10
15 厚生労働省 総合職入省案内 2018 16 あなたが成し遂げたいことを実現できる場所は、どこでしょうか。 就職は、 “選ばれる”だけでなく、 “選ぶ”ものでもあることを忘れてはいけません。 国家公務員という職業、厚生労働省という職場を知っていただくため、 第2章では、厚生労働省での業務や働き方に焦点を当てていきます。 この 国 と 、ともに 。 〜厚生労働省で働くということ〜 キャリアを描くには 省外での活躍 〜 国内・海 外・家 庭 〜 多様な職員と幅広い業務が 厚生労働省の魅力のひとつ。 様々な場所で 活躍する職員を紹介します。 2 社会を変えるには 働き方改革を実行する 医療から未来をつくる すべての子どもの未来のために 厚生労働省が掲げる政策目的から 3つをピックアップし、 勤続年数も部局も異なる職員から、 その達成のために取り組む 仕事について紹介します。 1 2

2 この国と、ともに。 - mhlw€¦ · 総理自ら議長となり、労使のトップを含めた有識者に官邸に参 集いただき、議論のための議論ではなく、具体策について社会的

  • Upload
    others

  • View
    1

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 2 この国と、ともに。 - mhlw€¦ · 総理自ら議長となり、労使のトップを含めた有識者に官邸に参 集いただき、議論のための議論ではなく、具体策について社会的

15 厚生労働 省 総合職 入省 案内 2 018 16

あなたが成し遂げたいことを実現できる場所は、どこでしょうか。就職は、“選ばれる”だけでなく、“選ぶ”ものでもあることを忘れてはいけません。国家公務員という職業、厚生労働省という職場を知っていただくため、第2章では、厚生労働省での業務や働き方に焦点を当てていきます。

この 国と、ともに 。〜 厚 生 労 働 省 で 働くということ〜

キャリアを描くには省外での活躍

〜国内・海外・家庭〜

多様な職員と幅広い業務が厚生労働省の魅力のひとつ。

様々な場所で活躍する職員を紹介します。

第 2 節

社会を変えるには働き方改革を実行する医療から未来をつくる

すべての子どもの未来のために

厚生労働省が掲げる政策目的から3つをピックアップし、

勤続年数も部局も異なる職員から、その達成のために取り組む仕事について紹介します。

第 1 節

第 2 章

Page 2: 2 この国と、ともに。 - mhlw€¦ · 総理自ら議長となり、労使のトップを含めた有識者に官邸に参 集いただき、議論のための議論ではなく、具体策について社会的

17 厚生労働 省 総合職 入省 案内 2 018

ぼくの夢

大きくなったら

ぼくは博士になりたい

そしてドラえもんに出てくるような

タイムマシーンをつくる

ぼくはタイムマシーンにのって

お父さんの死んでしまう

まえの日に行く

そして

「仕事に行ったらあかん」ていうんや

この国と、ともに。〜厚生労働省で働くということ〜

第2章

複雑で困難な課題も乗り越えられつつある 

 過労死や過労自殺の問題は、「日本的雇用慣行」とも呼ばれる雇用システムの在り方と深くつながっています。高度経済成長期以降、経営環境の変化に際して、従業員に配置転換や出向を求める一方、安易に解雇は行わず、OJTを通じて職業能力の向上を図る企業行動が定着しました。その「光」が低い失業率や実践的な職業能力開発ですが、「影」として、長時間労働に伴う健康や生活をめぐる課題が挙げられるでしょう。 この課題に対応するには、働く現場の当事者である労使の合意の下、雇用システムを規律する法制度を見直す必要があります。「労使で合意して36(サブロク)協定を結べば、長時間の残業が許される仕組み」の在り方が問われたのです。 労使の意見が長年対立してきた本件について、平成29年の春、残業時間の上限規制を設ける旨の政労使合意がなされました。その背景として「深刻化する過労死問題を打開しなければ」という認識が共有されたことは、重要であったと思います。

仕事と生活の調和が取れた社会づくりに取り組もう 我が国が人口減少という未曾有の構造変化に直面する中で、雇用システムや法制度をリ・デザインし、一人ひとりの働き手が、心身の健康を保ちつつ、各自の希望やニーズに応じて働ける社会を築くことが求められます。こうした「働き方改革」は、支えられる側から支える側に回る国民を増やし、社会保障制度の基盤を維持・強化することにもつながるでしょう。 我が国の持続可能な発展に向けて、働く人の目線に立って、リ・デザインに取り組む意欲に溢れた皆さんの挑戦を、心からお待ちしています。

働き過ぎで命を失うことがあってはならない 上の詩は、幼少時に父親を過労自殺で亡くした「マー君」が小学校進学後に書いた「ぼくの夢」。議員立法による「過労死等防止推進法」制定に向けた取組の輪を広げた詩です。 我が国において、平成28年度、働き過ぎによる脳・心臓疾患や精神障害で労災認定された方は758人。そのうち、かけがいのない命を失われた方が191人。私は「過労死等防止推進法」に基づく対策を進める仕事を通じ、ご遺族から多くの体験談を伺い、突然の過労死が、ご本人はもちろんご遺族にとって筆舌に尽くしがたい苦痛であることを痛感してきました。一人ひとりの幸福追求権を尊重する我が国にあって、働き過ぎで命を失うことがない社会づくりを進めていかなくてはなりません。

「 働き方 改 革 」の現 場で思う

MESSAGE

「かけ声で終わらせてはならない。」

各所で叫ばれる「働き方改革」。

その本丸が厚生労働省です。

人が生きる中での労働と、

経済社会の発展の基盤となる労働。

どちらも見据えながら、支え、

発展を築き上げなければならない

責任がある。

合い言葉を胸に進む職員を紹介します。

この国と、ともに。

働 き 方改 革 を

実 行 す る

社会を変えるには

第1 節

第 2 章

村山 誠

労働基準局 総務課 課長

Makoto Murayama

平成2年 労働省入省。省内、旧経済企画庁、岡山県庁、

静岡県庁等の勤務を経て、平成22年 内閣官房参事官。平成24年 労働

基準局労働条件政策課長。平成28年より現職。

PROFILE

18

Page 3: 2 この国と、ともに。 - mhlw€¦ · 総理自ら議長となり、労使のトップを含めた有識者に官邸に参 集いただき、議論のための議論ではなく、具体策について社会的

19 厚生労働 省 総合職 入省 案内 2 018 20

 人口減少、少子高齢化は、どんな進路を選択しても、かならず誰もが立ち向かわなければならない課題でしょう。そこに最も深く関与できるのが厚生労働省。この国難にともに立ち向かう方々に来ていただけることを期待しています。

