2
(4)(駅 えき いん は)荷 もつ を持 げるや否 いな や、荷 もつ を持 って走 はし した。 (3)に「や否 いな や」(4)に 「とたん(に)」を用 もち いる と、間 ちが いとは言 えない けれど、次のように少 すこ ぜん な文 ぶん になります。 (5)?(駅 えき いん は)荷 もつ を持 ち上 げるや否 いな や、あまりの重 おも に腰 こし を抜 かしてしまった。 a. あまりの重 おも さに腰 こし を抜 かしてしまった b. 荷 もつ を持 って走 はし り出 した。 (*「とても重 おも くて、座 すわ り込 んだまま立 てなくなってしまった」 の意 。) できましたか。 (1) -a、(2) - b になった人 ひと が多 おお いと思 おも いますが、どう でしょうか。a と b の違 ちが いは、a が「突 とつ ぜん の事 たい の発 はっ せい (予 そう していなかったことが急 きゅう に起 きること)」を、bが ひと の「意 てき な動 どう ・行 こう (「しよう」と思 おも って行 おこな う行 こう どう )」 を表 あらわ しているということです。文 ぶん を完 かん せい すると、次 つぎ ようになります。 (3)(駅 えき いん は)荷 もつ を持 ち上 げたとたん、あまりの重 おも さに こし を抜 かしてしまった。 みな さんは今 いま までこの『日 ほん きょう いく つう しん 』で、「雨 あめ ったら、試 あい は中 ちゅう だ。」「通 つう やく になるために、日 ほん べん きょう している。」のような文 ぶん を勉 べん きょう したことがありますね。 これらの文 ぶん は、まず、文 ぶん 1 があって、次 つぎ に文 ぶん 1 と文 ぶん 2を むす ぶもの(接 せつ ぞく けい しき )が続 つつ き、 文 ぶん 2 によって全 ぜん たい まとまります。「文 ぶん 1 +接 せつ ぞく けい しき 」をじゅう ぞく せつ 、「文 ぶん 2」を しゅ せつ と呼 びます。 あめ が降 ったら、試 あい は中 ちゅう だ。 ぶん 1 + せつ ぞく けい しき ぶん 2 じゅう ぞく せつ しゅ せつ ほん には、同 おな じような意 なのに異 こと なる接 せつ ぞく けい しき つ従 じゅう ぞく せつ がたくさんあります。「雨 あめ が降 ったら/降 とき/降 った場 あい 」「雨 あめ が降 るから/降 るために/降 った せいで/降 ったおかげで」などなどです。 こん かい は、「従 じゅう ぞく せつ ない の事 こと がら が終 わると、すぐに主 しゅ せつ こと がら を行 おこな う/主 しゅ せつ の事 こと がら が起 こる」という意 の「とたん (に)」と「や否 いな や」について考 かんが えます。 「や否 いな や」は上 じょう きゅう レベルの表 ひょう げん ですが、書 きことばとして よく使 つか われるので取 り上 げました。初 はじ めての方 かた は挑 ちょう せん して みてください。また、「とたん(に)」の「に」は省 しょう りゃく のう です。本 ほん ぶん には「とたん」 「とたんに」の両 りょう ほう が現 あら われます。 さて、問 もん だい です。次 つぎ のストーリーを読 んで、問 もん だい 1を してください。 ストーリー えき のプラットホームに一 ひと つの荷 もつ が置 かれていました。 だれ が何 なん のために置 いたのかわかりません。 そのとき、一 ひと の駅 えき いん が近 ちか づいてきて、その荷 もつ ち上 げようとしました。 もん だい 1:つぎ の文 ぶん の後 こう はん を完 かん せい して、ストーリーの続 つづ きを つく ってください。 (1)(駅 えき いん は)荷 もつ を持 ち上 げたとたん、 (2)(駅 えき いん は)荷 もつ を持 ち上 げるや否 いな や、 いかがですか。わかりにくかった人 ひと は、次 つぎ の a,b の どちらが(1)(2)に続 つづ きやすいか考 かんが えてみてください。 ぶん ぽう を楽 たの しく‼ ほど くらい 「とたん(に)」 と「や否 いな や」

