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○引地麻梨 寧博 丸岡秀一郎 水村賢治 高橋麻衣 森澤朋子 大木隆史 坪井絵莉子 橋本 日本大学医学部 内科学系呼吸器内科学分野 特発性肺間質性肺炎の新規バイオマーカー

6 日大 差替え版プレゼン資料 医学部 権先生 - JST...また、IPF患者の血清には、HSP-70, cytokeratin-8, vimentin, annexin1, periplakin, cytokeratin 18, IL-1α,

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  • ○引地麻梨 権 寧博 丸岡秀一郎 水村賢治 高橋麻衣森澤朋子 大木隆史 坪井絵莉子 橋本 修

    日本大学医学部 内科学系呼吸器内科学分野

    特発性肺間質性肺炎の新規バイオマーカー

  • 背景

    ・近年、疾患をフェノタイプやエンドタイプに分類することの重要性が認識されるようになり、病態生理学的な裏づけのもとに、疾患の重症度、予後予測や治療反応性を評価しうる客観的指標として、血液バイオマーカーの必要性が高まっている。

    ・特発性肺線維症(IPF)は、生存期間中央値が2.5〜3.5年と予後不良な疾患である。間質性肺炎の血液バイオマーカーとしては、KL-6やSP-Dなどが臨床的に利用可能であるが、IPFの疾患特異的血清バイオマーカーは見出されていない。

  • 特発性肺線維症(Idiopathic pulmonary fibrosis; IPF)

    1.病理組織はUIP(usual interstitial pneumonia 通常型間質性肺炎)2. 特発性間質性肺炎の中で最も頻度が高い 3. 慢性かつ進行性の経過4. 有効な治療法が確立されていない5. ときに急性増悪(ぞうあく)6. 肺癌合併7. 予後不良 •診断確定後の平均生存期間は2.5∼5年

  • 従来技術とその問題点KL-6やSP-Dは、間質性肺炎の診断には感度、特異度が高いが、疾患特異性には難あり

    KL-6;感染性間質性肺炎(ニューモシスチス・CMV),悪性腫瘍(肺腺癌・乳癌・膵癌)で上昇することがある

    SP-D;細菌性肺炎,心不全,喫煙でも上昇することがある

  • IPF患者の血清及び肺胞洗浄液中には、様々な自己抗体が存在していることが報告されている (Dall Aglio PP, et al. Respiration 1988;54:36–41Dobashi N, et al. Lung 2000;178:171–179)

    IPF(interstitial pulmonary fibrosis)やNSIP(nonspecific interstitial pneumonia)患者の肺組織では未熟樹状細胞の増加や、免疫グロブリン遺伝子の過剰発現を伴うB細胞の集簇が認められる(Marchal-Somme J, et al. Am J Respir Crit Care Med 2007;176;1007-1014)

    また、IPF患者の血清には、HSP-70, cytokeratin-8, vimentin, annexin 1, periplakin, cytokeratin 18, IL-1α, topoisomerase Ⅱα, などの自己抗原に対する抗体が存在することが報告されており、自己抗体と病態との関連性が示唆されている (Rehan A, et al. Am J Respir Crit Care Med 2013;187;768-775. Kurosu K, et al. J Immunol. 2008 Jul 1;181(1):756-67. Yang Y, et al. Clin Exp Immunol 2002; 128: 169-174. Taille C, et al. Am J Respir Crit Care Med 2011; 183: 759-766)

  • 研究の目的

    IPF患者の病態生理に関連する自己抗原と血清中に存在するこれら自己抗原に対する抗体をスクリーニングし、疾患特異的バイオマーカーとしての可能性について検討する。

  • 実験1 プロテインアレイを用いた自己抗原のスクリーニング

    9000種以上の完全長ヒトタンパク質を固相化したタンパク質マイクロアレイ( ProtoArray™)に、健常者9名、IPF患者9名から採取した血清をアレイ上で反応させ、IPF患者に特異的な自己抗原に反応する自己反応性IgGをAlexa標識抗ヒトIgG抗体で検出した。

    https://www.thermofisher.com

  • 結果1 ProtoArray™を用いた自己抗原の同定

  • 実験2 Mutiplex法を用いた自己抗体の半定量

    同定された6種類の自己抗原のGST-tag付加リコンビナント蛋白を精製し、GST抗体結合Luminex beadsと結合させ、multiplex法(Protoplex™)による測定系を構築し、血清中の自己抗体を半定量した。半定量にはIPF患者23名とIPF健常者12名の血清を用いた。

    Protoplex™を用いた血中抗UBE2T抗体の同定

    IPF (n=12)Healthy(n=23)

