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1
ICTツールを活用した認知症予防プログラムの調査研究(報告)
※ICT(Information and Communication Technology):「情報通信技術」
平成20年度 厚生労働省老人保健健康増進等事業
研究代表者:神戸大学大学院保健学研究科教授 種村 留美
2
日本の高齢社会
総人口
75歳以上の人口割合
後期高齢者
前期高齢者
3
世界の高齢化率
日本
4
日本における認知症の増加
5
独居高齢者の増加率
Woman
Man
We have a large number of elderly people living alone
6
• 健康の維持・改善に努める
• 特に、認知症にならないよう、生活習慣を考える
将来の日本を見据えて、いま行えることは・・
7
認知症の概念
• 認知症は「一度発達した知的機能が、脳の器質的障害によって広汎に継続的に低下した状態」のことである(博野、2007)。
• 認知症の発現はアミロイド蓄積といった病理学的変化のみならず、廃用性委縮といった日常生活活動も寄与している(博野、2007) 。
臨床的に正常
軽度認知障害
認知症発現
アミロイドの蓄積
廃用性委縮
前頭前野
8
認知症の予防
【認知症発現予防】
・廃用防止
・脳の活性化
・他者との関わり
認知症に関与するのは・・
◎原因疾患(病理的変化) ◎廃用性委縮
◎脳の不活性化 ◎他者からの孤立などの日常生活
【認知症予防・改善プログラム】
①運動機能を高める=歩行
・②前頭葉機能他脳機能を高める=脳ドリル「頭の道場」
③デイサービスで行う
99
具体的な研究の流れ
1010
研究協力施設・対象者数
東灘 輝もとやま 16 灘 輝・摩耶 27
兵庫 輝かわいけ 14 中央 輝わかな 14
垂水 輝たかまる 12 兵庫 輝わだみさき 9
垂水 輝かすみが丘 18 須磨 輝たかくら台 12
計 60 計 62
対象者数
介入群
区 名前区群 名前対象者数
群
対照群
研究期間平成20年11月〜平成21年3月(神戸大学倫理審査承認日 平成20年11月13日)
研究協力施設
11
• 平均年齢 82.7歳(SD5.5) 後期高齢者88人(77.8%)
• 居住実態独居 70人(61.9%)
• 平均歩数 3530歩(SD2064):中央値でもほぼ同じ
• 屋外歩行能力 杖なし:80名(70.8%)、
杖・押し車:29名(25.7%)、車椅子:1名(1%)
• 阪神大震災経験 103名(91.1%)
• 併存疾患(複数回答)
上記項目において介入群と対照群間で有意差はなかった。
認知症に影響するような疾患は少なかった。
高血圧 糖尿病 心臓病 腎臓病 脳卒中 パーキンソン病
貧血 骨疾患 心の病気
その他
46 10 17 2 3 0 8 39 1 4
研究参加者の概要
1212
評価項目– 知的機能検査=MMSE
– 構成能力検査=時計描画テスト
– 前頭葉機能検査=FAB
– うつ尺度=GDS
– 生活の質の評価=SF−36
– 歩数調査
評価・測定項目
1313
○手書きデータを即時にデジタル化し、テキストデータ
イメージデータとして保存
○時計機能を活用し、描写時間をデータ化デジタルペン
ICTツール(デジタルペン)を用いた調査
1414
➀自記式アンケート調査 ➁面接調査
➀自己記入による調査
➁面接調査
ICTツール(デジタルペン)を用いた調査
1515
介入その1 歩行プログラム の提供
【ねらい】 歩行による有酸素運動で、前頭前野・海馬の血流を促す
(目標歩数)5,000歩/日未満は、15%上乗せ
10,000歩/日未満は、10%上乗せ
10,000歩/日以上は、 5%上乗せ
日常生活における歩行実績を歩数計に蓄積(最大42日間分)
デイサービスの機会(週1回)にデータを送信
参加者にデータを還元(4週間に1回)
16
介入その1 歩行プログラム しくみの評価
• 歩数計の装着・歩数計の装着により「歩行意欲が向上する」との参加者の反応
• ICTツールを活用したデータ収集・歩数計、歩数リーダの操作が簡易であり、デイサービススタッフ等、地域人材の支援が得やすい。
• ICTツールを活用した歩数データの還元・目標歩数の設定等、データの資料化が効率的に行える・データを資料化して還元することが参加者の歩行への励みにつながる。
※地域での歩行習慣を支援するツールとして普及活用が期待できる
1717
介入その2 認知機能維持改善プログラム
【プログラム内容とねらい】
• 手指の体操や後だしじゃんけん=前頭葉のトレーニング
• ドリル式の教材「頭の道場」を作成し、1回40分程度
※目的とする脳機能のに応じた課題を組み合わせて実施
指の体操
頭の道場(とんち文字)
18
1.指折り10回
2.左手パー親指から、
右手グー小指から、
指折り10回
3.手のひらを机の上で
10回ひっくり返しましょう
4.右手は手のひら上、
左手は手の平下、
10回ひっくり返しましょう
5.後出し一人じゃんけん(左右5回ずつ):
右手を先に出して、
左手で勝ちましょう
6.後出しじゃんけん:
隣の人と交互に
後出しじゃんけんで勝ちましょう
2
4
5
6
介入その2 認知機能維持改善プログラム「頭の道場-手の運動の巻」
1919
○側頭葉トレーニング:回想法を利用した昔の教科書の音読
○頭頂葉トレーニング:間違い探し
○後頭葉トレーニング:塗り絵
介入その2 認知機能維持改善プログラム「頭の道場-認知ドリル」
20
認定証の授与式
