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20130903 S-8-1(9)発表補足資料 文責:森杉雅史(名城大学) pg. 1 第 6 章 温暖化に誘発される長期的水害被害の評価方法 本章では、温暖化の動学的特性を加味した基盤マクロ成長論の応用による理論を展開し、被害 は発生ベースと帰着ベースで異なることを示す。また、前章で得られた被害関数を基に今後の社 会資本の長期的被害推計と最適適応策を探索する。 6-1 静学的一般均衡モデルにおける社会資本整備事業評価 便益計測の伝統的な手法はマーシャル(A.Marshall)の消費者余剰を用いるものである。この 消費者余剰とは、ある消費財の相当量に対し、消費者がその財の消費 0 で済ませる位ならば支払 っても良いと考える最高の支払い許容額(需要曲線下の面積積分値)から、実際の支払い額(そ の財の市場価格×相当量)を差引いた値に当たる。本来多数存在する消費財において、予算や所 得の制約の下、消費者は自らの満足度=効用を最大化するべく購入計画を立てる。当該市場財の 価格が上がれば一般に購入量は減少するため、需要曲線は右下がりとなる。市場を通して消費者 が財の購入をし、また消費をすることによって得られた満足度=効用を金銭換算したものが消費 者余剰と考える。 数量 Marshall消費者余剰(consumer’s surplus)の概念 △x * * 0 D 需要曲線(demand curve) 限界的支払い意思額 marginal willingness to pay需要曲線下積分値:支払い意思総額(WTP,total willingness to pay支払い総額 (payoff) 消費者余剰(CS;=WTP-payoff) 一方で、企業側の財の生産・販売活動においても余剰概念が存在する。完全競争の仮定の下、 価格支配力を持たない企業の利益最大化行動の結果、価格と生産限界費用(限界 1 単位の生産量 追加に伴う費用)が均等化する時、最適な生産量が定まる。この論理の下では、供給曲線とは生 産限界費用そのものであり、その下の面積積分値は費用(ただし、生産量の増減に伴うものだけ なので、固定費用などは含まれない)である。消費者にとっての支出は企業側からは売上となる ので、この売上から上記の費用を差引いたものは、当面の利益ということになる。これを生産者 余剰と呼ぶ。

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20130903 S-8-1(9)発表補足資料 文責:森杉雅史(名城大学)

pg. 1

第 6 章 温暖化に誘発される長期的水害被害の評価方法

本章では、温暖化の動学的特性を加味した基盤マクロ成長論の応用による理論を展開し、被害

は発生ベースと帰着ベースで異なることを示す。また、前章で得られた被害関数を基に今後の社

会資本の長期的被害推計と 適適応策を探索する。

6-1 静学的一般均衡モデルにおける社会資本整備事業評価 便益計測の伝統的な手法はマーシャル(A.Marshall)の消費者余剰を用いるものである。この

消費者余剰とは、ある消費財の相当量に対し、消費者がその財の消費 0 で済ませる位ならば支払

っても良いと考える 高の支払い許容額(需要曲線下の面積積分値)から、実際の支払い額(そ

の財の市場価格×相当量)を差引いた値に当たる。本来多数存在する消費財において、予算や所

得の制約の下、消費者は自らの満足度=効用を 大化するべく購入計画を立てる。当該市場財の

価格が上がれば一般に購入量は減少するため、需要曲線は右下がりとなる。市場を通して消費者

が財の購入をし、また消費をすることによって得られた満足度=効用を金銭換算したものが消費

者余剰と考える。

数量

価格

Marshall消費者余剰(consumer’s surplus)の概念

△xx*

p*

0

D 需要曲線(demand curve)

限界的支払い意思額(marginal willingness to pay)

需要曲線下積分値:支払い意思総額(WTP,total willingness to pay)

支払い総額(payoff)

消費者余剰(CS;=WTP-payoff)

