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ALS医療相談室は湯浅 龍彦センター長、大宮貴 明・理学療法士、3人の家 族相談員、臨床心理士で 運営。毎週火曜日の午後 に予約制で行っており、1 組の患者さん・家族に1時 間を確保、じっくりと話を聴きアドバイスを送る。 湯浅センター長は医療者と家族相談員が協力して取り組むこ との意義を強調する。 「患者さんにはALSを認めたくない気持ちもあります。その気 持ちを尊重しながらも、一方で現実を受け入れ適切に対応し ていただく必要があります。そうした時に、家族をALSで亡く す悲しみを乗り越えた家族相談員がいることで、より深い共感 と理解のもと信頼関係を築きながら、私たち医療者が専門的 な視点で支援していくことができます」 家族相談員は川上純子相談員、吉本佳預子相談員、市川千 津子相談員。3人は夫をALSで亡くした経験をもつ。川 上相談員は「病態が進行すると何が起きるか、患者さ んや家族はとても不安に感じています。患者家族とし て経験してきたことを役立てたい」と話す。 吉本相談員は「これからも医療専門職の方々とともに、 患者さんと家族のため相談に取り組んでいきたい」と 意気込む。市川相談員は自身、かつて相談室を利用し たひとり。「相談室があったことで、当時、人工呼吸器 のことなどを知ることができました。自分の経験を生か し、できるだけお役に立ちたい」と語る。 ある火曜日の午後、女性のALS患者さんが家族(夫) とともに同室を訪れた。発症から数年が経過している ものの、進行はゆっくりで発語など問題なくできる。身 の回りの世話は夫が担っていることから、患者さんと 夫は、夫が病気になった場合のことを挙げ、そろって 不安の言葉を口にした。 湯浅センター長は「在宅サービスの仕組みのなかで 生活を組み立てることを考えるのも重要です」と、訪問 介護やショートステイを徐々に利用してみることを提案。 川上相談員はこの提案をふまえ「はじめは家に外から 人を入れるのは嫌かも知れませんが、少しずつ『この 人ならいいかな』と思える人を見つけてみてはどうでしょうか」 と声をかけた。 このほか相談員たちは、患者さんの体調変化や苦労に深い 共感を示したり、今後の生活を後押しする言葉をかけたりした。 病態の進行を見据え、後手にならないよう適切に手を打つため、 医療者からは時に厳しい意見も出るが、それも患者さんと家族 を思えばこそのこと。今後も医療者と家族相談員が手を携え、 ALS患者さんと家族を支援していく。 ALS医療相談室が奮闘 28 10 28 調鎌ケ谷総合病院 ALS医療相談室の様子。右から1人目が湯浅セ ンター長 「新生児の避難は別個の マニュアルが必要です」 と大平師長 キャリーバッグのひもを首にかけ、スタッフ 1人で最大3人の新生児を搬送可能 挨拶で今年の抱負を語 る吉岡会長 鎌ケ谷総合病院(千葉県)千葉神経難病医療センタ ーが開設するALS医療相談室。療養生活を送るう えでの環境整備や病気への向き合い方などについて、 ALS (筋萎縮性側索硬化症)を発症した患者さん・家 族の幅広い相談に応じている。他の医療機関に通院 中の患者さんが紹介を受けて来院するケースが多い。 茅ヶ崎徳洲会病院(神奈川県)は「地域連携懇親会」を開催、茅 ヶ崎市内の開業医23人が参加した。 冒頭、野口有生院長が「私たちは少数でも『いつでも、どこでも、 誰でもが最善の医療を受けられる社会』を目指す徳洲会魂を忘れ ません。どうか、ご協力をお願いいたします」と挨拶。 続いて一般社団法人徳洲会の福島安義・副理事長が「まだま だ不十分ですが、地域の方々に大いに利用していただける病院 にしたい。地域に還元できる病院にしたいと願っています」と決 意を表明。 茅ヶ崎病院OBでもある原クリニックの原芳邦院長は「茅ヶ崎病 院には、融通性のある小回りの利く病院になってほしい」と要望 した。 この後、同院在宅診療部の田中つや子・統括部長が「茅ヶ崎 徳洲会病院在宅診療のいま」と題し講演。団塊の世代が75歳以 上になる2025年には、後期高齢者が全人口の30%を超える「2025 年問題」を見据え、在宅診療を計画的に実施していると説明した。 野口院長は、同院の各診療科 とスタッフを紹介。質疑応答では 内山クリニックの内山富士雄院長 が「茅ヶ崎病院はスペシャリストよ りジェネラリスト、 ボーダーライ ンの患者さんの受け入れ、茅ケ 崎駅南側の救急受け入れ。この3 つを要望したい」と訴えた。 茅ヶ崎徳洲会病院 地域連携懇親会開く (右から)懇談する原院長、福島・副理事 長、野口院長、山本隆之事務長 老 健 あいの郷 38 姿実際に使用しスライディングシートの有用 性を確認 介護関係者の職業病、腰痛を解説する長 島副主任 命だけは平等だ 平成 28 2 29 日 月曜日│ No. 1020

