51
平成28年度 特許出願技術動向調査報告書(概要) LTE-Advanced及び5Gに向けた 移動体無線通信システム 平成29年3月 問い合わせ先 特許庁総務部企画調査課 知財動向班 電話:03-3581-1101(内線:2155)

平成28年度 特許出願技術動向調査報告書(概要) …...平成28年度 特許出願技術動向調査報告書(概要) LTE-Advanced及び5Gに向けた 移動体無線通信システム

  • Upload
    others

  • View
    7

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

平成28年度

特許出願技術動向調査報告書(概要)

LTE-Advanced及び5Gに向けた

移動体無線通信システム

平成29年3月

特 許 庁

問い合わせ先 特許庁総務部企画調査課 知財動向班 電話:03-3581-1101(内線:2155)

- 1 -

第1章 調査概要

第 1節 調査目的と背景

1. 調査の狙い

特許情報から技術全体を俯瞰し、経済情報・産業情報を踏まえた技術開発の進展状況・方

向性を把握することは、特許庁における審査体制の構築や的確かつ効率的な審査等のための

基礎資料の整備、産業政策、科学技術政策の基礎資料の整備をする上で必要である。

また、今後、我が国の産業が持続的に発展していくためには、新規事業の創出が不可欠で

あり、そのためには、企業や大学・公的研究機関等の技術開発、知財戦略策定を支援してい

く必要がある。特許情報はこれら企業等の研究開発動向、知財戦略の表れであり、技術開発、

知財戦略の方向性を決定していく上でも重要なものである。

本調査では、近年、特に注目されている「LTE-Advanced 及び 5G に向けた移動体無線通信

システム」の分野について調査分析を行う。

3GPP(3rd Generation Partnership Project)では、第四世代の LTE-Advanced の規格を策

定中であり、また、次世代通信規格である第五世代移動体無線通信システム(以下、5G と略

称する)について議論が行われている。5Gでは、LTE-Advancedにおいて提案された多くの技

術が発展的に利用される予定である。他方、「2020 年東京オリンピック」での利用や IoTの

活用等これまで無かった新しい利用法が検討されており、今後も重要な技術分野である。

このような背景のもと、LTE-Advanced 及び 5G に対して、関連特許の動向、特許と標準規

格文書との関係、技術革新・技術競争力の状況、今後の展望について検討する。

2. 調査対象の社会的位置づけ

「LTE-Advanced 及び 5G に向けた移動体無線通信システム」、特に 5G においては、情報収

集の多様化を支えるセンサー技術、映像技術(4K/8K)、収集情報の活用を高度化するビッグ

データ技術、人工知能技術、これらの技術と連携する光伝送技術、電池技術、セキュリティ

技術などをキーワードとする情報通信技術(ICT)を用いた応用分野の拡大が急速に進む中

で、その応用分野を支える通信インフラとして中心的な役割を果たすものとみられている。

応用分野には、IoT 分野を中心に、自動車分野、産業機械分野、ホームセキュリティ分野、

スマートメータ分野など多岐に渡る分野があげられており、各分野では収益構造の変革、ビ

ジネス戦略の変革、社会構造の変革が進むと考えられている。

本調査では、従来からの「多重通信」と「無線通信ネットワーク」を対象とした調査では

あるが、上記で示した、ICT技術の活用、応用産業分野の変革を視野に入れて調査を進める。

第 2節 調査の範囲

5Gは物理網からアプリケーションまでの革新を含み、社会的にも幅広い影響を及ぼす移動

体無線通信システムとなっている。

本調査は、これらの幅広い領域のうち、移動体無線通信システムの物理レイヤーの観点か

ら、「多重通信」と「無線通信ネットワーク」の領域を調査の対象とした。

調査対象特許の絞り込みに当たっては、上位レイヤーとの関連性も調査対象となるよう、

技術キーワードを選択して用いた。

- 2 -

調査範囲を示す技術俯瞰図を図 1-1に示す。本調査では、以下に示す「応用産業」、「技術」、

「課題」に着目して調査した。

図 1-1 LTE-Advanced 及び 5G に向けた移動体無線通信システムの技術俯瞰図

課題軸

人工知能

ビッグデータ

センサー・映像

関連ICT技術技術軸

注:破線枠内が調査対象範囲

セキュリティ

光伝送

電池

自動車運転、災害対応、放送サービス、ロボット遠隔操作、広帯域IoT、動的ホットスポット、局所的なトラフィック など

応用産業(ユースケース)軸

・周波数資源活用

周波数資源管理、マルチ帯域構成、

ミリ波伝送 など

・周波数利用効率

キャリアアグリゲーション、多重化方式、

大規模MIMO、各種非直交多元接続 など

・無線アクセス網

スモールセル、セル間協調 など

・信号制御

制御プレーン、基準信号・参照信号、

リレー、物理チャネル など

・制御方式

TDD UL/DL構成、モバイル網オフロード

動的制御・適用制御、品質制御・管理 など

・網機能

仮想網、 、モバイルフロントホール(MFH)、

モバイルエッジ処理(MEC) など

・通信サービス機能

端末間通信、同時配信、位置情報、

無線セキュリティ など

・アプリケーションレベルサービス機能

ウェアラブル など

<5Gの要求条件に関する課題>

・低遅延化 ・多数端末対応

・高速大容量化 ・多様化

<網全体に関連する一般的課題>

・低消費電力化 ・高信頼化 ・低コスト化

・高速移動端末 ・ヒューマンインターフェイス機能改善

- 3 -

第 3節 商標について

本報告書に現れる登録商標の一覧を表 1-1に示す。

表 1-1本報告書において使用される登録商標

商標名 権利者 AT&T AT&T Japan LLC

NTT ドコモ 株式会社 NTTドコモ

アルカテル・ルーセント アルカテル・ルーセント インテル Intel Corporation エリクソン Telefonaktiebolaget LM Ericsson 沖電気 沖電気工業株式会社

京セラ 京セラ株式会社

クアルコム Qualcomm

サムソン電子 Sumsung Electronics Limited

シャープ シャープ株式会社

ソニー ソニー株式会社

ソフトバンク ソフトバンクグループ株式会社

トヨタ自動車 トヨタ自動車株式会社

日本電気 日本電気株式歌詞は

ノキア Nokia Corporation

パナソニック パナソニック株式会社

日立製作所 株式会社日立製作所

富士通 富士通株式会社

ブラックベリー BlackBerry Limited

ブロードコム Broadcom Limited

モトローラ モトローラ株式会社

京セラ 京セラ株式会社

クアルコム Qualcomm

サムソン電子 Sumsung Electronics Limited

シャープ シャープ株式会社

ソニー ソニー株式会社

- 4 -

第 2章 市場環境

第 1節 はじめに

「LTE-Advanced 及び 5G に向けた移動体無線通信システム」、特に 5G は、従来の移動体無

線通信システムにおいて重要な役割を果たした無線アクセス技術だけでなく、IoT(Internet

of things)、M2M(machine to machine)、CPS(Cyber Physical System)をキーワードとする

情報通信技術(ICT)を用いた応用分野の拡大が急速に進む中で、その応用分野を支える通信

インフラとして中心的な役割を果たすものとみられている。

本調査では、これまでの移動体無線通信システム関連産業の発展の経緯を概観し、移動体

無線通信システムの市場、5G の先行的な市場ともいえる IoT の市場環境、「LTE-Advanced、

5G」技術が将来適用される移動体無線通信システムの現在と将来の市場環境を示す。さらに、

5G技術の開発と標準化の推進組織が提案する IoTのユースケースについて概観する。

第 2節 ワイヤレス通信システムの高度化の進展と 5Gの位置付け

1. 移動体通信システムの高度化の進展

図 2-1に我が国における移動体無線通信システムの高度化の経緯について示す。日本では

1979 年に自動車電話としてサービスが開始され、1980 年代にショルダーホンや携帯電話と

して普及が始まったのが第 1世代の携帯電話である。第 2世代以降はデジタル方式となった。

しかし、第 2世代の携帯電話の方式は国や地域によって異なっていた。2001 年以降にサービ

スが開始された第 3 世代の携帯電話では、W-CDMA 方式、CDMA2000 方式として世界共通の標

準規格によるサービスの提供が開始された。その後、第 3.9世代と呼ばれる LTE方式の導入

により高速化が図られ、2016 年 6 月から第 4世代(4G)と呼ばれている LTE-Advancedのサー

ビスが開始されている。2020年のサービス開始を目標に現在標準化の検討が進められている

次世代の方式は、標準規格の検討が進められている 3GPP において、リリース 15 以降を第 5

世代(5G)と呼ぶことで合意されている。

図 2-1 これまでのワイヤレス通信システムと第 5世代通信システム

(出典:IoT時代に向けた移動通信政策の動向 総務省 2016年 11月)

- 5 -

2. IoTの進展と 5G

現時点でのインターネット接続デバイス数は、数 100億個のデバイスがあると言われてお

り、2020年には、さらに 2倍になるとみられている

5Gでは、IoTとの連携も考慮し、4Gからの大幅な改善(性能目標)を目指している。

表 2-1 5Gにおける主要な性能目標

主要項目 性能目標 現行 LTE 比

1 超高速 最高伝送速度 10Gbps 100 倍

2 多数同時接続 100 万台/km2の接続機器 100 倍

3 超低遅延 1ミリ秒程度の遅延 1/10

5Gの標準規格の検討に際しては、図 2-2に示すように、IoTを初めとした様々な応用分

野を考慮に入れられており、それらの「ユースケース」を意識しながら、要求条件が導か

れている点が、4Gまでの標準規格と大きく異なる点である。

図 2-2 5Gを特徴づける技術的変化

(出典:IoT時代に向けた移動通信政策の動向 総務省 2016年 11月)

3. ITU-R(国際電気通信連合 無線通信部門)における 5Gの位置付け

ITU-Rにおいて、2015年 9月、2020年以降の将来の移動通信システムに関する枠組及び

目的を示した「IMTビジョン勧告 (M.2083)」が策定された。そこでは、図 2-3に示すよう

に、5G の利用シナリオ上の性能要件は 3 つの軸で表されている。同勧告において、5G の

利用シナリオや 5G の要求条件など、5G 開発の方向性等が提示されている。なお、ITU-R

では 5Gは IMT-2020と呼ばれている。

- 6 -

図 2-3 2020年以降の IMTの利用シナリオ

M.2083-02

Gigabytes in a second

Smart home/building

Voice

Smart city

3D video, UHD screens

Work and play in the cloud

Augmented reality

Industry automation

Mission critical application

Self driving car

Massive machine type

communications

Ultra-reliable and low latency

communications

Enhanced mobile broadband

Future IMT

(出典:ITU-R 勧告 M.2083)

4. LTE-Advance及び 5Gの標準化動向

3GPPにおける 5Gの標準化のロードマップを、図 2-4に示す。2017年の 6月に 5Gの範囲と

要求条件がリリース 14 としてまとめられることになっている。引き続き、2020 年に実現す

る 5Gの基本仕様を策定したリリース 15を 2018年の 9月に、5Gのフルスペックであるリリー

ス 16が 2019年の 12 月に向けて策定されることになっている。

図 2-4 5Gの標準化のロードマップ

(出典:IoT時代に向けた移動通信政策の動向 総務省 2016年 11月)

第 3節 5Gを含む移動体無線通信システムの市場予測

1. 5Gの市場構造と関連技術

平成 28年度情報通信白書では図 2-5に示すように、ICT産業を、上位レイヤーから、コン

テンツ・アプリケーション、プラットフォーム、ネットワーク、デバイス・部材の各階層に

分けている。上位レイヤーは各種分野向けコンテンツ・アプリケーション及びサービスであ

る。プラットフォーム・レイヤーはクラウドサービス、データサービスが該当する。ネット

- 7 -

ワークレイヤーは固定/移動体通信サービスと端末以外の通信機器、デバイス・部材レイ

ヤーはスマートフォン、タブレット等の通信端末とセンサーが位置している。

図 2-5 ICT 産業のレイヤー区分と IoTの位置付け

デバイス・部材

コンテンツ・アプリケーション

プラットフォーム

ネットワーク

業種・分野(例)農林水産業・鉱業

エネルギー・インフラ業

製造業 商業・流通業 サービス業

各種分野向けコンテンツ・アプリケーションやサービス

クラウドサービス

データセンター

固定通信サービス、移動体通信サービス

通信機器

デバイス(スマートフォン・タブレット、PC、TV等)