国難克服には政策の実行と進化が必要 ただし、計画策定だけで、実行が伴わなければ、単なる「絵に描いた餅」。なによりも、政策が実際に効果を上げることが重要で、最終的には、少子化の流れが止まる、労働参加が増える、労働生産性が上がる、このことによって人口減少、少子高齢化、それに伴う経済縮小という国難の克服につながらなくてはなりません。そのために、今後、政策をさらに進化させていく必要があります。

総理の強い決意で取り組んでいる「働き方改革」 安倍総理が政権最大の課題とする「一億総活躍社会」の実現、その最大のチャレンジである「働き方改革」。我が国は、100年後には人口が5千万人台になるという急激な人口減少、少子高齢化に直面しています。これは急速な市場・経済の縮小、社会保障制度の崩壊など社会の大変容を招来しかねない問題であり、まさに「未曾有の国難」といえます。 それを克服するための不可欠の手段が一億総活躍社会の実現であり、働き方改革です。少子化の流れを止める、活躍したくてもできない方の労働参加を進める、1人当たりの稼ぎである労働生産性を上げる。総理が「死にものぐるいで取り組まなければならない」と決意を語る政策のほとんどは厚生労働省の政策です。 しかし、どれも労使など関係者の意見が大きく対立し、みんな必要だと分かって長期間議論はしてきたものの、結論に至らなかった大きな困難を伴う課題です。それを安倍総理が「長時間労働を自慢する社会を変える」「世の中から「非正規」という言葉を一掃する」と強い意欲を示して自らのイニシアティブで進めているのが「働き方改革」です。 総理自ら議長となり、労使のトップを含めた有識者に官邸に参集いただき、議論のための議論ではなく、具体策について社会的な合意形成を行ったのが「働き方改革実現会議」、「働き方改革実行計画」です。

「官邸主導」の裏には厚労行政の経験・知識 私は内閣官房一億総活躍推進室・働き方改革実現推進室の総括担当の内閣参事官として、安倍総理、加藤大臣を直接支えながらこの問題に取り組んできました。 各省から参集された推進室のメンバー、労使の関係者、親元の厚労省の同僚、新たに規制の対象となる業界の方々や所管庁の方々、与党の議員などと粘り強く議論しました。ときには本当に取りまとまるのだろうかハラハラしたこともありましたが、なんとか、労働基準法制定以来70年ぶりの歴史的な大改革などと言われるような改革の方向性について合意にこぎつけることができました。 「官邸主導」と、厚労省など一般省庁の頭越しに物事が決まる様な印象を持たれる方もいるかもしれませんが、決してそうではなく、安倍総理の強い想いを実現するため、厚労行政に深い経験・知識を持った厚労省の出身者と、新たな発想を持った他省庁の出身者が十分に議論した上で、それが本当に実現可能なのかを厚労省の同僚とも議論して策定にこぎ着けました。

最 大のチャレンジ「 働き方 改 革 」。国 難 克 服に向けて

この国と、ともに。〜厚生労働省で働くということ〜

第2章

「働き方改革」は何のための改革? 「仕事もしっかりやりたいが、子育ても頑張りたい」、「仕事以外にもやりたいことができた」、「親の介護が必要になったが働き続けたい」、「自身の病気が発覚した」――。働きながら、誰しも『どうしよう』にぶつかる場面があります。そういった職業生活の岐路において、今の日本は、暗黙のうちに、仕事か仕事以外のどちらかを諦めることを「仕方がない」とする社会になっていないでしょうか。一人ひとりの大切な人生で、「どちらも諦めなくていい」選択ができる社会を創りたい。入省4年目、そんな思いで「働き方改革」に取り組んでいます。

多様な政策をコーディネートする役割 そんな社会を創るため、手段を考え、実行するのが私たち行政官の仕事です。例えば、『長時間労働の是正』のため、法律で残業時間の上限を規制する。『育児や介護と仕事の両立』のため、必要な休みが取れる職場環境をつくるとともに、復帰しやすいよう保育や介護サービスも充実させていく。『治療と仕事の両立』のため、会社が活用できる疾患別の支援マニュアルを作成する。政策手段は、法律改正のように拘束力の強いものから、企業を支援する助成金、理解の浸透を助けるマニュアルなど多様で、施策の数は100以上。まさに厚労省の総力を挙げて取り組んでいます。改革を進めるには、その総体を把握し、足りない政策をさらに強化していく必要があります。私の今の部署はいわばそのトータルコーディネーター役をしており、難しくとも働き方改革の推進に必要な仕事です。

厚生労働省だからできること 人生は一定ではありません。働くすべての人に、『どうしよう』は訪れ得ます。そんな時、「厚生行政」と「労働行政」、どちらも担っている厚生労働省だからこそ、ひとの人生をその両面から支えられるのです。そして、働きやすく生活も充実できる社会を創ることは、働き手の減少や少子化という国全体の課題にとっても重要な鍵となります。一人ひとりの人生の幸福と、国難の克服と。その両方の実現に携わることができるこの仕事の魅力と責任の重さを、最近ますます感じています。

及川 侑子

政策統括官付 労働政策担当参事官室 係員

Yuko Oikawa

平成27年 厚生労働省入省。老健局で「介護離職ゼロ」

に向けたニッポン一億総活躍プランの策定、特別養護老人ホームに関す

る政策立案などに携わり、昨夏より現職。

PROFILE

「 諦めない選 択 」ができる人 生のために

武田 康祐

労働基準局 賃金課 課長

Kosuke Takeda

平成7年 労働省入省。雇用均等・児童家庭局、鹿児島

労働局、在タイ日本国大使館、職業安定局、内閣府経済財政担当、労

働基準局などで、子ども・子育て応援プラン、震災の産業雇用対策、骨

太方針策定などに従事。平成27年から内閣官房でニッポン一億総活躍

プラン、働き方改革実行計画の策定に従事。平成29年8月より現職。

PROFILE

Page 4: 2 この国と、ともに。 - mhlw€¦ · 総理自ら議長となり、労使のトップを含めた有識者に官邸に参 集いただき、議論のための議論ではなく、具体策について社会的

21 厚生労働 省 総合職 入省 案内 2 018 22

医療なくして、

日本の未来は語れない―。

どこにいても安心・安全な医療を

受けられる体制を確保し、

医療・医薬品産業の成長の途を

切り拓いていく。

将来にわたってその使命を果たすべく、

改革に挑む職員を紹介します。

答えのない世界へようこそ 厚生省の門を叩いて四半世紀が経ちます。記憶に残る仕事に数多く出会えたのは何よりの宝物です。一つ例を挙げましょう。難病患者に対して、介護者が医療行為を提供することの是非についての議論を担当しました。10年以上前の話です。この医療行為は、間違えれば深刻な結果を引き起こす可能性がありますが、患者によっては30分おきに施さないと生命の危険があります。患者にリスクがある行為なので、安全性を考えれば医療の専門家以外は提供できないという規制は理解できます。しかし、医療者は24時間、365日患者と一緒に居られるわけではなく、30分と休めない家族の介護負担は幾ばくのものでしょう。リスクを低減させながら必要なサービスを確保するしかない、という思いで、必死で関係者の説得に当たりました。こうした難問に、患者・家族や医療の専門家とともに向き合い、答えのない世界に道を作っていく。国民にとって何が大切かを考えて。厚生労働省は、そういうところが楽しいと思います。 

