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3 部・第 4 データベース 3.4.1 データベースとは この章では、リレーショナル・データベース管理ソフト(RDBMS)、Microsoft Access(アクセス)について解説します。 データベースと Microsoft Access データベース(DB)とは、体系的に整理されたたくさんのデータを意味します。そして DB を管理するソフトウェアを DBMS(データベース マネジメント システム)といいます。DBMS は DB を効率的に管理・保管し、必要な項目を検索・抽出・出力する機能を持つソフトウェア であり、各種業務システムのバックエンド等で使われています。データベースは大量のデータを内部に持ち、ユーザーはそれらに対し て、書き込み、読み出し、検索などを行うことが出来ます。 Microsoft Access も DBMS のひとつです。下図のように、たくさんのテーブルにデータを分割して格納し、必要に応じてアクセスしま す。 多数の端末からアクセスされるような業務用の DBMS(Oracle Database, Microsoft SQL, MySQL 等)は本格 的である反面、複雑な準備・管理が必要であり、また管理には SQL 言語を覚える必要があります。これは初心者にとっては難しいもの です。Access は SQL を使わず、初心者でも簡単にデータベースを扱うことができるのが特徴のソフトウェアです。 データベースは何に使える?(Excel との使い分け) データベースは、SNS の投稿、レンタルビデオ店のポイントカード会員情報、小売店での在庫管理など、たくさんのデータを整然と管 理する場面で使われています。 しかし、ふだん私達がデータベースを作り、管理する機会はあまりありません。データ数が少ない場合や、それが非常にシンプルなデ ータ群の場合、場合によっては Excel を使用したほうが手軽なためです。いくつかのテーブル(データ群)が関連しあうような複雑なデ ータの場合や、のちのち再利用する可能性のあるデータの場合、Access を使用する利点があります。 Excel に対する Access の利点は次のとおりです。 ・入力の形式(フォーマット)を厳密に定めることが出来るので、加工・再利用しやすい(データ型の指定・後述) ・データを抽出・整理しやすい ・複数の関連したテーブル同士を関連付ける事ができる(リレーションシップ・後述) ・複数の人(端末)が同時にデータにアクセスする場合の扱いが厳格 次のような欠点もあります ・Excel はすぐにデータ入力をはじめることができるが、Access の場合準備が必要(DB 設計・後述) ・分析や印刷のためには、一度データをエクスポートし Excel で加工したほうがよい場合がある ・Excel は多くの PC に入っているが、Access は入っていないことがある ここからデータベースの利点および Access の特徴的な機能について説明していきます。 リレーショナル・データベース Access では数ある DB の種類の中でも、リレーショナル・データベース(RDB)と呼ばれるものです。他にも複数の種類のデータベ ースがありますが、圧倒的に RDB が普及しているのが現状です。RDB を管理するシステムを RDBMS(リレーショナル・データベー ス マネジメント システム)と呼び、Microsoft Access はそのひとつです。 リレーショナル・データベースは日本語で関係データベースと呼ばれ、その名の通りテーブル同士が関係しあってデータベース を構成します。 Campus System Guide- 81

3.4.1 データベースとは - comm.tcu.ac.jp · リレーショナル・データベースは日本語で関係データベースと呼ばれ、その名の通りテーブル同士が関係しあってデータベース

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Page 1: 3.4.1 データベースとは - comm.tcu.ac.jp · リレーショナル・データベースは日本語で関係データベースと呼ばれ、その名の通りテーブル同士が関係しあってデータベース

第 3 部・第 4 章 データベース

3.4.1 データベースとは この章では、リレーショナル・データベース管理ソフト(RDBMS)、Microsoft Access(アクセス)について解説します。

データベースと Microsoft Access

データベース(DB)とは、体系的に整理されたたくさんのデータを意味します。そして DB を管理するソフトウェアを DBMS(データベース

マネジメント システム)といいます。DBMS は DB を効率的に管理・保管し、必要な項目を検索・抽出・出力する機能を持つソフトウェア

であり、各種業務システムのバックエンド等で使われています。データベースは大量のデータを内部に持ち、ユーザーはそれらに対し

て、書き込み、読み出し、検索などを行うことが出来ます。

Microsoft Access も DBMS のひとつです。下図のように、たくさんのテーブルにデータを分割して格納し、必要に応じてアクセスしま

す。

多 数 の 端 末 か ら ア ク セ ス さ れ る よ う な 業 務 用 の

DBMS(Oracle Database, Microsoft SQL, MySQL 等)は本格

的である反面、複雑な準備・管理が必要であり、また管理には SQL 言語を覚える必要があります。これは初心者にとっては難しいもの

です。Access は SQL を使わず、初心者でも簡単にデータベースを扱うことができるのが特徴のソフトウェアです。

データベースは何に使える?(Excel との使い分け)

