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平成20年度大学院工学研究科(博士前期課程)

    外国語試験(日本語)問題

                 注 意 事 項

1.試験開始の指示があるまで,この問題冊子及び別冊の解答用紙は三、開かないでください。

2.問題は,1ページから7ページまであります。解答用紙は,3枚あります。殴一ジの脱落

 等に気が付いたときは,手をあげて監督者に知らせてぐださい。

3.監督者の指示に従って,すべての解答用紙の該当欄に必ず志望専攻及び受験番号を記入し

 てください。

4.時計のアラーム(計時機能以外の機能を含む。)は,使用しないでください。

5 携帯電話,PHS等は,電源を切って,、カバン等に入れてください。

6.試験終了まで退室できませんので,試験時間中に用がある場合は,手をあげてください。・

7.試験終了後,この問題冊子は持ち帰ってください。

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問題1.次の文章を読んで、問いに答えなさい。

 ヴィクトリア湖のカワスズメたちは13,000年以内の時間で300種以上に分かれたが,生物の

種分化には実際どれだけの時間が必要なのだろうか.どれだけ変化したら別の“種”とよべる

かという基準は決められないが,.もとの種とは明らかに異なる性質を持つ集団がかなりの短期

間で成立することは,いくつかの①ジツレイで示されてきた.その代表的な例がサンザシミバ

エというミバエの仲間である.

 このミバエは,もともとその名が示すとおりバラ科のサンザシのみに卵を産み,幼虫がその

物申を食べる昆虫である.ところが,米国ニューヨーク州のハドソンバレー付近で,1864年,

栽培されている,リンゴの実に産卵していることが発見された.その後の調べで,同じ地域のサ

ンザシミバエの中に,サンザシを②オモに利用している集団と,リンゴを利用している集団が,

それぞれ混ざり合うことなく共存していることがわかったのである.このように,寄生的な生

活をもつ生物が異なる寄主によってある程度独立した集団を形成している場合,その集団を“寄

主系統(ホストレース)”とよび,多ぐの生物で知られるようになってきた.

 サンザシミバエの“サンザジ系統”と“リンゴ系統”は,外見上は区別できないが,代謝酵

素の遺伝子(アイソザイム)を比べると明らかに異なっており,別の集団として成立している

ことが③カクニンできる。しかし実験室で両者を混合すると区別なく交尾してしまう.

 このミバエは,幼虫のとき食べて育った果実が地面に落ちると,そこからはい出て地中でさ

なぎになる.翌年の初夏に羽化して地上に現れると,そのままその果実の木の上に舞い上がり

そこで交尾をする.そのため,サンザシで育った個体はサンザシの上で交尾してサシザシに産

卵し,リンゴで育った個体はリンゴの上で交尾してリンゴに産卵するという生殖隔離が成立し

℃しまった.羽化時期は短く,産卵対象となる果実の結実する時期にちょうどあっている.し

かも,リンゴはサンザシよりも2週間ほど早く果実が④ジュクす.1両方の系統が交雑すると羽

化の時期がサンザシとリンゴの中州になってしまうので産卵には不利となるにちがいない.こ

うして,同じ地域内でも二つの系統はそれぞれ別個の生活を⑤イトナむようになり,“同所的種

分化”が生じたのである.

 リンゴは栽培品種であり,それまで現地には存在しなかった植:物なので,リ,ンゴ系統がサン

ザシ系統から生じたはずである.現在はまだ別種と呼ぶには外見で区別できる点がなく.交配

後隔離も生じていない両者だが,このままの状態が十分に長い期間続けば、いずれ別種とみな

されるほどに生殖隔離が進行するにちがいない.また、ごく最近,今度はサクランボ系統が出

現したと報告されている.     (日本生態学会編『生態学入門』/文章の一部を改めた)

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問1.下線部①~⑤のカタカナを漢字で書きなさい。

問2.この文章は5つの段落から成り立って・・る。それ蕊の段落に対応する説明文を、次の

 a~fの中から選び、記号で答えなさい。

a.過去の研究成果

d.科学的根拠の提示

b.分化過程の説明

e,実験方法の説明.

