27
4-4 試案の作成 配置・平面計画のケーススタディとしてA~D案の 4 試案を作成し、検討を行った。 配置・平面計画の比較検討 a) A案(ホール中央配置型) ゾーニングイメージ 周囲を田園に囲まれ正方形に近い敷地の中央に、ホールを中心とした 4 つの機能を まとめて配置する。そのことにより公道沿いに帯状のオープンスペースが生まれる。 南東側は木立を配した駐車スペースを設け、北西側の歩道沿いには自由に散策できる 音楽広場を配します。音楽広場に面して開放的なロビー空間と 2 階にギャラリーを設 け、市民の文化創造活動が周囲の風景と混ざり合う活動発信型ホールをイメージして いる。 A案 ゾーニングイメージ図 音楽広場・コミュニティ ホール機能 心地よい「音楽」 発表の場 交流の場 情報交流 学習発表 情報交換 練習機能 リハーサル 日常的練習 29

4-4 試案の作成 - Ichinomiya...4-4 試案の作成 配置・平面計画のケーススタディとしてA~D案の4 試案を作成し、検討を行った。 配置・平面計画の比較検討

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Page 1: 4-4 試案の作成 - Ichinomiya...4-4 試案の作成 配置・平面計画のケーススタディとしてA~D案の4 試案を作成し、検討を行った。 配置・平面計画の比較検討

4-4 試案の作成

配置・平面計画のケーススタディとしてA~D案の 4 試案を作成し、検討を行った。

配置・平面計画の比較検討 a) A案(ホール中央配置型) ① ゾーニングイメージ

周囲を田園に囲まれ正方形に近い敷地の中央に、ホールを中心とした 4 つの機能を

まとめて配置する。そのことにより公道沿いに帯状のオープンスペースが生まれる。

南東側は木立を配した駐車スペースを設け、北西側の歩道沿いには自由に散策できる

音楽広場を配します。音楽広場に面して開放的なロビー空間と 2 階にギャラリーを設

け、市民の文化創造活動が周囲の風景と混ざり合う活動発信型ホールをイメージして

いる。

A案 ゾーニングイメージ図

音楽広場・コミュニティ

ホール機能 心地よい「音楽」

発表の場

交流の場

情報交流 学習発表

情報交換

練習機能 リハーサル

日常的練習

29

Page 2: 4-4 試案の作成 - Ichinomiya...4-4 試案の作成 配置・平面計画のケーススタディとしてA~D案の4 試案を作成し、検討を行った。 配置・平面計画の比較検討

N

ゾーニングA案  SC1:1000

客(車)

客(車)

2Fプラン SC1:1000

演奏者スタッフ

搬入

演奏者スタッフ

多目的ホワイエ(エントランスロビー)

舞台 客席

下手側舞台

上手側舞台

親子室

舞台備品庫

荷捌室 楽屋ロビー

ホワイエ

練習室2 練習室3練習室

4

楽屋WC

練習室1

会議室

楽屋4

楽器庫

譜面台椅子庫

楽屋6楽屋5

WCWC

楽屋3楽屋1

楽屋事務室

練習室5

湯沸

事務室

切符販売

控室湯沸楽屋

2備品倉庫

EV

搬入

調整室

スタッフ控室

WC

備品倉庫

WC

楽屋ロビー

主催者事務室倉庫

練習室6

WC倉庫

ロッカー

譜面台椅子庫

木曽川庁舎

音楽広場

音楽広場

歩道

歩道

EV

練習室1上部

音響調整室

調光室

客席上部

投光室

メンテギャラリー

舞台上部

設備機械室

アンプ室

倉庫

メンテギャラリー

調光機械

調光機械投光室

WC倉庫

ロビー上部

ギャラリー

ギャラリーテラス

設備機械室

駐車スペース 広場 ホール機能

練習機能 情報交流スペース 管理部

(凡例)

機械室等

② ゾーニングA案

30

Page 3: 4-4 試案の作成 - Ichinomiya...4-4 試案の作成 配置・平面計画のケーススタディとしてA~D案の4 試案を作成し、検討を行った。 配置・平面計画の比較検討

模型写真1(北東方向)

模型写真2(南西方向)

③ 模型写真(A案)

