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2.6 全微分・重積分・置換積分・ヤコビアン 全微分
筆者は、全微分をあまり正確には理解していないと自覚しています。いくつかの公式は
知っていますし、それを使うことも出来るのですが、上手ではありません。多次元の時に、
具体的なイメージが浮かばないのです。ましてや、数学的な証明になるとまったく自信が
ありません。 例によって、大雑把にでも、何の話か理解するために、最も簡単な例から考えます。 関数が1変数のみで表されている時には、普通の微分も全微分も違いがありません
𝑑𝑑𝑑𝑑(𝑥𝑥)𝑑𝑑𝑥𝑥
= limΔx→0
𝑑𝑑(𝑥𝑥 + Δ𝑥𝑥)− 𝑑𝑑(𝑥𝑥)Δ𝑥𝑥
と書いても良いし、偏微分の記号を使って
𝜕𝜕𝑑𝑑(𝑥𝑥)𝜕𝜕𝑥𝑥
= limΔ𝑥𝑥→0
𝑑𝑑(𝑥𝑥 + Δ𝑥𝑥)− 𝑑𝑑(𝑥𝑥)Δ𝑥𝑥
と書いても、実際、何の違いもありません。 意味が違ってくるのは𝑑𝑑(𝑥𝑥, 𝑦𝑦)のように、関数が複数の変数の関数の時です。
𝑑𝑑𝑑𝑑(𝑥𝑥,𝑦𝑦)𝑑𝑑𝑥𝑥
と𝜕𝜕𝑑𝑑(𝑥𝑥,𝑦𝑦)𝜕𝜕𝑥𝑥
では明らかに意味が違います。
𝜕𝜕𝑑𝑑(𝑥𝑥,𝑦𝑦)𝜕𝜕𝑥𝑥
= limΔ𝑥𝑥→0
𝑑𝑑(𝑥𝑥 + Δ𝑥𝑥, 𝑦𝑦)− 𝑑𝑑(𝑥𝑥, 𝑦𝑦)Δ𝑥𝑥
この式は、関数の中に含まれる𝑦𝑦を𝑥𝑥とは独立した、定数のように取り扱って、𝑥𝑥で微分する
という意味です。
𝑑𝑑𝑑𝑑(𝑥𝑥, 𝑦𝑦)𝑑𝑑𝑥𝑥
の方に、どんな意味があるのかと問われると、このままでは返答のしようがないのですが、
たとえば、𝑦𝑦 = 𝑔𝑔(𝑥𝑥)のように、yが𝑥𝑥の関数ならば、
𝑑𝑑𝑑𝑑(𝑥𝑥,𝑔𝑔(𝑥𝑥))𝑑𝑑𝑥𝑥
= limΔ𝑥𝑥→0
ℎ(𝑥𝑥 + Δ𝑥𝑥)− ℎ(𝑥𝑥,𝑦𝑦)Δ𝑥𝑥
のように、1変数𝑥𝑥の関数になってしまうから、意味があります。しかし、𝑦𝑦 = 𝑔𝑔(𝑥𝑥)で無い
場合に、この式の意味を問われても、私には返答ができません。 全微分も微分なので、ある曲面の接線の傾きを考えているのですが、1変数ではありませ
んから、接線というよりは接平面を考えていると捉えたほうが良いでしょう。接線の傾き
を考えるよりも、x 方向、y方向に傾きを持った面が、全体としてどんな傾きをもっている
か、逆に、x 方向、とy方向にそれぞれ微小分動いたときに、その曲面がどのくらい変化す
るかを考えることだと言ったほうが理解しやすいかもしれません。
具体的に図に書くと次のようなことです 図 48 全微分の空間的な意味 3 次元空間に、𝑑𝑑(𝑥𝑥,𝑦𝑦)があって、この場合は𝑑𝑑(0,0)を起点として考えていますが、x 方向と y方向に同時にΔ𝑥𝑥、Δ𝑦𝑦移動したときに、𝑑𝑑(𝑥𝑥,𝑦𝑦)の増加分Δ𝑑𝑑(𝑥𝑥, 𝑦𝑦)はどのようになるかというこ
とです。この同時に動かすというのが問題で、小学校以来、計算は丁寧に順番にやるよう
に習っています。同時に動かせるはずがありません。この図からも明らかなように、平面
という特殊な場合を除くと、𝑥𝑥を先に動かすか𝑦𝑦を先に動かすかで、結果は違うでしょう。
そこで、微分の時にいつも出てくる考え方ですが、Δ𝑥𝑥、Δ𝑦𝑦が限りなく小さくなれば、近似
的に平面だと考えます。これを式で表すと Δ𝑑𝑑(𝑥𝑥,𝑦𝑦) = lim
Δ𝑥𝑥→0𝑑𝑑(𝑥𝑥 + Δ𝑥𝑥, 𝑦𝑦 + Δ𝑦𝑦) − 𝑑𝑑(𝑥𝑥,𝑦𝑦)
ですが−𝑑𝑑(𝑥𝑥, 𝑦𝑦 + Δ𝑦𝑦) + 𝑑𝑑(𝑥𝑥,𝑦𝑦 + Δ𝑦𝑦)を右辺に書き加えて Δ𝑑𝑑(𝑥𝑥, 𝑦𝑦) = lim
Δ𝑥𝑥,Δ𝑦𝑦→0𝑑𝑑(𝑥𝑥 + Δ𝑥𝑥,𝑦𝑦 + Δ𝑦𝑦) − 𝑑𝑑(𝑥𝑥, 𝑦𝑦 + Δ𝑦𝑦) + 𝑑𝑑(𝑥𝑥,𝑦𝑦 + Δ𝑦𝑦)− 𝑑𝑑(𝑥𝑥, 𝑦𝑦)
= limΔ𝑥𝑥,Δ𝑦𝑦→0
�𝑑𝑑(𝑥𝑥 + Δ𝑥𝑥, 𝑦𝑦 + Δ𝑦𝑦) − 𝑑𝑑(𝑥𝑥,𝑦𝑦 + Δ𝑦𝑦)
Δ𝑥𝑥Δ𝑥𝑥 +
𝑑𝑑(𝑥𝑥, 𝑦𝑦 + Δ𝑦𝑦) − 𝑑𝑑(𝑥𝑥,𝑦𝑦)Δ𝑦𝑦
Δ𝑦𝑦�
= limΔ𝑥𝑥→0
𝑑𝑑(𝑥𝑥 + Δ𝑥𝑥, 𝑦𝑦) − 𝑑𝑑(𝑥𝑥, 𝑦𝑦)Δ𝑥𝑥
Δ𝑥𝑥 + lim,Δ𝑦𝑦→0
𝑑𝑑(𝑥𝑥,𝑦𝑦 + Δ𝑦𝑦)− 𝑑𝑑(𝑥𝑥, 𝑦𝑦)Δ𝑦𝑦
Δ𝑦𝑦
となります。途中、赤字で書いたところの変形 𝑑𝑑(𝑥𝑥 + Δ𝑥𝑥,𝑦𝑦 + Δ𝑦𝑦)− 𝑑𝑑(𝑥𝑥, 𝑦𝑦 + Δ𝑦𝑦) = 𝑑𝑑(𝑥𝑥 + Δ𝑥𝑥, 𝑦𝑦) − 𝑑𝑑(𝑥𝑥, 𝑦𝑦)
については、そんなことはないだろうというツッコミはありそうです。しかし、Δ𝑦𝑦が無限
に小さければ、近似的に等式が成り立つでしょう。 ということで、偏微分の定義で
limΔ𝑥𝑥→0
𝑑𝑑(𝑥𝑥 + Δ𝑥𝑥,𝑦𝑦)− 𝑑𝑑(𝑥𝑥,𝑦𝑦)Δ𝑥𝑥
=𝜕𝜕𝑑𝑑(𝑥𝑥,𝑦𝑦)𝜕𝜕𝑥𝑥
lim,Δ𝑦𝑦→0
𝑑𝑑(𝑥𝑥, 𝑦𝑦 + Δ𝑦𝑦) − 𝑑𝑑(𝑥𝑥,𝑦𝑦)Δ𝑦𝑦
=𝜕𝜕𝑑𝑑(𝑥𝑥,𝑦𝑦)𝜕𝜕𝑦𝑦
Δを𝑑𝑑に書き換えて、微分の式らしくして、
𝑑𝑑𝑑𝑑(𝑥𝑥, 𝑦𝑦) = 𝜕𝜕𝑑𝑑(𝑥𝑥,𝑦𝑦)𝜕𝜕𝑥𝑥
𝑑𝑑𝑥𝑥 +𝜕𝜕𝑑𝑑(𝑥𝑥,𝑦𝑦)𝜕𝜕𝑦𝑦
𝑑𝑑𝑦𝑦
𝑥𝑥
𝑦𝑦 𝑑𝑑(𝑥𝑥, 𝑦𝑦)
Δ𝑥𝑥
Δ𝑦𝑦
Δ𝑑𝑑(𝑥𝑥, 𝑦𝑦)
となります。これが全微分の公式と言う名前の公式です。もっと変数が増えても
𝑑𝑑𝑑𝑑(𝑥𝑥, 𝑦𝑦, 𝑧𝑧) = 𝜕𝜕𝑑𝑑(𝑥𝑥,𝑦𝑦, 𝑧𝑧)
𝜕𝜕𝑥𝑥𝑑𝑑𝑥𝑥 +
𝜕𝜕𝑑𝑑(𝑥𝑥, 𝑦𝑦, 𝑧𝑧)𝜕𝜕𝑦𝑦
𝑑𝑑𝑦𝑦 +𝜕𝜕𝑑𝑑(𝑥𝑥,𝑦𝑦, 𝑧𝑧)
𝜕𝜕𝑧𝑧𝑑𝑑𝑧𝑧
のようになります。 「全微分というものを、式としてどうのように表すのか」というのは、ありそうな疑問で
す。微分を習ったときに、たとえば、𝑥𝑥 = 𝑑𝑑(𝑢𝑢)という1変数で表されている関数を変数𝑢𝑢で
微分する場合、𝑑𝑑𝑑𝑑(𝑢𝑢)𝑑𝑑𝑢𝑢
あるいは𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑢𝑢と書くと習いました。この場合は、1変数なのだから、全微
分も、𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑢𝑢
= 𝜕𝜕𝑥𝑥𝜕𝜕𝑢𝑢だから、全微分も偏微分も区別がありません。
しかし、次のような場合には、全微分と偏微分は明らかに違うものです。 次のような、変換を考えます。関数と言ってもよいでしょう。
𝒙𝒙 = 𝑨𝑨𝑨𝑨 太字で書いたのは、このそれぞれが、ベクトルないし行列だということです。 きちんと書けば、
�𝑥𝑥1𝑥𝑥2⋮𝑥𝑥𝑛𝑛� = �
𝑎𝑎11 𝑎𝑎12𝑎𝑎21 𝑎𝑎22
⋯ 𝑎𝑎1𝑛𝑛⋯ 𝑎𝑎2𝑛𝑛
⋮ ⋮𝑎𝑎𝑛𝑛1 𝑎𝑎𝑛𝑛2
⋱ ⋮⋯ 𝑎𝑎𝑛𝑛𝑛𝑛
��𝑢𝑢1𝑢𝑢2⋮𝑢𝑢𝑛𝑛�
ということです。
𝒅𝒅𝒙𝒙𝒅𝒅𝑨𝑨
を考えます。 もともとの変換式を𝑥𝑥1について書けば、
𝑥𝑥1 = 𝑎𝑎11𝑢𝑢1 + 𝑎𝑎12𝑢𝑢2 + ⋯+ 𝑎𝑎1𝑛𝑛𝑎𝑎1𝑛𝑛 となります。全微分の公式に従えば
𝑑𝑑𝑥𝑥1 =𝜕𝜕𝑥𝑥1𝜕𝜕𝑢𝑢1
𝑑𝑑𝑢𝑢1 +𝜕𝜕𝑥𝑥1𝜕𝜕𝑢𝑢2
𝑑𝑑𝑢𝑢2 + ⋯+𝜕𝜕𝑥𝑥1𝜕𝜕𝑢𝑢𝑛𝑛
𝑑𝑑𝑢𝑢2
ですから、
�
𝑑𝑑𝑥𝑥1𝑑𝑑𝑥𝑥2⋮
𝑑𝑑𝑥𝑥𝑛𝑛
� =
⎝
⎜⎜⎜⎜⎛
𝜕𝜕𝑥𝑥1𝜕𝜕𝑢𝑢1
𝜕𝜕𝑥𝑥1𝜕𝜕𝑢𝑢2
𝜕𝜕𝑥𝑥2𝜕𝜕𝑢𝑢1
𝜕𝜕𝑥𝑥2𝜕𝜕𝑢𝑢2
⋯𝜕𝜕𝑥𝑥1𝜕𝜕𝑢𝑢𝑛𝑛
⋯𝜕𝜕𝑥𝑥2𝜕𝜕𝑢𝑢𝑛𝑛
⋮ ⋮𝜕𝜕𝑥𝑥𝑛𝑛𝜕𝜕𝑢𝑢1
𝜕𝜕𝑥𝑥𝑛𝑛𝜕𝜕𝑢𝑢2
⋱ ⋮
⋯𝜕𝜕𝑥𝑥𝑛𝑛𝜕𝜕𝑢𝑢𝑛𝑛⎠
⎟⎟⎟⎟⎞
�
𝑑𝑑𝑢𝑢1𝑑𝑑𝑢𝑢2⋮
𝑑𝑑𝑢𝑢𝑛𝑛
�
と書けます。 この場合は、たまたま、線形になっているので
𝜕𝜕𝑥𝑥1𝜕𝜕𝑢𝑢1
= 𝑎𝑎11,𝜕𝜕𝑥𝑥1𝜕𝜕𝑢𝑢2
= 𝑎𝑎12,⋯𝜕𝜕𝑥𝑥𝑖𝑖𝜕𝜕𝑢𝑢𝑗𝑗
= 𝑎𝑎𝑖𝑖𝑗𝑗 ,⋯ ,𝜕𝜕𝑥𝑥𝑛𝑛𝜕𝜕𝑢𝑢𝑛𝑛
= 𝑎𝑎𝑛𝑛𝑛𝑛
ですから、
⎝
⎜⎜⎜⎜⎛
𝜕𝜕𝑥𝑥1𝜕𝜕𝑢𝑢1
𝜕𝜕𝑥𝑥1𝜕𝜕𝑢𝑢2
𝜕𝜕𝑥𝑥2𝜕𝜕𝑢𝑢1
𝜕𝜕𝑥𝑥2𝜕𝜕𝑢𝑢2
⋯𝜕𝜕𝑥𝑥1𝜕𝜕𝑢𝑢𝑛𝑛
⋯𝜕𝜕𝑥𝑥2𝜕𝜕𝑢𝑢𝑛𝑛
⋮ ⋮𝜕𝜕𝑥𝑥𝑛𝑛𝜕𝜕𝑢𝑢1
𝜕𝜕𝑥𝑥𝑛𝑛𝜕𝜕𝑢𝑢2
⋱ ⋮
⋯𝜕𝜕𝑥𝑥𝑛𝑛𝜕𝜕𝑢𝑢𝑛𝑛⎠
⎟⎟⎟⎟⎞
= �
𝑎𝑎11 𝑎𝑎12𝑎𝑎21 𝑎𝑎22
⋯ 𝑎𝑎1𝑛𝑛⋯ 𝑎𝑎2𝑛𝑛
⋮ ⋮𝑎𝑎𝑛𝑛1 𝑎𝑎𝑛𝑛2
⋱ ⋮⋯ 𝑎𝑎𝑛𝑛𝑛𝑛
� = 𝑨𝑨
です。だから、
𝒅𝒅𝒙𝒙𝒅𝒅𝑨𝑨
= 𝑨𝑨
とかけますけれど、これは特殊な例です。 重積分の考え方 分散分析のところで、二項分布から正規分布の確率密度の分布の式を求めるときに、畳み
込み法と2重積分について触れたのですが、重積分を取り上げて独立して数学的な説明ま
ではしませんでした。具体的にどういう計算をしているのかは分かったと思うのですが、
それでも、いきなり、積分記号がいくつも重なった重積分で書かれた式を見ると、何を書
いているのかとっさに意味が解らずに、腰が引けてしまいます。式は何やら恐ろしげなの
ですが、多くの場合、式の意味するところはそんなに難しいことではありません。そこで、
例によって、あまり数学的ではないけれど、感覚的にこんなものだという解析をします。 始めにやるのは、重積分で書かれていない、普通の積分だって、重積分的に解釈すること
ができるということです。 これまた例によって、馬鹿馬鹿しいほど簡単なことから考えます。筆者は高等数学を学ん
だことがないから、簡単なことから考えていかざるを得ないのです。不自由なものです。
数学ができる人がうらやましい。
�𝑑𝑑𝑥𝑥
と言う式です。簡単すぎてかえって意味が解りませんか。雑念なく積分の定義通りに理解
すれば十分です 𝑥𝑥という変数があって、それを小さな部分に分けて作った、Δ𝑥𝑥をたしあわせる(integrateする。)と言う意味です。どこからどこまでたしあわせるのかがこの式ではわかりません。
たしあわせる範囲が決まっていないということで、これは不定積分という形です。これま
た、さらに簡単すぎて具体的に考えると意味が解りませんが
𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑥𝑥
= 1
ですから(この式の意味は𝑥𝑥を𝑥𝑥で微分すれば1であるということです。)、1 を𝑑𝑑𝑥𝑥で積分す
れば𝑥𝑥です。当たり前のことを、何でわざわざ繰り返して説明しているのかと言われそうで
すが、もう少し付き合ってください。 ということで、この不定積分の答えは
�𝑑𝑑𝑥𝑥 = 𝑥𝑥 + 𝐶𝐶
ですね。𝐶𝐶は𝑥𝑥の積分範囲が決まっていないので、どこからたしあわせるかわからないので、
