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THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2 June 2011 125( 9 ) 3 ֎Պײەͱͷༀײࡎʕ 2009 ەΛத৺ʹʕ ژҩอେେӃײޚ ฏҰɾݹാஐٱɾਫޱɹప ຈҩՊେҩ෦֎ՊୈҰ ࠲ߨຈ֎Պه೦පӃ֎Պ ༄೭ ձҩ๏ਓఓ৺ձɹ ৽ຈܙѪձපӃ֎Պ ਇɹᆴ ຈಓපӃ֎Պ ʑҰߊɾછ୩ɾ ʑण༪ɾେܟখ୬፼ձපӃ֎Պ ডɾதଜผੜපӃ֎Պ ୩ɹ ۉའ૯߹පӃ֎Պ ୩ɹɾଜխඒɾ ౡलلɾલ߽थ ւಓੜձখ୬පӃ֎Պ ୩ɾݪɹ ւಓձڠۀձവපӃ֎Պ ฏ૯߹පӃ֎Պ ɹ߶ɾଜɹਔ පӃ֎Պ ༄ɹ ܄ࡏߦ๏ਓපӃ ߏػۄපӃ֎Պ ૬थɾɾഒ৾ ܚጯक़େҩ෦ٸٹҩ ኍɾएਿ ߂ݹେେӃফԽ֎ثՊ ޱ۾පӃ֎Պ ਫɹ༐ɾຊஐɾҪ ݹຽපӃ֎Պ ਅԼܒѪݝੜ࿈ඌපӃ֎Պ தक מ୩๛૯߹පӃ֎Պ ੴɹप מ୩๛૯߹පӃߴӃ֎Պ ਫɹॏੜ࿈ͳ૯߹පӃ֎Պ

2009 年度分離菌を中心に―jja-contents.wdc-jp.com/pdf/JJA64/64-3/64-3_125-169.pdf · 1982年7月から全国的に外科感染症における分 離菌とその薬剤感受性の調査1

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THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2June 2011 125 ( 9 )3

外科感染症分離菌とその薬剤感受性

―2009年度分離菌を中心に―

品川長夫東京医療保健大学大学院感染制御学

平田公一・古畑智久・水口 徹札幌医科大学医学部外科学第一講座

長内宏之札幌外科記念病院外科

柳内良之社会医療法人禎心会 

新札幌恵愛会病院外科

秦 史壯札幌道都病院外科

佐々木一晃・染谷哲史・

佐々木寿誉・大野敬祐小樽掖済会病院外科

時田捷司・中村誠志登別厚生年金病院外科

渋谷 均市立室蘭総合病院外科

長谷川 格・木村雅美・

大島秀紀・前田豪樹北海道済生会小樽病院外科

向谷充宏・鬼原 史北海道社会事業協会函館病院外科

渡部公祥市立赤平総合病院外科

星川 剛・木村 仁滝川市立病院外科

柳 在勲独立行政法人国立病院機構

埼玉病院外科

相川直樹・関根和彦・安倍晋也慶應義塾大学医学部救急医学

竹山廣光・若杉健弘名古屋市立大学大学院消化器外科学

谷口正哲大隈病院外科

水野 勇・社本智也・福井拓治名古屋市立緑市民病院外科

真下啓二愛知県厚生連尾西病院外科

田中守嗣刈谷豊田総合病院外科

石川 周刈谷豊田総合病院高浜分院外科

水野 章三重厚生連いなべ総合病院外科

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THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2126 ( 10 ) June 20113

岩井昭彦・齋藤高明三重厚生連菰野厚生病院外科

毛利紀章・角田直樹知多厚生病院外科

久保正二・李 栄柱大阪市立大学大学院肝胆膵外科学・

消化器外科学

大村 泰市立藤井寺市民病院外科

小林康人・辻 毅和歌山ろうさい病院外科

山上裕機・小澤 悟和歌山県立医科大学第二外科

竹末芳生兵庫医科大学感染制御学

藤原俊義岡山大学大学院医歯薬学総合研究科

消化器・腫瘍外科学

木村秀幸岡山済生会病院外科

岩垣博巳独立行政法人国立病院機構

福山医療センター外科

末田泰二郎・檜山英三・

村上義昭・大毛宏喜・

上村健一郎広島大学大学院医歯薬学総合研究科

病態制御医科学講座外科学

津村裕昭広島市立舟入病院

横山 隆広島市医師会運営安芸市民病院

竹内仁司・田中屋宏爾独立行政法人国立病院機構

岩国医療センター外科

安波洋一・佐々木隆光

福岡大学医学部再生移植医学,消化器外科

(2011年2月21日受付)

1982年 7月から外科感染症分離菌に関する多施設共同研究を行ってきたが,ここでは2009年度(2009年 4月�2010年 3月)の成績を中心にまとめた。1年間で調査対象と

なった症例は 220例であり,このうちの 174例 (79.1%)から 642株の細菌と 16株の真菌

が分離された。一次感染症から 411株,術野感染から 244株の細菌が分離された。一次

感染症では,嫌気性グラム陰性菌の分離頻度が高く,次いで好気性グラム陰性菌であり,

術野感染では,好気性グラム陽性菌の分離頻度が高く,次いで嫌気性グラム陰性菌で

あった。好気性グラム陽性菌については,一次感染症においてEnterococcus faecalisやEnterococcus aviumなどのEnterococcus spp.の分離頻度が最も高く,次いで Streptococ-

cus anginosusなどのStreptococcus spp., Staphylococcus aureusなどのStaphylococcus spp.

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1982年7月から全国的に外科感染症における分

離菌とその薬剤感受性の調査 1�32)を行ってきた

が,今回は,2009年度(2009年 4月�2010年 3

月)における分離菌の動向とその薬剤感受性成績

を中心に検討した。

I. 対象と方法

1982年7月に開始した外科感染症分離菌感受性

調査研究会は,現時点で,消化器外科を中心とす

る32施設の共同研究会となっている。

対象は消化器外科領域の感染症患者あるいは感

染を合併した入院患者である。一次感染症は,穿

孔性腹膜炎,急性胆嚢炎,急性胆管炎,肝膿瘍

などの腹腔内感染症である。術野感染は,腹腔内

膿瘍や創感染などの消化器系手術後の術野感染で

あり,術後の呼吸器系感染症,尿路感染症,血管

内留置カテーテル感染症あるいは敗血症などの術

野外感染症は含めなかった。同一患者からの分離

菌は初回のもののみを取り上げ,重複を避け,ま

た,消化管と持続的に交通している腸瘻などを伴

う腹腔内感染は対象外とした。

病巣からの検体をケンキポーター®(クリニカ

ルサプライ)に採取し,2002年3月までは東京総

合臨床検査センターへ,その後は山田エビデンス

リサーチへ送付し,原因菌を分離・同定した。

山田エビデンスリサーチでの原因菌の分離・同

定の概要は以下の如くである。検査材料は,①グ

ラム染色,②直接分離培養,③増菌培養を施行し

た。染色結果から選択培地の追加が必要であれば

追加した。好気培養は,馬血液寒天培地とBTB

寒天培地を用いて,37°C培養で毎日 1回,3日間

観察,嫌気培養はブルセラHK寒天培地,BBE寒

天培地,PEAブルセラHK寒天培地,PVブルセ

ラHK寒天培地を用い,嫌気ジャーでアネロパッ

ク®(三菱ガス化学)を使用して37°Cで3�7日間

観察,検出菌があればその都度純培養し,各菌種

の特徴的な性状を重点に従来法および同定キット

を併用し同定した。増菌培養は増菌培地にのみ菌

が検出された時や,グラム染色結果と直接分離培

養結果で不一致があるときに分離して確認及び追

加をした。

薬剤感受性については,日本化学療法学会標準

法であるMIC2000システムを用いた微量液体希

釈法により測定した。感受性測定薬剤としては,

Oxacillin (MPIPC), Ampicillin (ABPC), Tazobac-

tam/Piperacillin (TAZ/PIPC), Cefazolin (CEZ),

Cefotiam (CTM), Cefmetazole (CMZ), Flomoxef

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2June 2011 127 ( 11 )3

であった。術野感染からは,Enterococcus spp.の分離頻度が最も高く,次いでStaphylo-

coccus spp. であった。好気性グラム陰性菌では,一次感染症からEscherichia coliの分離

頻度が最も高く,次いで Klebsiella pneumoniae, Enterobacter cloacae, Pseudomonas

aeruginosaなどであり,術野感染からはE. coli, P. aeruginosa, E. cloacaeの分離頻度が高

かった。嫌気性グラム陽性菌では,一次感染症からEggerthella lenta, Parvimonas micra,

Streptococcus constellatus, Finegoldia magna,術野感染からはE. lenta, P. micraの分離頻

度が高かった。嫌気性グラム陰性菌では,一次感染症からは,Bilophila wadsworthiaの

分離頻度が最も高く,次いでBacteroides fragilis, Bacteroides ovatus, Bacteroides thetaio-

taomicronであり,術野感染からは B. fragilisの分離頻度が最も高く,次いで B.