31

Page 4: 4-4 試案の作成 - Ichinomiya...4-4 試案の作成 配置・平面計画のケーススタディとしてA~D案の4 試案を作成し、検討を行った。 配置・平面計画の比較検討

b)B案(2 つの広場型) ① ゾーニングイメージ

1つめの広場は歩道と一体化したオープンな広場。2つ目の広場は市民の日常的文

化創造活動の場である練習機能と情報交流機能が囲む音楽広場として計画。

例えば・・・広場に何気なく立ち寄った子ども達が知らず知らずの内に音楽広場に足

を踏み入れ、そこで垣間見た文化創造活動に興味を持ち参加したくなる・・・二つの

広場をもつホールは様々な文化活動に気軽にふれあえる交流の場であり、積極的な文

化創造・発信の場をイメージしている。

B案 ゾーニングイメージ図

広場・コミュニティー

音楽広場 練習機能 リハーサル

日常的練習 ホール機能 心地よい「音楽」

発表の場

交流の場 情報交流 学習発表

情報交換

32

Page 5: 4-4 試案の作成 - Ichinomiya...4-4 試案の作成 配置・平面計画のケーススタディとしてA~D案の4 試案を作成し、検討を行った。 配置・平面計画の比較検討

N

ゾーニングB案  SC1:1000

客(車)

演奏者スタッフ

搬入

客(車)

楽屋2

楽屋WC

楽屋6 楽屋3楽屋5 楽屋4

練習室1

調整室

WC

事務室

ロッカー

舞台

客席

下手側舞台

上手側舞台

親子室

舞台備品庫

WC WC

譜面台椅子庫

倉庫

楽屋1

練習室2練習室3練習室

4練習室

5練習室6

備品倉庫

搬入 演奏者スタッフ

荷捌室

楽屋事務室

多目的ホワイエ(ロビー)

もぎり

切符販売

主催者事務室

2Fプラン SC1:1000

控室備品倉庫

楽屋ロビー

倉庫

WC

湯沸

会議室スタッフ

控室

楽器庫

エントランスロビー 客ホワイエ

木曽川庁舎

広場

音楽広場

歩道

歩道

練習室1上部

客席客席上部

舞台上部

投光室投光室

メンテギャラリー

メンテギャラリー

音響調整室調光室

調光機械室

アンプ室

倉庫

設備機械室

駐車スペース 広場 ホール機能

練習機能 情報交流スペース 管理部

(凡例)

機械室等

② ゾーニングB案

33

Page 6: 4-4 試案の作成 - Ichinomiya...4-4 試案の作成 配置・平面計画のケーススタディとしてA~D案の4 試案を作成し、検討を行った。 配置・平面計画の比較検討

③ 模型写真(B案)

模型写真1(北西方向)

模型写真2(北東方向)

34

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c)C案(木々の中のクラスター型) ① ゾーニングイメージ 「木々の中の練習室」「木々の中の音楽交流ロビー」は木立の中を散策するように気

軽に立ち寄ることができる積極的なしかけとして計画。建物内外に点在する木々によ

り光と視線が行き交う心地良いヒューマンスケールの空間構成は、市民の自由な交流

を生み出し、様々な活動が連鎖的に発生することにより新たな文化創造活動を誘発す

る。風景に溶け込み、木々の中を散策するような文化施設、そしてそこでの創造の具

現化を強くイメージしている。

C案 ゾーニングイメージ図

情報交流 学習発表

情報交換 練習機能 リハーサル

日常的練習

ホール機能 心地よい「音楽」

発表の場

交流の場

広場・コミュニティー

35

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NN

ゾーニングC案 SC1:1000

客(車)搬入演奏者スタッフ

客席

舞台上部

投光室 投光室

メンテギャラリー

メンテギャラリー

音響調整室 調光室

調光機械室

アンプ室

練習室1上部

OPEN

OPEN

設備機械室

設備機械室

2Fプラン SC1:1000

木曽川庁舎

演奏者スタッフ 搬入

WC

WC

荷捌室

ロッカー

舞台

客席

下手側舞台

上手側舞台

親子室

譜面台椅子庫

楽器庫

ホワイエ

舞台備品庫

練習室6

練習室2

練習室4

練習室3

練習室5

WC備品倉庫

主催者事務室

スタッフ控室

楽屋事務室

会議室

練習室1

控室WC

調整室

備品倉庫

事務室

WC

切符販売

楽屋ロビー

楽屋2楽屋6 楽屋5

楽屋1

楽屋WC

楽屋3楽屋4

多目的ホワイエ(ロビー)