一方で、企業側の財の生産・販売活動においても余剰概念が存在する。完全競争の仮定の下、

価格支配力を持たない企業の利益 大化行動の結果、価格と生産限界費用(限界 1 単位の生産量

追加に伴う費用)が均等化する時、 適な生産量が定まる。この論理の下では、供給曲線とは生

産限界費用そのものであり、その下の面積積分値は費用(ただし、生産量の増減に伴うものだけ

なので、固定費用などは含まれない)である。消費者にとっての支出は企業側からは売上となる

ので、この売上から上記の費用を差引いたものは、当面の利益ということになる。これを生産者

余剰と呼ぶ。

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pg. 2

数量

価格

△xx*

p*

0

供給曲線下積分値:総費用(total cost)

総売上額

生産者余剰(PS)S 供給曲線(supply curve)

限界費用(marginal cost)

生産者余剰(producer’s surplus)の概念

xxCxMC

)()(

消費者余剰と生産者余剰を合わせたものは社会的総余剰と呼ばれ、この社会の厚生水準を決定

する指標とされる。ただし、完全競争の仮定の下では、参入・退出の自由、すなわち超過利潤は

発生しないこととなる。また、生産者余剰は結局個人・家計の所得として還元されるので、 終

的な厚生変化分としてはカウントしない。故に生産者余剰は一般に便宜上生産限界費用を一定と

し、省略することも多い。 その論脈の下で、一般的な社会資本の効果計測・評価の考え方を述べる。道路などの社会資本

整備事業などが典型例であるが、バイパスや車線拡幅工事などの事業の効果は、その交通市場に

おけるサービスの生産費用を低下させる、すなわち、供給曲線を下方シフトさせる。従って、均

衡価格の低下に伴い、消費者余剰の増加が見込まれる。これが道路整備による便益とされる。

便益

数量

価格

P

0

D

この財の供給費用を下げるような政策・事業

S

E1P1

E

x1

S1

A

この当該市場(ここでは交通サービス市場)の需要曲線を一度固定しておいて、上記のような

新しい均衡点に至るまで消費者余剰の増加をとったものが、この道路整備事業における発生ベー

スの便益(あるいは直接効果)と呼ばれる。この手法については代表的に次の 2 点が疑問とさ

れる。 ①消費者余剰は価格経路に依存するため、多数の財市場が存在する一般市場均衡の考え方に沿わ

ない ②消費者や企業は、当該市場の財のみならず、他の財の価格も織り込んでそれぞれの需要量や供

給量を定める。すなわち、部分市場のみ注目するやり方では波及効果(あるいは間接効果)が算

定できない。

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pg. 3

この二つの課題に対しては、森杉壽芳(1997)に従うと、従来から次のような応答がなされてい

る。 ①⇒いわゆる価格経路の独立性・積分可能性の条件については、補償需要関数の導出と、補償変

分(CV:価格の変化によって生じる効用の変化分を得るために、消費者が事後価格体系の下で

大限支払っても良いとする所得の補償額)及び等価変分(EV:価格の変化によって生じる効

用の変化分を、消費者にあきらめさせるために、事前価格体系の下で調整されなければならない

所得の補償額)の考え方を持って、マーシャル消費者余剰の差分に置き換えて、評価指標とする

ことが提案されている。いずれについても積分可能性問題はクリアされる。また、補償原理と呼

ばれるパレート基準との整合性については、EV の方に更に優位性がうかがわれる。 CV・EV と消費者余剰差分との数値差は、下記にあるような普通需要関数に価格で微分を施し

たもの(Slutzky 方程式と呼ばれる)の右辺第二項(所得効果と呼ばれる)の存在によって現わ

れる。価格の低下は実質所得の変化ももたらし、それがまた需要へ影響する。CV・EV は構造上

この所得効果を略する形で算出される。

i

conxtp

i

conxty

i p

y

y

yx

p

yx

p

y

.. ),(),(),( pppx

(6.1)