センサー

IoT関連アプリケーション

M2M

ウェアラブル等

エッジコンピューティング

IoT

(出典)総務省「IoT時代におけるICT産業の構造分析とICTによる経済成長への多面的貢献の検証に関する調査研究(平成28年)

(出典:平成 28年版情報通信白書、2016年 7月、総務省、P83、図表 2-1-4-1 ICT産業のレイヤー区分と IoTの

位置付け)

LTE-Advanced 及び 5G は図 2-5のネットワークレイヤーにおいて、移動体通信サービスを

提供する技術である。しかしながら、5G以降の移動体通信ネットワークはレイヤーにまたが

る様々なユースケースが想定されており、複数のレイヤーとの連携が必要になっていくもの

と考えられる。

また、急速な技術革新により、図 2-6に示すように、フィジカルなリアル空間とサイバー

のデジタル空間の間で、大量のデータの取得、分析、実行の循環が行われるようになりつつ

ある。5Gはこれらの空間を構成する要素の間をつなぐ役割を期待されており、AI、ビッグデー

タ、IoT が本来の効果を発揮するためのインフラストラクチャーとして期待されている。図

2-6の①から⑤を繋ぐ環を構成する矢印に相当する役割を 5Gが果たすことを期待されている

ものと考えられる。

- 8 -

図 2-6 IoT、AI、ビッグデータによるデータの取得・分析・実行の循環

(出典:IoT、AI、ビッグデータに関する経済産業省の取組について 2016年 5月 24日、経済産業省 P3)

こ の よ う な 多 様 な ユ ー ス ケ ー ス に 柔 軟 に 対 処 す る た め に 、 ETSI(European

Telecommunications Standards Institute) に お い て は NFV(Network Functions

Vertualisation)の検討が進められている一方、3GPP においても仮想網やヘテロジニアス

ネットワーク(多システム利用)に関する検討が進められている。3GPP では、2016 年後半

にはスライスに関する検討が開始された。図 2-7に示すように、スライスは、無線回線を含

む各種の独立したネットワーク資源を、新たなニーズを実現するネットワーク機能や多様な

サービスを同時実現するために、ソフトウェア技術を駆使するものであり、資源の独立性

(resource isolation)を維持しつつ、プログラム可能性(Programmability)で新たな時代

を築くものである。3GPP においても、スライス概念のエンド・ツー・エンドへ適用が論じ

られ、無線アクセス(RAN)のスライス技術の標準化の検討が TSG-RAN-WG3 の場で進められ

ている。

図 2-7 スライスのイメージ

(a) スライスを適用していない状態

- 9 -

(b) スライスを適用した状態

2. 5Gに向けた主要プレイヤーと市場規模

ネットワークレイヤーにおける移動体通信サービスを提供する通信事業者については

GSMA(GSM Association)がランキングを行っている。表 2-2は GSMAが 2016年 4月に発表した

2015 年の移動体通信事業者のランキング1 である。表には接続数、売上ランキングを 15 位

まで示している。全てのランキングに中国の通信事業者 3社(China mobile、 China unicom、

China telecom)が入っている。接続数 3 位の Bharti Airtel Group はインドの移動体通信

事業者である。日本の移動体通信事業者は売上では 15 位以内に入っているが、接続数では

SoftBank Groupが 21 位、NTT DOCOMO Groupが 29位、Au(KDDI)が 30位である。収益、契約

者数ともに中国の China Mobileの規模が圧倒的に大きいことが分かる。同社の他にも China

Unicom 及び China Telecom が上位に入っており、中国の移動体通信事業者が抱える契約者

数と市場規模の大きさが世界の通信市場の成長に大きく貢献していることが分る。また、欧

州を拠点とする通信事業者 Vodafone や Telefonica も上位に入っている。

1 GSMAランキング https://www.gsmaintelligence.com/research/2016/04/operator-group-ranking-2015/556/

- 10 -

表 2-2 移動体通信事業者ランキング

接続数 売上(12 か月)

1 China Mobile, China 886.2 China Mobile, China £69.4

2 Vodafone Group 461 Verizon Wireless, US £60.0

3 Bharti Airtel Group 336.2 AT&T Group £49.5

4 China Unicom, China 307.3 Vodafone Group £40.2

5 América Móvil Group 285.5 SoftBank Group £39.9

6 Telefónica Group 247.1 Deutsche Telekom G £32.6

7 MTN Group 232.5 América Móvil Group £25.3

8 China Telecom, China 211.8 NTT DOCOMO Group £23.9

9 Orange Group 205.3 Telefónica Group £20.7

10 Telenor Group 202.8 China Unicom, China £19.4

11 VimpelCom Group 196.3 China Telecom, China £16.5

12 Idea Cellular, India 171.9 Orange Group £13.8

13 Etisalat Group 167 au (KDDI), Japan £10.8

14 Deutsche Telekom G. 156.4 Etisalat Group £9.2

15 Telkomsel, Indonesia 154.9 Telenor Group £8.5

単位 百万 単位 10 億

図 2-8に示すとおり、通信機器市場を牽引している移動体通信機器市場においては、いわ

ゆるマクロ基地局を主製品とする市場が形成されてきたが、世界的にみると移動体インフラ

が一定程度構築されてきたことから、今後は徐々に縮小することが予想される。

一方、4G(LTE-Advanced)そして 2020 年頃の商用化が期待されている 5G などの次世代移

動体無線通信システムでは、いわゆる「スモールセル」が多用されることが予想されている。

スモールセルとは、従来エリアのカバレッジを高めるために整備されてきた「マクロ基地

局」のエリアを補完するとともに、近年急増するトラフィック対策にも期待されている小型

基地局の総称である。図 2-9に示すように、平成 28年版情報通信白書において、マクロ基地

局を補完し、システム全体において超高速・大容量のサービスを提供するためのインフラと

して、スモールセルの整備展開が進展する見込みであると予測している。

- 11 -

図 2-8 世界の移動体通信機器(マクロ基地局)市場の市場規模推移及び予測

(出典 平成 28年版情報通信白書 2016年 7月、総務省、P99、図表 2-2-4-12 移動体通信機器(マクロ基地局)

市場の推移及び予測)

図 2-9 スモールセルの世界市場の推移及び予測

(出典:平成 28年情報通信白書 2016年 7月、総務省、P99、図表 2-2-4-13 世界のスモールセル市場(出荷金

額)の推移及び予測)

第 4節 IoTの市場環境

LTE-Advanced 及び 5G の市場環境が、これまでの移動体無線通信システムの市場環境と大

きく異なる点は、IoT 等、これまでは移動体無線通信システムの市場とみなされてこなかっ

た領域も包含した市場となっていくことが期待されていることである。図 2-10に示すように、

世界の IoT デバイス数は、2013 年時点での約 112 億個から、2020 年までに約 304 億個まで

増大すると予測されている。

- 12 -

図 2-10 世界の IoT デバイス数の推移及び予測

(出典:平成 28年情報通信白書 2016年 7月、総務省、P80、図表 2-1-1-1 世界の IoTデバイス数の推移及び予

測)

- 13 -

第 5節 5Gの推進機関

LTE-Advanced、 5G 技術の開発については、性能要件をユースケースから導く手法がとら

れている。5Gを推進するために各地域でコンソーシアム等が組織されており、各組織はユー

スケースに基づく 5G への要件を整理している。図 2-11に主要な国・地域における 5G推進団

体を示す。また、表 2-3にこれらの組織の概要の説明を示す。

図 2-11 主要な国・地域における 5G推進団体

(出典:IoT時代に向けた移動通信政策の動向 P17 総務省 2016年 11月)

表 2-3 主要な 5G推進組織の概要

名称 概要 記事

5GPPP EU の Horizon 2020 の 5G システムに特化した研究プロ

ジェクトの管理組織で 2014-2020年の期間で 7億ユーロ

の投資が計画されている。Networld2020 ETP の 30 メン

バーからなる組織が全体を運営している。

関係する Networld2020ETP の

会員数は 1175

5GMF 第 5世代移動通信システムの早期実現を図るため、研究

開発及び標準化に係る調査研究、関係機関との連絡調

整、情報の収集、普及啓発活動等を行うことを目的に、

2014年 9月に日本に設立された。

14名の研究機関等の個人会員

に加え、国内 83社が一般会員

となっている。

5Gforum 次世代通信技術の開発の先導と ICT産業の発展を通して

経済発展に貢献するために 2013 年に産学官で設立され

た韓国の組織。

韓国企業および通信機器、半導

体企業の 31社が会員となって

いる。

IMT2020 ( 5G)

Promotion Group

5G の研究を推進する目的で、中国政府により 2013 年に

設立された組織。移動体通信に係る主要オペレーター、

ベンダー、研究機関がメンバーとなっている。

中国の移動通信に係る主要企

業が白書作成に寄与している。

5G Americas 米州における、LTE無線技術と 5G以降の技術革新の全て

を推進するための組織。4G Americas の延長に位置づけ

ている。

主要通信事業者、通信機器、半

導体企業が理事となっている。

NGMN alliance LTE-Advanced と 5G に焦点を当て、移動広帯域サービス

をエンドユーザーに提供することを目的とした世界の

移動体通信事業者等により設立された組織。

移動体通信事業者 28社、ベン

ダー43社、大学等研究機関 25

社がメンバー

ITU-R 国際電気通信連合 無線通信部門、WP 5D(Working Party

5D)にて、5Gに相当する将来の IMTシステムを IMT-2020

と称し要求条件などの詳細検討を 2016 年 2 月の会合よ

り開始しており、2020年中の仕様完成を予定している。

- 14 -

第 6節 5Gとユースケース

5Gは、2018年から 2020年の実用化に向けて、技術開発が進められている段階であり、こ

れからの技術である。特に、携帯電話機能やモバイルデータ端末機能を対象とした 4G 以前

に対し、5Gでは様々なユースケースを視野に入れた検討が進められている。将来にわたって

の 5G の市場環境を検討するには、標準化での標準規格の検討のスコープや、5G に対する有

識者の認識・取組みなどが重要な意味を持つ。

1. 標準化推進団体のユースケース

(1) 5GPPPにおけるユースケース

欧州の 5G推進機関である、5GPPPがその白書で示すユースケースとユースケース別の性

能要件を表 2-4に示す。

表 2-4 5GPPP のユースケースと性能要件

ユースケース デ ー タ

速度

移 動

速度 低遅延 密度 信頼性

位 置 正

確性

到 達

範囲

未来の工場

①時間制約を持つ制御 B A A A A A C

②時間制約の内、工場の自動化 B B C A A B C

③遠隔制御 B D C E B - B

④企業内・企業間通信 B D C E B - B

⑤物の接続 D C C E C A B

エネルギー

①グリッドアクセス D E D B C - A

②グリッドバックホール C E C D B - B

③グリッドバックボーン B E A D A - B

e-HEALTH

①病院の資産および人材管理 C C B B C A B

②ロボット制御 A D A C A D C

③遠隔モニタ B A C A B C A

④高度治療 C B C A B B B

自動車

①自動運転 C A A A A A A

②ビュー共有 B A B A B B A

③鳥瞰ビュー B B B A B B B

④運輸・倉庫のデジタル化 A A A A A A A

⑤路上の情報社会 B A C A C C A

メディアとエンターテイメント

①超高臨場感メディア A B D B A C A

②オンサイトライブイベント A D B A B B C

③ユーザー・機械生成コンテテンツ C B C B C C A

④没入型・統合型メディア B D B C B C B

⑤共同メディア作成 A D B D A B C

⑥協調型ゲーム C B A C C D A

性能条件が厳しい順に A>B>C>D>E としている。

- 15 -

(2) 5GMFにおけるユースケース

表 2-5は 5GMF のユースケース を示す。地震・津波の災害対応など、日本固有のユース

ケースが多く含まれているが、5Gへの性能要件は前出の 5GPPP、NGMNの性能要件でカバー

されていると考える。

表 2-5 5GMFのユースケース エンターテイメント分野

拡張型実体験エンターテイメント

(体験の共有と仮想現実の体験)

