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14 連続の式 地上の低気圧の中心付近ではまわりから空気が集まってきて、上昇気流 が生じている。質量保存則を考えれば、空気が水平方向に集まってきた 分だけ、上昇気流が生じるはずである。ここでは、質量保存則を用いて、 水平流と鉛直流との関係を定量的に表現してみよう。 4.1 高度座標における連続の式 質量保存則の定式化を考える。 3 次元空間の中で固定された領域に含まれる空 気の質量の時間変化は、その領域を出入りする正味の質量に等しい。 z y u u 2 1 z y u u 2 1 z y x x y z z x y まず、この微小な領域 z y x に含まれる空気の質量は z y x と書ける。質量の 時間変化は、 t z y x である。このとき、微小な領域の中心における x 方向の質量の流れ(質量フラッ クス)は、 z y u である。したがって、この微小領域に x 方向の境界面から入ってくる質量は、 z y u u 2 1 x 方向の境界面から入ってくる質量は、 z y u u 2 1 と書ける。 y 方向、 z 方向の境界面についても同様に考えることができる。ここ で、質量の時間変化は質量の出入りの総和に等しいから、

4 連続の式kishou.u-gakugei.ac.jp/lectures/fluid/doc04.pdf課題4.1 式(2)から(3)を導出せよ。 問4.1 ある地点では5 m/s の西風が吹いている。この地点の東1

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Page 1: 4 連続の式kishou.u-gakugei.ac.jp/lectures/fluid/doc04.pdf課題4.1 式(2)から(3)を導出せよ。 問4.1 ある地点では5 m/s の西風が吹いている。この地点の東1

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4 連続の式

地上の低気圧の中心付近ではまわりから空気が集まってきて、上昇気流

が生じている。質量保存則を考えれば、空気が水平方向に集まってきた

分だけ、上昇気流が生じるはずである。ここでは、質量保存則を用いて、

水平流と鉛直流との関係を定量的に表現してみよう。

4.1 高度座標における連続の式

質量保存則の定式化を考える。3次元空間の中で固定された領域に含まれる空

気の質量の時間変化は、その領域を出入りする正味の質量に等しい。

zyuu

2

1 zyuu

2

1

zyx

x

y

zz

xy

まず、この微小な領域 zyx に含まれる空気の質量は zyx と書ける。質量の

時間変化は、

t

zyx

である。このとき、微小な領域の中心における x方向の質量の流れ(質量フラッ

クス)は、

zyu

である。したがって、この微小領域に x 方向の境界面から入ってくる質量は、

zyuu

2

1

x 方向の境界面から入ってくる質量は、

zyuu

2

1

と書ける。 y方向、z方向の境界面についても同様に考えることができる。ここ

で、質量の時間変化は質量の出入りの総和に等しいから、

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yxwzxvzyu

yxwwyxww

zxvvzxvv

zyuuzyuut

zyx

2

1

2

1

2

1

2

1

2

1

2

1

(1)

ゆえに、

0)(

u

t (2)

となる。(2)は、連続の式(continuity equation)とよばれ、任意の固定された微

小な領域を出入りする質量が、その場所での密度の時間変化に等しいことを示

している。(2)を変形して、

0 uDt

D (3)

と書くこともできる。 u は風速ベクトルの発散である。直交座標系において

は、(3)は、

0

z

w

y

v

x

u

Dt

D (4)

と表せる。

4.2 気圧座標における連続の式

気象学では鉛直座標として気圧座標( p座標)を用いることが多い。そこで、

連続の式が p座標を用いてどのように表現できるか考えてみよう。以下では、

静水圧平衡のもとで、微小な領域 zyx を出入りする質量フラックスを p座標

において定式化する。

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pyg

uu

2

1

pyg

uu

2

1

yxg

2

1

yxg

2

1

g

pyx

x

y

z

px

y

静水圧平衡を仮定すると、

gz

p

(5)

だから、

pg

z

1

(6)

である。したがって、微小な領域 zyx に含まれる質量は、

g

pyxzyx

(7)

となり、 p が変化しなければ z座標における密度 に関係なく一定である。こ

のことから、鉛直方向の境界が等圧面で指定された微小領域を出入りする質量

の総和は常にゼロであることが分かる。一方、この微小な領域の中心における、

x方向の質量フラックスは、

pyg

uzyu (8)

である。したがって、この微小領域に x 方向の境界面から入ってくる質量は、

pyg

uu

2

1

x 方向の境界面から入ってくる質量は、

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pyg

uu

2

1

と書ける。y方向についても同様に考えることができる。また、鉛直方向の質量

フラックスは、等圧面を横切る流速がg

であることを考慮して、

yxg

yxg

(9)

となる。したがって、鉛直下方から入ってくる質量は、

yxg

2

1

上方から入ってくる質量は、

yxg

2

1

である。質量の出入りの総和はゼロだから、

0

1

2

1

2

1

2

1

2

1

2

1

2

1

yxpxvpyug

yxg

yxg

pxg

vv

pxg

vv

pyg

uu

pyg

uu

(10)

ゆえに、

0

ppy

v

px

u (11)

等圧面上での発散を hp u で表せば、(11)は一般的な形として、

0

puhp

(12)

と書ける。

4.3 σ座標における連続の式

ここで、 座標を導入し、地上気圧 sp を用いて spp とすると、

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0)(

sppu

t

pp

Dt

Dsh

ss (13)

と書ける。ただし、

は 座標における鉛直速度である。(13)を(12)に代入して、

0

ppp

p

upu

t

p

pu ss

hsh

shp

(14)

spp より、

spp

1 (15)

なので、

01

pp

upupu

t

p

p

hshpsh

s

s

(16)

と変形できる。

0

ppp (17)

を用いて、

01

upu

t

p

psh

s

s

0

shss pupp

t (18)

(18)を 0 から 1 まで鉛直積分すると、 )1,0( 0

を用いて、

01

0

dupp

thss (19)

課題 4.1 式(2)から(3)を導出せよ。

問 4.1 ある地点では 5 m/sの西風が吹いている。この地点の東 1 kmの地点で

は 4 m/sの西風、西 1 kmの地点では 6 m/sの西風が観測された。このとき、水

平風の発散を計算せよ。水平風の南北成分は一様にゼロとする。

問 4.2 問 4.1の風が、地表から高度 200 mまで鉛直方向に一様に吹いている。

3 次元で見た風の収束・発散はゼロであるとして、高度 200 m における鉛直風

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を求めよ。空気の密度は空間的に一様であると仮定してよい。