CV と EV のおよそ中間に消費者余剰の差分は位置づけられるが、それらの差は実証的な先行

研究からは大きくとも約 1~2%ほどの差分でしかないことが報告されている。よって一般に消

費者余剰による差分は十分な評価指標でありうる。 ②⇒完全競争均衡の下では、あらゆる波及効果(間接効果)はキャンセルアウトすることになる。

あらゆる財の需要関数及び供給関数は当該市場以外の他の財の価格も織り込まれている。その影

響を受け、需要曲線や供給曲線のシフトは任意である。下図にある青線は一般均衡需要曲線と呼

ばれるが、その実態は均衡点の推移を辿ったものである。今、波及効果によって他の財の需要曲

線及び供給曲線が下図のようにシフトするとした場合、定義により、消費者余剰の増加分は□

PEE1P1 である。また、生産者余剰の減少分も同じく□PEE1P1 となる。これは一般市場の価格

体系が変化し、その他の財価格が変化したことで当該市場へ波及効果した分についても、同様な

議論が適用される。よって、総じて見れば、需要曲線を固定し消費者余剰の差分で計った直接効

果のみ総便益として算出すれば事足りることになる。

このような論脈により、発生ベース総便益と帰着ベース総便益は一致する、と説明される。

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pg. 4

6-2 動学的な展開~新古典派成長モデル~

6-1 で展開された議論は 1 単位期間すなわち静学的な視点の下での帰結であることに注意され

たい。対して本論で考える事項は、温暖化の進展に伴う長期の水害影響といった、動学的な過程

である。 このような事象を経済学的に吟味するには、同様なタイムスパンと広域的視野を持つ新古典派

成長モデルの下で、評価手法を理論的に吟味することが適切である。新古典派成長モデルは完全

競争下を同じく仮定し、経済の動学的な構造を記述するに もシンプルで規範的である。そのシ

ンプルさにも関わらず、モデルが示す挙動は第二次大戦以降の世界経済を概観するに十分な説明

力を持つ。特に本研究で対象となる日本という地域では、戦後の経済復興から近年に至るまで、

同モデルが示す挙動と整合的であったと考えられる。先ず、準動学的構造を持つ Solow(1956)のモデルから説明する。

6-2-1 Solow モデル 集計化されたマクロ一部門一国閉鎖経済を想定し、代表的な家計と企業の一主体ずつが存在す

るものとする。 企業は生産物(Y)を資本(K)と労働力(L)を生産要素として生産するものとする。生産

物は家計によって消費されるか、または貯蓄されて、資本ストックの蓄積に向けられる。 生産技術(F(K,L))は連続微分可能で関数で与えられ、K、L について増加関数、一次同次性

をもつとする。また、各生産要素は生産に本質的である。 今、L の単位あたりの生産量の産出関数を、L の単位あたりの資本装備(k)を変数として、

f(k)と定義する(一次同次性から )()0,/(/ kfLKFLY )。前述の仮定から、この生産関数は

次の性質を持つ。 0)0( f 0)(' kf 0)(" kf (6.2)

すなわち、広域的に凹関数的性質を示す。また、ここで労働、資本の限界生産性の境界条件を次

のように表す。

)('lim)('lim00

kfkfkk

(6.3)

いわゆる稲田(1963)条件とは、(6.3)式のが等号成立する場合である。 さて、ここでは連続時間モデルを取り扱う。前述の二つの代表的主体に合理的かつ完全予見を

前提とした行動を仮定する。またここでは当面貯蓄率(s)を一定と固定し、貯蓄は全額企業へ

の資本形成となる投資に向けられるものとする。 当面、資本の物理的・社会的価値の減耗分となる、減価償却もここでは省略する。人口(L)

は毎時 n の率の増加するものとして、全ての労働者に資本装備が等しくなるように更新投資が行

われるとすると、労働者一人当たりの粗投資は以下の式によって表される。

nkksfk )( (6.4)

この経済の位相図を描いたものが図 6-2-1 である。

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pg. 5

Solowモデル位相図

0k

nk

k*

sf(k)

図 6-2-1

曲線は労働者一人当たりの毎時総投資額 sf(k)を示す。直線は労働人口増加のため、労働者一

人当たりに資本の補填をする必要があり、その投資量が示される。 容易に判別できるように両者の差は毎時の労働者一人当たりの粗投資量になっている。両者の

交点、粗投資が 0 となる所で、長期的に 1 人当たりの資本が一定となる状態、定常状態均衡(k )

が達成される。この均衡上では k は一定となるため、資本量 K は人口成長率 n と同率で成長す

ることになる。また、(6.4)式より、労働者 1 人当たり消費量 (1-s)f(k)も一定であるから、総消費

量も人口成長率 n と同率で成長する。 この均衡が、原点を除けば、大域的に安定となることは図中矢印で示されている通りである。

均衡付近での局所的安定性を示すためには、(6.4)式を均衡近傍で 1 次線形近似して nkksfkg )()( として

))(('))((')()( kkkgkkkgkgkg (6.5)