ダイナミックホットスポットサービス

大規模マラソン

新幹線高速鉄道による旅行

通勤者によるコンテンツダウンロード

ラッシュアワー通勤中の通信

運輸分野

スマート自動車(運転者補助システム)

都市における振る舞い支援

産業/垂直 分野

ロボット制御

スマート農業

緊急・災害状況における対策

イメージ認識による防犯システム

拡張型緊急通報、大規模災害救済ネットワーク

地震/津波のための緊急通報

2. 有識者が目標とするユースケース

ユースケースを意識して標準化を進めるため、各国・地域の 5G 推進機関には、5G の機器

ベンダーやネットワーク提供者だけでなく、各種のサービスプロバイダーや実際に機器を接

続して使用するユーザー等も参加している。これらの多様な参加者が加わることにより、従

来のような機器ベンダー、ネットワーク提供者だけで進められていた検討では見えなかった

課題を明らかにすること、及び効果的なネットワークやサービスの検討・開発が期待されて

いる。

以下では、5G の機器ベンダー、ネットワーク提供者、ユーザーなどの有識者の現状認識、

5Gへの期待、目指すべきユースケースなどについて、ユースケースを中心に据えて紹介する。

(1) 代表的なユースケース

現段階では 5Gの正式な検討は着手されたばかりであり、前述の通り、5GPPP、5GMFなど、

5Gの推進機関によってユースケースとして挙がっている項目も国際的に一様ではない。こ

れは、5G の使い方が国によって違うというよりも、5G に期待している機能の優先度が国

によって異なるものと理解できる。

本調査では、このように多様に分類されているユースケースを調査する観点として、次

に示すユースケースに分類して調査した。

- 16 -

●本調査で想定するユースケース

・動的ホットスポット

・高速移動空間

・局所的トラフィック

・自動車運転

・広帯域 IoT

・農業分野

・災害対応

・放送サービス

・ゲーム・娯楽

・ロボット遠隔操作

(2) 多様な 5Gの応用分野と標準化

総務省による電波政策 2020懇談会 最終報告書(2016年 7月)においても、「昨今の ICT

利活用の裾野も拡がってきており、通信に対するニーズがこれまでにないほど多様化しつ

つある。単なる通信速度の増加だけでなく、数多くのセンサーを無線でつなぎたいという

ニーズや、リアルタイムに低遅延で無線伝送したいといった新たなニーズも生まれつつあ

る。これからの移動通信の未来を考えるにあたり、新たなニーズも踏まえて、他産業分野

とのコラボレーションを進めて行くことは必要不可欠であり、これらを戦略的に進めて行

くことが重要である。(同報告書 P73)」とされている。

図 2-12に示すように、5GPPPが推進しているプロジェクトにおいても、通信技術的にも

多様な階層から構成されており、また、図 2-13は、5G が各種の産業とのコラボレーショ

ンを前提としていることを示している。

図 2-12 5GPPP が推進する研究開発プロジェクト

(電波政策 2020懇談会 最終報告書 図 2-3-3 2016 年 7月 総務省 P61)

- 17 -

図 2-13 EU(5GPPP)における利活用分野との連携イメージ

(出典:電波政策 2020懇談会 最終報告書 図 2-3-17 2016 年 7月 総務省 P74)

このような他産業分野とのコラボレーションによるシステムを構築する際には、それぞ

れの事業展開において、システムインテグレーターとしての役割を持つ事業者が、システ

ムを効率的に構築することが求められ、システムインテグレーターがその機能を最大限に

発揮するには、それぞれの担当分野の技術領域と隣接した技術領域とのインターフェイス

が分かりやすい形で標準化されていることが望ましいとの指摘がある。

(3) 他産業分野とのコラボレーションにおける課題

5G を含むこれまでのネットワークの標準化では、3GPP、ETSI、ITU-R、ITU-T2、IETF3、

が代表的な標準化団体であり、例えば 3GPP では、参加するものは、標準化がなされる前

に、標準規格制定後に必須となる特許を所持する事業者は事前宣言すること、必須特許は

FRAND条件4で提供すること等が義務付けられてきた。これにより、標準規格化の過程にお

いて、その宣言内容によっては特許に触れないように標準化の内容を変更する場合もあっ

た。5Gでも、コアネットワークについては SDN、NFV、MECなどが議論されている。これら

の標準化においては、今のところ、SDN は ONF5が、NFV では ETSI の ISG6 NFV が、MEC は

ETSI ISG MEC が行っていることから上述の条件が適用される。また、IETF では知財に関

2 国際電気通信連合 電気通信標準化部門 3 Internet Eingineering Task Force 4 FRAND(Fair, Reasonable And Non-Discriminatory)ある企業の特許が技術標準として採択される場合、他企

業がその特許を使用する時には、特許権利者は「公平で、合理的、かつ非差別的」に協議しなければならないと

いう義務 5 Open Network Foundation 6 Industry Specification Group

- 18 -

するポリシーは BCP79 に示されているとおり、必要な特許は標準規格制定前に明示するこ

とが求められており、明記はされていないが、知財の使用条件も FRAND に近い形で進めら

れてきた。

IoT との連携を考慮すると、使用する標準規格が上記 4 団体の範囲に収まらなくなる。

IoTでの標準規格においては、IEEE7、LoRaアライアンスをはじめとする、これまでのネッ

トワークの標準化には関係しなかったプレイヤーが複数登場するものとみられている。し

かし、例えば IEEEにおける知財の取扱いにおいては、FRAND条件は必須とはされていない。

今後、他産業分野とのコラボレーションが進むにつれて、このような知財文化の異なる標

準化団体との連携の必要性はさらに高まることが予想される。

すなわち、3GPP 及び ETSI ISG 関連など、従来のネットワーク関連の標準化機関で普通

に行われていた、必須特許の事前宣言や、特許の使用許諾における FRAND条件の適用など

の知財の手順が、今後の 5G の時代にも同様に実施されるかどうかは確実ではない。この

ように、これらの標準化団体の知財の取扱いに対する考え方の差により、事業者の知財戦

略の策定がこれまでよりも難しくなる可能性が指摘されている。

7 The Institute of Electrical and Electronic Engineers

- 19 -

第 3章 政策動向

第 1節 各国の 5Gに係る政策

1. 日本

2016年 10月 25日、2020年の 5Gの実現に向けた技術検討を行う総務省・情報通信審議会

「新世代モバイル通信システム委員会」の第 1 回会合が開かれ、引き続き検討が進められて

いる。

同委員会は、総務大臣による新世代モバイル通信システム(5G)の技術的条件の諮問を受

けて設置されたもので、(1)5Gの基本コンセプト、(2)サービスイメージ、(3)ネットワー

ク構成、(4)実現に必要となる周波数、(5)4G から 5G への進展(マイグレーション)シナ

リオ(6)5Gの社会実装の推進、などが議論されている。

「2020年東京オリンピック」は、我が国全体の祭典であるとともに、優れた ICTを世界に

発信する絶好のチャンスとして期待されている。総務省では、2020年以後の持続的成長も見

据えて「2020年に向けた社会全体の ICT化推進に関する懇談会」を開催し、平成 27年 7月、

「2020 年に向けた社会全体の ICT 化アクションプラン(第 1 版)」が取りまとめられた。図

3-1に示すように、この中で 5Gは ICTインフラの役割を期待されている。

図 3-1 2020年に向けた社会全体の ICT化アクションプラン

(出典:平成 28年版情報通信白書、2016年 7月、総務省、P59、図表 1 2020年に向けた社会全体の ICT化 ア

クションプラン)

- 20 -

2. 米国

米連邦通信委員会(FCC)は 2016 年 7 月に 5G ネットワークに使用する 24GHz 以上の周波

数帯の開放ルールを決定した。 新しいルールでは 3.85GHz幅のライセンス帯域と 7GHz幅の

ノンライセンス帯域を与えるもので、28GHz (27.5-28.35GHz)、37GHz(37-38.6GHz)、および

39 GHz (38.6-40GHz)バンドと新しいノンライセンス帯域として 64-71GHzの周波数を利用可

能としている。

これを受けて、早ければ 2018年にも AT&Tや Verizonにより、当該周波数帯を利用した暫

定仕様での 5G商用サービスが開始される可能性がある。

3. 欧州

Mobile World Congress 2015 において EUおよび EUの技術産業は 5G技術とインフラの EU

ビジョンを発表し、Mobile World Congress 2016 では、デジタル経済と社会のために、EU

は 2020年までに 5G技術を導入するアクションプランの作成に着手したことを報告している。

2016 年 7 月 7日には「5G Manifesto for timely deployment of 5G in Europe」が EUより

発表された。5G Manifesto では 5G が産業により異なる接続条件を提供する欧州経済のデジ

タル化の key enabler であると述べている。

4. 中国

工業和信息化部、発展改革委員会、科学技術部の三省庁により設立された IMT-2020

Promotion Group が 5G についての性能要件を検討しており、2016 年 1 月から 3~4GHz 帯を

用いた実証実験を開始している。2020年には商用サービスの開始を計画している。

5. 韓国

2014年 1月 27日の発表で未来創造科学部は、5Gサービスの 5つのコア:将来 SNS、 モバ

イル 3D イメージング、人工知能、ハイスピードサービスおよび超高精細解像度のホログラ

ムを開発、商用化し、これらの技術を 2018 年の平昌冬季オリンピックの期間中に 28GHz 帯

を用いて、プレスセンター、空港、会場等でホログラム、VR(仮想現実)等を提供する計画

を立てており、2020 年には商用サービスの開始を計画している。

6. ITU-R(国際電気通信連合 無線通信部門)における標準化動向

無線通信総会(RA-15)2015 において、決議 ITU-R56-2「国際移動電気通信の命名」によ

り、IMT-2000や IMT- Advancedの関係を整理し、これらの方式、方式要素及び新能力を支持

する無線インターフェイスを含む関連事項に名前を割り当てた。2020年以降の IMTについて

は、

– 2020 年以降の IMT のさらなる開発に対する枠組と全般的な目的は、ITU-R 勧告 M.2083

に記されていること、決議 ITU-R 65に基づく手続きと過程が適用されること

– 2020 年以降の IMT の無線インターフェイスに関連する勧告と報告書は、ITU-R 勧告

M.1645 と同 M.2083 により、そして IMT のさらなる開発を検討する追加の勧告や報告書

により、確立された枠組を考慮に入れるべきこと

– 2020年以降の IMT の開発のために ITU-Rによって規定された基準を満たす IMT-2000あ

るいは IMT-Advanced の拡張及びさらなる開発は、2020 年以降の IMT の一部でもあるこ

- 21 -

とができること

を認識し、「IMT-2020」という用語を将来の IMTに使用することを決議している。

- 22 -

第 2節 各国の政策関連の一覧表

各国の政策関連の一覧表を図 3-2に示す。

図 3-2 年表(5Gに関する各国・機関の政策関連事項)

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

2018

2019

2020

世界

無線

通信

会議

5Gワ

ーク

ショッ

プ世

界無

線通

信会

議5G

無線

イン

タフ

ェー

スIT

U(W

RC

-15)

(WRC

-19)

勧告

化IM

T将

来ビ

ジョン

勧告

5Gワ

ーク

ショッ

プ3G

PP

リリース

13リリ

ース

14リリ

ース

15リリ

ース

16

東京

オリ

ンピ

ック

ブロ

ード

バン

ドの

普及

促進

のた

めの

基本

方針

5G実

証実

験開

始5G

商用

サー

ビス

「IoT

政策

委員

会」

第二

種指

定電

気通

信設

備制

度(

MVNO

可)