データベースは、SNS の投稿、レンタルビデオ店のポイントカード会員情報、小売店での在庫管理など、たくさんのデータを整然と管

理する場面で使われています。

しかし、ふだん私達がデータベースを作り、管理する機会はあまりありません。データ数が少ない場合や、それが非常にシンプルなデ

ータ群の場合、場合によっては Excel を使用したほうが手軽なためです。いくつかのテーブル(データ群)が関連しあうような複雑なデ

ータの場合や、のちのち再利用する可能性のあるデータの場合、Access を使用する利点があります。

Excel に対する Access の利点は次のとおりです。

・入力の形式(フォーマット)を厳密に定めることが出来るので、加工・再利用しやすい(データ型の指定・後述)

・データを抽出・整理しやすい

・複数の関連したテーブル同士を関連付ける事ができる(リレーションシップ・後述)

・複数の人(端末)が同時にデータにアクセスする場合の扱いが厳格

次のような欠点もあります

・Excel はすぐにデータ入力をはじめることができるが、Access の場合準備が必要(DB 設計・後述)

・分析や印刷のためには、一度データをエクスポートし Excel で加工したほうがよい場合がある

・Excel は多くの PC に入っているが、Access は入っていないことがある

ここからデータベースの利点および Access の特徴的な機能について説明していきます。

リレーショナル・データベース

Access では数ある DB の種類の中でも、リレーショナル・データベース(RDB)と呼ばれるものです。他にも複数の種類のデータベ

ースがありますが、圧倒的に RDB が普及しているのが現状です。RDB を管理するシステムを RDBMS(リレーショナル・データベー

ス マネジメント システム)と呼び、Microsoft Access はそのひとつです。

リレーショナル・データベースは日本語で関係データベースと呼ばれ、その名の通りテーブル同士が関係しあってデータベース

を構成します。

Campus System Guide- 81

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3.4.2 データベースの基本(DB 設計) Access の具体的な操作方法を説明する前に、データベースを作る場合に必要な基礎知識と、テーブル構成を決定する「DB 設計」

