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第 3 章 原資料にあたる 3.1 原資料概説
114
3.1 原資料概説
3.1.1 原資料の探索にあたって
みなさんは「原資料」という言葉からどんなものを思い浮かべますか?本書では、
みなさんがレポートや論文などを書く際に「もと」となる資料を「原資料」と呼び
ます。つまり、考察の対象、あるいは自説の根拠となる資料のことです。研究分野
によっては、「一次資料」「原典」という言い方をする場合もあります。 原資料の情報探索をするにあたり、重要なポイントとして、主に次の 2 点が挙げ
られます。
原資料に対する正しい知識をもつ
原資料の探索から入手までの手順を理解する
これらは相互に関連していて、どちらか一方が欠けていても、情報探索に関する
知識としては、十分ではありません。 というのも、たとえ探索の技術にすぐれていたとしても、自分がどのような原資
料を必要としているのか、また、それがどのように探索の結果に表現されているの
かを理解していなければ、膨大な量の探索結果を前に途方にくれてしまうでしょう。 反対に、原資料に対する知識をもっていても、つまり必要とする原資料について
のビジョンが明確であっても、実際にそれがどこにあるのか、入手は可能か、とい
う情報を得ることができなければ、資料にたどりつけません。 原資料に対する正しい知識があってはじめて、探索に関する知識が生かされ、正
確で効率的な資料探索・入手のプロセスが実現します。 これら 2 つに関する具体的な知識については、後の項で詳しく解説しますので(前
者は3.1.2、後者は3.1.3 参照)、ここでは原資料の探索とはどのようなもので
あるのか、この 2 つのポイントから見ていきましょう。
図表 3-1 原資料探索のポイント
原資料に対する知識
を深めてこそ・・・
探索・入手が
効率よくできる!
3.1.1 原資料の探索にあたって
115
(1) 原資料に対する正しい知識をもつ
「原資料に対する正しい知識をもつ」というのは、自分の研究分野で取り扱う原
資料がどんなものなのか、内容だけではなく、所蔵機関での分類・整理の方法や資
料そのものの物理的な性質を含め、識別できるようによく理解しておくことです。 例えば、夏目漱石の『吾輩は猫である』を扱う場合、あらかじめタイトルを把握
しておくだけでは十分ではありません。本学の『Online Catalog』でこの本をタイ
トル名から検索しただけでも 25 件(2007 年 3 月現在)の検索結果が出ます。その
他の目録や他機関の所蔵も調べると、件数はさらに増えていきます。
図表 3-2 検索結果の一例
これらは同じタイトルの資料であっても、それぞれ異なる性質を備えています。 資料の内容について言うならば、版によって違いがありますし、また外国語に翻
訳されたもの、音声や映像を収録したものもありうるでしょう。
文庫本?全集?
自筆原稿?復刻版?
それとも・・・
第 3 章 原資料にあたる 3.1 原資料概説
116
・初版本
・改訂版
・音声資料
・映像資料
etc.
物理的な形態について言うならば、貴重な自筆原稿、手軽な文庫本、全集に収録
されているものなどの紙媒体の選択肢に加えて、マイクロフィルムも長年使われて
いる媒体の一つです。近年では、復刻版が CD-ROM などのデジタル媒体に収録さ
れることも多く、また、電子図書をはじめとする、オンラインで閲覧する資料もあ
ります。 利用する原資料の性質は、研究の内容によって異なります。場合によっては、性
質の異なる資料をいくつか比べて、違いを把握することが必要なこともあります。 また、資料の中には貴重なものや扱いが難しいものがありますので、利用の際の
注意点も知っておくことも重要です。 図書館をはじめとする所蔵機関では、多くの場合、資料が持つ様々な性質を踏ま
えた上で、整理を行っているので、資料ごとの細かい違いを意識した探索が可能と
なっています。 膨大な数の選択肢を前に途方にくれないためにも、みなさんには、これらの違い
を理解し、自分の研究にとって最も適した資料を識別する力を身につけてほしいと
思います。 原資料に対する正しい知識を持ち、適切なものを選んでこそ、レポートや論文の
中で説得力のある理論を展開することができるのです。
図表 3-3 原資料の様々な選択肢
様々な形態 様々な内容 膨大な選択肢
研究に適した資料を
正しく選び取る力をつけましょう!