28 2 29 NICUで避難訓練...NICUでの避難は① が必要産や低出生体重児は保温え問題があり得る、③早送)、②避難後の取り違ッフの全介助による搬ないため全員担送(スタ多くは付き添い家族がい新生児が自力避難できず、

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Page 1: 28 2 29 NICUで避難訓練...NICUでの避難は① が必要産や低出生体重児は保温え問題があり得る、③早送)、②避難後の取り違ッフの全介助による搬ないため全員担送(スタ多くは付き添い家族がい新生児が自力避難できず、

ALS医療相談室は湯浅龍彦センター長、大宮貴明・理学療法士、3人の家族相談員、臨床心理士で運営。毎週火曜日の午後に予約制で行っており、1組の患者さん・家族に1時間を確保、じっくりと話を聴きアドバイスを送る。湯浅センター長は医療者と家族相談員が協力して取り組むこ

との意義を強調する。「患者さんにはALSを認めたくない気持ちもあります。その気持ちを尊重しながらも、一方で現実を受け入れ適切に対応していただく必要があります。そうした時に、家族をALSで亡くす悲しみを乗り越えた家族相談員がいることで、より深い共感と理解のもと信頼関係を築きながら、私たち医療者が専門的な視点で支援していくことができます」家族相談員は川上純子相談員、吉本佳預子相談員、市川千津子相談員。3人は夫をALSで亡くした経験をもつ。川上相談員は「病態が進行すると何が起きるか、患者さんや家族はとても不安に感じています。患者家族として経験してきたことを役立てたい」と話す。吉本相談員は「これからも医療専門職の方 と々ともに、患者さんと家族のため相談に取り組んでいきたい」と意気込む。市川相談員は自身、かつて相談室を利用したひとり。「相談室があったことで、当時、人工呼吸器のことなどを知ることができました。自分の経験を生かし、できるだけお役に立ちたい」と語る。ある火曜日の午後、女性のALS患者さんが家族(夫)

とともに同室を訪れた。発症から数年が経過しているものの、進行はゆっくりで発語など問題なくできる。身の回りの世話は夫が担っていることから、患者さんと夫は、夫が病気になった場合のことを挙げ、そろって不安の言葉を口にした。湯浅センター長は「在宅サービスの仕組みのなかで生活を組み立てることを考えるのも重要です」と、訪問介護やショートステイを徐々に利用してみることを提案。川上相談員はこの提案をふまえ「はじめは家に外から人を入れるのは嫌かも知れませんが、少しずつ『この人ならいいかな』と思える人を見つけてみてはどうでしょうか」と声をかけた。このほか相談員たちは、患者さんの体調変化や苦労に深い共感を示したり、今後の生活を後押しする言葉をかけたりした。病態の進行を見据え、後手にならないよう適切に手を打つため、医療者からは時に厳しい意見も出るが、それも患者さんと家族を思えばこそのこと。今後も医療者と家族相談員が手を携え、ALS患者さんと家族を支援していく。

