20
353 3.4.3 広域連携のための情報コンテンツの構築 (1) 業務の内容 (a) 業務の目的 広域連携体制を実現するための情報共有プラットフォームを構成する情報コンテンツの枠組み を構築する。首都直下地震に関するこれまでの検討で欠落あるいは不足している事象について、 資料収集、調査ならびに分析を行い、情報コンテンツとして整理する。個別研究テーマ(1)で は広域連携に必要な共有情報、個別研究テーマ(3)ではライフライン事業者の共有情報、個別 研究テーマ(4)では地域・生活再建の情報が整理されるので、これらの情報コンテンツについ て、情報の構造を情報テーブルの形でまとめる。平成19年度は本研究を「①広域連携体制の構 築とその効果の検証」の一部として実施したが、本研究では情報コンテンツの構築、①では情報 システムの仕様提示と3年目の神奈川県を中心とした広域的情報共有と応援体制に関する評価実 験、ならびに最終年度の八都県市を対象とした実証実験を主として実施するとして、①より分離 したものである。 (b) 平成20年度業務目的 平成21年度に神奈川県を対象とした広域連携の評価実験を実施するに当たり、①の研究と連 携して、評価実験に必要とされる情報コンテンツを抽出、整理する。前年度の研究成果で拡充さ れた情報テーブルをもとに、道路交通情報や航空機運航支援情報については、評価実験のシナリ オの構築に合わせて具体的な情報項目を抽出する他、首都直下地震で検討が不可欠である鉄道運 輸機関との情報共有についても、JR 東日本等に対して調査を行い、情報テーブルの補充を行う。 (c) 担当者 所属機関 役職 氏名 メールアドレス 山梨大学医学工学総合研究部 同上 人と防災未来センター (独)宇宙航空研究開発機構 東京経済大学コミュニケーション学部 アドバンストアルゴリズム&システムズ 教授 助教 主任研究員 研究員 教授 主任研究員 鈴木猛康 秦 康範 近藤伸也 小林啓二 吉井 博明 篠原 修二 (2) 平成20年度の成果 (a) 業務の要約 平成21年度に神奈川県を対象とした広域連携の評価実験を実施するに当たり、評価実験に必 要とされる情報コンテンツを抽出、整理するとともに、評価実験に用いる情報システムのユーザ ビリティ向上に関する分析を行った。道路交通情報や航空機運航支援情報については、評価実験 のシナリオの構築に合わせて具体的な情報項目を抽出した。また、首都直下地震で検討が不可欠 である鉄道運輸機関との情報共有についても、JR 東日本等に対して調査を行い、情報テーブルの 補充を行った。

3.4.3 広域連携のための情報コンテンツの構築 · した場合における組織間でやりとりする情報を抽出したものである。これらの情報は図3のもの

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353

3.4.3 広域連携のための情報コンテンツの構築

(1) 業務の内容

(a) 業務の目的

広域連携体制を実現するための情報共有プラットフォームを構成する情報コンテンツの枠組み

を構築する。首都直下地震に関するこれまでの検討で欠落あるいは不足している事象について、

資料収集、調査ならびに分析を行い、情報コンテンツとして整理する。個別研究テーマ(1)で

は広域連携に必要な共有情報、個別研究テーマ(3)ではライフライン事業者の共有情報、個別

研究テーマ(4)では地域・生活再建の情報が整理されるので、これらの情報コンテンツについ

て、情報の構造を情報テーブルの形でまとめる。平成19年度は本研究を「①広域連携体制の構

築とその効果の検証」の一部として実施したが、本研究では情報コンテンツの構築、①では情報

システムの仕様提示と3年目の神奈川県を中心とした広域的情報共有と応援体制に関する評価実

験、ならびに最終年度の八都県市を対象とした実証実験を主として実施するとして、①より分離

したものである。 (b) 平成20年度業務目的

平成21年度に神奈川県を対象とした広域連携の評価実験を実施するに当たり、①の研究と連

携して、評価実験に必要とされる情報コンテンツを抽出、整理する。前年度の研究成果で拡充さ

れた情報テーブルをもとに、道路交通情報や航空機運航支援情報については、評価実験のシナリ

オの構築に合わせて具体的な情報項目を抽出する他、首都直下地震で検討が不可欠である鉄道運

輸機関との情報共有についても、JR 東日本等に対して調査を行い、情報テーブルの補充を行う。 (c) 担当者

所属機関 役職 氏名 メールアドレス

山梨大学医学工学総合研究部

同上

人と防災未来センター

(独)宇宙航空研究開発機構

東京経済大学コミュニケーション学部

アドバンストアルゴリズム&システムズ

教授

助教

主任研究員

研究員

教授

主任研究員

鈴木猛康

秦 康範

近藤伸也 小林啓二 吉井 博明 篠原 修二

(2) 平成20年度の成果

(a) 業務の要約

平成21年度に神奈川県を対象とした広域連携の評価実験を実施するに当たり、評価実験に必

要とされる情報コンテンツを抽出、整理するとともに、評価実験に用いる情報システムのユーザ

ビリティ向上に関する分析を行った。道路交通情報や航空機運航支援情報については、評価実験

のシナリオの構築に合わせて具体的な情報項目を抽出した。また、首都直下地震で検討が不可欠

である鉄道運輸機関との情報共有についても、JR 東日本等に対して調査を行い、情報テーブルの

補充を行った。

354

(b) 業務の成果

1) 地方自治体(神奈川県、横浜市、川崎市)