どこからたしあわせても良いように、定数𝐶𝐶を付け加えておくということで、これを積分定
数と呼びます。 𝑥𝑥の積分範囲を𝑎𝑎 ≤ 𝑥𝑥 ≤ 𝑏𝑏と決めておけば、これは定積分になって
� 𝑑𝑑𝑥𝑥𝑏𝑏
𝑎𝑎= [𝑥𝑥]𝑎𝑎𝑏𝑏 = 𝑏𝑏 − 𝑎𝑎
となります。この計算を積分記号を使わないでそのまま表すと、
lim𝑛𝑛→∞
�𝑏𝑏 − 𝑎𝑎𝑛𝑛
𝑛𝑛
𝑘𝑘=1
ということなのですが、これを、𝑏𝑏−𝑎𝑎𝑛𝑛
= Δ𝑥𝑥として書きなおすと、
limΔ𝑥𝑥→0
�Δ𝑥𝑥
𝑏𝑏−𝑎𝑎Δ𝑥𝑥
𝑘𝑘=1
𝑎𝑎か𝑏𝑏の直線を、細かく細分化して、さらにそれを元通りにたしあわせれば、その長さは𝑏𝑏 − 𝑎𝑎
に決まっています。人を馬鹿にするなと言われそうです。 これは、長さですから、幅を持っていません。この積分に幅を持たせることを考えます。
最初はごく微量の幅を持たせたいので、𝑥𝑥と独立し直交している成分を y として、 Δyだけ
幅を持たせます。つまり、面積が、Δ𝑥𝑥Δyの微小な長方形を考えて、これをたしあわせて、
面積を求めるということをしたいのです。こういう考え方を式に表したのが
�𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦
という式です。微積分ではΔ𝑥𝑥Δyの無限小のものを𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦と表すという式の記述における約束
やすでに納得されていると思います。 しかし、重積分の式は、不定積分でいったいどこからどこの範囲で積分するのかわかりま
せん。だから、微分式の逆関数として考えれば何らかの意味を考えられるかもしれません
が、このままでは、何のことかわかりません。そこで、積分する範囲を決めて、定積分と
すれば、具体的な意味が発生します。
� 𝑑𝑑𝑥𝑥𝐷𝐷
𝑑𝑑𝑦𝑦
Dというのが積分範囲です。この場合は、x-y 平面なのだから、𝑎𝑎 ≤ 𝑥𝑥 ≤ 𝑏𝑏, 𝑐𝑐 ≤ 𝑦𝑦 ≤ 𝑑𝑑のよう
に積分範囲 D を決めれば、これで、∬ 𝑑𝑑𝑥𝑥𝐷𝐷 𝑑𝑑𝑦𝑦という式が、具体的な形の面積を意味するこ
とになります。ここでは、𝑎𝑎,𝑏𝑏, 𝑐𝑐,𝑑𝑑ですが、もちろん、これが範囲を表す𝑑𝑑(𝑎𝑎),𝑑𝑑(𝑏𝑏)のような
数式でもかまいません。しかし、まず、わかりやすい 図 48. 面積と重積分 図のような、長方形の面積を求める場合
� 𝑑𝑑𝑥𝑥𝐷𝐷
𝑑𝑑𝑦𝑦
D の範囲は0 ≤ 𝑥𝑥 ≤ 𝑏𝑏, 0 ≤ 𝑦𝑦 ≤ 𝑑𝑑です。 これを計算するとき、普通、 図 49. 面積の計算手順 のように、黄色で表した、微小な長方 形の面積を求めて、それをたしあわせる、つまり𝑥𝑥方向に積分するということをするでしょ
う。これを重積分で表現すると
� 𝑑𝑑𝑥𝑥𝐷𝐷
𝑑𝑑𝑦𝑦 = � �� 𝑑𝑑𝑦𝑦𝑑𝑑
0�𝑑𝑑𝑥𝑥
𝑏𝑏
0= � [𝑦𝑦]0𝑑𝑑𝑑𝑑𝑥𝑥
𝑏𝑏
0= � (𝑑𝑑 − 0)𝑑𝑑𝑥𝑥
𝑏𝑏
0= [𝑑𝑑𝑥𝑥]0𝑏𝑏 = (𝑎𝑎𝑑𝑑 − 𝑑𝑑0) = 𝑎𝑎𝑑𝑑
と言う計算になります。 つまり、𝑑𝑑(y) = 1を y で積分して長さを出して、その結果をにΔ𝑥𝑥をかけて𝑥𝑥で積分するとい
う計算です。小学校で習った長方形の面積は横の長さ×縦の長さだということを難しくい
っただけなのです。つまり、人間は頭の中で、普通に重積分をしているのです。なんだか、
わかりきったことを言っているようですが、でも、確かに重積分を解いているのです。こ
の例では、𝑦𝑦は𝑥𝑥独立していて、何の関係もないのですが、これを発展させて
𝑥𝑥 𝑏𝑏
𝑑𝑑
𝑥𝑥 𝑏𝑏
𝑑𝑑 𝑦𝑦
図 50 平行四辺形の面積と重積分 のような平行四辺形について考えます。重積分の式そのものは変わりませんが
� 𝑑𝑑𝑥𝑥𝐷𝐷
𝑑𝑑𝑦𝑦
積分範囲が違います。 D の範囲は、𝑎𝑎 ≤ 𝑥𝑥 ≤ 𝑏𝑏,𝛼𝛼𝑥𝑥 ≤ 𝑦𝑦 ≤ 𝛼𝛼𝑥𝑥 + 𝑑𝑑です。 ですから、
� 𝑑𝑑𝑥𝑥𝐷𝐷
𝑑𝑑𝑦𝑦 = � �� 𝑑𝑑𝑦𝑦𝛼𝛼𝑥𝑥+𝑑𝑑
𝛼𝛼𝑥𝑥�𝑑𝑑𝑥𝑥
𝑏𝑏
0= � [𝑦𝑦]𝛼𝛼𝑥𝑥𝛼𝛼𝑥𝑥+𝑑𝑑𝑑𝑑𝑥𝑥
𝑏𝑏
0= � (𝛼𝛼𝑥𝑥 + 𝑑𝑑 − 𝛼𝛼𝑥𝑥)𝑑𝑑𝑥𝑥
𝑏𝑏
0
= � (𝑑𝑑)𝑑𝑑𝑥𝑥𝑏𝑏
0= [𝑑𝑑𝑥𝑥]0𝑏𝑏 = (𝑎𝑎𝑑𝑑 − 𝑑𝑑0) = 𝑎𝑎𝑑𝑑
平行四辺形の体積が底辺×高さだということは、小学校で習いました。ですから、計算結
果は当然、長方形の場合も平行四辺形の場合も同じです。 さらに発展させます。 図 51. 重積分の例1 のようなときにどうするかです。 全体は部分の総和ですから、この場合は
𝑥𝑥 𝑏𝑏
𝑑𝑑
𝑦𝑦 y=α𝑥𝑥 + 𝑑𝑑
y=α𝑥𝑥
𝑥𝑥 𝑏𝑏
𝑑𝑑
𝑦𝑦
y=α𝑥𝑥
y=α𝑥𝑥 + 𝑑𝑑
y=β𝑥𝑥 − βb y=β𝑥𝑥
図 52. 図 51 の計算手順 と2つの3角形(S1、𝑆𝑆3)と1つの平行四辺形(S2)の3つの部分に分けて計算して、3つ
をたしあわせればよいでしょう。そうすると、y=β𝑥𝑥と y=α𝑥𝑥 + 𝑑𝑑の交点 A、y=β𝑥𝑥 − βb とy=α𝑥𝑥の交点 B、y=α𝑥𝑥 + 𝑑𝑑と y=β𝑥𝑥 − βbの交点 C の座標が必要になります。まず、それぞれの連
立方程式を解きます。 A について
y=β𝑥𝑥 y=α𝑥𝑥 + 𝑑𝑑
を解いて
� 𝑑𝑑𝛽𝛽−𝛼𝛼
, 𝛽𝛽𝑑𝑑𝛽𝛽−𝛼𝛼
�
B について y=β𝑥𝑥 − βb
y=α𝑥𝑥 を解いて
�𝛽𝛽𝑏𝑏
𝛽𝛽 − 𝛼𝛼,
𝛼𝛼𝛽𝛽𝑏𝑏𝛽𝛽 − 𝛼𝛼
�
C について y=β𝑥𝑥 − βb y=α𝑥𝑥 + 𝑑𝑑 を解いて
�𝛽𝛽𝑏𝑏 + 𝑑𝑑𝛽𝛽 − 𝛼𝛼
,𝛼𝛼𝛽𝛽(𝑏𝑏 + 𝑑𝑑)𝛽𝛽 − 𝛼𝛼
�
となります。 それぞれの面積を計算します。
𝑥𝑥 𝑏𝑏
𝑑𝑑
𝑦𝑦
y=α𝑥𝑥
y=α𝑥𝑥 + 𝑑𝑑
y=β𝑥𝑥 − βb y=β𝑥𝑥
𝑆𝑆1 S2
S3 A
B
C
𝑆𝑆1について、D の範囲は、0 ≤ 𝑥𝑥 ≤ 𝑑𝑑𝛽𝛽−𝛼𝛼
,α𝑥𝑥 ≤ 𝑦𝑦 ≤ β𝑥𝑥 だから
𝑆𝑆1 = � 𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦𝐷𝐷
= � �� 𝑑𝑑𝑦𝑦β𝑥𝑥
α𝑥𝑥�
𝑑𝑑𝛽𝛽−𝛼𝛼
0𝑑𝑑𝑥𝑥 = � [𝑦𝑦]α𝑥𝑥
β𝑥𝑥𝑑𝑑
𝛽𝛽−𝛼𝛼
0𝑑𝑑𝑥𝑥 = � (𝛽𝛽 − 𝛼𝛼)𝑥𝑥𝑑𝑑𝑥𝑥 =
𝑑𝑑𝛽𝛽−𝛼𝛼
0(𝛽𝛽 − 𝛼𝛼)
12
[𝑥𝑥2]0
𝑑𝑑𝛽𝛽−𝛼𝛼
= (𝛽𝛽 − 𝛼𝛼)12
(�𝑑𝑑
𝛽𝛽 − 𝛼𝛼�2
− (0)2) =𝑑𝑑2
2(𝛽𝛽 − 𝛼𝛼)
𝑆𝑆2について、D の範囲は、𝑑𝑑
𝛽𝛽−𝛼𝛼≤ 𝑥𝑥 ≤ 𝛽𝛽𝑏𝑏
𝛽𝛽−𝛼𝛼,α𝑥𝑥 ≤ 𝑦𝑦 ≤ α𝑥𝑥 + 𝑑𝑑 だから
𝑆𝑆2 = � 𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦𝐷𝐷
= � �� 𝑑𝑑𝑦𝑦α𝑥𝑥+𝑑𝑑
α𝑥𝑥�
𝛽𝛽𝑏𝑏𝛽𝛽−𝛼𝛼
𝑑𝑑𝛽𝛽−𝛼𝛼
𝑑𝑑𝑥𝑥 = � [𝑦𝑦]α𝑥𝑥α𝑥𝑥+𝑑𝑑𝛽𝛽𝑏𝑏𝛽𝛽−𝛼𝛼
𝑑𝑑𝛽𝛽−𝛼𝛼
𝑑𝑑𝑥𝑥 = � (α𝑥𝑥 + 𝑑𝑑 − α𝑥𝑥)𝑑𝑑𝑥𝑥𝛽𝛽𝑏𝑏𝛽𝛽−𝛼𝛼
𝑑𝑑𝛽𝛽−𝛼𝛼
= � (𝑑𝑑)𝑑𝑑𝑥𝑥𝛽𝛽𝑏𝑏𝛽𝛽−𝛼𝛼
𝑑𝑑𝛽𝛽−𝛼𝛼
= 𝑑𝑑[𝑥𝑥]0 𝑑𝑑𝛽𝛽−𝛼𝛼
𝛽𝛽𝑏𝑏𝛽𝛽−𝛼𝛼 = 𝑑𝑑(
𝛽𝛽𝑏𝑏𝛽𝛽 − 𝛼𝛼
−𝑑𝑑
𝛽𝛽 − 𝛼𝛼) =
𝑑𝑑(𝛽𝛽𝑏𝑏 − 𝑑𝑑)(𝛽𝛽 − 𝛼𝛼)
𝑆𝑆3について、D の範囲は、𝛽𝛽𝑏𝑏𝛽𝛽−𝛼𝛼
≤ 𝑥𝑥 ≤ 𝛽𝛽𝑏𝑏+𝑑𝑑𝛽𝛽−𝛼𝛼
, β𝑥𝑥 − βb ≤ 𝑦𝑦 ≤ α𝑥𝑥 + 𝑑𝑑 だから
𝑆𝑆3 = � 𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦𝐷𝐷
= � �� 𝑑𝑑𝑦𝑦α𝑥𝑥+𝑑𝑑
β𝑥𝑥−βb�
𝛽𝛽𝑏𝑏+𝑑𝑑𝛽𝛽−𝛼𝛼
𝛽𝛽𝑏𝑏𝛽𝛽−𝛼𝛼
𝑑𝑑𝑥𝑥 = � [𝑦𝑦]β𝑥𝑥−βbα𝑥𝑥+𝑑𝑑
𝛽𝛽𝑏𝑏+𝑑𝑑𝛽𝛽−𝛼𝛼
𝛽𝛽𝑏𝑏𝛽𝛽−𝛼𝛼
𝑑𝑑𝑥𝑥 = � (α𝑥𝑥 + 𝑑𝑑 − β𝑥𝑥 + βb)𝑑𝑑𝑥𝑥𝛽𝛽𝑏𝑏+𝑑𝑑𝛽𝛽−𝛼𝛼
𝛽𝛽𝑏𝑏𝛽𝛽−𝛼𝛼
= � �(α − β)𝑥𝑥 + 𝑑𝑑 + βb�𝑑𝑑𝑥𝑥𝛽𝛽𝑏𝑏+𝑑𝑑𝛽𝛽−𝛼𝛼
𝛽𝛽𝑏𝑏𝛽𝛽−𝛼𝛼
= −(𝛽𝛽 − 𝛼𝛼)12
[𝑥𝑥2] 𝛽𝛽𝑏𝑏𝛽𝛽−𝛼𝛼
𝛽𝛽𝑏𝑏+𝑑𝑑𝛽𝛽−𝛼𝛼 + (𝑑𝑑 + βb)[𝑥𝑥] 𝛽𝛽𝑏𝑏
𝛽𝛽−𝛼𝛼
𝛽𝛽𝑏𝑏+𝑑𝑑𝛽𝛽−𝛼𝛼 =
=−12
(𝛽𝛽 − 𝛼𝛼)��𝛽𝛽𝑏𝑏 + 𝑑𝑑𝛽𝛽 − 𝛼𝛼
�2
− �𝛽𝛽𝑏𝑏
𝛽𝛽 − 𝛼𝛼�2
�+ (𝑑𝑑 + βb) �𝛽𝛽𝑏𝑏 + 𝑑𝑑𝛽𝛽 − 𝛼𝛼
−𝛽𝛽𝑏𝑏
𝛽𝛽 − 𝛼𝛼�
=−12�
2𝛽𝛽𝑏𝑏𝑑𝑑 + 𝑑𝑑2
𝛽𝛽 − 𝛼𝛼�+ �
𝑑𝑑(𝑑𝑑 + βb)𝛽𝛽 − 𝛼𝛼
� =12�−2𝛽𝛽𝑏𝑏𝑑𝑑 + 2𝛽𝛽𝑏𝑏𝑑𝑑 − 𝑑𝑑2 + 2𝑑𝑑2
𝛽𝛽 − 𝛼𝛼� =
12�
𝑑𝑑2
𝛽𝛽 − 𝛼𝛼�
となるので
𝑆𝑆 = 𝑆𝑆1 + 𝑆𝑆2 + 𝑆𝑆3 =𝑑𝑑2
2(𝛽𝛽 − 𝛼𝛼) +𝑑𝑑(𝛽𝛽𝑏𝑏 − 𝑑𝑑)
(𝛽𝛽 − 𝛼𝛼) +𝑑𝑑2
2(𝛽𝛽 − 𝛼𝛼)
=1
2(𝛽𝛽 − 𝛼𝛼)(𝑑𝑑2 + 2𝛽𝛽𝑏𝑏𝑑𝑑 − 2𝑑𝑑2 + 𝑑𝑑2) =
𝛽𝛽𝑏𝑏𝑑𝑑(𝛽𝛽 − 𝛼𝛼)
ここで、この計算結果が正しいことを確認しておきましょう。小学校で習った通りに、底
辺かける高さで、平行四辺形の面積を計算します。
図 53. 図 51 の面積の重積分を使わない計算手順 原点を O とすれば、底辺は OB で、高さは、原点から直線 y=α𝑥𝑥 + 𝑑𝑑に下した垂線(𝑦𝑦 = −1
𝛼𝛼𝑥𝑥)と
y = α𝑥𝑥 + 𝑑𝑑との交点 H と原点との距離hです。 H は
y=α𝑥𝑥 + 𝑑𝑑
𝑦𝑦 =−1𝛼𝛼𝑥𝑥
の連立方程式の解ですから、
α𝑥𝑥 + 𝑑𝑑 =−1𝛼𝛼𝑥𝑥
𝑥𝑥 =−𝑑𝑑𝛼𝛼
(1 + 𝛼𝛼2)
y =𝑑𝑑
(1 + 𝛼𝛼2)
H = (−𝑑𝑑𝛼𝛼
(1 + 𝛼𝛼2),
𝑑𝑑(1 + 𝛼𝛼2)
)
ℎ = |OH| = ��−𝑑𝑑𝛼𝛼
(1 + 𝛼𝛼2)�2
+ �𝑑𝑑
(1 + 𝛼𝛼2)�2
= �𝑑𝑑2(1 + 𝛼𝛼2)(1 + 𝛼𝛼2)2
= 𝑑𝑑�1
1 + 𝛼𝛼2
|OB| = ��𝛽𝛽𝑏𝑏
𝛽𝛽 − 𝛼𝛼�2
+ �𝛼𝛼𝛽𝛽𝑏𝑏𝛽𝛽 − 𝛼𝛼
�2
= �(𝛽𝛽𝑏𝑏)2(1 + 𝛼𝛼2)
(𝛽𝛽 − 𝛼𝛼)2 =𝛽𝛽𝑏𝑏