エントランスロビー

もぎりホワイエ

客(車)

客湯沸倉庫

倉庫

湯沸

倉庫

倉庫

広場

歩道

歩道

広場

広場

設備機械室

駐車スペース 広場 ホール機能

練習機能 情報交流スペース 管理部

(凡例)

機械室等

② ゾーニングC案

36

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③ 模型写真(C案)

模型写真1(北西方向)

模型写真2(北東方向)

37

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N

客(車)

1Fプラン SC1:1000

練習室1160席

エントランスロビー

音楽交流ロビー

練習室5

練習室6

備品倉庫 事務室

切符販売

7

湯沸

倉庫

8

備品庫

練習室/楽屋

WC

倉庫

音楽広場

練習室/楽屋4

スタッフ/ボランティア室

歩道

歩道

木曽川庁舎

ポンプ室

機械室

機械室

機械室

演奏者スタッフ

搬入

駐車場109台

客(車)

控室

調整室

楽屋ロビー

舞台

下手側舞台

上手側舞台

親子室

倉庫

楽器庫

舞台備品庫

搬入

ロッカー

倉庫

楽屋1

湯沸

楽屋2

楽屋WC

練習室/楽屋2

ホワイエ

演奏者スタッフ

もぎり

音楽テラス

練習室/楽屋3

荷捌室 備品庫(譜面台椅子庫)

キュービクル自家発置場

倉庫

404席+立席24客席

② ゾーニングD案

d)D案

① ゾーニングのポイント

 策定委員会においてA~C案のゾーニングおよび予算面の検討をおこない、次の2点について方向づけされた。下記にその概要をしめす。

 ・練習室は、構想案5室程度から増やすこととし、うち1室は小ホールとして利用が

  可能としたうえで、ロビーや共用部の集約を図り規模は4000㎡以下とする。

・ホールの効率的な利用への配慮から練習室と楽屋、リハーサル室を兼用する。

D案では、これらの内容をふまえ検討をおこなった。

38

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N

2Fプラン SC1:1000

音響調整室

調光室

客席上部

投光室

舞台上部

アンプ室調光機械

調光機械

練習室1上部

OPEN

OPEN

メンテギャラリー

メンテギャラリー

空調機械室

空調機械室

屋外機置場

投光室

屋上緑化

屋上緑化屋上緑化

太陽光発電

駐車スペース 広場 ホール機能

練習機能 情報交流スペース 管理部

(凡例)

機械室等<断面計画>

市道12m

a-a 断面図 SC1:800

舞台 客席

練習室1ホワイエ

可動反響板約

16m

市道5.5m

約22m

フライタワー

スポット室

ホワイエ

音響調整室

▽道路境界

道路境界▽

市道16m 市道8m

b-b 断面図 SC1:800

道路境界▽ ▽道路境界

客席

メンテナンスギャラリー

約16m

音楽交流ロビー

音楽広場

木曽川庁舎

ホワイエ

ボリュームのあるホール客席部やフライタワーを、敷地中央に配置。周辺に与える圧迫感を和らげる。

天井高の差を利用したハイサイドライト

aa

b

b

施設の顔となる木曽川庁舎側に音楽広場を設け文化創造活動を発信する。

テラス

太陽光利用

屋上緑化

雨水利用

39

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設定面積(㎡)

施設概要

ホワイエ 490 1㎡/客席以上※1自販機コーナー、喫煙コーナー、ロッカー(150~200個)、モニターホワイエ備品庫 15 椅子、テーブル等切符売場 事務室に含むクローク ホワイエに含む:コインロッカーを設置男子WC 25 洋便ブース3~4、小便器5~6、手洗い3~4※2

