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JPEC レポート 1 平成 26 3 4 アラビア半島南部 3 ヵ国のエネルギー産業( 1 米国 DOE ・エネルギー情報局( EIA)のレポートを主なベースとして、アラビア半島南部 3ヵ国のエネルギー産業について、 2回に渡って紹介する。対象はアラブ首長国連邦( UAE)、 オマーン、イエメンの 3 ヵ国であり、今回は UAEのエネルギー産業を中心に紹介する。 1. アラビア半島南部 3 ヵ国の一般情報 1.1. アラビア半島の衛星写真( NASA 撮影、図 11 アラビア半島の衛星写真 1.2. アラビア半島南部 3 ヵ国の位置(図 22 アラビア半島の概略地図 2013年度 3 32 2

アラビア半島南部3ヵ国のエネルギー産業(1 · Al-Dabbiya, Rumaitha, and Shanayel 100,000 none reported Satah 20,000 100,000 (2017) Source: U.S. Energy Information

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平成26年3月4日

アラビア半島南部3ヵ国のエネルギー産業(1)

米国DOE・エネルギー情報局(EIA)のレポートを主なベースとして、アラビア半島南部

3ヵ国のエネルギー産業について、2回に渡って紹介する。対象はアラブ首長国連邦(UAE)、オマーン、イエメンの3ヵ国であり、今回はUAEのエネルギー産業を中心に紹介する。 1. アラビア半島南部3ヵ国の一般情報 1.1. アラビア半島の衛星写真(NASA撮影、図 1)

図 1 アラビア半島の衛星写真

1.2. アラビア半島南部3ヵ国の位置(図 2)

図 2 アラビア半島の概略地図

JJJPPPEEECCC レレレポポポーーートトト 2013年度 第第 3322 回回

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1.3. アラビア半島南部3ヵ国の主な一般情報(表 1)

表 1 アラビア半島南部3ヵ国の主な一般情報 アラブ首長国連邦

(UAE)

オマーン イエメン

正式国名 アラブ首長国連邦

オマーン国 イエメン共和国

英国からの独立年 1971年 1971年 1967 年に旧南イエメ

ンが英国から独立し、

1990 年に南と北が合

併して現在のイエメ

ンとなっている。

政体 7首長国による

連邦制

絶対君主制 立憲共和制

首都 アブダビ マスカット サヌア

人口(推定) 920万人 280万人 2,590万人

公用語 アラビア語 アラビア語 アラビア語

通貨 ディルハム

(AED)

オマーンリアル

(OMR)

イエメンリアル

(YER)

名目GDP(推定) 3,840億ドル 780億ドル 350億ドル

2. アラビア半島南部3ヵ国の地勢と国情 2.1. アラブ首長国連邦(UAE) 東にオマーン、西と南にサウジアラビアと接し、北はペルシア湾に面している。国土の大

部分が平坦な砂漠である。アブダビ、ドバイ、シャルジャ、アジュマーン、ウンムアルカイ

ワイン、フジャイラ、ラスアルハイマの7つの首長国からなる連邦国家である。国民は政府

の手厚い保護を受けており民主化要求デモなどの動きは全くない。UAEの経済は炭化水素資

源に大きく依存している。近年、UAEは世界 大の金融センターの1つにもなっている。 2.2. オマーン 一部に山地は存在するが、全土が砂漠気候に属している。アラブ首長国連邦北部のムサン

ダム半島の北端にオマーンの飛び地がある。従って、石油ルートとして重要なホルムズ海峡

の航路はオマーンの領海に含まれる。この要衝の地を利用して、ホルムズ海峡のアラビア海

側に世界 大級の石油精製と貯蔵基地を建設しオマーンの地位を高めようとしている。現在、

カーブース国王が民心を掌握しており政権の基盤は安定している。 2.3. イエメン 北部の大半は砂漠だが、西部と南部に高原地帯がある。大量の石油やLNGが通過するスエ