a) はじめに

本項目では、首都直下地震などの大災害時における広域的な医療搬送を対象にして、地方自治

体で共有すべき情報コンテンツについて検討する。具体的には、本研究プロジェクトのモデル地

域である神奈川県・横浜市・川崎市(以下三県市)の地域防災計画を整理し、広域医療搬送にお

ける組織間の情報と患者の流れ図を作成する。流れ図から必要な情報を抽出して、地方自治体に

必要となる情報項目として整理する。

b) 現行の地域防災計画の整理

広域医療搬送における組織間の情報と患者の流れ図を作成するにあたり、三県市の地域防災計

画震災編の該当箇所を整理した。我が国では、計画的な防災行政を推進するにあたり、各主体別

に防災基本計画、防災業務計画、地域防災計画を定めることが災害対策基本法で規定されている。

特に地域防災計画は、都道府県および市区町村が地域の実情に即して作成するものである。この

計画には、災害対策本部の組織構造や各部署の災害対応分掌業務等が明記されている。

消防組織法によると、消防は火災の防御・予防だけでなく救急・救助・防災や減災の実施機関

であるが、消防責任を負うのは市町村と規定している。また、大規模・特殊災害に備えて、市町

村消防同士で相互応援協定を締結することと定められている。さらに、消防の有事の業務は平時

の延長にあることを考慮して、今回のシナリオでは現場において救出救助や救急車による搬送活

動を行うこととした。現在の病院の防災対策について、例えば大友(2008)1)によると、医療機関は

災害拠点病院を除いて、一般的に有事用の事前プログラムの整備状況および活用には温度差があ

り、全体として課題が多いことが指摘されている。以上より、消防や医療機関の有事の具体的な

活動状況に関する資料は、災害拠点病院の防災計画や自治体の地域防災計画の中の病院に関する

事項を参考にした。

c) 組織間の情報と患者の流れ

三県市の地域防災計画をもとに作成した広域医療搬送における組織間の情報と患者の流れ図が

図1である。これは重篤患者が救助され地域救護所に搬送されてからトリアージされ災害拠点病

院に搬送されたものの対応不可であることから県の保健福祉部に広域医療搬送を要請し、受入病

院と輸送手段を調整してから実際にヘリで受入機関まで広域医療搬送されるというシナリオに基

づいたものである。

このシナリオにおける組織間連携により情報をやりとりする業務は、重篤患者の受け入れ先の

調整と搬送手段の調整の2つとした。重篤患者の広域医療搬送の受入機関は、県保健福祉部が広

域災害・救急医療情報システムを用いて他の災害医療拠点病院と調整するとした。その前提とし

て災害により多数の重篤患者が発生し、かつ地域の災害拠点病院に搬送されると仮定している。

また、搬送手段の調整については現場の 前線では消防が行うが、被災地外への広域搬送の場合

は、県の災害対策本部において消防・自衛隊をはじめとした搬送手段を持つ機関が調整する。

355

患者の流れ情報の流れ

重篤患者のヘリ搬送

調整事項

受入病院の調整

輸送手段の調整

図1 広域医療搬送における組織間の情報と患者の流れ図(現行計画)

患者の流れ情報の流れ

重篤患者のヘリ搬送(With PF)

PF

PF

受入病院の調整

輸送手段の調整

調整事項

調整内容の様々な機関による共有が可能

図2 広域医療搬送における組織間の情報と患者の流れ図(情報共有PF)

このシナリオをもとに本プロジェクトで開発する情報共有プラットフォーム(以下情報共有PF)

を導入する場合の流れ図が図2である。先に挙げた組織間での調整業務において、計画では業務

に関連する組織のみが情報を共有できるが、情報共有 PF の導入によって現場で重篤患者の受け入

れ先及び搬送手段の調整状況が把握できるなど、様々な機関による情報の共有が可能であること

がわかる。

356

患者の流れ情報の流れ

重篤患者のヘリ搬送

広域搬送が必要となる重篤患者と場所

重篤患者の場所と行先利用可能な車両数、ヘリ台数

必要な情報

利用可能な道路・空域

重篤患者と場所と行先輸送手段、到着時刻

広域搬送が必要となる重篤患者と場所

図3 広域医療搬送において必要な情報(現行計画)