女子WC 35 洋便ブース8~9、手洗い4~5※2、化粧カウンター、男児用小便器身障者WC 5 ブース1~2ヶ所舞台 400 主舞台※3+側舞台(上手、下手)、フライタワー設置。可動音響反射板設置。客席 400 400席、気積※4、調整卓をおく場合も(配線取り出し口)、車椅子席親子室 10楽屋1(5人) 20 舞台とは同一フロア、着替えスペース、応接セット、洗面楽屋2(5人) 20 舞台とは同一フロア楽器庫 40 ピアノは最低2台収納(6畳/台)、チェンバロも検討、楽屋通路は2.5m確保

譜面台・椅子庫 40技術スタッフ室 40 舞台袖付近に設置楽屋WC 30 男女、シャワー付き調光室 15 舞台の後部。舞台のよく見える位置。

音響調整室 20 舞台の後部。舞台のよく見える位置。窓を開けて音をチェック。アンプ室 10 舞台は見えなくてよい。調光機械室 35 投光室含む。舞台は見えなくて良い。舞台制御機械室 - 舞台機構により検討。舞台備品庫 30 舞台照明等の収納湯沸し室 5

190リハーサル室兼用、多目的利用、ステージと同等の広さ、天井高4.5m、簡単な上演空間、鏡、レッスンバー

25 楽器庫はホール部と兼用10 簡易楽屋を兼ねる25 客席後方上部・録音設備85 木曽川庁舎の研修室Aに相当※5、6 鏡、レッスンバー、着替えスペース、洗面50 木曽川庁舎の研修室Bに相当※5、6 鏡、レッスンバー、着替えスペース、洗面40 木曽川庁舎の集会室に相当※5、6 鏡、レッスンバー、着替えスペース、洗面40 バンド練習室、録音室付き※5

20 バンド練習室※5

20 着替えスペース、洗面※5、6

20 着替えスペース、洗面※5、6

2015205

325 ロビーコンサート、展示、パーティー等共用部に算入

25練習機能部分と兼用〃〃

902040なし

55

830385 延面積の10%程度※1

(表中※については表4-3-5<参考資料>参照のこと)

多目的室

諸室設定施設の諸元

ホー

ル機能

ホワイエ

コンサートホール

小計 1,685

練習機能

練習室1

練習室1・備品倉庫・楽器庫練習室1・控室練習室1・調整室練習室2/楽屋※10

練習室3/楽屋※10

練習室4/楽屋※10

練習室5練習室6

練習室7/楽屋練習室8/楽屋練習室備品庫男子WC女子WC身障者WC

(身障者WC)

小計

小計

(女子WC)

585

ロビー倉庫

(男子WC)

350

管理部

事務室・会議室事務室倉庫

守衛室湯沸室従業員WC

小計

情報交流機能

音楽交流ロビー

3,995合計

160

共用

ENT・廊下・階段等空調・電気機械室等

4-5 最終施設概要と規模の設定 4章4における各試案の検討から基本計画での最終施設概要と規模の設定を行う。 (1)設定施設の諸元

40

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(2)音響計画 音響設計の基本方針

4章-3(1)に述べたように、ホールは生音によるコンサートを最優先とした音響特性としている。そのため、下記のような音響条件を実現することを目標とする。

① 騒音防止計画 ・ 外部騒音、振動の低減 ・ 隣接する室、および空調機器、トイレ等の給排水、照明機器からの騒音の低減 ② 室内音響計画 ・ 使用目的に応じて良好な音響性能を有する。 ・ 音量とともに、響きの質や音の広がり感、また明瞭度に配慮する。 ③ 舞台音響計画 ・ 使用目的に応じて良好な機能、性能を有する。 (詳細は舞台音響設備計画による)

騒音防止計画 ・ 室内許容騒音値は、下記の値を目標とする。

ホール :NC20(※) 練習室1 :NC25 練習室2~8:NC30 (※)NC値とは、室における会話妨害の程度を表すために提案された騒音

の評価方法の一つで、値が小さいほど静かであることを示す。 (建築設計資料:コンサートホール編より抜粋)

・ 諸室間の遮音計画 ホール、練習室1、音楽交流ロビー、トイレは同時利用も考慮し、廊下を挟む等、離隔距離をなるべく確保すると共に、各練習室には防振遮音構造を採用す