ズ運河への紅海側出入口であるマンダブ海峡に面している。2011年初頭のチュニジアやエジ

プトでの民衆革命に影響を受けサレハ大統領が退陣し、ハーディ副大統領が大統領に選出さ

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れた。イスラム原理主義グループの拠点ともなっている。現在、政府軍と反政府軍の交戦が

激化しており政情は不安定である。この治安状況の悪さが炭化水素資源事業にも大きな影響

を及ぼしている。 3. アラビア半島南部3ヵ国の主なエネルギー情報(表 2)

表 2 アラビア半島南部3ヵ国の主なエネルギー情報 アラブ首長国連邦

(UAE)

オマーン イエメン

石 油 輸 出 国 機 構

(OPEC)

○(加盟) ×(非加盟) ×(非加盟)

石油確認埋蔵量 978億バレル

(世界第7位)

55億バレル

(世界第21位)

30億バレル

石油の輸出入 純輸出国 純輸出国 純輸出国

原油精製能力 82.2万BPD 22.2万BPD 14.0万BPD

製油所数 5 2 2

ガス輸出国フォーラ

ム(GECF)[注]

○(加盟) ○(加盟) ×(非加盟)

天然ガス確認埋蔵量 6兆850億m3

(世界第7位)

8,490億m3 4,780億m3

天然ガスの輸出入 純輸入国

(4.3.2参照)

純輸出国 純輸出国

LNGプラントの有無 ○(有り) ○(有り) ○(有り)

[注] 世界の主な天然ガス生産国が集まり、カタールのドーハに本部を置く国際政府機関とし

てガス輸出国フォーラム(GECF)が発足した。加盟国間の協力レベルを上げ強調を強くす

ることが目的となっている。メンバーとして、アルジェリア、ボリビア、エジプト、赤道ギ

ニア、イラン、リビア、ナイジェリア、オマーン、カタール、ロシア、トリニダード ドバ

ゴ、アラブ首長国連邦、ベネズエラの13ヵ国。オブザーバーとして、カザフスタン、イラク、

オランダ、ノルウェーの4ヵ国が参加している。

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4. アラブ首長国連邦(UAE)のエネルギー事情(図 3)

図 3 アラブ首長国連邦(UAE)の概略地図と国旗 4.1. 炭化水素資源全般 アラブ首長国連邦(UAE)の経済は炭化水素資源(石油と天然ガス)に大きく依存してい

る。UAEの炭化水素資源事業は同国のGDPの約40%、政府歳入の約80%、全輸出収入の半

分以上を占めている。因みに、2012年の炭化水素資源の輸出収入は2010年の750億ドルを大

きく上回り1,180億ドルに達した。近年は石油価格の下落や世界的な景気低迷に対する保険

として、インフラなどの非エネルギー分野への投資が増えてきている。 4.2. 石油 4.2.1. 石油の確認埋蔵量

UAEは石油輸出国機構(OPEC)のメンバーであり、世界で も重要な産油国の1つでも

ある。OGJによれば、2013年時点のUAEの石油確認埋蔵量(表 3)は世界の石油確認埋蔵

量合計の約6%に相当する978億バレルで世界第7位にランクされている。そのうちの約94%はアブダビ首長国に埋蔵されている。残り6%(59億バレル)は他の6首長国に存在するが、

ドバイ首長国の40億バレルが 大である。又、UAEの石油のほとんどはアブダビ首長国で

採掘されている。

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表 3 世界の国別石油確認埋蔵量のトップ10 (2013年) Top 10 countries for proved oil reserves, 2013

Country Billion barrels

Venezuela 297.6

Saudi Arabia 267.9

Canada 173.1

Iran 154.6

Iraq 141.4

Kuwait 104.0

United Arab Emirates 97.8

Russia 80.0

Libya 48.0

Nigeria 37.2

Note: In 2012, the United States ranked 12th in the world at 26.5 billion barrels.