Indu

strie4

.0推

進共

同声

明(ド

イツ

5G

関連

第5世

代移

動通

信シ

ステ

ム推

進ロ

ード

マッ

第5世

代モ

バイ

ル推

進フ

ォー

ラム

(5G

MF)

新世

代モ

バイ

ル通

信シ

ステ

ム委

員会

国家

ブロ

ード

バン

ド計

画「コ

ネク

ト・ア

メリ

カ基

金」交

付開

始「コ

ネク

ト・ア

メリ

カ基

金H

P2」

交付

開始

ブロ

ード

バン

ド普

及促

進支

援策

ネッ

ト中

立性

規則

の採

1.7/

2.1G

Hz帯

の周

波数

オー

クシ

ョン

「スマ

ート

・シテ

ィ・イ

ニテ

ィア

ディ

ブ」

5G商

用サ

ービ

ス(暫

定仕

様)

5G

関連

Adv

ance

Wirel

ess

Res

earc

h In

itia

tive

(以下

AW

RI)

24G

Hz以

上の

周波

数帯

の開

放ル

ール

欧州

デジ

タル

・アジ

ェン

ダ(高

速・超

高速

イン

ター

ネッ

ト接

続の

拡大

) 20

20年

に30

Mbp

s

デジ

タル

単一

市場

戦略

5G

関連

UH

F帯の

有効

な利

用ハ

イレ

ベル

諮問

委員

700M

Hz帯

割当

パブ

リッ

ク・コ

ンサ

ルテ

ーシ

ョン

開始

5G技

術と

イン

フラ

のEU

ビジ

ョン 5G

Man

ifest

o fo

r ti

mel

y de

ploy

men

t of

5G

in E

urop

e発表

英国

デジ

タル

通信

イン

フラ

戦略

仏70

0MH

z帯の

電気

通信

事業

への

移管

方針

発表

独デ

ジタ

ル・ア

ジェ

ンダ

2014

~20

17

『互聯

網+

(イン

ター

ネッ

トプ

ラス

)』行

動計

「ブ

ロー

ドバ

ンド

中国

」戦

5G

関連

5G技

術プ

ロジ

ェク

ト(第

13次

5か年

計画

の中

3~4G

Hz帯

実証

実験

開始

5G商

用サ

ービ

ICT新

産業

育成

マス

ター

プラ

ン「未

来成

長動

力-産

業エ

ンジ

ン総

合実

践計

画(以

下、

実践

計画

)」策

「産業

エン

ジン

プロ

ジェ

クト

発展

計画

ギガ

ビッ

ト級

ブロ

ード

バン

ド網

構築

計画

平昌

オリ

ンピ

ック

5G

関連

5Gサ

ービ

スの

5つの

コア

発表

5G商

用サ

ービ

グロ

ーバ

ルの

周波

数の

保護

/6G

Hz以

上の

周波

数の

5G新

周波

数帯

韓国

オー

プン

デー

タ化

推進

開始

大統

領府

技術

革新

フェ

ロー

プロ

グラ

Hor

izon

202

0(優

先課

題IC

T)

日本

米国

欧州

中国

試験

サー

ビス

の供

- 23 -

第 4章 特許出願動向

第 1節 概要

特許動向調査では、調査対象技術について検索によりファミリー単位で抽出される特許文

献の件数に基づき、PCT(特許協力条約)に基づく国際出願及び日本、米国、欧州、中国、

韓国(以下、日米欧中韓と略称する)への特許出願(登録特許)動向を調査した。

第 2節 調査方法

1. 調査範囲

(1) 調査対象技術

本調査は、LTE-Advanced 及び 5G に向けた移動体無線通信システムにおける、物理層、

MAC層を中心とした無線アクセス技術を調査対象とする。国際特許分類としては、IPC第 8

版における H04Jと H04Wが対応する。

(2) 調査対象特許文献

・PCTに基づく国際出願

・日米欧中韓をはじめとする各国(各地域)への特許出願

・日米欧中韓をはじめとする各国(各地域)での登録特許

使用したデータベースはトムソン・イノベーションのアジアパッケージ、ラテンアメリ

カパッケージ付きで、Enhanced Patent Data-DWPI and DPCI を母集団とした。検索日は

2016年 9月 15日で、DWPIファミリー単位で特許文献 20,748件が得られた。

詳細調査では、調査対象外の文献を除外した特許 19,007 件(ファミリー単位)につい

て、表 4-1に示す技術区分表に従って分類した。

(3) 調査対象期間

優先権主張年を基準にして、2010年から 2014 年に出願された特許文献を対象とした。

- 24 -

2. 技術区分表

技術区分としては、課題軸、技術軸、応用産業軸を設定し、それぞれの軸について、表に

示すような技術区分に基づいた調査を実施した。

表 4-1 技術区分

(1) 課題軸 (2) 技術軸中項目 小項目 中項目 小項目

周波数資源管理マルチ帯域構成アンライセンス帯利用ミリ波伝送無線アクセス方式その他の周波数資源活用

変復調方式多重化方式キャリアアグリゲーション各種非直交多元接続大規模MIMO

マルチビーム形成

その他の周波数利用効率

スモールセルセル間協調セル間干渉制御送信電力制御セル選択・ハンドオーバー多システム利用その他の無線アクセス網

制御プレーン(Cプレーン)制御管理信号フォーマット基準信号・参照信号リレー物理チャネルその他の信号制御技術

TDD UL/DL構成スケジューリング・同期モバイル網オフロード動的制御・適応制御

品質制御・管理その他の制御方式

通信距離の短縮 仮想網信号処理方法 モバイルエッジ処理網の装置数の削減 モバイルバックホールトラフィック変動対応 モバイルフロントホール伝送速度の低減 セル活用の高度化送信電力の制御 その他の網機能

その他の低消費電力化 同時配信

輻輳に対する耐性向上 端末間通信障害に対する耐性向上 位置情報他の通信網との連携 無線セキュリティその他の高信頼化 その他の通信サービス機能

コア網装置の低コスト化 緊急連絡接続無線アクセス装置の低コスト化 ウェアラブルOpSコストの削減 その他のAPPサービス機能

自己管理網(SON)の高度化

その他の低コスト化 MIMO:Multi Input Mult Output、TDD:Time Division Duplex

UL/DL:Uplink/Downlink、APP:Application level

OpS:Operation System、 SON:Self Organaized Network、 APP

(3) 応用産業軸

網機能低消費電力化

通信サービス機能高信頼化

APPサービス機能

低コスト化その他の技術

信号制御利用周波数の拡大

周波数の有効利用

干渉の除去

制御方式その他の高速大容量化

多種RAT対応

多数端末対応

制御処理増大への対応

無線アクセス網

負荷変動への対応

端末の帯域保証

その他の多端末対応

低遅延化

通信フレーム短縮

周波数資源活用シンボル高速化

ソフトウェア処理遅延の削減

ハードウェア処理遅延の削減

周波数利用効率網構成の最適化

その他の低遅延化

ユースケース動的ホットスポット高速移動空間局所的トラフィック

高速 大容量化

セル密度の増加

多様性

高速移動端末

HI機能改善

その他の課題

ゲーム・娯楽ロボット遠隔操作

該当無し

自動車運転広帯域IoT農業分野災害対応放送サービス

- 25 -

3. 調査に関する特記事項

(1) 調査対象出願について

調査対象とする母集団は、データ取得日(2016 年 9 月 15日)までに公開等された特許

文献である。出願から公開までの期間、あるいは PCT出願後の国内移行までの期間、デー

タベースへの収録の遅れの影響等から、2013 年及び 2014 年の件数については必ずしも実

数を反映していない可能性がある。さらに登録件数については、上記のデータ収録の問題

に加えて審査中あるいは審査請求前の特許が存在することから、直近のデータについては

今後増加する可能性がある。

なお、ファミリー件数については、出願先を日米欧中韓としている場合であっても PCT

出願を含む。

(2) 出願人について

詳細解析における出願人の名称及び国籍は、使用したデータベースであるトムソン・イ

ノベーションにより規定された DWPI出願人コードに基づいて原則として特定した。

DWPI 出願人コードは、特定の一つの企業に対応する Type-C、複数の企業に対応する

Type-N、出願人が個人であることを示す Type-I の 3 種類が規定されている。今回の調査

では、調査対象特許文献の DWPI 出願人コードに Type-C が含まれている場合は、Type-C

に対応する企業の名称を出願人の名称とし、当該企業の本社所在地を出願人の国籍とした。

DWPI 出願人コードに Type-C が含まれていない場合は、Type-N の情報及び「譲受人/出願

人」欄の情報を参考に企業を特定し、出願人の名称と国籍をそれぞれ当該企業の名称と本

社所在地とした。これでも企業が特定できない場合は、出願人の名称を「個人」と記載し、

出願人の国籍は発明者の国籍とした。

(3) 優先権主張年について

本調査においては、特許の出願年として、使用したデータベースであるトムソン・イノ

ベーションにおける最先の優先権主張年を用いた。最先の優先権主張年とは、ファミリー

を構成する特許のうち出願日が最も古いものの出願年を指す。ファミリーがない特許につ

いては、当該特許の出願年を指す。

- 26 -

第 3節 日米欧中韓への特許出願の動向調査

1. 全体動向調査

(1) 出願人国籍別 PCT出願件数推移及び出願件数比率

図 4-1に、日米欧中韓の各国籍の特許出願人について、出願人国籍別 PCT 出願件数推移

及び出願件数比率(PCT出願、優先権主張 2010-2014年)を示す。

図 4-1 出願人国籍別 PCT 出願件数推移及び出願件数比率(PCT出願、優先権主張 2010-2014年)

(2) 出願先国別出願件数推移及び出願件数比率

図 4-2に、日米欧中韓への特許出願全体に関する、出願先国別出願件数推移及び出願件

数比率(出願先:日米欧中韓、優先権主張 2010-2014年)を示す。

図 4-2 出願先国別出願件数推移及び出願件数比率(出願先:日米欧中韓、優先権主張 2010-2014年)

8,712 8,866

10,174

8,274

3,203

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年

出願先国別出願件数

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 合計

優先権主張 2010-2014年

出願先国

合計件数

日本

4,527件

11.5%

米国

12,937件

33.0%

欧州

7,571件

19.3%

中国

9,265件

23.6%

韓国

4,929件

12.6%

合計

39,229件

注:2013年以降は、データベース収録の遅れやPCT出願の各国移行のずれ等により、全データを反映していない可能性がある。

(3) 出願先国別登録件数推移及び登録件数比率

図 4-3に、日米欧中韓での登録特許全体に関する、出願先国別登録件数推移及び登録件

数比率(出願先:日米欧中韓、優先権主張 2010-2014年)を示す。

1,961

2,351

2,849 2,752

2,358

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

0

100

200

300

400

500

600

700

800

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年

出願人国籍別出願件数

出願年(優先権主張年)

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

優先権主張 2010-2014年

出願人国籍

合計件数

日本国籍

1,948件

15.9%

米国籍

2,985件

24.3%

欧州国籍

2,408件

19.6%

中国籍

1,845件

15.0%

韓国籍

2,760件

22.5%

その他

325件

2.6%

合計

12,271件

- 27 -

図 4-3 出願先国別登録件数推移及び登録件数比率(出願先:日米欧中韓、優先権主張 2010-2014年)

954 590 321 72 43

1,694 1,554 1,273 539 139

380 312 256 71 11

1,200 549 383 140 9

543 507 236 67 44

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年

日本

1,980件

16.7%

米国

5,199件

43.7%欧州

1,030件

8.7%

中国

2,281件

19.2%

韓国

1,397件

11.8%

合計

11,887件

注:調査時点において審査請求前や審査中の出願が存在するため、

2014年に近づくにつれて件数が減少する。

優先権主張:2010-2014年

日本

米国

欧州

中国

韓国

出願先国

出願年(優先権主張年)

(4) 出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率

図 4-4に、日米欧中韓への特許出願全体に関する、出願人国籍別出願件数推移及び出願

件数比率(出願先:日米欧中韓、優先権主張 2010-2014年)を示す。

図 4-4 出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率(出願先:日米欧中韓、優先権主張 2010-2014年)

