1846

83.616. 51: 615. 732

大 ナ ル〓 及 ビ癰 ノ灰 白軟 膏 療 法 ニ就 テ

岡山醫科大學津田外科敎室(主 任津田敎授)

醫學士　 菅 龍 正

[昭和7年1月21日 受稿]

Aus der chirurgischen Klinik der Med. Universitat Okayama(Vorstand: Prof. Dr. S. Tsuda).

Uber die Behandlung grosserer Furunkel sowie Karbunkelmittels "Grauer Salbe".

Von

Tatsumasa Suga.

Eingegangen am 21. Januar 1932.

In der Behandlung grosserer Furunkel u. Karbunkel hat man bisher, oftmals gewisse

operative Eingriffe, dio zum grossen Teil unter die Grundsatze der Phlegmonenbehand-

lung fallen. Beim Furunkel sowie Karbunkel empfiehlt der Verfasser ein mehr konser-

vatives Verfahren, das im Bestreichen mit "Grauer Salbe", in feuchten, warmen Umsch-

lagen besteht.

Das Gazelappchen, dick mit "Grauer Salbe" bestrichen, wird auf den Entzundungs-

herd aufgelegt, worauf feuchte, warms Umschlage von 1% iger essigsaurer Tonerde bedeckt

wird. Nach wenigen Tagen kommt der Furunkel zur Erweichung und mehrere Eiter-

herds von Karbunkeln auch zu lokaler Verschmelzung, die dann einen subkutanen

Abszess bilden. Wenn der Abszess nach Abstossung der Eiterpfropfe den Eiter zu

entleeren beginnt, wird die Applikation der "Grauen Salbe" unterbrochen, u. die Wunde

mit Jodoformgaze bedeckt, wobei alle Nischen u. Buchten des Abszesses berucksichtigt

werden mussen, damit keine Eiterretention stattfindet. Hort die Eiterentleerung schliess

lich auf, so kann man die Trypaflavin- bzw. Rivanolgaze lokal applizieren.

Wahrend der Behandlung mit "Grauer Salbe", kommt bisweilen Dermatitis an

Wundrandern, Stomatitis, selten Albuminurie in Betracht, aber diese Nebenwirkungen

des Mittels konnen durch oftmaliges Gurgeln u. durch Einreibung mit Zinkolivenol ver

mieden werden.

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大 ナル 及ビ癰 ノ灰 白軟膏療法 ニ就テ　 1847

Es ist beachtenswert, dass durch diese Verfahren jede Art von Karbunkeln u. Furun

keln, selbst bosartige Gesichtskarbunkel ausgeheilt warden kann. Es ist sehr empfehlens

wert, diese Behandlung bei Frauen anzuwenden, die ihrem Gesicht grosse Sorgfalt

zuwenden.

Dieses erfolgreiche Resultat beruht zum Teil auf der gleichzeitig angewandten essig

sauren Tonerde, muss aber grosstenteils der Wirkung der "Grauen Salbe" zugeschrieben

werden.

Es ist wahrscheinlich, dass die "Graue Salbe" jedenfalls auf die Bakterien antitoxisch

sowie wachstumhemmend wirkt und eine gefahrliche Allgemeininfektion verhindert.

(Autoreferat)

目 次

第1章　 緒 言

第2章　 治驗例

第3章　 總括及ビ考案

第4章　 結 論

第1章　 緒 言

〓 及ビ癰 バ一般實地醫家ノ屡 屡遭遇スル疾患 ニシテ,簡 單ニ治癒 シ何等生命ニ危險 ナク經過

スルモノナレド,時 トシテ非常ニ惡化 シ一命 ヲタメニ失 フ例ア リ.殊 ニ顔面或 ハ項部ノ〓 及 ビ

癰 ニ於テ然 リトス.從 ツテ幾多 ノ學者ニヨリ研究サ レ,其 治療法實 ニ枚擧 ニ遑 アラズ.今 現今

行ハルル主ナル治療法ヲ述 ブレバ次 ノ如 シ.