ovatus, B. wadsworthia, B. thetaiotaomicronであった。バンコマイシン耐性のメチシリン耐

性黄色ブドウ球菌 (MRSA)やEnterococcus spp.および多剤耐性緑膿菌は認められなかった。

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(FMOX), Cefmenoxime (CMX), Latamoxef

(LMOX), Ceftazidime (CAZ), Cefpirome (CPR),

Cefepime (CFPM), Cefozopran (CZOP), Sulbac-

tam/Cefoperazone (SBT/CPZ), Aztreonam (AZT),

Carumonam (CRMN), Imipenem (IPM),

Meropenem (MEPM), Doripenem (DRPM), Gen-

tamicin (GM), Amikacin (AMK), Arbekacin

(ABK), Isepamicin (ISP), Clindamycin (CLDM),

Minocycline (MINO), Ciprofloxacin (CPFX), Levo-

floxacin (LVFX), Linezolid (LZD), Vancomycin

(VCM), Teicoplanin (TEIC), Fosfomycin (FOM)を

用いた。

II. 成績

1) 細菌検出状況

2009年度の調査対象として検体が採取された症

例は220例であった。このうち174例 (79.1%) か

ら642株の細菌と16株の真菌が分離されたが,残

る 46例からは細菌あるいは真菌のいずれも分離

されなかった。

過去 28年間の年度別検体数と総分離細菌株数

の推移をFig. 1に示した。

平均検体数は 28年間で 196.4検体,最近の 5年

間では 223.8検体であった。総分離細菌株数は,

1990年代半ばから増加し,更に最近の数年間で

は著増していた。平均分離細菌総株数は 28年間

で371.7株,最近の5年間では569.8株であり,検

体あたりの分離菌数の増加がみられた。

感染症別の細菌分離例数を Table 1に示した。

一次感染症全体では,126例のうち 87例 (69.0%)

から細菌が分離された。内訳として,肝・胆道感

染症では 36例中 22例 (61.1%),腹膜炎では 62例

中42例 (67.7%)から細菌が分離された。術野感染

全体では,94例中 87例 (92.6%)から細菌が分離

された。症例数が最も多い創感染では,66例中

63例 (95.5%)から細菌が分離された。一次感染症

より術野感染において細菌の陽性率が高かった。

分離菌が検出された材料としては,膿汁が 98

検体 (58.0%)と最も多く,次いで腹水 43検体

(22.4%),胆汁 19検体 (11.5%)の順であった (Fig.

2)。

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2128 ( 12 ) June 20113

Fig. 1. 年度別検体数と総分離細菌株数の推移

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全 174検体から真菌を除き 655株の細菌が分離

され,1検体平均で3.8株が分離された。174検体

中の 23.6%は単独菌分離, 18.4%は 2菌種,

14.4%は3菌種,11.5%は4菌種,9.8%は5菌種,

22.4%は 6菌種以上が分離された。検体別では,

腹膜炎からのもので複数菌分離が最も多く,なか

でも 54.1%は 5菌種以上の複数菌分離であった。

一方,肝・胆道感染からのものでは,腹膜炎に比

べ複数菌分離は少なく,45.8%は単独菌分離で

あった(Fig. 3)。

2) 2009年度の分離菌

全分離菌の内訳をTable 2に示した。一次感染

症から 411株,術野感染から 244株の細菌が分離

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2June 2011 129 ( 13 )3

Table 1. 感染症別例数

Fig. 2. 検体の内訳

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されているが,一次感染症では嫌気性グラム陰性

菌の分離頻度が最も高く,次いで好気性グラム陰

性菌であり,術野感染では好気性グラム陽性菌の

分離頻度が高く,次いで嫌気性グラム陰性菌で

あった。

真菌は,一次感染症から7株(Candida albicans

3株,Candida glabrata 2株,Candida parapsilosis

とCandida tropicalisの各 1株),術野感染からも

9株(C. albicans 5株,C. glabrata 3株とC. tropi-

calis 1株)が分離された。

好気性グラム陽性菌については,一次感染症と

術野感染をあわせ 32菌種(属)の 159株が分離

された。一次感染症からは,28菌種(属)の 72

株,術野感染からは,18菌種(属)の 87株で

あった (Table 3)。菌種別の頻度は,一次感染症で

Enterococcus faecalisの分離頻度が最も高く,次

いでStreptococcus anginosus, Enterococcus avium,

Staphylococcus aureus, Staphylococcus epidermidis

であり,術野感染からは,S. aureusの分離頻度が

最も高く,次いで E. faecalis, Enterococcus fae-

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2130 ( 14 ) June 20113

Fig. 3. 検体毎の分離菌株数

Table 2. 外科感染症分離菌の内訳

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cium, E. avium, S. epidermidisであった。属別で

は,一次感染症でEnterococcus spp.の分離頻度が

高く,次いで Streptococcus spp.であった。一方,

術野感染では,Enterococcus spp.の分離頻度が高

く,次いでStaphylococcus spp.であった。

嫌気性グラム陽性菌については,一次感染症と

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2June 2011 131 ( 15 )3

Table 3. 外科感染症別分離の好気性グラム陽性菌

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THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2132 ( 16 ) June 20113

Table 4. 外科感染症別分離の嫌気性グラム陽性菌

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術野感染をあわせ 34菌種(属)の 115株が分離

された。一次感染症からは,29菌種(属)の 79

株,術野感染からは,15菌種(属)の 36株で

あった (Table 4)。一次感染症からは,Eggerthella

lentaの分離頻度がもっとも高く,次いで Parvi-

monas micra, Streptococcus constellatus, Fine-

goldia magnaであり,術野感染からはE. lentaの

分離頻度が最も高く,次いでP. micraであった。

好気性グラム陰性菌については,一次感染症と

術野感染をあわせ 23菌種(属)の 154株が分離

された。一次感染症からは,20菌種(属)の104

株,術野感染からは,13菌種の 50株であった

(Table 5)。一次感染症からは,Escherichia coliの

分離頻度が最も高く,次いで,Klebsiella pneu-

moniae, Enterobacter cloacae, Klebsiella oxytoca,

Pseudomonas aeruginosaであった。一方,術野感

染からは,E. coliの分離頻度が最も高く,次いで

P. aeruginosa, E. cloacaeであった。緑膿菌以外の

ブドウ糖非醗酵菌としては,Stenotrophomonas

maltophilia が 3 株 , Acinetobacter baumannii,

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2June 2011 133 ( 17 )3

Table 5. 外科感染症別分離の好気性グラム陰性菌

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Achromobacter xylosoxidansの各 1株が分離され