𝛽𝛽 − 𝛼𝛼�1 + 𝛼𝛼2
h|OB| =𝛽𝛽𝑏𝑏𝑑𝑑𝛽𝛽 − 𝛼𝛼
確かに間違いありません。 これで、式の意味は理解できたと思います。しかしこれでは、重積分など使わなくても解
ける簡単な問題を、わざわざ難しくして解いているようです。もう少し、実用的で役に立
ちそうなことを考えてみましょう。
𝑥𝑥 𝑏𝑏
𝑑𝑑
𝑦𝑦
y=α𝑥𝑥
y=α𝑥𝑥 + 𝑑𝑑 y=β𝑥𝑥 − βb y=β𝑥𝑥
𝑆𝑆1 S2
S3 A
B
C H
O h
重積分が魅力的な考え方だとわかる最初の例は、立体の体積を求める計算です。 図 54. 三角錐の体積 三角錐の体積は、
13底面積 × 高さだから、
16に決まっているだろうと言われてしまえばそれ
までなのですが、そういうことを知らないことにして考えます。 まず三角形 ABC の平面の式が問題になりますが、
x + y + z = 1 であることは明らかでしょう。ためしに三角形の頂点A,B,Cの座標を入れてみてください。
ちゃんと成り立っています。3点で成り立てば、平面はの定義としては十分です。 つまり
z = 1 − x− y です。 一つのやり方としては、
� 𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦𝑑𝑑𝑧𝑧𝐷𝐷
D の範囲、0≤ 𝑥𝑥 ≤ 1, 0 ≤, 0 ≤ 𝑦𝑦 ≤ 1 − 𝑥𝑥, 0 ≤ 𝑧𝑧 ≤ 1 − 𝑥𝑥 − 𝑦𝑦 という3重積分だとして計算することが考えられます。
� 𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦𝑑𝑑𝑧𝑧 = � �� �� 𝑑𝑑𝑧𝑧1−𝑥𝑥−𝑦𝑦
0�𝑑𝑑𝑦𝑦
1−𝑥𝑥
0�𝑑𝑑𝑥𝑥
1
0𝐷𝐷
= � �� [𝑧𝑧]01−𝑥𝑥−𝑦𝑦𝑑𝑑𝑦𝑦
1−𝑥𝑥
0�𝑑𝑑𝑥𝑥
1
0
= � �� (1− 𝑥𝑥 − 𝑦𝑦)𝑑𝑑𝑦𝑦1−𝑥𝑥
0�𝑑𝑑𝑥𝑥
1
0
= � �(1− 𝑥𝑥)𝑦𝑦 −12𝑦𝑦2�
0
1−𝑥𝑥
𝑑𝑑𝑥𝑥1
0
= � �(1− 𝑥𝑥)𝑦𝑦 −12𝑦𝑦2�
0
1−𝑥𝑥
𝑑𝑑𝑥𝑥1
0
A(1,0,0)
B(0,1,0)
C(0,0,1)
O(0,0,0) 𝑥𝑥
𝑦𝑦
𝑧𝑧
= � �(1− 𝑥𝑥)2 −12
(1− 𝑥𝑥)2�𝑑𝑑𝑥𝑥1
0
=12� ((1− 𝑥𝑥)2)𝑑𝑑𝑥𝑥1
0
= −12∙
13
[(1− 𝑥𝑥)3]01
=16
となるのですが、3行目の変形のところに注目してください。
= � �� (1− 𝑥𝑥 − 𝑦𝑦)𝑑𝑑𝑦𝑦1−𝑥𝑥
0�𝑑𝑑𝑥𝑥
1
0
は
� (1− 𝑥𝑥 − 𝑦𝑦)𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦𝐷𝐷
D の範囲は、0≤ 𝑥𝑥 ≤ 1, 0 ≤, 0 ≤ 𝑦𝑦 ≤ 1 − 𝑥𝑥 という2重積分で表せます。こういう問題は、
� (1− 𝑥𝑥 − 𝑦𝑦)𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦𝐷𝐷
という 2 重積分として解く方が普通です たとえば、n 個の変数で説明される確率変数(たとえば、個々の確率の積としてそれらの同
時発生確率を計算する場合を考えてください。)があるとき、同時発生確率を𝑑𝑑(𝑥𝑥1,𝑥𝑥2,⋯𝑥𝑥𝑛𝑛)
のように表して、ある範囲内で、データが得られる確率を、n 重積分で、下記の用の計算す
ることができます
�⋯� 𝑑𝑑(𝑥𝑥1,𝑥𝑥2,⋯𝑥𝑥𝑛𝑛)𝑑𝑑𝑥𝑥1𝐷𝐷
𝑑𝑑𝑥𝑥2⋯𝑑𝑑𝑥𝑥𝑛𝑛
三角錐の計算例で
� 𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦𝑑𝑑𝑧𝑧𝐷𝐷
と計算しようとするときには。 𝑑𝑑�x,𝑦𝑦, 𝑧𝑧� = 1
だと考えれば良いでしょう。 つまり、
�⋯� 𝑑𝑑𝑥𝑥1𝐷𝐷
𝑑𝑑𝑥𝑥2⋯𝑑𝑑𝑥𝑥𝑛𝑛
で表されるn次元空間の体積(?)を直接計算しているのですが
� (1− 𝑥𝑥 − 𝑦𝑦)𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦𝐷𝐷
と計算するときは、𝑥𝑥 − 𝑦𝑦平面上の、D と言う平面図形の上の、それぞれの点に、(1 − 𝑥𝑥 − 𝑦𝑦)の
高さの柱が立っていて、その高さの平面 D で積分しているのです 重積分がその威力を特に発揮するのは、この𝑑𝑑(𝑥𝑥1,𝑥𝑥2,⋯𝑥𝑥𝑛𝑛)の部分が複雑な形をしている場
合で、積分を容易にするために、しばしば、「普通の積分」(編積分)でも良く出てきた置
換積分を使います。この置換積分が有効に使われるためには、ヤコビアンという概念を導
入する必要があります。ヤコビアンは、「統計検定」のところの、正規分布や t 分布を作る
過程で、簡単に触れましたが、もう一度、きちんと整理した話をしておきます。 ヤコビアン
𝒙𝒙 = 𝑨𝑨𝑨𝑨 について考えたいのですが、式が大きくなると考えにくいので、n=2 の場合から考えます。
�𝑥𝑥1𝑥𝑥2� = �
𝑎𝑎11 𝑎𝑎12𝑎𝑎21 𝑎𝑎22� �
𝑢𝑢1𝑢𝑢2�
�𝑢𝑢1𝑢𝑢2� = �
𝑎𝑎11 𝑎𝑎12𝑎𝑎21 𝑎𝑎22�
−1�𝑥𝑥1𝑥𝑥2�
�𝑎𝑎11 𝑎𝑎12𝑎𝑎21 𝑎𝑎22�
−1=
1
�𝑎𝑎11 𝑎𝑎12𝑎𝑎21 𝑎𝑎22�
�𝑎𝑎22 −𝑎𝑎12−𝑎𝑎21 𝑎𝑎11 �
この場合は、n が2だから、この空間の最小の単位として単位平面を考えることができます。 ここで突然ですが、 図 55. 単位面積 という正方形の面積を考えます。もちろん答えは1です。 これを重積分的に解けば
D の範囲を0 ≤ 𝑥𝑥1 ≤ 1, 0 ≤ 𝑥𝑥2 ≤ 1として、
� 𝑑𝑑𝑢𝑢1𝑑𝑑𝑢𝑢2𝐷𝐷
= � �� 𝑑𝑑𝑢𝑢21
0�
1
0d𝑢𝑢1=1
という書き方になります。また、簡単なことを難しく表現しました。 次に、
𝑢𝑢1
𝑢𝑢2
O: (0, 0)
A: (0, 1)
B: (1, 0)
C: (1, 1)
図 56. 変換と面積の拡大 という平行四辺形の面積を考えます。このひし形が、次の式による変換によって出来てい
ることは、理解できるでしょうか。
�𝑥𝑥1𝑥𝑥2� = �
𝑎𝑎11 𝑎𝑎12𝑎𝑎21 𝑎𝑎22� �
𝑢𝑢1𝑢𝑢2�
わかりにくければ、次の計算を確認してください
�𝑥𝑥1𝑥𝑥2� = �
𝑎𝑎11 𝑎𝑎12𝑎𝑎21 𝑎𝑎22� �
00� = �0
0�
�𝑥𝑥1𝑥𝑥2� = �
𝑎𝑎11 𝑎𝑎12𝑎𝑎21 𝑎𝑎22� �
01� = �
𝑎𝑎12𝑎𝑎22�
�𝑥𝑥1𝑥𝑥2� = �
𝑎𝑎11 𝑎𝑎12𝑎𝑎21 𝑎𝑎22� �
10� = �
𝑎𝑎11𝑎𝑎21�
�𝑥𝑥1𝑥𝑥2� = �
𝑎𝑎11 𝑎𝑎12𝑎𝑎21 𝑎𝑎22� �
11� = �
𝑎𝑎11 + 𝑎𝑎12𝑎𝑎21 + 𝑎𝑎22
�
ここで、平行四辺形の面積と正方形の面積の比を考えます。やり方はいろいろありそうな
のですが、あまり、面倒な計算はしたくありあません。 そこで、以前にやった計算の結果をそのまま使うことにします。 図 57 ひし形の面積計算
𝑥𝑥1
𝑥𝑥2
C′: (𝑎𝑎11 + 𝑎𝑎12, 𝑎𝑎21 + 𝑎𝑎22 )
O′: (0,0 )
A′: (𝑎𝑎12,𝑎𝑎22 )
B′: (𝑎𝑎11,𝑎𝑎21 )
𝑥𝑥 𝑏𝑏
𝑑𝑑
𝑦𝑦
y=α𝑥𝑥
y=α𝑥𝑥 + 𝑑𝑑
y=β𝑥𝑥 − βb y=β𝑥𝑥
𝑆𝑆1 S2
S3 A
B
C H
O h
平行四辺形 OBCA の面積は、𝛽𝛽𝑏𝑏𝑑𝑑𝛽𝛽−𝛼𝛼
A:� 𝑑𝑑𝛽𝛽−𝛼𝛼
, 𝛽𝛽𝑑𝑑𝛽𝛽−𝛼𝛼
�, B:� 𝛽𝛽𝑏𝑏𝛽𝛽−𝛼𝛼
, 𝛼𝛼𝛽𝛽𝑏𝑏𝛽𝛽−𝛼𝛼
�, C:�𝛽𝛽𝑏𝑏+𝑑𝑑𝛽𝛽−𝛼𝛼
, 𝛼𝛼𝛽𝛽(𝑏𝑏+𝑑𝑑)𝛽𝛽−𝛼𝛼
�
と知っていますから、
� 𝑑𝑑𝛽𝛽−𝛼𝛼
, 𝛽𝛽𝑑𝑑𝛽𝛽−𝛼𝛼
� = (𝑎𝑎12,𝑎𝑎22 ), � 𝛽𝛽𝑏𝑏𝛽𝛽−𝛼𝛼
, 𝛼𝛼𝛽𝛽𝑏𝑏𝛽𝛽−𝛼𝛼
� = (𝑎𝑎11,𝑎𝑎21 )
として、𝛼𝛼,𝛽𝛽, 𝑏𝑏,𝑑𝑑を解きます 𝑑𝑑
𝛽𝛽 − 𝛼𝛼= 𝑎𝑎12
𝛽𝛽𝑑𝑑𝛽𝛽 − 𝛼𝛼
= 𝑎𝑎22
から
𝛽𝛽 =𝑎𝑎22𝑎𝑎12
つづいて 𝛽𝛽𝑏𝑏
𝛽𝛽 − 𝛼𝛼= 𝑎𝑎11
𝛼𝛼𝛽𝛽𝑏𝑏𝛽𝛽 − 𝛼𝛼
= 𝑎𝑎21
から
α =𝑎𝑎21𝑎𝑎11
で
β − α =𝑎𝑎22𝑎𝑎12
−𝑎𝑎21𝑎𝑎11
=𝑎𝑎11𝑎𝑎22 − 𝑎𝑎12𝑎𝑎21
𝑎𝑎11𝑎𝑎12
さらに 𝑑𝑑
𝛽𝛽 − 𝛼𝛼= 𝑎𝑎12
𝑑𝑑𝑎𝑎11𝑎𝑎12𝑎𝑎11𝑎𝑎22 − 𝑎𝑎12𝑎𝑎21
= 𝑎𝑎12
𝑑𝑑 =𝑎𝑎11𝑎𝑎22 − 𝑎𝑎12𝑎𝑎21
𝑎𝑎11
𝛽𝛽𝑏𝑏𝛽𝛽 − 𝛼𝛼
= 𝑎𝑎11
𝑏𝑏𝑎𝑎11𝑎𝑎12𝑎𝑎22𝑎𝑎12
𝑎𝑎11𝑎𝑎22 − 𝑎𝑎12𝑎𝑎21= 𝑎𝑎11
𝑏𝑏 =𝑎𝑎11𝑎𝑎22 − 𝑎𝑎12𝑎𝑎21
𝑎𝑎22
𝛽𝛽𝑏𝑏𝑑𝑑𝛽𝛽 − 𝛼𝛼
=𝑎𝑎11𝑎𝑎12
𝑎𝑎11𝑎𝑎22 − 𝑎𝑎12𝑎𝑎21∙𝑎𝑎22𝑎𝑎12
∙𝑎𝑎11𝑎𝑎22 − 𝑎𝑎12𝑎𝑎21
𝑎𝑎22∙𝑎𝑎11𝑎𝑎22 − 𝑎𝑎12𝑎𝑎21
𝑎𝑎11= 𝑎𝑎11𝑎𝑎22 − 𝑎𝑎12𝑎𝑎21
となります。
𝑎𝑎11𝑎𝑎22 − 𝑎𝑎12𝑎𝑎21 = �𝑎𝑎11 𝑎𝑎12𝑎𝑎21 𝑎𝑎22�
ですね。 以前、行列式とは、その変換がもたらす大きさだと説明しました。この計算でその実感が
持てたでしょうか。 極めて微小な正方形を考えます。それを
�𝑥𝑥1𝑥𝑥2� = �
𝑎𝑎11 𝑎𝑎12𝑎𝑎21 𝑎𝑎22� �
𝑢𝑢1𝑢𝑢2�
という変換をしてできた図形の面積は、元の微小な正方形の�𝑎𝑎11 𝑎𝑎12𝑎𝑎21 𝑎𝑎22�倍の面積になるとい
うことです。どんなに複雑な図形でも、微小な正方形が集まってできていると考えれば、
それを変換してできる図形の面積は、元の図形の面積の�𝑎𝑎11 𝑎𝑎12𝑎𝑎21 𝑎𝑎22�倍の面積になるというこ
とです。これは次元が増えても同じで、微小な立方体を
�𝑥𝑥1𝑥𝑥2𝑥𝑥3� = �
𝑎𝑎11 𝑎𝑎12 𝑎𝑎13𝑎𝑎21 𝑎𝑎22 𝑎𝑎23𝑎𝑎31 𝑎𝑎32 𝑎𝑎33
��𝑢𝑢1𝑢𝑢2𝑢𝑢3�
で変換すると、変換された結果できた3次元の空間の体積は、元の立方体の�𝑎𝑎11 𝑎𝑎12 𝑎𝑎13𝑎𝑎21 𝑎𝑎22 𝑎𝑎23𝑎𝑎31 𝑎𝑎32 𝑎𝑎33
�
倍になるということであり、元の空間の形がどうであれ、変換されてできた空間の体積は
元の空間の体積の�𝑎𝑎11 𝑎𝑎12 𝑎𝑎13𝑎𝑎21 𝑎𝑎22 𝑎𝑎23𝑎𝑎31 𝑎𝑎32 𝑎𝑎33