3.1.1 原資料の探索にあたって
117
(2) 原資料の探索から入手までの手順を理解する
自分にどのような原資料が必要なのかが明確になり、また探索して得た結果の中
からそれを識別できるようになったら、次は、実際にその資料がどこにあるのか、
そして入手・閲覧にはどのような手続きが必要なのかを調べることになります。
近年の傾向として、原資料に関する情報は、実に様々な情報源に収められている
ことが挙げられます。従来の冊子体の目録や索引に加え、データベースも主要なツー
ルとして認識されていますし、ウェブ上には様々な情報が氾濫しています。それぞ
れの収録内容も異なりますので、複数のツールをうまく使いこなす必要があります。
入手・閲覧の方法についても同様の傾向が見られます。所蔵機関の利用に関する
情報をウェブサイトで確認できる場合や、オンラインで複写や閲覧の申し込みがで
きる場合が増えてきました。また、法令や統計、古典資料など、分野に限らず、ウェ
ブ上で資料そのものが公開されていることも多く、手軽に資料が入手できるように
なりました。
こういった多様な探索・入手のパターンの中から、基本的な、あるいは代表的な
ものだけを本書では紹介しています。しかし、これから紹介していく基本をしっか
りと身に着けていれば、そこから自分の研究内容により適した探索と入手のパター
ンを見出し、日々変化する状況にも対応していくことができるようになるでしょう。
図表 3-4 探索から入手までのパターン
基本を身に着け、探索・入手パターンを広げていきましょう!
入手
基本的なパターン
応用その 1
応用その 2
試行錯誤
第 3 章 原資料にあたる 3.1 原資料概説
118
3.1.2 書誌情報を読む
(1) 書誌情報とは
オンライン目録で読みたい本を検索したら、同じ出版者の同じタイトルの本なの
に、○版や△版といった、異なっているらしいものが沢山出てきて、どれを選んだ
らよいのか困った経験はありませんか。 オンライン目録などで見ることのできる、資料に関する情報(タイトル、著者名、
大きさ、出版者、発行年月日、版など)をまとめたものを「書誌」といいます。書
誌に記載されている内容が「書誌情報」です。 ここでは書誌情報が、図書館ではどのようなルールの下に扱われているのかを説
明します。実際の資料からどのように書誌情報が記述されるのかがわかれば、書誌
情報を見て、実際の資料がどんなものかを推測できるようになります。そして、冒
頭に挙げたような問題は、かなり改善されることでしょう。なお、古典資料に関し
ては3.2.1で説明します。
図表 3-5 書誌情報と資料
タイトル
著者
出版者
出版年
etc...