う患者のために襷を繋ぎ、想像を絶する苦労の日々を重ねて商品化に至るのです。私たち行政官は、安全で有効な医療技術を患者に届けるのが仕事。厚生労働省は、医薬品の承認や製造・販売に関する規制と医療保険制度を所管しています。欧米の規制当局と協調を図りながら、国民が必要な医療にアクセスできるよう医療保険制度に取り込んでいく。安全性を重視すれば慎重な規制が必要になりますが、商品化に時間がかかり開発費用が嵩む結果となります。医薬品の価格を考えるとき、開発投資を回収する観点からは高い方が良いですが、医療保険制度は税・社会保険料・患者自己負担から賄われており、制度の持続性は重要な課題です。サイエンスが社会実装されるとき、難しいバランスが求められ、そこに私たち厚生労働省の出番があります。

サイエンスを社会実装する 医薬品、と聞いて皆さんはどんな印象を持っているでしょうか。新薬の成功確率は2万5千分の1とも言われ、基礎研究から実際の商品になるまでに10年以上の年月と莫大な研究開発費が必要となります。基礎技術を発見する学者、患者のために応用する臨床医、医薬品に育てるために安全性や有効性を証明する研究者が、病苦に立ち向か

三浦 明

医政局 経済課 課長

Akira Miura

平成4年 厚生省入省。本省で新医師臨床研修制度の

施行準備や診療報酬改定に携わったほか、三重県桑名市で市立病院

と民間病院の統合を、内閣府で事業仕分けを経験。日本貿易振興機

構出向時にはニューヨークセンターで医薬品関連業務に従事。高齢

者向けの在宅福祉行政(老健局振興課長)を経て現職。

PROFILE

答えがない楽しさ

「ポストはあずかりもの」 この職場を選んだきっかけは政策分野でした。今は魅力的な先輩の存在に感謝しています。「今のポスト(肩書き)はあずかりもの」大切に後世に繋いでいくことが大事だと諭してくれた先輩が居ました。別の先輩からは「それには続きがある、自分の代でちょっとはましにする、そういう気概を持て」。難しい課題に直面するからこそ、畏れと気概を持って事に当たる、そういう皆さんと一緒に仕事が出来ればと思います。

この国と、ともに。〜厚生労働省で働くということ〜

第2章

MESSAGE

この国と、ともに。

医 療 から未 来をつくる

社会を変えるには

第1 節

第 2 章

 このように、都道府県の医師確保施策の実効性を大幅に強化する本法律案は、医師偏在解消に向けた大きな一歩となるものです。

柴田 直慧

医政局 地域医療計画課 係長

Naosato Shibata

平成25年 厚生労働省入省。職業安定局で労働者派遣

法改正法案、年金局で年金制度改革法案を担当。平成29年より現職に

就き、入省前からの希望であった医療政策に携わる。

PROFILE

社 会の転 換 点で、この国の未 来を考える

数も増加してきました。 しかしながら、地域や診療科を比較すると、医師の偏在は今なお深刻な問題です。診療所まで車で数時間かかるような地域では、不十分な医療インフラがさらなる過疎化を招く、負のサイクルが生まれています。 平成29年度、厚生労働省は、医師偏在の解消に向け、過去の取組とは一線を画す抜本的な対策を法律案として取りまとめました。私は、法令担当として、法律案の条文を書き上げたところです。

待ったなしの医師偏在対策 「誰もが、必要なときに、必要な医療を受けられること」。世界最高レベルの平均寿命と保健医療水準を誇る我が国の、国民皆保険の基礎となるコンセプトです。この実現に向け、我が国では戦後着実に医療提供体制の整備が進められ、全国規模で見れば、医師の

エビデンスに基づく施策の推進 本法律案の主要な特徴は、これまで必ずしもファクトベースで語られてこなかった「医師の多寡」について、医療ニーズに対する医師数の割合を表す新たな全国共通の指標を導入し、偏在対策の柱に据えていることです。 各都道府県は、この指標に基づいて、県内で優先的に医師確保が必要な「医師少数区域」を客観的に把握できるようになり、県内の医師確保のための計画の作成が義務付けられます。そして、地域の医療関係者との協議の上で都道府県が進めた医師確保の取組の効果は、指標に基づいて定期的に評価され、必要に応じて計画が見直されることとなります。

この国の、未来を支える 本法律案は、同時に、一人ひとりの医師に寄り添い、キャリア形成や仕事と家庭の両立の上での不安を取り除いていく内容となっています。他の医療従事者も含め、医療の担い手である彼らを支えることが、医療の受け手である国民の健康面での安心と安全を守ることにつながります。 今後、少子高齢化の進行による社会構造の変化の中で、我が国は新たな前提の下での社会づくりを迫られます。これからの医療のグランドデザイナーとなること。それが、厚生労働省の使命です。

Page 5: 2 この国と、ともに。 - mhlw€¦ · 総理自ら議長となり、労使のトップを含めた有識者に官邸に参 集いただき、議論のための議論ではなく、具体策について社会的

23 厚生労働 省 総合職 入省 案内 2 018 24

子どもたちは、未来の日本を担う

重要な鍵。

「全てのライフステージに関わる」

厚生労働省ならではの取組で、

子どもの笑顔を守りたい―。

そんな思いで日々立ち向かう

職員を紹介します。

MESSAGE

この国と、ともに。〜厚生労働省で働くということ〜

第2章

この国と、ともに。

すべての 子どもの未来のために

社会を変えるには

第1 節

第 2 章

少子高齢化はピンチか? 皆さんは、社会保障にどんなイメージを持っているでしょうか。少子高齢化が進む中で年金、医療、介護など高齢者向けの給付が膨らみ、維持できないのではないか?厚労省は答えのない中で四苦八苦している?そう思う人もいるかもしれません。しかし、この現象は医療や介護などの市場が拡大し、日本の技術、資金、人材がこの分野に流入する過程でもあります。世界に先駆けて高齢化が進むということは、医療・介護分野で日本の成長のエンジンを作るチャンスなのです。

