土木学会四国支部技術研究発表会(2011) 2011/5/14

徳島大学・田村隆雄 1

2010年酷暑における緑のカーテンの効果に関する調査2010年酷暑における緑のカーテンの効果に関する調査

徳島大学 ○田村 隆雄(株)家具家 岩城 奈津子徳島大学 ○田村 隆雄(株)家具家 岩城 奈津子

省エネ推進では，『具体的な手法や数値で意識を喚起させる』ことが鍵で，一般家屋，オフィス，商店，工場等の各ケース毎に省エネ行動を多数計測し，「この方法で，これだけの省エネが可能である」という実例を示すことが効果的である．

本報では，これまで数年間の研究成果のあらましを簡単に紹介した後，記録的な猛暑となった２０１０年夏における「緑のカーテン」の効果について報告する．

「緑のカーテン」は有効な省エネ策とは考えられるが，使用する植物（例えば南方系のゴーヤー等）によっては，地域の生態系の混乱・改変，水資源への悪影響が考えられるので注意を要する．

1

これまでの成果これまでの成果

2008年 ゴーヤー・カーテンの効果と蒸散量温度上昇抑制効果において「ゴーヤー・カーテン」（遮光＋蒸散

による吸熱）は「よしず」（遮光のみ）よりも30％優れることを確認した．ゴーヤー・カーテンの蒸散量は1m2あたり，3リットル/day（2.4×1.8mの標準的なカーテンでは約13リットル）と推定された．

2009年 実地での効果事例調査徳島市入田コミセンの「緑のカーテン」は消費電力の約20％削

減に貢献していたようである．2009年8月に限定すれば直接費用（水道料金約1,400円）に対して大きな便益（電気料金約24,000円）が発生したと推測された．

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２０１０年の目的２０１０年の目的

2010年 実地での効果事例調査（その２）① 効果はどこまで期待できるか？② 省エネ効果が高い「緑のカーテン」の要件とは？

A東向

B

東向

C

東向

D南向

E南向

F南向

G

南向

H東向

I西向 3

調査方法調査期間，温度計測法など

調査方法調査期間，温度計測法など

1.5m

調査期間：2010年8月5日～9月9日

（36日間)

温度測定時間間隔：10分

壁面温度の測定日向・日陰それぞれ2カ所計測

外部温度

内部温度

4

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調査結果① カーテン内外の温度差徳島市北部浄化センター，鳴門高島郵便局

調査結果① カーテン内外の温度差徳島市北部浄化センター，鳴門高島郵便局

温度（℃）45

35

250 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22

2010年8月18日北部浄化センター(南向）

2010年8月18日鳴門高島郵便局（東向）

外部温度

内部温度

外部温度

内部温度

11:00 最大5.7℃（08:30～17:30 平均2.5℃）

09:20 最大4.5℃（08:30～17:30 平均2.8℃）

5

調査結果② 壁面温度への影響徳島市北部浄化センター カーテン内外温度差が壁面温度に及ぼす影響

調査結果② 壁面温度への影響徳島市北部浄化センター カーテン内外温度差が壁面温度に及ぼす影響

温度（℃）45

250 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24

2010年8月31日北部浄化センター

カーテン内部の温度

壁面温度(カーテン有)

注目！

① カーテンで覆われていない壁面の温度は外部温度よりも高くなる．（茶破線）

② カーテンで覆われた壁面の温度はカーテン内部の温度と同程度．（緑破線）

③ 両者の温度差は正午頃(12:20）には7.0℃，16:40には9.0℃にもなり，室内温度に対する影響も大きなものになっていると推測できる．

35

カーテン外部の温度

壁面温度(カーテン無)

6

ゴーヤーカーテン

北北

南南

東東 西西

北

南

東 西

100Vエアコン

200Vエアコン

局舎には2台のエアコンがある．100Vで動くエアコンは他の電気器具と同じメータに繋がっているので，使用電力を区別できないが，200Vで動くエアコンは単独で別系統のメータとなっている．

エアコンの使用条件が同じである場合，「緑のカーテン」が室内温度の上昇抑制に寄与していれば使用動力量は少なくて済むはずである．

・エアコンの運転期間，設定温度など条件は毎年同じ．

調査結果③ 省エネ効果鳴門高島郵便局 室内温度への影響 ヒアリングと記録から

調査結果③ 省エネ効果鳴門高島郵便局 室内温度への影響 ヒアリングと記録から

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調査結果③ 省エネ効果鳴門高島郵便局 室内温度への影響 ヒアリングと記録から

調査結果③ 省エネ効果鳴門高島郵便局 室内温度への影響 ヒアリングと記録から

平成19年（イメージ） 平成22年

8月平均気温28.6℃

8月平均気温29.4℃

使用量（kw)

電力 動力（空調）

平成19年（生育不良）

7～8月 1,230 318

8～9月 1,385 590

平成22年（生育良好）

7～8月 1,206 342

8～9月 1,343 389

平成19年のゴーヤーは生育不良で，局舎に強い日差しが差し込みカーテンとして機能しなかった．

平成22年はゴーヤーの生育は良好であった．平成19年よりも暑い夏であったにもかかわらず一般電力の使用量は変わらず，動力使用量は34％減少した．

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調査結果④ 効果的なカーテンとは“奥行／高さ”と“カーテン内外の温度差”

調査結果④ 効果的なカーテンとは“奥行／高さ”と“カーテン内外の温度差”

日中

の平

均温

度差

（℃

）

4.0

3.0

2.0

１.0

０.0

0.45

0.35

0.25

0.15

0.05

奥行

／高

さ

E F A D G

カーテンの傾斜が小さく，建物との間の空間が大きいほど「緑のカーテン」の効果は高いと推測できる．

窓外にある程度の空間が必要．

奥行奥行

高さ高さ

図４ 奥行/高さと内外気温差9

まとめ

「緑のカーテン」の効果と要点まとめ

「緑のカーテン」の効果と要点

① 「緑のカーテン」は，外部と内部で2.5℃以上の温度差（日中平均）を生みだし，壁面温度の上昇を抑制し，効率的な冷房に寄与していると推測された．

② 「緑のカーテン」を上手に利用することで，夏季月間使用電力を約30%節減できる可能性がある．ただし，その効果は気候や天候等に影響されるので非常に不安定だと思われる．日中の利用や空調が前提となっているオフィスや商店等での活用が良いように思われる．

③ 「緑のカーテン」は，“奥行／高さ”が大きいほど効果が高いと考えられる．実際の使用では，建物壁面との空間量の確保（支柱等の利用）が肝要である．

10

A

11

東向き

12

B

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徳島大学・田村隆雄 4

C

13

南東向き

D

14

南向き

15

E F

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南向き

小型容器（３L)＋ヤシ殻＋養液栽培小型容器（３L)＋ヤシ殻＋養液栽培 きゅうり用支柱セットの利用

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徳島大学・田村隆雄 5

G

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南向き

H

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南東向き

19

I

西向き