8,712 8,866

10,174

8,274

3,203

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年

出願人国籍別出願件数

出願年(優先権主張年)

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

優先権主張 2010-2014年

出願人国籍

合計件数

日本国籍

6,129件

15.6%

米国籍

11,501件

29.3%

欧州国籍

5,982件

15.2%

中国籍

5,488件

14.0%

韓国籍

8,085件

20.6%

その他

2,044件

5.2%

合計

39,229件

注:2013年以降は、データベース収録の遅れやPCT出願の各国移行のずれ等により、全データを反映していない可能性がある。

- 28 -

(5) 出願人国籍別ファミリー件数推移及びファミリー件数比率

図 4-5に、日米欧中韓への特許出願全体に関する、出願人国籍別ファミリー件数推移及

びファミリー件数比率(出願先:日米欧中韓、優先権主張 2010-2014年)を示す。

図 4-5 出願人国籍別ファミリー件数推移及びファミリー件数比率(出願先:日米欧中韓、優先権主張 2010-2014年)

3,185

3,769

4,391

4,101

3,561

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

4,500

5,000

0

200

400

600

800

1,000

1,200

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年

出願人国籍別ファミリー件数

出願年(優先権主張年)

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

優先権主張 2010-2014年

出願人国籍

合計件数

日本国籍

2,754件

14.5%

米国籍

4,525件

23.8%

欧州国籍

2,982件

15.7%

中国籍

3,890件

20.5%

韓国籍

3,980件

20.9%

その他

876件

4.6%

合計

19,007件

注:2013年以降は、データベース収録の遅れやPCT出願の各国移行のずれ等により、全データを反映していない可能性がある。 (6) 出願人国籍別登録件数推移及び登録件数比率

図 4-6に、日米欧中韓での登録特許全体に関する、出願人国籍別登録件数推移及び登録

件数比率(出願先:日米欧中韓、優先権主張 2010-2014年)を示す。

図 4-6 出願人国籍別登録件数推移及び登録件数比率(出願先:日米欧中韓、優先権主張 2010-2014年)

日本国籍

1,913件

16.1%

米国籍

3,881件

32.6%

欧州国籍

1,636件

13.8%

中国籍

1,692件

14.2%

韓国籍

2,047件

17.2%

その他

718件

6.0%

合計

11,887件

注:調査時点において審査請求前や審査中の出願が存在するため、

2014年に近づくにつれて件数が減少する。

909 501 358 94 51

1,416 1,115 904 348 98

685 485 345 101 20

710 473 349 151 9

762 729 373 127 56

289 209 140 68 12

優先権主張:2010-2014年

日本国籍

米国籍

欧州国籍

中国籍

韓国籍

その他

出願人国籍

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年

出願年(優先権主張年)

- 29 -

2. 技術区分別動向調査

1. 技術区分別出願件数推移

(1) 技術区分:課題軸

図 4-7に、課題軸について、日米欧中韓への特許出願全体に関する、技術区分別出願件

数推移(出願先:日米欧中韓、課題軸、優先権主張:2010-2014年)を示す。

図 4-7 技術区分別出願件数推移(出願先:日米欧中韓、課題軸、優先権主張:2010-2014年)

9,921

11,750 11,850

9,050

4,180

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年

技術区分別出願件数

出願年(優先権主張年)

低遅延化 多数端末対応 高速大容量化 多様化低消費電力化 高信頼化 低コスト化 高速移動端末HI機能改善 その他の課題 合計

優先権主張 2010-2014年

項目

合計件数

注:2013年以降は、データベース収録の遅れやPCT出願の各国移行のずれ等により、全データを反映していない可能性がある。

HI:ヒューマンインターフェイス

(2) 技術区分:技術軸

図 4-8に、技術軸について、日米欧中韓への特許出願全体に関する、技術区分別出願件

数推移(出願先:日米欧中韓、技術軸、優先権主張:2010-2014年)を示す。

図 4-8 技術区分別出願件数推移(出願先:日米欧中韓、技術軸、優先権主張:2010-2014年)

14,107

16,141

19,515

15,355

6,015

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年

技術区分別出願件数

出願年(優先権主張年)周波数資源活用 周波数利用効率 無線アクセス網 信号制御 制御方式

網機能 通信サービス機能 APPサービス機能 その他の技術 合計

優先権主張 2010-2014年

項目

合計件数

注:2013年以降は、データベース収録の遅れやPCT出願の各国移行のずれ等により、全データを反映していない可能性がある。

APP:アプリケーションレベル

- 30 -

図 4-9に、技術軸の小項目について、日米欧中韓への特許出願の全体に関する、技術区

分別出願人国籍別出願件数比率(出願先:日米欧中韓、技術軸(小項目前半)、出願人国

籍別比率、優先権主張 2010-2014年)を示す。

図 4-9 技術区分別出願人国籍別出願件数比率(出願先:日米欧中韓、技術軸(小項目前半)、出願人国籍別比率、優先権主張 2010-2014年)

2,174

649

453

276

167

180

4,415

589

4,330

123

2,068

767

762

3,883

2,943

2,726

1,420

3,844

2,166

3,911

技術区分別‐合計件数

周波数資源活用

周波数利用効率

無線アクセス網

比率は、各技術区分の総出願件数を100として算出

17.6 30.3 12.8 18.2 16.2 4.9

16.6 40.8 13.1 8.3 18.5 2.6

5.1 64.9 9.7 5.1 10.2 5.1

6.5 46.0 4.7 9.1 29.7 4.0

14.4 23.4 13.8 14.4 28.7 5.4

16.1 41.7 8.3 12.2 21.7

10.4 42.1 7.3 9.0 25.5 5.6

12.4 44.3 5.6 10.2 20.7 6.8

23.5 19.4 12.8 10.8 27.9 5.6

35.0 26.8 8.1 3.3 19.5 7.3

14.7 44.8 6.5 5.0 26.4 2.6

9.3 50.2 5.7 6.0 24.0 4.8

28.6 22.2 9.1 12.5 25.2 2.5

19.3 26.3 17.6 12.7 18.0 6.2

23.6 21.8 17.2 13.9 20.1 3.4

16.4 25.1 19.8 13.8 18.9 6.1

16.8 33.3 13.5 14.5 18.0 3.9

16.7 27.6 17.2 10.7 21.9 5.9

13.6 28.0 18.6 16.0 19.0 4.8

19.2 23.2 20.2 11.5 21.1 4.8

優先権主張:2010-2014年

周波数資源管理

マルチ帯域構成

アンライセンス帯利用

ミリ波伝送

無線アクセス方式

その他の周波数資源活用

変復調方式

多重化方式

キャリアアグリゲーション

各種非直交多元接続

大規模MIMO

マルチビーム形成

その他の周波数利用効率

スモールセル

セル間協調

セル間干渉制御

送信電力制御

セル選択・ハンドオーバー

多システム利用

その他の無線アクセス網

技術区分(技術軸:周波数資源活用、周波数利用効率、無線アクセス網)

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他出願人国籍

日本

順位

3

3

4

4

3

3

3

3

2

1

3

3

1

2

1

4

3

4

5

4

- 31 -

(3) 技術区分:応用産業軸

図 4-10に、応用産業軸について、日米欧中韓への特許出願全体に関する、技術区分別出

願件数推移(出願先:日米欧中韓、応用産業軸、優先権主張:2010-2014年)を示す。

図 4-10 技術区分別出願件数推移(出願先:日米欧中韓、応用産業軸、優先権主張:2010-2014年)

591

1,352

654

211

497

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

0

50

100

150

200

250

300

350

400

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年

技術区分別出願件数

出願年(優先権主張年)

動的ホットスポット 高速移動空間 局所的トラフィック 自動車運転広帯域IoT 農業分野 災害対応 放送サービスゲーム・娯楽 ロボット遠隔操作 合計

優先権主張 2010-2014年

ユースケース

合計件数

注:2013年以降は、データベース収録の遅れやPCT出願の各国移行のずれ等により、全データを反映していない可能性がある。

- 32 -

3. 出願人別動向調査

表 4-2に、技術区分全体における、日米欧中韓への特許出願全体に関する、出願人別出

願件数上位ランキング(出願先:日米欧中韓、全体、優先権主張:2010-2014年)を示す。

表 4-2 出願人別出願件数上位ランキング(出願先:日米欧中韓、全体、優先権主張:2010-2014年)

順位

出願人名称出願件数

1 クアルコム(米国) 5,6502 LG電子(韓国) 3,6333 サムスン電子(韓国) 2,6304 エリクソン(スウェーデン) 2,0545 華為技術(中国) 1,7296 NTTドコモ 1,6247 アルカテル・ルーセント(フランス) 1,5288 中興通訊(中国) 1,5269 インテル(米国) 1,420

10 ノキア(フィンランド) 80511 富士通 79912 シャープ 78913 インターデジタル(米国) 78114 日本電気 70915 ノキア・シーメンス(フィンランド) 70816 パナソニック 60017 韓国電子通信研究院(韓国) 58318 ブラックベリー(カナダ) 55819 ソニー 54520 ブロードコム(米国) 50621 大唐移動通信(中国) 38222 京セラ 37323 宏達国際電子(台湾) 36724 コリアテレコム(韓国) 34625 メディアテック(台湾) 34026 パンテック(韓国) 29227 インテルIP(米国) 27628 アップル(米国) 23629 中国電信科学技術研究院(中国) 22530 台湾工業技術研究院(台湾) 218

日米欧中韓への出願

- 33 -

4. 注目出願人の出願動向調査

(1) 注目出願人別-出願先国別出願件数

図 4-11に、注目出願人について、日米欧中韓への特許出願全体に関する、注目出願人別

-出願先国別出願件数(出願先:日米欧中韓、優先権主張:2010-2014年)を示す。

図 4-11 注目出願人別-出願先国別出願件数(出願先:日米欧中韓、優先権主張:2010-2014 年)

624 372 318 283 71

1006 1858 1070 1086 1036

103 944 724 320 70

65 512 351 879 72

294 1630 533 567 793

優先権主張:2010-2014年

NTTドコモ

クアルコム(米国)

エリクソン(スウェーデン)

ファーウェイ(中国)

LG電子(韓国)

注目出願人

日本 米国 欧州 中国 韓国

出願先国

(2) 注目出願人別-出願先国別出願件数推移及び出願件数比率

a) 注目出願人:NTTドコモ

図 4-12に、NTTドコモについて、日米欧中韓への特許出願全体に関する、注目出願人

別-出願先国別出願件数推移及び出願件数比率(出願先:日米欧中韓、出願人:NTTドコ

モ、優先権主張:2010-2014年)を示す。

図 4-12 注目出願人別-出願先国別出願件数推移及び出願件数比率(出願先:日米欧中韓、出願人:NTTドコモ、優先権主張:2010-2014 年)

429

301

456

342

96

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

500

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年

出願先国別出願件数

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 合計

優先権主張 2010-2014年

出願先国

合計件数

日本

600件

36.9%

米国

366件

22.5%

欧州

310件

19.1%

中国

279件

17.2%

韓国

69件

4.2%

合計

1,624件

注:2013年以降は、データベース収録の遅れやPCT出願の各国移行のずれ等により、全データを反映していない可能性がある。

b) 注目出願人:クアルコム

図 4-13に、クアルコムについて、日米欧中韓への特許出願全体に関する、注目出願人

別-出願先国別出願件数推移及び出願件数比率(出願先:日米欧中韓、出願人:クアル

コム、優先権主張:2010-2014年)を示す。

- 34 -

図 4-13 注目出願人別-出願先国別出願件数推移及び出願件数比率(出願先:日米欧中韓、出願人:クアルコム、優先権主張:2010-2014年)