について説明します。

ここから、レンタル DVD 店の会員カードのデータベースを例にチュートリアル形式で説明していきます。最初に簡単だが不完全な例を

出し、そこから順を追って説明しつつ正しいデータベースにしてゆきます。

DB 設計

Accessでは、データを表の形で、複数のテーブルに格納します。データは各テーブルに分割して格納し、必要なときに組みあわせて

取り出します。

実際にテーブルの設定を始める前に、まず DB 設計と呼ばれる作業が必要です。いくつのテーブルにどんなデータを入力するか(どの

ように分割するか)、またテーブル同士をどのように関連付けるか(どのように結合するか)を検討してゆくものです。この作業はとても大

切な作業であると同時に、人によってはパズルゲームのように楽しい作業かもしれません。

まず、何を登録したいかを考えます。今回はレンタル DVD 店の会員カードですから、以下の情報をメインに登録するとします。

この表は人間には見やすいものですが、DB で扱うには問題が有ります。テーブル同士を関連付け(リレーション)、正規化という作業

を行い、管理しやすい DB を設計していきます。正規化には第1、第 2、第 3 の 3 段階があります。また第1正規化を終えた状態のデ

ーブルを第1正規形と呼びます(第 2 以降も同様)。

※正確にはこの後ボイス・コッド正規化、第 4 正規化、第 5 正規化がありますが、通常は必要ないため解説していません。

型指定

データベースでは、テーブルにデータを入れる際、データの型を指定します(データ型の指定)。これによってデータ型に合わないデー

タの登録を防止するほか、大量のデータを扱う際の処理速度向上も期待できます。

例えば ID ナンバーを入れる欄なら「数値型」(またはオートナンバー型)、名前を入れる欄なら「文字列型」、日付を入れる欄なら「日

付/時刻型」を選びます。この他、その欄を空欄にすることを許可するか(値要求)や、入力しなかった場合に何が登録されるか(規定

値)なども設定できます。

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第 3 部・第 4 章 データベース

このように型を指定したのち、実際のデータを入力しきます。

※型の名前は RDBMS によって異なります。ここでは Access 日本語版での用語を使用しています。例えば MySQL では、数値型は

INT 型(整数)や FLOAT 型(小数)、文字列型は STRING 型などです。

マスタ

通常データベースを作る際は、「会員リスト」、「商品リスト」といった別々のテーブルを作って管理します。これをマスタ(マスタファイ

ル)と呼びます。その上で、それぞれの会員・店舗・商品同士の関係を示す「貸出記録」、「入荷リスト」といったテーブルを作ります。

今回、テーブル「会員リスト」はそのまま会員マスタとして使います。また新規に、「商品マスタ」を作ってみました。

発展:ここで忘れている作業が・・・

このとき本来は「店舗マスタ」も作るべきなのですが、今回は後の解説のため「忘れた」ことにしています。

主キー

データベースはExcel等と異なり、その並び順はランダ

ムに管理されます。ですから「○件目の」データといった

表し方はできません。通常、1 行 1行を特定するための

主キーが必要になります。主キーは行を特定するため

のものですから、同じキーが複数の行に重複することは

ありえません。複数の項目の組み合わせを主キーとす

る場合もあり、複合キーと呼びます(対義語は単一キ

ー)。

主キーになりうる項目(の組み合わせ)が複数ある場

合、それらは全て候補キーと呼ばれます。

ID をつける

マスタテーブルには 1 行ずつ ID を、主キーとすることをおすすめします。たとえば会員表では、氏名をキーとすることが考えられます。

しかしそうしてしまうと、同姓同名の別の会員を登録することができなくなってしまいます。運用上、たとえば氏名と生年月日の組み合

わせを主キーにすることも可能ですが、同姓同名かつ生年月日が同じ人が仮にいたら大変です。そういったことを考えて、英数字など

を使って会員 ID などを決め、主キーとするとよいでしょう。

今回の例では、各マスタと貸出記録のそれぞれのテーブルで「ID」、「伝票番号」といった独自の ID を決め、主キーに設定します。主

キーの項目に「*」マークをつけています。

発展:人工キーと自然キー

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主キーを ID などの人工的な値(人工キー/サロゲートキー)にするか、或いは{名前,生年月日}などの自然的な値(自然キー/ナ

チュラルキー)にするか、そのどちらが良いかに関しては議論があります。

従属

データベースで管理するデータは、相互に従属性を持ちます。

従属性とは、A が決まれば B が決まるような状態を表し、これを B は A に従属していると表します。

例えば、「会員マスタ」では、会員 ID が決まれば、それ以外の値(例えば名前、住所、電話番号等)が決まります。この場合、「名前は

会員 ID に従属している」と言えます。

発展:いろいろな従属

A が決まれば B が「一つに決まる」場合は関数従属性と言い、「A→B」と表します。一方「複数に決まる」場合は多値従属性と

言い、「A→→B」と表します。

複合キーへの従属は完全関数従属と呼ばれます。一方、組み合わせの一部分に従属している(不完全な従属)の場合、部分

関数従属と呼ばれます。詳細は「10.2 9.第 2 正規化」の項目で後述します。

リレーションシップ

リレーション(関係/結びつき)は 2 つのテーブルの項目同士を結びつけるものです。

例えば「貸出記録」には、その貸し出しがあった店舗 ID と会員 ID を記録します。すると、後ほど「店舗ごと」、「会員ごと」といった売上

を簡単に集計することが出来ますし、必要であれば分析の際に会員の住所や誕生日といった項目を結合させることが出来ます。また

一回一回住所などを記入する必要はなくなるほか、存在しない店舗や会員を入力してしまうこともなくなります。さらに名前の表記の

揺れなども防止することが出来ます。

今回は以下のようにリレーションを設定しました。テーブル「貸出記録」の項目「会員名」、「商品名」は ID に置き換えています。また

重複する項目「会員連絡先(電話番号)」は削除しておきます。

なお、リレーションシップを図に表す際は通常、ER 図で表します。(詳細な記法などの解説は他に譲ります)

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第 3 部・第 4 章 データベース

第 1 正規化

それでは、今まで学んだ概念を頭に入れつつ、正規化を進めていきましょう。

データベースには、「One Fact in One Place」(1つの事実は1箇所で管理する)という原則があります。正規化を行うことで、これを徹

底します。

なお正規化は不正にまとまってしまったテーブルを分解していく作業です。データは結合すれば元に戻るように分解していきます。

(結合についてはこのあと「10.2 11.テーブル結合とクエリ(Query)」で説明しています)