切開法

切開法 ニハ穿 刺 切開,一 字 切開,十 字 切開及 ビ切

除法等 ア リテ之等 ノ何 レモ緊張 ヲ去 リ或 ハ壞疽組鐵

ノ除去 ヲ計 リ得 ル等 ノ點 ニ於 テ推奨 スル人多 多ア リ

ト雖 モ,〓 及 ビ癰 ヲ增惡 セ シムベキ機械 的刺戟 ヲ更

ニ之 ニ加 フル事 ハー考 ヲ要 スベキモ ノニシテ,況 ン

ヤ全身麻醉 ノ使 用,醜 キ瘢痕形成等 ノ短所 ア ルニ於

テ ヲヤ.

焼 灼 法

Franz Kochノ 施行ル セ方法ハ簡單 ニシテ而 モ效

果 卓拔ナ リト.局 所 ヲ清淨 ニシ沃度丁幾 ヲ塗布 シタ

ル後,壓 出スル コトヲ避 ケ,酒 精燈 ニテ燒灼 シタル

編針大 ノ消息子 ヲ〓 瘡 口ニ於テ數 囘6乃 至10mm

廣 サニ移 動セ シメ栓 塞 ヲ速 ニ壞疽 ニ陷 ラ シム.術 後

輕 ク「ガ ーゼ」ニテ蔽 フ.3,4日 ニテ快癒 ス ト云 ハル

レ ドモ 早 期 ニ行 ハ ザ レ バ 效 少 ナ キ コ ト.疼 痛 劇 シキ

コ ト等 ノ缺 點 ア リ.

一 般 軟 膏 療 法

主 トシテ 局 所 ノ軟 化 ヲ促 進 シ,自 然 排 膿 ヲ計 ル 目

的 ニ用 ヒ ラ ルル ヲ以 テ,種 種 ナ ル軟 膏 類 案 出 サ レタ

レ ド效 力 ニ至 ツテハ 大 同 小 異 ナ リ.近 時 小 腸 ノ消化

酵 素 ヲ含 有 ス ル軟 膏 ヲ作 成 シ〓 及 ビ癰 ニ用 ヒテ 效 ア

リ ト推 奨 ス ル 人 ア リ(Unna, Katz, Marcuse, Milmo

th, Knoch)嚮 キ ニPerlmann, Delbet等 ニ ヨ リ「マグ

ネ シウ ム」ハ 白 血球增 多 ヲ來 ス コ ト ヲ證 明 サ レ タ リ,

カ カ ル根 據 ヨ リ硫 酸「マ グ ネ シ ウ ム」ノ軟 膏 ヲ作 リ,

之 ヲ〓 及 ビ癰 ノ治療 ニ用 フル 方 法 ア レ ド特 別 ナ ル賞

讃 ヲ受 クル ニ至 ラズ.

濕 布 法

硫 酸「マ グネ シウ ム 」水 溶 液,2%硼 酸 水, 0.5又 ハ

65

1848　 菅 龍 正

1.0%醋 酸礬土水等使用 サルルモ,何 レモ〓 及 ビ癰 治

療 ノ補助劑 タルヲマ ヌカ レズ.

「レ ン トゲ ン」療 法

Heidenhain Friedニ ヨ リ初 メテ唱 ヘラレ タルモノ

ニシテ, 3mmノ 「アル ミニユウム」濾過板 ヲ以テ濾

過 シタル光線 ヲ1/3紅斑量迄照射 ス. Potterハ 「レ ン ト

ゲ ン」療法 ニヨ リ初期 ノ〓 ヲ頓挫的 ニ治癒 セ シメ,

又 發 育 セ シ〓 ノ疼 痛 ヲ緩 解 セ シムル 效 ア リ ト云 ヘ

リ.サ レ ドX線 ノコノ方面 ノ治療ハ未 ダ尚 ホ實驗 時

代 ノ域 ヲ脱 セズ今後 ノ開發 ニ待 ツベキモ ノ大 ナ リ ト

信ズ.