1,630

1,180

1,333

1,212

295

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年

出願先国別出願件数

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 合計

優先権主張 2010-2014年

出願先国

合計件数

日本

931件

16.5%

米国

1,733件

30.7%

欧州

989件

17.5%

中国

1,040件

18.4%

韓国

957件

16.9%

合計

5,650件

注:2013年以降は、データベース収録の遅れやPCT出願の各国移行のずれ等により、全データを反映していない可能性がある。

c) 注目出願人:エリクソン

図 4-14に、エリクソンについて、日米欧中韓への特許出願全体に関する、注目出願人別

-出願先国別出願件数推移及び出願件数比率(出願先:日米欧中韓、出願人:エリクソン、

優先権主張:2010-2014年)を示す。

図 4-14 注目出願人別-出願先国別出願件数推移及び出願件数比率(出願先:日米欧中韓、出願人:エリクソン、優先権主張:2010-2014年)

379

471

658

444

102

0

100

200

300

400

500

600

700

0

50

100

150

200

250

300

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年

出願先国別出願件数

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 合計

優先権主張 2010-2014年

出願先国

合計件数

日本

96件

4.7%

米国

880件

42.8%

欧州

695件

33.8%

中国

315件

15.3%

韓国

68件

3.3%

合計

2,054件

注:2013年以降は、データベース収録の遅れやPCT出願の各国移行のずれ等により、全データを反映していない可能性がある。

d) 注目出願人:華為技術

図 4-15に、華為技術について、日米欧中韓への特許出願全体に関する、注目出願人別-

出願先国別出願件数推移及び出願件数比率(出願先:日米欧中韓、出願人:華為技術、優

先権主張:2010-2014 年)を示す。

- 35 -

図 4-15 注目出願人別-出願先国別出願件数推移及び出願件数比率(出願先:日米欧中韓、出願人:華為技術、優先権主張:2010-2014年)

209

331

504 506

179

0

100

200

300

400

500

600

0

50

100

150

200

250

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年

出願先国別出願件数

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 合計

優先権主張 2010-2014年

出願先国

合計件数

日本

56件

3.2%

米国

476件

27.5%

欧州

327件

18.9%

中国

806件

46.6%

韓国

64件

3.7%

合計

1,729件

注:2013年以降は、データベース収録の遅れやPCT出願の各国移行のずれ等により、全データを反映していない可能性がある。

e) 注目出願人:LG電子

図 4-16に、LG電子について、日米欧中韓への特許出願全体に関する、注目出願人別-出

願先国別出願件数推移及び出願件数比率(出願先:日米欧中韓、出願人:LG電子、優先権

主張:2010-2014年)を示す。

図 4-16 注目出願人別-出願先国別出願件数推移及び出願件数比率(出願先:日米欧中韓、出願人:LG 電子、優先権主張:2010-2014 年)

754

1,013 973

818

75

0

200

400

600

800

1,000

1,200

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

500

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年

出願先国別出願件数

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 合計

優先権主張 2010-2014年

出願先国

合計件数

日本

280件

7.7%

米国

1,555件

42.8%

欧州

504件

13.9%

中国

547件

15.1%

韓国

747件

20.6%

合計

3,633件

注:2013年以降は、データベース収録の遅れやPCT出願の各国移行のずれ等により、全データを反映していない可能性がある。

5. 技術区分別出願件数比率動向

(1) 課題軸

各出願年の総出願件数を 100 として算出した課題軸(中項目)ごとの出願件数比率を、

図 4-17に示す。

2010 年から 2014 年の出願件数比率までの変化の仕方は項目により一様ではないが、こ

こでは 2010年と 2014 年の出願件数比率を比較し、2 倍以上に増加している中項目を注目

課題と捉えた。この観点での注目課題には、ヒューマンインターフェイス機能改善、低遅

延化、高速移動端末がある。

合計件数では、高速大容量化(47.2%)が圧倒的に多く、大きく離れて、高信頼化(15.8%)、

低消費電力化(10.2%)、多数端末対応(8.8%)と続く。なお、括弧内は総出願件数に対する

各項目の合計件数の比率を示す。

- 36 -

図 4-17 技術区分別出願件数比率推移(出願先:日米欧中韓、課題軸 (中項目)、出願年別比率、優先権主張 2010-2014年)

2,618

3,439

18,544

1,382

4,033

6,227

2,081

355

267

7,805

技術区分別‐合計件数

3.3 6.5 7.4 7.9 10.7

8.9 19.0 4.2 4.4 5.9

55.0 50.6 38.7 46.1 47.1

3.3 5.3 2.7 2.6 4.0

8.6 10.1 11.7 10.4 10.5

15.3 18.4 14.9 13.0 21.1

3.6 7.3 4.4 2.7 13.9

0.6 1.5 0.4 0.8 1.7

0.3 0.9 0.5 0.9 1.3

14.9 13.0 31.5 20.5 14.3

優先権主張:2010-2014年

低遅延化

多数端末対応

高速大容量化

多様化

低消費電力化

高信頼化

低コスト化

高速移動端末

HI機能改善

その他の課題

技術区分(課題軸:中項目)

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年出願年(優先権主張年)

HI:ヒューマンインタフェース

注:2013年以降は、データベース収録の遅れやPCT出願の各国移行のずれ等により、

全データを反映していない可能性がある。

比率は、各出願年(優先権主張年)の総出願件数を100として算出

10/14

比率

3.2

0.7

0.9

1.2

1.2

1.4

3.8

2.8

4.0

1.0

総出願件数:39,299件

(2) 技術軸

各出願年の総出願件数を 100 として算出した技術軸(中項目)ごとの出願件数比率を、

図 4-18に示す。

2010 年から 2014 年の出願件数比率までの変化の仕方は項目により一様ではないが、こ

こでは 2010年と 2014 年の出願件数比率を比較した場合、、2倍以上に増加している中項目

を注目技術と捉えた。この観点での注目技術には、周波数資源活用(2.2 倍)、通信サービ

ス機能(2.3倍)、アプリケーションレベルサービス機能(2.3倍)がある。

合計件数では、無線アクセス(40.9%)、制御方式(38.3%)、信号制御(34.0%)が多く、周

波数効率(25.7%)、通信サービス機能(21.1%)が続く。なお、括弧内は総出願件数に対する

各項目の合計件数の比率を示す。

- 37 -

図 4-18 技術区分別出願件数比率推移(出願先:日米欧中韓、技術軸 (中項目)、出願年別比率、優先権主張 2010-2014年)

7.8 9.8 8.1 8.8 17.5

25.6 24.8 26.9 25.1 26.2

38.1 41.6 47.3 37.6 36.0

37.4 33.8 33.4 34.7 26.1

32.8 38.5 39.0 42.2 41.0

5.6 6.8 8.7 8.5 8.2

12.1 21.4 24.3 23.9 28.0

0.9 1.4 1.3 2.2 2.0

1.5 3.9 2.9 2.4 2.7

優先権主張:2010-2014年

周波数資源活用

周波数利用効率

無線アクセス網

信号制御

制御方式

網機能

通信サービス機能

APPサービス機能

その他の技術

技術区分(技術軸:中項目)

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年出願年(優先権主張年)

3,660

10,090 16,077

13,365

15,043

2,950

8,302

579

1,067

技術区分別‐合計件数

APP:アプリケーションレベル

注:2013年以降は、データベース収録の遅れやPCT出願の各国移行のずれ等により、

全データを反映していない可能性がある。

比率は、各出願年(優先権主張年)の総出願件数を100として算出

10/14

比率

2.2

1.0

0.9

0.7

1.2

1.5

2.3

2.3

1.8

総出願件数:39,299件

- 38 -

第 5章 標準規格・提案動向

第 1節 概要

調査対象は、3GPPの標準規格の内、TS36.211、TS36.212、TS36.213、TS36.216、TS36.300、

TS36.306、TS36.321、TS36.331、TS36.423、TS22.220 に関する、2015 年までに TSG8で承認

され、標準規格に採用された Change Request(CR)である。表 5-1に各 TS(Technical

Specification)の表題の一覧を示す。

表 5-1 調査対象標準規格

TS番号 タイトル

TS36.211 LTE; Evolved Universal Terrestrial Radio Access(E-UTRA);

Physical channels and modulation

TS36.212 LTE; Evolved Universal Terrestrial Radio Access(E-UTRA);

Multiplexing and channel coding

TS36.213 LTE; Evolved Universal Terrestrial Radio Access(E-UTRA);

Physical layer procedures

TS36.216 LTE; Evolved Universal Terrestrial Radio Access(E-UTRA);

Physical layer for relaying operation

TS36.300 LTE; Evolved Universal Terrestrial Radio Access(E-UTRA);

and Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network(E-UTRAN);

Overall description Stage2

TS36.306 LTE; Evolved Universal Terrestrial Radio Access(E-UTRA);

User Equipment(UE) radio access capabilities

TS36.321 LTE; Evolved Universal Terrestrial Radio Access(E-UTRA);

Media Access Control(MAC) protocol specification

TS36.331 LTE; Evolved Universal Terrestrial Radio Access(E-UTRA);

Radio Resource Control(RRC);

Protocol specification

TS36.423 Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network(E-UTRAN);

X2 Application Protocol(X2AP)

TS22.220 Universal Mobile Telecommunication System(UMTS);

Service requirement for Home Node B(HNB) and Home eNode B(HeNB)

CRは 3GPPの各 Working Group(WG)のメンバーにより提案され、各 WGで合意したものがさ

らに、Specification Group の総会で承認された TSの変更内容を示す寄書である。

CRは、その目的により F、A、B、C、Dの 5つのカテゴリに分類されている。

8 Technical Specification Group:技術仕様化グループ

- 39 -

表 5-2に各カテゴリの持つ意味を示す。

表 5-2 Change Request のカテゴリ

カテゴリ カテゴリの意味

F correction

A corresponds to a correction in an earlier release

B addition of feature

C functional modification of feature

D editorial modification

表 5-2のカテゴリの意味により明らかなように、実際に標準規格の仕様に大きな影響を与

えている CRはカテゴリ Bとカテゴリ Cに属するものであると考えてよい。

本章では、調査対象の TS に関する、全体で 2,541 件の CR の内、カテゴリ B、C に属して

いる 516件について調査を行った。

第 2節 全体動向調査

図 5-1に、日米欧中韓の各国籍の企業について、企業国籍別標準規格・提案件数推移及び

標準規格・提案件数比率(発行年:2007-2015 年)を示す。

図 5-1 企業国籍別標準規格・提案件数推移及び標準規格・提案件数比率(発行年:2007-2015年)

69

85

74

49

76

21

95 101

0

20

40

60

80

100

120

0

5

10

15

20

25

30

35

40

2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

企業国籍別標準規格・提案件数

発行年(

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

出願人国籍

合計件数

日本国籍

44件

8.5%

米国籍

53件

10.3%

欧州国籍

163件

31.6%

中国籍

93件

18.0%

韓国籍

39件

7.6%

その他

124件

24.0%

合計

516件

(その他には、3GPP でのエディター、ラポーター等からの提案を含む)

第 3節 技術区分別標準規格・提案動向調査

1. 技術区分別標準規格・提案件数推移

(1) 技術区分:課題軸

図 5-2に、課題軸について、技術区分別標準規格・提案件数推移(課題軸、発行年:

2007-2015年)を示す。

- 40 -

図 5-2 技術区分別標準規格・提案件数推移(課題軸、発行年:2007-2015 年)

7 9

97

82

54

87

25

107 108

0

20

40

60

80

100

120

0

10

20

30

40

50

60

70

80

2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

技術区分別標準規格・提案件数

発行年

低遅延化 多数端末対応 高速大容量化 多様化低消費電力化 高信頼化 低コスト化 高速移動端末HI機能改善 その他の課題 合計

項目

合計件数

HI:ヒューマンインタフェース

(2) 技術区分:技術軸

図 5-3に、技術軸について、技術区分別標準規格・提案件数推移(技術軸、発行年:

2007-2015年)を示す。

図 5-3 技術区分別標準規格・提案件数推移(技術軸、発行年:2007-2015 年)