る。 ・ 音楽広場 近隣への騒音防止について配慮する。

41

Page 14: 4-4 試案の作成 - Ichinomiya...4-4 試案の作成 配置・平面計画のケーススタディとしてA~D案の4 試案を作成し、検討を行った。 配置・平面計画の比較検討

室内音響計画 ・ 「音の立上りの強さや明瞭度」「音量感」「音に包まれた感じ」などの性能を決

定する要因の1つが初期反射音であるため、全ての客席において適切な初期反射音が得られるように室形状をはじめ、舞台反射板、客席天井と側壁、客席の

椅子などの音響特性に配慮する。また、音の拡散やエコーの防止にも配慮をお

こなう。 ・ 使用目的に応じて室容積と残響時間の推奨値の例が、図-1のように示されてい

る。室容積については10㎥程度を確保(※1)すると共に、4章-3でも述べた、

熱田文化小劇場(室容積:約12㎥/人)と碧南エメラルドホール(室容積:約

15㎥/人)を参考として検証をおこない、本ホールでは12~14㎥程度を確保す

るものとする。したがって室容積は4800~5600㎥となり、図-1を参考に残響時

間は1.6~2.0s(着席時)を目標とする。また、演劇や講演会など短めの響き

が必要な場合は舞台内に幕を設置すると共に、客席側には残響可変機構を設置

することで対応する。

室容積(㎥)

図-1(室の種類、室容積と残響時間の推奨値の例) B.F.Day,R.D.Ford and P.Load(1969),BuildingAcoustics,Elsevier

※1:日本建築学会資料集成

・ 練習室1については、演奏会のほか演劇や講演、リハーサル等、多機能に利用することから壁面にカーテン等を設置し、残響時間に巾をもたせるものとする。

残響時間(s)

42

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室容積は860㎥~1000㎥程度なので、図-1より残響時間は1.0s~1.5s(着席時)を目標とする。

・ 設計においては、上記残響時間の設定とともに、低音楽器の安定した響きや、

弦楽器と管楽器のバランスと明瞭度、また、音のブレンド、音の包まれ感があ

るかを、実例調査や模型、シミュレーション等により検討を行う。 (3)舞台設備計画

基本方針

ホールにおいては本格的な音響性能を備えるとともに、演劇や舞台芸術にも対応でき

るものとする。練習室1においては多機能としつつも簡易な機構とし、利用者の扱いや

すさにも配慮する。

ホールの舞台機構について ① 可動プロセニアムの採用

プロセニアムは舞台機構において可動なものとし、スムーズに設置が出来る機構

とする。 コンサート時にはこのプロセニアムはフライタワー内に収納される。プロセニア

ム形式時には、吊物の自由度を増すため、天井反響板の収納を工夫する。 ② 舞台の大きさ、高さ

プロセニアム形式時は、間口16m奥行き11m程度とし、プロセニアム高さは7.5m程度とする。 コンサート形式時は、間口11~16m、奥行き11m程度、天井反響板(可動式)高さは7~9.5m程度とする。 小編成(30人程度)オーケストラやピアノ伴奏付きコーラス(70人程度)等の演奏が可能な大きさとする。

③ 側舞台を設置 上手、下手に側舞台を設け、舞台まわりの移動や、作業がスムーズに行うことが

出来るスペースを確保する。 ④ 舞台幕、道具バトン、映写およびスライドスクリーンを設置

練習室1の舞台機構について ① 通常は、平土間対応とし演奏会、講演会等に対応して平土間より600mm程度の

簡易な舞台を設ける。 ② 見切り幕として引割幕およびバック幕を設置する。

43

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(4)練習室と楽屋の考え方 本施設では、練習室と楽屋を兼用して計画するものとする。そのうえで、配慮す