太 陽 燈 照射 療 法

之ハ紫外 線 ノ充血 ヲ起 サ シムル作用及 ビ血清中 ノ

抗菌 或ハ抗毒性物質 ノ分 泌 ヲ旺盛ナ ラシムル作用 ノ

2ツ ニ分 チ得.之 等兩作用ハ〓及 ビ癰 等 ノ局所傳染

性炎症 ニ對 シ好影響 アル モ ノト思惟 サル.サ レ ド〓

及 ビ癰 ニ於テハ局所 ノ強度 ノ照射 ヲ推奨 スル人 ア レ

バ(Bach及 ビ佐 藤太平氏),單 發性 ノ〓 及 ビ癰 ノ如

キモ ノニ對 シテハ寧 ロ熱線 ヲ多 量 ニ有 シ且光度 ヲ調

節 シ得 ル「ソラ ツクス」燈 ヲ以テ照射 スル ヲ一法 ナ リ

トス,

Bier氏 鬱 血療 法, Klapp氏 吸 引 法

前者 ハ四肢,後 者ハ躯幹 ニ行 フニ便 ナ リ.何 レモ

細 心 ナル注意 ト椙當ナル熟練 ヲ要 スルモノノ 如 ク,

誰人 ニモ直 ニ應用 シ難 シ.

自 家血 液療 法(Lawen).

之 ハ病竃 ノ周 圍 ニ自家血液 ヲ注射 スル法 ニ シテ,

之 ヲ以 テ炎症 ノ擴大 ヲ防 グ ト同時 ニ局所 ノ充血 ヲ起

サ シムル 目的 ニ行ハ レ其後1923 Lewis, 1925 F. Ru

szynski, 1927 Carp.等 ハ之 ヲ賞用セ リ.

又 コノ變 法 ニKuhn(1926)ノ 吸引法 ア リ.之 ハ〓

及 ビ周 圍組織 ニ十分 ナル出血 ヲ起 サ シム ル法 ニ シテ

吸引 スルニ用 フル眞 空ハ最初100乃 至200水 銀柱

次第 ニ400乃 至600水 銀柱 ニ迄增 加 ス.吸 引ハ1時

間半 ヨ リ4時 間 ニ及 ブ.

但 シ之等ハ 何 レモ非常 ナル疼痛 アル缺點 ア リ.

1923年Nicolasハ 自家血 液療 法 トテ成人 ニア リテ

ハ肘 靜脉 ヨリ10cc,小 兒 ニア リテハ2ccノ 血液 ヲ

採 リ,直 ニ腎筋 肉内 ニ注射スル法 ヲ行 ヘ リ.之 ハ身

體 内ニ抗體 ヲ作 ルタメナ リ.サ レ ド之ハ2, 3日 毎 ニ

反覆 シ再發 豫防 ノタメニ治癒後 ニモ尚ホ3乃 至4囘

在射 ヲ行 ハザルベカ ラズ.且 時 トシテ發熱脊椎 痛,

輕度 ナ レ ド關 節痛 ノ發生スル コ トア リ.

「ア ン チ ビー ル ス」療 法

葡萄状球菌 「ア ンチ ビールス」或 ハ連鎖状球菌「ア

ンチ ビールス」ヲ「ガー ゼ」ニ浸 シ局所 ヲ濕布 シ又 ハ

「タンボ ン」トナス.コ ノ療法 ハ今尚 ホ賛否相半 セル

ノ状態 ナ リ.