Source: U.S. Energy Information Administration, Oil & Gas Journal

4.2.2. 石油の生産と消費

2012年におけるUAEの主要油田の原油生産実績と将来の増産計画は表 4のとおりである。

Zakum石油システム(Zakum petroleum system)が増産の見込みのあるエリアの1つで、

Upper Zakum油田は2012年7月現在の約55万BPDから、2016年までに75万BPDへの増産を

目指す。一方、Lower Zakum油田は現在の約30万BPDから 終的に42.5BPDまで増産予定。

Bu Hasa油田、Murban Bab油田、SAS油田は2014年の早い時期に各 2々0万BPDの増産を

期待されている。

表 4 UAEの主要油田の原油生産量(2012年)と将来の増産計画 Oil production at selected UAE fields and planned increases, 2012

Field name Production

(bbl/d)

Planned increases

(year)

Bu Hasa 550,000 200,000 (2014)

Sahil, Asab, and Shah (SAS) 430,000

Murban Bab 360,000

Bida al-Qemzan 225,000 75,000 (2016)

Upper Zakum 500,000 250,000 (2016)

Lower Zakum 300,000 125,000 (TBD) [注2]

Umm Shaif 230,000 50,000 (2018)

Al-Dabbiya, Rumaitha, and Shanayel 100,000 none reported

Satah 20,000 100,000 (2017)

Source: U.S. Energy Information Administration, IHS Global Insight, IHS EDIN, company

reports, trade press [注1]

[注1] 2012年の主要油田の原油生産量合計は271.5万BPDであった。 [注2] TBD(to be determined)とは年度が未確定なことを意味する。

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UAEは2013年末の原油生産目標を300万BPDとしているが達成できそうになく、さらに、

10年後に350万BPDとする長期計画も先送りするであろう。

近のUAEにおける石油探査では大型油田は1つも発見されていない。さらなる大型油田

の発見の見込みは少なく、石油増進回収:Enhanced Oil Recovery(EOR)技術を適用して

成熟油田からの石油回収率を上げている。即ち、既存油田の寿命を延ばすようなEOR技術に

重点を置き、油田の新発見の欠如を補おうとしている。UAEは天然ガスを用いるEOR技術

において世界的なリーダーではあるが、天然ガスの国内需要が高まっており、政府は天然ガ

スを使用しない他のEOR技術の拡大を計画している。

図 4 UAEの石油供給量(原油+コンデンセート+NGL)と消費量

UAEのエネルギー資源の内需は石油に大きく依存している。2012年の国内石油消費量(図

4)は約62万BPDであった。一方、1人当りの石油消費量の2011年実績(表 5)は年間44バレル(7.0kL)で、世界で7番目に多い結果が出ている。因みに、1位は米国領ヴァージン諸

島の47.6バレル(7.6kL)であった。

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表 5 世界の国別1人当たり石油消費量のトップ10 (2011年) Per capita oil consumption, 2011

Country Barrels/year

Virgin Islands, U.S. 476

Gibraltar 340

Netherlands Antilles 117

Singapore 96

Kuwait 54

Luxembourg 45

United Arab Emirates 44

Montserrat 43

Malta 40

Saudi Arabia 39

Source: U.S. Energy Information Administration,

International Energy Statistics

4.2.3. 石油の輸出

UAEの輸出原油は軽質で低硫黄分のMurban原油など数種類の原油が主流となっている

が、2014年4月中に既存のUmm Shaif原油とLower Zakum原油を混ぜた新しい原油:Das原油と呼ぶAPI比重39度の軽質原油を輸出する計画である。

UAEは2012年に250万BPDを超える量の原油を輸出した。表 6に示すように、97%はア

ジア向けで、アフリカ向けが3%、その他は1%であった。

表 6 UAE原油の輸出先(2012年) UAE crude oil exports by region, 2012

Region Share

Asia 97%

Africa 3%

Other <1%

Source: U.S. Energy Information Administration

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UAEにはペルシア湾の沿岸や湾内の島に7ヵ所の石油輸出ターミナルがあり、表 7のとお

り各々が輸出する油種と対象油田が決まっている。

表 7 UAEの石油輸出ターミナルと対象油田 UAE export terminals

Export terminal Products Source (Field)