8 10

93

77

51

87

23

102 107

0

20

40

60

80

100

120

0

5

10

15

20

25

30

35

40

2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

技術区分別標準規格・提案件数

発行年

周波数資源活用 周波数利用効率 無線アクセス網 信号制御 制御方式

網機能 通信サービス機能 APPサービス機能 その他の技術 合計

項目

合計件数

APP:アプリケーションレベル

- 41 -

(3) 技術区分:応用産業軸

図 5-4に、応用産業軸について、技術区分別標準規格・提案件数推移(応用産業軸、発

行年:2007-2015年)を示す。

図 5-4 技術区分別標準規格・提案件数推移(応用産業軸、発行年:2007-2015年)

0

1

2

0 0

3

0

3

2

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

0

1

1

2

2

3

3

4

2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

技術区分別標準規格・提案件数

発行年

動的ホットスポット 高速移動空間 局所的トラフィック 自動車運転広帯域IoT 農業分野 災害対応 放送サービスゲーム・娯楽 ロボット遠隔操作 合計

ユースケース

合計件数

2. 技術区分別-企業国籍別標準規格・提案件数

(1) 技術区分:課題軸

図 5-5に、課題軸における日米欧中韓の各国籍の企業について、技術区分別-企業国籍

別標準規格・提案件数(課題軸、発行年:2007-2015年)を示す。

図 5-5 技術区分別-企業国籍別標準規格・提案件数(課題軸、発行年:2007-2015年)

2 2 1 1 5

4 8 27 12 5 20

20 26 77 57 27 5 56

1 4 2 4

2 3 8 4 4

6 9 10 13 5 21

5 2 24 11 4 1 28

1

2 1

9 6 19 4 2 1 5

低遅延化

多数端末対応

高速大容量化

多様化

低消費電力化

高信頼化

低コスト化

高速移動端末

HI機能改善

その他の課題

技術区分

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 3GPP

企業国籍HI:ヒューマンインターフェイス

- 42 -

(2) 技術区分:技術軸

図 5-6に、技術軸における日米欧中韓の各国籍の企業について、技術区分別-企業国籍

別標準規格・提案件数(技術軸、発行年:2007-2015年)を示す。

図 5-6 技術区分別-企業国籍別標準規格・提案件数(技術軸、発行年:2007-2015年)

3 3 7 1

8 6 37 18 7 2 10

10 16 33 19 17 43

9 5 36 9 5 18

9 15 36 23 6 4 22

2 1 4 3 3

5 12 18 20 4 28

1 2 4 2

2 6 1 1 2

周波数資源活用

周波数利用効率

無線アクセス網

信号制御

制御方式

網機能

通信サービス機能

APPサービス機能

その他の技術

技術区分

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 3GPP

企業国籍APP:アプリケーションレベル

- 43 -

第 6章 総合分析と提言

本章では、第 2章の市場環境調査、第 3章の政策動向調査、第 4章の特許動向調査、第 5章

の標準規格・提案動向調査に関する結果を基に、本調査が対象とする技術領域で日本企業や政

府機関が何をなすべきかの観点で総合的に分析し、提言を行った。

第 1節 総合分析

1. 5G時代の技術領域に関する分析

5Gは従来からの移動体無線技術の高速・大容量化路線に加え、ユースケース指向で、超低

遅延化、多数同時接続、を代表とする新たな路線の追加がされている。その現れとして、本

調査で示すように、課題では、低遅延化、高速移動端末などが大きく増加し、技術では、仮

想網、端末間通信、多システム利用、位置情報、などの増加が顕著となっている。

これは、従来からの課題、技術に加え、新たな路線の課題、それを解決する新たな技術を

切り口とした技術開発が動き始めていることを示していると考えられる。

5Gの特徴は、従来からの通信ネットワークを対象とした移動体、無線技術の高速大容量化

路線に加え、新たに超低遅延や多数同時接続の路線を加え、社会的なインパクトが大きい

ユースケースを目指している。

-課題、技術、応用分野の注目度分析-

5Gに向けた技術開発は、LTE-Advancedの勧告作成を完了した 2011年前後が開始時期と考

えられ、今回の特許出願動向の優先権主張年の開始年 2010 年は緒に就いた時期と考えられ

る。このため、2010 年の特許出願件数比率を基準とし、最終調査年 2014 年の特許出願比率

の変化が大きい項目を、新たな課題、新たな技術、新たな応用分野と考え、各分析軸の中項

目、小項目の変化の観点で分析を行った。

具体的には、特許出願の 3つの分析軸について、中項目、小項目ごとの各年の出願件数比

率について、2010年を基準に比率の変化を分析した。(以下、文中に(5G)、(非 5G)と示して

いるのは、5G の要求条件に適合するか、あるいは 5G であることが明細書中に明記されてい

る特許文献に関する記述には(5G)と表記し、それ以外の特許文献に関する記述には(非 5G)

と表記する。5G、非 5Gの両方に関係する項目には特に示していない。)

その結果、課題軸では、中項目で、①ヒューマンインターフェイス機能改善、②低コスト

化、③低遅延化、④高速移動端末、小項目で、⑤通信フレーム短縮(非 5G)、⑥シンボル高

速化(非 5G)、⑦⑧網構成の最適化(5G、非 5G)、⑨利用周波数の拡大(5G)、⑩その他の高

速大容量化(5G)、⑪多種 RAT対応(5G)、⑫その他の低コスト化が大きく増加しており、今後

重要性を増してくると考えられる。これらの項目のうち⑨利用周波数の拡大(5G)は 2014

年の出願件数比率が突出して多いものの、他の項目は出願件数比率は増加傾向にある。特に、

③低遅延化と⑦網構成の最適化(非 5G)は出願件数比率が毎年単調に増加している。

また、技術軸では、中項目で、①周波数資源活用、②通信サービス、③アプリケーション

レベルサービス、小項目で、④アンライセンス帯利用、⑤ミリ波伝送、⑥無線アクセス方式、

⑦各種非直交多元接続、⑧仮想網、⑨多システム利用、⑩TDD UL/DL 構成、⑪端末間通信、

⑫位置情報、⑬無線セキュリティが大きく増加しており、今後重要性を増してくると考えら

れる。これらの項目のうち⑥無線アクセス方式と⑩TDD UL/DL構成は 2010年の出願件数比率

- 44 -

が突出して少ないものの、他の項目は出願件数比率は増加傾向にある。特に、④アンライセ

ンス帯利用、⑦各種非直交多元接続、⑪端末間通信および⑬無線セキュリティは出願件数比

率が毎年単調に増加している。

応用産業軸(中項目)では、広帯域 IoT、自動車運転が大きく増加しており、重要性を増

している。特に、広帯域 IoTは、数量・比率とも大きい。

これらの課題軸、技術軸の項目を、ユースケースの観点から分析すると、例えば、課題軸

(中項目)では、ロボット遠隔操作などの「低遅延化」、高速鉄道などの「高速移動」、を課

題とする特許出願件数が大きく増加している。これらの課題を解決する技術として、技術軸

(小項目)では、従来の無線ネットワークサービスにとらわれない、低遅延化の解決手段と

なる「端末間通信」、「TDD UL/DL構成」技術、高速移動でカギを握ると考えられる、「位置情

報」、「仮想網」技術を対象とした特許出願件数の大きく増加している。また、これらの普及

促進のための「低コスト化」も大きく増加している。

これらは、従来の移動体無線技術の高速・大容量化路線の枠にとらわれない、応用分野指

向の課題、技術であり、既に活発な技術開発が進められていると捉える事ができる。

さらに 5Gの技術検討は 2015年以降も急速に進展しており、2015年までの出願動向からは

捉えきることのできなかった重要なトレンドが形成されつつあることに注意しなければな

らない。その代表例がスライスである。スライスは、無線回線を含む各種の独立したネット

ワーク資源を、新たなニーズを実現するネットワーク機能や多様なサービスを同時実現する

ために、ソフトウェア技術を駆使するものであり、資源の独立性(resource isolation)を維

持しつつ、プログラム可能性(Programmability)で新たな時代を築くものである。3GPP に

おいても、スライス概念のエンド・ツー・エンドへ適用が論じられ、無線アクセス(RAN)

のスライス技術の標準化の検討が TSG-RAN-WG3 の場で進められている。

2. 日本の強みを活かすための分析

-日本国籍出願人の現状分析-

技術領域では、出願件数で日本国籍が一位の技術項目は、「各種非直交多元接続」(中項目:

周波数利用効率)、その他の「周波数利用効率」(中項目:周波数利用効率)、「セル間協調」

(中項目:無線アクセス網)、「制御プレーン」(Cプレーン)(中項目:信号制御)となってい

る。このうち、「各種非直交多元接続」は大きく増加しており、今後重要性が増してくる技

術分野と考えられる。

多岐に渡るユースケースを目指す 5G サービスの領域は、様々な技術を組み合わせること

を必要としており、優位な技術領域を持つことが、ユースケースで優位な位置を確保できる

可能性がある。

自動車運転分野は 5G の応用分野として最も早く実用化されることが期待されている分野

であり、市場規模も大きく、我が国全体での出願数も多い点で注目される分野である。

「自動車運転」のユースケースに関する特許出願件数は 121件であり、2010年と比べ、2014

年は 3倍強に伸びてきており、注目度の高い事業分野となっている。

この分野では、日本国籍出願人の出願件数は 29件と日米欧中韓の中で 2位となっており、

また、この調査期間に 2 件以上の優先権主張特許を保有する出願人 21 者の内、ユースケー

スを意識した特許出願が 15%以上の出願人は 11 者あり、日米欧中韓の大手自動車企業、大学

等の研究機関となっている。このような状況から、既に、5G関連企業だけでなく、それらと

- 45 -

同等数の自動車産業関連企業の参画が進んでいることが推測できる。

「自動車運転」への出願人別出願件数と「自動車運転」への特許出願件数比率が特に高い

出願人は、ゼッタ R&D(米国)、コンチネンタル(ドイツ)、現代自動車(韓国)、デンソー、

トヨタ自動車、沖電気、ゼネラルモーターズ(米国)、本田技研工業、清華大学(中国) 、マ

スターノート(英国)、アヴェイロ大学(ポルトガル)の 11者となっている。

このうち、日本の出願人は、デンソー、トヨタ自動車、沖電気、本田技研工業の 4 者で、

欧州 3者、米国 2者、中国 1者、韓国 1者、に対し、プレイヤー数で先行している。

3. 5Gとユースケースの連携に関する分析

-応用分野の状況と出願動向からみた分析-

5Gのユースケースを意識した出願件数は、広帯域 IoT、放送サービスが多く、また、広帯

域 IoT、自動車運転が大きく増加している。

しかし、広帯域 IoT は、自動車運転や災害時、ゲーム、農業分野などと比べ、出願件数に

対する出願人数の割合が少ない。

これは、自動車運転と広帯域 IoTへの出願人別分析に示すように、自動車運転は既に半数

がユースケースを意識した自動車関連出願人となっているのに対し、広帯域 IoTでは、全ファ

ミリー件数に占める広帯域 IoTへのファミリー件数の比率の高い出願人の割合が 1/4程度と

なっており、特定の出願人による権利の寡占化が進んでいないものと考えられる。なお、自

動車運転の応用分野への展開が先行している要因としては、自動車業界内では、ITS の導入

検討が 1970 年代から進められ9、情報通信と自動車をつなぐ人材の育成などが進んでいたこ

とが考えられる。

しかしながら、これらを含むユースケースに関連する技術者にとって、5G 関連の技術は、

使用する用語、判断基準など独自の技術世界を形成しており、高い専門性を有することから、

精通する技術者の育成には、長い期間を要する。同様に、ユースケース側の技術者も、それ

ぞれに高い専門性を持つ独自の技術世界を形成している。

5Gの装置サービス供給側、ユーザーについて、メーカー、オペレーター等、ICT側の技術

を知っている人材は個別のユースケースの詳細について、必ずしも深く理解しているとはい

えない。同様に、ユースケース側の技術の専門家は、日々技術革新が進む ICT技術(とりわ

け 5Gに関する技術)、それも複数の領域の ICT 技術の現状を的確に理解することは、困難な

場合が多いとの指摘がある。

このような状況から、従来の通信分野利用から、多様な局面での利用を目指す 5G、及び

5Gが目指す時代において、ICT技術を活用し、個々のユースケースに関連するビジネスで優

位に立つためには、ICT 側、ユースケース側、の双方の目標・課題・技術などをよく理解し

て、その実現に向けて、効果的、効率的に両者の橋渡しを行える技術者が、大量に必要となっ

てくると考えられる。現状では、上記の橋渡し的な役割を果たしうる人材がサービス供給側、

各ユースケースにおけるユーザー側それぞれで不足しており、このような人材や、人材を活

9 ITSは、1970年代の黎明期、1996年からのファーストステージ、2005年からのセカンドステージ、2013年から

の次世代 ITSと長い歴史を有している。高度道路交通システム(ITS)―歴史と現状―、国立国会図書館調査及び

立法考査局専門調査員議会官庁資料調査室主任、原井直子、

http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_9616691_po_078002.pdf?contentNo=1