Arnica montanaニ ヨル 療 法

最近W. GerlachハArnica montanaト 稱 スル藥

草 ヨ リ製 シタル液 ヲ癰 療法 ニ用 ヒテ效 アル コ トヲ報

告 セ リ.コ ノ方法ハ反 應ヲ起 シ得ル最少量即 チ1.0cc

ヲ炎症部 ノ最外界 ヨ リ約3横 指 離 レタル健康 ナル部

ニ於 ケル皮 下ニ注射ス.之 ヲアル間隔 ヲオキ注射 シ

(普通24時 間 ヲオキテ)反 應ガナ クナ リ次 ノ注射 ヲ

行 フ.普通2乃 至3囘 ニテ腫脹 ノ周圍 ガ發赤 ス.之 ヲ

4乃 至6囘 モ反覆 スルコ トニヨ リ完全ナ ル軟化 ヲ示

シ治癒 機轉 ヲ促進 セ シメ得 タ リト稱 ス(之 ハArnica

montanaノ 血管毛細管 ニ藥物 的充血 ヲ起サ シムル タ

メナ リト説明 セ リ.)サ レド第1ノ 注 射後數分 間モ燒

熱感 ア リ,且2, 3時 間經過 シタル後 ヨリ劇烈 ナル疼

痛 ヲ招來 シ其夜 ハ疼痛 ノタメ麻醉劑 ヲ要 スル程 ナ リ

又 時 トシテ軟化 シ膿瘍 形成後刺穿切開 ヲ行 ハザルベ

カ ラザル コ トア リ.

以上ハ從 來ノ〓 及ビ癰 ノ治療方針 ノ大要 ヲ述ベ シモノナ リ.カ クノ如ク幾多ノ治療法案出セ

ラ レタ リシニ拘 ラズ未ダ總テ隔靴〓痒ノ感ナキ能 ハズ.

66

大 ナル〓 及ビ癬 ノ灰 白軟膏療法 ニ就 テ　 1849

1926 Junkermann次 イデZechlinハ 灰白軟膏ノ〓及 ビ癰 ニ效果 アル コトヲ報告セリ.コ ノ

方法ハ331/3%水 銀含有局方軟膏 ヲ厚ク充分ニ罹患部 ニ塗 リ,其 上ニ0.5%或 ハ1.0%醋 酸礬土

水ノ温濕布ヲ行フ.

津田外科敎室 ニ於 テモ亦過 去數箇年以來,入 院外來 ノ幾多 ノ〓 及 ビ癰患者 ニコノ灰白軟膏,

醋酸礬土水温濕布併用療法ヲ行 ヒ良好ナル結果 ヲ得タ リ.殊 ニ從來大ナル〓 及ビ癰 ハ觀血的療

法 ノ行ハルルヲ常 トシ,顔 面或 ハ項部ニ於ケルモノニテハ不幸 ノ轉歸ヲ トリシ場合少 シトセザ

リキ.然 ルニ本療法 ヲ行 フニ至 リテ局所 ニハ何等疼痛ヲ及ボスコ トナク,而 モ治療期間ノ短縮

竝 ニ甚 ダ優秀ナル治療成績 ヲ擧 ゲ得タレバ爰ニ報告シ諸賢 ノ御批判 ヲ乞 ハトス.

第2章　 治 驗 例

例1 (第1表)

患者　 土○ タ○ ♀ 24歳 農

入院　 昭和2年3月24日

家族 歴及 ビ既往病歴　 特記 スベキモ ノナ シ.

現病歴　 1週 間前左外鼻 孔部直 下 ノ口唇 ニ粟粒 大

ノ無痛性 ノ結節 ヲ生 ジ2日 後 ニ自然ニ消失 シタ リシ

ガ其 ノ翌 日 ヨ リ口唇左半腫 脹 シ,體 温上昇 セル如 シ.

更 ニ2日 後右半 部腫脹 シ疼 痛及 ビ頭痛 ヲ訴 フ,漸 次

腫脹增 加 シ今 日ニ至 ル.

主訴　 上口唇 腫脹

現症　 (昭 和2年3月24日 現在)

全 身症状　 皮膚待 ニ顔面稍 々乾燥 シ,顔 貌稍 々憔

悴 セ リ.脉 搏規則的,緊 張良 ナ レ ド少 シク頻 數ナ リ.

心濁音界正常 ニシテ心音純.肺 ニ著變 ナ シ.

尿　 黄色透 明,中 性,比 重1020,蛋 白少量認 ム レ

ド糖ハ之 ヲ證 セズ.

糞　 消化普通,蟲 卵 潜血ナ シ.

