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4-(2)-3 凝集助剤としての無機凝集剤の有効性の評価 計画調整部技術開発課
山下 博史 1.はじめに 当局では、区部水再生センターで発生した汚泥を三箇所の汚泥処理プラントで集約処理することとしている。集約化の進行に伴い長距離・長時間送泥のため,腐敗等の原因による汚泥の濃縮性,脱水性の低下が懸念される。1)
また,送泥中に余剰汚泥中のポリりん酸等はりん酸として汚泥から液相に移行し,これが返流水として水処理系に戻ることで放流水りん濃度の上昇の要因となる。 送泥による処理性低下は,①濃縮汚泥の低濃度化による脱水汚泥量の増加,②脱水薬注率の上昇,③脱水ケーキ含水率の上昇をもたらし、薬品量や焼却補助燃料の増加につながり汚泥処理全体のコスト上昇を招くことになる。 さらに,平成20年度の放流水りん濃度規制強化により,東プラや南プラといった集約汚泥処理プラントからの返流水を処理している水再生センターでは,送泥汚泥からのりん溶出が原因で,現状のままならば年間16%程度の基準超過が想定される。このため当局では汚泥からのりん溶出を防止を目的として,汚泥に無機凝集剤である塩化アルミニウム(以下 LAC)を添加する対策をとることとしている。この場合,りん溶出に関する調査は平成 16 年,17年の下水道研究発表会 2)3)で報告されておりその効果は検証済みである。一方,LACを汚泥に添加した場合の濃縮,脱水といった汚泥処理の基本プロセスに及ぼす影響は評価されていない。 このような背景のもと,重力濃縮沈降性改善,高分子凝集剤薬注率の低減,汚泥処理返流水中の溶解性りん削減を目的として,安価でりん除去能力が高い無機凝集剤(LACを含む)を用いて,汚泥の濃縮性,脱水性及び汚泥処理返流水の性状についての調査を実施した。 2.調査概要 2-1 調査期間
平成17年12月14日 ~ 平成18年3月28日 2-2 調査内容 1) 無機凝集剤に適合した高分子凝集剤の選定
無機凝集剤を高分子凝集剤と併用する場合、無機凝集剤の種類、濃度によって,高分子凝集剤の凝集性に影響を及ぼす場合があることから,併用する場合にはその適合性を事前に調査する必要がある。ここでは,使用する無機凝集剤と適合する高分子凝集剤を選定するため凝集試験を行った。
2) 薬注による重力濃縮性の改善 送泥による変質,汚泥性状そのものの変化等で,重量濃縮汚泥が低濃度化する傾向が顕著であり,濃縮工程においては機械濃縮の占める割合が上昇している。しかし,地球温暖化防止,処理コストの縮減を重視した場合は,動力をほとんど消費しない重力濃縮は重要な濃縮法であり,重力濃縮の諸課題を解決することは濃縮動力の削減に大きく寄与する。 ここでは重力濃縮性向上手法の一つとして,凝集剤による汚泥沈降性の改善に関する調査を実施した。
3) 無機凝集剤と高分子凝集剤を用いた汚泥調質(二液調質)による脱水性の評価 汚泥性状の変化で,汚泥脱水における薬注率,含水率の上昇が顕著となっていることから,高分子凝集剤に比べて汚泥表面電荷の中和力が高い無機凝集剤を汚泥調質に併用することで,高分子凝集剤使用量の削減,難脱水性汚泥の低含水率脱水手法の開発を目的とした脱水試験を実施した。
4) 無機凝集剤による汚泥処理分離液りん濃度の低減 無機凝集剤の凝集力は鉄イオンやアルミニウムイオンの作用によるものであるが,これらのイオンはりん酸と不溶の塩を形成することから,固液分離プロセスにおいては液相の溶解性りんを削減する効果がある。ここでは,濃縮,脱水といった工程に種類の異なる無機凝集剤を利用することで,各工程の分離水りん濃度の低減がどの程度可能か調査を実施した。
2-3 調査対象汚泥
南部スラッジプラント : 芝浦・森ヶ崎受泥 東部スラッジプラント : 三河島受泥 葛西水再生センター : 中川・小菅受泥
2
3.調査方法 3-1 無機凝集剤に適合した高分子凝集剤の選定 対象汚泥に対して,薬注率を無機凝集剤5段階,高分子凝集剤3段階に設定し,無機凝集剤と高分子凝集剤の適合性を判定した。 ここで無機凝集剤は,①ポリ硫酸第二鉄(以下 ポリ鉄),②塩化第二鉄(以下 塩鉄),ポリシリカ鉄(以下 PSI),ポリ塩化アルミニウム(以下 PAC),LAC及び鉄系凝集剤とアルミ系凝集剤の2剤混合を使用し,高分子凝集剤は①カチオン,②アニオン,③ノニオン,④両性高分子を使用した。使用した高分子凝集剤の規格を表-1に示す。
表-1 使用した高分子凝集剤の規格 分子量
(万) mol (%)
0.2%粘度 (mPa・s) 備 考
カチオン① (中カチ) 370 60 190 カチオン② (高カチ) 370 80 160 南プラ汚泥のみ使用 アニオン① 1,300 26 290 アニオン② 1,200 13 180 南プラ汚泥のみ使用 ノニオン 410 0 15 両性 300 80 180
これらの無機凝集剤と高分子凝集剤の適合性について,凝集性(フロック大きさ),分離液性状(透明感)を評価指標に調査を行なった。 薬品の添加は,汚泥200mLに無機凝集剤を100mg/L添加し30秒間ジャーテスターで攪拌後,高分子凝集剤を
0.5%添加し再度30秒間攪拌後,汚泥の凝集状態及び上澄水の状況を評価した。 さらに,凝集の良好だった高分子凝集剤2種類をそれぞれの汚泥ごとに選定し,無機凝集剤を0~100mg/Lの範囲で20mg/Lきざみで添加し,高分子凝集剤も現場濃度計の読みに対して0.3%,0.4%,0.5%添加して凝集性と分離水性状を評価する詳細試験を実施した。
3-2 薬注による重力濃縮性の改善に関する調査 無機凝集剤を添加(一部は高分子凝集剤を併用)した汚泥をシリンダーへ注ぎこみ,汚泥界面の沈降速度と 20時間経過後の沈降汚泥濃度と上澄水のSS,COD,s-COD,生分解性,T-P,PO4-P,T-N,NH4-Nに関する評価を行った。 試験方法は,汚泥500mLを採取し無機凝集剤を所定量添加後30秒間ジャーテスターで攪拌後直ちに500mLメスシリンダーへ注ぎ込み,沈降する汚泥界面を最初の1時間は15分間隔で,以後3~4時間は1時間間隔で測定した。また,実際の重力濃縮槽の滞留時間を考慮して20時間後を最終とし,沈降汚泥の濃度と上澄水の水質を測定した。この際,高分子凝集剤を併用した汚泥に関しては,沈降速度が秒単位と圧倒的に速いことから0~1分は20秒間隔,以降は1分毎に界面高さを測定した。
図-1 沈降試験の様子 3-3 無機凝集剤、高分子凝集剤併用による脱水性調査 無機凝集剤と高分子凝集剤を併用して調質した汚泥を対象として,脱水セル法遠沈管試験 4)による脱水試験を実施し,ケーキ含水率を指標とした脱水性の評価を実施した。また,脱水分離液についてSS,COD,s-COD,生分解性,T-P,PO4-P,T-N,NH4-Nに関する評価を行った。 試験方法は,最初に汚泥500mLに無機凝集剤を所定量添加し30秒ジャーテスターで攪拌後,高分子凝集剤を
3
