力の確実な育成、理数教育の充実、伝統や文化に関する教育の充実、体験活動の充実、幼稚園教育要領の改善、
初等中等教育の一貫した学びの充実、情報活用能力(プログラミング教育含む)の向上、子供たちの発達の支援、部活動、主権
者教育、消費者教育、防災・安全教育などの充実が挙げられています。
(参考資料)~新学習指導要領総則解説編 中教審答申(H28年 12 月) 文科省HP~より 以下同じ
184号の特集を組むにあたり、所員会議で学習指導要領の改訂についての内容をその柱とすることが決定されまし
た。特集1では新学習指導要領の改訂の背景や全体像を、特集2では「特別の教科道徳」について、特集3では「授
業改善とカリキュラムマネジメント」を内容としました。この特集は 185 号にも継承され「外国語活動」「カリキュ
ラムマネジメントⅡ」について掲載される計画となっています。皆さんの実践に役立つことを祈念しています。
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4, 教育課程改訂のキーワード「主体的・対話的で深い学び」とは
一昨年ぐらいから新教育課程の話題が出る際に「アクティブ・ラーニング」という言葉が多用されていました。しか
し、この言葉が一人歩きし、「授業中にグループ活動させたらアクティブ・ラーニング!」的な誤解も生じてきたという
ことで、この言葉を後退させ、代わりに多用するようになったのは「主体的・対話的で深い学び」です。
元々、この項目は指導要領改訂の方向性の中で「何ができるようになるか(教育課程の方向性)」「何を学ぶか(指
導項目の選定)」ともに関連し合う「どのように学ぶか」の具体的
な表現です。この三つが関連し合って今回の指導要領の改訂の方向
性が決定されています。つまり、一つの見方としては「三つの柱の
一つ」という見方もできます。一方で、毎日の授業づくりに直接関
わる根幹に触れている項目なので、新指導要領が実施される前から
各先生方で取り組んでもいっこうに構わず、「授業改善の目安」と
して考えてもらっても構わない項目です。
中教審が28年12月に出した答申において、「主体的・対話的で深い学び」は以下のように定義されています。
今回挙げた3つの学びはそれぞれ単独で存在する訳ではなく、互いに関連し、影響し合って深まるものであり、一つが高ま
れば、他の二つにも影響があるという性質のものです。自分が担当する学年・教科の中でどのような取り組みができるのか、各
先生方の工夫が求められています。
何ができるようになるか
教育課程の方向性
どのように学ぶか
学習過程の改善
何を学ぶか
指導項目の選定
【主体的な学び】
学ぶことに興味や関心を持ち、自己のキャリア形成の方向性と関連づけながら、見通しを持って粘り強く取組み、自らの学習活動を振
り返って次につなげる「主体的な学び」が実現できているか。
近年の授業改善について検討し合う場では「見通し」と「振り返り」の二つの言葉がよく出てきます。授業の中で明確な学習目標・学
習課題を設定し、それが達成できたかを確かめる場を作る、そのことと児童生徒の興味関心や目的意識を有機的に繋げていくのが「主体
的な学び」と解釈できます。
【対話的な学び】
子供同士の協働、教師や地域の人との対話、先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ、自らの考えを広げ深める「対話的な学び」
が実現できているか。
ここが最も「アクティブ・ラーニング」的要素が強いところではないかと思われます。教師と各児童生徒との1対1のやり取りだけで
なく、児童生徒同士のやり取りやグループ同士のやり取りなど、多様な「対話」を授業の中に取り入れよう、という考え方です。ここで
いう「対話」とは「話し合い」とは限りません。資料や講話などから必要な情報を取り出す作業や、自分の発表を推敲する作業も「自ら
の考えを広げ深める」活動であり、「自分との対話」ととらえることができます。
【深い学び】
習得・活用・探究の見通しの中で、教科等の特質に応じた見方や考え方を働かせて思考・判断・表現し、学習内容の深い理解につなげる
「深い学び」が実現できているか。
この「深い」という言葉が厄介です。何と比べて「深い」のか、という基準がないと、「深い」学びができた、と判断するのは難し
く、その基準は教科や教材、そして児童生徒自身の資質にも左右される要素です。
指導要領の解説では「見方・考え方」という言葉をその鍵としています。知識をそれぞれバラバラに覚えている、ではなく、習得した
知識や情報を互いに関連づけたり、自分の思いや考え方をベースにして知識や情報を「構造化」したりする力が育つことが「深い」と評
価するのではないかと解釈します。学習したことを自分自身で整理整頓したり、別の課題に応用してみたりと「知識を使う」態度が「見
方・考え方」ではないでしょうか。
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5,「カリキュラム・マネジメント」の確立
教育課程(カリキュラム)とは、
学校教育の目的や目標を達成するために、教育の内容を子供の心身の発達に応じ、授業時数との関連において