d) 地方自治体に必要となる情報項目

広域医療搬送における組織間の情報と患者の流れ図をもとに、地方自治体に必要となる情報項

目について検討した。図3は図1の現行の地域防災計画をもとにした流れ図に、組織間でやりと

りする情報を抽出したものである。現場から広域搬送が必要となる重篤患者と場所が報告され、

それをもとに受入病院が調整される。輸送手段の調整には重篤患者の場所と行先、輸送に利用可

能な車両とヘリの数と利用可能な道路と空域が必要となる。輸送手段が決まった後には、重篤患

者の場所と行先、輸送手段と現場への到着時刻が現場に報告される。図4は、情報共有 PF を導入

した場合における組織間でやりとりする情報を抽出したものである。これらの情報は図3のもの

と比較しても、内容は変わっていない。すなわち、情報共有 PF に必要となる情報であると言える。

抽出された情報から、情報項目を分類(カテゴリー)とその目的で整理したものが表1である。

重篤患者の状況と医療機関、搬送機関と搬送手段、道路と空域に関する情報である。「H18 版と比

較」とは、本プロジェクトで開発する情報共有 PF のベースとなる減災情報共有プラットフォーム

2)の情報スキーマにある情報項目と比較した結果である。道路に関する情報以外は、新規に追加さ

れる項目であることがわかる。今後は、この情報項目をもとに過去の災害事例の整理と、応援協

定等の整理によるモデル地域の関係機関の洗い出しと情報項目の精査が必要である。

357

患者の流れ情報の流れ

重篤患者のヘリ搬送(With PF) 必要な情報

PF

PF

広域搬送が必要となる重篤患者と場所 重篤患者の場所と行き先

利用可能な車両数、ヘリ台数利用可能な道路・空域

重篤患者の場所と行き先輸送手段、到着時刻

図4 広域医療搬送において必要な情報(情報共有 PF)

表1 広域医療搬送において地方自治体に必要となる情報項目

分類 目的 情報項目 H18版と比較患者の個人情報を扱う 患者氏名、患者住所、患者電話番号 新規

トリアージに関する情報を扱うトリアージ実施時刻、トリアージ実施者氏名、トリアージ実施場所、トリアージ実施機関

新規

患者の搬送機関情報を扱う 搬送機関名 新規患者の収容機関情報を扱う 収容機関名 新規患者の容体に関する情報を扱う トリアージ実施区分、傷病名 新規患者の救出場所情報を扱う 救出場所住所 新規患者の広域医療搬送受入機関情報を扱う 受入機関名 新規患者の広域医療搬送機関情報を扱う 広域搬送機関名 新規患者が広域医療搬送される時刻情報を扱う 収容機関到着時刻、受入機関到着時刻 新規

災害医療拠点病院情報 災害医療拠点病院に関する情報を扱う名称、住所、空きベット数、診療科、医師数、医療搬送受入状況

新規

地域救護所情報 災害時に開設される地域救護所情報を扱う 名称、住所、医師数、看護師数、医薬品 新規

災害拠点病院情報 災害拠点病院に関する情報を扱う名称、住所、空きベット数、診療科、医師数、医療搬送受入状況

新規

搬送機関情報 患者を搬送する機関情報を扱う名称、住所、搬送手段、搬送可能車両(ヘリ)数

新規

広域医療搬送機関情報 患者を広域医療搬送する機関情報を扱う名称、住所、搬送手段、搬送可能車両(ヘリ)数

新規

道路情報 道路の一般情報を扱う 道路区間、道路区分 既存道路混雑情報 道路の混雑情報を扱う 道路区間、混雑の有無 既存道路規制情報 道路規制情報を扱う 道路区間、規制理由、規制区分 既存道路被害情報 道路の被害情報を扱う 道路区間、被害レベル、確認・未確認 既存

道路区間 道路の規制区間・被害区間を扱う規制・被害区間開始地点、規制・被害区間終了地点

既存

空域情報 空域の一般情報を扱う 空域名称、境界線 新規搬送車両情報 患者の搬送に用いる車両情報を扱う 搬送機関名、利用可能車両数 新規搬送ヘリ情報 患者の搬送に用いるヘリ情報を扱う 搬送機関名、利用可能ヘリ数 新規

重篤患者情報

2) 地方自治体の災害対応管理

平成 21 年度に広域連携の評価実験を実施するに当たっては、災害対応の 前線となる地方自治

体の情報共有を支援する情報システムが不可欠である。しかし、このような情報システムは災害

時にしか使われないものであるため、機能性はもちろんのこと使用性の検証が十分行われていな

い。とくに使用性、すなわちユーザビリティの確保は、緊急対応時のツールとして必須の条件と

358

写真1 評価実験の全景

言える。広域連携体制の確立には、情報コンテンツとともにコンテンツを正確かつ迅速に共有さ

せる情報システムのユーザビリティが必要である。上記評価実験には、災害対応管理システム 3)

を適用する予定である。本システムについては、これまで機能性の改善を行ってきたが、この度、

ユーザビリティに焦点を当てた改善を行うとともに改善効果を定量化し、さらなる改善項目を決

定して、評価実験の準備を行った。

災害対応管理システムのユーザビリティ向上に関わる改善項目については、同システムのユー

ザーである新潟県見附市の職員から直接要望された項目に加え、入力作業を通して効率性や満足

度の観点からユーザーインターフェースの見直しを行うことにより、大小交えて多くの改善項目

を抽出した。この中で、大きな改善項目としては、ブラウザの使い易さ、画面の色構成、文字の

見易さ、画面間の移動削減、閲覧画面の見易さ、登録必須項目削減、Google Mapの採用、編集機

能追加の7項目であった。

上記の改善内容を実装させて、災害対応管理システムの更新を行った。図5に災害対応管理シ

ステム更新版の画面例を示す。この災害対応管理システム更新版を用いて、新潟県見附市にて、

災害対策本部、消防本部、建設部、産業部、民生教育部、ガス上下水道部の6部署、合計17名の職

員参加のもと、システム入力評価実験を実施した。写真1に実験状況を示す。実験は、豪雨水害

(a) 被害情報の閲覧画面 (b) 地図入力(Google Map)