べき点について下記に示す。

・ 動線の分離

練習室を楽屋として利用する場合、ホール利用者が裏動線からアクセスできる

よう、動線の分離を明確にする。

・ 楽屋備品の収納

化粧前鏡、衣装収納等が、練習室利用時に不都合となることがないよう、これ

らの収納方法(壁面等)の検討をおこなう。

(5)ユニバーサルデザインについて

・ ハートビル法および、愛知県人にやさしい街づくり条例を遵守したものとする。

・ エントランスからホール客席および練習室には車いす使用者が円滑に利用で

きる構造とする。

・ ホール客席には親子室を設ける。

・ 誰もが分かりやすいサイン計画とする。

・ 障害者、高齢者はもとより、誰もが利用しやすいトイレを設置。多目的トイレ

はオストメイト対応とする。また、便器数については適正個数の考察を行う。

便器数についての考察

「衛生器具の適正個数に関する調査研究報告書」(空気調和・衛生工学会)に基づ

き算出をおこなう。また、サービスレベルについては下記の表に基づく評価を示す。

(劇場)

サービスレベル(秒)(最大待時間による評価)

レベル 1 レベル 2 レベル 3

男子大便器 120 250 400

男子小便器 15 30 60

男子洗面器 8 15 30

女子便器 40 75 150

女子洗面器 10 20 40

44

Page 17: 4-4 試案の作成 - Ichinomiya...4-4 試案の作成 配置・平面計画のケーススタディとしてA~D案の4 試案を作成し、検討を行った。 配置・平面計画の比較検討

・ ホールホワイエ側トイレ

利用人数 450名(A案 男女比率1:1、B案 男女比率2:3 それぞれについて算出)

男女比=1:1

男子 女子 評価尺度

大便器 小便便器 洗面器 便器 洗面器

レベル 1 3 6 4 8 4

レベル 2 2 5 3 7 4

レベル 3 2 4 3 6 3

男女比=2:3

男子 女子 評価尺度

大便器 小便便器 洗面器 便器 洗面器

レベル 1 3 5 3 10 5

レベル 2 2 4 3 9 4

レベル 3 1 4 2 7 4

以上から、男子トイレでは大便器2~3、小便器5~6、洗面器3~4を設置、また女子

トイレでは便器8~10、洗面器4~5および男児用便器1を計画する。

・ 練習室側トイレ

利用人数 235名(A案 男女比率1:1、B案 男女比率2:3 それぞれについて算出)

男女比=1:1

男子 女子 評価尺度

大便器 小便便器 洗面器 便器 洗面器

レベル 1 2 4 3 4 3

レベル 2 1 3 2 3 3

レベル 3 1 3 2 2 2

以上から、男子トイレでは大便器1~2、小便器3~4、洗面器2~3を設置、また女子

トイレでは便器4~5、洗面器3~4を計画する。

男女比=2:3

男子 女子 評価尺度

大便器 小便便器 洗面器 便器 洗面器

レベル 1 1 4 3 5 4

レベル 2 1 3 2 4 3

レベル 3 1 2 2 3 2

45

Page 18: 4-4 試案の作成 - Ichinomiya...4-4 試案の作成 配置・平面計画のケーススタディとしてA~D案の4 試案を作成し、検討を行った。 配置・平面計画の比較検討

4-6 設備計画 (1)電気設備計画 <電気設備の基本方針> 本施設は、多機能なホールとして利用者に快適で親しみやすい環境を提供すると

ともに、ホールとしての照明、音響などの機能的、効果的な演出が可能な設備と する。

建築及び他設備との協調を図り、省エネルギー、省力化が図られ経済的で信頼性 が高く、維持管理が容易なシステム構成とする。

<計画概要> 1)高圧引込設備 受電は、中部電力配電線路より、三相3線式、6,600V、60Hz、1回線 受電とする。

2)受変電設備

電力会社より受けた高圧電力を電灯用、動力用などに変圧して低圧電力を供給 するものとする。 3)自家用発電機設備 商用電源が停電した場合に、防災機能を維持するため必要な電源を確保できる ように、自家発電機を設置する。

4)幹線動力設備 建築設備への電源供給と操作・監視・制御に伴う配線及び動力制御盤の設置を

行う。 5)電灯コンセント設備 建築における照明計画は、意匠的にも重要である。省エネに配慮しつつ各室の

用途及び使用目的に合った照明方式、器具選定、器具配置とする。また、施設

周辺の安全、防犯対策及び駐車場の必要照度の確保の為、外灯を合わせて計画

する。なお、外灯については周辺への影響に充分配慮した配置とする。

46

Page 19: 4-4 試案の作成 - Ichinomiya...4-4 試案の作成 配置・平面計画のケーススタディとしてA~D案の4 試案を作成し、検討を行った。 配置・平面計画の比較検討