総合的に組織した学校の教育計画
カリキュラム・マネジメントとは、
学習指導要領等を受け止めつつ、子供たちの姿や地域の実情等を踏まえて、各学校が設定する学校教育目標を
実現するために、学習指導要領等に基づき教育課程を編成し、それを実施・評価し改善していくこと
今回の改定で目指すものは、
学習指導要領等を手がかりに、この「カリキュラム・マネジメント」を実現し、学校教育の改善・充実の
好循環を生み出していくこと
(中央教育審議会 平成28年12月21日答申より)
↑学習指導要領改定の方向性(中教審答申 同上)
→学習指導要領総則の構造とカリキュラム・マネジ
メントのイメージ(中教審答申 同上)
改善事項をまとめ、枠組みを考えていく必要があるもの ①「なにができるようになるか」 (育成を目指す資質・能力)
②「何を学ぶか」 (教科等を学ぶ意義、教科間・学校段階間のつながりを踏まえた教育課程の編成)
③「どのように学ぶか」 (教科等の指導計画の作成と実施、学習・指導の改善・充実)
④「子供一人一人の発達をどのように支援するか」 (子供の発達を踏まえた指導)
⑤「何が身についたか」 (学習評価の充実)
⑥「実施するために何が必要か」 (学習指導要領等の理念を実現するために必要な方策)
これらの事項を、各学校が組み立てる
地域・家庭と連携・協働しながら実施する
目の前の子供たちの姿を踏まえながら不断の見直しを図る ことが求められています。
学校教育の改善・充実の好循環
具体的にはなにをすればいいの? ① 各教科等の教育内容を相互の関係で捉
え、学校教育目標を踏まえた教科等横断的
な視点で、その目標の達成に必要な教育の
内容を組織的に配列していくこと。
② 教育内容の質の向上に向けて、子供たち
の姿や地域の現状等に関する調査や各種
データなどに基づき、教育課程を編成し、
実施し、評価して改善を図る一連の PDCA
サイクルを確立すること。
③ 教育内容と、教育活動に必要な人的・物
的資源等を、地域等の外部の資源も含めて
活用しながら効果的に組み合わせること。
これらの今までやってきたことを、校長を中
心としつつ、教科担や学年の枠を越えて、学校全
体で取り組んでいくことができるよう、学校の
組織や経営の見直しを図る必要があります。
授業時数の増加への対応 特に小学校の先生必見! 小学校中学年 外国語活動導入 高学年 教科としての外国語科導入
小学3~6年生の授業時数が年間35単位時間ずつ増加します。
どのように対応していくか、校内や学校間で考える必要があります。
対応例 利点と欠点(例) 必要な条件整備(例)
年間授業日数
の増加
(土曜授業や、長期
休業期間の調整)
〇毎日や毎週のリズムを変え
ずに、45分授業が可能。
△休業日の児童の活動が制約
を受ける。
△授業週数が増え、週の教科等
の時間割が変則的に。
・地域や家庭の理解を得ら
れること。
・長期休業間における児童
の活動機会の確保。
・休業日の調整などの、教育
委員会の主導体制。
帯授業や長時
間授業を設定
(15 分×週3回)
(60 分授業)
〇学習内容や児童の実態等に
応じた柔軟な授業時間設定
が可能。
〇休業日の活動の保証が可能。
△学習規律の確立や教育内容
の計画的な実施がより大切
・学習規律の確立。児童の集
中力・持続力。
・帯時間の活用の学校全体
での調整。
・時数管理
45 分授業を
週一つ増やす
〇毎日や毎週のリズムを変え
ずに、45分授業が可能。
△放課後の時間の確保に難。
・放課後活動の調整。
・児童の集中力・持続力。
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新学習指導要領で求められているものと自校の子どもの実態を正しく捉え、組織的計画的に教育課程の整備を
することが求められています。教職員一人一人の自覚的な参加が期待されます。
6,学習指導要領改訂のスケジュール
来年度から「移行期間」が始まります!(小・中学校)
移行措置の概要
小学校(平成30~31年度) 中学校(平成30~32年度)
① 総則、総合的な学習の時間、特別活動
教科書の対応が必要でないもののくくり。
平成30年度から新学習指導要領で指導。
② 指導内容や指導する学年の変更などにより特例を定める教科
指導する学年の変更などがあります。(文科省 HP の「移行措置関連資料」参照)
指導内容の欠落が生じることがないように、注意が必要です。
【移行措置がある教科】
国語・社会・算数・理科
平成30年度から新学習指導要領で指導。
③ 上記以外の教科
新学習指導要領によることができる。
生活・音楽・図画工作・家庭・体育 音楽・美術・技術家庭・外国語
④ 道徳科(特別の教科)
平成30年度から新学習指導要領で指導。 平成31年度から新学習指導要領で指導。
(平成30年度からの先行実施も可能。)
【移行措置がある教科】
国語・社会・数学・理科・保健体育
⑤ 外国語
外国語活動の時数が3~6学年で、各15時間増。
※移行措置期間中は、総合的な学習の時間から、
15単位時間までは、振り返ることができる。
30年度~全面実施
32年度~全面実施
33年度~全面実施
34年度~
年次進行で実施