(c)被害報告作成画面 (d) 指示に対する各部の対応状況

図5 災害対応管理システム更新版の画面例

359

のシナリオの進展に伴って、気象情報や被害報告等の状況付与を指定した時刻に指定された各部

へ行うことにより、状況付与型図上訓練として実施した。

情報システムのユーザビリティを構成する3つの指標として有効性、効率性、満足度を設定し、

各指標に関する改善項目の相対的な比較を行うことを試みる。そのため、本研究ではAHP(Analytic

Hieracrhy Process)4)手法を適用する。図6に階層図を示す。システム入力評価実験を経験し、改善

項目の内容を把握している見附市職員の主観に基づいて、実験の2週間後に以下のようなアンケー

トを実施した。

まず、有効性、効率性、満足度という評価基準間で一対比較を行うアンケートを行った。表2

に示すように、アンケートでは一対の評価基準間の重要度の比較を、①同程度に重要、②若干重

要、③ほぼ同等、④やや重要、⑤絶対重要の5種類のレベルで行うものであり、各欄のうちどれか

を選択させる方法を採った。各欄を選択した場合の得点は、欄中に示す数値とした。各一対比較

の結果(得点)に対しては、アンケート回答者全体の幾何平均を計算し、AHP手法に従って各評

価基準の重要度である重みを算出した。

有効性 効率性 満足度

 改善項目の評価

閲覧画面の見易さ

プラウザの使い易さ

登録必須項目削減

画面間の移動削減

文字の見易さ

画面の色構成

情報の関連付け

編集機能GoogleMapの採用

図6 AHP 手法を適用した改善項目の評価のための階層図

一方、代替案である各改善項目間についても同様に、一対比較を行った。表2と同様であるが、

①~⑤については、①明らかに劣っている、②劣っている、③ほぼ同等、④優れている、⑤明ら

かに優れている、のいずれかを選択させた。代替案である改善項目が9つあるので、9×8/2×1= 36の一対比較を行うことになる。これを各評価基準に関して行うので、合計36×3=108の設

問に回答してもらうこととした。

システム入力評価実験に参加した17名の見附市職員を対象として上記のア

ンケートを実施し、AHP手法にしたが

って整理した結果を表3に示す。まず評

価基準の重み、すなわち災害対応管理シ

ステムのユーザビリティに対する有効

性、効率性、満足度の重要度が、表の

上部にまとめられている。表に示すとお

り、有効性、効率性、満足度の重みは5:

表2 評価基準の一対比較のためのアンケート

① ② ③ ④ ⑤

有効性が効率性よりも 1

3 5 7 9

効率性が有効性よりも 1/3 1/5 1/7 1/9

有効性が満足度よりも 1

3 5 7 9

満足度が有効性よりも 1/3 1/5 1/7 1/9

効率性が満足度よりも 1

3 5 7 9

満足度が効率性よりも 1/3 1/5 1/7 1/9

360

3:2との結果となり、まず第一に災

害対応を支援するという基本機能の

実現性で、機能性と同意と定義した

有効性が重要視されるという予想通

りの結果が得られた。 表3の有効性、効率性、満足度の

列に、各評価基準に関する改善項目

間の重要度の相対比較結果を示して

いる。表中の黄色で塗ったセルは各

評価基準でもっとも高いレベル、オ

レンジ色はその次のレベルであるこ

とを示している。ブラウザの使い易

さとGoogle Mapの採用については、

すべての評価基準に対してもっとも

高いレベルの数値が得られたことがわかる。どの改善項目をとっても、3つの評価基準のどれか

一つに貢献しているわけではなく、比率は異なるがすべての評価基準に関連していると言える。

例えば、画面の色構成や文字の見易さ、ならびに閲覧画面の見易さは、満足度との関連性がもっ

とも強く、登録必須項目の削減は効率性との関連性が も高いという予想通りの結果が得られた。

ただ、画面間の移動については、効率性との関連性が も高いと推定されたが、関連性が も高

いのは有効性という結果であった。

以上のように、ユーザビリティに着目した災害情報システムの改善を行い、その改善効果を定

量評価した。今後、この結果に基づいてさらなる改善を行い、平成 21 年度の評価実験に備える所

存である。

3) 鉄道

表4 地震発生後の安全確認

分類 対応

地震計による観測値

新幹線 在来線

・ 徐行により運転再開 ・ 異常がなければ所定速度で運転再開

9(cm/s)以上 18(cm/s)未満

6(cm/s)以上 12(cm/s)未満

・ 徐行により運転再開 ・ 社員の徒歩等による点検 ・ 異常がなければ所定速度で運転再開

18(cm/s)以上 12(cm/s)以上

JR東日本では、地震計が検知した地震動の速度値に基づいて、表4に示すような地震発生後

の安全確認を行っている。したがって、震度5強の地震が発生した場合、社員の徒歩による点検

を必要とするため、施設被害がなくとも運転再開には多大な時間を要することになる。震度6強

表3 AHP 手法を用いた各評価項目の重要度評価

評価基準 有効性 効率性 満足度 総合

評価 重み 0.487 0.319 0.194

ブラウザの使い易さ 0.145 0.159 0.139 0.148

画面の色構成 0.058 0.071 0.095 0.069

文字の見易さ 0.094 0.081 0.122 0.095

画面間の移動 0.118 0.091 0.086 0.103

閲覧画面の見易さ 0.101 0.102 0.125 0.106

登録必須項目削減 0.124 0.144 0.116 0.129

Google Map の採用 0.148 0.147 0.130 0.144

情報の関連付け 0.107 0.107 0.109 0.107

編集機能 0.107 0.107 0.109 0.107

361

では、点検の所要時間だけでなく、何らかの施設被害が発生する可能性が高い。鉄道車両は1両

30ton 以上の重量があり、信号設備も複雑である。施設の復旧には多大な時間を要し、1995 年兵

庫県南部地震では約 3 ヶ月、2004 年新潟県中越地震で約 2 ヶ月を費やした。 平成 19 年度には、JR東日本の職員に対してアンケート調査を実施し、JR東日本が災害ある