た。S. maltophiliaの 2株は術野感染から,1株は

一次感染症から分離された。

嫌気性グラム陰性菌については,一次感染症と

術野感染をあわせ 30菌種(属)の 227株が分離

された。一次感染症からは,30菌種(属)の156

株,術野感染からは,19菌種(属)の 71株で

あった (Table 6)。一次感染症からは,Bilophila

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2134 ( 18 ) June 20113

Table 6. 外科感染症別分離の嫌気性グラム陰性菌

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wadsworthiaの分離頻度が最も高く,次いでBac-

teroides fragilis, Bacteroides ovatus, Bacteroides

thetaiotaomicronであった。術野感染からは,B.

fragilisの分離頻度が最も高く,次いでB. ovatus,

B. wadsworthia, B. thetaiotaomicronであった。

全体として感染症別の分離菌分布をみると,一

次感染症分離菌は術野感染分離菌と比較し,グラ

ム陽性嫌気性菌,Bacteroides spp.およびその他

のグラム陰性嫌気性菌,E. coliなどの分離頻度が

高かった。一方,術後感染分離菌は,一次感染分

離菌と比較して,Enterococcus spp.や Staphylo-

coccus spp.の分離頻度が高く,さらに,P. aerugi-

nosaなどの好気性グラム陰性桿菌の分離頻度が高

くなっていた(Fig. 4)。

3) 分離菌の年次的変遷

一次感染症分離菌を好気性と嫌気性およびグラ

ム陽性と陰性にわけて年次的推移 (Fig. 5)をみる

と,1990年代後半からは嫌気性菌と好気性菌と

の差が縮小し,嫌気・好気性菌共にグラム陰性菌

の割合が高い状況が続いている。2006年度からは

嫌気性グラム陰性菌の割合が最も高く,次いで好

気性グラム陰性菌の割合が高くなった。逆に2007

年度からは,好気性グラム陽性菌の割合が最低と

なった。この推移を検体数あたりの菌種別頻度で

みると,腸内細菌叢として優位なE. coliの分離頻

度の高さはゆるぎなく,2007年度からはさらに高

率であり,次いでB. fragilisが 2番目の分離頻度

となっている (Fig. 6)。

同様に術野感染分離菌の推移 (Fig. 7)をみると,

1990年代後半から好気性グラム陽性菌の分離頻

度が高いが,嫌気性菌では,1990年代からグラム

陽性菌,陰性菌ともに増加傾向を示してきた。

2006年度以降は,嫌気性グラム陰性菌の分離頻

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2June 2011 135 ( 19 )3

Fig. 4. 一次感染症と術野感染での分離菌の分布

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THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2136 ( 20 ) June 20113

Fig. 5. 一次感染症分離菌の推移(1)(真菌を除く)

Fig. 6. 一次感染症分離菌の推移(2)(検体数あたり,真菌を除く)

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THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2June 2011 137 ( 21 )3

Fig. 7. 術野感染分離菌の推移(1)(真菌を除く)

Fig. 8. 術野感染分離菌の推移(2)(検体数あたり,真菌を除く)

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度が好気性グラム陰性菌より高くなっている。検

体数あたりの菌種別分離頻度をみると,1993年

以降はE. faecalisの分離頻度が高かったが,本年

度はB. fragilisと S. aureusに次いで 3番目と低下

した。P. aeruginosaは 1990年代の前半までは

20�30%台という高い分離頻度であったが,1998

年度からは,2001年度を除き 10%台の分離頻度

と低下している。E. coliについては,ほぼ10%台

の分離頻度が続いている (Fig. 8)。

MRSAの分離頻度については,1991年度と

1998年度にピークがあった。2005年度と2006年

度に再び高い分離頻度となったが,2007年度と

2008年度は低下している。S. aureus中に占める

MRSAの比率は,高止まりであったが,本年度は

50%近くまで低下した (Fig. 9)。

4) 感染症別の分離菌の変遷

(1) 腹膜炎分離菌

続発性腹膜炎分離菌は,最近の 5年間では,嫌

気性菌の分離頻度が高く,全体の59.3%を占めて

いる。すなわち嫌気性グラム陽性菌 (21.9%)の頻

度が最も高く,次いでBacteroides spp. (18.8%)を

中心とする嫌気性グラム陰性菌およびその他の嫌

気性グラム陰性菌である。次いでE. coli (10.2%),

Streptococcus spp. (6.3%), Enterococcus spp.

(6.0%)などである (Fig. 10)。

一方,術後腹膜炎では,最近の 5年間で,En-

terococcus spp. (17.3%)の分離頻度が最も高いが,

以下はBacteroides spp. (15.0%),嫌気性グラム陽

性菌 (13.2%),その他の嫌気性グラム陰性菌

(12.4%)などとなっている。Staphylococcus spp.

は,10.3%の分離頻度であり,1999年度以降の分

離頻度はやや高くなってきている (Fig. 11)。

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2138 ( 22 ) June 20113

Fig. 9. MRSA分離頻度の推移

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THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2June 2011 139 ( 23 )3

Fig. 10. 続発性腹膜炎の分離菌推移

Fig. 11. 術後腹膜炎の分離菌推移

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(2) 肝・胆道感染症分離菌

胆嚢炎,胆管炎などの肝・胆道感染症分離菌に

ついては,1990年代の中頃まではE. coliやKleb-

siella spp.などの分離頻度が高かったが,1994年

以降はEnterococcus spp.の頻度が高くなってきて

いる。その反面,E. coliとKlebsiella spp.などの

好気性グラム陰性桿菌の分離頻度が低下傾向を示

してきたが,最近の 5年間ではKlebsiella spp.の

分離頻度が再度高くなってきている。嫌気性菌の

分離頻度は19.8%と低い (Fig. 12)。

術後の肝・胆道感染症では,1994年度以降,

相変わらずEnterococcus spp.の分離頻度が高い。

最近の 5年間では,検体数が少なく,分離株数が

少ない(Fig. 13)。

(3) 創感染分離菌

創感染からの分離菌は,最近の5年間をみると,

Bacteroides spp.を中心とする嫌気性菌の分離頻度

が 39.7%と高い。Enterococcus spp.や Staphylo-

coccus spp.の分離頻度に変化はないが,E. coli,

Klebsiella spp.などの好気性グラム陰性菌の分離

頻度の低下がみられる (Fig. 14)。

(4) 感染症別分離菌頻度

過去 5年間における感染症別分離菌頻度を

Table 7に示した。術後胆道感染については,株

数が少ないため過去 10年間における分離菌を集

計した。

5) 分離菌の薬剤感受性

各種分離菌の薬剤感受性をTable 8�46に示し

た。なお,少数株とMIC測定不能株は除いた。

(1) Staphylococcus spp.

S. aureus 25株についてのMPIPCに対するMIC

は,12株は 1 m g/mL以下であり,残る 13株

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2140 ( 24 ) June 20113

Fig. 12. 胆道感染の分離菌推移

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THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2June 2011 141 ( 25 )3

Fig. 14. 創感染の分離菌推移

Fig. 13. 術後胆道感染の分離菌推移

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(52.0%)は 128 mg/mL以上であった。ABPCにつ

いては,14株 (56%)は 32 mg/mL以上であった。

TEICに対しMICが 4 mg/mLの 1株を除き,MIC

2 mg/mL以下であった。VCM, LZDおよびABK

では,全株がMIC 2 mg/mL以下であった。GMで

は 16株がMIC 0.5 mg/mL以下であり,その他の

株は総てMIC 8 mg/mL以上であった。CLDMに

は,12株がMIC 0.125 mg/mL以下であったが,残

る 13株はMIC 128 mg/mL以上の耐性株であった

(Table 8)。

S. epidermidis 11株についてのMPIPCに対する

MICは,3株がMIC 0.125 mg/mLであったが,残

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2142 ( 26 ) June 20113

Table 7. 感染症別の分離菌頻度(2005�2009年度)

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THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2June 2011 143 ( 27 )3

Table 8. 各種抗菌薬のStaphylococcus aureus(25株)に対する抗菌力

Table 9. 各種抗菌薬のStaphylococcus epidermidis(11株)に対する抗菌力

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る 8株は 2 mg/mL以上であった。MINOが最も優

れた抗菌力を示し,全株MICが0.5 mg/mL以下で

あった。次いでMIC90でみるとABK, LZD, VCM,

IPM, TAZ/PIPC, CTM, TEICの順に優れていた。

一方,CLDMはMICが 0.25 mg/mL以下の 9株と

128 mg/mL以上の 2株と明確に抗菌力が分かれて

いた (Table 9)。

その他の Staphylococcus spp. 10株(Staphylo-

coccus lugdunensisが3株,Staphylococcus capitis

とStaphylococcus hominisがそれぞれ2株,Staphy-

lococcus haemolyticus, Staphylococcus capraeと

Staphylococcus simulansがそれぞれ 1株)につい

ては,MIC90でみるとCLDMが最も優れ,次いで

MINO, TEIC, ABK, LZD, IPM, VCMの抗菌力が

優れていた (Table 10)。

(2) Streptococcus spp.