介入その2 認知機能維持改善プログラム「頭の道場-認知ドリル」達成の認定証授与
21
介入その2 認知機能維持改善プログラム「頭の道場-認知ドリル」提供のしくみの評価
• ドリルの内容・全体には「楽しく取り組めた」との反応・「とんち文字」は難しいものがあった。・ぬり絵は好評。
• プログラムの提供方法・手の体操は指導者を必要とした。
・ドリルは教材を準備し、デイサービススタッフの支援により取り組んだ。・認定証を授与することで満足度が高まった。
※ビデオ教材の作成、地域人材の育成により地域での普及が可能となる
22
介入その3 抑うつ改善プログラム
「マインドハビッツ」:カナダ・マッギル大学心理学部により開発
【ねらい】
「笑顔」という心地よい刺激を自ら探すくせをつけることによって、ネガティブなものよりもポジティブな刺激を求めやすい認知にし、抑うつの改善を図る。
【内 容】
・ 画面上に表示される複数の表情から笑顔を選択
・ 回答の正確性、スピードに応じて課題の難易度が変化し、個人の達成度が記録される
・ 達成度に応じ、難易度の高い課題へと進むことが可能。
タッチパネルPCを用いて、週1回、5分程度実施
23
介入その3 抑うつ改善プログラム「マインドハビッツ」提供のしくみの評価
プログラムの内容・全体には「楽しく取り組めた」との反応
プログラムの提供方法・タッチパネルへ活用の抵抗感は無かった
・英語版の教材は、なじみにくいとの声があった。
・プログラム立ち上げのパソコン操作ができるデイサービススタッフの協力や育成が必要。
※ツールの操作性の改善、日本語版プログラムへの改編により地域での普及が期待できる
24
中央値 1st 3rd 中央値 1st 3rd p
5.00 4.00 - 5.00 4.00 3.00 - 5.00 0.597
12.00 10.00 - 14.00 12.00 10.00 - 14.00 0.446
26.00 23.50 - 28.00 25.50 22.00 - 27.00 0.424
4.00 2.00 - 6.00 3.50 2.00 - 5.75 0.442
群間に有意差なし
MMSE総得点 (満点30)
GDS総得点 (満点15点)
介入群 対照群
(n=57) (n=56)
FAB総得点 (満点18)
時計描画 (満点5)
MMSEの結果は先行研究と同様の値であるため、妥当な集団だと言える。
初期調査の結果1 概要(総合得点)
25
頻度 % 頻度 %
11 19.30% 8 14.55% 0.62
11 19.30% 17 30.36% 0.20
16 28.07% 14 25.00% 0.83
介入群 対照群
p(n=57) (n=56)
欠損値のためFABの解析対象は対照群において55名
GDS
FAB
MMSE
カットオフポイント:MMSEは認知症全般(23/24点)、GDSはうつ病(5/6点)、FABは前頭側頭型認知症(9/10)
(前頭葉)
(知的機能)
(うつ)
初期調査の結果2認知機能が低成績の人の割合
先行研究を参照すると、対象者(平均年齢(82.7歳)、後期高齢者割合(77.8%))は、一般人口と比較して、年齢相応の能力を有した集団と思われる。しかし、低成績を示す1~2割強以上の対象者には、何らかの介入の必要性があると考えられる。
26
050
100150200250300350400450500
介入群 対照群
介入群
対照群
★p<0.05
★介入群の歩数が対照群の歩数より有意に増加した。
(p値:0.04)
結果① 歩数の変化
27
★すべての項目で有意差なし。
全体的には、介入群で得点が高い傾向にある。
-0.30 -0.20 -0.10 0.00 0.10 0.20 0.30 0.40 0.50 0.60 0.70 0.80
MMSE CDT GDS
介入群
対照群(0.86)
(0.64)
(0.95)
結果② 認知機能の変化
28
★「類似性」「運動課題」「 Go/No-Go(抑制コントロール課題)」の変化に有意差があった。
「運動課題」と「Go/No-Go(抑制コントロール課題)」は介入群では低下せ
ずにとどまっており、高次運動野、両側前頭前野の機能が多少保持された可能性はあるが、総得点及び他の項目では有意差が無いので限定的であるとも言える。
-0.80
-0.60
-0.40
-0.20
0.00
0.20
0.40
0.60
総得点
類似性
流暢性
運動
葛藤
Go/N
o_GO
把握行動
介入群
対照群
★p<0.05( 0.56)
(0.04)
(0.71)
(0.03)(0.79)
(0.03)
(0.42)
結果③ 前頭葉機能の変化
29
★すべての項目で有意差なし。
全体には2群ともに同じ方向(プラスもしくはマイナス)に変化が見られる。RF(身体機能)、BP(体の痛み)、GH(全体的健康感)、VT(活力)については、差が無かったとはいいがたい結果となっている。
(0.08)
(0.36)
(0.12)
(0.10)
(0.13)(0.48)
(0.41)
(0.52)
-2.00
-1.50
-1.00
-0.50
0.00
0.50
1.00
1.50
2.00
2.50
3.00
PF RP BP GH VT SF RE MH
介入群
対照群
結果④ QOLの変化
3030
今後の課題
• 認知症予防プログラム効果の継続評価・地域と一体となって、長期的にプログラム実施・追跡調査するしくみの構築
・継続性、簡易性に着目した、神戸らしい特色のあるプログラム提供ツールの開発
• 認知機能評価・日常生活能力も踏まえた、より簡便で早期発見が可能な指標の構築