すなわち、 0)(' kg であれば局所的安定性が見込めることになる。

よって、このような均衡の安定性は、資本限界生産性の逓減が必要条件である。また、稲田条

件が満たされれば、必ずこのような均衡が一意的に存在することが伺える。 以上が Solow(1956)のモデルであるが、このモデルでは労働者一人当たりの所得、資本量の長

期的な成長要因は説明されていない。図 1 の両線が交わる点では一人当たりの資本量や生産量、

並びに消費量 (1-s)f(k) が定常状態に到達した後は、一切成長が見込めないことになる。 ここで、Kaldor(1958)の示した 6 つの「類型化された事実」を列挙する。世界各国の経済は長

期的に(20 世紀前半)以下の趨勢的な傾向が存在したことになる。 (1) GDP、及び一人当たりの GDP はほぼ一定の率で成長した (2) 一人当たりの資本ストックはほぼ一定の率で成長した (3) 資本利潤率は高い値でほぼ一定水準に保たれていた (4) 資本係数(Y/K)はほぼ一定であった (5) 資本利潤の高い国では投資シェアも高い (6) GDP の上昇率、一人当たりの GDP の成長率は各国の社会的、制度的条件を反映して異

なったものとなっている ここで注目したいのはこれらの内(1)~(4)である。一般に(5)の問題は Ramsey(1928)

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pg. 6

が示したように個人主体の動学的消費 適配分問題を考慮して貯蓄率を内生化し、一般均衡モデ

ルに上述のモデルを置き換えれば整合する。(6)の問題はむしろ経済変数に成長の源泉を求め

る内生的成長理論の問題意識であり、本論ではこの議論は捨象する。(3)(4)についてはこの

原典的な Solow(1956)でも説明することができる。しかし、(1)(2)についてはそうではない。 この問題に整合的なモデルは、宇沢(1965)が示すように、Harrod(1937)中立的な技術進歩を導

入した形で展開することができる。以下、その旨でモデルを修正する。 Harrod(1937)が示した中立性とは、技術進歩が伴っても、利子率が一定の場合には資本係数が

時間を通じて一定である状態を示す。中立性には他に Solow と Hicks がそれぞれ示した 2 種類の

定義が存在し、後に Robinson(1937-38)によってそれぞれの意義は明らかにされ整理されている

(宇沢(1990)も参照されたい)。 今、技術進歩による生産関数のシフトパラメ-タを A と置くと、Harrod 中立的な技術進歩と

は、生産関数内で ))()(),(()( tLtAtKFtY (6.6)

となる場合と同値である。すなわち、実質的な労働量が増加するような技術進歩である。この技

術進歩は全く外生的に労働の生産性を高める。 以降、A(t)L(t)を効率的労働量と呼ぶことにする。先のモデルと他の設定は全く同様として、

生産関数は資本と効率的労働量に対して一次同次、また、全ての変数をこの単位で測ると

))(/()()(ˆ tALtKtk (6.7)

)ˆ()1,ˆ())(/(ˆ kfkFtALYy (6.8)

ここで A(t)は毎時 x の率で上昇するものとしよう。効率的労働量1単位あたりの資本( k )の蓄

積方程式は次のようになる。

knxksfk ˆ)()ˆ(ˆ (6.9)