資料そのもの 書誌情報
どんな資
どんな書
3.1.2 書誌情報を読む
119
II A マートン,R.K. 社会
9
マ 30 社会理論と社会構造 Robert K. Merton 著
森 東吾等 訳
東京 みすず書房 昭和 43(1968)
576p 22cm
68-19081
(2) 書誌と目録
「書誌」という言葉は、二通りの意味で用いられます。一つ目は、「ある一つの
資料に関する情報」という意味です。オンライン目録に載っているような、一つ一
つの資料についての記述がそれにあたります。二つ目は、「集合体(資料のリスト)
としての書誌」という意味です。特定分野の資料の書誌を集めた「主題書誌」や、
ある国で刊行された書籍の書誌を網羅した「全国書誌」などがあります。 また、「集合体としての書誌」については、「目録」と呼ぶ場合もあります。こ
れには、書誌情報のみを収録したものもあれば、所蔵機関名などの所蔵情報もあわ
せて収録している場合もあります。本学の『Online Catalog』は、所蔵情報のある
目録の一つです。
図表 3-6 様々な書誌のかたち
様々な書誌のかたち
オンライン目録の書誌
目録カード
一つの資料についての書誌
集合体としての書誌
『東北大学所蔵和漢書古典分類目録』
『Online Catalog』
『日本全国書誌』など
第 3 章 原資料にあたる 3.1 原資料概説
120
(3) 書誌情報と所蔵情報
書誌情報として記載されているのは、あくまで資料に関する一般的な情報です。
どこにその資料があるのかという情報は、別途所蔵情報を確認する必要があります。
書誌情報と所蔵情報は異なる情報と捉えて下さい。 これは特に、雑誌や、定期的に刊行されるシリーズものの図書などを探す時に注
意が必要です。というのも、どの巻号を所蔵しているのかは、書誌情報だけを見て
も分からないからです。たとえば、下図を見て下さい。本学の『Online Catalog』の雑誌書誌には、基本項目として初号(1 号)についての情報が載っている場合が
多いですが、それは初号を所蔵している、という意味ではありません。あくまでそ
の雑誌全体に関する基本的な情報として、この雑誌がいつ発刊されたのかという情
報を記載しているのです。実際の所蔵は、所蔵情報を見ることによって、7 号以降
であることがわかります。(詳しい説明は『基本編』第 3 章 参照)
図表 3-7 書誌情報と所蔵情報
所蔵情報は別!
7 号以降を所蔵している
書誌情報と所蔵情報は別です
書誌には
初号(1 号)について
書いてあるけど・・・
書誌
所蔵
3.1.2 書誌情報を読む
121
(4) 版と刷
版や刷は、資料の内容に関連する重要な情報です。ここでは、「第○版」「第○
刷」といった記述が何を表しているのかを説明します。 ① 版とは
もともとは、インクを付けて紙面に印刷するための本の原型を「版」と呼びます。
版木のようなものをイメージするとわかりやすいでしょう。出版では、同一の版を
用いて印刷されたもの全体を一つの版(edition)と捉えます。 この原型に変更や修正、削除などが生じ、再び出版された場合は、これを別の版
とみなします。これを重版といい、「第 2 版」「改訂版」などと奥付や表紙に記載
されます。初版の場合は、書誌には版に関する記述が無いことも多いです。図書館
ではこの別の版それぞれが、別々の書誌となります。しかし、近年は媒体の多様化
によって、内容が同一でも収録媒体が異なれば、別の版、別の書誌となることが増
えていますので、注意が必要です。 また、資料そのものに「豪華版」「新装版」といった外装に関する表示がされて
いる場合、研究上重要な場合もありますが、通常版と内容が同一の場合は、図書館
では別の版とはみなしません。
図表 3-8 版(edition)とは
版(edition)と
版木をイメージ
してね!