Jebel Dhana crude oil Asab, Bab, Bu Hasa,

Murban, Sahil Shah

Zirku Island crude oil Upper Zakum,

Umm al-Dakh, Satah

Das Island crude oil Lower Zakum, Umm Shaif

Ruwais petrochemicals, jet fuel, gas oil N/A

Umm al-Nar crude oil, refined products Bab

Fujairah crude oil, petrochemicals, refined products Habshan

Jebel Ali crude oil, liquefied petroleum gas (LPG),

refined products

Fateh, Southwest Fateh,

Falah, Rashid

Source: U.S. Energy Information Administration, IHS Global Insight, trade press,

company reports

4.2.4. 石油パイプライン

UAEは油田と原油処理プラントおよび輸出基地を結ぶ充実した国内石油パイプライン網

(図 5)を有している。2012年6月に 新の石油輸出パイプラインが稼動開始した。UAE西部の砂漠地帯の大規模油田からオマーン湾まで、即ちHabshanからFujairah(フジャイラ)

まで370kmに及ぶ「アブダビ原油パイプライン(ADCOP)」である。現在の輸送能力は150万BPDだが、近い将来180万BPDまでの拡大が期待されている。フジャイラの用地はホルム

ズ海峡のペルシア湾外(オマーン湾~アラビア海)に位置している。そのためADCOPはホ

ルムズ海峡を通過せずにUAE産原油の相当量を輸出する能力をもっている。一方、2011年にホルムズ海峡を通過した原油は1,700万BPDで、この量は世界の石油取引量の約20%、石

油海上交易量の35%に相当する。 既に世界 大の石油積み込み港の1つとなったフジャイラの石油輸出基地は、今後数年の

うちにその能力をさらに拡大する予定である。当基地の拡大計画は3本の海中パイプライン

と中間ポンプステーションおよび喫水の深いタンカー用の3個の海洋ブイを含んでいる。同

時に、燃料の内需および輸出のための製油所(25万BPD)の建設も計画されている。数多く

の進行中の拡大プロジェクトの結果として石油貯蔵能力も大きくなり、フジャイラはまもな

く石油輸出ネットワークの重要な接続ポイントになるであろう。

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4.2.5. 製油所 UAEは5製油所を保有(図 5)しており、2012年末時点の原油精製能力合計は前年を上回

り82.2万BPDとなっている。アブダビ首長国のRuwais製油所(40万BPD)とUmm al-Nar製油所(15万BPD)、ドバイ首長国のJebel Ali製油所(12万BPD)、他にフジャイラ首長

国とシャルジャ首長国に小規模製油所が各1ヵ所(8.1万BPDと7.1万BPD)ある。 アブダビ首長国政府所有の国際石油投資会社:International Petroleum Investment

Company(IPIC)はフジャイラ首長国に製油所(25万BPD)を新設する計画を立てている。

一方、アブダビ国営石油(ADNOC)の精製部門の子会社であるアブダビ国営石油精製会社

(Takreer)はRuwais製油所(40万BPD)の既設プラントの横に40万BPDの装置群一式を

新設し、2014年半ばまでに合計80万BPDに増強しようとしている。さらに、ドバイ首長国

政府所有の石油精製事業者:エミレーツ国営石油(ENOC)は既設のJebel Ali製油所(12万BPD)を2万BPD能力アップする計画である。因みに、アブダビ国営石油(ADNOC)は

石油・天然ガス分野に14の子会社を保有し、UAE政府の石油政策に大きな影響を及ぼす国

営企業である。

図 5 UAEの油田と製油所および他のエネルギーインフラの位置図

Ruwais Umm Al Nar

Jobel Ali

Sharjah

Habshan

Habsharn-Fujairah:アブダビ原油パイプライン(ADCOP)

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4.3. 天然ガス 4.3.1. 天然ガスの確認埋蔵量(表 8)

UAEの天然ガス確認埋蔵量は6兆850億m3で世界第7位である。

表 8 世界の国別天然ガス確認埋蔵量のトップ10 (2013年) Top-10 countries with proved natural gas reserves, 2013