�倍になるということです。4次元以上でも同じことが言え
ますが、日本語でどう表現したらよいのかわかりません。言いたいことはわかると思いま
す。つまり、
�
𝑥𝑥1𝑥𝑥2⋮𝑥𝑥𝑛𝑛
� = �
𝑎𝑎11 𝑎𝑎12𝑎𝑎21 𝑎𝑎22
⋯ 𝑎𝑎1𝑛𝑛⋯ 𝑎𝑎2𝑛𝑛
⋮ ⋮𝑎𝑎𝑛𝑛1 𝑎𝑎𝑛𝑛2
⋱ ⋮⋯ 𝑎𝑎𝑛𝑛𝑛𝑛
��
𝑢𝑢1𝑢𝑢2⋮𝑢𝑢𝑛𝑛
�
ならば、
𝑥𝑥1𝑥𝑥2 ⋯𝑥𝑥𝑛𝑛 = �
𝑎𝑎11 𝑎𝑎12𝑎𝑎21 𝑎𝑎22
⋯ 𝑎𝑎1𝑛𝑛⋯ 𝑎𝑎2𝑛𝑛
⋮ ⋮𝑎𝑎𝑛𝑛1 𝑎𝑎𝑛𝑛2
⋱ ⋮⋯ 𝑎𝑎𝑛𝑛𝑛𝑛
� 𝑢𝑢1𝑢𝑢2 ⋯𝑢𝑢𝑛𝑛
ということです。ということは当然、微小な図形についてもいえて、
�
Δ𝑥𝑥1Δ𝑥𝑥2⋮
Δ𝑥𝑥𝑛𝑛
� = �
𝑎𝑎11 𝑎𝑎12𝑎𝑎21 𝑎𝑎22
⋯ 𝑎𝑎1𝑛𝑛⋯ 𝑎𝑎2𝑛𝑛
⋮ ⋮𝑎𝑎𝑛𝑛1 𝑎𝑎𝑛𝑛2
⋱ ⋮⋯ 𝑎𝑎𝑛𝑛𝑛𝑛
��
Δ𝑢𝑢1Δ𝑢𝑢2⋮
Δ𝑢𝑢𝑛𝑛
�
ならば
Δ𝑥𝑥1Δ𝑥𝑥2⋯Δ𝑥𝑥𝑛𝑛 = �
𝑎𝑎11 𝑎𝑎12𝑎𝑎21 𝑎𝑎22
⋯ 𝑎𝑎1𝑛𝑛⋯ 𝑎𝑎2𝑛𝑛
⋮ ⋮𝑎𝑎𝑛𝑛1 𝑎𝑎𝑛𝑛2
⋱ ⋮⋯ 𝑎𝑎𝑛𝑛𝑛𝑛
� Δ𝑢𝑢1Δ𝑢𝑢2 ⋯Δ𝑢𝑢𝑛𝑛
です。 ところで、全微分に戻って考えると
𝒅𝒅𝒙𝒙𝒅𝒅𝑨𝑨
=
⎝
⎜⎜⎜⎜⎛
𝜕𝜕𝑥𝑥1𝜕𝜕𝑢𝑢1
𝜕𝜕𝑥𝑥1𝜕𝜕𝑢𝑢2
𝜕𝜕𝑥𝑥2𝜕𝜕𝑢𝑢1
𝜕𝜕𝑥𝑥2𝜕𝜕𝑢𝑢2
⋯𝜕𝜕𝑥𝑥1𝜕𝜕𝑢𝑢𝑛𝑛
⋯𝜕𝜕𝑥𝑥2𝜕𝜕𝑢𝑢𝑛𝑛
⋮ ⋮𝜕𝜕𝑥𝑥𝑛𝑛𝜕𝜕𝑢𝑢1
𝜕𝜕𝑥𝑥𝑛𝑛𝜕𝜕𝑢𝑢2
⋱ ⋮
⋯𝜕𝜕𝑥𝑥𝑛𝑛𝜕𝜕𝑢𝑢𝑛𝑛⎠
⎟⎟⎟⎟⎞
です。つまり、
�
𝑑𝑑𝑥𝑥1𝑑𝑑𝑥𝑥2⋮
𝑑𝑑𝑥𝑥𝑛𝑛
� =
⎝
⎜⎜⎜⎜⎛
𝜕𝜕𝑥𝑥1𝜕𝜕𝑢𝑢1
𝜕𝜕𝑥𝑥1𝜕𝜕𝑢𝑢2
𝜕𝜕𝑥𝑥2𝜕𝜕𝑢𝑢1
𝜕𝜕𝑥𝑥2𝜕𝜕𝑢𝑢2
⋯𝜕𝜕𝑥𝑥1𝜕𝜕𝑢𝑢𝑛𝑛
⋯𝜕𝜕𝑥𝑥2𝜕𝜕𝑢𝑢𝑛𝑛
⋮ ⋮𝜕𝜕𝑥𝑥𝑛𝑛𝜕𝜕𝑢𝑢1
𝜕𝜕𝑥𝑥𝑛𝑛𝜕𝜕𝑢𝑢2
⋱ ⋮
⋯𝜕𝜕𝑥𝑥𝑛𝑛𝜕𝜕𝑢𝑢𝑛𝑛⎠
⎟⎟⎟⎟⎞
�
𝑑𝑑𝑢𝑢1𝑑𝑑𝑢𝑢2⋮
𝑑𝑑𝑢𝑢𝑛𝑛
�
これは、
�
𝑑𝑑𝑥𝑥1𝑑𝑑𝑥𝑥2⋮
𝑑𝑑𝑥𝑥𝑛𝑛
� = �
𝑎𝑎11 𝑎𝑎12𝑎𝑎21 𝑎𝑎22
⋯ 𝑎𝑎1𝑛𝑛⋯ 𝑎𝑎2𝑛𝑛
⋮ ⋮𝑎𝑎𝑛𝑛1 𝑎𝑎𝑛𝑛2
⋱ ⋮⋯ 𝑎𝑎𝑛𝑛𝑛𝑛
��
𝑑𝑑𝑢𝑢1𝑑𝑑𝑢𝑢2⋮
𝑑𝑑𝑢𝑢𝑛𝑛
�
と言う形になっています。 単位になっている正方形を考えたときには、
𝒙𝒙 = �
𝜑𝜑1(𝑢𝑢1,⋯𝑢𝑢𝑛𝑛)𝜑𝜑2(𝑢𝑢1,⋯𝑢𝑢𝑛𝑛)
⋮𝜑𝜑𝑛𝑛(𝑢𝑢1,⋯𝑢𝑢𝑛𝑛)
�
と書いたときに、𝜑𝜑𝑖𝑖(𝑢𝑢1,⋯𝑢𝑢𝑛𝑛)が、線形(一次の多項式)になっているので。
�
𝑥𝑥1𝑥𝑥2⋮𝑥𝑥𝑛𝑛
� = �
𝑎𝑎11 𝑎𝑎12𝑎𝑎21 𝑎𝑎22
⋯ 𝑎𝑎1𝑛𝑛⋯ 𝑎𝑎2𝑛𝑛
⋮ ⋮𝑎𝑎𝑛𝑛1 𝑎𝑎𝑛𝑛2
⋱ ⋮⋯ 𝑎𝑎𝑛𝑛𝑛𝑛
��
𝑢𝑢1𝑢𝑢2⋮𝑢𝑢𝑛𝑛
�
の全微分が、
�
𝑑𝑑𝑥𝑥1𝑑𝑑𝑥𝑥2⋮
𝑑𝑑𝑥𝑥𝑛𝑛
� = �
𝑎𝑎11 𝑎𝑎12𝑎𝑎21 𝑎𝑎22
⋯ 𝑎𝑎1𝑛𝑛⋯ 𝑎𝑎2𝑛𝑛
⋮ ⋮𝑎𝑎𝑛𝑛1 𝑎𝑎𝑛𝑛2
⋱ ⋮⋯ 𝑎𝑎𝑛𝑛𝑛𝑛
��
𝑑𝑑𝑢𝑢1𝑑𝑑𝑢𝑢2⋮
𝑑𝑑𝑢𝑢𝑛𝑛
�
になりますが、 𝜑𝜑𝑖𝑖(𝑢𝑢1,⋯𝑢𝑢𝑛𝑛)
が線形でなくても、全微分の結果を、下記のように表せます。
�
𝑑𝑑𝑥𝑥1𝑑𝑑𝑥𝑥2⋮
𝑑𝑑𝑥𝑥𝑛𝑛
� =
⎝
⎜⎜⎜⎜⎛
𝜕𝜕𝑥𝑥1𝜕𝜕𝑢𝑢1
𝜕𝜕𝑥𝑥1𝜕𝜕𝑢𝑢2
𝜕𝜕𝑥𝑥2𝜕𝜕𝑢𝑢1
𝜕𝜕𝑥𝑥2𝜕𝜕𝑢𝑢2
⋯𝜕𝜕𝑥𝑥1𝜕𝜕𝑢𝑢𝑛𝑛
⋯𝜕𝜕𝑥𝑥2𝜕𝜕𝑢𝑢𝑛𝑛
⋮ ⋮𝜕𝜕𝑥𝑥𝑛𝑛𝜕𝜕𝑢𝑢1
𝜕𝜕𝑥𝑥𝑛𝑛𝜕𝜕𝑢𝑢2
⋱ ⋮
⋯𝜕𝜕𝑥𝑥𝑛𝑛𝜕𝜕𝑢𝑢𝑛𝑛⎠
⎟⎟⎟⎟⎞
�
𝑑𝑑𝑢𝑢1𝑑𝑑𝑢𝑢2⋮
𝑑𝑑𝑢𝑢𝑛𝑛
�
微小部分がこのような関係であれば、これらを寄せ集めて出来た、
�
𝑑𝑑𝑥𝑥1𝑑𝑑𝑥𝑥2⋮
𝑑𝑑𝑥𝑥𝑛𝑛
� =
⎝
⎜⎜⎜⎜⎛
𝜕𝜕𝑥𝑥1𝜕𝜕𝑢𝑢1
𝜕𝜕𝑥𝑥1𝜕𝜕𝑢𝑢2
𝜕𝜕𝑥𝑥2𝜕𝜕𝑢𝑢1
𝜕𝜕𝑥𝑥2𝜕𝜕𝑢𝑢2
⋯𝜕𝜕𝑥𝑥1𝜕𝜕𝑢𝑢𝑛𝑛
⋯𝜕𝜕𝑥𝑥2𝜕𝜕𝑢𝑢𝑛𝑛
⋮ ⋮𝜕𝜕𝑥𝑥𝑛𝑛𝜕𝜕𝑢𝑢1
𝜕𝜕𝑥𝑥𝑛𝑛𝜕𝜕𝑢𝑢2
⋱ ⋮
⋯𝜕𝜕𝑥𝑥𝑛𝑛𝜕𝜕𝑢𝑢𝑛𝑛⎠
⎟⎟⎟⎟⎞
�
𝑑𝑑𝑢𝑢1𝑑𝑑𝑢𝑢2⋮
𝑑𝑑𝑢𝑢𝑛𝑛
�
ならば
𝑑𝑑𝑥𝑥1𝑑𝑑𝑥𝑥2⋯𝑑𝑑𝑥𝑥𝑛𝑛 = �
𝑎𝑎11 𝑎𝑎12𝑎𝑎21 𝑎𝑎22
⋯ 𝑎𝑎1𝑛𝑛⋯ 𝑎𝑎2𝑛𝑛
⋮ ⋮𝑎𝑎𝑛𝑛1 𝑎𝑎𝑛𝑛2
⋱ ⋮⋯ 𝑎𝑎𝑛𝑛𝑛𝑛
� 𝑑𝑑𝑢𝑢1𝑑𝑑𝑢𝑢2⋯𝑑𝑑𝑢𝑢𝑛𝑛
ということですが、 無限に小さな単位の関係がこのようになるならば、それらを集めでできた複雑な図形とい
うか下記の式で与えられる何かのかたまりの大きさ
�⋯� 𝑑𝑑(𝑥𝑥1,⋯𝑥𝑥𝑛𝑛)𝐷𝐷
𝑑𝑑𝑥𝑥1⋯𝑑𝑑𝑥𝑥𝑛𝑛
積分記号の D は𝒙𝒙の積分範囲 は
�⋯� 𝑑𝑑(𝑥𝑥1,⋯𝑥𝑥𝑛𝑛)𝐷𝐷
𝑑𝑑𝑥𝑥1⋯𝑑𝑑𝑥𝑥𝑛𝑛
= �⋯� 𝑑𝑑{𝜑𝜑𝑖𝑖(𝑢𝑢1,⋯𝑢𝑢𝑛𝑛),⋯𝜑𝜑𝑛𝑛(𝑢𝑢1,⋯𝑢𝑢𝑛𝑛)}𝐷𝐷′
⎣⎢⎢⎢⎡𝜕𝜕𝜑𝜑1𝜕𝜕𝑢𝑢1
⋯𝜕𝜕𝜑𝜑1𝜕𝜕𝑢𝑢𝑛𝑛
⋯ ⋱ ⋯𝜕𝜕𝜑𝜑𝑛𝑛𝜕𝜕𝑢𝑢𝑛𝑛
⋯𝜕𝜕𝜑𝜑𝑛𝑛𝜕𝜕𝑢𝑢𝑛𝑛⎦
⎥⎥⎥⎤
𝑑𝑑𝑢𝑢1 ⋯𝑑𝑑𝑢𝑢2
(積分記号の D は𝒙𝒙の積分範囲:𝐷𝐷′は𝑨𝑨の積分範囲 で与えられるということです。
⎣⎢⎢⎡𝜕𝜕𝜑𝜑1𝜕𝜕𝑢𝑢1
⋯ 𝜕𝜕𝜑𝜑1𝜕𝜕𝑢𝑢𝑛𝑛
⋯ ⋱ ⋯𝜕𝜕𝜑𝜑𝑛𝑛𝜕𝜕𝑢𝑢𝑛𝑛
⋯ 𝜕𝜕𝜑𝜑𝑛𝑛𝜕𝜕𝑢𝑢𝑛𝑛⎦
⎥⎥⎤はヤコビアンと言う名前がついていて、�𝐽𝐽𝜑𝜑�のように表します。
整理して公式的に書けば、
𝒙𝒙 = �
𝜑𝜑1(𝑢𝑢1,⋯𝑢𝑢𝑛𝑛)𝜑𝜑2(𝑢𝑢1,⋯𝑢𝑢𝑛𝑛)
⋮𝜑𝜑𝑛𝑛(𝑢𝑢1,⋯𝑢𝑢𝑛𝑛)
�
のとき
J𝜑𝜑 =𝑑𝑑𝝋𝝋𝑑𝑑𝑨𝑨
とすれば
�⋯� 𝑑𝑑(𝑥𝑥1,⋯𝑥𝑥𝑛𝑛)𝐷𝐷
𝑑𝑑𝑥𝑥1⋯𝑑𝑑𝑥𝑥𝑛𝑛 = �⋯� 𝑑𝑑{𝜑𝜑𝑖𝑖(𝑢𝑢1,⋯𝑢𝑢𝑛𝑛),⋯𝜑𝜑𝑛𝑛(𝑢𝑢1,⋯𝑢𝑢𝑛𝑛)}𝐷𝐷′
�𝐽𝐽𝜑𝜑�𝑑𝑑𝑢𝑢1⋯𝑑𝑑𝑢𝑢2
式 77 となるということです。 全微分、重積分、置換積分、ヤコビアンをまとめて説明すればこのようなことです。実は
私たちは、このことを小学校・中学校。高校の数学で繰り返し習っています。ただ、その
時は、1変数の置換積分の延長で考えていて、全微分、重積分、ヤコビアという言葉を使
っていないだけなのです。 円の面積は、π𝑟𝑟2だと習いましたね。小学校・中学校ではこのことを結構、苦労して教えて
います。何しろ微積分なしで、これを教えるのは至難の業です。高校では積分法の中で置
換積分として教わるのですが、これが重積分だという説明はしていません。おかげで、覚
えにくく、説明が技巧的な感じでした。 まず、高校ではこの問題をどう解いたかを思い出しましょう。重積分が使えないというこ
とが前提です。
図 58. 球の体積計算(直交座標から極座標に変換) 太線部の長さを考えて、これを、−𝑟𝑟 ≤ 𝑥𝑥 ≤ 𝑟𝑟の範囲で積分すると習いました。
� 2�𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2𝑑𝑑𝑥𝑥𝑟𝑟
−𝑟𝑟
この計算はできないこともないでしょうが、めんどうなので 𝑥𝑥 = 𝑟𝑟 cos𝜃𝜃
とおいて �𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2 = 𝑟𝑟 sin 𝜃𝜃 𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝜃𝜃
= −𝑟𝑟sin𝜃𝜃
これらを使って、
� 2�𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2𝑑𝑑𝑥𝑥𝑟𝑟
−𝑟𝑟= � 𝑟𝑟2 sin2 𝜃𝜃 𝑑𝑑𝜃𝜃
𝜋𝜋
−𝜋𝜋= 𝑟𝑟2 � sin2 𝜃𝜃 𝑑𝑑𝜃𝜃
𝜋𝜋
−𝜋𝜋
下記の変形をして cos 2𝜃𝜃 = cos2 𝜃𝜃 − sin2 𝜃𝜃 = 1 − 2 sin2 𝜗𝜗
sin2 𝜃𝜃 =1 − cos 2𝜃𝜃
2
だから、
� �𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2𝑑𝑑𝑥𝑥𝑟𝑟
−𝑟𝑟=𝑟𝑟2
2� (1− cos 2𝜃𝜃)𝑑𝑑𝜃𝜃𝜋𝜋
−𝜋𝜋=𝑟𝑟2
2�[𝜃𝜃]−𝜋𝜋𝜋𝜋 −
12
[sin 2𝜃𝜃]−𝜋𝜋𝜋𝜋 � =𝑟𝑟2
2(2𝜋𝜋 − 0)
= 𝜋𝜋𝑟𝑟2 この過程を重積分で書くと
� � 𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
−√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
𝑟𝑟
−𝑟𝑟
こんな面倒な計算は誰だってやりたくない。そこで、気の利いた置換を考えて 𝑥𝑥 = 𝑙𝑙 cos𝜃𝜃 y = 𝑙𝑙 sin𝜃𝜃
とします。
𝜕𝜕𝑥𝑥𝜕𝜕𝑙𝑙
= cos𝜃𝜃
θ 𝑟𝑟
𝑥𝑥
�𝑥𝑥,�1 − 𝑥𝑥2�
�𝑥𝑥,− �1 − 𝑥𝑥2�
𝜕𝜕𝑥𝑥𝜕𝜕𝜃𝜃
= −𝑙𝑙 sin𝜃𝜃
𝜕𝜕𝑦𝑦𝜕𝜕𝑙𝑙
= sin𝜃𝜃
𝜕𝜕𝑦𝑦𝜕𝜕𝜃𝜃
= 𝑙𝑙 cos𝜃𝜃
丁寧にやれば
𝑑𝑑𝑥𝑥 =𝜕𝜕𝑥𝑥𝜕𝜕𝑙𝑙𝑑𝑑𝑙𝑙 +
𝜕𝜕𝑥𝑥𝜕𝜕𝜃𝜃
𝑑𝑑𝜃𝜃 = cos𝜃𝜃 𝑑𝑑𝑙𝑙 − 𝑙𝑙 sin 𝜃𝜃 𝑑𝑑𝜃𝜃
𝑑𝑑𝑦𝑦 =𝜕𝜕𝑦𝑦𝜕𝜕𝑙𝑙𝑑𝑑𝑙𝑙 +
𝜕𝜕𝑦𝑦𝜕𝜕𝜃𝜃
𝑑𝑑𝜃𝜃 = sin𝜃𝜃 𝑑𝑑𝑟𝑟 + 𝑙𝑙 cos𝜃𝜃 𝑑𝑑𝜃𝜃
となるので、
�𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦� = �cos𝜃𝜃 −𝑙𝑙 sin𝜃𝜃sin𝜃𝜃 𝑙𝑙 cos𝜃𝜃 � �
𝑑𝑑𝑙𝑙𝑑𝑑𝜃𝜃�
�cos𝜃𝜃 −𝑙𝑙 sin 𝜃𝜃sin 𝜃𝜃 𝑙𝑙 cos𝜃𝜃 � = 𝑙𝑙(cos2 𝜃𝜃 ∗ sin2 𝜗𝜗) = 𝑙𝑙
つまり、ヤコビアン �𝐽𝐽𝜑𝜑� = 𝑙𝑙
積分範囲は、0 ≤ 𝑙𝑙 ≤ 𝑟𝑟, 0 ≤ θ ≤ 2π だから、
� 𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦𝐷𝐷
= � 𝑙𝑙𝑑𝑑𝑙𝑙𝑑𝑑𝜃𝜃𝐷𝐷′
= � 𝑙𝑙 �� 𝑑𝑑𝜃𝜃2𝜋𝜋
0�
𝑟𝑟
0𝑑𝑑𝑙𝑙 = � 𝑙𝑙[𝜃𝜃]02𝜋𝜋𝑑𝑑𝑙𝑙
𝑟𝑟
0= � 2𝜋𝜋𝑙𝑙𝑑𝑑𝑙𝑙
𝑟𝑟
0= 2𝜋𝜋 �
12𝑙𝑙2�
0
𝑟𝑟
= 𝜋𝜋𝑟𝑟2