所定量添加し更に30秒間ジャーテスターで攪拌し生成した凝集汚泥を80meshろ布をセットしたブフナーロートに注ぎ込み固液分離する。ろ布上の汚泥スラリー2gを60meshろ布を敷いた脱水セル(図-1参照)に量り取り,この脱水セルを遠沈管にセットして遠心分離機で3,000rpm,10分間遠心分離する。脱水セルに残った汚泥を脱水ケーキとして含水率を測定し,ブフナーロートからのろ液と脱水セルから遠沈管に溶出したろ液を混合したものを脱水分離液として水質を測定した。
図-1 脱水試験器具 3-4 無機凝集剤による分離液りん濃度の低減に関する調査 2-2及び2-3調査のT-P,PO4-P分析結果より無機凝集剤によるりん除去効果の評価を実施した。
4.調査結果
4-1 無機凝集剤に適合した高分子凝集剤の選定 無機凝集剤と高分子凝集剤の〔凝集性〕〔分離液性状〕を指標とした適合性評価結果を表-1に示す。
表-1 凝集剤選定試験結果
高分子 判定基準 なし ポリ鉄 塩鉄 PSI LAC なし ポリ鉄 塩鉄 PSI LAC なし ポリ鉄 塩鉄 PSI LAC凝集性 × × × × × × × × × △ - × × × × なし 分離水性状 × × △ × ◎ × ◎ ○ ◎ ◎ - ◎ ○ ○ ○ 凝集性 ◎ ◎ ◎ ◎ × ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ◎ × カチオン 分離水性状 × ◎ ◎ ◎ ◎ × ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ◎ ◎ ○ 凝集性 × △ △ △ ◎ × ○ ○ ◎ ◎ × ◎ ◎ ◎ ◎ アニオン 分離水性状 × △ △ △ ◎ × ◎ ◎ ◎ ◎ × ◎ ◎ ◎ ◎ 凝集性 × △ △ △ ◎ × △ ◎ △ × × △ △ △ ◎ ノニオン 分離水性状 × △ △ △ ◎ × ◎ ◎ ◎ ◎ × ○ △ △ ◎ 凝集性 △ △ △ △ × △ ○ △ △ × △ △ △ △ × 両性 分離水性状
南部スラッジプラント
× ◎ ◎ ◎ ◎
東部スラッジプラント
○ ◎ ◎ ◎ ○
葛西水再生センター
○ ◎ ◎ ◎ △ ここで凝集性の判定基準は,フロックをほとんど形成しない場合を×,1~3mm程度の小さなフロックの場合を△,2~5mm程度のフロックの場合を○,5mm以上の大きなフロックを形成する場合を◎とした。 一方,分離水の性状は,多量のSSが認められる場合を×,透明感がなくSSが目立つ場合を△,透明感はあるが目視で多少のSSが認められる場合を○,透明感があり目視ではSSが認められない場合を◎とした。 この結果,どの無機凝集剤とも相性の良い高分子凝集剤はなく,鉄剤の場合はカチオン系高分子の相性が最も優れていた。一方,平成20年度りん規制強化の対応策として南プラ,東プラで汚泥に投入されるLACについては,アニオン系高分子が最も優れていた。 この結果から,詳細調査に使用する高分子凝集剤は表-2のように決定した。
表-2 凝集剤選定試験詳細調査に用いた高分子凝集剤 無機凝集剤
LAC以外 LAC 南部スラッジプラント カチオン 両性 アニオン ノニオン 東部スラッジプラント カチオン 両性 カチオン アニオン 葛西水再生センター カチオン アニオン アニオン ノニオン
これらの高分子凝集剤を使用した調査結果のうちポリ鉄、塩鉄、LAC に関する結果を表-3~表-11 に示した。ここで、凝集性の評価結果はフロック径で表現した。
脱水セル
60meshろ布 80meshろ布
4
表-3 南部スラッジプラント受泥におけるポリ鉄と高分子凝集剤の適合性詳細調査 0mg/L 20mg/L 40mg/L 60mg/L 80mg/L 100mg/L
pH 7.52 7.33 7.14 7.04 6.92 6.83 凝集性 ~1 ~1 ~1 ~1 ~1 ~1 な し 分離水性状 × × × × × × 凝集性 1~2 1~3 1~3 1~3 2~3 2~3 0.3%
(0.33%) 分離水性状 × × × × △ ○ 凝集性 2~3 2~4 2~4 2~4 2~4 2~4 0.4%
(0.44%) 分離水性状 × × △ △ ○ ◎ 凝集性 3~6 2~5 3~5 3~5 3~6 5~7
カチオン 0.5%
(0.56%) 分離水性状 × △ △ ○ ◎ ◎ 凝集性 ~1 ~1 ~1 1~2 1~2 1~2 0.3%
(0.33%) 分離水性状 × × × × × × 凝集性 1~2 1~2 1~2 1~2 1~2 2~3 0.4%
(0.44%) 分離水性状 × × × △ ○ ○ 凝集性 1~2 1~2 1~2 1~2 2~3 2~3
両
性 0.5%(0.56%) 分離水性状 × × △ ○ ◎ ◎
表-4 南部スラッジプラント受泥における塩鉄と高分子凝集剤の適合性詳細調査
0mg/L 20mg/L 40mg/L 60mg/L 80mg/L 100mg/L pH 7.52 7.29 7.12 6.97 6.84 6.74
凝集性 ~1 ~1 ~1 ~1 ~1 ~1 な し 分離水性状 × × × × × △ 凝集性 1~2 1~3 2~4 2~4 2~4 2~5 0.3%
(0.33%) 分離水性状 × × × △ ○ ○ 凝集性 2~3 2~4 2~4 3~6 3~6 4~6 0.4%
(0.44%) 分離水性状 × × △ ○ ◎ ◎ 凝集性 3~6 3~5 3~6 3~6 4~7 6~10
カチオン 0.5%
(0.56%) 分離水性状 × △ ○ ◎ ◎ ◎ 凝集性 ~1 ~1 ~1 1~2 1~2 1~2 0.3%
(0.33%) 分離水性状 × × × △ ○ ○ 凝集性 1~2 1~2 1~2 1~2 1~3 2~3 0.4%
(0.44%) 分離水性状 × × △ ○ ○ ◎ 凝集性 1~2 1~3 2~3 2~3 2~3 2~3
両
性 0.5%(0.56%) 分離水性状 × △ ○ ◎ ◎ ◎
表-5 南部スラッジプラント受泥におけるLACと高分子凝集剤の適合性詳細調査
0mg/L 20mg/L 40mg/L 60mg/L 80mg/L 100mg/L pH 7.52 6.88 6.63 6.32 6.02 5.57
凝集性 ~1 ~1 ~1 ~1 ~1 ~1 な し 分離水性状 × × × △ ○ ◎ 凝集性 ~1 1~3 2~4 3~6 5~7 5~7 0.3%
(0.33%) 分離水性状 × × △ ○ ○ ◎ 凝集性 ~1 1~3 2~4 3~6 5~7 8~10 0.4%
(0.44%) 分離水性状 × × △ ○ ○ ◎ 凝集性 ~1 1~3 2~4 3~6 5~7 8~12
アニオン 0.5%
(0.56%) 分離水性状 × × △ ○ ○ ◎ 凝集性 ~1 ~1 ~1 ~1 1~2 2~3 0.3%
(0.33%) 分離水性状 × × × ○ ◎ ◎ 凝集性 ~1 ~1 ~1 ~1 2~3 2~4 0.4%
(0.44%) 分離水性状 × × × ○ ◎ ◎ 凝集性 ~1 ~1 ~1 ~1 2~3 2~5
ノニオン 0.5%
(0.56%) 分離水性状 × × × ○ ◎ ◎
5
表-6 東部スラッジプラント受泥におけるポリ鉄と高分子凝集剤の適合性詳細調査 0mg/L 20mg/L 40mg/L 60mg/L 80mg/L 100mg/L