医療のイノベーションと国際展開 2012年12月、iPS細胞を開発した京都大学の山中伸弥教授がノーベル賞を受賞したのは象徴的な出来事でした。世界に冠たる技術を他国に先駆けて、安全かつ迅速に実用化・産業化を進めるため、厚労省は即座に再生医療のルールづくりにとりかかり、自分は法案チームを取り仕切りました。法案作成に加えて研究開発支援も強化しました。これにより、海外からも注目され、日本での研究開発や製品化が加速しています。 無事に法案をまとめた後、厚労省から初めてインドの大使館に派遣され、医療分野を中心に日系企業支援を担当しました。どの国でも、医療関係の製品を販売するためには、その国の保健省による安全性・有効性の審査を受けて承認を得ることが必要です。

それまで日本政府も現地大使館も付き合いのなかったインド保健省と信頼関係を築き、両国の規制当局間の交流を開始しました。インドに渡って2年、日本の規制・審査に対するインド保健省の信頼は高まり、ついに厚労省の承認を受けた日本の医療機器はインドの当局の審査なしにインドで販売できるようになりました。 これは、医療機器の規制という機能を持っている厚労省にしかできない仕事です。日本の医療関連産業の強化は、社会保障を支える経済成長にも必要であり、また、未来の日本の患者が質の高い医療を受け続けるためにも必要不可欠です。つまり、経済成長と人の生活の両方に想いを馳せる仕事です。

厚生労働省のDNA 経済社会の動きに受け身でいては我々の使命は果たせません。将来を見据え、分野や国境、立場にとらわれず、外部にもたくさんの仲間をつくり、新しい手法も果敢にとり入れる。高度成長期の初めに将来を見据えて国民皆保険を整備した先輩達から受け継がれたDNAがここにはあります。自分の役人人生も後半戦に差し掛かかります。気概のある若者たちと一緒に、ピンチをチャンスに変え、

「攻め」の行政を展開していきたい。

千正 康裕

政策統括官付 社会保障担当参事官室 室長補佐

Yasuhiro Sensho

平成13年 厚生労働省入省。年金、雇用、子ども、医療等の分野に

おける法改正、省のとりまとめ、政務官秘書官等を経験した後、在インド

日本大使館勤務。帰国後、子ども・女性分野の総括補佐を経て現職。

PROFILE

ピンチ を チャンス に 変 え、「攻め」の行政で未来をつくる

女性が輝く社会 安倍内閣の目玉政策の1つです。実際、働く女性は年々増え、政府も女性の管理職割合や出産前後の継続就業率などの目標を掲げ、女性の活躍を後押しすべく旗を振っています。しかし今のこの社会、女性が皆気持ちよく働き、輝ける環境だと思いますか?私の課で取り組んでいる育児休業などの浸透、仕事と子育ての両立支援に取り組む企業の増加、イクメンブームなどによって、徐々に環境が整ってきているのは確かでしょう。しかし、出産を期に、仕事との両立の難しさを理由に辞める女性はまだまだいます。周囲の理解不足、積み重なる子育て負担に苦しむ女性も多いです。美しい理念に現実をついていかせるにはどうすればよいのでしょう。

変われますか、お父さん?

男性の家庭進出 我が子が産まれて嬉しくない親はいないでしょう。父親も母親も等しく喜ぶはずです。なのに、育児に関わらない父親の多いこと多いこと。(7割もの父親が育児をしないとのデータもあり!) 我が国は24時間戦えますかで成長してきました。男は長時間労働、女は家事育児、それが当たり前でした。この名残か、私の課で取り組んでいる父親の育休取得促進制度(両親で育休を取れば、育休取得期間が通常よりも2ヶ月延長できること、など。)もなかなか浸透しません。でも考えてみてください。男性がこうも育児をしなかったら女性が輝けるはずもありません。男性も女性も育児を我が事とし、ともに輝ける社会を目指し、男性自身が変わり、企業が変わり、そして社会が変わる必要があります。当面のミッションは「育児レス男子ゼロ!」。省外からの有識者も交えた検討の場を設け、男女ともに育児に関われる社会に向けた制度の検討や啓発活動に、日々取り組んでいます。

土岐 祥蔵

雇用環境・均等局 職業生活両立課 課長補佐

Shozo Toki

平 成18年 厚 生 労 働 省 入 省。障 害 者 福 祉、リーマン

ショック時の雇用対策や、復興庁出向での被災地復興支援を経て現

職。現在は、育児休業制度など、子育てしながら働く労働者のための

支援策を担当。

PROFILE

Page 6: 2 この国と、ともに。 - mhlw€¦ · 総理自ら議長となり、労使のトップを含めた有識者に官邸に参 集いただき、議論のための議論ではなく、具体策について社会的

25 厚生労働 省 総合職 入省 案内 2 018 26

希望出生率1.8  

 現役世代はもちろん、自分の子どもや孫の世代、50年後100年後の日本において、誰もが希望を叶えることができ、笑顔で暮らせる社会をつくっていきたい、そう思って厚生労働省に入省しました。 私は今、少子化対策を担当する部署にいます。政府として掲げている、希望出生率1.8。これは、独身男女の約9割が結婚を希望しており、希望子ども数は2人以上である、という統計に基づき、現在の国民一人ひとりの希望が叶った状態の出生率を意味しています。裏返して言えば、現状は「国民一人ひとりの希望が叶っていない状態」。そこで、例えば、待機児童の解消に向けて32万

人分の保育所の整備とそれを支える保育士の処遇改善、「小1の壁」を打破するための放課後児童クラブの整備を進めるとともに、子どもの自主性や社会性を育む観点での質の確保の検討などに取り組んでいます。 

真の「少子化対策」とは? 少子化は様々な要因が絡み合っており、それを一つ一つ取り除くため様々な施策を組み合わせて実施していますが、その政策効果は見えにくく、また、真に希望が叶った状態であるのか、非常に分かりにくいものです。手探りで進むもどかしさを感じながらも、真摯に行政課題に向き合う熱い職員とともに、国民の希望が叶っていない現状を打破すべく、初心に立ち返りながら業務に励んでいます。

「厚生労働省で働く」ということ 厚生労働省で働きはじめて3年。施策の企画立案を行う「行政官としての自分」と、その施策の受け手である「一国民としての自分」とは一体です。現在の仕事においても、保活しながら何とか子育てと仕事を両立しようとしている方と、そう遠くない将来の自分を重ねて考えます。一当事者として、社会環境の変化に敏感でなければ良い施策は生まれない。何事も人ごとではいられない、この奥深さこそが厚生労働省の魅力であると思います。

この国と、ともに。

第2章

人生の始まり=愛着形成から 人は依存することによって自立するというパラドックスがあります。子どもは生まれてすぐ、安心して自分を委ねられる大人(養育者)の存在が必要になります。子どもはその養育者によって、生きていることそのものを尊び、自分を大切と受けとめられていくことによって、自分や周辺の人、もの、こと、世の中を受け入れ、関係を持つようになるのです。そしてこうした関係形成の過程を通して、自立の基礎となる自己肯定感、他者への信頼感、生きる力を培っていきます。 平成28年度に全国の児童相談所が対応した子ども虐待相談は12万件を超えました。不適切な養育は、最悪の場合子どもの死亡につながり、そうでなくても子どものその後の人生における生き辛さに直結する、社会全体の損失も計り知れません。このため、全ての子どもに適切な養育、健やかな成長・発達や自立を保障することが子ども家庭福祉の使命となっています。