となります。 どうせ置換をするのであれば、初めから極座標で計算する方が楽です。 図 59. 球の体積(極座標で計算) 円周の内、角𝜃𝜃で切り取られる円弧の長さは𝑙𝑙 𝜃𝜃です。𝜃𝜃の微小分の増加Δθに伴う長さの増加
は𝑙𝑙Δ 𝜃𝜃です。半径𝑙𝑙の微小な増加分Δ𝑙𝑙として、同時に、Δ 𝜃𝜃、Δ𝑙𝑙が同時に増加したときの増加
部分は𝑙𝑙Δ𝜃𝜃Δ𝑙𝑙の面積を持つ長方形に近似できますから これを0 ≤ l ≤ r, 0 ≤ θ ≤ 2πの範囲で重積分します。
𝑙𝑙 𝜃𝜃
Δ𝑙𝑙
� 𝑙𝑙𝑑𝑑𝑙𝑙𝑑𝑑𝜃𝜃𝐷𝐷
この計算は
� �� 𝑙𝑙𝑑𝑑𝜃𝜃2𝜋𝜋
0�𝑑𝑑𝑙𝑙
𝑟𝑟
0
= � 𝑙𝑙[𝜃𝜃]02𝜋𝜋𝑑𝑑𝑙𝑙𝑟𝑟
0
= � 2𝜋𝜋𝑙𝑙𝑑𝑑𝑙𝑙𝑟𝑟
0
= 2𝜋𝜋 �12𝑙𝑙2�
0
𝑟𝑟
= π𝑟𝑟2 となります。 ところで、直交座標と極座標の計算を比較してみます。 極座標の変換は
𝑥𝑥 = 𝑙𝑙 cos𝜃𝜃 𝑦𝑦 = 𝑙𝑙 sin𝜃𝜃
すると
𝜕𝜕𝑥𝑥𝜕𝜕𝑙𝑙
= cos𝜃𝜃
𝜕𝜕𝑥𝑥𝜕𝜕𝜃𝜃
= −𝑙𝑙 sin𝜃𝜃
𝜕𝜕𝑦𝑦𝜕𝜕𝑙𝑙
= sin𝜃𝜃
𝜕𝜕𝑦𝑦𝜕𝜕𝜃𝜃
= 𝑙𝑙 cos𝜃𝜃
全微分の公式を使って
𝑑𝑑𝑥𝑥 =𝜕𝜕𝑥𝑥𝜕𝜕𝑙𝑙𝑑𝑑𝑙𝑙 +
𝜕𝜕𝑥𝑥𝜕𝜕𝜃𝜃
𝑑𝑑𝜃𝜃 = cos𝜃𝜃 𝑑𝑑𝑙𝑙 − 𝑙𝑙 sin 𝜃𝜃 𝑑𝑑𝜃𝜃
𝑑𝑑𝑦𝑦 =𝜕𝜕𝑦𝑦𝜕𝜕𝑙𝑙𝑑𝑑𝑙𝑙 +
𝜕𝜕𝑦𝑦𝜕𝜕𝜃𝜃
𝑑𝑑𝜃𝜃 = sin𝜃𝜃 𝑑𝑑𝑟𝑟 + 𝑙𝑙 cos𝜃𝜃 𝑑𝑑𝜃𝜃
となるので、
�𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦� = �cos𝜃𝜃 −𝑙𝑙 sin𝜃𝜃sin𝜃𝜃 𝑙𝑙 cos𝜃𝜃 � �
𝑑𝑑𝑙𝑙𝑑𝑑𝜃𝜃�
|𝐽𝐽| = �cos𝜃𝜃 −𝑙𝑙 sin𝜃𝜃sin𝜃𝜃 𝑙𝑙 cos𝜃𝜃 � = 𝑙𝑙(cos2 𝜃𝜃 ∗ sin2 𝜗𝜗) = 𝑙𝑙
重積分の置換積分の公式
�⋯� 𝑑𝑑(𝑥𝑥1,⋯𝑥𝑥𝑛𝑛)𝐷𝐷
𝑑𝑑𝑥𝑥1⋯𝑑𝑑𝑥𝑥𝑛𝑛 = �⋯� 𝑑𝑑{𝜑𝜑𝑖𝑖(𝑢𝑢1,⋯𝑢𝑢𝑛𝑛),⋯𝜑𝜑𝑛𝑛(𝑢𝑢1,⋯𝑢𝑢𝑛𝑛)}𝐷𝐷′
�𝐽𝐽𝜑𝜑�𝑑𝑑𝑢𝑢1⋯𝑑𝑑𝑢𝑢2
に当てはめて考えると 𝑑𝑑(𝑥𝑥,𝑦𝑦) = 1
だから、 𝑑𝑑{𝜑𝜑𝑖𝑖(𝑟𝑟,𝜃𝜃),𝜑𝜑2(𝑟𝑟,𝜃𝜃)} = 1
なので、
� � 𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
−√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
𝑟𝑟
−𝑟𝑟= � 𝑙𝑙𝑑𝑑𝑙𝑙𝑑𝑑𝜃𝜃
𝐷𝐷= � |𝐽𝐽|𝑑𝑑𝑙𝑙𝑑𝑑𝜃𝜃
𝐷𝐷
となっていることが確かめられました。 置換積分を用いた重積分例 円の面積の求め方も2重積分を使った上手い計算の例なのですが、残念ながら答えを知っ
ているので、あまりありがたみがわかりません。有用性がわかりやすい例を示します。 図 60. 重積分の応用例 この図で、4つの曲線に囲まれた部分の面積を求めます。 ここまでの解説に使ったやり方のみでやるならば、ひし形の計算と同様に、交点 A(𝑥𝑥𝑎𝑎, 𝑦𝑦𝑎𝑎)、
B(𝑥𝑥𝑏𝑏, 𝑦𝑦𝑏𝑏)、C(𝑥𝑥𝑐𝑐, 𝑦𝑦𝑐𝑐)、D(𝑥𝑥𝑑𝑑 , 𝑦𝑦𝑑𝑑) を求めて、3つの部分に分けて、
𝑆𝑆1について、積分範囲 D を、𝑥𝑥𝑎𝑎 ≤ 𝑥𝑥 ≤ 𝑥𝑥𝑏𝑏,�𝑥𝑥𝛽𝛽≤ 𝑦𝑦 ≤ β𝑥𝑥2として
𝑆𝑆1 = � 𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦𝐷𝐷
= � �� 𝑑𝑑𝑦𝑦β𝑥𝑥2
�𝑥𝑥𝛽𝛽
�𝑥𝑥𝑏𝑏
𝑥𝑥𝑎𝑎𝑑𝑑𝑥𝑥 = � [𝑦𝑦]
�𝑥𝑥𝛽𝛽
β𝑥𝑥2𝑥𝑥𝑏𝑏
𝑥𝑥𝑎𝑎𝑑𝑑𝑥𝑥 = � �β𝑥𝑥2 −
𝑥𝑥12
�𝛽𝛽�𝑑𝑑𝑥𝑥
𝑥𝑥𝑏𝑏
𝑥𝑥𝑎𝑎
= �𝛽𝛽3𝑥𝑥3 −
23�𝛽𝛽
𝑥𝑥32�𝑥𝑥𝑎𝑎
𝑥𝑥𝑏𝑏
𝑆𝑆2について、積分範囲 D を、𝑥𝑥𝑏𝑏 ≤ 𝑥𝑥 ≤ 𝑥𝑥𝑐𝑐,�𝑥𝑥𝛽𝛽≤ 𝑦𝑦 ≤ �𝑥𝑥
𝛼𝛼として
y = α𝑥𝑥2 y = β𝑥𝑥2
𝑥𝑥 = α𝑦𝑦2
𝑥𝑥 = 𝛽𝛽𝑦𝑦2
𝑥𝑥
y
A
B
C
D
𝑆𝑆2 = � 𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦𝐷𝐷
= � �� 𝑑𝑑𝑦𝑦�𝑥𝑥𝛼𝛼
�𝑥𝑥𝛽𝛽
�𝑥𝑥𝑐𝑐
𝑥𝑥𝑏𝑏𝑑𝑑𝑥𝑥 = � [𝑦𝑦]
�𝑥𝑥𝛽𝛽
�𝑥𝑥𝛼𝛼𝑥𝑥𝑐𝑐
𝑥𝑥𝑏𝑏𝑑𝑑𝑥𝑥 = � �
1√𝛼𝛼
−1�𝛽𝛽
�𝑥𝑥12𝑑𝑑𝑥𝑥
𝑥𝑥𝑐𝑐
𝑥𝑥𝑏𝑏
= �23�
1√𝛼𝛼
−1�𝛽𝛽
�𝑥𝑥32�𝑥𝑥𝑏𝑏
𝑥𝑥𝑐𝑐
𝑆𝑆3について、積分範囲 D を、𝑥𝑥𝑐𝑐 ≤ 𝑥𝑥 ≤ 𝑥𝑥𝑑𝑑 ,α𝑥𝑥2 ≤ 𝑦𝑦 ≤ �𝑥𝑥𝛼𝛼として
𝑆𝑆3 = � 𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦𝐷𝐷
= � �� 𝑑𝑑𝑦𝑦�𝑥𝑥𝛼𝛼
α𝑥𝑥2�
𝑥𝑥𝑑𝑑
𝑥𝑥𝑐𝑐𝑑𝑑𝑥𝑥 = � [𝑦𝑦]α𝑥𝑥2
�𝑥𝑥𝛼𝛼𝑥𝑥𝑑𝑑
𝑥𝑥𝑐𝑐𝑑𝑑𝑥𝑥 = � �
𝑥𝑥12
√𝛼𝛼− 𝛼𝛼𝑥𝑥2�𝑑𝑑𝑥𝑥
𝑥𝑥𝑑𝑑
𝑥𝑥𝑐𝑐
= �2
3√𝛼𝛼𝑥𝑥32 −
𝛼𝛼3𝑥𝑥3�
𝑥𝑥𝑐𝑐
𝑥𝑥𝑑𝑑
S = 𝑆𝑆1 + 𝑆𝑆2 + 𝑆𝑆3 = �𝛽𝛽3𝑥𝑥3 −
23�𝛽𝛽
𝑥𝑥32�𝑥𝑥𝑎𝑎
𝑥𝑥𝑏𝑏+ �
23�
1√𝛼𝛼
−1�𝛽𝛽
�𝑥𝑥32�𝑥𝑥𝑏𝑏
𝑥𝑥𝑐𝑐+ �
23√𝛼𝛼
𝑥𝑥32 −
𝛼𝛼3𝑥𝑥3�
𝑥𝑥𝑐𝑐
𝑥𝑥𝑑𝑑
これを計算すれば、答えは出るには出ますが、こんな計算誰もやりたくないでしょう。1
回で間違えずに計算するのは至難の業です。こういう時は置換積分を考えます。 y = α𝑥𝑥2 y = β𝑥𝑥2 𝑥𝑥 = 𝛼𝛼y2 𝑥𝑥 = 𝛽𝛽y2
ですから、 𝑥𝑥2 = 𝑢𝑢𝑦𝑦
① y2 = 𝑣𝑣𝑥𝑥
②
つまり、変数と定数を逆転させて、1
𝛽𝛽≤ u ≤ 1
𝛼𝛼、α ≤ 𝑣𝑣 ≤ βの範囲で変動するものとして、
𝑑𝑑𝑢𝑢𝑑𝑑𝑣𝑣の積分として、計算しようということです。②を①に代入して
�y2
𝑣𝑣�2
= 𝑢𝑢𝑦𝑦
y3 = 𝑢𝑢𝑣𝑣2 ①を②に代入して
�𝑥𝑥2
𝑢𝑢�2
= 𝑣𝑣𝑥𝑥
𝑥𝑥3 = 𝑣𝑣𝑢𝑢2 ここから、
y = 𝑢𝑢13𝑣𝑣
23
𝑥𝑥 = 𝑢𝑢23𝑣𝑣
13
𝜕𝜕y𝜕𝜕𝑢𝑢
=13𝑢𝑢−23 𝑣𝑣
23
𝜕𝜕y𝜕𝜕𝑣𝑣
=23𝑢𝑢13𝑣𝑣
−13
𝜕𝜕𝑥𝑥𝜕𝜕𝑢𝑢
=23𝑢𝑢−13 𝑣𝑣
13
𝜕𝜕𝑥𝑥𝜕𝜕𝑣𝑣
=13𝑢𝑢23𝑣𝑣
−23
だから
𝑑𝑑𝑥𝑥 =𝜕𝜕𝑥𝑥𝜕𝜕𝑢𝑢
𝑑𝑑𝑢𝑢 +𝜕𝜕𝑥𝑥𝜕𝜕𝑣𝑣
𝑑𝑑𝑣𝑣
𝑑𝑑𝑦𝑦 =𝜕𝜕y𝜕𝜕𝑢𝑢
𝑑𝑑𝑢𝑢 +𝜕𝜕y𝜕𝜕𝑣𝑣
𝑑𝑑𝑣𝑣
この式を線形代数的な記法で書けば
�𝑑𝑑𝑦𝑦𝑑𝑑𝑦𝑦� =
⎝
⎛
𝜕𝜕𝑥𝑥𝜕𝜕𝑦𝑦
𝜕𝜕𝑥𝑥𝜕𝜕𝑣𝑣
𝜕𝜕y𝜕𝜕𝑢𝑢
𝜕𝜕y𝜕𝜕𝑣𝑣⎠
⎞�𝑑𝑑𝑢𝑢𝜕𝜕𝑣𝑣�
という変換になります。ここでヤコビアン(変換前の平面の図形と返還後の図形の拡大倍
率)を知っていれば、ヤコビアンは
|𝐽𝐽| = ��
𝜕𝜕𝑥𝑥𝜕𝜕𝑦𝑦
𝜕𝜕𝑥𝑥𝜕𝜕𝑣𝑣
𝜕𝜕y𝜕𝜕𝑢𝑢
𝜕𝜕y𝜕𝜕𝑣𝑣
�� =𝜕𝜕𝑥𝑥𝜕𝜕𝑦𝑦
𝜕𝜕y𝜕𝜕𝑣𝑣
−𝜕𝜕𝑥𝑥𝜕𝜕𝑣𝑣
𝜕𝜕y𝜕𝜕𝑢𝑢
=23𝑢𝑢−13 𝑣𝑣
13
23𝑢𝑢13𝑣𝑣
−13 −
13𝑢𝑢23𝑣𝑣
−23
13𝑢𝑢−23 𝑣𝑣
23 =
49−
19
=13
なので、
𝑆𝑆 = � 𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦𝐷𝐷
= � |𝐽𝐽|𝑑𝑑𝑢𝑢𝑑𝑑𝑣𝑣𝐷𝐷′
= |𝐽𝐽|� �� 𝑑𝑑𝑣𝑣𝛽𝛽
𝛼𝛼�𝑑𝑑𝑢𝑢 = |𝐽𝐽|� [𝑣𝑣]𝛼𝛼𝑏𝑏𝑑𝑑𝑢𝑢
1𝛼𝛼
1𝛽𝛽
1𝛼𝛼
1𝛽𝛽
= |𝐽𝐽|(𝛽𝛽 − 𝛼𝛼)� 𝑑𝑑𝑢𝑢 = |𝐽𝐽|(𝛽𝛽 − 𝛼𝛼)[𝑢𝑢]1𝛽𝛽
1𝛼𝛼
1𝛼𝛼
1𝛽𝛽
= |𝐽𝐽|(𝛽𝛽 − 𝛼𝛼) �1𝛼𝛼−
1𝛽𝛽�
=13
(𝛽𝛽 − 𝛼𝛼)2
𝛼𝛼𝛽𝛽
となります。この例では、重積分とヤコビアンの有効性が示されていると思います。
三重積分の典型的な例として、球体の体積を求める例を示します。 図 61 直交座標での球の表現 あまり上手に書けていませんが、黒い色の輪は円ではなくて半径 r の球体を表しています。 この体積を求めます。 球の式は、
x2
+ 𝑦𝑦2 + 𝑧𝑧2 = 𝑟𝑟2 です。 極座標の取り方は、軸の取り方によって、変わります。南極・北極と緯度経度の取り方が
頭の中にあるので、下図のように直交座標の Z 軸を極座標の軸にとるのが普通だと思いま
す。 図 62. 極座標で表した球 しかし、ここでは、直交座標での計算とイメージを合わせるために、あえて、次のように
座標を取ります。説明の都合上、便宜的にそうするというだけです。
𝑥𝑥
y 𝑧𝑧
-r
r
r
-r -r
r
𝑥𝑥
y
𝑧𝑧
θ
φ
図 63. 極座標変換の図 という極座標変換の式は、
𝑥𝑥 = 𝑙𝑙cosθ y = 𝑙𝑙 sin𝜃𝜃 sin𝜑𝜑 z = 𝑙𝑙 sin𝜃𝜃 cos𝜑𝜑
です。 𝜕𝜕𝑥𝑥/𝜕𝜕𝑙𝑙 = cosθ
𝜕𝜕𝑥𝑥/𝜕𝜕𝜃𝜃 = −𝑙𝑙 sin𝜃𝜃 𝜕𝜕𝑥𝑥/𝜕𝜕𝜕𝜕 = 0
𝜕𝜕𝑦𝑦/𝜕𝜕𝑙𝑙 = sin𝜃𝜃 sin𝜑𝜑 𝜕𝜕𝑦𝑦/𝜕𝜕𝜃𝜃 = 𝑙𝑙 cos𝜃𝜃 sin𝜑𝜑 𝜕𝜕𝑦𝑦/𝜕𝜕𝜕𝜕 = 𝑙𝑙 sin𝜃𝜃 cos𝜑𝜑 𝜕𝜕𝑧𝑧/𝜕𝜕𝑙𝑙 = sin𝜃𝜃 cos𝜑𝜑 𝜕𝜕𝑧𝑧/𝜕𝜕𝜃𝜃 = 𝑙𝑙cos𝜃𝜃 cos𝜑𝜑 𝜕𝜕𝑧𝑧/𝜕𝜕𝜑𝜑 = −𝑙𝑙 sin 𝜃𝜃 sin𝜑𝜑
なので、全微分の公式を使って
�𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦𝑑𝑑𝑧𝑧� = �
cosθ −𝑙𝑙 sin 𝜃𝜃 0sin𝜃𝜃 sin𝜑𝜑 𝑙𝑙 cos𝜃𝜃 sin𝜑𝜑 𝑙𝑙 sin𝜃𝜃 cos𝜑𝜑sin𝜃𝜃 cos𝜑𝜑 𝑙𝑙cos𝜃𝜃 cos𝜑𝜑 −𝑙𝑙 sin𝜃𝜃 sin𝜑𝜑
��𝑑𝑑𝑙𝑙𝑑𝑑𝜃𝜃𝑑𝑑𝜑𝜑
�
したがって、ヤコビアンは
[𝐽𝐽] = �cosθ −𝑙𝑙 sin 𝜃𝜃 0
sin 𝜃𝜃 sin𝜑𝜑 𝑙𝑙 cos𝜃𝜃 sin𝜑𝜑 𝑙𝑙 sin 𝜃𝜃 cos𝜑𝜑sin𝜃𝜃 cos𝜑𝜑 𝑙𝑙cos𝜃𝜃 cos𝜑𝜑 −𝑙𝑙 sin𝜃𝜃 sin𝜑𝜑
�
𝑥𝑥
y
𝑧𝑧
l
θ
φ P(𝑟𝑟 cosθ, 𝑟𝑟 sin𝜃𝜃 sin𝜑𝜑, 𝑟𝑟 sin 𝜃𝜃 cos𝜑𝜑)
θ
P’(𝑟𝑟 cosθ, 0, 𝑟𝑟 sin 𝜃𝜃) y’