c.問題提起

f.今後の予測

問3。次の図(イ)~(ク〉の中から5つを選び、(ア)を出発点として、・サンザシミバエの

 生態を示す順序に並べなさい。

 (ア)            (イ)    ,       (ウ)

………鱒……iii轡ii…

(カ)

(キ)

…ii鞍i綴iii

○は卵を, ・は幼虫を,

(ク)

                    騰

              く7  くコ                く

∠はさなぎを,飛は成虫を示す。

間4.一般的に、リンゴ系統のサンザシミバエとサンザシ系統のサンザシミバエは、野外では

 交雑しない。でほ、どのような状態になったときに野外で交雑が起こるのか。その状態を予

想して述べなさい。  .       1            ’

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問題H.次の文章を読んで問いに答えなさい。

 ①生乳競争という言葉があります。生きものが生き残ってゆくには、競争が②不可欠だという

考えが、この言葉の背後にあります。木や草も生存競争をしながら生きてゆく、と.いうわけで

す。ほんとうに、そうなのでしょうか。ぼくは、そうは思いません。

 もちろん、大地に芽生えた木や草がすべて.( 1ア  )育つとはかぎりません。途中で枯

れてしまう木や草がたくさんあります.もしそうでなかったら、たちまち大地が足らなくなっ

てしまいます。

 枯れてゆく木や草は生存競争に敗れたのでしょうか。ぼくは、そうは思いません。それらの木

や草は、ほかの木や草と争って、その競争に負けたのではなくて、隼きめびる運がなかったの

だと、ぼくは思います。こんな言葉はおりませんが、ぼくは「生存競争」の代わりに、「生存[亙]」

という言葉を使いたいと思っています。

 いっか山にくわしい人と二人で山道を歩いていたとき、その人が( イ  )しゃがんで

道ばたの小さな草を指し、「これ、トチの木ですよ」と言いました。ぼくにはとても木とは思え

ません。つまようじほどの細く青いくきの先に小さな二枚の葉をつけているカイワレ野菜のよ

うなものでした。彼は、「ほんとうにトチの木なんですよ」と言って、くきのまわりを指先でそ

っと掘づて見せてくれました。やわらかい腐葉土のなかから、クリの実よりもひとまわり大き

なトチの実が出てきました。そのトチの実を割って、モヤシみたいな芽が出、地上に青みがか

った細いくきを伸ばしているのでした。

幽彼がトチの実にそっと土をもどしてやり、思わず二人そろって、「( ウ  )なれよ」と

つぶやいたものでした。

 あのトチの稚樹、生まれたての赤ん坊であったあの稚樹が、その後どうなったかは知りませ

ん。もレ運がよかったら、いまごろはぼくの背をはるかに越える木に育っているでしょう。け

れども、そのためには数えきれないほどの幸運にめぐまれなくてはならないでしょう。

 まだ小さいうちに、シカに食べられてしまったかもしれません。③登山道のすぐわきでした

から、登山者が知らずに踏んでしまったかもしれません。クマに踏まれたかもしれません。す

こし大きくなっても、邪魔な木とみられて引き抜かれたかもしれません。④大雨の泥流で流さ

れてしまったかもしれません。日照りがつづいて枯れたかもしれません。大きな木々に太陽の

光をさえぎられて、成長しきれずに終わったかもしれません。

 そんなことが一つもないという運にめぐまれた弓、あの小さなトチの木は、若木に育ち、も

っと運にめぐまれたら、いっか大きな木になるでしょう。トチの木はひとかかえも、ふたかか

えもある巨木に育ち、たくさんのトチの実をつけて、大地に落ちたその実からまたたくさんの

稚樹が⑤芽生えます。

 森を歩いていると、いろいろな木の稚樹に出会います。ホオノキなんかは、まだ赤ん坊の

( 『エ.)、ちゃんと大きな葉をつけていて、なんだかおかしくなります。いっか樹齢800

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年と言われるイチョウの木の苗木をもらってきて鉢に植えていたことがありますが、割ばしの