「こころ」第B版 「こころ」第A版
同じ本であっても、版が違うと
内容も書誌も異なります
こころ
こころ
第 3 章 原資料にあたる 3.1 原資料概説
122
② 刷とは
刷とは、印刷することです。英語で printing と言えば、わかりやすいでしょう。 版は時間をおいて、何回も印刷されることがあります。これを増刷あるいは重刷
といいます。奥付などに「第○版 第 1 刷」「第○版 第 2 刷」と記載されており、
その資料が何回目の印刷に含まれていたのかがわかります。 ただし、刷の表示が異なっていても、同一の版である限り内容は同一です。
書誌との関連について言えば、書誌は原則として同じ内容のものについて 1 つの
書誌が対応しますので、同一の版の場合は、どの刷であっても書誌は同一です。そ
の場合、書誌には刷に関する記載がないこともあります。また、洋書の場合は、資
料そのものにも刷に関する表示が省略されていることがよくあります。
図表 3-9 刷(printing)とは
刷(printing)とは
「こころ」第A版
第 1 刷 第 2 刷 第 3 刷
同じ版なら、何回刷っても
内容・書誌は同じです
同じ版・同じ書誌
(第A版)
こころ
こころ
こころ
3.1.2 書誌情報を読む
123
③ 版および刷の表示に関する注意点
以上が、版および刷とは何か、という基本的な説明です。しかし、注意しなけれ
ばならないのは、このような版および刷の概念は、図書館での整理の仕方としては
広く浸透していますが、出版界においては必ずしも厳密ではないということです。 特に日本で出版されたものでは、版と刷の概念が混同して用いられている場合が
よくあります。たとえば、「重版」と出版者の広告にあり、資料そのものにも「第
2 版」と表示されていても、実際は、内容は初版と同一、つまり単なる「増刷」で
あったりします。その場合は、図書館では原則として、初版と同じ書誌に該当させ
ます。ですから、オンライン目録などの書誌情報と資料そのものに記載されている
版表示を比べたとき、必ずしも同じではない場合もあります。 また、内容に変更や修正、削除などがあったかどうかの判断の材料として、奥付
や外装の表示以外に、「まえがき」や「あとがき」があります。著者や編集者が修
正を加えた意図やその詳細について書いていることもありますので、資料が手元に
ある際は、判断の参考になります。 外国で出版されたものの場合は、出版国によっては、版や刷の概念がほとんど無
いところもあります。例えば、章立てが異なっているので改訂版と判断されたとし
ても、現物の資料に revised edition(改訂版)と明記されていない場合は、書誌情
報にもわかりやすい形で記載されないことがあります。こういった資料もあるので、
複数の書誌情報を見比べたときに、「自分の必要とする資料は、どの書誌に該当す
るのか」という判断が大変難しい場合があります。その場合は、図書館スタッフに
尋ねてみるとよいでしょう。 資料を探す際には、図書館では、資料そのものの版表示にそのまま従うのではな
く、内容まで考慮した上で整理を行っているということを覚えておいて下さい。
第 3 章 原資料にあたる 3.1 原資料概説
124
3.1.3 所蔵場所を突き止める
前項で原資料というものを概観しましたが、この項では、実際に検索をして、資
料が「どこにあるか」、つまり原資料が所蔵されている場所を突き止める方法につ
いて説明します。またここで紹介する情報については大部分が、基本編第3章に詳
しい説明が掲載されているので、そちらもあわせて読んで下さい。 (1) 東北大学の蔵書検索
最初に、身近な東北大学の蔵書を探します。しかし東北大学の蔵書と言っても所
蔵場所は図書館や研究室など様々です。また資料の種類によっては、探索ツールが
オンライン目録や図書館のウェブサイト等のオンライン情報であったり、カード目
録であったりと全く異なるので注意が必要です。 ①通常の図書の蔵書検索
『Online Catalog』(東北大学附属図書館オンライン目録)
<http://www.library.tohoku.ac.jp/opac/expert-query>
大学内に所蔵されている資料の大半を検索することができます。詳しくは『基
本編』3.2で説明されているので、ここでは人文社会分野でしばしば発生す
る「発見した資料が研究室貸出になっている」場合の対処法を紹介します。
検索結果で、配架場所が「文社会学」などの研究室名や「研究室貸出」とい
う表示になっているものがあります。これらは研究室に備え付けてある資料
なので、閲覧可能かどうか最寄りの図書館カウンターに相談して下さい。ス
タッフが、研究室に問い合わせます。 もし自分の所属する研究室や、近隣の研究室であれば、その研究室の助手や
職員の方に相談してみましょう。
カード目録
『Online Catalog』で検索できない資料は、カード目録で調べる必要があり
ます。対象は主に本館書庫内資料の一部や、古典籍、貴重書類、個人文庫、
法図や経図などの各図書室所蔵資料、及び研究室備付資料です。 基本編3.2.