S. anginosusの15株については,IPMとDRPM

のMICが最も優れ全株 0.063 mg/mL以下であり,

次いでMEPM, CMX, CPR, TEIC, ABPCであり

MICは全株 0.25 mg/mL以下であった。FOMには

耐性株が多くみられた (Table 11)。

その他の Streptococcus spp.の 12株(Strepto-

coccus agalactiae, Streptococcus salivarius, Strep-

tococcus parasanguinisと Streptococcus sanguinis

のそれぞれ2株,Streptococcus oralis, Streptococ-

cus vestibularis, Streptococcus alactolyticusと

Streptococcus equisimilisのそれぞれ 1株)では,

IPM, DRPM, CPR, CMXの抗菌力が優れ,全株

MICが 0.125 mg/mL以下であり,次いでMEPM,

TEIC, CZOP, CFPMが優れていた (Table 12)。

(3) Enterococcus spp.

E. faecalisの 31株については,TEICの抗菌力

が最も優れており,全株MICは0.5 mg/mL以下で

あった。次いで, ABPC, LZD, IPM, VCM,

TAZ/PIPCの抗菌力が優れていた。しかし,4株は

VCMにMICが4 mg/mLであった(Table 13)。

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2144 ( 28 ) June 20113

Table 10. 各種抗菌薬のその他のStaphylococcus spp.(10株)に対する抗菌力

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E. faeciumの 13株については,TEIC とVCM

の抗菌力が優れており,全株MIC 1 mg/mL以下,

次いでLZDは全株MIC 2 mg/mL以下, MINOは

全株MIC 16 mg/mL以下と優れた抗菌力を示した。

しかし,その他の薬剤では耐性株が多くみられた

(Table 14)。

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2June 2011 145 ( 29 )3

Table 11. 各種抗菌薬のStreptococcus anginosus(15株)に対する抗菌力

Table 12. 各種抗菌薬のその他のStreptococcus spp.(12株)に対する抗菌力

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E. aviumの 18株については,TEICの抗菌力が

最も優れており,全株MIC 0.5 mg/mL以下であ

り,次いでVCM, LZD, MINOの抗菌力が優れて

いた (Table 15)。

その他の Enterococcus spp. 8株(Enterococcus

gallinarumの 3株, Enterococcus casseliflavusと

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2146 ( 30 ) June 20113

Table 13. 各種抗菌薬のEnterococcus faecalis(31株)に対する抗菌力

Table 14. 各種抗菌薬のEnterococcus faecium(13株)に対する抗菌力

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Enterococcus pseudoaviumの各 2株およびその他

の Enterococcus sp. 1株)については,TEIC,

LZD, CPFX, LVFX, VCMの順に抗菌力が優れて

いた (Table 16)。

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2June 2011 147 ( 31 )3

Table 15. 各種抗菌薬のEnterococcus avium(18株)に対する抗菌力

Table 16. 各種抗菌薬のその他のEnterococcus spp.(8株)に対する抗菌力

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(4) Corynebacterium spp.

Corynebacterium spp. 8株 ( Corynebacterium

striatum 4株,Corynebacterium minutissimumの2

株およびその他のCorynebacterium spp. 2株)に

ついて,TEIC, LZD, VCM, MINOの抗菌力が優

れていた (Table 17)。

(5) Bacillus spp.

Bacillus spp.の 5株( Bacillus subtilis 4株と

Bacillus coagulans 1株)については,FOMと

CAZに耐性株がみられたが,その他の薬剤は良好

な抗菌力を示した (Table 18)。

(6) Escherichia coli

E. coliの55株についてMIC90でみると,MEPM

と DRPMが 0.063 mg/mL以下と優れ,次いで

0.125 mg/mLの CFPM, 0.25 mg/mLの IPM, CZOP

と FMOX, 0.5 mg/mLの CRMN, LMOX, CPRで

あった。一方,MICが 128 mg/mL 以上の株が

ABPCで20株,CEZで5株みられた。またLVFX

とCPFXでは,8株がMIC 8 mg/mL 以上であった

(Table 19)。

(7) Klebsiella spp.

K. pneumoniaeの13株については,カルバペネ

ム薬,第三,第四世代セフェム薬,ニューキノロ

ン薬,モノバクタム薬とオキサセフェム薬の抗菌

力が優れていた。ABPCと FOMでは耐性株が多

くみられた (Table 20)。

K. oxytocaの10株については,カルバペネム薬,

オキサセフェム薬の抗菌力が優れていた。ABPC

とCEZには耐性株がみられた (Table 21)。

(8) Enterobacter spp.

Enterobacter cloacaeの18株については,MIC90

でみると,CPFXが0.063 mg/mL以下と最も優れ,

次いで LVFX, MEPM, DRPM, IPM, GM, AMK,

CFPM, MINO, CPRの順で優れていた。ABPCと

第一,第二世代セフェム薬,オキサセフェム薬,

FOMで耐性株も多くみられた (Table 22)。

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2148 ( 32 ) June 20113

Table 17. 各種抗菌薬のCorynebacterium spp.(8株)に対する抗菌力

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THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2June 2011 149 ( 33 )3

Table 18. 各種抗菌薬のBacillus spp.(5株)に対する抗菌力

Table 19. 各種抗菌薬のEscherichia coli(55株)に対する抗菌力

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THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2150 ( 34 ) June 20113

Table 20. 各種抗菌薬のKlebsiella pneumoniae(13株)に対する抗菌力

Table 21. 各種抗菌薬のKlebsiella oxytoca(10株)に対する抗菌力

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THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2June 2011 151 ( 35 )3

Table 22. 各種抗菌薬のEnterobacter cloacae(18株)に対する抗菌力

Table 23. 各種抗菌薬のEnterobacter aerogenes(7株)に対する抗菌力

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Enterobacter aerogenesの7株では,カルバペネ

ム薬の抗菌力が最も優れ,次いでフルオロキノロ

ン薬,第四世代セフェム薬,アミノグリコシド薬

であった (Table 23)。

(9) Citrobacter spp.

Citrobacter spp. 9株(Citrobacter braakii 4株,

Citrobacter freundii 3株,Citrobacter youngaeお

よびCitrobacter amalonaticusの各1株)について

は,カルバペネム薬,第四世代セフェム薬,フル

オロキノロン薬およびアミノグリコシド薬の抗菌

力が優れていた (Table 24)。

(10) Proteus spp.