𝑧𝑧′
H(𝑟𝑟 cosθ, 0, 0) H′(𝑟𝑟 cosθ, 𝑟𝑟 sin𝜃𝜃 sin𝜑𝜑, 0)
= cosθ ∙ 𝑙𝑙 cos𝜃𝜃 sin𝜑𝜑 ∙(−𝑙𝑙 sin𝜃𝜃 sin𝜑𝜑) + (−𝑙𝑙 sin 𝜃𝜃) ∙ 𝑙𝑙 sin 𝜃𝜃 cos𝜑𝜑∙ sin𝜃𝜃 cos𝜑𝜑
− cosθ ∙ 𝑙𝑙 sin𝜃𝜃 cos𝜑𝜑 ∙ 𝑙𝑙 cosθ cos𝜑𝜑 − (−𝑙𝑙 sin𝜃𝜃) ∙ 𝑙𝑙 sin𝜃𝜃 sin𝜑𝜑 ∙ (−𝑙𝑙 sin 𝜃𝜃 sin𝜑𝜑) =− 𝑙𝑙2(cos2 𝜃𝜃 sin2 𝜑𝜑 sin𝜃𝜃 + sin3 𝜃𝜃 cos2 𝜑𝜑 + cos2 𝜃𝜃 cos2 𝜑𝜑 sin𝜃𝜃 + sin3 𝜃𝜃 sin2 𝜑𝜑 )
= −l2 sin 𝜃𝜃 (cos2 𝜃𝜃 sin2 𝜑𝜑 𝜃𝜃 + sin2 𝜃𝜃 cos2 𝜑𝜑 + cos2 𝜃𝜃 cos2 𝜑𝜑 + sin2 𝜃𝜃 sin2 𝜑𝜑 ) = − 𝑙𝑙2 sin 𝜃𝜃 ( cos2 𝜃𝜃 (sin2 𝜑𝜑 + cos2 𝜑𝜑)+sin2 𝜃𝜃(cos2 𝜑𝜑 + sin2 𝜑𝜑))
= −𝑙𝑙2 sin𝜃𝜃 ((sin2 𝜃𝜃 + cos2 𝜃𝜃)(cos2 𝜑𝜑 + sin2 𝜑𝜑)) = −𝑙𝑙2 sin𝜃𝜃
ということを理解したうえで、直交座標、極座標、ヤコビアンを使って解くという3つの
方法で球の体積を求めます。 まず、直交座標からやります。 球体ですから
𝑟𝑟2 = 𝑥𝑥2 + 𝑦𝑦2 + 𝑧𝑧2 という制約で体積を求めます。 直交座標で1平面ずつ考えたいので、図 63 をx軸方向とy軸方向から見ます。
図 64-1. X 軸方向からの図 図 64-2 Y 軸方向からの図 図 64-1 について、この平面上で、
|OP| = �𝑦𝑦2 + 𝑧𝑧2 = �𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2 |PH′| = 𝑧𝑧 = �𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2 − 𝑦𝑦2
破線で描かれた円の面積は
2� 𝑧𝑧𝑑𝑑𝑦𝑦√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
−√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2= 2� �𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2 − 𝑦𝑦2𝑑𝑑𝑦𝑦
√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
−√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
この計算は
y = �𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2 sin𝜑𝜑 という置換で簡略化されて
𝑑𝑑𝑦𝑦𝑑𝑑𝜑𝜑
= −�𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2 cos𝜑𝜑
�𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2 − 𝑦𝑦2 = �(𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2)(1− sin2 𝜑𝜑) = �𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2�cos2 𝜑𝜑 = �𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2 cos𝜑𝜑
2� 𝑧𝑧𝑑𝑑𝑦𝑦√1−𝑥𝑥2
−√1−𝑥𝑥2= � (𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2) cos2 𝜑𝜑𝑑𝑑𝜑𝜑
𝜋𝜋
−𝜋𝜋
y x
z z
φ θ
P P
P’
O O
H
Δ𝑥𝑥
H
この式は次の置換で簡略化されます。 cos 2𝜑𝜑 = 2 cos2 𝜑𝜑 − 1
sin2 𝜑𝜑 =1 + cos 2𝜑𝜑
2
� (𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2)𝜋𝜋
−𝜋𝜋cos2 𝜑𝜑𝑑𝑑𝜑𝜑 = (𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2)� cos2 𝜑𝜑𝑑𝑑𝜑𝜑
𝜋𝜋
−𝜋𝜋
= (𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2)�1 + cos 2𝜑𝜑
2
𝜋𝜋
−𝜋𝜋𝑑𝑑𝜑𝜑 = �
𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2
2��� 𝑑𝑑𝜑𝜑
𝜋𝜋
−𝜋𝜋+ � cos 2𝜑𝜑𝑑𝑑𝜑𝜑
𝜋𝜋
−𝜋𝜋�
�𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2
2��[𝜑𝜑]−𝜋𝜋𝜋𝜋 −
12
[sin 2𝜑𝜑]−𝜋𝜋𝜋𝜋 � = �𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2
2� (2𝜋𝜋 + 0) = 𝜋𝜋(𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2)
これは、図 64-1 の破線で書いた円の面積だから、これに𝑥𝑥の微小な幅であるΔ𝑥𝑥をかけて、
微小な体積として、図 64-2 の x 軸方向に−𝑟𝑟 ≤ 𝑥𝑥 ≤ 𝑟𝑟の範囲で積分したものが、求める体積
です。
� �𝜋𝜋(𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2)�𝑑𝑑𝑥𝑥𝑟𝑟
−𝑟𝑟
これはそのまま積分して
𝜋𝜋 �� (𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2)𝑟𝑟
−𝑟𝑟�𝑑𝑑𝑥𝑥
= 𝜋𝜋 �� 𝑟𝑟2𝑑𝑑𝑥𝑥 − � 𝑥𝑥2𝑟𝑟
−𝑟𝑟𝑑𝑑𝑥𝑥
𝑟𝑟
−𝑟𝑟�
= 𝜋𝜋 �𝑟𝑟2[𝑥𝑥]−𝑟𝑟𝑟𝑟 − �𝑥𝑥3
3�−𝑟𝑟
𝑟𝑟
�
= 𝜋𝜋 �2𝑟𝑟3 −13�𝑟𝑟3 − (−𝑟𝑟3)��
=4𝜋𝜋𝑟𝑟3
3
極座標でやると,半径を𝑙𝑙として、図 64-1 の破線の円の半径は𝑙𝑙 sin𝜃𝜃で、直交するφの微小な
変化量Δφに対する変化量は𝑙𝑙 sin𝜃𝜃Δφ、一方これと直交するの図 64-2 の実線の円の半径は、
𝑙𝑙で𝜃𝜃の微小な変化Δθに対する,円弧の長さの変化量は𝑙𝑙Δθ、これらを掛け合わせた
𝑙𝑙2 sin𝜃𝜃ΔθΔφが円周上の面積の微小な変化です。この平面に直交、半径の微小な変化Δ𝑙𝑙をか
けたものが、体積の変化だから、これらを、積分範囲で積分すれば、体積になります。積
分範囲は、φについては一周分だから、0 ≤ φ ≤ 2πで、θは半周分だから、 −π ≤ θ ≤ 0, 𝑙𝑙は0 ≤ 𝑙𝑙 ≤ 𝑟𝑟です。 これを重積分で書けば、
� � � 𝑙𝑙2 sin 𝜃𝜃 𝑑𝑑𝑙𝑙𝑑𝑑𝜃𝜃𝑑𝑑𝜑𝜑2𝜋𝜋
0
0
−𝜋𝜋
𝑟𝑟
0
= � � 2𝜋𝜋𝑙𝑙2 sin𝜃𝜃 𝑑𝑑𝑙𝑙𝑑𝑑𝜃𝜃0
−𝜋𝜋
𝑟𝑟
0
= � 2𝜋𝜋𝑙𝑙2 �� sin 𝜃𝜃 𝑑𝑑𝜃𝜃0
−𝜋𝜋�
𝑟𝑟
0𝑑𝑑𝑙𝑙
= � 2𝜋𝜋𝑙𝑙2[cos𝜃𝜃]−𝜋𝜋0𝑟𝑟
0𝑑𝑑𝑙𝑙
= 4𝜋𝜋� 𝑙𝑙2𝑟𝑟
0𝑑𝑑𝑙𝑙
= 4π �𝑙𝑙3
3�0
𝑟𝑟
=4π𝑟𝑟3
3
となります。 ヤコビアンを使って機械的にやろうとすれば、
2� 𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦𝑑𝑑𝑧𝑧 = � 2[𝐽𝐽]𝑅𝑅
𝑑𝑑𝑙𝑙𝑑𝑑𝜃𝜃𝑑𝑑𝜑𝜑𝐷𝐷
D の範囲は−r ≤ 𝑥𝑥 ≤ 𝑟𝑟,−√1− 𝑥𝑥2 ≤ 𝑦𝑦 ≤ √1− 𝑥𝑥2, 0 ≤ z ≤ �1 − 𝑥𝑥2 − 𝑦𝑦2 R の範囲は 0≤ 𝑙𝑙 ≤ 𝑟𝑟,0 ≤ 𝜃𝜃 ≤ π, 0 ≤ φ ≤ π
= 2� −𝑙𝑙2 sin𝜃𝜃𝑅𝑅
𝑑𝑑𝑙𝑙𝑑𝑑𝜃𝜃𝑑𝑑𝜑𝜑
= −2�� � �𝑙𝑙2 sin 𝜃𝜃� 𝑑𝑑𝜑𝜑𝜋𝜋
0�
𝜋𝜋
0
𝑟𝑟
0𝑑𝑑𝜃𝜃�𝑑𝑑𝑙𝑙
= −2� �� 𝜋𝜋𝑙𝑙2 sin𝜃𝜃 𝑑𝑑𝜃𝜃𝜋𝜋
0�
𝑟𝑟
0𝑑𝑑𝑙𝑙
= −2� (𝜋𝜋𝑙𝑙2[cos𝜃𝜃]0𝜋𝜋)𝑟𝑟
0𝑑𝑑𝑙𝑙
= 4π� 𝑙𝑙2𝑟𝑟
0𝑑𝑑𝑙𝑙
=4π𝑟𝑟3
3
となります。ヤコビアンの良いところは、複雑なものについても頭を悩ます必要がないこ
とです。 ここで、球体の表面積の求め方について、体積の場合と同じく直交座標による重積分、極
座標を用いた重積分、ヤコビアンによる計算の計算を比較しておきましょう。これは、全
微分に対する感覚的な理解を助けると思います。まず、座標から直交座標の変換を確認し
ておきましょう。球の体積のところでやった極座標系をそのまま使います。 𝑥𝑥 = 𝑙𝑙cosθ
y = 𝑙𝑙 sin𝜃𝜃 sin𝜑𝜑 z = 𝑙𝑙 sin𝜃𝜃 cos𝜑𝜑 [𝐽𝐽] = −𝑙𝑙2 sin 𝜃𝜃
表面積の場合、 𝑙𝑙 = 𝑟𝑟 (一定)
𝑥𝑥2 + 𝑦𝑦2 + 𝑧𝑧2 = 𝑟𝑟2 です。 直交座標で球体の表面積を求めるのは相当厄介です。頭に描いてもらいたいのはリンゴの
皮むきです。一回転剥いたときの、リンゴの皮の長さを考えます。それから、皮の幅をか
けてい回転剥いた時の皮の面積を考えて、最後にそれを全部たしあわせます。 極座標と直交座標の関係を示した図を、x 軸の方向から見ると 図 65 X 軸方向から見たベクトルと接線 ⊿POHと⊿BPAについて
⊿POH∽⊿BPA |PH||OP| =
|PA||PB|
だから
|PB| =|PA||OP|
|PH| =Δy�𝑦𝑦2 + 𝑧𝑧2
𝑧𝑧=√𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2
𝑧𝑧Δy
これを y 方向に積分しますが、積分範囲は−√𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2 ≤y≤ √𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2です