pH 7.15 6.97 6.71 6.41 5.93 5.52 凝集性 ~1 ~1 ~1 ~1 ~1 ~1 な し 分離水性状 × △ △ ○ ○ ◎ 凝集性 2~3 5~8 3~5 2~4 4~6 4~6 0.3%
(0.35%) 分離水性状 × △ ○ ◎ ◎ ◎ 凝集性 3~5 8~12 5~8 4~6 4~8 4~8 0.4%
(0.47%) 分離水性状 × △ ◎ ◎ ◎ ◎ 凝集性 3~5 8~12 8~12 8~12 6~8 4~8
カチオン 0.5%
(0.59%) 分離水性状 × ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 凝集性 1~3 1~3 1~3 1~3 1~3 1~2 0.3%
(0.35%) 分離水性状 △ ○ ○ ◎ ◎ ◎ 凝集性 2~3 2~3 2~3 2~3 1~3 1~2 0.4%
(0.47%) 分離水性状 ○ ○ ○ ◎ ◎ ◎ 凝集性 2~4 2~4 2~4 2~3 1~3 1~2
両
性 0.5%(0.59%) 分離水性状 ○ ○ ◎ ◎ ◎ ◎
表-7 東部スラッジプラント受泥における塩鉄と高分子凝集剤の適合性詳細調査
0mg/L 20mg/L 40mg/L 60mg/L 80mg/L 100mg/L pH 7.15 6.80 6.40 6.04 5.56 4.47
凝集性 ~1 ~1 ~1 ~1 ~1 ~1 な し 分離水性状 × △ △ ○ ○ ○ 凝集性 2~3 2~4 3~5 3~5 3~6 3~6 0.3%
(0.35%) 分離水性状 × △ ○ ◎ ◎ ◎ 凝集性 3~5 6~8 3~5 3~5 3~6 3~6 0.4%
(0.47%) 分離水性状 △ △ ◎ ◎ ◎ ◎ 凝集性 3~5 8~12 6~8 4~6 3~6 3~6
カチオン 0.5%
(0.59%) 分離水性状 × ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 凝集性 1~3 1~2 1~3 1~3 1~2 ~1 0.3%
(0.35%) 分離水性状 △ ○ ◎ ◎ ◎ ◎ 凝集性 2~3 1~3 2~3 1~3 1~2 ~1 0.4%
(0.47%) 分離水性状 △ ○ ◎ ◎ ◎ ◎ 凝集性 2~4 2~3 2~3 1~3 1~2 ~1
両
性 0.5%(0.59%) 分離水性状 ○ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎
表-8 東部スラッジプラント受泥におけるLACと高分子凝集剤の適合性詳細調査
0mg/L 20mg/L 40mg/L 60mg/L 80mg/L 100mg/L pH 7.15 6.46 5.23 4.81 4.60 4.45
凝集性 ~1 ~1 ~1 ~1 ~1 ~1 な し 分離水性状 × △ ○ ◎ ◎ ○ 凝集性 2~3 4~6 2~3 1~3 1~2 ~1 0.3%
(0.35%) 分離水性状 × ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 凝集性 3~5 4~8 2~3 1~3 1~3 1~2 0.4%
(0.47%) 分離水性状 × ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 凝集性 3~5 6~8 2~3 1~3 1~3 1~2
カチオン 0.5%
(0.59%) 分離水性状 × ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 凝集性 ~1 3~4 ~1 ~1 ~1 ~1 0.3%
(0.35%) 分離水性状 × ○ ◎ ◎ ◎ ◎ 凝集性 ~1 3~4 ~2 ~1 ~1 ~1 0.4%
(0.47%) 分離水性状 × ○ ◎ ◎ ◎ ◎ 凝集性 ~1 3~4 ~2 ~1 ~1 ~1
アニオン 0.5%
(0.59%) 分離水性状 × ○ ◎ ◎ ◎ ◎
6
表-9 葛西受泥におけるポリ鉄と高分子凝集剤の適合性詳細調査 0mg/L 20mg/L 40mg/L 60mg/L 80mg/L 100mg/L
pH 7.13 6.90 6.54 6.18 5.70 4.85 凝集性 ~1 ~1 ~1 ~1 ~1 ~1 な し 分離水性状 × ○ ○ ◎ ◎ ○ 凝集性 2~3 3~6 3~6 2~5 2~4 2~4 0.3%
(0.26%) 分離水性状 △ △ ○ ◎ ◎ ◎ 凝集性 5~8 4~6 5~7 3~6 3~6 2~5 0.4%
(0.35%) 分離水性状 △ ○ ○ ◎ ◎ ◎ 凝集性 5~8 5~8 6~9 4~6 4~6 3~5
カチオン 0.5%
(0.43%) 分離水性状 ○ ○ ◎ ◎ ◎ ◎ 凝集性 ~1 2~4 3~4 3~5 4~6 2~4 0.3%
(0.26%) 分離水性状 × ○ ○ ○ ◎ ◎ 凝集性 ~1 2~4 3~4 3~5 4~6 3~5 0.4%
(0.35%) 分離水性状 × ○ ○ ○ ◎ ◎ 凝集性 ~1 2~4 3~4 4~6 5~7 4~6
アニオン 0.5%
(0.43%) 分離水性状 × ○ ○ ○ ◎ ◎
表-10 葛西受泥における塩鉄と高分子凝集剤の適合性詳細調査 0mg/L 20mg/L 40mg/L 60mg/L 80mg/L 100mg/L
pH 7.13 6.81 6.41 6.09 5.33 4.38 凝集性 ~1 ~1 ~1 ~1 ~1 ~1 な し 分離水性状 × △ ○ ○ ○ ○ 凝集性 2~3 2~4 2~4 2~3 2~3 ~1 0.3%
(0.26%) 分離水性状 × ○ ○ ◎ ◎ ◎ 凝集性 3~5 3~5 3~5 3~4 2~4 1~2 0.4%
(0.35%) 分離水性状 △ ○ ○ ◎ ◎ ◎ 凝集性 5~8 4~6 4~6 3~5 2~4 ~1
カチオン 0.5%
(0.43%) 分離水性状 ○ ○ ○ ◎ ◎ ◎ 凝集性 ~1 3~4 3~4 3~4 3~4 ~1 0.3%
(0.26%) 分離水性状 × ○ ○ ○ ◎ ○ 凝集性 ~1 2~4 3~5 3~5 4~6 1~2 0.4%
(0.35%) 分離水性状 × ○ ○ ◎ ◎ ○ 凝集性 ~1 2~4 3~5 3~5 5~7 5~6
アニオン 0.5%
(0.43%) 分離水性状 × ○ ○ ◎ ◎ ◎
表-11 葛西受泥におけるLACと高分子凝集剤の適合性詳細調査 0mg/L 20mg/L 40mg/L 60mg/L 80mg/L 100mg/L
pH 7.13 6.41 5.07 4.57 4.37 4.24 凝集性 ~1 ~1 ~1 ~1 ~1 ~1 な し 分離水性状 × ○ ○ ○ ○ ○ 凝集性 ~1 4~6 ~1 ~1 ~1 ~1 0.3%
(0.26%) 分離水性状 × ◎ ○ ○ ○ △ 凝集性 ~1 4~6 1~2 ~1 ~1 ~1 0.4%
(0.35%) 分離水性状 △ △ ◎ ◎ ◎ ◎ 凝集性 ~1 5~7 8~12 1~2 ~1 ~1
アニオン 0.5%