この経済の位相図は図 6-2-2 で与えられる。

Harrod中立型技術進歩を織り込んだSolowモデル位相図

0

)ˆ(ksf

k

kn ˆ

*k

図 6-2-2

すなわち、その動学的構造は先のモデルと全く同様である。経済は長期的には安定的に定常状

態均衡に行き着く。

定常状態においては k が一定となるため、資本量 K は人口成長率と外生的技術進歩率の和、

n+x で毎期成長することになる。また先のモデルとは異なり、労働人口 1 人当たりの資本量 k、

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pg. 7

並びに、労働人口 1 人当たりの消費量(1-s)f(k)は外生的技術進歩率 x で増加することになる。よ

って、「類型化された事実」の(1)(2)が満たされることになる。 6-2-2 Ramsey モデル

ここまでの議論では、Harrod 外生的技術進歩を織り込んだ Solow モデルは、Kaldor(1958)の示

した 6 つの「類型化された事実」の内、(1)~(4)まで首尾よく説明できることを物語って

いた。(6)については本論の分を超えるが、(5)についてはここで紹介するモデルによって整

合性を保つことができる。すなわち、動学的新古典派成長モデルの もオーソドックスな型であ

る Ramsey(1928)、Cass(1965)、Koopmans(1965)モデルを取り上げる。 基本的なモデル構造は Solow モデル同様、集計化されたマクロ一部門一国閉鎖経済を想定し、

代表的な家計と企業の一主体ずつが存在するものとする。異なる点は、家計主体が完全予見の仮

定の下、合理的な貯蓄―消費計画を長期に渡って行っており、その貯蓄率も毎時変更することが

可能である、と考えることである。また、ここからは資本の償却率の存在もモデル内に取り込む

ものとする。 便宜上、1 年間を単位期間と考える。現在の時点を 0 時と考え、人口は時間 t において

nteLL 0 またここでは Harrod 中立的な技術進歩を加味した実質的な労働量を効率的労働量と呼び、次

のように定義する。 xteLL ˆ

資本においても、この効率的労働量当たりに換算する。

L

Kk xt

xtke

eL

K

L

Kk

ˆˆ

xtekk ˆ (6.10)

この定義の下で、企業は下記の利潤を毎時 大化するべく行動するものとする。

wLKrLKF )()ˆ,( ]ˆ)()ˆ([ˆ xtwekrkfL ⇒max (6.11) 企業は銀行を通じて資本を家計から借り入れ、その対価として r の利子率分を支払う。その際、

1 年間の基本単位期間において δの率で示される減価償却を伴うが、これは企業が負担するもの

と考える。また、労働として雇用した分には物理的労働量 1 単位当たりで w の率の賃金が支払

われる。この時利潤 大化行動による 1 階条件は

0K

⇔ rkf )ˆ( rkf )ˆ( //―(A) (6.12)

次に家計の選好と行動を定式化する。資本の元となる貯蓄と労働力、すなわち、あらゆる生産

要素は全て家計が保有するものとする。家計はこれら生産要素を企業に貸すことによって得られ

る報酬を所得源泉とし、企業の生産した消費財(ニューメレール:価値基準財で価格は 1)を購

入し、消費する。それ以外は効用を得ることはない、と考える。消費目的以外に余剰(不足)と

なった所得残額は全て貯蓄の増加(取り崩し)に転嫁される。 効用関数は CRRA(Constant Arrow&Pratt’s Relative Risk Aversion)、CIES(Constant Inter-temporal

Elasticity of Substitution)の形を採用する。⇒付録参照 家計の時間を通じた 適化行動を定式化すると、

0)( dteecuU tnt

nacrawats .

1

1)(

)1(ccu

(6.13)

ここで、ρ:効用割引率、θ:異時点間消費の代替弾力性の逆数パラメータ、RRA

現在価値ハミルトニアン並びに必要条件は

canrwecuH tn )()( )(

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pg. 8

0

c

H ⇔ tnecu )()(

a

H ⇒ )( nr )( nr

(6.14)

仮定した効用関数上で再展開すると、 tnecu )(

tntn ecuncecu )()()(

nrnccu

cu

)(

)(

rc

cc

cu

cu

)(

)(

)(1

rc

c //―(B) (6.15)

また、横断条件は以下のようになる。

0)(exp)(lim0

t

tdvnvrta

(6.16)

Appendix:CRRA、CIES の数学的補遺

)(

)(

cu

cuc

⇒ Arrow & Pratt の相対的危険回避指標(relative risk aversion)

また、異時点間の代替弾力性は Barro and Sala-i-Martin(1995)によると以下のように定義される。

1

2121

2121

)()(

)()()()(

ccccd

cucucucudb

(6.17)