Proteus spp. 7株(Proteus mirabilis 3株,Pro-

teus vulgaris 4株)については,カルバペネム薬

とオキサセフェム薬の抗菌力が優れていた (Table

25)。

(11) Pseudomonas aeruginosa

P. aeruginosaの 18株について,最も小さい

MIC50を示した薬剤は,CPFXとDRPMであり

0.25 mg/mL,次いで MEPMの 0.5 mg/mL, LVFX

と IPM, CZOPの 1 mg/mLであった。最も小さい

MIC90を示した薬剤は,DRPMと CPFXであり

4 mg/mL,次いでGMの 8 mg/mLであった (Table

26)。

IPMにMICが 16 mg/mL以上の 3株 (16.7%)の

うち,2株 (11.1%)はCPFXにMIC 4 mg/mL以上

であったが,AMKには3株とも感受性であった。

また AMKに MIC 32 mg/mL以上の株の 1株

(5.6%)は,IPMとCPFXに感受性であり,3薬剤

ともに耐性の株(多剤耐性緑膿菌)は認められな

かった。セフェム薬では,CZOPが最も良好な抗

菌力を示した。

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2152 ( 36 ) June 20113

Table 24. 各種抗菌薬のCitrobacter spp.(9株)に対する抗菌力

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(12) Streptococcus constellatus

S. constellatusの10株については,IPM, CLDM,

TEICの抗菌力が優れ,いずれもMICは 0.063

mg/mL以下であり,次いでDRPM, MINO, MEPM,

CMX, CPRであった (Table 27)。

(13) Gemella morbillorum

G. morbillorumの 6株については,FOM, CAZ

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2June 2011 153 ( 37 )3

Table 25. 各種抗菌薬のProteus spp.(7株)に対する抗菌力

Table 26. 各種抗菌薬のPseudomonas aeruginosa(18株)に対する抗菌力

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以外は良好な抗菌力を示した (Table 28)。

(14) Finegoldia magna

F. magnaの7株については,TAZ/PIPC, MEPM,

DRPMの抗菌力が優れ,次いで, IPM, TEIC,

ABPC, FMOX, VCMの順であった (Table 29)。

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2154 ( 38 ) June 20113

Table 27. 各種抗菌薬のStreptococcus constellatus(10株)に対する抗菌力

Table 28. 各種抗菌薬のGemella morbillorum(6株)に対する抗菌力

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(15) Parvimonas micra

P. micraの 18株については,TAZ/PIPC,カル

バペネム薬,TEICが良好な抗菌力を示した (Table

30)。

(16) Peptoniphilus asaccharolyticus

P. asaccharolyticusの5株についてはいずれの薬

剤も良好な抗菌力を示した (Table 31)。

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2June 2011 155 ( 39 )3

Table 29. 各種抗菌薬のFinegoldia magna(7株)に対する抗菌力

Table 30. 各種抗菌薬のParvimonas micra(18株)に対する抗菌力

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(17) Eggerthella lenta

E. lentaの21株については,TEICの抗菌力が最

も優れ,全株MICが 0.25 mg/mL以下であった。

次いでDRPM, CLDM, MEPM, IPM, LZD, ABPC,

VCMの順に抗菌力が優れていた (Table 32)。

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2156 ( 40 ) June 20113

Table 31. 各種抗菌薬のPeptoniphilus asaccharolyticus(5株)に対する抗菌力

Table 32. 各種抗菌薬のEggerthella lenta(21株)に対する抗菌力

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(18) Lactobacillus spp.

Lactobacillus spp.の 11株( Lactobacillus aci-

dophilus 4 株, Lactobacillus fermentum, Lacto-

bacillus gasseriおよびLactobacillus minutusの各1

株およびその他のLactobacillus spp. 4株)につい

ては,最も優れたMIC90を示したのは IPMであ

り,全株がMIC 1 mg/mL以下であった。次いで,

MINO, CLDM, ABPC, TAZ/PIPCの順に抗菌力が

優れていた (Table 33)。

(19) Eubacterium spp.

Eubacterium spp.の 7株(Eubacterium limosum

の3株,Eubacterium biformeの1株およびEubac-

terium spp.の3株)については,MEPM, DRPM,

IPM, TAZ/PIPCの抗菌力が優れていた (Table 34)。

(20) Clostridium spp.

Clostridium spp.の 15株(Clostridium perfrin-

gens 3株 , Clostridium difficileと Clostridium

symbiosum 各 2 株, Clostridium bifermentans,

Clostridium clostridioforme, Clostridium

butyricum, Clostridium innocuum, Clostridium

malenominatum, Clostridium nexile, Clostridium

sporosphaeroidesおよび Clostridium subterminale

の各1株)については,MEPM, DRPM, ABPCで

は総ての株はMIC 2 mg/mL以下であり,TEIC,

TAZ/PIPCと IPMでは 4 mg/mL以下であり,良好

な抗菌力を示した。CTM, CAZ, CFPM, CLDMで

はわずかながら高度耐性株がみられた (Table 35)。

(21) Veillonella spp.

Veillonella spp.の 5株は,TEICとVCMに対し

て,全株128 mg/mL以上と高度耐性を示した。最

も良好な抗菌力を示したのはCLDMであり,全

株MICは 0.125 mg/mL以下であった。次いで

MINOの 0.5 mg/mL以下であり,以下カルバペネ

ム薬が続いた (Table 36)。

(22) Bacteroides spp.

B. fragilis 47株についてMIC90でみると,IPM,

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2June 2011 157 ( 41 )3

Table 33. 各種抗菌薬のLactobacillus spp.(11株)に対する抗菌力

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TAZ/PIPC, MEPMが 2 mg/mLと優れ,次いで

DRPMとMINOの 4 mg/mL, SBT/CPZの 8 mg/mL

であった (Table 37)。一方, CMX, LMOX,

FMOX, CPR, CFPM, CZOPおよび CLDMでは,

高度耐性株が多数認められた。

B. ovatus 24株についてMIC90でみると,IPMが

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2158 ( 42 ) June 20113

Table 34. 各種抗菌薬のEubacterium spp.(7株)に対する抗菌力

Table 35. 各種抗菌薬のClostridium spp.(15株)に対する抗菌力

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0.5 mg/mLと最も優れ,次いで1 mg/mLのMEPM,

2 mg/mLの DRPM, 4 mg/mLの MINOと TAZ/

PIPC, 8 mg/mLの SBT/CPZなどであった (Table

38)。一方,CPR, CFPM, CZOPおよびCLDMに

は,高度耐性株が多数認められた。

B. thetaiotaomicron 19株についてMIC90でみる

と,IPMが 1 mg/mLと最も優れ,次いで 4 mg/mL

のMINO, MEPM, 8 mg/mLの DRPM, TAZ/PIPC,

SBT/CPZ, LVFXなどであった (Table 39)。一方,

CPR, CFPM, CZOPおよびCLDMには,高度耐性

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2June 2011 159 ( 43 )3

Table 36. 各種抗菌薬のVeillonella spp.(5株)に対する抗菌力

Table 37. 各種抗菌薬のBacteroides fragilis(47株)に対する抗菌力

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株が多数認められた。

B. fragilisを除く,B. ovatus 24株,B. thetaio-

taomicron 19株およびその他のBacteroides spp. 33

株の合計 76株 (non- B. fragilis)について,MIC90

でみると, IPMが 1 mg/mLと最も優れ,次いで

2 mg/mLの MEPM, DRPM, 4 mg/mLの MINO,

8 mg/mLのTAZ/PIPCとSBT/CPZであった (Table

40)。一方,CLDMでは,MIC50は 4 mg/mLと良

好であったが,34株 (44.7%)はMICが128 mg/mL

以上であった。またCFPM, CZOP, CPRに高度耐

性株が多数認められた。

(23) Bilophila wadsworthia

B. wadsworthiaの 32株についてMIC90でみる

と,CLDMが 1 mg/mLと最も優れ,全株MICは

2 mg/mL以下であった。次いで CPFX, LVFX,

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2160 ( 44 ) June 20113

Table 38. 各種抗菌薬のBacteroides ovatus(24株)に対する抗菌力

Table 39. 各種抗菌薬のBacteroides thetaiotaomicron(19株)に対する抗菌力

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MINOの抗菌力が優れていたが,中等度耐性株も

多くみられた。ペニシリン薬,セフェム薬,カル

バペネム薬には高度耐性株が多く認められた

(Table 41)。

(24) Campylobacter gracilis

C. gracilisの 6株については,MINOが最も良

好な抗菌力を示し,次いでカルバペネム薬であっ

た (Table 42)。

(25) Prevotella spp.