半分ほどもないこの木が・やがてづ’さいながらにイチ・ウのあ嚥を引す,秋になるとその葉,

が紅葉して落ちるのを、( オ  )見ていたものです。

 [1コ森のなかのそれら無数の幼い木が、全部巨木になるはずがあり1ません。それぞれの幼

木にこのさきどんな運命が待っているのか、それを思うと森はドラマに満ち満ちた世界です。

三三三三いドラマではなく、生存囚の静かなドラマです。

 森を歩いていて、.ぼくはしばしば立ちどまり、しゃがみこみ、木にもたれ、目を閉’じ、森の

ドラマた耳を傾け、時の過ぎるのを忘れそうになります。

               (高田宏『木のことば、森のことば』/文章の一部を改めた)

問1.下線部①~⑤の漢字の読みをひらがなで書きなさい。

問2.空欄(ア)~(オ)に入る最も適当な言葉を、次の中からそれぞれ選び、番号で答えな

 さい。

 (ア)1.わくわく  2.つくづく  3.てくてく  4.すくすく  5.ざくざく

(イ)1.ひょいと  2.ひょいと  3.ひゆうと  4.ひゆうと  5.ひょうと

(ウ)1.たのしく  2.おおきく  3.やさしく. 4.ちいさく  5.みじかく

(エ)1.ために 2.ことに 3.ものに 4,もとに 5.くせに

(オ)1.うらやましく

  4.むなしく

2.つつましく

5.かなしく

3.ほほえましく

問3。空欄囚は文中に2カ所あり、同じ灘が入ります。空欄囚に入る最三三な灘

字を書きなさい。

問4.筆者が下線部、[1コ「森のなかのそれら無数の幼い木が、全部巨木になるはずがありませ

 ん」と考えているのはなぜですか。その理由を40字以内で述べなさい。

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問題皿.高校生の「私」一は、獣医をしている父と二人暮らしで洗ある日、学校の帰りに、巣

 から落ちたスズメの子を拾いました。次の文章を読んで、問いに答えなさい。

 家に帰り、

「巣から落ちていた」とてのひらのスズメを見せると、父親は意外にすんなり、「どれ」と手に

取り、「ああ、脚が①傷だらけだ」.と手早く綿療を始めた。

 薬液をしみさせたガーゼでそっと羽をぬぐい、胸の羽毛をふき、スポイトで栄養入りの水を

やっている≧き、スズメのミチは眠りかち覚めたようにゆっくりと薄いまぶたを開けた。ばっ

ちり、私と目が合った。

 たぶん、そのせいで、ミチは私を母親だと思い、自分のことを人間だと思うようになってし

まった。

」と父が聞く。

」と、安易に名づけられてしまったミチ。

 私が「ミヂ!」之呼ぶと、部屋のどこにいてもにねるようにやろて来て、てのひうに乗る。

私を見かけると、飛んできて肩に止ったり、頭の回りを飛んだりとっきまとう。エサをやると、

〈 a >と夢中で食べる。あまりにおいしそうに食べるのでついやりすぎて、むくむくに太

ら甘て.しまった。

 ミチは、,私のてのひらの上が安心できるらしく、そこでよく眠った。ミチがあまりに気持ち

よさそうに眠っているから、そっとしておいてやろうと思い1じっと横たわっているうちにい.