(0.43%) 分離水性状 × ◎ ◎ ○ ○ △ 凝集性 ~1 1~2 2~3 1~2 1~2 1~2 0.3%
(0.26%) 分離水性状 × ○ ○ ○ ○ ○ 凝集性 ~1 1~2 4~6 1~2 1~2 1~2 0.4%
(0.35%) 分離水性状 × ○ ○ ○ ○ ○ 凝集性 ~1 1~3 8~10 1~3 1~2 ~1
ノニオン 0.5%
(0.43%) 分離水性状 × ○ ◎ ◎ ○ ○
7
図-5 高分子凝集剤併用時の初期沈降
50
60
70
80
90
100
0 20 40 60 80 100 120沈降時間 [秒]
汚泥
界面
高さ
なしポリ鉄塩鉄LACポリ鉄+LACポリ鉄+カチオン(0.54%)塩鉄+カチオン(0.54%)
ここで,各受泥に無機凝集剤を添加した場合の pH をみると,無機凝集剤自身が酸性であるため添加量を増やすことで汚泥は酸性側に移行している。この傾向は,PSI<ポリ鉄<PAC<塩鉄<LACの順で,LACの場合添加量がある一定量を超えることで pH5.0を下回り,凝集主体である水酸化アルミニウムがアルミニウムイオンとなり再溶出することで凝集効果がなくなる。 アルミニウム塩は,pH4以下ではAl3+として溶解しているが,pH4を超えるとAl(OH)3として沈殿し始め,pH5から9までのpH域ではほとんどのアルミニウム塩はAl(OH)3として沈殿している。Al(OH)3はpH9以上になるとアルミン酸イオン(AlO2-)として徐々に溶解し始めpH11.9で完全に溶解する。5)
LACが凝集剤として効果を発揮する領域はAl(OH)3沈殿域で,特に有効に機能する pH域は pH5~9の範囲である。LAC 自体は強酸性(pH2 以下)で、過注入すると凝集効果を全く発揮しなくなるため,LAC を凝集助剤として用いる場合は,注入量管理に十分な注意が必要である。 同種・同量の無機凝集剤を添加した場合のpH低下は,汚泥により大きく異なっていた。例えばLACを100mg/L投入した場合,南プラ受泥では pH7.52→5.57,東プラ受泥で pH7.15→4.45,葛西受泥が pH7.13→4.24であった。この違いは汚泥のアルカリ度の違いで,南プラ受泥にはアルカリ度の高い消化汚泥(3,000 程度)が入っておりその影響を受けているものと考えられる。
4-2 薬注による重力濃縮性の改善に関する調査結果 4-2-1 汚泥沈降速度と圧密性
図-2,3,4は各受泥へ無機凝集剤添加した時の汚泥沈降性を表したものである。無機凝集剤添加したものを鉄系,アルミ系,[鉄+アルミ]系に分け,無添加を加えた4種類について濃縮性の比較を行った。
凝集剤添加後の初期沈降については,フロック径の大きなアルミ系と[鉄+アルミ]系が.速く,無添加,鉄系の順であった。しかし,3~4時間程度経過するとアルミ系の界面沈降は緩慢になり,この時点での汚泥界面高さは無添加,鉄系に逆転された。最終的な沈降性(汚泥濃度)は無添加,鉄系,[鉄+アルミ]系,アルミ系の順であり,アルミ系単独では沈降開始後3時間程度で汚泥の界面沈降が止まり,最終的な沈降汚泥濃度も低くなった。 汚泥の界面沈降速度や圧密性については,汚泥のフロック形成が関与しているものと考えられる。汚泥はフロックを形成すると粒子径が大きくなり速やかな沈降が可能となるが,フロック自体は沈降しても一定の粒子径を保つことから,汚泥全体のボリュームは無添加の場合に較べて大きくなり圧密性は低下するものと考えられる。 フロック径と、沈降性、圧密性の関係は,高分子凝集剤を添加した汚泥の沈降試験に顕著にあらわれた。図-5を見ると分かるように,初期沈降速度が秒単位と無機凝集剤添加汚泥に比べて圧倒的に大きいのに対して、最終汚泥界面高さは50以上と圧密性が低かった。このように,高分子凝集剤の添加で形成される強固で大きなフロック
図-2 南部スラッジプラント受泥の汚泥沈降試験
20
40
60
80
100
0 240 480 720 960 1200経過時間 [分]
汚泥
界面
高さ
なしポリ鉄(1.84mol)塩鉄(1.84mol)LAC(1.84mol)塩鉄(0.92mol)+ LAC(0.92mol)ポリ鉄(0.92mol)+ LAC(0.92mol)
2030405060708090
100
0 240 480 720 960 1200経過時間 [分]
汚泥
界面
高さ
なしポリ鉄(2.85mol)塩鉄(2.85mol)LAC(0.76mol)LAC(1.14mol)LAC(1.33mol)塩鉄(1.9mol)+ LAC(0.47mol)ポリ鉄(1.39mol)+ LAC(1.19mol)
図-3 東部スラッジプラント受泥の汚泥沈降試験
10
30
50
70
90
0 240 480 720 960 1200経過時間 [分]
汚泥
界面
高さ
なしポリ鉄(3.33mol)塩鉄(3.33mol)LAC(0.67mol)LAC(0.89mol)LAC(1.11mol)塩鉄(1.16mol)+ LAC(1.11mol)ポリ鉄(0.98mol)+ LAC(1.11mol)
図-4 葛西受泥の汚泥沈降試験
8
は,圧倒的な沈降速度の上昇をもたらすが,反面圧密性の低下にも繋がることより,高分子凝集剤は重力濃縮性の改善には適さないものと考えられる。 図-6 は試験開始から 20 時間後の沈降汚泥の濃度を表したもので,汚泥濃度は沈降試験の界面高さを反映して無添加>鉄系>[鉄+アルミ]系>アルミ系の順であった。南プラ受泥では高分子凝集剤を併用した沈降試験も実施したが,濃縮性は低く高濃度の重力濃縮汚泥を得るための助剤として高分子凝集剤は適していない。
4-2-2 沈降試験上澄水水質 沈降試験上澄水のSS、COD、S-CODは図-7のようであった。
無機凝集剤の添加で大きく低下する傾向が見られた。このうちアルミ系は特に除去率が高く、上澄みの透明感も非常に高かった。 項目としては SS の除去率が高い。これは汚泥の小粒子がフロックに吸着されることに起因し、他の項目の削減分も SSの回収によるところが大きいと考えられる。また、S-COD濃度は SSの影響を受けないはずであるが50%以上が除去されている結果となった。これは、ろ紙を通過するコロイド程度の小粒子がフロックに補足されたためと考えられ、上澄水の透明感の上昇という事実がそれを裏付けている。 図-8に上澄水の全窒素とアンモニア性窒素を示す。
0.00.20.40.60.81.01.21.41.61.82.0
なし
ポリ
鉄(1
.7m
ol)
塩鉄
(1.7
mol
)LA
C(1
.7m
ol)
塩鉄
+LA
C 1:
1(計
1.7
mol)
塩鉄
+LA
C 3:
1(計
1.7
mol)
塩鉄
+LA
C 1:
3(計
1.7
mol)
ポリ
鉄+
LAC 1:
1(計
1.7
mol)
ポリ
鉄(2
00m
g/l)+
LAC
(1.7
mol
)
ポリ
鉄+
カチ
オン
塩鉄
+カ
チオ
ン
LAC+
アニ
オン
南プラ
沈降汚泥濃度
[%]
東プラ
0.00.20.40.60.81.01.21.41.61.82.0
なし
ポリ
鉄(2
mol
)塩
鉄(2
mol
)LA
C 0.
8mol
LAC
1m
olLA
C 1.