任意の連続する時間単位 1 と 2 があり、1 の方が 2 より早いとしよう。各時間帯においてなされ

る消費が c1 と c2 である。その大きさは 1 の時にどれだけ消費し、貯蓄を行うか、に依存する。

その比率これを元に以下議論する。先ず、任意の 2 時点における限界効用比を全微分する。

222

211

2

1

2

1

)(

)()(

)(

)(

)(

)(dc

cu

cucudc

cu

cu

cu

cud

(6.18)

これを両辺 )()( 21 cucu で割ると、右辺は 22

21

1

1

)(

)(

)(

)(dc

cu

cudc

cu

cu

-①

一方、 222

11

22

1 1dc

c

cdc

cc

cd

であるから、これを両辺

2

1

c

cで割ると、右辺は

2

2

1

1

c

dc

c

dc -②

さらに 01 dc ccc 21 dcdc 2 とおく。この時①は dccu

cu

)(

)(

、②はc

dc

-①÷②は )(

)(

cu

ccu

の形となり、これは RRA となる。

本論のように

1

1)(

1ccu とする場合、

cccu1

1)( 1)( CCu であるか

ら、

C

CRRA となる。

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pg. 9

なお、上の b 指標、異時点間の代替弾力性とは、現在-将来の消費財価格比率の変化、

)(

)(

2

1

Cu

Cu 1%に対して、現在-将来消費量が何%変化するか、という意味合いになるから、そ

れは1 が該当する。

Barro and Sala-i-Martin(1995)に倣い、全ての変量を効率的労働量 1 単位当たりに変換する。先

ず、個人の貯蓄は ka であるので、 xtxt ekxekk ˆˆ

(6.19)

また、完全競争の仮定の下で、

0ˆ)()ˆ(ˆ xtwekrkfL xtwekkfkf ˆ)ˆ()ˆ( xtekfkkfw )ˆ(ˆ)ˆ( (6.20)

これらより、 nacrawa

xtxtxtxtxt eknchfekkfkkfeekxek ˆ)ˆ(ˆ)ˆ(ˆ)ˆ(ˆˆ (6.21)

ここで、 xtcec ˆ とおく。上式は、

kxnckfk ˆ)()ˆ(ˆ //―(C)<基本式1> (6.22)

またxtecc ˆ より、

xtxt ecxecc ˆˆˆ 、(A)と(B)から

)(1

ˆ

ˆxr

c

c

= xkf

)ˆ(1

//―(D)<基本式2> (6.23)

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pg. 10

6-3 定常成長均衡上における、減価償却率パラメータ変化による比較静学

本論では温暖化の進行に従って水害の発生確率、あるいは被害額自体が長期的に増加するもの

と考えている。その影響は水害統計資料でも確認できるように、大きくは民間の資産に与えるそ

れであった。 ここまで展開してきた Ramsey モデルでは、家計という経済の も重要な基本単位は、完全予

見の仮定の下、時間を通じて消費―貯蓄計画を立てるものと考えていた。本節では、H.Morisugi and M.Mrosisugi(2012)において示されているように、この Ramsey モデルを基盤とし、水害被害

という負の便益、及び、適応策の典型である防災関連型社会資本整備事業の帰着便益の算定法を

紹介する。 今、年間の平均水害被害額による資本の損傷は減価償却率に織り込み済みと考え、これが温暖

化の影響によって 0 から 1 へと( 0 < 1 )変化するものとする。また、t=0 時を事前、t=1 時

を事後と呼ぶことにする。 事前と事後比較において、経済の定常成長均衡がシフトすることになるが、その差分における

帰着被害(便益)をここでは計算する。

0ˆ k

0ˆ c ⇒ 定常成長均衡と定義する。これを基本式 1 と 2 に代入すると、

(C)から *** ˆˆ)()ˆ( ckxnkf ―(E)<基本式3> (6.24)

(D)から xrkf )ˆ( * ―(F)<基本式4> (6.25)

(F)から、定常成長均衡上では、利子率は事前事後において δが変化しても、定数として置

かれているパラメータらによって決定づけられるので、いずれにしても同じ値になることが分か

る。また、この条件を(B)に代入することでより、労働人口一人当たりの消費の成長率は常に

x となる。さらに労働人口一人当たりの所得や資本量の成長率も全て同様に x である。この議論

は 6-2-1 における、Harrod 外生的技術進歩を織り込んだ Solow モデルにおける理論的帰結と同等

である。 ここからは、経済は何らかのショックを伴ったとしても、瞬時に定常成長均衡上に行き着くこ

とを想定する。これは、以降で展開される比較静学としての明快な理論的帰結が、移行経路上で

は一般に得られない、という理由による。

(F)を δ及び *k について全微分すると、

dkdkf ** ˆ)ˆ( 0)ˆ(

1ˆ*

*

kfd

kd

(稲田条件から)//―(G) (6.26)