- 46 -

かせる仕組みの構築が、5Gの普及、活用を早期に行うために、重要な意味を持つものと考え

られる。

5Gの普及を早め、その能力を社会の中で最大限に発揮させるためには、サービス供給側と

ユーザー側の橋渡しを行える人材を大量に供給する必要があり、そのような人材を効率的に

育成するためには、橋渡し役として望まれる技術者像の明確化、並びに、そのような人材が

育つための仕組みを構築することが望まれている。

そして、ドイツが主導する欧州のインダストリー4.0 では、中小企業の育成強化も主な目

的となっている。欧州と同様に、中小企業も参画でき、研究開発から事業展開、人材育成な

どの経営支援を進めつつ、5Gをより多様に活用できる社会の構築を支援する仕組みづくりが

必要である。

4. 技術開発の協調・協力の重要性に関する分析

-5Gの早期提供を目指す技術開発(標準化の活動状況分析)-

5Gは IoTの通信部分を支える重要な技術でもあり、IoTは ICT産業のレイヤー間を連携さ

せ社会的に大きな役割を担うこととなる。このような役割を早期に実現し、5Gの普及領域を

拡大していくためには、5Gの低消費電力化、高信頼化、低コスト化などの従来からの課題に

加え、ユースケースからの期待に応える、低遅延化、多端末対応、高速大容量化、多様化な

どの課題を早期に解決していく必要がある。また、5G を利用するユーザー側の立場からは、

ユーザーに使いやすい形でネットワークを早く提供してほしいとの要望がある。

これらの課題の解決には多様な観点からの評価や無線ネットワークの使いやすさの観点

を重視した標準規格の制定を早期に実現することが求められ、そのためには、キャリアやベ

ンダー及びユースケースの利用者側で、協力・協調を重視して進めることが重要となると考

えられる。

ここで、特許出願に比較して標準規格提案数が多い領域は、標準規格として策定する必要

がある領域であるものの、企業の権利化が活発に行われていないことから、標準規格の策定

が協調して行われている技術項目であると考えられる。本調査の結果によれば同時配信

(MBMS 等)、キャリアアグリゲーション、セル選択・ハンドオーバー、多システム利用、な

どの複数システムにまたがる技術項目は協力・協調の重要な項目であると考えられる。

5. 要素技術間のインターフェイスの標準化の重要性の観点からの分析

-システム、サービス、技術の連携を目指す技術項目、課題項目-

5G は社会にインパクトを与える新たなユースケースの開拓を目指すものであり、5G が想

定する応用分野には、多様な産業分野が対象となり、ビジネスパートナーづくりを含め「5G

ビジネス戦略」をたてることの重要性が指摘されている。

また、新たなユースケースの開拓の実現に向けては、これまでの人を中心としたネット

ワークから、物を中心としたネットワーク(IoT)の活用を進めるために、多様なサービス

を提供する ICT関連産業との間でのサービスと通信技術の両面での連携、協調が不可欠と認

識されている。

更に、IoT の活用が進むにしたがって、ICT の階層化が進むとともに、応用分野は多様化

が進んでいる。従来は IT、ICT と呼び分けられていた技術を組み合わせて使用することで、

あたかも一つのシステムとして働くことが求められている。

- 47 -

一方で、これらの階層を構成する技術、応用分野に対応する技術は、それぞれ専門化が進

んでいる。多様化、専門化が進んでいる ICT及びその関連技術をシステムインテグレーター

が適切に活用するには、システム構築に必要な情報を活用者視点で提供する仕組みを構築す

ることが効果的であると考えられる。

本調査でも、多様なシステムや要素技術間の連携が必要になる技術項目とされている、通

信サービス機能、アプリケーションレベルサービス機能、仮想網、多システム利用、などの

出願件数の比率が増加してきている。同時に種々の連携を目指す課題項目として、網構成の

最適化、多種 RAT対応、などの出願件数の比率が増加してきており、5Gの技術開発の中でも、

「多様なシステムや要素技術間の連携を図る技術」の重要性が増してきていると考えられる。

このような背景から、各ユースケースに応じた産業技術とネットワークシステム側の技術

との連携の必要性が増しており、これを効果的に行うには、5Gの活用者としてのシステムイ

ンテグレーターが効率的にシステム構築を行えるよう、技術の協調やシステム連携のための

インターフェイスを標準化し、誰にでも分かりやすく活用できるようなインターフェイスと

していくことが望ましい。

このためには、5Gと連携する ICT技術の特徴やその使い方について、それぞれの専門家が、

各領域の知見やノウハウを持ち寄り、連携すべき技術との API、プロトコルや、共通化され

た用語での活用ガイドラインなど、ユースケースに適用すべき要素技術の組合せ、要素技術

間にある階層を意識した上で、それぞれの要素技術間のインターフェイスの標準化を進め、

効果的で効率的な利用の促進することが望まれている。

- 48 -

第 2節 提言

提言1 5G時代の注目すべき技術領域に関する提言

出願件数が増加している技術区分は、新たなユースケース実現を指向しており、この領

域での主導権を確保する技術開発に注力すべきである。

5Gは従来からの移動体無線技術の高速・大容量化路線に加え、ユースケース指向で、超低

遅延化、多数同時接続を代表とする新たな路線が追加されている。その現れとして、本調査

で示すように出願件数比率が増加している項目のうち、課題軸では、「低遅延化」、「高速移

動端末」などが大きく増加しており、技術軸では、「仮想網」、「端末間通信」、「多システム

利用」、「位置情報」などが大きく増加している。

これは、従来からの課題、技術に加え、新たな路線の課題、それを解決する新たな技術を

切り口とした技術開発が動き始めていることを示していると考えられる。

これらの動きに遅れることなく、特許の出願動向も注視しつつ、従来の技術にとらわれず、

ユースケース指向での技術開発を進めていくべきである。

提言 2 日本の強みを生かすための提言

日本に強みのある技術領域を競争力の強化に生かし、また、強みのあるユースケース領

域では、企業間の連携を強化することにより、市場優位を確立するために注力していく

べきである。

出願件数で日本国籍が一位の「各種非直交多元接続」、「セル間協調」、「制御プレーン(C

プレーン)」の技術領域は、今後も引き続き重要性の高い技術領域であると考えられるから

引き続き注力し、優位性を維持すべきである。

また、5Gを代表するユースケースである自動車運転分野は日本が強みを有する領域であり、

自動車産業関連の企業と 5G 関連企業が連携し、移動体無線通信技術領域に関する特許出願

を推進するとともに、企業間での連携を強化し、この分野での市場優位を確立していくべき

である。

提言 3 5Gとユースケースの連携に関する提言

5G の活用を促進するために、5G とユースケースとの間で技術のかけ橋となれる技術

者の育成、育成のための仕組みの整備、及び社会の支援体制・推進体制などの仕組みの

整備が必要である。

5Gシステムの普及には、ネットワーク技術と利用者側技術の両者の間での技術のかけ橋が

重要な役割となる。そのような役割を果たす技術者像の確立、技術者育成のための仕組みの

整備が必要である。

また、5Gシステムは、企業それぞれの課題に適合する、多様なシステム・サービスへの適

合性を持っている。これらの多様なシステム・サービスの実現のためには、大企業だけでな

く中小企業が活躍することも期待される。中小企業による 5G の活用を促進するための、資

金調達や技術・経営の支援などの枠組みを構築するべきである。

- 49 -

提言 4 技術開発の協調・協力に関する提言

ユースケース側技術者にとって使いやすい形の 5G システムを早期に提供するため、標

準化などの場を生かし協調した技術開発を積極的に行うべきである。

5Gは IoTの通信部分を支える重要な技術でもあり、IoTは ICT産業のレイヤー間を連携さ

せ社会的に大きな役割を担うこととなる。このような役割を早期に実現し、5Gの普及領域を

拡大していくためには、5Gの「低消費電力化」、「高信頼化」、「低コスト化」などの従来から

の課題に加え、ユースケースからの期待に応える、「低遅延化」、「多端末対応」、「高速大容

量化」、「多様化」などの課題を早期に解決していく必要がある。また、5Gを利用するユーザー

側の立場からは、ユーザーに使いやすい形でネットワークを早く提供してほしいとの要望が

ある。

これらの課題の解決には多様な観点からの評価や無線ネットワークの使いやすさの観点

を重視した標準規格の制定を早期に実現することが求められ、そのためには、キャリアやベ

ンダー及びユースケースの利用者側で、協力・協調を重視して進めるべきである。

また、ユースケース側の視点に立った国際的な議論の場が今後は重要になると思われる。

5Gを利活用したキラーアプリやキラービジネスの開拓につながるよう、各国の一次産業・二

次産業・三次産業に呼びかけて、幅広い分野の技術者を呼び込める場の早期立ち上げが望ま

れる。

提言 5 要素技術間連携のための標準化に関する提言

5G を効果的かつ簡易に活用できるようにするために、多様な周辺システムと連携する

ためのインターフェイスの標準化を促進すべきである。

多様なシステムや要素技術間の連携の必要性が増しており、これを効果的に行うには、5G

の活用者としてのシステムインテグレーターが効率的にシステム構築を行えるよう、技術の

協調やシステム連携のためのインターフェイスを標準化し、誰にでも分かりやすく活用でき

るようなインターフェイスとしていくことが望ましい。

このためには、5Gと連携する ICT技術の特徴やその使い方について、それぞれの専門家が、

各領域の知見やノウハウを持ち寄り、連携すべき技術との API、プロトコルや、共通化され

た用語での活用ガイドラインなど、ユースケースに適用すべき要素技術の組合せ、それらの

要素技術間にある階層を意識した上で、それぞれの要素技術間のインターフェイスの標準化

を進め、効果的で効率的な利用の促進を目指すべきである。

平成28年度特許出願技術動向調査 -LTE-Advanced 及び 5G に向けた移動体無線通信システム-

委員会名簿

(敬称略、所属・役職等は平成29年3月現在) 委員長

太田 現一郎 YRP 技術顧問 早稲田大学大学院国際情報通信研究センター 元客員教授

委員 安部田 貞行 株式会社 NTT ドコモ 無線アクセス開発部 担当部長 鹿倉 義一 日本電気株式会社 モバイル RAN 事業部 シニアエキスパート 菅沼 和弘 正林国際特許商標事務所 弁理士 中尾 彰宏 東京大学 大学院情報学環 教授 中村 隆治 富士通株式会社

ネットワークビジネス戦略室 プリンシパルエンジニア 樋口 健一 東京理科大学 理工学部電気電子情報工学科 教授 特許庁オブザーバ 河合 弘明 審査第四部 伝送システム 室長 廣川 浩 審査第四部 伝送システム 室長 松野 吉宏 審査第四部 伝送システム 審査官 石田 紀之 審査第四部 伝送システム 審査官 久慈 渉 審査第四部 伝送システム 審査官 篠田 享佑 審査第四部 伝送システム 審査官 和平 悠希 審査第四部 デジタル通信 審査官補 横田 有光 審査第四部 審査調査室 審査官 川瀬 正巳 総務部企画調査課知財動向班 技術動向係長 石黒 温子 総務部企画調査課知財動向班 技術動向係員 ○本調査の実施と報告書の作成にあたっては、本調査のために設置された上記委員から構成

される委員会の助言を活用した。