4mol
塩鉄
+LAC
(0.5
mol
+0.
5mol
)
塩鉄
+LAC
(2m
ol+
0.5m
ol)
ポリ
鉄+
LAC(2
00m
g/l+
0.5m
ol)
ポリ
鉄+
LAC(2
00m
g/l+
1.25m
ol)
沈降
汚泥
濃度
[%]
葛西
0.00.20.40.60.81.01.21.41.61.82.0
なし
ポリ
鉄(2
mol)
塩鉄
(2m
ol)
LAC 0.
6mol
LAC 0.
8mol
LAC 1m
ol
塩鉄
+LAC(20
0mg/
l+0.
5mol
)
塩鉄
+LAC(20
0mg/
l+1m
ol)
ポリ
鉄+
LAC
(200
mg/
l+0.
5mol
)
ポリ
鉄+
LAC
(200
mg/
l+1m
ol)
沈降
汚泥
濃度
[%]
図-6 20時間沈降後の沈降汚泥の濃度
図-7 沈降試験上澄水の水質(SS,COD,s-COD)
0
50
100
150
200
250
300
なし
ポリ
鉄(1
.7m
ol)
塩鉄
(1.7
mol)
PSI
(1.7
mol
)LA
C(1
.7m
ol)
塩鉄
+LA
C 1:
1(計
1.7
mol)
ポリ
鉄+
LAC 1:
1(計
1.7
mol)
南プラ
濃度
(m
g/L)
0
20
40
60
80
100
除去
率(%
)
0
50
100
150
200
なし
ポリ
鉄(1
.9m
ol)
塩鉄
(1.9
mol)
LAC(0
.76m
ol)
LAC(1
.33m
ol)
塩鉄
0.47
mol
+LAC
0.47
mol
ポリ
鉄1.
39m
ol+L
AC
0.47
mol
東プラ
濃度
[m
g/L]
0
20
40
60
80
100
除去
率[%
]
0
20
40
60
80
100
なし
ポリ
鉄(3
.33m
ol)
塩鉄
(3.3
3mol
)LA
C(0
.88m
ol)
塩鉄
1.16
mol
+LAC0.56m
ol
塩鉄
1.16
mol
+LAC1.11m
ol
ポリ
鉄0.
98m
ol+L
AC0.83m
ol
葛西
濃度
[m
g/L]
0
20
40
60
80
100
除去
率[%
]
SS 除去率 % COD 濃度mg/L S-COD 濃度mg/L COD 除去率 % S-COD 除去率 % SS 濃度mg/L
9
窒素関係は、SS等の有機物指標に比べて無機凝集剤による削減効果は顕著ではなかった。特にアンモニア性窒素では、除去率がほぼ0%であった。これは、アンモニア性窒素は水中では電離してアンモニアイオンNH4
+として存在するため、凝集剤による補足はないことによるものと考えられる。全窒素は30~40%程度の除去率が得られたが、これはフロックによる固形物補足の効果で、凝集剤の主成分である無機イオンと窒素イオン種との反応による効果ではない。
4-2-3 上澄水の生分解性 図-9 は、濃縮上澄水 S-COD と生分解性の関係を表したグラフである。ここで、実線で表した直線は無機凝集剤を添加した試料の回帰直線であり、破線は無添加試料も入れた全データの回帰直線である。
両者を比較すると、同じ S-COD 値では無機凝集剤を添加した場合の方が高い生分解性を示している。この結果から無機凝集剤の添加は、水処理の負荷となるCODを削減するばかりではなく、残留するCOD自体の分解性も上昇する傾向が見られた。返流水対策を意識した場合、濃縮工程での無機凝集剤添加は水処理動力削減に有効な手法となる。
4-3 無機凝集剤併用調質による脱水性 4-3-1 含水率 二液調質による脱水ケーキ含水率を図-10に示す。 図は高分子凝集剤薬注率とケーキ含水率の関係を表した図である。高分子凝集剤薬注率0.5%で無機凝集剤無添加を基準として無機凝集剤併用時の含水率を比較すると、南プラ汚泥では高分子凝集剤添加率を減らすと含水率は上昇した。しかし、薬注率0.5%の場合では無機凝集剤を併用した方が含水率の低下が確認できた。
南プラ
添加データy = 0.1664x + 64.238
R2 = 0.6448
含無添加データy = 0.1153x + 67.661
R2 = 0.7276
60
65
70
75
80
85
90
0 50 100 150 200溶解性COD[mg/L]
生物
分解
性[%
]
東プラ
添加データy = 0.7355x + 26.018
R2 = 0.7568
含無添加データy = 0.6997x + 27.262
R2 = 0.9378
0
20
40
60
80
100
0 20 40 60 80 100溶解性COD[mg/L]
生物
分解
性[%
]
葛西
添加データy = 5.5626x - 46.223
R2 = 0.6808
含無添加データy = 3.0752x - 19.514
R2 = 0.90680
20
40
60
80
100
0 10 20 30 40溶解性COD[mg/L]
生物
分解
性[%
]
図-9沈降試験上澄水の生分解性
図-8 沈降試験上澄水の水質(全窒素,アンモニア性窒素)
0
20
40
60
80
100
120
140
なし
ポリ
鉄(1
.7m
ol)
塩鉄
(1.7
mol
)PS
I(1.7
mol
)LA
C(1
.7m
ol)
塩鉄
+LA
C
1:1(
計1.
7mol
)
ポリ
鉄+
LAC
1:
1(計
1.7m
ol)
南プラ
濃度
[mg/
L]
0
10
20
30
40
50
除去
率[%
]
0
10
20
30
40
50
60
70
なし
ポリ
鉄(1
.9m
ol)
塩鉄
(1.9
mol
)LA
C(0
.76m
ol)
LAC
(1.3
3mol
)
塩鉄
0.47
mol
+LA
C0.
47m
ol
ポリ
鉄1.
39m
ol+L
AC
0.47
mol
東プラ
濃度
[mg/
L]
0
10
20
30
40
50
除去
率[%
]
0
5
10
15
20
25
30
35
なし
ポリ
鉄(3
.33m
ol)
塩鉄
(3.33m
ol)
LAC
(0.8
8mol
)
塩鉄
1.16
mol
+LA
C0.
56m
ol
塩鉄
1.16
mol
+LA
C1.
11m
ol
ポリ
鉄0.