ALS医療相談室が奮闘

神奈川県内にある徳洲

会病院・施設の協力企業

で組織する神奈川徳友会

は、2016年賀詞交歓

会を催した。会員企業や

徳洲会から計200人が

参加し盛大に行った。

同会の吉岡貞朗会長は

NICUでの避難は①

新生児が自力避難できず、

多くは付き添い家族がい

ないため全員担送(スタ

ッフの全介助による搬

送)、②避難後の取り違

え問題があり得る、③早

産や低出生体重児は保温

が必要

︱など成人病棟

にはない課題がある。加

介護老人保健施設あい

の郷(埼玉県)は1月28

日、近隣の埼玉県立誠和

福祉高等学校で介護職者

の腰痛予防講習会を開催

した。高齢者を抱え上げ

ることが多い介護職者に

とって腰痛は職業病であ

り、その予防は業界全体

のテーマ。同校卒業生は

半数近くが介護福祉関係

の職に就くことから、同

施設に講習依頼があった。

えて、重症例が多いだけ

に輸液管理(点滴)や呼

吸管理(人工呼吸器)、厳

重な感染対策が必要なこ

ともあり、一般の産婦人

科病棟の避難マニュアル

をそのままスライドして

利用することができない。

宇治病院は2011年

からNICU独自のマニ

ュアルやアクションカー

ドを作成、新生児搬送用

のベビーキャリー(避難

用バッグ)を用意し、年

2回、避難訓練を実施、

万一の災害に備えている。

旧病院では事前に机上

訓練を行ってから実地訓

練に臨んでいたが、今回

は事前の告知なしに実施。

スタッフは突然の訓練に

驚きながらも通報係、避

難誘導係、消火係に分か

れ、それぞれアクション

カードのチェックボック

スを頼りに被害状況を確

認、防災グッズを持ち出

し、ベビーキャリーを組

み立てたり、避難経路を

確認したりしていた。

新しくNICUに配属

されたスタッフもいたた

め、ベビーキャリーの組

み立てには1つ10分ほど

かかり、避難経路に迷う

場面も。同部門は日勤帯

には常時6~7人のスタ

ッフがおり、力を合わせ

れば避難に問題ないが、

最も手薄となる夜間(3

人)でも最大9人(9床)

の新生児を無事に避難さ

せなくてはならない。

大平実子・看護師長は

「ベビーキャリーをひと

りで速やかに組み立てら

れ、出火場所ごとに最善

の避難経路がぱっと浮か

ぶよう、訓練の反復が必

要だと思います」と意欲

的。また、ネームバンド

がきちんと付いているか

定期確認したり、避難後

すぐに治療再開できるよ

う避難時に持ち出すネー

ムカードには生年月日、

在胎週数、出生時体重な

どを記載したりするなど

「平時からの備えが大切

です」と、防災担当の伊

NICUで避難訓練

成人との違いに対処

事前告知なし本番さながら

徳洲会病院

宇治徳洲会病院(京都府)は1月28日、新病院初の

NICU(新生児集中治療室)避難訓練を実施した。

新生児の避難は成人とは大きく異なるため、周産期

医療に注力する同院では、旧病院時代から独自にマ

ニュアルなど作成、訓練している。今回は、新しく

なった避難経路や物資の保管場所などを確認。今後、

各診療科・部門との避難時の連携も図る考えだ。

藤栄梨看護師も強調。

本当に避難が必要かど

うかの見極めも重要だ。

同院は免震構造で防火扉

も設置、煙が充満しにく

い設計となっているため、

「重症な新生児を移動さ

せるより、ここで救助を

待った方が安全という可

能性もあります」と大平

師長。最終決断は医師が

担うが、新生児に最も長

く接する看護師として、

トリアージ(重症度選別)