第 1 正規化は 3 段階に湧かれています。

まず主キーの設定です。リレーショナル・データベースでは各テーブルに主キーが必要です。第 1 正規化ではまずキーを設定しま

す。

今回はすでに決めてありますね。(前述)

次に、繰り返しの分離です。リレーショナル・データベースでは、同じ欄に複数の値を入れることはできません。この場合、複数の行に

分解します。

例えばテーブル「貸出記録」では、同じ会員が複数の DVD を同時に借りた場合、1 マスにその DVD の名前を書き込んでいます。こ

れを各行に分解します。

最後に、導出項目の削除を行います。導出項目とは、DB 内の他の項目から導出できる項目です。通常「売上」や「利用回数」が該

当します。これは実質的には他と同じことを形を変えて書いていることに過ぎず、無駄な項目なのです。

例えばテーブル「会員マスタ」には「今まで借りた DVD の数」、「今まで支払った料金」という項目がありますが、これは導出項目です

から削除します。

ところでテーブル「貸出記録」では、主キーだった伝票番号が複数の行に重複してしまいました。これではいけません。そこで「貸出記

録」は、伝票番号と商品 ID の組み合わせ({伝票番号,商品 ID}と表記する)を主キーにしましょう。複数の項目の組み合わせを主キー

にするので、これは複合キーですね(前述)。

第 2 正規化

第 2 正規化では、非キー項目(候補キーに含まれない項目)が候補キーに部分関数従属している場合にこれを取り除き、完全関数

従属するようにします(部分関数従属の分離)。

といっても分かり難いので、例を出して説明しましょう。テーブル「貸出記録」は主キーが{伝票番号,商品 ID}の複合キーとなっていま

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す。しかしこの表の中の大半の項目は、「伝票番号」にのみ従属しており、「商品 ID」には従属していません。このように、複合キーであ

る主キーの一部のみに従属する項目を分離するのです。今回は分離した側のテーブルに「貸出記録」という名前を残し、もともとのテ

ーブルは「貸出商品記録」に解明します。

発展:システムは運用に応じて設計される

ところで、「料金」はそもそも導出項目なのだから、第 1 正規化で削除されるべきであると気づいた方は優秀です。たしかに借り

た DVD のそれぞれのレンタル料を足せば導出できそうです。しかしそうした運用にしてしまうと料金を直接入力することができませ

んから、店舗ごとの割引サービスやセット割引を行いにくくなります。そのためこの DVD 店ではこのような運用にしているのです。こ

のように、データベースを作る際には、実際に運用に応じて柔軟に設計してゆきます。

発展:多対多のリレーション

通常、リレーションは一対多または一対一ですが、多対多のリレーションが生じることもあります。今回で言えば「伝票番号」と

「商品」の関係です。こうした多対多のリレーションは関係テーブル(今回は「貸出商品記録」)を挟んで一対多のリレーションに分

解し記録します。

第 3 正規化

第 3 正規化では、非キー項目がすべて候補キーに従属するようにします。つまり、非キー項目に従属している項目があればこれを

分離します。(推移関数従属の分離)

例えば、テーブル「貸出記録」には「店舗住所」、「店舗連絡先」という項目がありますが、これは非キー項目である「貸出店名」に従

属する項目です。よってこれを分離します。結果的に、テーブル「店舗マスタ」を新しく作り、店舗 ID をふった上でテーブル「貸出記録」

から参照することになりました。(マスタについては既に「10.2 2 マスタ」で解説してあります。)