98m
ol+L
AC
0.83
mol
葛西
濃度
[ mg/
L]
0
10
20
30
40
50
除去
率[%
]
全窒素除去率 %アンモニア性窒素濃度mg/L全窒素濃度mg/L アンモニア性窒素除去率 %
10
一方、東プラ、葛西の汚泥では、薬注率を下げても基準と同程度かあるいは低下する傾向にあり、無機凝集剤添加により高分子凝集剤添加量を減らせる可能性が大きい。 南プラ汚泥に関しても同じ薬注率では無機凝集剤無添加の方が含水率は低下する傾向が見られることより、無機凝集剤の併用により含水率を下げることが可能となり、焼却補助燃料の削減が可能と考えられる。
4-3-2 脱水分離液 脱水分離液のSS、COD、溶解性CODを図-11に示す。
脱水分離液の性状に関しても、無機凝集剤添加により濃縮分離同様 SS、COD、S-COD濃度とも低下傾向を示し、無機凝集剤の併用が、返流水負荷の低減に寄与することが確認できた。ただし、この効果の度合いは汚泥によって異なり、LACを例にとると比較的脱水性が低い南プラ汚泥では SSで 80%、CODで 50%程度と高い除去率を示し無機凝集剤が有効に機能していたが、脱水性の良い葛西汚泥ではSS、CODともに10%程度の除去率で分離水負荷低減という観点ではメリットは小さかった。但し葛西汚泥の場合、無機凝集剤を添加していない試料でもSS、COD、s-CODともに30mg/L以下と低く、通常の脱水分離液の濃度が100mg/L以上であることを考えれば、今回の試験では一液でも凝集が非常に良好であるため無機凝集剤の凝集効果の寄与は小さく、除去率の低下に繋がったものと考えられる。 無機凝集剤は、消化汚泥や余剰汚泥の寄与が大きな難脱水性の汚泥に対しては凝集助剤としてに効果的に働くものと考えられる。 図-12に脱水分離液の全窒素とアンモニア性窒素を示す。 全窒素、アンモニア性窒素ともに SS 等と異なりかなり低い除去率であった。特にアンモニア性窒素の除去率
70
75
80
85
90
95
100
0.0 0.3 0.4 0.5
高分子凝集剤薬注率 [%]
南プラ
含水
率 [%
]
ポリ鉄 [1.7mol]塩鉄 [1.7mol]PSI [1.7mol]LAC [1.7mol]
塩鉄+LAC 1:1なし
70
75
80
85
90
95
100
0.40 0.45 0.50
高分子凝集剤薬注率 [%]
葛西
含水
率 [%
]
ポリ鉄 [3mol]塩鉄 [3mol]LAC [1mol]塩鉄+LAC[1:0.5]
ポリ鉄+LAC[200,0.5mol]なし
70
75
80
85
90
95
100
0.40 0.45 0.50高分子凝集剤薬注率 [%]
東プラ含
水率
[%]
ポリ鉄 [3mol]塩鉄 [3mol]LAC [1mol]塩鉄[1.0mol]+LAC[0.5mol]ポリ鉄[200mg/l]+LAC[1mol]なし
図-10 脱水セル法遠沈管試験における脱水ケーキの含水率
図-11 脱水分離液の水質(SS,COD,s-COD)
0
50
100
150
200
250
300
350
400
ポリ
マー
のみ
ポリ
鉄(1
.7m
ol)
塩鉄
(1.7
mol
)LA
C(1
.7m
ol)
塩鉄
+LA
C
1:1
(計1.
7mol
)
塩鉄
(1.7
mol
×3倍
)
塩鉄
+LA
C
3:1
(計1.
8mol
)
塩鉄
+LA
C
1:3
(計1.
8mol
)
南プラ
濃度
(m
g/L
)
0
20
40
60
80
100
除去
率(%
)
0
20
40
60
80
100
120
140
ポリ
マー
のみ
ポリ
鉄(3
mol)
塩鉄
(3m
ol)
PSI(3
mol
)LA
C(1
mol
)LA
C(1
mol
)
塩鉄
+LA
C(1
mol+
0.5m
ol)
塩鉄
+LA
C(1
mol+
1mol)
ポリ
鉄+
LAC(2
00m
g/l+
1mol)
東プラ
濃度
[m
g/L]
0
20
40
60
80
100
除去
率[ %
]
0
10
20
30
40
50
ポリ
マー
のみ
ポリ
鉄3m
ol塩
鉄3m
olLA
C0.
5mol
塩鉄
1mol
+LA
C0.
25m
ol
塩鉄
1mol
+LA
C0.
5mol
ポリ
鉄20
0mg/
L+LA
C0.
5mol
葛西
濃度
[mg/
L]
0
20
40
60
80
100
除去
率[%
]
SS 除去率 % COD 濃度mg/L S-COD 濃度mg/L COD 除去率 % S-COD 除去率 % SS 濃度mg/L
11
はほぼ 0%であった。沈降上澄水の場合と同じく、窒素の場合無機凝集剤で除去が期待できるのは、固形物由来の全窒素がほとんどで、NH4
+やNO2-、NO3
-といったイオン種は、無機凝集剤の金属イオンと不溶性の塩を形成しないため、除去はほとんど期待できない。
4-3-3 脱水分離液の生分解性 脱水分離液の生分解性とS-CODの関係を図-13に示す。
ここで、実線で表した直線は無機凝集剤を添加した試料の回帰直線であり、破線は無添加試料も入れた全データの回帰直線である。両者を比較すると同じ S-COD 値では無機凝集剤を添加した場合の方が高い生分解性を示している。 この結果から無機凝集剤の添加は、水処理の負荷となるCODを削減するばかりではなく、残留するCOD自体の分解性も上昇する傾向が見られた。返流水対策を意識した場合、濃縮工程同様脱水工程での無機凝集剤添加は水処理動力削減に有効な手法となることを確認できた。
4-4 無機凝集剤による分離液りん濃度の低減に関する調査結果 図-14に濃縮分離液りん濃度を、図-15に脱水分離液りん濃度を示す。 全体として無機凝集剤は、りん除去に大きな効果を発揮した。 南プラの沈降試験上澄水にポリ鉄、塩鉄、LACをそれぞれ1.7mol/1.0molPO4-P投入した場合、鉄系が70%弱の除去率であったのに対し LACは 98%程度の除去率を示した。鉄イオンは汚泥中のりん酸イオンよりも硫化物イオンと優先的に反応することから、添加した鉄イオンのうちりん除去に効果を発揮するのは硫化鉄として沈殿した分を除いた鉄イオンである。このため硫化物イオンと反応しないアルミニウムイオンと比較するとりん除去率は低くなる。りん酸イオン1molと反応する鉄イオンとアルミニウムイオンは化学量論的にはそれぞれ1molであ
0
20
40
60
80
100
120ポ
リマ
ーの
みポ
リ鉄
[1.
7mol
]塩
鉄 [
1.7m
ol]
LAC
[1.
7mol
]
塩鉄
+LA
C 1
:1 [計
1.7m
ol]
塩鉄
+LA
C 3
:1 [計
1.7m
ol]
塩鉄
+LA
C 1
:3 [計
1.7m
ol]
南プラ
濃度
[mg/
L]
0
10
20
30
40
50
除去
率[%
]
0
10
20
30
40
50
60
ポリ
マー
のみ
ポリ
鉄 [
3mol
]塩
鉄 [
3mol
]PS
I [3m
ol]
LAC
[1m
ol]
塩鉄
1mol
+LA
C0.
5mol
塩鉄
1mol
+LA
C1m
ol
ポリ
鉄 2
00m
g/L+
LAC
1m
ol
東プラ
濃度
[mg/
L]
0
10
20
30
40
50
除去
率[%
]
0
5
10
15
20
25
30
ポリ
マー
のみ
ポリ
鉄3m
ol塩
鉄3m
olLA
C0.
5mol
塩鉄
1mol
+LA
C0.
25m
ol
塩鉄
1mol
+LA
C0.
5mol
ポリ
鉄20
0mg/
L+L
AC
0...