Prevotella spp.の 18株(Prevotella intermedia

とPrevotella corporisの各4株,Prevotella buccae

と Prevotella loescheii の 各 3 株, Prevotella

melaninogenica 2株およびPrevotella oralisとPre-

votella biviaの各1株)については,IPM, MEPM,

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2June 2011 161 ( 45 )3

Table 40. 各種抗菌薬のBacteroides fragilis以外のBacteroides spp.(76株)に対する抗菌力

Table 41. 各種抗菌薬のBilophila wadsworthia(32株)に対する抗菌力

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DRPM, TAZ/PIPCの抗菌力が優れ,MICはすべ

て0.063 mg/mL以下であった (Table 43)。

(26) Porphyromonas spp.

Porphyromonas spp. 11株 ( Porphyromonas

asaccharolytica 8株,Porphyromonas endodontalis

2株と Porphyromonas gingivalis 1株)について

は,いずれの薬剤も良好な抗菌力を示した (Table

44)。しかし,CLDMには高度耐性株が 1株認め

られた。

(27) Fusobacterium spp.

Fusobacterium spp. 9株 ( Fusobacterium nu-

cleatum 6株,Fusobacterium varium 2株とその他

の Fusobacterium sp. 1株)については,MEPM,

DRPM, MINOの抗菌力が優れていた (Table 45)。

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2162 ( 46 ) June 20113

Table 42. 各種抗菌薬のCampylobacter gracilis(6株)に対する抗菌力

Table 43. 各種抗菌薬のPrevotella spp.(18株)に対する抗菌力

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(28) Parabacteroides distasonis

P. distasonisの10株について,MIC90でみると,

MEPMが 0.5 mg/mLと最も優れ,次いで IPM,

DRPM, TAZ/PIPCの抗菌力が優れていた。セフェ

ム系薬には耐性株が多く認められた (Table 46)。

III. 考察

S. aureus中に占めるMRSAの割合は,前年度

までの数年間では 80%前後と高率で留まってい

た。しかし,本年度は,52.0%(25株中 13株が

MRSA)と低下した。近年,MRSA以外の多くの

多剤耐性菌(多剤耐性緑膿菌,多剤耐性A. bau-

mannii, New Delhi metallo-b -lactamase-1産生菌な

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2June 2011 163 ( 47 )3

Table 44. 各種抗菌薬のPorphyromonas spp.(11株)に対する抗菌力

Table 45. 各種抗菌薬のFusobacterium spp.(9株)に対する抗菌力

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ど)が話題となり,医療関連感染防止に多くの関

心が集まり,医療従事者全体による感染予防策の

徹底がMRSA分離比率の低下に繋がったと推測

されるが,今後の経過に注目していきたい。

本研究会において,以前はMRSAに対する

VCMのMICは 0.5 mg/mLの株が多かったが,近

年では多くが 1 mg/mLであり,2 mg/mLの株も認

められている。しかし,MICが4 mg/mL以上の耐

性株は今までに認められていない。VCMに対す

るMICが2 mg/mLの株は少数であり,増加傾向は

ないが,毎年度分離されている。

MICが2 mg/mLの株と1 mg/mL以下の株が分離

された臨床例について,VCMの臨床効果を比較

したところ,MICが2 mg/mLの症例において有意

に不良であったことが報告33)されている。

VCM存在下において,細胞壁合成を活性化す

る調節遺伝子に突然変異が起こり,細胞壁が肥厚

し,VCM耐性が上昇する。この段階では,VCM

感受性株とVCM中程度耐性株 (VISA)が含まれ

る集団となるが,大多数の感受性株と少数の耐性

株が存在している状態であり,ヘテロ耐性を意味

する。一方,変異を起こした株は,耐性を維持す

るために多くのエネルギーを必要(fitness costが

大きい)とする。このため増殖のスピードは遅い。

増殖力の低下は他の菌株と生存競争を行っている

微生物にとっては,大きなマイナスとなるもので

ある。

ヘテロ耐性は通常の検査ではVCMに感受性と

判断され,確かに始めはVCMが効くようにみえ

る。しかし,実際にはMIC 4あるいは8 mg/mLの

ポピュレーションを含んでいるから,そうした菌

が生き残り増殖する可能性がある。すなわちVCM

に対するMICが4あるいは8 mg/mLのMRSAを治

療することになり,病巣内で治療に必要なVCM

濃度が達成されるかどうかの問題となる。

現在,VCMのMICが 2 mg/mLの株は感受性株

とされているが,これらは臨床効果低下株といえ

る。このような株の分離頻度が高い施設では,

VCMの長期使用あるいは偏った使用などVCM投

与方法に問題があるか,あるいは院内感染対策に

不備があると考えるべきである。VCMのMICが

2 mg/mLの株が分離されている施設では注意が必

要である。

E. coliについては,1990年代の半ばでCEZに

100 mg/mL以上のMICを示した株が 10%ほどみ

られ11,13�15),その後低下傾向となった。しかし,

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2164 ( 48 ) June 20113

Table 46. 各種抗菌薬のParabacteroides distasonis(10株)に対する抗菌力

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2002年度 26)および 2007年度 31)に続き本年度

もCEZ耐性株が認められた。本年度はCEZに対

するMICが 16 mg/mL以上の株が 10株 (18.2%)

あった。多くが Extended spectrum b -lactamases

(ESBLs)産生菌と考えられ,ABPCに対しても

MICが 128 mg/mL以上の株が 20株 (36.4%)認め

られている。これらの細菌が関与する外科感染症

に対して,ABPCやCEZを使用する場合には注意

が必要である。

本年度分離のP. aeruginosa(18株)について,

IPMにMIC 16 mg/mL以上の株が 3株,AMKに

32 mg/mL以上の株が 1株,CPFXに 4 mg/mL以上

の株が 2株あったが,3剤ともに耐性の多剤耐性

緑膿菌は認められなかった。またカルバペネム薬

に高度耐性株はなく,プラスミド媒介性のメタロ

b -ラクタマーゼ産生株はないと考えられた。尿路

あるいは血液培養からの緑膿菌の感受性34,35)と比

較すると外科領域分離の緑膿菌の薬剤感受性は全

般的に良好である。参加施設において,緑膿菌感

染症の治療に大きな支障はないと考えられた。

緑膿菌以外のブドウ糖非醗酵菌は 5株分離され

たが,話題となっているA. baumanniiは一次感染

症から 1株分離されたのみである。A. baumannii

は,研究会開始当時から1�2年に1株程度の分離

があるが,増加傾向は認められていない。一次感

染症からの分離が半数程度であり,市中にも僅か

に分布していると考えられる。

嫌気性菌については, Lactobacillus spp.,

Clostridium spp.およびBacteroides spp.の一部と

B. wadsworthiaは,カルバペネム系薬に耐性を示

す36,37)。また,E. lenta, B. fragilisを中心とする

Bacteroides spp., B. wadsworthia, C. gracilisおよ

びPrevotella spp.などでは,臨床で使用頻度の高

いセフェム系薬に中等度から高度耐性株が多い。

特にB. wadsworthiaは,腹膜炎などの一次感染

症からの分離頻度が高く,本菌の病態への関与に

ついて,臨床面での検討が必要と考えられる。本

菌の分離頻度については,東京以東の病院で低

く,西日本の病院で高い傾向であったが,その理

由は不明である。今後も注目していきたい。

また,Clostridium spp.については,一次感染

症ばかりでなく,術野感染においてもみられてい

る38�40)。その発症頻度は低いが重篤な外科感染症

であり,十分な認識が必要であると考えられた。

本調査の全集積期間を通じてVCM耐性の腸球

菌やブドウ球菌などは認められていない。しかし,

ESBLs産生E. coliやカルバペネム耐性P. aerugi-

nosaが僅かながら認められ,さらに Bacteroides

spp., B. wadsworthiaやPrevotella spp.などのb -ラ

クタム薬耐性の嫌気性菌が認められているので,

これらの動向には引き続き注意すべきである。

世界各地で様々な型のプラスミド性メタロb -ラ

クタマーゼ産生菌の報告がある。日本においては,

緑膿菌が中心であったが,近年,肺炎桿菌を初め

としてカルバペネマーゼ産生腸内細菌の存在が報

告41,42)されている。プラスミド性の耐性遺伝子は

菌種を超えて伝播するため,今後も様々な菌種が

耐性遺伝子を獲得していくことが予想される。消

化器外科領域の感染症においては,大きな変化が

生じる可能性があり,注意しなければならない。

謝辞

本研究は,武田薬品工業株式会社の支援のもと

に実施した。

文献

1) 由良二郎,品川長夫,石川 周,他:外科感染症分離菌及び感受性調査(第1報)。Jpn. J.Antibiotics 39: 2557�2578, 1986

2) 由良二郎,品川長夫,石川 周,他:外科感染症分離菌の様相と薬剤感受性の動向(第 2報)。Jpn. J. Antibiotics 41: 361�389, 1988