<主要室の照度基準及び設計照度> 6)通信・情報設備 障害者、高齢者はもとより、誰もが安心して利用できるようなわかりやすい設

備を計画するとともに、情報化社会や将来変化へのフレキシブルな対応が可能 な計画とする。

7)防災設備 防災設備は、建築基準法、消防法、その他関連法規に準拠し、非常照明設備、

誘導灯設備、非常放送設備、自動火災報知設備、避雷設備を計画する。

8)防犯設備 施設利用状況監視用、防犯対策として防犯カメラを設置し、事務室にITVモ

ニター収録装置を設置する。また休日、夜間の防犯対策として警備会社に

よる防犯設備の委託が導入可能な設備計画とする。 9)舞台照明設備 ・音楽ホール 舞台照明設備 本システムは、音楽ホールとして各種コンサート、演劇、発表会等、多種多

様な催物に幅広く対応できるものとし、かつ舞台音響と連携を図るものとす

る。 ・練習室1 舞台照明設備 本システムは、練習室内におけるピアノ演奏会、発表会、講演会等の催物等

対応するものとする。また簡易な演劇などにも対応できるものとする。

照度基準(JIS) 設計照度室 名

(Lx) (Lx) 備 考

エントランス・ロビ- 150~300 200

事務室 300~750 500

楽屋・練習室 150~300 500

スタッフボランティア室 200~750 500

廊下 75~150 150

ホワイエ 150~300 300

ホ-ル客席 150~300 0~300

練習室 150~300 0~300

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10)舞台音響設備 ・音楽ホール 音響・映像設備 本システムは、音楽ホール内における明瞭度の高い拡声、視認性に優れる

映像投写機器を備え、ピアノ演奏会、オペラコンサート、発表会等、多種 多様な催物に幅広く対応できるものとし、かつ舞台照明との連携を図るも のとする。

・練習室1 音響設備 本システムは、練習室における明瞭な拡声、映像投写ができるものとし、

ピアノ演奏会、発表会、講演会等の催物に対応するものとする。 ・音楽テラス 移動音響設備 本システムは、音楽テラスにおける各種イベントに対応する拡声ができる

ものとし、可搬式の機器等により、イベント形態に合わせた設置を可能な ものとする。ただし、近隣への配慮を考慮した配置とする。

11) 太陽光発電設備 自然の恵みでクリ-ンなエネルギ-である太陽光を利用した太陽光発電設備を

設置する。 太陽電池で発電した電力は、受変電設備に連携し建物電力の補給電力として 利用する。

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(2)機械設備計画 <機械設備の基本方針> 本計画は多機能な音楽ホールとしての機能が充分発揮できる公共施設として自然

エネルギーを積極的に取り入れた、省エネルギー、省資源な機器を採用し環境負 荷の低減を目指すとともに、経済的で信頼性が高く、維持管理が容易なシステム 構成とする。

<計画概要>

(1)空気調和設備 1)熱源設備

熱源方式は中央式、分散式を空調ゾーニングの機能に対応じ、ベストミック スした、熱源供給システムとし、保守管理の省力化、経済性に重きを置いて 計画する。 熱源はランニングコストの低減から、クリーンエネルギーである都市ガスを 基本とし、高効率ガス吸収式冷温水器(ホール舞台、客席、ホワイエ系統、