チャレンジングな課題が多い子ども家庭福祉分野 平成28年に児童福祉法・母子保健法が改正され、子ども虐待について発生予防から自立支援まで一連の対策が強化されて以降、急ピッチで取組を進めています。妊産婦健診、乳幼児健診や地域での育児相談を端緒に、孤立に苦しむ母親や子どもを救い出せないか。様々な子育て支援メニューで、育児に追い詰められた母親の「逃げ場」を確保できないだろうか。厚生労働省は、身近な市区町村において安心して子育てできる環境を作るため、妊娠期から子育て期にわたるまでの切れ目のないワンストップ支援拠点(日本版ネウボラ)の全国展開などに自治体と協力して取り組んでいます。また、虐待を受けている子どもの保護者に対する指導は、児童相談所と保護者との間でしばしば起こる対立構造により、実効が上がりにくいため、平成29年の法改正により、子どもの保護手続きにおいて家庭裁判所による親指導勧告を導入する等、司法関与を強化する取組みも進めています。 昨年8月には厚生労働大臣の検討会より、望ましい社会的養育の青写真として「新しい社会的養育ビジョン」が示されました。今後は各地域で具体的な推進計画を定め、前に進めていく段階に入ります。特に優先順位が高い課題は家庭養育の推進。親子分離が必要な場合、従来は大多数の子どもが施設に入所していましたが、愛着形成のためには乳幼児期など早い時期に一人ひとりの子どもに家庭を用意することが望ましい。良質の里親養育を実現するため、支援を行うフォスタリング機関を全国に確保することが急がれます。さらに、実親子の再統合が見込めない場合には、子どもに法的に安定した親子関係を保障する手段として特別養子縁組制度を利用しやすいものにできないか、法務省とともに検討しています。

司令塔としての厚労省 これらの業務を遂行する上で関係省庁は多数、加えて最近は司法関係者と協議する機会も多く、平成28年度にこれまで内閣官房が有していた児童虐待防止対策に関する総合調整権限が厚生労働省に移管されました。関係省庁を束ね、声を挙げられない子どものニーズにあった制度の見直しを強力に進める上で厚生労働省の役割は計り知れません。 こうした重責を担いつつ、人間の根源は何か深く考える機会を与えられ、自分自身の成熟を実感できる、これほど公務員冥利に尽きる職場があるでしょうか。

山本 麻里

子ども家庭局 審議官

Mari Yamamoto

昭和62年 厚生省入省。社会・援護局、健康局、保険局、

年金局、宮城県庁、桑名市役所、大蔵省、内閣府等の勤務を経て、平成

28年 雇用均等・児童家庭局審議官。平成29年7月より現職。

PROFILE

廣川 晶子

子ども家庭局 総務課 少子化総合対策室 係員

Akiko Hirokawa

平成27年 厚生労働省入省。医薬・生活衛生局総務課、監視指導・

麻薬対策課を経て現職。

PROFILE

すべての子どもの可 能 性を育む

一 人ひとりの「 希 望 」を叶えるために

Page 7: 2 この国と、ともに。 - mhlw€¦ · 総理自ら議長となり、労使のトップを含めた有識者に官邸に参 集いただき、議論のための議論ではなく、具体策について社会的

日本の最大の資源が「人」であるのと同じく、厚生労働省の支柱はその「人財」です。

1億通りの人生を支えながら、誰ひとり立ち向かったことのない

超高齢化・人口減少社会に挑むには、職員の多様性と豊富な経験が不可欠。

職員それぞれが培ってきた手腕が集結することで、よりよい政策が実現されていくのです。

ここでは、厚生労働省で描くキャリアをさらに具体的に想像していただくため、

本省を離れ様々なポストで活躍する職員と、

仕事と家庭生活を両立している職員にクローズアップして紹介します。

厚生労働行政は幅広いだけでなく、人口減少社会の到来により、その重要性は増す一方。

あなたが将来、社会を変えるなら、どんなキャリアを選択しますか。

企 画 官・課 室 長クラス〜 幹 部クラス

ジェネラリスト・エキスパート

● OJTで基礎スキルを習得 ● 幅広い分野を経験

係 員・係 長クラス

省の中核を担うための基礎づくり

● 課題解決の最前線 ● 総合調整を担う

● 総合的視野で政策立案・実施 ● 高度の専門性 ● 戦略的分析

課 長 補 佐 クラス

中核的 な役割

係 員クラス 企画官・課室長クラス係 長クラス部 局 長 など幹 部クラス

● 他府省庁 ● 福祉事務所● 地方労働局

課 長 補 佐クラス● 地方自治体・労働局  ● 他府省庁 

● 在外公館・国際機関 ● 民間企業・団体

● 他府省庁 ● 海外留学● 地方自治体● 民間企業・団体

● 地方自治体・労働局 ● 他府省庁● 国際機関● 民間企業・団体● 大学研究機関

4年目〜 9年目〜 18年目〜

● 地 方 出 向 の 場 合は   幹 部・管 理 職として勤 務

課題解決の最前線で制度改正等の中核を担い、組織のマネジメント役として、部局や省全体の総合調整を行う業務に携わります。また、地方自治体で幹部・

管理職のポストに就いて、現場の指揮官として活躍したり、大使館や国際機関で日本政府の代表として厚生労働分野の知見を世界に発信します。

この国と、ともに。

キ ャリ ア を描 く に は

キャリアパス

第2節

第 2 章

この国と、ともに。〜厚生労働省で働くということ〜 

第2章

厚生労働行政を幅広く学ぶとともに、法令業務を中心に多様な業務に従事し、省の中核を担う職員として必要な資質を身につけられるよう、3 ~4 ポストの業務を経験します。

これまで培った専門性と経験を活かして、担当政策分野のリーダーとして政策を牽引するほか、国際交渉、危機管理等を担当します。豊富な見識を活かし、省の枠を超えた横断的な高い見地から、日本の将来を見通して社会保障・労働政策の方向性を決定します。また、各政策分野のほか、研究・分析業務や国際業務等においてエキスパートとして活躍することもできます。

27 厚生労働 省 総合職 入省 案内 2 018 28

Page 8: 2 この国と、ともに。 - mhlw€¦ · 総理自ら議長となり、労使のトップを含めた有識者に官邸に参 集いただき、議論のための議論ではなく、具体策について社会的