    GENwww.genengnews.com

  • 結果2

  • ユビキチンの重合やユビキチンの蛋白負荷を制御するのが、E1、E2、E3酵素であり、UBE2Tは約40種類あるE2ファミリーのひとつである。

    近年、蛋白のユビキチン化のプロセスは、シグナル伝達、DNA修復、細胞内輸送、翻訳制御など様々な役割が明らかになっている。またユビキチン系の破綻が様々な疾患の発症に関係していることが解明されつつあり、治療標的として注目を集めている。

    UBE2Tはこれまで、その遺伝子変異がFanconi貧血の原因であることが知られていたが、近年、 癌細胞の増殖や、epithelial-mesenchymal transition (EMT)に関係していることが報告されている。

    UBE2T (Ubiquitin-E2T )

  • 実験3: IPF組織におけるUBE2Tの発現と分布

    VATSで採取した○例のIPF患者の肺組織と、肺癌及び気胸の手術検体から採取した正常部分の肺組織を用い、抗UBE2T抗体を用いて免疫組織染色を行った。

    正常肺組織IPF肺組織結果3

  • 実験4: 血清抗UBE2T抗体測定ELISAの確立と、各疾患における血清抗UBE2T抗体レベルの比較

    方法 ELISA法

    ヒト・リコンビナントUBE2T蛋白を 96 穴の ELISA 用プレートに固相化し、1 % BSA 0.05 % Tween PBS ( T-PBS ) で特異的な吸着をブロックした後、T-PBS 洗浄後 、200倍 希釈血清を加え1時間反応、T-PBS 洗浄後, ビオチン標識抗ヒトIgG Fc(mouse)を使用し 1 時間反応させた。T–PBS で洗浄後、ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジンを反応させる発色し、吸光度を測定した。各種濃度の正常ヒトIgG抗体をELISA 用プレートに固相化後、ビオチン標識抗ヒトIgG Fcと反応させ、 ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジンを反応させた後に発色し吸光度を求めた。得られた吸光度と正常ヒトIgG抗体の濃度で検量線を作成し、血清中の抗UBE2T抗体の濃度を測定した。

    Patients

    健常者65名、IPF患者23名、NSIP患者17名、膠原病肺(CVD)患者6名、サルコイドーシス(SAR)患者6名、過敏性肺炎(HP)患者3名の血清を用いた。

  • 結果4-1健常者及び各種間質性肺疾患群における血清抗UBE2T抗体濃度

    * : P

  • 結果4-4IPFにおける抗UBE2T抗体レベルと呼吸機能との関係

    0 500 1000 15000

    50

    100

    150

    Anti-UBE2T antibodies (ng/ml)0 500 1000 1500

    0

    50

    100

    150

    Anti-UBE2T antibodies (ng/ml)

    0 500 1000 15000

    50

    100

    150

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    250

    Anti-UBE2T antibodies (ng/ml)0 500 1000 1500

    0

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    250

    Anti-UBE2T antibodies (ng/ml)

  • 0.00 0.25 0.50 0.75 1.000.00

    0.25

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    1.00

    1 -Specificity

    Sens

    itivi

    ty

    0.00 0.25 0.50 0.75 1.000.00

    0.25

    0.50

    0.75

    1.00

    1 -Specificity

    KL-6AUC=0.504

    P=0.5221

    αUBE2T ab.

    IPF(n=40) vs non-IPF ILD(n=51)IPF(n=40) vs healthy control(n=57)

    AUC=0.874P

  • 結果のまとめ

    1.IPF患者の自己反応性蛋白をprotein array法及びmultiplex法を用いてスクリーニングし、自己抗体として抗UBE2T抗体を同定した。

    2.コントロール群及び各疾患群における抗UBE2T抗体を定量し、IPFで有意に上昇していることが確認された。

    3.IPF診断において、抗UBE2T抗体定量が有用である可能性がある。

    4.抗UBE2T抗体はIPFやf-NSIPにおいて%DLCO/VAとの相関が示唆される。

    5.UBE2Tが肺組織中に発現していることが確認された。

  • 血中の抗UBE2T抗体レベルは、特発性間質性肺炎(IPF)の診断や病態評価、治療効果判定のマーカーとなる可能性がある。

    血中の抗UBE2T抗体レベルの測定精度の向上が必要

    想定される用途

    実用化に向けた課題

  • 企業への期待

    •UBE2T抗体のエピトープの解析と、UBE2T抗体測定系の精度の向上

    •UBE2T抗体の測定キットの開発と保険収載

  • 本技術に関する知的財産権

    •発明の名称:間質性肺炎のバイオマーカー

    •出願番号 :特願2015-090323•出願人 :日本大学•発明者 :権 寧博 他

  • お問い合わせ先

    日本大学

    研究推進部 知財課

    コーディネーター 井上 典之

    TEL 03-5275 -8139

    FAX 03-5275 -8328

    e-mail [email protected]