葛西
濃度
[mg/
L]
0
10
20
30
40
50
除去
率[%
]
全窒素除去率 %アンモニア性窒素濃度mg/L全窒素濃度mg/L アンモニア性窒素除去率 %
図-12 脱水分離液の水質(全窒素,アンモニア性窒素)
南プラ
含無添加データy = 0.0608x + 73.81
R2 = 0.7661
添加データy = 0.1923x + 60.50
R2 = 0.9522
40
50
60
70
80
90
100
0 50 100 150 200 250
溶解性COD[mg/L]
生物
分解
性[%
]
東プラ
添加データy = 0.7909x + 26.34
R2 = 0.4186
含無添加データy = 0.4579x + 39.38
R2 = 0.7275
0
20
40
60
80
100
0 20 40 60 80 100
溶解性COD[mg/L]
生物
分解
性[%
]
葛西
添加データy = 2.626x - 2.408
R2 = 0.248
含無添加データy = 2.466x + 1.583
R2 = 0.6605
0
20
40
60
80
100
0 10 20 30 40溶解性COD[mg/L]
生物
分解
性[%
]
図-13 脱水分離液の生分解性
12
るが、同じ除去率を得るためにはアルミニウムイオンの方が少ない添加率で良いことになる。鉄系凝集剤だけでりん除去をする場合は硫化物イオンとりん酸イオンの合計量以上の鉄イオンの存在が必要となる。事実今回の調査でも南プラ汚泥で塩鉄添加量を1.7molから3倍の5.1molに増やすと、りん除去率は70%から99%に上昇した。
5.考察 5-1 無機凝集剤の濃縮・脱水に与える影響 5-1-1 重力濃縮への影響 重力濃縮汚泥の濃度上昇を目的として、凝集剤による汚泥沈降性の改善を図った。 凝集剤の添加により汚泥が粒径の大きなフロックを形成することから、沈降速度は上昇した。特にアルミ系凝集剤のフロックは粒径が大きく、無機凝集剤の中では最も沈降速度が速かった。さらに、無機凝集剤よりも圧倒的に大きなフロックを形成する高分子凝集剤を添加した場合は、無機凝集剤のなかで最も沈降速度の大きかったLACの場合と比較しても70倍以上と沈降速度が著しく上昇した。 一方、汚泥フロックの増大は沈降性の上昇に繋がるが、沈降しても汚泥フロックは一定の粒径を保つため圧密性は低下する。このため沈降汚泥全体の体積は無添加のものと比較して大きくなり、濃度も低下する。この濃度低下は、形成するフロックの粒径に支配されており、フロック径が大きければ大きい程沈降汚泥濃度は低下した。
図-14 沈降試験上澄水のりん濃度と除去率 全りん除去率 %りん酸性りん濃度mg/L全りん濃度mg/L りん酸性りん除去率 %
0
10
20
30
40
50
なし
ポリ
鉄1.
7mol
塩鉄
1.7m
olLA
C1.
7mol
塩鉄
+LAC 1
:1[1
.7m
ol]
塩鉄
5.1m
ol
塩鉄
+LAC 3
:1[1
.7m
ol]
塩鉄
+LAC 1
:3[1
.7m
ol]
ポリ
鉄+L
AC 1
:1[1
.7m
ol]
ポリ
鉄+L
AC 2
00m
g/L+1
.7m
ol
南プラ
濃度
[mg/
L]
0
20
40
60
80
100
除去
率[%
]
0
5
10
15
20
25
なし
ポリ
鉄2m
olポ
リ鉄
4mol
塩鉄
2mol
塩鉄
4mol
LAC0.
8mol
LAC1.
4mol
塩鉄
+LAC 1
:1[1
mol
]
塩鉄
+LAC 2
mol
+0.5
mol
ポリ
鉄+L
AC 2
00m
g/L+
0.5m
ol
ポリ
鉄+L
AC 2
00m
g/L+
1.25
mol
東プラ
濃度
[mg/
L]
0
20
40
60
80
100
除去
率[%
]
0
5
10
15
20
25
なし
ポリ
鉄3m
ol塩
鉄3m
olLA
C0.
8mol
塩鉄
+LAC
200m
g/L+
0.5m
ol
塩鉄
+LAC
200m
g/L+
1mol
ポリ
鉄+L
AC 20
0mg/
L+0
.75m
ol
ポリ
鉄C-2
3m
ol
葛西
濃度
[mg/
L]
0
20
40
60
80
100
除去
率[%
]
図-15 脱水試験分離水のりん濃度と除去率 りん酸性りん濃度mg/L全りん濃度mg/L りん酸性りん除去率 %全りん除去率 %
0
5
10
15
20
25
ポリ
マー
のみ
ポリ
鉄(3
mol
)塩
鉄(3
mol)
LAC(0
.5m
ol)
塩鉄
+LA
C(1
mol
+0.
25m
ol)
塩鉄
+LA
C(1
mol
+0.5m
ol)
ポリ
鉄+
LAC
(200
mg/
l+0.5
mol)
葛西
濃度
[mg/
L]
0
20
40
60
80
100
除去
率[%
]
0
10
20
30
40
50
カチ
オン
のみ
アニ
オン
のみ
ポリ
鉄(1
.7m
ol)
塩鉄
(1.7
mol
)
LAC(1
.7m
ol)
塩鉄
+LA
C 1:
1(計
1.7
mol)
塩鉄
(1.7
mol
×3倍
)
塩鉄
+LA
C 3:
1(計
1.7
mol)
塩鉄
+LA
C 1:
3(計
1.7
mol)
ポリ
鉄(2
00m
g/l)+
LAC(1
.7m
ol)
南プラ
濃度
[mg/
L]
0
20
40
60
80
100
除去
率[%
]
0
10
20
30
40
50
なし
ポリ
マー
のみ
ポリ
鉄3m
ol塩
鉄3m
ol
LAC1m
ol (p
olym
er0.
4)
LAC1m
ol (p
olym
er0.
5)
塩鉄
+LAC
1mol
+0.5
mol
塩鉄
+LAC
1:1[
2m
ol]
ポリ
鉄+L
AC
200m
g/L+1
mol
東プラ
濃度
[mg/
L]
0
20
40
60
80
100
除去
率[%
]
13
沈降汚泥濃度は、無添加>鉄系>[鉄+アルミ]系>アルミ系>>高分子凝集剤の順で、沈降速度と全く逆の結果であった。 重力濃縮における無機凝集剤の添加は濃縮汚泥濃度の上昇には繋がらないが、濃縮分離水の水質の向上に大きな影響をもたらすことが分かった。これは、凝集剤の添加により形成される汚泥フロックが、通常では沈殿しない汚泥微細粒子を補足することによるものと考えられる。 窒素、りんを除く各水質項目の除去率は、SSが最も高く COD、s-CODの順で、SSでは 40~95%程度、CODでは25~80%程度、s-CODで30~70%程度であった。 ここで、無機凝集剤による分離水水質向上では、微小汚泥粒子の補足によるところが大きく、溶解性物質に対しては除去効果がほとんどないと考えられた。しかし今回の調査では、s-CODに対しても除去効果を発揮する結果となった。s-CODは試料をろ過したろ液のCODを測定したもので、完全な溶解性の成分に加えて、ろ紙を通過するコロイド粒子も s-CODとしてカウントされる。このコロイド粒子は、凝集剤の添加によりフロックに補足されるため s-CODの低下に繋がったものと考えられる。分離液透明度の上昇という事実も、フロックによるコロイド粒子の補足を裏付けている。 無機凝集剤ごとの評価では、除去率は形成される汚泥フロックの大きさに正の相関があり、アルミ系>[鉄+アルミ]系>鉄系の順であった。CODにおける各々の除去率は、鉄系が 20~70%程度、[鉄+アルミ]系が 40~80%程度、アルミ系が 50~80%程度であった。さらに無機凝集剤の添加はCODの生物分解性をやや上昇させる傾向もみられ、返流水の水処理への負荷削減で大きな効果をもたらす。 一方、窒素は SSの補足効果による低減以外は、凝集剤の無機イオンと反応することがないため 20%以下の低い除去率であった。 重力濃縮での無機凝集剤の使用は、濃縮汚泥濃度の低下に繋がる可能性がある反面、沈降速度の上昇により滞留時間の短縮と汚泥界面管理が容易となる効果がある。また濃縮分離液の水質向上で返流水の負荷削減が図れ、曝気動力の低減に繋がるとともに、余剰汚泥発生汚泥量の低減にも寄与し、下水処理全体に与えるプラスの効果は大きい。