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第 3 部・第 4 章 データベース

これで主な正規化は終わりです。今回の例では、DB 構造はこのようになりました。

テーブル結合とクエリ

これまで、正規化などによってテーブルを分解してきました。ただしここまでテーブルが分割されてしまうと人間には見難くなってしま

います。そこでデータを閲覧する際にはテーブル結合という処理を行います。結合にはさまざまな種類があり、分解されたデータたちを

自由に集め、まとめて表示することが出来ます。

Access ではどのように結合を行うかを設定・保存することができ、クエリ機能と呼ばれます。

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発展:「クエリ」という名前

リレーショナル・データベースにおいて「クエリ」という言葉は、「RDBMS に対して送る SQL の命令の 1 つ 1 つ(または複数の命令

の固まり)」を指します。通常の RDBMS ではデータの追加・削除やテーブルの作成・設定などすべての動作をクエリによって行い

ます。Access においてはこのうち表示関係の命令(の固まり)を記録する機能にクエリという名前を与えているのです。

発展:あえて「非正規化」することもある

正規化を行い矛盾のない「One Fact in One Place」(1つの事実は1箇所で管理する)の原則を徹底した DB を構築することは大

切です。しかし次のような場合、時には正規化に逆行し、非正規化することもあります。

まず 1 テーブルに列が増えすぎた場合です。列数が多いと読み出しに時間がかかる場合があるほか、管理しにくくなる場合もあ

ります。この場合、同じ主キーのテーブルを 2 つ作り、よくアクセスするデータとあまりアクセスしないデータに分けることがありま

す。

また、複数のテーブルのデータを結合する処理や導出項目の計算は負荷の高いものです。「~ランキング」のようなアクセスが

多く負荷も高い処理に関しては、一定時間毎に集計処理を行って結果を別テーブルに保存し(キャッシュ)、それを呼び出すこと

で代用することもあります。

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第 3 部・第 4 章 データベース

3.4.3 Access の基本 ここでは、Access の基本的な概念と操作方法を説明します。

各オブジェクトの関係

Access はテーブル、フォーム、クエリ、レポート、マクロ、モジュールといった複数の要素から成り立っています。ふだんユーザーは、

(場合によってはフォームを通して)テーブルのデータを表示・入力します。また複数テーブルのデータを結合・抽出するクエリ機能や、

印刷用の表を作るレポート機能があります。

いずれも複数作ることができ、その一つ一つはオブジェクトと呼ばれます(テーブルオブジェクト、クエリオブジェクト等)。またオブジェク

トは開くたびに最新のデータが表示されます。元データを更新するたびに作り直す必要はありません。

通常、データベースシステムにおいては、データベースの構築・管理を行う管理者と、データの入力や表示・印刷を行う使用者がい

ます。データベースについてあまり理解していない使用者でもスムーズに使えるよう準備するのが管理者の役割です。使用者が入力・

表示・印刷を行なう際にテーブルやクエリには触る必要がないよう設定します。

ただし Access では使用者が管理者を兼ねることも多く、フォームを使わずにテーブル・クエリを直接操作することもあります。

新しいデータベースを作る場合

新しいデータベースを作るためには、まず Access

2013 を起動します。

次に、空のデータベースをつくり保存します。Access は Word 等とは異なり、はじめにデータベースを保存する必要があります。

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既存のデータベースを開く場合

既存のデータベースを開くには、該当フォルダの Access データベースのファイル(.accdb ファイル)をダブルクリックして開きます。

ファイルを開いた際、以下の様な警告が表示されることがあります。これはネットワーク上から取得したファイルの危険性を警告する

ものですので、確認したのち警告を消してください。

基本操作

Access の画面構成は次のようになっています。

左側の「ナビゲーション ウィンドウ」からオブジェクトを開き、右側の「ドキュメント ウィンドウ」で表示・入力などの操作を行います。

また各オブジェクトの新規作成は、上部「リボン」内の「作成」から行います。

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第 3 部・第 4 章 データベース

Access では、テーブルに入力したデータは逐次(自動的に)保存されます。ただし新しいオブジェクトを作った場合やオブジェクトの構

造・デザインを変えた場合は手動で保存する必要があります。

ドキュメントウィンドウ内上部にあるタブ部分を右クリックすると、「上書き保存」、「閉じる」といった操作が可能です。

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3.4.4 それぞれのオブジェクト ここでは、実際にテーブルやクエリ等のオブジェクトを作り、管理する方法を簡単に説明します。