いは事故の際、社内で把握している情報と災害時に必要とする情報について、以前実施した国土

交通省、東京ガス、NTT東日本のデータと比較してまとめることを試みた。本年度は、さらに

これらの情報の詳細について調査した結果を整理したので報告する。 a) 地震災害時に把握している社内情報

地震災害時に鉄道事業者が把握している社内情報としては、以下の 9 項目に集約された。 ・ 列車運行情報:列車の運行情報は、輸送管理システムを用いて輸送司令室で把握することが

できる。災害で列車が停止している場合、同システムより列車の位置を確認することができ

る。 ・ 観測情報:防災情報システムを用いて地震の諸元などの観測情報が得られる。地震動や降雨

量などが予め定められた規制値を超過すると、自動的または指令員の指示により列車の運行

を停止されることができる。 ・ 災害、事故発生情報:乗務員から災害や事故の報告が行われた場合、社内の一斉放送や電話

連絡により関係箇所に情報が伝達される。近年では土砂災害や河川増水などの災害を検知し、

信号により列車の進入を防止するシステムも用いられており、これらの情報も輸送指令室で

集約している。 ・ 迂回ルート:複数の線区にまたがる大規模災害の際には、乗客への情報提供を目的として、

迂回ルートの情報収集も行う。 ・ 駅構内の情報:職員による巡回やモニター画面により、駅構内の状況は駅長事務室等に集約

される。その後、輸送指令室および地区指導駅(地区の総括駅)に鉄道電話等により連絡さ

れる。 ・ 車内の被害:列車内の被害については、車掌または運転士により集約された後、輸送指令室

に連絡される。輸送指令室からは本社・支社の関係箇所へ連絡が行われる。輸送指令室の情

報で、社内で共有が必要な情報については、一斉指令放送や東京圏においては東京圏輸送管

理システム(ATOS)端末を介して周知される。 ・ 家族の安否確認:社員が勤務中であった場合は、災害伝言ダイヤル等を活用してまず家族の

安否を確認し、職場へ報告する。社員が緊急を要する作業、乗客の救助や消火活、に従事す

るため、社員が自ら家族の安否確認が出来ない場合は、職場が代わりに安否確認を行う。勤

務時間外であった場合は、家族の安否の確認や緊急を要する作業を行った後、自職場へ安否

の報告を行う。その後、指定箇所に自立的に非常参集する。以上の方法については、「大地震

発生時の対応マニュアル」として社員全員に配布されており、定期的に訓練を行っている。 ・ 設備被害情報:設備被害は、地上点検作業員または乗務員からの情報に基づいて、輸送指令

室で集約される。地震動や降雨量などが運転規制値を超過して列車の運行が停止した場合、

地上点検作業員は指令室からの指示で、予め定められた点検計画により地上設備の点検を実

362

施する。通常は線路上からの点検となるが、大規模地震時には構造物全体の点検を行う。設

備被害の状況は随時輸送司令室に携帯電話等で連絡され、集約される。復旧作業等が必要な

場合は、別途復旧に携わる建設会社にその旨が連絡される。 ・ 復旧情報:災害が発生して列車の運行を停止した場合、各支社では災害対策本部を設置し、

復旧に要する時間や費用などの情報を、設備管理を担当する現業機関より入手して集約する。

集約された情報は随時本社に報告される。各現業機関では、復旧に携わる建設会社に指示し、

交通状況や資材の調達方法など現場の状況を勘案した上で、復旧までに要する時間と費用を

見積もる。復旧作業の進捗に伴い計画が変更された場合は、随時災害対策本部に報告する。 b) 災害時に必要とする外部情報

一方、災害時に鉄道事業者が必要とする情報と、その情報の入手に関する現状は、以下の通り

であった。 ・ 電力被害情報:電力供給に関する情報に基づき、事業継続が可能であるかどうか判断するた

め必要な情報である。現状では、テレビニュースやホームページの提供情報を利用している。

また、電力供給に関しては、社内の電力部門の指令と電力会社の指令とが直接情報をやりと

りし、災害やその他事故に対応している。 ・ 通信途絶情報:社内情報の伝達に電話を用いているため、通信インフラの被害に関する情報

が必要である。現状では、テレビニュースやホームページの提供情報を利用している。 ・ 道路被害情報:災害発生後に鉄道設備の点検、また復旧作業には、道路被害情報が必要であ

る。ただし、実際は指示を受けた建設会社が道路情報を収集する。 ・ 電気や水道の被害の復旧情報:などの緊急性を要するライフライン復旧と鉄道復旧作業にお

いて、場所が競合した場合の調整 ・ 病院情報:駅等で負傷した乗客の搬送・治療のため、病院の受入体制等の情報が必要である。 ・ 社会資本の情報:道路被害が甚大なため貨物列車の運行を優先する等、公共企業としての役