とたん(に)とやいなや

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Page 1: とたん(に)とやいなや

(4)(駅えき員いんは)荷

に物もつを持

もち

上あげるや否

いなや、荷

に物もつ

を 持もっ て 走

はしり

出だした。

(3)に「や否いなや」(4)に

「とたん(に)」を用もちいる

と、間ま違ちがいとは言

いえない

けれど、次のように少すこし

不ふ自し然ぜんな文

ぶんになります。

(5)?(駅えき員いんは)荷

に物もつを持

もち上

あげるや否

いなや、あまりの重

おもさ

に腰こしを抜

ぬかしてしまった。

a. あまりの重おもさに腰

こしを抜

ぬかしてしまった*。

b. 荷に物もつを持

もって走

はしり出

だした。

(*「とても重おもくて、座

すわり込

こんだまま立

たてなくなってしまった」

の意い味み。)

できましたか。(1)- a、(2)- b になった人

ひとが多

おおいと思

おもいますが、どう

でしょうか。a と b の違ちがいは、a が「突

とつ然ぜんの事

じ態たいの発

はっ生せい

(予よ想そうしていなかったことが急

きゅうに起

おきること)」を、bが

人ひとの「意

い志し的てきな動

どう作さ・行こう為い(「しよう」と思

おもって行

おこなう行

こう動どう)」

を表あらわしているということです。文

ぶんを完

かん成せいすると、次

つぎの

ようになります。

(3)(駅えき員いんは)荷

に物もつを持

もち上

あげたとたん、あまりの重

おもさに

腰こしを抜

ぬかしてしまった。

皆みなさんは今

いままでこの『日

に本ほん語ご教きょう育いく通つう信しん』で、「雨

あめが

降ふったら、試

し合あいは中

ちゅう止しだ。」「通

つう訳やくになるために、日

に本ほん語ごを

勉べん強きょうしている。」のような文

ぶんを勉

べん強きょうしたことがありますね。

これらの文ぶんは、まず、文

ぶん1 があって、次

つぎに文

ぶん1 と文

ぶん2 を

結むすぶもの(接

せつ続ぞく形けい式しき)が続

つつき、文

ぶん2 によって全

ぜん体たいが

まとまります。「文ぶん1 +接

せつ続ぞく形けい式しき」を従

じゅう属ぞく節せつ、「文

ぶん2」を

主しゅ節せつと呼

よびます。

雨あめが降

ふったら、試

し合あいは中

ちゅう止しだ。

文ぶん1 + 接

せつ続ぞく形けい式しき 文

ぶん2

従じゅう属ぞく節せつ 主

しゅ節せつ

日に本ほん語ごには、同

おなじような意

い味みなのに異

ことなる接

せつ続ぞく形けい式しきを

持もつ従

じゅう属ぞく節せつがたくさんあります。「雨

あめが降

ふったら/降

ふる

とき/降ふった場

ば合あい」「雨

あめが降

ふるから/降

ふるために/降

ふった

せいで/降ふったおかげで」などなどです。

今こん回かいは、「従

じゅう属ぞく節せつ内ないの事

こと柄がらが終

おわると、すぐに主

しゅ節せつの

事こと柄がらを行

おこなう/主

しゅ節せつの事

こと柄がらが起

おこる」という意

い味みの「とたん

(に)」と「や否いなや」について考

かんがえます。