また(E)に同様な処理を行うと、

**** ˆˆˆ)()ˆ( cddkkdxnkf -(H) (6.27)

⇔ *** ˆˆˆ)1( cddkkdnx

⇔ *

*

)ˆ(

)1(ˆk

kf

nx

d

cd

//―(I) (6.28)

この(I)が、本章及び本研究における主要な理論考察の結果である。

定常成長均衡上にあるという条件 0ˆ k

の下では、(C)は(E)に書き換えられ、変数*c の大

きさは変数*k によって左右される。下図 6-3-1 から、 )ˆ(kf (効率的労働単位当たりの生産量)

が kxn ˆ)( (効率的労働単位当たりの、効率的労働量増加及び減価償却に際して補填しなけ

ればならない投資額)を凌駕している場合には 0ˆ c である。その逆も然りである。

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図 6-3-1

下図 6-3-2 において、 0ˆ k

における c と k の関係(すなわち(E))を描いたのものが、曲線

部分となる。また、 0ˆ c においては、(F)より k がパラメータのみで定まるので、垂直の点線

として表す。よって、図中 E0は事前の定常成長均衡、E1は事後のそれである。

この図中において、(G)や(I)で得られたような比較静学結果を見ることができる。 0 ⇒ 1へと推移した時、(E)の関係である同曲線は左下方へとシフトする。また、(F)の関係、垂直

点線においては、資本の限界生産性低減の命題により、 0 ⇒ 1 のシフトと共に、左方へシフト、

すなわち、より小さい*k の水準が選ばれる。よって、定常成長均衡点は 0E ⇒ 1E とシフトし、事

後の*c と *k はいずれも事前より小さくなる。

図 6-3-2 このことを証明するために、もう一度(I)に立ち返ってみる。(I)が負となりえるか否かは、

第一項の分子 nx )1( の符号に依存する。ところで、個人の消費計画が十分合理的であ

るか否かには、先に示した横断性条件が成立する必要がある。すなわち、

0)(exp)(lim0

t

tdvnvrta

⇔ 0)ˆ(expˆlim0

t

tdvnxkfk

(6.29)

k は正の一定水準を維持するので、少なくとも 0)ˆ( * nxkf である必要がある。一

0 k

c

Tk1Tk0

ˆ*1k *

0k

0ˆ c 0ˆ c

0E

1E

0ˆ k

0ˆ k

*1k *

0k k 0

)ˆ(kf

kxn ˆ)( 0 kxn ˆ)( 1

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方で(F)式を nxkf )ˆ( *に代入すると nx )1( となる。すなわち、

0)1( nx であるから、 0ˆ*

dcd

は確定命題となる。因みに nxkf )ˆ( *は毎時効

率的労働当たりの資本量の正味の収益率である。 またここで、(H) **** ˆˆˆ)()ˆ( cddkkdxnkf の解釈を試みる。

第一項の )()( * xnkf は被害で失われた資本が産み出すはずであった毎年のリターン

であり、これに定常成長均衡がシフトすることによって得られる効率的労働単位当たりの資本量

の変化分が乗ぜられる。家計の動学的な消費―貯蓄計画の変更に結果、この*k は減少するので、

所得の実質的な目減りをもたらし、効率的労働単位当たりの定常成長均衡上の消費量も結局は減

少する。 第二項は、δが高まることで補填しなければならなくなった投資分の増加分である。短期的に

見れば、災害復旧あるいは復興投資分に当たる。あるいは、水害統計にあるような、発生ベース

の被害(負の便益)と言ってよい。この投資の出費増加によって毎時の可処分所得が目減りし、

消費も減少する。ただし、この時復活すべき水準は新しい定常成長均衡上の値になるので、厳密

には現状復旧の為の投資ではない。

以上の二つの効果によって、右辺 *cd は負となる。また、この右辺 *cd こそ、我々が帰着ベー

スの被害(負の便益)と呼ぶものである。 さらに(I)を変形すると、下記のようになる。

dk

kkf

nxcd *

**

* ˆ1ˆ)ˆ(

)1(ˆ

//―(I’) (6.30)