3) 品川長夫,由良二郎,石川 周,他:穿孔性腹膜炎よりの分離菌とその薬剤感受性。日本化学療法学会雑誌37: 731�743, 1989

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2June 2011 165 ( 49 )3

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4) 品川長夫,由良二郎,石川 周,他:外科感染症分離菌とその薬剤感受性―特にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA)について―。日本外科感染症研究2: 232�240, 1990

5) 品川長夫,由良二郎,石川 周,他:外科感染症分離の嫌気性菌について。日本外科感染症研究3: 103�108, 1991

6) 真下啓二,品川長夫,由良二郎,他:外科感染症分離の緑膿菌とその薬剤感受性。日本外科感染症研究4: 43�49, 1992

7) 真下啓二,品川長夫,由良二郎,他:術後感染より分離したMRSAについて。日本外科感染症研究5: 105�111, 1993

8) 品川長夫,由良二郎,石川 周,他:消化器外科術後感染分離菌とその薬剤感受性の変遷。Jpn. J. Antibiotics 47: 493�501, 1994

9) 品川長夫,水野 章,真下啓二,他:急性化膿性腹膜炎よりの分離菌とその薬剤感受性について。Jpn. J. Antibiotics 47: 1329�1343,1994

10) 品川長夫,水野 章,真下啓二,他:外科感染症分離の嫌気性菌について。日本嫌気性菌感染症研究24: 40�45, 1995

11) 品川長夫,由良二郎,真辺忠夫,他:外科感染症における Escherichia coliの分離頻度と薬剤感受性の変遷。Jpn. J. Antibiotics 49:456�464, 1996

12) 品川長夫,平田公一,傳野隆一,他:外科感染症における Pseudomonas aeruginosaの分離頻度と薬剤感受性の変遷。Jpn. J. Antibi-otics 49: 544�554, 1996

13) 品川長夫,由良二郎,真辺忠夫,他:外科感染症分離菌とその薬剤感受性― 1994年度分離菌を中心に―。 Jpn. J. Antibiotics 49:849�891, 1996

14) 品川長夫,小出 肇,平田公一,他:外科感染症分離菌とその薬剤感受性― 1995年度分離菌を中心に―。 Jpn. J. Antibiotics 50:143�177, 1997

15) 真下啓二,品川長夫,平田公一,他:外科感染症分離菌とその薬剤感受性― 1996年度分離菌を中心に―。 Jpn. J. Antibiotics 52:398�430, 1999

16) 品川長夫,真下啓二,山本俊信,他:外科感染症分離のBacteroides fragilis groupとその薬剤感受性。日本嫌気性菌感染症研究 28:

48�54, 199817) 品川長夫,真下啓二,山本俊信,他:外科感

染症分離の嫌気性菌とその薬剤感受性。日本嫌気性菌感染症研究29: 104�111, 1999

18) 真下啓二,品川長夫,山本俊信,他:外科領域感染症から分離された嫌気性菌の薬剤耐性菌の動向。日本嫌気性菌感染症研究 30: 36�43, 2000

19) 品川長夫,真下啓二,山本俊信,他:外科感染症から分離された嫌気性菌の動向。日本嫌気性菌感染症研究30: 141�147, 2000

20) 真下啓二,品川長夫,平田公一,他:外科感染症分離菌とその薬剤感受性― 1997年度分離菌を中心に―。 Jpn. J. Antibiotics 53:533�565, 2000

21) 真下啓二,品川長夫,平田公一,他:外科感染症分離菌とその薬剤感受性― 1998年度分離菌を中心に―。 Jpn. J. Antibiotics 54:497�531, 2001

22) 品川長夫,真下啓二,真辺忠夫,他:外科領域感染症分離の嫌気性菌とその薬剤感受性。日本嫌気性菌感染症研究32: 94�102, 2002

23) 真下啓二,品川長夫,平田公一,他:外科感染症分離菌とその薬剤感受性― 1999年度分離菌を中心に―。 Jpn. J. Antibiotics 55:697�729, 2002

24) 品川長夫,平田公一,向谷充宏,他:外科感染症分離菌とその薬剤感受性― 2000年度分離菌を中心に―。 Jpn. J. Antibiotics 55:730�763, 2002

25) 品川長夫,平田公一,桂巻 正,他:外科感染症分離菌とその薬剤感受性― 2001年度分離菌を中心に―。 Jpn. J. Antibiotics 56:105�137, 2003

26) 品川長夫,平田公一,桂巻 正,他:外科感染症分離菌とその薬剤感受性― 2002年度分離菌を中心に―。 Jpn. J. Antibiotics 57:33�69, 2004

27) 品川長夫,平田公一,桂巻 正,他:外科感染症分離菌とその薬剤感受性― 2003年度分離菌を中心に―。 Jpn. J. Antibiotics 58:123�158, 2005

28) 品川長夫,平田公一,桂巻 正,他:外科感染症分離菌とその薬剤感受性― 2004年度分離菌を中心に―。 Jpn. J. Antibiotics 59:72�116, 2006

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2166 ( 50 ) June 20113

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29) 品川長夫,平田公一,桂巻 正,他:外科感染症分離菌とその薬剤感受性― 2005年度分離菌を中心に―。 Jpn. J. Antibiotics 60:52�97, 2007

30) 品川長夫,平田公一,桂巻 正,他:外科感染症分離菌とその薬剤感受性― 2006年度分離菌を中心に―。 Jpn. J. Antibiotics 61:122�171, 2008

31) 品川長夫,長谷川正光,平田公一,他:外科感染症分離菌とその薬剤感受性― 2007年度分離菌を中心に―。Jpn. J. Antibiotics 62:277�338, 2009

32) 品川長夫,長谷川正光,平田公一,他:外科感染症分離菌とその薬剤感受性― 2008年度分離菌を中心に―。Jpn. J. Antibiotics 63:105�170, 2010

33) FRIDKIN, S. K.; J. HAGEMAN, L. K. MCDOUGAL,et al.: Epidemiological and microbiologicalcharacterization of infections caused byStaphylococcus aureus with reduced suscep-tibility to vancomycin, United States, 1997–2001. Clin. Infect. Dis. 36: 429�439, 2003

34) 松本哲朗,濱砂良一,石川清仁,他:尿路感染症主要原因菌の各種抗菌薬に対する感受性。日本化学療法学会雑誌 58: 466�482,2010

35) 小林芳夫,黒谷祐子,上遠野保裕: 2008年に分離された血液由来菌に対するmeropenem

の抗菌力。Jpn. J. Antibiotics 62: 492�501,2009

36) 品川長夫,由良二郎,竹山廣光,他:外科感染症分離のClostridium spp.とその薬剤感受性。Jpn. J. Antibiotics 60: 171�180, 2007

37) 品川長夫,由良二郎,竹山廣光,他:外科感染症分離の Bilophila wadsworthia。 Jpn. J.Antibiotics 59: 452�458, 2006