割を判断したり、帰宅困難者への提供情報のために、病院や道路、物流など社会資本全般の

状況に関する情報が必要である。 c) まとめ

以上より、鉄道事業者が災害時に把握する災害情報で、ICT を活用して他の防災関係機関との

共有が有効と思われる情報項目をまとめ、表5にまとめた。 社会資本の俯瞰的な状況については、鉄道事業者が災害対応や復興における鉄道輸送の役割を

確認したり、帰宅困難者や移動を必要とする多くの人々に対して、鉄道駅が情報提供の場となる

ことを考えると、マスコミ同様の情報共有の役割があるように思われる。また、鉄道もライフラ

インの一部であり、復旧工事で競合することになる他のライフライン事業との間では、復旧情報

の共有化が大きなメリットとなる。復旧工事の予定情報については、これまで十分検討していな

かったため、関連する事業者が集まり、コンテンツの詳細を検討の上、情報テーブルの拡充を図

る必要がある。

363

表5 鉄道情報のテーブル 項目1 項目 2 項目 3 項目 4 項目5

鉄道情報 列車運行 平常運転 列車遅延 路線、区間 発生時刻、

遅延時間 運行停止 路線、区間 発生時刻、

復旧見込み 迂回ルート 被害 人的被害 車内 人的情報 駅構内 人的情報 その他 人的情報 車両 路線、列車

鉄道施設・

設備 線路 場所、発生

時刻、復旧見

込み 駅 場所、発生

時刻、復旧見

込み 電力供給施

設 場所、発生

時刻、復旧見

込み その他 場所、発生

時刻、復旧見

込み 4) 道路交通

昨年度抽出した首都直下地震時の緊急輸送に必要となる道路情報項目に基づき、各情報の具体

的な属性を整理した。さらに、来年度実施予定の評価実験において利用するための道路基盤情報

を作成した。 以下、平常時に整備すべき情報である道路情報、道路区間情報および緊急交通路指定想定路線

情報(東京都では緊急交通路、自治体により呼称が異なる)の属性を表6~表8に整理する。ま

た、発災後に共有されるべき情報である道路被害情報、道路規制情報、道路混雑情報、緊急交通

路情報、緊急輸送路情報およびのプローブカー交通流情報の属性を表9~表 14 に整理する。 来年度実施予定の評価実験の準備として、これら道路関連情報のうち表6~表8に相当する平

常時に整備可能な道路基盤情報を、市販の道路地図(ナビゲーション道路地図 2007(アルプス社))

を変換して作成した。作成範囲は東京都および神奈川県の高速道路、有料道路、国道、県道およ

びその他の幹線道路である(図7)。さらにこれらの道路から緊急交通路指定想定路線(および緊

急交通路)を抽出した(図8)。

364

表6 道路情報(RoadType)の属性 項目名(日) 項目名(英) データ型 最小頻度 最大頻度

道路ID roadId xsd:string 1 1路線名 roadName xsd:string 1 1路線番号 roadNumber xsd:integer 1 1橋梁名 bridgeName xsd:string 0 1

道路区分 roadClassificationxsd:string(国道|首都高速道路|都道・県道|その他一般道)

1 1

道路区間 roadPath RoadPathType 1 1道路被害ID roadDamageId xsd:string 0 1道路規制ID roadRegulationId xsd:string 0 1道路混雑ID roadTrafficId xsd:string 0 1緊急交通路指定想定路線ID candidateEmergencyRoadId xsd:string 0 1緊急交通路ID emergencyRoadId xsd:string 0 1緊急輸送路ID emergencyTransportRouteId xsd:string 0 1 表7 道路区間情報(RoadPathType)の属性

項目名(日) 項目名(英) データ型 最小頻度 最大頻度リンクID linkId xsd:string 1 1始点ノード startNode xsd:string 1 1終点ノード endNode xsd:string 1 1

道路形状 roadGeometrygml:GeometryPropertyType(LineString)

1 1

距離 roadLength xsd:float 1 1

幅員区分 roadWidthClassificationxsd:string (Over13.0meter|5.5-13.0meter|3.0-5.5meter|Under3.0meter)

0 1

総車線数 roadNumLanes xsd:integer 0 1 表8 緊急交通路指定想定路線(CandidateEmergencyRoadType)の属性

項目名(日) 項目名(英) データ型 最小頻度 最大頻度路線名 roadName xsd:string 1 1路線番号 roadNumber xsd:integer 1 1道路区間 roadPath RoadPathType 1 1道路ID roadId xsd:string 1 1緊急交通路指定想定路線ID candidateEmergencyRoadId xsd:string 1 1 表9 道路被害情報(RoadDamegeType)の属性

項目名(日) 項目名(英) データ型 最小頻度 最大頻度路線名 roadName xsd:string 1 1路線番号 roadNumber xsd:integer 1 1橋梁名 bridgeName xsd:string 0 1被害箇所住所 damagePointAddress xsd:string 1 1道路区間 roadPath RoadPathType 1 1道路ID roadId xsd:string 1 1道路被害ID roadDamageId xsd:string 1 1被害確認時間 damageConfirmedTime gml:TimePositionType 1 1