Country Trillion cubic feet

Russia 1,688

Iran 1,187

Qatar 890

United States 334*

Saudi Arabia 288

Turkmenistan 265

United Arab Emirates 215

Venezuela 195

Nigeria 182

Algeria 159

*2012 data

Source: U.S. Energy Information Administration, International Energy Statistics

4.3.2. 天然ガスの生産・消費・輸出入

UAEは大量の天然ガス確認埋蔵量を保有しているにも拘わらず、2008年から天然ガスの

純輸入国となっている。それには2つの要因がある。1つは石油増進回収法(EOR)の一部と

して生産ガスの約26%を油田に再注入していることと、もう1つは国内電力網の拡大に発電

を石油燃焼から天然ガス燃焼に切り替えつつあり天然ガス消費量が大幅に増加しているた

めである。因みに、2011年の油田へのガス再注入量の国別ランクでUAEは8位(図 6)とな

っている。

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図 6 世界の国別天然ガス再注入量のトップ10(2011年)

UAEは急激な経済成長と人口増加による天然ガス需要の高まりを満たすため、Dolphin

Gas Projectの一環として建設された国際天然ガスパイプラインを通して、数年前から隣国の

カタールから天然ガスを輸入している。当パイプラインはカタールから海中をアブダビの

Taweelah発電所へ、そこから他の首長国とオマーンへ伸びている。その管送ガスは7つの首

長国に供給され、UAEの天然ガス消費量の約30%を満たしている。

UAEはガス輸出国フォーラム:Gas Exporting Countries Forum(CECF)の加盟国では

あるが、カタールから天然ガスを輸入している。加えて、アブダビ首長国はLNGの輸出者、

ドバイ首長国はLNGの輸入者としてUAEはLNGの輸出も輸入も行っている。LNGを含む天

然ガス全体の輸出入バランスでは輸入超過となっており、UAEは天然ガスの純輸入国である。

(図 7、図 8)

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図 7 UAEの天然ガス生産量と消費量

図 8 UAEの天然ガス輸入量と輸出量

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4.3.3. 天然ガス開発プロジェクト 2003~2012年の間、UAEの乾性天然ガスの生産量はで年平均1.6%で着実に伸びた。一方、

その間の天然ガス消費量は年平均およそ5.3%の大きな伸びを示した。そのため、UAE政府

はさらなる増産を望んでいる。

UAEの天然ガスは硫黄分が多いため腐食性が激しく且つ処理が難しい。そのため何十年も

の間、UAEは油田から随伴する天然ガスをフレア焼却していた。即ち、硫黄分が多いUAEの天然ガス生産の技術的な困難さがガス田開発に大きな障害をもたらしていたのである。し