� −√𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2
𝑧𝑧𝑑𝑑𝑦𝑦
√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
−√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
マイナスをつけたのは、PB を傾きと考えた場合、負の値になるからです。 この定積分を解くことになりますが
𝑧𝑧
𝑦𝑦
P
O H
P’
H’
B A
φ
𝑦𝑦 Δ𝑦𝑦
𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2 = 𝑦𝑦2 + 𝑧𝑧2 ですから
y= √𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2 cos𝜑𝜑 z= √𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2 sin𝜑𝜑
−π ≤ θ ≤ π と置きます。
𝑑𝑑𝑦𝑦𝑑𝑑𝜑𝜑
= −�𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2 sin𝜑𝜑 = −𝑧𝑧
𝑑𝑑𝑦𝑦𝑧𝑧
= −𝑑𝑑𝜑𝜑
� −√𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2
𝑧𝑧𝑑𝑑𝑦𝑦 =
√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
−√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2�𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2 � 𝑑𝑑𝜑𝜑
𝜋𝜋
−𝜋𝜋
�𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2[𝜑𝜑]−𝜋𝜋𝜋𝜋 = 2𝜋𝜋�𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2 この円周の長さに幅をかけるのですが、ここでも、下図のような関係になっています。 図 66. リンゴの皮むき方式による皮の幅
|PH||OP| =
|P′H′||PP′|
より 𝑧𝑧𝑟𝑟
=Δ𝑥𝑥
|PP′|
|PP′| =Δ𝑥𝑥𝑧𝑧𝑟𝑟
これが、「リンゴの皮むき」のたとえにすれば、皮の幅に相当するものですから。それを円
周の長さとかけた面積は
θ
θ 𝑟𝑟
𝑥𝑥 Δ𝑥𝑥
𝑧𝑧
P
O H
H′ P′
θ
拡大
2𝜋𝜋�𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2Δ𝑥𝑥𝑧𝑧𝑟𝑟 =∙ 2𝜋𝜋�𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2
𝑙𝑙𝑧𝑧Δ𝑥𝑥
これを−𝑟𝑟 ≤ 𝑥𝑥 ≤ 𝑟𝑟の範囲で xx 軸に沿って積分したものが球体の表面積です。
� 2𝜋𝜋�𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2𝑙𝑙𝑧𝑧
𝑟𝑟
−𝑟𝑟𝑑𝑑𝑥𝑥
再び、三角関数を使った置換積分で計算します 𝑥𝑥 = 𝑟𝑟 cos𝜃𝜃 𝑧𝑧 = 𝑟𝑟 sin𝜃𝜃
�𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2 = 𝑟𝑟�1− cos2 𝜃𝜃 = 𝑟𝑟�sin2 𝜃𝜃 = 𝑟𝑟 sin 𝜃𝜃 だから、変換するまでもなく、
� 2𝜋𝜋�𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2𝑟𝑟𝑧𝑧
𝑟𝑟
−𝑟𝑟𝑑𝑑𝑥𝑥 = 2𝜋𝜋𝑟𝑟� 𝑑𝑑𝑥𝑥
𝑟𝑟
−𝑟𝑟= 2𝜋𝜋𝑟𝑟[𝑥𝑥]−𝑟𝑟𝑟𝑟 = 4𝜋𝜋𝑟𝑟2
となります。 この計算を重積分で書くと
= � ��𝑟𝑟√𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2
𝑧𝑧
√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
−√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2𝑑𝑑𝑦𝑦�
𝑟𝑟
−𝑟𝑟𝑑𝑑𝑥𝑥
= −� � 𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
−√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
𝑟𝑟
−𝑟𝑟
ということです。 ということを頭に入れておいて、極座標での計算を考えます。 極座標でやればもっと簡単です、直交座標の場合と同様に、図 64-1 の x-z 平面で、破線の
線の円の半径は rsin 𝜃𝜃, したがって、φを回転させたときにの、微小な回転による増加量は、
𝑟𝑟 sin𝜃𝜃 Δφ, 一方、図 64-2 に示した y-z 平面では、θをの微小な変化Δθに対する円弧の長さの
変化は、で、これらは直交しているので、これらを同じに変化させた場合の、微小な変化
量は、𝑟𝑟2sin𝜃𝜃 ΔφΔθである。これを、積分範囲を決めて積分すると。
� � 𝑟𝑟2 sin 𝜃𝜃𝑑𝑑𝜃𝜃𝑑𝑑𝜑𝜑2𝜋𝜋
0
0
−𝜋𝜋= 4π𝑟𝑟2
直交座標での計算と合わせるために、積分範囲を、−π ≤ 𝜑𝜑 ≤ 𝜋𝜋と移動しておきます。 極座標変換のヤコビアンを使って、この関係を書いてみると、両者の関係が良くわかりま
す。 今のところの結果は、以下の式のようになっています。
� � 𝑟𝑟2 sin𝜃𝜃𝑑𝑑𝜃𝜃𝑑𝑑𝜑𝜑𝜋𝜋
−𝜋𝜋
0
−𝜋𝜋= −� � 𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦
√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
−√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
𝑟𝑟
−𝑟𝑟
これを3重積分の形で無理無理書こうという話です。無理無理やるのだからかなり怪しげ
な議論です。加える軸は、左辺についてはベクトルの長さ𝑙𝑙で、右辺についてはxy平面に
直交するz軸です。工夫しなければならないところは2つあって、1つ目は、左辺の𝑟𝑟2を何
かの積分の結果として表さなければならないということです。これは比較的簡単で、
(𝑥𝑥2)′ = 2𝑥𝑥だから、∫ 2𝑙𝑙𝑑𝑑𝑙𝑙𝑟𝑟0 を加えれば良いことになります。右辺は∫ 𝑑𝑑𝑧𝑧𝛽𝛽
𝛼𝛼 を加えればよいので
すが、積分範囲α、βが問題です。いろいろな屁理屈はありそうですが、とりあえず、や
ってみるという感じで、単位量=1の厚みの体積は、底面の面積と数字的に同じになるか
らという理由で、∫ 𝑑𝑑𝑧𝑧10 を書き加えます。
� � � 𝑙𝑙sin𝜃𝜃𝑑𝑑𝑙𝑙𝑑𝑑𝜃𝜃𝑑𝑑𝜑𝜑𝜋𝜋
−𝜋𝜋
0
−𝜋𝜋
𝑟𝑟
0= � � � −𝑑𝑑𝑧𝑧𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦
√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
−√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
𝑟𝑟
−𝑟𝑟
1
0
右辺の逐次積分の順番を入れ替えておきます。理由はありません。趣味の問題です。
� � � 𝑙𝑙sin𝜃𝜃𝑑𝑑𝑙𝑙𝑑𝑑𝜃𝜃𝑑𝑑𝜑𝜑𝜋𝜋
−𝜋𝜋
0
−𝜋𝜋
𝑟𝑟
0= � � � −𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦𝑑𝑑𝑧𝑧
1
0
√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
−√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
𝑟𝑟
−𝑟𝑟
左右を入れ替えて、符号も入れ替えます。
� � � 𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦𝑑𝑑𝑧𝑧1
0
√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
−√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
𝑟𝑟
−𝑟𝑟= � � � −𝑙𝑙sin𝜃𝜃𝑑𝑑𝑙𝑙𝑑𝑑𝜃𝜃𝑑𝑑𝜑𝜑
𝜋𝜋
−𝜋𝜋
0
−𝜋𝜋
𝑟𝑟
0
ここでヤコビアンを使った計算を思い出します。
� � � 𝑑𝑑(𝑥𝑥,𝑦𝑦, 𝑧𝑧)𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦𝑑𝑑𝑧𝑧�𝑟𝑟2−𝑥𝑥2−𝑦𝑦2
−�𝑟𝑟2−𝑥𝑥2−𝑦𝑦2
√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
−√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
𝑟𝑟
−𝑟𝑟
= � � � 𝑑𝑑�𝜂𝜂1(𝑙𝑙,𝜃𝜃,𝜑𝜑), 𝜂𝜂2(𝑙𝑙,𝜃𝜃,𝜑𝜑), 𝜂𝜂3(𝑙𝑙, 𝜃𝜃,𝜑𝜑)��𝐽𝐽𝜂𝜂� 𝑑𝑑𝑙𝑙𝑑𝑑𝜃𝜃𝑑𝑑𝜑𝜑𝜋𝜋
−𝜋𝜋
0
−𝜋𝜋
𝑟𝑟
0
𝑥𝑥 = 𝜂𝜂1(𝑙𝑙, 𝜃𝜃,𝜑𝜑) = 𝑙𝑙cosθ 𝑦𝑦 = 𝜂𝜂2(𝑙𝑙, 𝜃𝜃,𝜑𝜑) = 𝑙𝑙 sin𝜃𝜃 sin𝜑𝜑 𝑧𝑧 = 𝜂𝜂3(𝑙𝑙, 𝜃𝜃,𝜑𝜑) = 𝑙𝑙 sin 𝜃𝜃 cos𝜑𝜑
(知っているギリシャ文字の数が限界に近づいていますが、なんとか頑張ります。) �𝐽𝐽𝜂𝜂� = −𝑙𝑙2 sin𝜃𝜃
何がしたいのかと言うと
� � � 𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦𝑑𝑑𝑧𝑧1
0
√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