被害区分 damageClassfication

xsd:string(陥没|隆起|土砂災害|崩落|冠水|建物崩壊|ブロック塀倒壊|電柱倒壊|自動車による閉鎖等|落橋|橋脚橋台破損|橋桁破損|越水|その他)

1 1

365

表 10 道路規制情報(RoadRegulationType)の属性 項目名(日) 項目名(英) データ型 最小頻度 最大頻度

路線名 roadName xsd:string 1 1路線番号 roadNumber xsd:integer 1 1橋梁名 bridgeName xsd:string 0 1規制箇所住所 regulationPointAddress xsd:string 1 1道路区間 roadPath RoadPathType 1 1道路ID roadId xsd:string 1 1道路規制ID roadRegulationId xsd:string 1 1規制開始時刻 startRegulationTime gml:TimePositionType 1 1規制終了時刻 endRegulationTime gml:TimePositionType 1 1規制終了予定時刻 endRegulationEstimatedTime gml:TimePositionType 1 1

規制区分 regulationClassification

xsd:string(全面通行止め|片側通行止め|歩行者のみ通行可|規制なし|不明)

1 1

規制理由 regulationReason noteType 1 1

表 11 道路混雑情報(RoadTrafficType)の属性 項目名(日) 項目名(英) データ型 最小頻度 最大頻度

路線名 roadName xsd:string 1 1路線番号 roadNumber xsd:integer 1 1橋梁名 bridgeName xsd:string 0 1

混雑状態 trafficJamxsd:string(渋滞|混雑|混雑なし)

1 1

道路区間 roadPath RoadPathType 1 1道路ID roadId xsd:string 1 1道路混雑ID roadTrafficId xsd:string 1 1

表 12 緊急交通路情報(EmergencyRoadType)の属性

項目名(日) 項目名(英) データ型 最小頻度 最大頻度路線名 roadName xsd:string 1 1路線番号 roadNumber xsd:integer 1 1道路区間 roadPath RoadPathType 1 1道路ID roadId xsd:string 1 1緊急交通路ID emergencyRoadId xsd:string 1 1指定日時 specifyTime gml:TimePositionType 1 1解除日時 unspecifyTime gml:TimePositionType 1 1解除予定日時 estimatedUnspecifyTime gml:TimePositionType 1 1 表 13 緊急輸送路情報(EmergencyTransportRouteType)の属性

項目名(日) 項目名(英) データ型 最小頻度 最大頻度路線名 roadName xsd:string 1 1路線番号 roadNumber xsd:integer 1 1道路区間 roadPath RoadPathType 1 1道路ID roadId xsd:string 1 1緊急輸送路ID emergencyTransportRouteId xsd:string 1 1指定日時 specifyTime gml:TimePositionType 1 1解除日時 unspecifyTime gml:TimePositionType 1 1解除予定日時 estimatedUnspecifyTime gml:TimePositionType 1 1

366

表 14 プローブカー交通流情報(ProbedTrafficFlowType)の属性

項目名(日) 項目名(英) データ型 最小頻度 最大頻度路線名 roadName xsd:string 1 1路線番号 roadNumber xsd:integer 1 1道路区間 roadPath RoadPathType 1 1道路ID roadId xsd:string 1 1交通流情報ID probedTrafficFlowId xsd:string 1 1車線ID laneId xsd:integer 1 1単位計測時間 unitTime xsd:float 1 1プローブカーの交通量 numProbeVehicles xsd:integer 1 1平均走行速度 averageSpeed xsd:float 1 1

図7 整備した道路基盤情報(道路情報・道路区間情報)

高速道路・有料道路・国道県道・幹線道路

367

図8 整備した道路基盤情報(緊急交通路指定想定路線) 5) 航空機運航支援

地震等の大規模災害発生時には、多機関・多数の災害救援航空機が現場空域内を飛行すること

が予想されている。しかしその一方で、夜間や悪天候時の運航を阻害する技術的課題や、特にヘ

リの特性を活かした運航を実施するために解決すべき法制度上の問題も残されているのが現状で

ある。

独立行政法人 宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)では、航空機の安全性・利便性を向上す

る次世代運航システム「DREAMS (Distributed and Revolutionary Efficient Air-traffic Management

System(分散型高効率航空交通管理システム)」の研究開発を進めている。DREAMS では、航空

機同士、および航空機-地上局間の情報通信インフラであるデータリンクシステムの整備を前提

とし、アビオニクス(航空機に搭載される電子機器)の機能・性能を向上することによって、悪

気象条件(低視程)時にも航空機間の安全な間隔を自動的に確保し、安全で高密度(狭い空域で

多数の航空機が飛行する状態)な運航を実現するシステムの開発等を目指している。

このような次世代運航技術の国内における 初の適用先の一つとして、JAXA は京都大学防災

研究所と共同で次世代運航技術を適用した災害救援航空機情報共有ネットワーク(D-NET)を提

案している(図9)。D-NET システムを実現することにより、特に首都直下地震のような大規模

災害発生時において、下記のような効果が期待される。 ・ 多数機の運航状況のリアルタイム管理による救援活動の効率向上 ・ 航空機が収集する被災地情報の共有化による即応性向上

高速道路・有料道路・国道県道・幹線道路

緊急交通路指定想定路線

368

・ 航空機と地上部隊との連携強化、救援物資輸送の効率化 ・ 高密度空域での空中衝突防止

JAXA では、上記機能を実現する D-NET 地上システムおよび機上システムを 2012 年度末まで

に開発する計画で、各システムを実運用環境下において適宜評価していく計画である。 平成 20 年度は、首都直下地震防災・減災特別プロジェクトにおいて、地上側の情報共有ネット