 「超長寿社会」を世界に先駆けて迎える日本において、「教育・仕事・老後」という「単線型」ではない、個々人の多様な「人生の再設計」をどう可能としていくか、そのための教育や雇用制度、社会保障など国の制度はどうあるべきか。この検討が「人づくり革命」の大きなテーマです。「アプリを開発する80代の女性」、「企業を経営しながら大学にも通う10代の若者」、「元サッカー日本代表主将」など、さまざまな経歴をお持ちの方をメンバーに、総理官邸で毎回議論を行っています。

「変化が当たり前の時代に」(リンダ・グラッドン「LIFE SHIFT」より)、マルチステージ化する長い人生を生き抜いていくためには、「柔軟性を持ち、新しい知識を獲得し、新しい思考様式を模索し、新しい視

 「官民人事交流法」で出向してから約1年。現在の業務は、社員2万人弱の勤務データを集約・分析し、労基法等に基づくルールを遵守しているか点検・指導することにあります。またそれらデータを用いて、「働き方改革」実現のためのワーク・ライフ・バランスの推進や女性活躍推進に向けた施策を企画・検討しています。 出向後、がん、難病等長期的治療を要する病気を抱える社員のための両立支援制度を整備しました。政府が「働き方実行計画」に、労働人口の1/3を占める病気の治療をしながら仕事をしている方への両立支援を掲げ、前職(健康局難病対策課)では難病患者の全国的な就労(両立)支援体制を検討し

点で世界を見て、力の所在の変化に対応し、ときには古い友人を手放して新しい人的ネットワークを築く」必要があります。 「人生100年会議」においては、幼児教育・高等教育無償化、リカレント教育、大学改革等について「基本構想」までに一定の結論を出すことにしていますが、それ以外にも、政府において見直すべき国の制度を最も所管しているのが、厚生労働行政。保育・雇用・子育て・医療・年金・介護など、すべてのライフステージにわたり切れ目ない制度を人生100年時代にふさわしいものにしていくという難しいミッションこそが、厚生労働省がこれから取り組むべき課題です。困難ではありますが、日本の将来のグランドデザインを描くというエキサイティングな仕事。前向きにチャレンジしたい「やる気のある若手職員」を求む!!

ていたので、これを企業側に立ち実現することに感慨深いものがありましたが、病気を理由に仕事を辞めざるを得ないという悲しい選択をする人をなくしたいという思いは同じでした。 病気の長期療養のためのシフト・短時間勤務制度や、短時間の通院や不妊治療等にも使える「ライフサポート休暇制度」を新たに整備し、長く働き続けることができるよう支援しています。 個性豊かな諸先輩方は共通して、厚生労働行政は、青臭いことがずっと言える仕事だと言います。厚労省には、国民一人ひとりの幸せのためという自らの思いに正直に、誇りを持って仕事をしている職員が集まっており、それこそが魅力だと思います。

人 生 1 0 0 年に向けたエキサイティングな仕 事

どこにいても、思いは同じ上村 浩代

あいおいニッセイ同和損害保険株式会社人事部企画グループ

平成18年 厚生労働省入省。職業安定局、

医薬食品局、労働基準局安全衛生部、雇用

均等・児童家庭局、健康局を経て、現職。こ

の間、約2年 間の育 休を取 得。一男(4歳)

の母。

PROFILE

Hiroyo Kamimura

第 2 章 第2 節この 国と、ともに。〜厚 生 労 働 省で 働くということ〜 キャ リアを描くには 国 内 編

蒔苗 浩司

内閣官房 人生100年時代構想推進室 参事官

平 成5年 労 働 省 入 省。雇 用 政 策 課、建 設

省、官房総務課、新潟県庁、副大臣秘書官、

大臣秘書官、人事課(採用)、広報室、職業家

庭両立課、雇用政策課などを経て、平成29

年夏より現職。

PROFILE

Koj i Makanae

 まちづくりと言うと、道路を引いたり、建物を建てたりのイメージがあるでしょう。しかし、もはやそんなことより、この成熟しきった人口が減る日本のまちづくりは、人々の暮らしをどうより良くするかを追求することにあります。 最近のまちづくりは、在宅医療を受けやすくする長寿社会のまちづくり、健康になるまちづくり、がトレンドです。 私は7年前に柏市に出向しました。そこで、住み慣れた家で暮らし続けることができるシステムの構築を団地の再開発事業の中で実現させました。これが最近各地で展開されている長寿社会のまちづくりの走りです。この柏市の取組みをきっかけとして、厚労省は、在宅医療を地域で進める具体策の検討や生きがい

を持って働き続けられる仕組み作りを進めました。 今の出向先である岡山の駅に降り立った日、新幹線も停まるこの街で、新たな箱もの建設の必要性は全く感じませんでした。それよりも、若年性認知症患者・家族の「認知症の患者も働きたい、でも働く場所がない」という声、また、「市民がこの通りをトレッキングウォークして健康になっていくのが夢だ」という社長の言葉、そこにまちづくりの種が眠っています。そして、その種を発芽させることができるのは、厚労行政を専門分野にしている私と新しい「まち」を作ろうという気概を持った企業や市民です。 様々な人の声から、市民がこのまちで暮らして良かったと思える「まち」をつくる、これは、厚労省を選んだ時から強く持ち続けた思いです。それを実現し、全国に展開していくという仕事を、ここ岡山で満喫しています。

まちづくりで国を突き上げる野村 晋

岡山市 保健福祉局 統括審議監

平成15年 厚生労働省入省。介護保険や健康

づくり施策の担当部署のほか、能力開発や雇

用保険の担当部署を経て、現職。ほかに、柏市

に出向して長寿社会のまちづくりに従事。

PROFILE

Shin Nomura

1歳半の息子の育児の時間も確保できる

筆者右。次回の「人生100年会議」の資料について有識者と意見交換。

29 厚生労働 省 総合職 入省 案内 2 018 30

この国と、ともに。〜厚生労働省で働くということ〜 

第2章

Page 9: 2 この国と、ともに。 - mhlw€¦ · 総理自ら議長となり、労使のトップを含めた有識者に官邸に参 集いただき、議論のための議論ではなく、具体策について社会的

 現在、厚生年金や国民年金の積立金は、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)により投資されています。私は、ニューヨークにおいて、世界に向けてGPIFの取組の発信、他の機関投資家とのネットワーキングや、投資トレンドのリサーチを行っています。GPIFは世界最大の年金基金であることから、その一挙手一投足が常に世界から注目を集めており、その動きが国内・海外のマーケットにも影響を与えることもあります。 例えば、世界のリーダーとしてGPIFが積極的に行う環境、ダイバーシティ、コーポレートガバナンスなどに