「や否いなや」は上

じょう級きゅうレベルの表

ひょう現げんですが、書

かきことばとして

よく使つかわれるので取

とり上

あげました。初

はじめての方

かたは挑

ちょう戦せんして

みてください。また、「とたん(に)」の「に」は省しょう略りゃく可か能のう

です。本ほん文ぶんには「とたん」「とたんに」の両

りょう方ほうが現

あらわれます。

さて、問もん題だいです。次

つぎのストーリーを読

よんで、問

もん題だい1 を

してください。

ストーリー駅えきのプラットホームに一

ひとつの荷

に物もつが置

おかれていました。

誰だれが何

なんのために置

おいたのかわかりません。

そのとき、一ひと人りの駅

えき員いんが近

ちかづいてきて、その荷

に物もつを

持もち上

あげようとしました。

問もん題だい1:次

つぎの文

ぶんの後

こう半はんを完

かん成せいして、ストーリーの続

つづきを

作つくってください。

(1)(駅えき員いんは)荷

に物もつを持

もち上

あげたとたん、

(2)(駅えき員いんは)荷

に物もつを持

もち上

あげるや否

いなや、

いかがですか。わかりにくかった人ひとは、次

つぎの a,b の

どちらが(1)(2)に続つづきやすいか考

かんがえてみてください。

文ぶん法ぽうを楽

たのしく‼

はが

ほどくらい

「とたん(に)」� と「や否

いなや」

Page 2: とたん(に)とやいなや

©The Japan Foundation

2009 年 6月

(6)?(駅えき員いんは)荷

に物もつを持

もち上

あげたとたん、荷

に物もつを持

もって

走はしり出

だした。

以い上じょうのことから、「とたん(に)」の主

しゅ節せつには「突

とつ然ぜんの事

じ態たい

の発はっ生せい」が、「や否

いなや」の主

しゅ節せつには「意

い志し的てきな動

どう作さ・行

こう為い」

の事こと柄がらが来

きやすいということが言

いえそうです。

では、もう少すこし「とたん(に)」と「や否

いなや」の使

つかい方

かたに

ついて見みていきましょう。問

もん題だいです。

問もん題だい2:次

つぎの(7)~(11)において、まず「➡」の前

まえの事

こと柄がらが

起おこり、そのあと「➡」の後

うしろの事

こと柄がらが続

つづいたとします。

後うしろの事

こと柄がらが「事

じ態たいの発

はっ生せい」なら a を、「動

どう作さ・行

こう為い」

なら bを( )の中なかに入

いれてください。

(7) 会あった➡好

すきになる( )

(8) 会あった➡プロポーズする( )

(9) CD-ROMを入いれる➡フリーズする( )

(10)玄げん関かんにカバンを置

おく➡外

そとへ飛

とび出

だしていく( )

(11)振ふり向

むく➡殴

なぐられる( )

い か が で す か。(7)- a、(8)- b、(9)- a、(10)- b、(11)- a になりましたか。(5)で、「殴

なる」なら人

ひとの

動どう作さ・行こう為いですが、受

うけ身みの「殴

なぐられる」は事

じ態たいになります。

「とたん」は漢かん字じで「途

と端たん」と書

かくように、「道

みち(プロセス)