ここで[]内を実数値で換算したものを、ここでは乗数(被害拡大係数)と称する。左辺は

総じての帰着ベースの被害であり、これは発生ベースの被害にこの乗数を乗じたものに他ならな

い。仮定より f’’<0、また、横断性条件における先の議論から、この乗数は 1 以上であることが

保証される。この値の導出は次節以降で試みる。 ここで静学と動学の違いを再考すると、家計が将来に渡っての貯蓄と消費を計画しているか否

かの違いに過ぎない。この Ramsey モデルの範疇で静学のケースを想定するならば、家計はある

任意の一時点の経済のみ考慮することになるので、資本量や貯蓄の変化はないもの、すなわち

0ˆ* kd と考えることができる。あるいは、家計が非常に近視眼的な主体であり、当面の単一期

間の消費量しか考えず( 0 )、この期間においては人口成長や技術進歩は起こらない

( 0,0 xn )とすることでも同様な理論的帰結が得られる。いずれにしろ、(H)式において

次の関係が成立することになる。 ** ˆˆ cddk // (6.31)

すなわち、静学では左辺の発生ベースの被害(負の便益)と右辺の帰着ベースの被害(負の便

益)は一致し、6-1 で得られたような静学時の命題が成立する。

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6-4 動学的洪水被害の帰着ベース評価シミュレーション、及び乗数の導出

日本一国マクロ経済が 2012 年現在(事前)、定常成長均衡上にあるものと考える。また、100年後(事後)には地球温暖化の進行のため、Fukubayashi & Oki(2012)では内水氾濫災害において

年当たりの発生ベース被害にして、現在の 2.6 倍に達するものと予想されている。仮に外水氾濫

などを総じて含めてこの倍率になるものとすると、現在の年当たり水害被害額は 5000 億円程と

見積もられており(特に 2004 年福島・新潟豪雨の影響が大きく、この年の被害額は 2 兆円近く

となる)、単純にその差分は 8000 億円に及ぶ。 パラメータ、並びに諸変量の現在値を以下のように設定する。

0K =1800 兆円 0Y =500 兆円

0L =6000 万人(就業人口、以降家計も就業人口 1 人当たりで換算)

0n =0 0x =0.01 0 =0.01 0 =2

0 =0.05 ⇒総じて 5%、年当たり 90 兆円の減価償却及び水災害による資産ダメージ

水災害による減価償却を占める部分は 5000 億/90 兆円=0.0056、すなわち、0.56%は水災害に

よるものと考えることができる。この 1.6 倍に相当する部分、すなわち、0.896%分が 100 年後に

は拡大する。 計算の簡略化のため、マクロ生産関数を Cobb-Douglas 型で仮定する。この関数形を用いてパ

ラメータ推計を図った先行実証研究は多数あるが、それらを概観すると、資本への係数は約 0.3程で与えられることが多い。そこで、この値を踏襲することとする。

gt

gxtt KLeBY 1

0 )( g=0.3

また、t=0 時のデータを元に B を推計すると、47608.26751 と算出される。この生産関数を用

いると、資本による二階微分は f’’=-1.94444×10-9。ここで(I)を

dkdkkkf

nxcd t

**

**

* ˆ)1(ˆ1ˆ)ˆ(

)1(ˆ

(6.32)

と置くと、 t =0.34286 と算定される。よって、下記のように計算結果を得る。

乗数=1.34286 発生ベースでの水害被害増分=8000 億円 帰着ベースでの水害被害増分=1兆 743 億円

この t は、各パラメータの大きさに依存する。元より、これらパラメータの高精度な推定値

を得ることは目下難しく、ここでは先験的に採用されやすい値を仮に設けているに過ぎない。よ

って、これらの値が今後の被害や社会資本整備事業の評価時に変更されることは当然ながら予測

される。そのため、感度分析を行っておくことは重要であろう。

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