できるよう教育にも注力

していく。

今後は病院全体の総合

訓練で各診療科・部門と

避難経路が重なった場合

はどうするか、互いに協

力できないかなど避難時

連携も図る考え。さらに、

症例ベースの避難方法な

ども検討していく方針だ。

鎌ケ谷総合病院

盛大に賀詞交歓会

神奈川徳友会

挨拶で「今後も会員相互

の交流の場を設けながら

着実に活動していくとと

もに、徳洲会グループの

期待に応えられるよう会

員一同、努力していきた

い」と抱負を語った。

続いて一般社団法人徳

洲会の篠崎伸明・専務理

事(湘南藤沢徳洲会病院

院長)、神奈川徳友会の

小泉晨一顧問らが祝辞を

述べた。篠崎・専務理事

は「診療報酬改定や新専

門医制度の発足など、こ

れから大変な時期を迎え

ます。今後ともご支援を

お願いします」と挨拶。

同会は県内の徳洲会病

院に車いす、国内外の被

災地で医療協力活動を行

うNPO法人TMATに

寄付金を贈呈した。

ALS医療相談室の様子。右から1人目が湯浅センター長

「新生児の避難は別個のマニュアルが必要です」と大平師長

キャリーバッグのひもを首にかけ、スタッフ1人で最大3人の新生児を搬送可能

挨拶で今年の抱負を語る吉岡会長

経験もとに家族相談員が力

鎌ケ谷総合病院(千葉県)千葉神経難病医療センターが開設するALS医療相談室―。療養生活を送るうえでの環境整備や病気への向き合い方などについて、ALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症した患者さん・家族の幅広い相談に応じている。他の医療機関に通院中の患者さんが紹介を受けて来院するケースが多い。

茅ヶ崎徳洲会病院(神奈川県)は「地域連携懇親会」を開催、茅ヶ崎市内の開業医23人が参加した。冒頭、野口有生院長が「私たちは少数でも『いつでも、どこでも、誰でもが最善の医療を受けられる社会』を目指す徳洲会魂を忘れません。どうか、ご協力をお願いいたします」と挨拶。続いて一般社団法人徳洲会の福島安義・副理事長が「まだま

だ不十分ですが、地域の方々に大いに利用していただける病院にしたい。地域に還元できる病院にしたいと願っています」と決意を表明。茅ヶ崎病院OBでもある原クリニックの原芳邦院長は「茅ヶ崎病

院には、融通性のある小回りの利く病院になってほしい」と要望した。この後、同院在宅診療部の田中つや子・統括部長が「茅ヶ崎徳洲会病院在宅診療のいま」と題し講演。団塊の世代が75歳以上になる2025年には、後期高齢者が全人口の30%を超える「2025年問題」を見据え、在宅診療を計画的に実施していると説明した。野口院長は、同院の各診療科

とスタッフを紹介。質疑応答では内山クリニックの内山富士雄院長が「茅ヶ崎病院はスペシャリストよりジェネラリスト、ボーダーラインの患者さんの受け入れ、茅ケ崎駅南側の救急受け入れ。この3つを要望したい」と訴えた。

茅ヶ崎徳洲会病院

地域連携懇親会開く

(右から)懇談する原院長、福島・副理事長、野口院長、山本隆之事務長

老   健あいの郷

介護者の腰痛予防

福祉高校で移動介助訓練

生徒

ら38人

に対し、

まず長

島大介

副主任

(支援

員)が腰痛のメカニズム

やその回避法を座学で解

説。「これまでの介護は

〝抱え上げる介護〟でし

たが、利用者さんの身体

とベッドとの摩擦力を低

減させれば、少ない力で

身体を移動させたり、起

こしたりすることができ

ます」と、安価で準備に

時間のかからない「スラ

イディングシート」を推

奨した。

同シートは筒状の大き

なビニールで、利用者さ

んの下に敷くとビニール

同士が擦れ合うわずかな

摩擦力だけで身体移動な

どが可能。眼前で、あい

の郷のスタッフがくるり

と回転して起き上がる姿

を見ると、生徒らは早速、

クラスメートに対し同シ

ートを試し、容易に身体

が移動したり、もち上が

ったりするさまに歓声を

上げていた。「以前の実

習では腰が痛かったので

すが、これだと(相手の)

体が軽く感じました」、

「移動時に利用者さんの

ズボンがズレることもな

く、良いですね」と好評。

介護道具の進歩は目覚ま

しく、同講習会の企画を

まとめた荒井優子・介護

主任は、「積極的に新し

い道具を取り入れること

が、離職を減らし、魅力

あふれる介護施設への道

だと思います」と提言し

ている。

実際に使用しスライディングシートの有用性を確認

介護関係者の職業病、腰痛を解説する長島副主任

徳 洲 新 聞徳 洲 新 聞 生い の ち

命だけは平等だ❸ 平成 28 年 2 月29日 月曜日 │ No.1020