ワークである減災情報共有プラットフォームとのインターフェースプログラムを開発し、地上側

から D-NET 側へ任務情報を、また D-NET 側から地上側へ機体情報を送信する実証実験を行った

(図 10~12)。また、抽出された具体的な情報共有項目を表 15 に示す。

図9 D-NET 構想図

川崎市消防航空隊活動拠点

図 10 D-NET 地上システム画面

369

実証実験の結果から、地上側と D-NET 間で情報共有体制を構築することにより、大規模災害

時の航空機の運航管理を効率良く実施できることを確認した。

図 11 任務情報受領時の D-NET 地上システム画面

「任務実施中」「待機中」を視覚的に把握可能

東京へリポートを離陸

図 12 任務実施時の D-NET 地上システム画面

370

表 15 情報共有項目

減災→D-NET D-NET→減災

任務要請情報 機体情報

1 任務 ID 機番

2 任務要請日時 日付

3 任務要請元名称 緯度・経度

4 任務要請元連絡先 方位

5 目的地 ID 高度

6 災害種別 対地速度

7 任務種別 機体ステータス

8 活動開始予定日時 機体任務ステータス

9 活動終了予定日時 任務 ID

10 活動内容 任務種別

11 任務ステータス

371

(c) 結論ならびに今後の課題

平成21年度に神奈川県を対象とした広域連携の評価実験を実施するに当たり、評価実験に必

要とされる情報コンテンツを抽出、整理するとともに、評価実験に用いる情報システムのユーザ

ビリティ向上に関する分析を行った。道路交通情報や航空機運航支援情報については、評価実験

のシナリオの構築に合わせて具体的な情報項目を抽出する他、首都直下地震で検討が不可欠であ

る鉄道運輸機関との情報共有についても、JR 東日本等に対して調査を行い、情報テーブルの補充

を行った。以上の通り、情報コンテンツの抽出、情報テーブルの拡充という当初の目標を達成し

た他、評価実験に用いる各種情報システムの改善も行った。

(d) 引用文献

1) 大友康裕:我が国の災害医療の新しい展開,医学のあゆみ,Vol.226,No.9,2008.

2) 防災科学技術研究所他:危機管理対応情報共有技術による減災対策、平成18年度委託業務成果

報告書,pp.68-83,2007.

3) 鈴木猛康,天見正和:地方自治体の災害対応管理システムの開発と災害対応訓練への適用,土

木学会地震工学論文集CD-ROM,No.29,12-6,pp.781-790,2007.8.

4) 鈴木猛康,天見正和:災害対応管理システムを用いた地方自治体の災害対応に関する実証的研

究,安全問題研究論文集,Vol.2,pp.23-28,2007.11.

5) 高萩栄一郎,中島信之:Excelで学ぶAHP入門,オーム社,2009.

(e) 学会等発表実績

学会等における口頭・ポスター発表 発表成果(発表題目、口

頭・ポスター発表の別) 発表者氏名 発表場所

(学会等名) 発表時期 国際・国

内の別 プローブカー情報の利活

用におけるユビキタス減

災情報の提供に関する研

究(口頭)

鈴木 猛康 秦 康範 小玉乃理子

第37回土木計画 学春大会

2008年6月 国内

学会誌・雑誌等における論文掲載

掲載論文(論文題目) 発表者氏名 発表場所 (雑誌等名)

発表時期 国際・国

内の別 災害対応に欠かすことの

できない情報の共有とは 鈴木 猛康 電子情報通信学会

誌,Vol.2,No.3 2009年3月 国内

地方自治体の災害対応活

動における情報共有に関

する実態調査

鈴木 猛康 天見 正和

日本地震工学論文

集,第9巻,第2号 2009年2月 国内

新潟県中越地震における

通れた道路マップの提供

秦 康範 鈴木 猛康

日本地震工学論文

集,第9巻,第2号 2009年2月 国内

372

とプローブカー情報の減

災利用実現に向けた課題

と展望

下羅 弘樹 目黒 公郎 小玉乃理子

(f) 特許出願、ソフトウエア開発、仕様・標準等の策定

1)特許出願

なし

2)ソフトウエア開発

なし 3) 仕様・標準等の策定

なし (3) 平成21年度業務計画案

平成21年度には、情報共有実現による広域連携の有効性を示すためのシステム連携デモンスト

レーションが実施される。このシステム連携デモンストレーションに、対象となる地方自治体の

情報共有の有効性を示す役割として、災害対応管理システムを対象自治体用の組織体制に変更し

た上で参画させる。デモンストレーションにおいて、首都圏の自治体や指定行政機関、指定公共

機関等の参加者の評価を受けることにより、課題を抽出して整理する。 昨年度、ユーザビリティについて改善を行った災害対応管理システムに、減災情報共有プラッ

トフォームとのシステム連携機能を付加し、情報共有データベースを介した情報共有を実現させ

る。デモンストレーションでは、設定されたシナリオ進展に伴って共有が必要とされる限られた

情報の登録、取得を行うことになるが、その情報共有を容易に実現させる情報システムのユーザ

ビリティについても、参加者の評価を得ることを狙っている。