の端はし」を表

あらわし、そのことが起

おこった最

さい初しょの瞬

しゅん間かんを強

きょう調ちょう

します。「や否いなや」もよく似

にていますが、「従

じゅう属ぞく節せつの事

こと柄がらを、

意い志し的てきに、待

まち構

かまえていて」という時

ときによく用

もちいられ

ます。「待まちち構

かまえて」というのは、「次

つぎの行

こう動どうをしようと

今いまか今

いまかと待

まっている」という様

よう子すを表

あらわします。つまり、

「待まち構

かまえて」なので、主

しゅ節せつには動

どう作さ主しゅの意

い志しが入

はいる場

ば合あい

が多おおいです。

では、問もん題だい2 の(7)~(11)を文

ぶんにしてみましょう。

(7)’彼かれは会

あったとたんに、彼

かの女じょのことが好

すきになった。

(8)’彼かれは会

あうや否

いなや、彼

かの女じょにプロポーズした。

(9)’CD-ROMを入いれたとたん、フリーズしてしまった。

(10)’うちの子は毎まい日にち、玄

げん関かんにカバンを置

おくや否

いなや、外

そとへ

飛とび出

だしていく。

(11)’私わたしは振

ふり向

むいたとたんに、誰

だれかに頭

あたまを殴

なぐられた。

皆みなさんの頭

あたまの中

なかには「とたん(に)」=「突

とつ然ぜんの事

じ態たいの

発はっ生せい」、「や否

いなや」=「待

まち構

かまえての動

どう作さ・行こう為い」という図

ず式しき

ができたことと思おもいます。ところが、次

つぎのように、事

じ態たい

を表あらわす文

ぶんにも「や否

いなや」が用

もちいられることがあります。

(12)空そらが暗

くらくなるや否

いなや、大

おお粒つぶの雨

あめが降

ふり出

だした。

(13)番ばん組ぐみが終

おわるや否

いなや、放

ほう送そう局きょくにたくさんの電

でん話わが

かかってきた。

「雨あめが降

ふり出

だす」「電

でん話わがかかってくる」は両

りょう方ほうとも

事じ態たいですが、ここでは「や否

いなや」が可

か能のうになっています。

このことは、「や否いなや」は「動

どう作さ・行こう為い」だけでなく、「事

じ態たい

の発はっ生せい」も表

あらわせることを意

い味みしています。

ところが、「とたん(に)」と「や否いなや」ではニュアンス

がどこか違ちがうのですが、どうでしょうか。(12)と(14)、

(13)と(15)を比くらべてください。

(14)空そらが暗

くらくなったとたん、大

おお粒つぶの雨

あめが降

ふり出

だした。

(15)番ばん組ぐみが終

おわったとたん、放

ほう送そう局きょくにたくさんの電

でん話わが

かかってきた。

「とたん(に)」は「突とつ然ぜんその事

じ態たいが起

おきた」その瞬

しゅん間かん

を表あらわしていますが、「や否

いなや」は、同

おなじ事

じ態たいの発

はっ生せいでも、

「空そらが暗

くらくなる」「番

ばん組ぐみが終

おわる」のを待

まっていたかの

ようにすぐに、次つきの事

じ態たいが起

おこったという「待

まち構

かまえ」

の意い味み合あいが含

ふくまれています。

では、最さい後ごに、「~と、すぐ」は、「とたん(に)」「や否

いなや」

とどう異ことなるかについて簡

かん単たんに触

ふれておきます。

(16)味み方かたチームが(負

まけ始

はじめたとたん/負

まけ始

はじめ る や

否いなや/負

まけ始

はじめるとすぐ)、見

けん物ぶつ客きゃくは帰

かえり始

はじめた。

これは野や球きゅう場じょうの様

よう子すですが、「負

まけ始

はじめたとたん」は、

1秒びょうの間

まも置

おかないぐらいすぐに客

きゃくが帰

かえってしまう様

よう子す

を、よりリアルに強きょう調ちょうした形

かたちで表

あらわし、「負

まけ始

はじめるや否

いなや」

は、客きゃくが「負

まけるのはおもしろくない。負

まけ始

はじめたら

すぐに帰かえろう(と待

まっていた)」という「待

まち構

かまえ」の

勢いきおいや意

い志しを感

かんじさせます。一

いっ方ぽう、「~と、すぐ」は中

ちゅう立りつ的てき

に客きゃくの動

うごきを述

のべべており、帰

かえり始

はじめるのも、1、2 分

ふん、

時じ間かんを置

おいても大

だい丈じょう夫ぶと言

いえるでしょう。

参さん考こう文ぶん献けん:

森もり田た良よし行ゆき(1989)『基

き礎そ日に本ほん語ご辞じ典てん』角かど川かわ書しょ店てん

このコーナーの担たん当とう者しゃ:市

いち川かわ保やす子こ(日

に本ほん語ご国こく際さいセンター客

きゃく員いん講こう師し)

読どく者しゃのみなさんからのアイディア、成

せい功こう例れい、失

しっ敗ぱい例れいなどぜひお寄

よせください。