つのまにか私も寝てしまう。目が覚めると、ミチは汗ばんだ私みてのひらの上で胸の羽毛を湿

                                     2らせたまま、まだ< b >眠っているのだった。

 エサを私からあげないようにし、家の中のいろいろな場所に隠して、自力で見つけられるよ

うに野生生活へ向けてのリハビリをした。別れたくないけど、仕方ない。

 猫の入院患者が来たとき、いよいよミチを自然に帰さなければならないと覚悟した。、ミチの

おなかの白い羽毛のところにマニキュアで小さくハートを描いた。もしまたどこかで会うこと

があったら、これが目印になる。

 ベランダに出て、手すりにミチを乗せた。ミチは不思議そうに私を見る。父も診療室の窓か『

.ら、、〔 1 〕を装いながら気に参って見ている。

 ミチは手すりの上が日当たりがいいものだから、幸せそうにそこで羽つくろいをしている。

飛び去る気配がまったくない。仕方なく私はミチをてのひらに乗せ、上に放るようにして、飛

ばした。ミチは初めて空を飛んだ。軌道が②ジグザグで飛び方はうまくない。それなのに、ど

んどん高いところへ上昇してゆく。そして木立の向こうに姿が見えなくなった。

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 「はあ」と私はため息をついた。

 やっぱり別れは悲しい。そう思いながら、ミチが飛び去った空をぼんやりと見ていたら、ス

ズメが木立の向こうから現れ、こっちに向けて< c >と飛んでくる。そして、診療所の屋

根のてっぺんに止まった。そこから得意げに私を見下ろしている。どう見ても、’ ~チだ。

 ダメだよ、戻ってきたら。

 「ミチ!早く行きな」と声をかけると、呼ばれたと思ったらしく、私を:目がけてまっすぐに滑

空してきた。そして、私がてのひらを差し出さずにいると、勢いあまって私のおなかた< d

>と激突する。私はあわてて、てのひらでミチを受けとめた。

「もう、ほんとうに」と言いながら、かわいくて別れがなおさらっらくなる。

 仕方なく私はミ≠をてのひらに乗せて森を歩き、家が見えなくなったあたりで空に向けて放

った。ミチは下手な飛び方でジグザグに、木々の間を飛び去って行った。

 それが一週間前のこと。一週間、どこで何をしてたのやら。

 多分エサでも探しているとき、ふと一建物が目に入ったのだろう。また舞い戻

ってきてしまった。

 ミチは私に再会できてうれしくて仕方ないらしく部屋中を飛び回っている。私は窓を全部開

け放った。、階下で父も待っているし、朝ごはんを作りに下りようと、

「じゃあね、ミチ」.と声を々・けて部屋を出ようとしたら、ミチはバッと飛んできて、私の背中

にドスッとぶつかり、そのショックで頭がクラクラするらしく、ベッドに着地して< e >

と歩いている。

 私は心を〔.2 〕にしてミチをベッドに置き去りにする。窓から森に飛んで行くんだよ。

ミチがこのまま居ついたら、患者の猫に食べられちゃうよ。

 朝ごはんを食べながら、父にミチが舞い戻って来てしまったととを言おうかどうか迷ってや

めた。言っても、「じゃあ飼おう」とは絶対に言わないし、私もそれはよくないことだと思って

いるから。トーストを食べているあいだも部屋Qミチがどうしているか気になって仕方なかっ

た。

 記念写真を撮っておこうと思いついて、撲帯を握って急いで二階に上がった。やわらかな風

がカーテンを揺らし、開け放たれた窓から森が見える。

 ミチは部屋のどこにもいなかった。

 父を手伝うようになってから、患者を退院させ、自然へ送り出すたびにいつもさわやかさと

さびしさ半々の気分を味わう。[1]今回はさびしさが八割くらい。

                  (川口晴『子ぎつねヘレン』/文章の一部を改めた)

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問1・下線部①~③の意味として}最も適当なものをそ静それ郡翻で答えなさ・㌔

①1・たくさ膓がある2・漁膓がある、3・少し傷がある4・傷だけはな・・

 ②1。すれすれにカーブして  2.くるく『ると回って

  3.ぎざぎざに曲がって、  4,、ころころと転がって

③・.見たことがな… .見たことカ・ある3.全く覚えでいない4。よく覚えている

問2.空欄「ア」一「加・は、以下の女が入り就正しい順序に並べ、番号で答えなさ、㌔

    1・、道

    2.このスズメ、名前はあるのか?

    3.じゃあ、名前はミチにするか

    4・どこで獅た?

    5.ないよ。さっき拾ってきたんだから

問3.空欄<a>~〈e>に入る最も適当な言葉を選び、番号で答えなさい。

    1㌧ドスッ    2.パタ!ミタパタ    3.よろよろ

    4,スルッ  , 5。ガッガッガッ 「  6.すやすや

問4.空欄〔1〕〔2〕に入る最も適当な言葉をそれぞれ選び、番号で答えなさい。

!・〕・・繭2・無騨3関一・鰻心

〔3〕・・鬼2・. ヨ 3・空4・棒,

問5.下線部[1]「今回1まさびしさ演八割くらい」とあるが、それはなぜカ㌔その理由を考え

 て、40字以内で述べなさい。

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