機能ごとの詳細な解説は、紙面の都合上行いません

テーブル

データベースにおけるデータを蓄積するための器です。テーブルはデータベースの最も基本的な部分ですから、テーブルをしっかり

作っておかないと、表示・検索・抽出がままなりません。

見た目は Excel のワークシートによく似ています。実際、エクセルのファイルをテーブルとして取り込むこともできます。データを入力す

る際、このテーブルに直接入力することもできますが、一般的にはフォームを使います。

ここでは先ほどのレンタル DVD 店の会員マスタを例に、テーブルの作成方法を説明します。

テーブルを作成する

まずは空のテーブルを作成しましょう。以下のように操作します。

テーブル画面の操作方法

テーブル画面には、実際のテーブルデータを表示・入力できる「データシート ビュー」と、テーブルの構造を設定する「デザイン ビュ

ー」があります。テーブルを新規作成した後はまず「デザイン ビュー」で構造を設定します。

テーブルのデザイン

それでは、「デザイン ビュー」に切り替えてテーブルの構造を設定していきま

しょう。それぞれのフィールド名(項目名)とデータ型を入力していきます。

テーブル「貸出記録」、「貸出商品記録」では、会員 ID および店舗 ID をリレー

ションとして設定する必要があります。ここでは「ルックアップ フィールド」を作

成し、データを選択式で入力できるように設定します。

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第 3 部・第 4 章 データベース

設定が終わったら「データシート ビュー」に戻り、実際のデータを入力しましょう。これをテーブルの数だけ繰り返します。

クエリとリレーションシップ

データの抽出、並べ替え、計算といった処理を記憶させ、いつでも呼び出せるようにしたものがクエリです。

テーブルと同様に表示されますが、クエリは基本的に表示専用です。

クエリを作成する

Access では項目をドラッグ&ドロップで並べるだけで簡単にクエリを作ることが出来ます。

ここでは「貸出記録_確認用」を作成してみましょう。テーブル「貸出記録」に「会員マスタ」に記録されている会員の電話番号などを

結合し、確認しやすいクエリとします。

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作ったクエリを確認するには、画面下部のボタンをクリックしビューを切り替えましょう。

クエリ画面の操作方法

クエリ画面には、実際のクエリを確認できる「データシート ビュー」、クエリを設定できる「デザイン ビュー」、そして、より複雑なクエリを

SQL 言語で記述できる「SQL ビュー」があります。

「SQL ビュー」で作成した複雑なクエリは、「デザイン ビュー」で編集できなくなることがあります。

リレーションシップを設定する

ところで、クエリを作るためには適切にリレーションを設定する必要があります。また誤って設定したリレーションを削除したい場合もあ

るでしょう。そのような場合は、「リレーションシップ」画面からリレーションの設定を行います。

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第 3 部・第 4 章 データベース

フォーム

テーブルのデータをカード形式や伝票形式などで入力/表示させるためのものです。今回は新しい会員を追加する「会員登録画面」

を作ってみましょう。

Access ではワンクリックで簡単にフォームを作ることが出来ます。またフォームのデザインや動作を細かく設定することも出来ます。

フォームを作成する

フォームを作成するには、以下の様に操作します。

フォーム画面の操作

フォーム画面には、フォームを入力する「フォーム ビュー」のほかに、フォームの設定を行なう「レイアウト ビュー」と「デザイン ビュー」

があります。「レイアウト ビュー」を用いると簡単にレイアウトを操作できますが、より細かい設定を行なうには「デザイン ビュー」を使う必

要があります。

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レポート

主に印刷する際に使います。テーブルのデータを分類し、集計したりして印刷する機能です。普通の印刷では一覧形式で印刷する

だけですが、レポートを使うと多彩な印刷が行えます。

レポートを作成する

レポートを作成するには以下のように操作します。

レポート画面の操作

レポート画面には、レポートを画面向けに表示する「レポート ビュー」、印刷向けに表示する「印刷プレビュー」、またレポートの設定を

行う「レイアウト ビュー」、「デザイン ビュー」があります。

「デザイン ビュー」等でレポートのデザインを作成し、「印刷プレビュー」画面で印刷を行います。

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第 3 部・第 4 章 データベース

3.4.5 Excel との連携

データのエクスポート(出力)

Access のクエリやテーブルを、Excel で編集可能な形式で書き出すことが出来ます。グラフを作成する必要がある場合などに便利

です。

次のように操作することで、Excel 向けに出力(エクスポート)することができます。

なお Excel ファイルとして書きだした(エクスポートした)場合、Access 側でテーブル・クエリの内容を書き換えても Excel ファイルには

反映されませんから注意してください。

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データのインポート

Excel で作成した表を Access に取り込むには、次の通りインポート操作を行います。

④で「現在のデータベースの新しいテーブルにデータをインポートする」を選択した場合は、Excel ファイルの内容を Access データベ

ースに「取り込み」ます。この場合、元の Excel ファイルを変更しても Access 側には反映されません。一方、読み込んだ結果できた新

しいテーブルは Access で編集できます。

「リンク テーブルを作成してソース データにリンクする」を選択した場合は、Excel ファイルを Access データベースに「リンク」します。

この場合、元の Excel ファイルを Excel で開き変更すると、その変更が Access データベースに反映されます。一方、テーブルは

Access で編集できません。

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