5-1-2 脱水への影響 無機凝集剤と高分子凝集剤の併用による二液調質汚泥と高分子凝集剤単独調質汚泥を比較すると、高分子剤添加率が同じ場合は二液調質汚泥のほうが低い含水率となった。また東プラ、葛西受泥では、単独調質の高分子添加率よりも0.1%ほど低い添加率で、単独調質汚泥より低含水率の脱水が可能であった。 以上のことから、脱水における無機凝集剤の併用は、高分子凝集剤添加率の削減と含水率の低下につながり、高分子凝集剤と助燃ガス使用量を抑制でき、処理コストの低減が可能となる。 また、脱水分離液水質も無機凝集剤の添加により向上した。しかし、濃縮の場合と比較するとその効果は小さかった。これは、比較の基準となる汚泥も高分子凝集剤によるフロックが形成されており、フロックによる微小粒子の吸着効果は単独、二液ともほぼ同等であったことによるものと考えられる。ただし、南プラ受泥のように消化汚泥などの難脱水性汚泥を含む場合は、無機凝集剤の金属イオンによる汚泥表面電荷中和能力が有効に機能するため 4)凝集性が高まり、形成する汚泥フロックが無機剤無添加の場合に比べて強固となることから、脱水のような応力が加わった状態でもフロックの破壊が少なく、分離水の水質が無機剤無添加に比べて良好となる。 窒素に関しては、濃縮の場合と同様で、削減効果はほとんど期待できない。
5-2 無機凝集剤による分離液りん濃度の低減 無機凝集剤の添加により、濃縮および脱水分離液中のりん濃度は大きく削減された。ただし、鉄系とアルミ系で除去率に大きな差異が見られた。鉄系は、汚泥中のりん酸よりも硫化物イオンとの反応性の高く、送泥のように硫酸塩還元菌の影響で硫化物イオンを多く含む汚泥では硫化鉄を形成するため、りんの除去効果はアルミ系に比べて大きく劣る。 また、りん固定後の汚泥が長時間嫌気的雰囲気に置かれた場合、硫酸塩の還元で硫化物イオンが生成され、一度りん酸鉄を形成してりんの削減に寄与した鉄イオンも、生成した硫化物イオンと反応するためりん酸イオンを再放出してしまい、汚泥中のりん酸性りんは増加することになる。6) 一方、アルミニウムイオンは硫化物イオンと不溶性の塩を形成しないため、汚泥中のりん酸イオンと定量的に反応することから、りん除去のためにはアルミ系凝集剤のほうが効果も大きく、コストも削減される。 以上のことを考慮して、当局では平成 20 年度からの放流水りん濃度規制強化に伴う返流水りん対策として、アルミ系凝集剤であるLACが使用される。ただし、アルミニウムイオンはpHが低すぎても高すぎても溶解してしまい効果が得られない。りん酸性りん濃度と凝集剤添加率の関係を図-16に示す。
14
図-16から分かるように、LACによるりんの削減では pH5.2付近をピ-クとしてそれより低い pHではりんの再溶出が始まっている。このようにLACによるりん削減では、LAC自体が pH1.0以下と強酸性の液体であることから、pHが5.5を下回らないよう添加する必要がある。 一方、送泥の場合は鉄系凝集剤も硫化水素対策に使用されている。南プラや東プラでは、夏期の高水温気に受泥先の硫化水素の発生を防ぐことを目的としてポリ鉄の注入が行われる。この期間はポリ鉄と LAC の双方が添加された汚泥を処理することになるが、今回の調査では双方が悪影響を及ぼすことなく良好な処理性が確認できた。ただし、ポリ鉄も酸性を呈するため、LACの注入率についてはpHの低下の度合いを見ながら注入する必要がある。
6.まとめ
重力濃縮と脱水における無機凝集剤併用の効果を検証し、以下の知見を得た。 ① 重力濃縮性評価のため無機凝集剤を添加した汚泥の沈降試験を実施したところ、初期沈降速度が速いのはアルミ系、[鉄+アルミ]系、鉄系の順で、最も速いアルミ系は無添加の6倍程度の速度であった。しかし圧密性は全く逆で、濃縮汚泥濃度は凝集フロックの大きなものほど低濃度であった。
② 沈降試験上澄水の水質は、無機凝集剤添加により大きく改善された。特に SSは顕著で無添加に較べ 80%程度の低減したものもあった。COD、T-Nも SSの回収により低減し、S-CODも凝集フロックがコロイド大の粒子を補足するため低減した。無機凝集剤の汚泥添加は、返流水負荷の削減に非常に有効と考えられる。
③ 脱水において無機凝集剤を併用すると、高分子単独のものと比較して含水率が低下する傾向がみられた。無機凝集剤の汚泥表面電荷中和能力を考えると、無機の併用により高分子凝集剤使用量を減らせる可能性が大きい。
④ 脱水分離液も濃縮と同様で、無機の併用により水質が改善された。最も削減率の大きな項目は濃縮同様SSであった。ただし、S-CODは濃縮の場合と異なり削減効果がほとんど現れなかった。
⑤ 濃縮、脱水分離液の生分解性は、無機凝集剤の添加で上昇する傾向がみられた。 ⑥ 無機凝集剤を添加すると、濃縮、脱水分離液のりん濃度が著しく低下した。特にアルミ系凝集剤ではこの傾向が顕著で、返流水りん対策としてのLAC投入が有効であることが検証された。
⑦ LACによるりん除去では、アルミニウムが両性金属であることから pHが低下し過ぎるとりん酸イオンの再溶出が起こるため、pH管理が重要となる。
<参考文献> 1) 内藤利夫,松島修,船越泰司(1992):送泥に伴う汚泥性状の変化の実態及び腐敗抑制のための調査,東京都下水道局技術調査年報,P301
2) 山下博史,本間誠二(2004):返流水の効率的りん除去手法の開発,第41回下水道研究発表会講演集,P1113 3) 岡崎敏之,中東寛和(2005):汚泥処理工程への凝集剤添加による放流水りん濃度の低減,第 42回下水道研究発表会講演集,P1089
図-16 無機凝集剤添加率とりん酸性りん濃度(液相)の関係
0.291.02
4.01
9.37
16.2
0.31
7.15 6.97 6.716.41
5.93
5.52
0
5
10
15
20
25
0mol
/L
1.54
mol
/L
3.08
mol
/L
4.63
mol
/L
6.15
mol
/L
7.69
mol
/L
ポリ鉄添加量(Fe換算値)
りん
濃度
[mg/
L]
3 .0
4.0
5.0
6.0
7.0
8.0
pH
5.74
16.2
9.86
1.40 0.37 1.27
5.56
4.47
6.40
7.156.80
6.04
0
5
10
15
20
25
0mol
/L
1.54
mol
/L
3.08
mol
/L
4.63
mol
/L
6.15
mol
/L
7.69
mol
/L
塩鉄添加量(Fe換算値)り
ん濃
度[m
g/L]
3 .0
4.0
5.0
6.0
7.0
8.0
pH
5.014.012.49 2.65
16.2
0.98
4.81
6.46
7.15
5.23
4.45
4.60
0
5
10
15
20
25
0mol
/L
1.54
mol
/L
3.08
mol
/L
4.63
mol
/L
6.15
mol
/L
7.69
mol
/L
LAC添加量(Al換算値)
りん
濃度
[mg/
L]
3 .0
4.0
5.0
6.0
7.0
8.0
pH
pH
りん酸性りん濃度 mg/L
15
4) 平松ら(1994):脱水セル法遠沈管試験による遠心脱水機のケーキ含水率推定、第 31回下水道研究発表会講演集,P604
5) G.Charlot(1969):定性分析化学Ⅰ,共立全書,P124 6) 山下博史,本間誠二(2004):返流水の効率的りん除去手法の開発,第41回下水道研究発表会講演集,P1114