2参照
3.1.3 所蔵場所を突き止める
125
『東北大学法学部図書室文献目録』
<http://www.law.tohoku.ac.jp/library/mokuroku.html>
法学研究科図書室の蔵書は、『Online Catalog』とは別にこのウェブサイト
で検索することができます。
② 和漢古典籍資料の検索
東北大学には、『狩野文庫』に代表される充実した古典籍のコレクションがあり
ます。普段使う『Online Catalog』で検索してもヒットしないことが多いこれらの
資料群ですが、専用のツールを使う事で所蔵を突き止めることができます。(『狩
野文庫』のうちマイクロフィルム化されたもの一部と、洋書は、『Online Catalog』でもヒットします。)和漢古典資料の検索について詳しくは3.2.1(2) を参照して
下さい。
第 3 章 原資料にあたる 3.1 原資料概説
126
(2) 他大学の蔵書を探す
探している資料を学内で見つける事ができなかった時や、見つけても閲覧・貸出
ができない場所に資料が存在していた場合、他大学図書館の蔵書を検索してみま
しょう。他大学の資料でも、貸出を受けたり、複写物を入手することができます。
詳しくは付録7を参照して下さい。
『Online Catalog』(東北大学附属図書館オンライン目録)
東北大学『Online Catalog』には、学外検索モードがついており、日本国内
の大学図書館蔵書を検索することができます。
『NACSIS Webcat』 国立情報学研究所 <http://webcat.nii.ac.jp/>
『Online Catalog』の学外検索機能と同じ検索ができますが、反応速度の速
さと、所蔵館一覧の見やすさに特色があります。なお『Webcat Plus』との統
一が予定されています。
(3) 近隣図書館の所蔵を探す
次に、仙台市内の大学図書館や、宮城県内の公共図書館といった、近隣の図書館
を実際に訪問して、資料を入手する方法を紹介します。近隣図書館の所蔵資料を探
す手段としては次の様なものがあります。
『学都仙台 OPAC』 東北大学附属図書館
<http://www.library.tohoku.ac.jp/multi-opac/>
この OPAC を使うことによって、仙台市内(一部山形市)の大学図書館(学
都仙台単位互換ネットワークに参加する大学・短大など)の蔵書を横断的に
検索することができます。検索できる大学は次のとおりです。 [検索できる大学] 東北大学、宮城教育大学、宮城大学、東北学院大学、東北福祉大学、東北芸
術工科大学(山形市)、尚絅学院大学、宮城学院女子大学、宮城県図書館、
仙台文学館
3.1.3 所蔵場所を突き止める
127
『宮城県内図書館総合目録』 宮城県図書館
<http://mynet.library.pref.miyagi.jp/cross/>
このシステムを利用すると、宮城県図書館を含めた県内公共図書館(仙台市
図書館を除く)を横断検索することができます。システムの反応速度が速い
事が特徴です。検索できる図書館は次のとおりです。 [検索できる図書館] 宮城県図書館、石巻市図書館、塩竃市民図書館、白石市図書館、名取市図書
館、角田市図書館、多賀城市立図書館、岩沼市図書館、東松島市図書館、蔵
王町立図書館、亘理町立図書館、利府町図書館、加美町図書館、美里町書館
(4) 国会図書館やその他の公共図書館を探す
(2)、(3)で国内の大学図書館や、近所の図書館の蔵書検索について紹介しました
が、以上の図書館で所蔵されていない場合、次に国立国会図書館の蔵書を探してみ
ましょう。 国立国会図書館は、納本制度に支えられた図書・雑誌の膨大なコレクションの他、
古典籍資料・テクニカルレポート・議会資料・学位論文など特色ある資料を多数所
蔵しています。検索して見つけた資料は、相互利用サービス(付録7参照)を通し
て現物を借りるか、複写物を入手することができるものもあります。 資料の検索は次のウェブサイトから検索することができます。
『NDL-OPAC』 国立国会図書館 <http://opac.ndl.go.jp/>