かし、大規模且つ安価にガスから硫黄を分離するプロセスなどの技術の進歩と天然ガス需要

の増加がUAEのガス田開発に拍車をかけている。 今後数年間にかけて、UAEの天然ガス生産量を上げるいくつかの進行中のプロジェクトが

ある。 近進行中のプロジェクトとしてOnshore Gas Development(OGD)プロジェクト、

Integrated Gas Development(IGD)プロジェクト、Offshore Associated Gas(OAG)プ

ロジェクトが挙げられる。

OGDプロジェクトのフェーズ1と2は夫々Asab油田とSahil油田の圧力を上げて随伴ガス

量を増やすもので既に2008年に完了した。フェーズ3ではBab油田が対象となっており2018年までに完了の見込みである。

IGDプロジェクトではUmm Shaif油田とその近傍の油田からの随伴ガスを処理するプラ

ントを2013年末までに5系列新設し、天然ガスを2,830万m3/D、天然ガス液(NGL)を12.5万BPD生産する予定である。

OAGプロジェクトでの大規模計画の1つとして、ペルシア湾内のダス島にガス処理プラン

トを2基建設するものがある。随伴ガス処理能力合計は570万m3/Dである。もう1つはガス中

の超高硫黄分除去の困難を伴っているShahガス田開発で、当初は2014年内に稼動する予定

であったが2015年初頭まで遅れている。フル稼働すれば、天然ガスを1,530万m3/D、天然ガ

ス液(NGL)を5万BPD生産できる。 4.3.4. LNG

UAEで現在稼動中のLNG基地はペルシア湾内のダス島にある。当基地は3系列のLNGプ

ラントを保有し、LNG生産能力合計は年間800万トンである。

UAEはLNGを輸出した中東で 初の国である。LNG輸出の第1船は長期供給契約の一部

として、東京電力向けに出荷された。UAEは1年間に天然ガス換算で71億m3超のLNGをア

ジア向けに輸出しており、2012年には全量が日本向けであった。

UAEは又、ドバイ首長国沿岸沖のGolar LNG基地でLNGを受け入れている。 初の輸入

は2010年後半であった。現在、年間 大900万トンの受入れ能力をもつ浮体式LNG貯蔵再気

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化設備:Floating Storage and Regasification Unit(FSRU)を建設中で、2014年後半に稼

動開始の予定である。当FSRUはLNG船がホルムズ海峡を通過しなくてよいように、フジャ

イラ沖のオマーン湾に設置する。 4.3.5. 乾性天然ガスと随伴ガスの違い 乾性天然ガスはいわゆる「ガス田」から産出されるもので、成分のほとんどがメタンで液化

すればLNGとなる。一方、随伴ガスは油田から原油とともに産出され、メタン分が多い場合

はLNGの原料となるがプロパンやブタンの含有率が高い場合はLPGの原料となる。次の図 9で解説すると、「Conventional non-associated gas」は「ガス田」から産出される乾性天然

ガス、「Conventional associated gas」は「油田」から産出される随伴ガスである。因みに、

「Coalbed methane」は炭層メタン、「Gas-rich shale」層からのガスはシェールガス、「Tight sand gas」はタイトガスと呼ばれ、いずれも非在来型の天然ガス(non-conventional gas)で

ある。

図 9 天然ガス資源の地質学上の図解

<出典および参考資料> (1) 米国DOE・エネルギー情報局(EIA)レポート 、United Arab Emirates Country

Analysis Brief http://www.eia.gov/countries/cab.cfm?fips=TC

(2) 米国DOE・エネルギー情報局(EIA)レポート 、Oman Country Analysis Brief http://www.eia.gov/countries/cab.cfm?fips=MU

(3) 米国DOE・エネルギー情報局(EIA)レポート 、Yemen Country Analysis Brief

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http://www.eia.gov/countries/cab.cfm?fips=YM (4) 外務省ホームページ、各国情勢

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/index.html (5) 世界経済のネタ帳

http://ecodb.net/area/ (6) A Barrel Full 、Adgas Das Island LNG

http://abarrelfull.wikidot.com/adgas-das-island-lng-terminal (7) A Barrel Full 、Ruwais Refinery Project

http://abarrelfull.wikidot.com/ruwais-refinery-project (8) REUTERS

http://www.reuters.com/article/2014/01/20/uae-shah-gas-idUSL5N0KU0UQ20140120

(9) Gas Exporting Countries Forum 、Home Page http://www.gecf.org/

(10) Wikipedia 、United Arab Emirates http://en.wikipedia.org/wiki/United_Arab_Emirates

(11) Wikipedia 、Peninsula http://en.wikipedia.org/wiki/Peninsula

(12) Wikipedia 、Arabian Peninsula http://en.wikipedia.org/wiki/Arabian_peninsula

(13) Wikipedia 、Persian Gulf http://en.wikipedia.org/wiki/Persian_gulf

(14) Wikipedia 、International Petroleum Investment Company http://en.wikipedia.org/wiki/International_Petroleum_Investment_Company

(15) Wikipedia 、Dolphin Gas Project http://en.wikipedia.org/wiki/Dolphin_Gas_Project

(16) Wikipedia 、Natunal gas http://en.wikipedia.org/wiki/Natural_gas

以上

本資料は、一般財団法人 石油エネルギー技術センターの情報探査で得られた情報を、整理、分析

したものです。無断転載、複製を禁止します。本資料に関するお問い合わせは[email protected] までお願いします。

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次回のJPECレポート(2013年度 第33回)は 「アラビア半島南部3ヵ国のエネルギー産業(2)」 を予定しています。