−√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
𝑟𝑟
−𝑟𝑟= � � � −𝑙𝑙sin𝜃𝜃𝑑𝑑𝑙𝑙𝑑𝑑𝜃𝜃𝑑𝑑𝜑𝜑
𝜋𝜋
−𝜋𝜋
0
−𝜋𝜋
𝑟𝑟
0
これを
� � � 𝑑𝑑(𝑥𝑥,𝑦𝑦, 𝑧𝑧)𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦𝑑𝑑𝑧𝑧�𝑟𝑟2−𝑥𝑥2−𝑦𝑦2
−�𝑟𝑟2−𝑥𝑥2−𝑦𝑦2
√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
−√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
𝑟𝑟
−𝑟𝑟
= � � � 𝑑𝑑�𝜂𝜂1(𝑙𝑙,𝜃𝜃,𝜑𝜑), 𝜂𝜂2(𝑙𝑙,𝜃𝜃,𝜑𝜑), 𝜂𝜂3(𝑙𝑙, 𝜃𝜃,𝜑𝜑)��𝐽𝐽𝜂𝜂� 𝑑𝑑𝑙𝑙𝑑𝑑𝜃𝜃𝑑𝑑𝜑𝜑𝜋𝜋
−𝜋𝜋
0
−𝜋𝜋
𝑟𝑟
0
このように書きたいのです。 𝑑𝑑(𝑥𝑥, 𝑦𝑦, 𝑧𝑧)と𝑑𝑑�𝜂𝜂1(𝑙𝑙,𝜃𝜃,𝜑𝜑), 𝜂𝜂2(𝑙𝑙, 𝜃𝜃,𝜑𝜑), 𝜂𝜂3(𝑙𝑙, 𝜃𝜃,𝜑𝜑)�をどのようにすれば良いかということなので
すが 𝑑𝑑�𝜂𝜂1(𝑙𝑙, 𝜃𝜃,𝜑𝜑),𝜂𝜂2(𝑙𝑙,𝜃𝜃,𝜑𝜑),𝜂𝜂3(𝑙𝑙,𝜃𝜃,𝜑𝜑)��𝐽𝐽𝜂𝜂�=−𝑙𝑙sin𝜃𝜃
で
�𝐽𝐽𝜂𝜂� = −𝑙𝑙2 sin𝜃𝜃 だから、
𝑑𝑑�𝜂𝜂1(𝑙𝑙,𝜃𝜃,𝜑𝜑),𝜂𝜂2(𝑙𝑙,𝜃𝜃,𝜑𝜑), 𝜂𝜂3(𝑙𝑙, 𝜃𝜃,𝜑𝜑)� =1𝑙𝑙
なので、
𝑑𝑑(𝑥𝑥, 𝑦𝑦, 𝑧𝑧) =1
�𝑥𝑥2 + 𝑦𝑦2 + 𝑧𝑧2= 𝑟𝑟
つまり、
� � �1𝑟𝑟𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦𝑑𝑑𝑧𝑧
�𝑟𝑟2−𝑥𝑥2−𝑦𝑦2
−�𝑟𝑟2−𝑥𝑥2−𝑦𝑦2
√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
−√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
𝑟𝑟
−𝑟𝑟= � � �
1𝑙𝑙�𝐽𝐽𝜂𝜂� 𝑑𝑑𝑙𝑙𝑑𝑑𝜃𝜃𝑑𝑑𝜑𝜑
𝜋𝜋
−𝜋𝜋
0
−𝜋𝜋
𝑟𝑟
0
多分これで正解だと思いますが、右辺はそのまま変形しただけだからそれで良いとして、
左辺がどうなるのか、計算しておきたいところです。最後の
�1𝑟𝑟𝑑𝑑𝑧𝑧
�𝑟𝑟2−𝑥𝑥2−𝑦𝑦2
−�𝑟𝑟2−𝑥𝑥2−𝑦𝑦2
から手を付けます。 z = 𝑟𝑟 sin𝜃𝜃 cos𝜑𝜑
𝑑𝑑𝑧𝑧𝑑𝑑𝜑𝜑
= −𝑟𝑟 sin 𝜃𝜃 sin𝜑𝜑
𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2 − 𝑦𝑦2 = 𝑧𝑧2 ∵ �𝑟𝑟2 − 𝑥𝑥2 − 𝑦𝑦2 = 𝑧𝑧 = 𝑟𝑟 sin𝜃𝜃
�2𝑟𝑟𝑑𝑑𝑧𝑧 =
�𝑟𝑟2−𝑥𝑥2−𝑦𝑦2
−�𝑟𝑟2−𝑥𝑥2−𝑦𝑦2�
1𝑟𝑟
(−𝑟𝑟 sin 𝜃𝜃 sin𝜑𝜑)𝑑𝑑𝜑𝜑𝜋𝜋
−𝜋𝜋= − sin𝜃𝜃 [cos𝜑𝜑]−𝜋𝜋𝜋𝜋 = −2 sin𝜃𝜃
次に2番目の積分です。積分範囲に𝑥𝑥 しか含まれていないから、𝑥𝑥で積分する方が楽ですね。
� �1𝑟𝑟𝑑𝑑x𝑑𝑑𝑧𝑧
�𝑟𝑟2−𝑥𝑥2−𝑦𝑦2
−�𝑟𝑟2−𝑥𝑥2−𝑦𝑦2
√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
−√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2= � −2
√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
−√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2sin𝜃𝜃𝑑𝑑𝑥𝑥 = 2𝑟𝑟� sin2 𝜃𝜃 𝑑𝑑𝜃𝜃
𝜋𝜋
−π
2𝑟𝑟�1 − cos 2𝜃𝜃
2𝑑𝑑𝜃𝜃
𝜋𝜋
−√𝜋𝜋= 𝑟𝑟� 𝑑𝑑𝜃𝜃 −� cos 2𝜃𝜃 𝑑𝑑𝜃𝜃
𝜋𝜋
−√𝜋𝜋
𝜋𝜋
−√𝜋𝜋= 𝑟𝑟[𝜃𝜃]−𝜋𝜋𝜋𝜋 + 𝑟𝑟
12
[sin 2𝜃𝜃]−𝜋𝜋𝜋𝜋
= 2π𝑟𝑟 + 0 = 2πr ∵ 𝑥𝑥 = 𝑟𝑟cosθ
𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝜃𝜃
= −𝑟𝑟 sin𝜃𝜃
sin2 𝜃𝜃 =1 − cos 2𝜃𝜃
2
最後に
� 2𝜋𝜋𝑟𝑟𝑑𝑑𝑦𝑦𝑟𝑟
−𝑟𝑟= 2𝜋𝜋𝑟𝑟[𝑦𝑦]−𝑟𝑟𝑟𝑟 = 4𝜋𝜋𝑟𝑟2
で確かに正しいことが確認できました。難しい計算ではないのですが、途中錯覚を起こし
やすく、途中で結構間違えて混乱します。やってみる場合は、落ち着いてやりましょう。 なんで、こんな計算をわざわざしたのかというと
� � �1𝑟𝑟𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦𝑑𝑑𝑧𝑧
�𝑟𝑟2−𝑥𝑥2−𝑦𝑦2
−�𝑟𝑟2−𝑥𝑥2−𝑦𝑦2
√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
−√𝑟𝑟2−𝑥𝑥2
𝑟𝑟
−𝑟𝑟= � � �
1𝑙𝑙�𝐽𝐽𝜂𝜂� 𝑑𝑑𝑙𝑙𝑑𝑑𝜃𝜃𝑑𝑑𝜑𝜑
𝜋𝜋
−𝜋𝜋
0
−𝜋𝜋
𝑟𝑟
0
という、変換を具体的な像として頭の中に描きたかったのです。 まず右辺についてみます。�𝐽𝐽𝜂𝜂�という倍率を定数と考えてて取り外すと、
𝑑𝑑𝑙𝑙𝑑𝑑𝜃𝜃𝑑𝑑𝜑𝜑𝑙𝑙
ですが、これは、𝑑𝑑𝑙𝑙、𝑑𝑑𝜃𝜃、𝑑𝑑𝜑𝜑という直交した3つの長さをかけあわせた、直方体の体積の
ようではありませんか。この微小な直方体を、𝑙𝑙方向に、𝑙𝑙になるまでたしあわせて、𝑙𝑙で割
ったら、𝑑𝑑𝜃𝜃𝑑𝑑𝜑𝜑で表される、微小な長方形の面積ですね。 図に書くと図 67-2のようになります。 図 67-1 直交座標での表面関. 図 67-2.極座標での表面関
つまり、図 67-1 の直交極座標系で赤い楕円(実際には立体的に湾曲した面)を極座標系の
長方形に変換しているのです。面積や体積の計算をするときには、直交している方が計算
しやすいので、空間を極座標系にとって、直交系の湾曲した立体を、直交した立体に変換
しているのです。地球上で暮らしている時に、我々は鉛直に建てた柱は並行していると感
じていますが、これは近似的にそうなのであって、実は図 67-1 のように並行していません。
また、1平方メートルの床を作ったら、それに合わせて天井も1平方メートルの天井を作
ります。本当は天井の方が少し大きいはずですね。私たちの頭も、図 67-1 から図 67-2 の
変換を行っているのです。 最後に極座標と直交座標を使って全微分について考えます。重積分の場合とは違って、下
の図のように座標系を取って、極座標変換します。その方が、微分における傾きが想像し
やすいからです。
𝑑𝑑𝜑𝜑
𝑑𝑑𝜃𝜃
𝑑𝑑𝑙𝑙
𝑙𝑙
𝑧𝑧
𝑥𝑥
𝑦𝑦 𝑟𝑟 変換
𝑑𝑑𝜃𝜃
図 68. 球面の傾斜と全微分 この変換は
𝑥𝑥 = 𝑙𝑙 sin𝜃𝜃 cos𝜑𝜑 𝑦𝑦 = 𝑙𝑙 sin 𝜃𝜃 sin𝜑𝜑
𝑧𝑧 = 𝑙𝑙cosθ
�𝑑𝑑𝑥𝑥𝑑𝑑𝑦𝑦𝑑𝑑𝑧𝑧� = �
sin 𝜃𝜃 cos𝜑𝜑 𝑙𝑙 cosθcos𝜑𝜑 −𝑙𝑙 sin𝜃𝜃 sin𝜑𝜑sin 𝜃𝜃 sin𝜑𝜑 𝑙𝑙cosθ sin𝜑𝜑 𝑙𝑙 sin𝜃𝜃 cos𝜑𝜑
cosθ −𝑙𝑙 sin 𝜃𝜃 0��
𝑑𝑑𝑙𝑙𝑑𝑑𝜃𝜃𝑑𝑑𝜑𝜑
�
ですが、 𝑥𝑥2 + 𝑦𝑦2 + 𝑧𝑧2 = 𝑟𝑟2
から、 𝜕𝜕𝑥𝑥𝜕𝜕𝑦𝑦
= −𝑦𝑦𝑥𝑥
𝜕𝜕𝑦𝑦𝜕𝜕𝑧𝑧
= −𝑧𝑧𝑦𝑦
𝜕𝜕𝑧𝑧𝜕𝜕𝑥𝑥
= −𝑥𝑥𝑧𝑧
∴ 𝑑𝑑𝑧𝑧 =𝜕𝜕𝑧𝑧𝜕𝜕𝑥𝑥
𝑑𝑑𝑥𝑥 +𝜕𝜕𝑧𝑧𝜕𝜕𝑦𝑦
𝑑𝑑𝑦𝑦 = −�𝑥𝑥𝑑𝑑𝑥𝑥𝑧𝑧
+𝑦𝑦𝑑𝑑𝑦𝑦𝑧𝑧� = −= −
𝑙𝑙 sin𝜃𝜃 cos𝜑𝜑𝑑𝑑𝑥𝑥 + 𝑙𝑙 sin 𝜃𝜃 sin𝜑𝜑𝑑𝑑𝑦𝑦𝑙𝑙cosθ
= −tan𝜃𝜃 (cos𝜑𝜑𝑑𝑑𝑥𝑥 + sin𝜑𝜑𝑑𝑑𝑦𝑦) ここで、ちょっとしたテクニックを使います。
𝑥𝑥
y
𝑧𝑧
θ
φ
= −tan𝜃𝜃 �𝑑𝑑𝑥𝑥2 + 𝑑𝑑𝑦𝑦2 �cos𝜑𝜑𝑑𝑑𝑥𝑥
�𝑑𝑑𝑥𝑥2 + 𝑑𝑑𝑦𝑦2+ sin𝜑𝜑
𝑑𝑑𝑦𝑦�𝑑𝑑𝑥𝑥2 + 𝑑𝑑𝑦𝑦2
�
𝑑𝑑𝑥𝑥�𝑑𝑑𝑥𝑥2+𝑑𝑑𝑦𝑦2
と𝑑𝑑𝑦𝑦
�𝑑𝑑𝑥𝑥2+𝑑𝑑𝑦𝑦2は下図の直角三角形の一つの角ωに関するcos𝜔𝜔とsin𝜔𝜔ですね。
図 69.直交する微小な変化と中心角度の関係 これを使えば、
𝑑𝑑𝑧𝑧 = −tan𝜃𝜃 �𝑑𝑑𝑥𝑥2 + 𝑑𝑑𝑦𝑦2(cos𝜑𝜑 cos𝜔𝜔 + sin𝜑𝜑 sin𝜔𝜔) = −tan𝜃𝜃 �𝑑𝑑𝑥𝑥2 + 𝑑𝑑𝑦𝑦2 cos(𝜑𝜑 − 𝜔𝜔)
となります。 つまり、
𝜑𝜑 = 𝜔𝜔の時、𝑑𝑑𝑧𝑧は最小値−tan𝜃𝜃�𝑑𝑑𝑥𝑥2 + 𝑑𝑑𝑦𝑦2 𝜑𝜑 = 𝜔𝜔 + 𝜋𝜋
2の時、𝑑𝑑𝑧𝑧 = 0
𝜑𝜑 = 𝜔𝜔 + 𝜋𝜋の時 𝑑𝑑𝑧𝑧は最大値tan𝜃𝜃 �𝑑𝑑𝑥𝑥2 + 𝑑𝑑𝑦𝑦2 になります。 球に上から水を落とすと、上からみて放射状に水が落ちていくのはそのためだと納得でき
ます。 球面上で、𝑥𝑥方向にcos𝜔𝜔移動し、𝑦𝑦方向にsin𝜔𝜔移動すれば、球の中心において、x 軸に対し
て𝜔𝜔の角度の方向に、最大斜度を降下したことになり、反対に、球面上で最大斜度の方向に
tan𝜃𝜃降下すれば、𝑥𝑥方向にcos𝜔𝜔移動し、𝑦𝑦方向にsin𝜔𝜔移動することになるということです。
図 64-1 (再掲) 図 64-2(再掲) 図 64 を見れば、そのことは自明なのですが、全微分の公式
ω
�𝑑𝑑𝑥𝑥2 + 𝑑𝑑𝑦𝑦2
𝑑𝑑𝑥𝑥
dy
y x
z z
φ θ
P P
P’
O O
H
Δ𝑥𝑥
H
�
𝑑𝑑𝑥𝑥1𝑑𝑑𝑥𝑥2⋮
𝑑𝑑𝑥𝑥𝑛𝑛
� =
⎝
⎜⎜⎜⎜⎛
𝜕𝜕𝑥𝑥1𝜕𝜕𝑢𝑢1
𝜕𝜕𝑥𝑥1𝜕𝜕𝑢𝑢2
𝜕𝜕𝑥𝑥2𝜕𝜕𝑢𝑢1
𝜕𝜕𝑥𝑥2𝜕𝜕𝑢𝑢2
⋯𝜕𝜕𝑥𝑥1𝜕𝜕𝑢𝑢𝑛𝑛
⋯𝜕𝜕𝑥𝑥2𝜕𝜕𝑢𝑢𝑛𝑛
⋮ ⋮𝜕𝜕𝑥𝑥𝑛𝑛𝜕𝜕𝑢𝑢1
𝜕𝜕𝑥𝑥𝑛𝑛𝜕𝜕𝑢𝑢2
⋱ ⋮
⋯𝜕𝜕𝑥𝑥𝑛𝑛𝜕𝜕𝑢𝑢𝑛𝑛⎠
⎟⎟⎟⎟⎞
�
𝑑𝑑𝑢𝑢1𝑑𝑑𝑢𝑢2⋮
𝑑𝑑𝑢𝑢𝑛𝑛
�
この例では、
𝑑𝑑𝑧𝑧 =𝜕𝜕𝑧𝑧𝜕𝜕𝑥𝑥
𝑑𝑑𝑥𝑥 +𝜕𝜕𝑧𝑧𝜕𝜕𝑦𝑦
𝑦𝑦
を、極座標変換を媒介して、実感してもらいたかったのです。感覚的に分かったでしょう
か。