国立国会図書館が所蔵する資料を検索することができます。博士論文も検索
できるのが特色です。
また、例えば郷土資料は、その地域の公共図書館が収集に力を入れています。そ
のため今まで紹介した大学図書館などで検索するよりも、その地域の図書館を探し
た方が見つかる場合もあります。その様に公共図書館で所蔵している資料を探す場
合は、次のウェブサイトも使って下さい。
第 3 章 原資料にあたる 3.1 原資料概説
128
『総合目録ネットワークシステム』 国立国会図書館
<http://unicanet.ndl.go.jp/>
国会図書館と国内各県の県立図書館の蔵書を横断検索することができます。
ただし、全 47 都道府県の県図書館や、区市町村立の全図書館を検索できるわ
けではないので、注意が必要です。
『図書館情報』 日外アソシエーツ株式会社
<http://www.reference-net.jp/lib_link.html>
国内各県の全公共図書館を県別にまとめてリンクしているウェブサイトです。
住所や連絡先も明記されていて便利です。
3.1.3 所蔵場所を突き止める
129
(5) 海外の図書館を探す 国内の様々な図書館の蔵書検索について見てきましたが、国内の所蔵を確認でき
ない場合もあります。洋書の場合、海外の図書館の蔵書検索をすることにより入手
の可能性が出てきます。
『British Library Integrated Catalogue』 英国図書館
<http://catalogue.bl.uk/>
イギリスの英国図書館の蔵書を検索する事ができます。ここで見つけた蔵書
は、相互利用サービス(付録7参照)により条件付きで複写物の入手ができ
ます。
その他、北米の大学図書館の中で、相互利用サービスを受けることができる図書
館もあります。詳しくは、最寄りの図書館カウンターに相談して下さい。 北米の大学図書館を含めて、欧米の図書館の蔵書を検索するには、次のウェブサ
イトが有用です。
『WorldCat - beta』OCLC <http://www.worldcat.org/> 世界で最大のオンライン目録です。世界の図書館 10,000 館以上の所蔵を検索
できます。
第 3 章 原資料にあたる 3.1 原資料概説
130
『大韓民国中央図書館オンラインカタログ』 大韓民国中央図書館
<http://www.nl.go.kr/nlmulti/index.php?lang_mode=j>
日本語版韓国中央図書館の蔵書検索ページです。韓国語資料の検索をするこ
とができます。
韓国の図書館からは、この中央図書館をはじめとして 239 館の図書館から文献の
複写物を入手する事ができます。詳しい方法については図書館カウンターに相談し
て下さい。次のウェブサイトには、その 239 館の一覧表が掲載されていますので、
参考にして下さい。
『日韓 ILL/DD 暫定サービス - 韓国側参加館一覧』
<http://www.riss4u.net/libn_ch/ill/nii_organ.html>
また、英国図書館や北米の大学図書館のみで、全ての洋書タイトルをカバーでき
る訳ではありません。正式に日本の図書館と提携してない海外の図書館でも、蔵書
の検索はできる図書館は多数あります。それらをいくつか紹介します。
3.1.3 所蔵場所を突き止める
131
『Library of Congress Online Catalog』 米国議会図書館
<http://catalog.loc.gov/>
アメリカの議会図書館のオンライン目録です。英米圏のみならず、欧州、ア
ジアといった世界中の資料を所蔵しています。
『Karlsruher Virtueller Katalog: KVK』
Universität Karlsruhe Universitätsbibliothek
<http://www.ubka.uni-karlsruhe.de/kvk/kvk/kvk_en.html>
南西ドイツのカールスルーエ大学図書館が提供する、広域蔵書検索システム