配慮した投資を機関投資家や市場にアピールし、企業活動の改善を促しつつ、他国のソブリンファンド・年金基金との連携や国連・世銀との協力を行うことにより、長期的なリスク軽減・リターン上昇につなげるなど、グローバルな活動が、最終的には日本の年金加入者の利益となるのです。 厚生労働行政を考える際には、年金運用の例のように、いつも「世界一だからこそ」「世界に先駆けて」「国際社会のリーダーとして」果たすべき役割があることを意識しなければなりません。世界で最高

の健康寿命、世界に誇れる国民皆保険制度、世界に数例しかない介護保険制度だけでなく、世界初の医療技術、最高水準の輸入食品の安全性など、日本の経験やイノベーションを世界と共有し、また世界の経験を日本の制度に取り入れていくことで、これまでになかった新たなバリューが創出され、我が国と世界の人々の生活水準の向上につながっていく過程を海外のポジションで経験できます。世界の頂点にいるからこそ「未知への挑戦と創造」という責務を果たさなければなりません。

 タイは微笑みの国と言われますが、1年近く住んでいると違う側 面もあることに気づきました。まずは所 得 格 差が大きいこと。タイ人の富 豪は日本のそれよりもはるかに富 豪です。しかし、バンコクにはとても大きなスラム街があり、貧 困 者は 多くいます。次に、地 方 格 差。バンコクは 東 京より繁 栄しています。しかし、少し地 方に行くと本当に何もありません。3つ目、学 歴 社 会。チュラロンコン大 学(日本でいう東 大)を卒 業すると出 世は確 実と言 われます。また、欧 米の有 名 大

学を卒 業した人には誰も反 論しないといったことがタイでは日常のようです。さらに賄賂が横行しており、政 府も腐 敗 撲 滅に力を入れています。 それに比べ、日本は平等で所得再分配がされていて、誰にでもチャンスがある社会だということがよくわかります。基本的には皆勤勉でよく働きます。また、タイは3ヶ月に1回くらい同じ花が咲きます。日本は季節ごとに異なる花が咲き、我々の感性を豊かにしてくれます。そして、なんといっても日本には2600年以上続く皇室を中心とした悠久の歴史

があります。タイも素晴らしい王室がありますが、現在の王室の歴史は数百年。日本という国に、日本という素晴らしい国を築き上げてきた先人たちに、そして豊かな自然と伝統ある歴史に感謝せずにはいられません。 このような世界に誇るべき日本を我々の代で終わらせるわけにはいきません。我々の子供たち、子々孫々のためにこの日本という国を守り残していかなければなりません。これを読んでくれる方が、日本を守る一員となることを願っています。

再 認 識した悠 久の国 、日本

横山 悠里恵

英国 ヨーク大学

平 成22年 厚 生 労 働 省 入 省。政 策 統 括 官

付労政担当参事官室、労働政策担当参事

官室、内閣官房地域活性化統合事務局(出

向)を経て、年金局で年金積立金の運用に

関する制度改正に従事し、現在、英国ヨー

ク大学社会政策学科に留学中。

PROFILE

Yur ie Yokoyama 業務を通じ、自分の知らない世界がいかに沢山あるのか、法律的な理論だけでなく数字で政策を説明する力がいかに不足しているかを痛感し、留学によってさらに成長したいと考えました。私が所属するヨーク大学のMPA-CASPPERというコースは、社会保障政策や労働政策を国際的に比較することを重視しており、統計分析や公的サービス市場の比較など様々な切り口で学んでいます。 日本を離れ、多様な国籍の学生と共に学んでいると、

「国の制度や社会のあり方に正解はない」という事実を強く実感します。例えば介護。日本やドイツなどでは公的介護保険がありますが、英国では保険方式ではなく税金のみで負担し、サービスの必要性の判断には資産の高低も考慮されます。保険制度も細かく見れば国によって違います。そして今、英国はEU離脱という市民生活を根本から変えうる事案に直面しています。 詰まるところ、その国の人々が強く望むものが国や社会の仕組みとして現れます。国家公務員とは、様々

な立場の方 と々意見交換しながら、「日本をどんな社会にするのか」という問に正面から向き合い、具体化していく仕事です。さらに、厚生労働省が担う領域は、日本に暮らす人の助け合いの度合いと範囲を規定する、社会の土台となる部分です。一見、国内向きに見えますが、TPPのような貿易条約でも明らかなように、国際的な潮流を常に意識すべき分野でもあります。世界という荒波の中で、日本の暮らしを一緒に支えていきませんか。

世 界の荒 波の中で日本の暮らしを支える

森 真弘

JETRO ニューヨークセンター 年金福祉部長

平成 7年 厚生省入省。医療政策、介護保険、

少子化対策、社会保障改革などを担当する

部署を経て現職。Employee Benefit

Research Institute(米国)、在アメリカ日本

大使館、岡山市保健福祉局長なども経験。

PROFILE

Masahiro Mor i

鷹合 一真

在タイ日本国大使館 一等書記官

平 成14年 厚 生 労 働 省 入 省。最 低 賃 金 制

度、子ども手当、遺骨収容等の戦後問題、

大臣政務官秘書官や総理補佐官付の秘書

官業務、医療ICT等の業務を経験し、現在

は在タイ日本国大使館で労働問題を担当。

3児の父。

PROFILE

Kazuma Takago

第 2 章

世 界の頂 点にいるからこそ

この国と、ともに。〜厚生労働省で働くということ〜 

第2章この 国と、ともに。〜厚 生 労 働 省で 働くということ〜 第2 節 キャ リアを描くには 海 外 編

31 厚生労働 省 総合職 入省 案内 2 018 32

Page 10: 2 この国と、ともに。 - mhlw€¦ · 総理自ら議長となり、労使のトップを含めた有識者に官邸に参 集いただき、議論のための議論ではなく、具体策について社会的

この国と、ともに。〜厚生労働省で働くということ〜 

第2章

34

 厚生労働省は、職員個々の事情に応じて真剣に相談にのってくれる組織ですし、ロールモデルも様々で自分の置かれた状況でも何とかやっていけると思わせてくれる環境もあると思います。 とはいえ、正直、本当に「仕事と家庭の両立」ができているのかは分かりません。母としてはもっと子供のことを見てあげたいと思い、仕事人としてはもっと時間をかけてじっくり取り組みたいと思うことも多々あります。でも、限られた時間の中で成果を出すことが「働き方改革」の核たる考え方ですし、それを自ら実践し、その中で思い悩むことも含めて全てが必要な経験なのだと思います。私は、その経験で感じたことを生かして今後も仕事に励んで行きたいと思っています。  皆さんも一緒に自分自身の経験を糧に厚生労働行政を考えてみませんか?