練習室 1 系統)+空冷ヒートポンプマルチエアコンを採用する。 熱源搬送方式は変流量方式とし、搬送動力の低減を図る。

熱源の種類 系 統 名

吸収式冷温水器 ホール(舞台・客席・ホワイエ、ロビー系統)、練習室系統

空冷ヒートポンプマルチエアコン

練習室(2~8)、楽屋(1~2)、スタッフボランティア室、事務室、備品庫、

調整室、楽器庫系統

2)空調設備 各室の空間、空調条件に適した空調方式を採用する。 音楽ホール客席、舞台、ホワイエ、練習室 1 の各系統はエアーハンドリングユ

ニットによる単一ダクト方式とする。その他の各室は個別空冷ヒートポンプ 方式とし、外気処理は全熱交換機によるものとする。

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空 調 機 器 系 統 名

エアーハンドリングユニット ホール客席系統、舞台系統、ホワイエ、ロビー系統、練習室 1系統

空冷ヒートポンプマルチエアコン

練習室(2~8)、楽屋(1~2)、スタッフボランティア室系統

事務室、備品庫、調整室、楽器庫系統

空調設備機器、ダクト、吹出し、吸込みからの発生騒音値が室内許容騒音値 として下記の値を目標とする。

系 統 名 許容騒音値

ホール客席系統 NC-20

ホール舞台系統 NC-20

練習室 1系統 NC-25

練習室 2系統 NC-30

(2)給排水衛生設備 1)給水設備

生活用水として北側道路市給水本管より引き込み全施設の給水必要箇所に直

圧にて給水する。また、雨水を中水(雑用水)として積極的に利用する。

2)給湯設備

必要箇所に給湯する。

3)排水通気設備

自然流下による排水計画とする。屋内は汚水・雑排水合流式とし、屋外は雨

水・汚水の分流式とする。

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4)衛生器具設備

便器洗浄に雨水を利用し節水を計画する。また、障害者、高齢者はもとより

誰もが利用し易い多目的トイレを設置する。多目的トイレは、オストメイト

対応とする。

5)消火設備

消防法に基づき、屋内消火栓設備、スプリンクラー設備等を設置する。

6)都市ガス設備

北側 300m先より都市ガス本管(低圧)をガス会社の負担にて延長し、東側道

路に布設、これより敷地内に導入し、必要箇所に供給する。

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4-7 景観計画と施設計画 田園風景の中にたたずむ今計画敷地は、基本理念にもある「風景に溶け込み、木々の中

を散策するような文化施設」の建設にふさわしい条件を備えている。田園風景の特徴であ

るどこまでもフラットな景観と高層建築物がない周辺環境の中、今計画では建物と広場に

植えられる木々により、均一な風景に心地よい彩りを添える新しい文化施設の景観をめざ

す。 周辺の景観と調和する心地良い風景は、「音楽」からイメージされる、「調和」「ハーモニ

ー」といった言葉ともリンクし、一宮市に新たに建設される音楽ホールとして必要不可欠

な理念となり得ると考える。 また、施設内部の計画も、外観のイメージをそのままに、木々の中を散策するような計

画とすると共に内部の活動が映し出されるような透明感のある空間をめざす。 <計画の内容> 1)建物のボリュームを分節することにより、周辺環境に対する威圧感を和らげると共 に、風景と調和する計画とする。 2)「エコアクション一宮」の理念に基づく環境に配慮した計画とする。 3)敷地内は、緑化に努めることで環境に配慮すると共に、市民が気軽に立ち寄れる アメニティー空間として整備する。 4)木曽川庁舎の正面に位置することに配慮し、庁舎との円滑な動線計画に配慮する と共に、広場を庁舎側に配置することで庁舎との関係性を強化する。 5)内部空間は屋根の高さの違いを利用した、ハイサイドライトをもうけることで、 木漏れ日のように柔らかな光が入る空間を演出する。 6)交流ロビー、音楽テラスでの交流が活発に行われるように、開放的な雰囲気を作り 出すと共に、内部の活動を映し出す透明感のある空間とする。 次ページから、最終案の景観計画、施設計画に沿ったイメージパースを示す。

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景観計画、施設計画に沿ったイメージパース

-北面イメージパース-

-鳥瞰イメージパース-

-イメージパース 木曽川庁舎より-

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-ホール イメージパース-

-音楽交流ロビー イメージパース-

-練習室ロビー イメージパース-

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4-8 事業費の算定 今計画において、施設形状、仕上げ等については具体化するに至っていないため、

同種物件の事例より単価等を参考にして概算工事費を算出する。今後、市民や関係者

の意向、その他、関係法規並びに詳細な検討が行われるため、ここに示すイニシャル

コストも流動的なものと考えられる。 以下に、概算事業費を示す。 ①建設工事費 約 20 億円 ②敷地造成・外構工事費 約 2.4 億円 ③その他(備品購入費、土地購入費、設計費他) 約 6.6 億円 合計約29 億円の事業費を見込むものとする。

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