です。欧米の様々な図書館蔵書を横断検索することができます。
第 3 章 原資料にあたる 3.1 原資料概説
132
これらの未提携海外図書館で、資料を見つけた場合は、図書館を通した資料入手
はできません。入手の方法は、海外の文献入手の専門業者に取り寄せを依頼するか、
または自分自身で所蔵館に交渉するか、のいずれかの方法になります。このような
場合は、まず図書館カウンターに相談して下さい。 (6) 美術館や博物館、文書館を探す 美術館・博物館の図書室や、公文書を保存する文書館にも独自の検索システムが
あります。研究分野が美術、歴史学、考古学等の場合は、美術館・博物館の図書室
に探している本があるかもしれませんし、日本近代史、法政史などは、公文書の検
索も非常に重要になってきます。次にそれらの検索サイトを紹介していきます。 ① 美術館・博物館
『美術館横断検索』 Art Libraries’ Consortium <http://alc.opac.jp/>
首都圏にある、東京国立近代美術館、国立新美術館、東京都現代美術館、横
浜美術館、国立西洋美術館東京都写真美術館の図書室所蔵資料を横断検索す
ることができます。美術書はもちろんのこと、展覧会カタログなど、この分
野独特の資料も充実しています。
3.1.3 所蔵場所を突き止める
133
『日本と世界の博物館、美術館、天文台へのリンク集 : 5000 museum links from
all over the world』 村井直也 <http://www.pp.iij4u.or.jp/~murai/>
日本を含め世界各国の博物館・美術館、天文台までサイトを集めたリンク集
です。各機関で作成しているウェブサイトには、図書室の蔵書検索システム
を公開している機関も多いのでアクセスしてみて下さい。
② 文書館
『国立公文書館ホームページ』 国立公文書館
<http://www.archives.go.jp/>
国立公文書館の所蔵品について概要やデジタル化された資料等を閲覧できる
ホームページです。国立公文書館は古典籍を収集保存していた内閣文庫と統
合したので、古典籍の所蔵情報も見ることができます。 3.3.4参照
第 3 章 原資料にあたる 3.1 原資料概説
134
『宮城県公文書館ホームページ』 宮城県公文書館
<http://www.pref.miyagi.jp/koubun/>
宮城県公文書館のホームページです。蔵書検索システムは公開していません
が、メールによって所蔵調査を依頼することができます。3.3.4(3)参照
図書館の小ネタ
フランス装の本
洋書を手にした時、ページが袋綴じになっていて「おや、不良品かな?」
と思ったことがあるかもしれません。これは、「フランス装」と呼ばれる
仮製本の一種で、「フランス綴じ」とも言います。造本のミスという訳で
はなく、あえて仮製本という形をとっています。
何故、書籍がこのように完成前の「仮」の状態で出回ることがあるのか
というと、ヨーロッパでは、本を購入した後、自分の好みに合わせて四方
を切断したり、美しい表紙を付けたりして、改めて製本するという習慣が
あるからです。
日本ではそのような習慣はありませんので、図書館でも、袋綴じのまま
で棚に並ぶことが多くなります。そして、このような書籍を読む場合は、
ペーパーナイフを使って、ページを切り開きながら読む必要があります。
まだ切り開かれていないフランス装の書籍を見つけたら、それは、あな
たが最初の読者ということになります。一番乗りで読むという経験はなか
なか気持ちが良いものですが、特に、それが古い書籍で、長い間書棚で眠っ
ていたものの場合は、書籍の方でも遠い国からはるばるやってきた苦労が
やっと報われる思い(?)がすることでしょう。
図書館によっては、職員の手で、あるいは機械を使って切断するという
方針を採っているところもありますので、自分で切り開いて良いかどうか
判断しかねる場合は、質問してみて下さい。
※参考:『レファレンス協同データベース』 国立国会図書館
<http://crd.ndl.go.jp/jp/public/>