 入省した当初、結婚し、子供が生まれたら、仕事を辞めるだろうと思っていたので、18年たった今も働き続けていることに自分でも驚いていますが、振り返ると、二つの節目があったと思います。 一つ目は入省10年目、夫に海外転勤の話が出た時です。当時は同行休業制度もなく、夫に付いて行くには仕事を辞めるしかないと考えていましたが、人事課や上司のご尽力もあり、研究休職という形で夫の勤務地にある民間研究所で働くことができました。 二つ目は入省14年目、育休を経て復帰した時です。仕事だけに集中できないもどかしさや悔しさもありましたが、「母としての経験が今後に生きてくる」「効率的な働き方を実践できるはず」と諸先輩方に励まされ、また、同僚の方にも支えてもらい、今もやりがいをもって仕事を続けられています。

経験を糧に

職業人生の転機

私の「 働き方 改 革 」

 長男の育児経験を通じ、夫婦共働きの場合、育児・家事の役割分担が不可欠と実感し、第2子誕生時は、妻の安静が必要な産休期間だけでも育休を取得しようと思いました。 ただ、育休取得は本人の思いのみならず、職場の理解が不可欠です。この点、厚生労働省は、WLB推進官庁として、どの組織にも先駆けて、幹部による男性職員の育休取得の奨励等、働きやすい職場風土を醸成しています。私も7年前、この恩恵を受け、上司に次男出産予定日の半年前に育休の取得希望を伝え、上司も男気で快諾・関係方面に調整いただき、育休取得が実現しました。

 育休中は、毎日怒濤の忙しさで、育児・家事に専念する大変さを痛感しました。この経験を、男性の働き方改革や子育て支援策の推進に今後も生かしていくつもりです。 最もよかった点は、妻を独占できなくなった当時3歳の長男に寄り添い、ケアできたことでした。これは短期間でも効果絶大で、長男との絆も深まりました。男性後輩職員には、第2子以降の育休取得を特に勧めています。

育休取得を可能にした職場風土

育休取得で見えたもの

 父親業は代えが効きませんし、子ども達と過ごし成長を見届けることは何にも代え難い喜びです。こうした実感から、仕事も当然大事ですが、最も大事なのは、仕事と家庭でバランスをとることだと考えています。限られた時間の中で成果を出せるよう、効率的に仕事をこなすことを重視し、日々WLBの実践に挑戦中です。ぜひ、厚生労働省で、共にWLBを実現しましょう!

ワークライフバランス(WLB)への挑戦

「 仕 事 」と「 家 庭 」のバランスへの挑 戦

第 2 章 この 国と、ともに。〜厚 生 労 働 省で 働くということ〜

平成16年 厚生労働省入省、医政局配属。平成18年 東松山市(生活保

護ケースワーカー)出向中に長男誕生。平成20年 本省職業安定局に復

帰。平成23年 健康局時代に次男誕生で1か月半の育休取得。その後、官

房会計課、老健局、総務省出向、保険局を経て現職。

東 善博

香川県 健康福祉部 医務国保課 課長

Yoshih i ro Azuma

PROFILE

平成12年 厚生労働省入省。職業安定局、官房総務課、保険局、労働

基準局、米国ワシントンDCの研究所勤務。その後、年金局、老健局、雇

用均等児童家庭局を経て、現職。2児の母。

野中 祥子

労働基準局 労働保険徴収課 課長補佐

Sachiko Nonaka

PROFILE

第2 節 キャ リアを描くには 家 庭 編

仕事と家庭生活の主な両立支援制度仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)を推進し、働き方の見直しを図っていくことは重要な課題となっています。厚生労働省では、仕事と育児や介護が両立できるよう、以下のとおり両立支援制度を実施しています。

[産前休暇]出産予定日の6週間前から出産の日まで取得できる休暇

[育児休業]配偶者の就労状況にかかわらず育児のために休業できる制度

[深夜勤務制限]午後10時から翌日午前5時までの深夜勤務を制限すること

[育児短時間勤務]短時間で勤務又は1週間のうち希望する日に勤務すること

[産後休暇]出産日の翌日から8週間を経過する日まで取得できる休暇

[早出遅出勤務]1日の勤務時間の長さを変えることなく始業・終業時間を繰り上げ又は繰り下げて、勤務時間帯を変更して勤務すること

[超過勤務制限]月24時間以内かつ年150時間以内に超過勤務を制限すること

[配偶者出産休暇]妻の出産に伴う入退院や出産の付き添い、入院中の世話、出生の届出などのために2日間取得できる休暇

[超過勤務免除]超過勤務が免除される制度

[育児参加のための休暇]産まれた子への授乳や、上の子の保育所等への送迎などのために5日間取得できる休暇

[配偶者同行休業]外国で勤務等をする配偶者と外国において生活を共にするための休業制度

[育児時間]勤務時間の始め又は終わりに、1日につき2時間以内で勤務しないこと

採用者に占める女性割合

政府全体 厚生労働省

目標平成 32 年度末

まで

目標平成 32 年度末

まで実績

33.40%(平成 29 年 4 月)

38.60%(平成 29 年 4 月)

3.80%(平成 29 年 4 月)

12.00%(平成 29 年 4 月)

4.40%(平成 29 年 7 月)

9.30%(平成 29 年 7 月)

30% 30%

5% -

7% 13%

実績

局長・審議官相当職の女性割合

本省課長相当職の女性割合

33 厚生労働 省 総合職 入省 案内 2 018

◎利用した制度 / 育児休業(長男出産後に1年3ヶ月、

 長女出産後に1年)、早出勤務(長男出産〜現在まで)

◎利用した制度 / 育児休業(次男誕生後に1ヶ月半)、

 テレワークと時間休の併用

女性幹部が活躍する厚生労働省

全省庁取得率厚生労働省(全体)取得率

厚生労働省(本省のみ)取得率

0.0%

5.0%

10.0%

15.0%

20.0%

25.0%

30.0%

35.0%

40.0%

45.0%

平成20年度

平成21年度

平成22年度

平成23年度

平成24年度

平成25年度

平成26年度

平成28年度

平成27年度

2.3% 3.1%

8.4%11.4% 11.3%

15.3% 13.8%

27.2%

12.1%8.2%

5.5%3.1%2.8%2.0%2.0%1.8%

0.9%

12.9%10.7%

29.9%

40.9%

34.6%

0.7%

全省庁取得率厚生労働省(全体)取得率

厚生労働省(本省のみ)取得率

0.0%

5.0%

10.0%

15.0%

20.0%

25.0%

30.0%

35.0%

40.0%

45.0%

平成20年度

平成21年度

平成22年度

平成23年度

平成24年度

平成25年度

平成26年度

平成28年度

平成27年度

2.3%3.1%

8.4%11.4% 11.3%

15.3% 13.8%

27.2%

12.1%8.2%

5.5%3.1%2.8%2.0%2.0%1.8%0.9%

12.9%10.7%

29.9%

40.9%

34.6%

0.7%

■男性職員の育児休業取得率(平成20〜28年度)  ※内閣人事局公表ベース