38) 吉田雅博,竜 崇正,渡辺一男,他:Clostridium perfringensによる肝ガス壊疽の1剖検例。日本消化器外科学会雑誌 25:2181�2185, 1992

39) 麓 祥一,野口 剛,明石雄一,他:虚血性回腸炎の腸壁内Clostridium perfringens感染による門脈ガス血症の 1例。日本消化器外科学会雑誌39: 243�246, 2006

40) 多田正晴,土井隆一郎,小川晃平,他:膵切除後に発症したClostridium perfringens肝膿瘍破裂の 1例。日本消化器外科学会雑誌 40:1910�1914, 2007

41) 三澤成毅,小栗豊子,中村文子,他:臨床材料からのメタロb -ラクタマーゼ産生グラム陰性桿菌の検出状況と薬剤感受性。日本化学療法学会雑誌55: 211�219, 2007

42) 春日恵理子,松本竹久,金井信一郎,他:カルバペネム系薬剤に感性を示す IMP-1型Met-allo-b -lactamase産生腸内細菌。感染症学雑誌84: 569�574, 2010

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2June 2011 167 ( 51 )3

Bacteria isolated from surgical infections and its susceptibilitiesto antimicrobial agents

—Special references to bacteria isolated between April 2009 and March 2010—

NAGAO SHINAGAWA

Tokyo Healthcare University and Postgraduate School

KOICHI HIRATA, TOMOHISA FURUHATA

and TOHRU MIZUKUCHI

First Department of Surgery, SapporoMedical University, School of Medicine

HIROYUKI OSANAI

Department of Surgery, SapporoGekakinen Hospital

YOSHIYUKI YANAI

Department of Surgery, MedicalCorporation Teishinkai

Shinsapporokeiaikai Hospital

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THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2168 ( 52 ) June 20113

FUMITAKE HATA

Department of Surgery, Sapporo Doto Hospital

KAZUAKI SASAKI, TETSUFUMI SOMEYA,KAZUNORI SASAKI and KEISUKE OONO

Department of Surgery, Otaru Ekisaikai Hospital

SHOJI TOKITA and MASASHI NAKAMURA

Department of Surgery,Noboribetsu Kosei-Nenkin Hospital

HITOSHI SHIBUYA

Department of Surgery, Muroran City General Hospital

ITARU HASEGAWA, MASAMI KIMURA,HIDEKI OSHIMA and HIDEKI MAEDA

Department of Surgery, Hokkaido Saiseikai Otaru Hospital

MITSUHIRO MUKAIYA

and CHIKASI KIHARA

Department of Surgery, Hokkaidou SocialService Association Hakodate Hospital

KOSHO WATABE

Department of Surgery, Akabira General Hospital

TSUYOSHI HOSHIKAWA andHITOSHI KIMURA

Department of Surgery, Takikawa Municipal Hospital

YOO JAE-HOON

Department of Surgery, National HospitalOrganization, Saitama National Hospital

NAOKI AIKAWA, KAZUHIKO SEKINE

and SHINYA ABE

Department of Emergency and CriticalCare Medicine, School of Medicine,

Keio University

HIROMITSU TAKEYAMA

and TAKEHIRO WAKASUGI

Nagoya City University Graduate Schoolof Medical Sciences, Department of

Gastroenterological Surgery

MASAAKI TANIGUCHI

Department of Surgery, Ookuma Hospital

ISAMU MIZUNO, TOMOYA SHAMOTO

and TAKUJI FUKUI

Department of Surgery, Nagoya MidoriMunicipal Hospital

KEIJI MASHITA

Department of Surgery, Bisai Hospital

MORITSUGU TANAKA

Department of Surgery, Kariya Toyota General Hospital

SYU ISHIKAWA

Department of Surgery, Kariya ToyotaGeneral Hospital, Takahama Branch

AKIRA MIZUNO

Department of Surgery, Inabe General Hospital

AKIHIKO IWAI and TAKAAKI SAITO

Department of Surgery, Komono Kosei Hospital

NORIAKI MOORI and NAOKI SUMITA

Department of Surgery, Chita Kosei Hospital

SHOJI KUBO and SHIGERU LEE

Department of Gastroenterological andHepato-Biliary-Pancreatic Surgery,

Osaka City University Graduate School of Medicine

TORU OOMURA

Department of Surgery, Fujiidera City Hospital

YASUHITO KOBAYASHI and TAKESHI TSUJI

Department of Surgery, Wakayama Rosai Hospital

HIROKI YAMAUE and SATORU OZAWA

Second Department of Surgery,Wakayama Medical School

YOSHIO TAKESUE

Department of Infection Control andPrevention, Hyogo College of Medicine

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THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 64—2June 2011 169 ( 53 )3

Bacteria isolated from surgical infections during the period from April 2009 to March 2010were investigated in a multicenter study in Japan, and the following results were obtained.

In this series, 671 strains including 16 strains of Candida spp. were isolated from 174 (79.1%)of 220 patients with surgical infections. Four hundred and eleven strains were isolated from primaryinfections, and 244 strains were isolated from surgical site infection. From primary infections,anaerobic Gram-negative bacteria were predominant, followed by aerobic Gram-negative bacteria,while from surgical site infection aerobic Gram-positive bacteria were predominant, followed byanaerobic Gram-negative bacteria. Among aerobic Gram-positive bacteria, the isolation rate of Enterococcus spp. was highest, followed by Streptococcus spp., and Staphylococcus spp. in thisorder, from primary infections, while Enterococcus spp. was highest, followed by Staphylococcusspp. from surgical site infection. Among aerobic Gram-negative bacteria, Escherichia coli was themost predominantly isolated from primary infections, followed by Klebsiella pneumoniae, Enterobacter cloacae and Pseudomonas aeruginosa, in this order, and from surgical site infection,E. coli was most predominantly isolated, followed by P. aeruginosa and E. cloacae. Among anaerobic Gram-positive bacteria, the isolation rate of Eggerthella lenta was the highest from primary infections, followed by Parvimonas micra, Streptococcus constellatus and Finegoldiamagna, and from surgical site infection, E. lenta was most predominantly isolated. Among anaerobic Gram-negative bacteria, the isolation rate of Bilophila wadsworthia was the highest fromprimary infections, followed by Bacteroides fragilis, Bacteroides ovatus and Bacteroides thetaiotaomicron, and from surgical site infection, B. fragilis was most predominantly isolated, followed by B. ovatus, B. wadsworthia and B. thetaiotaomicron, in this order. In this series, we noticed no vancomycin-resistant Gram-positive cocci, nor multidrug-resistant P. aeruginosa. Weshould carefully follow up B. wadsworthia which was resistant to various antibiotics, and also Bacteroides spp. which was resistant to many b -lactam antibiotics.

TOSHIYOSHI FUJIWARA

Dept. of Gastroenterological Surgery,Transplant and Surgical Oncology,

Okayama University Graduate School of Medicine,

Dentistry and Pharmaceutical Sciences

HIDEYUKI KIMURA

Department of Surgery, Okayama Saiseikai Hospital

HIROMI IWAGAKI

Department of Surgery, National Hospital Organization,

Fukuyama National Hospital

TAIJIRO SUEDA, EISO HIYAMA, YOSHIAKI MURAKAMI, HIROKI OHGE

and KENICHIRO UEMURA

Department of Surgery, Graduate School of Biomedical Sciences,

Hiroshima University

HIROAKI TSUMURA

Department of Surgery, Hiroshima City Funairi Hospital

TAKASHI YOKOYAMA

Aki City Hospital

HITOSHI TAKEUCHI and KOUJI TANAKAYA

Department of Surgery, National Hospital Organization,

Iwakuni National Hospital

YOICHI YASUNAMI and TAKAMITSU SASAKI

Department of Regenerative Medicine &Transplantation and Gastroenterological

Surgery, Fukuoka University, School of Medicine