局所症状　 上 口唇 ハ宛 モ束状 ニ發赤腫脹 シ唇紅 ニ

於 テ多數 ノ小膿疹 又ハ小 痂皮 ヲ生 ズ.硬 結顯 著ナ リ

更 ニ左鼻唇溝 及 ビ右 口角 ヨ リ下顎角 ニ亙 リ發 赤セ リ

左下 眼瞼 ハ少 シク浮腫 状ニ腫脹 セ リ.頤 下淋 巴線 ハ

2, 3扁 豆大 ニ腫 脹 シ,右 顎下腺輕度 ノ腫脹 ア リ.項

強直 ナシ.

膿　 連鎖状球菌 ヲ證 明ス.

診斷　 上 口唇癰.

治療及 ビ經過

24/Ⅲ　 灰 白軟膏,濕 布,「 スペチ ヨー ド」注射,

安 靜,流 動食.

26/Ⅲ　 腫脹部 ノ各所 ヨ リ膿栓 トレ相當 量 ノ排膿

67

1850　 菅 龍 正

ア リ.從 ツテ體 温下降.灰 白軟膏,濕 布,「 スベチ

ヨー ド」注射.

28/Ⅲ　腫脹甚 ダ縮少.

1/Ⅳ　 灰白軟膏塗布 中止 シ,濕 布 ノ ミトス.

3/Ⅳ　 快癒.

1)　 合併症1/Ⅳ 左 上腿 部 ノ筋 炎 ヲ併發 ス.

2)　 治療 中蛋白尿 ノ增加 ノ證 ナ シ.

例2 (第2表)

患 者　 向○ 香 ♀ 28歳 農

入 院　 昭和2年8月6日

家族歴 及 ビ既往病歴　 特記 スベキモ ノナ シ.

現病歴　 3日 前下顎隅角 部 ニ腫 脹及 ビ疼痛 ア リ,

次 第 ニ其症状惡化 シ,昨 日其腫脹 上ニ膿疹 ヲ生 ジ,

惡寒戰 慄 ト共 ニ發熱39.°0C以 上 ニ及 ブ.

食慾 不振　 便通秘結 ニ傾 ク.

主訴　 右耳下腺部腫脹

現症　 (昭 和2年8月6日 現 在)

全身 症状　 顔貌憔 悴 シ苦惱 ノ觀 ア リ.體 温39.°5C

脉搏規則 的,緊 張良 ナ レド頻數 ナ リ.心 濁音界正常,

心動作 亢進 肺 ニ著變 ナシ.意 識 ハ明瞭ナ リキ.

尿及 ビ糞　 著變 ナ シ.

局所症状　 右 顎下隅角 ニ手掌大 ニ發赤 セル腫脹 ア

リ.多 數 ノ膿疹 ヲ其上 ニ生 ゼ リ.壓 痛甚 ダ シ.口 腔

粘膜及 ビ舌 ニ白苔 ヲ認 メズ.

膿　 葡萄状球 菌 ヲ認 ム.

例3

患 者　 坂○壽○ ♀ 35歳 無職

入院　 昭和2年11月5日

診斷　 右下顎隅角 部癰

治療及 ビ經過

6/ⅤⅢ　 安靜,流 動食,灰 白軟膏,濕 布,「 トリパ

フラビ ン」注射.

7/ⅤⅢ　 全 身状態 不良,體 温39.°5C,「スベ チヨー

ド」及 ビ「コラ ミン」注射.

8/ⅤⅢ　 灰白軟膏塗布2囘 行 フ.脉 榑規 則的 ニテ

緊 張良 ナ レド稍々 頻數.肺 左後 下部打診音 ヤヤ短 シ,

呼 吸昔弱 シ.肺 炎 ノ徴ア リ.「メ ンサ ール」塗布.

9/ⅤⅢ　 膿栓 脱 出 シ始 ム,相 當量 ノ排膿 ア リ.全

身 状態稍々 囘復 ス.

11/ⅤⅢ　 膿栓 ハ殆 ド脱 出シ殆 ド排膿 サル.體 温下

降.

18/ⅤⅢ　 快癒.

1)　 合併 症 肺炎.

2)　 治療 中蛋白尿 ノ現出ナ シ .

家族歴,既 往病歴　 特記 スベキモノナシ.

現病歴　 31/Ⅹ夕 方 右 觀 骨部 ニ膿疹生 ゼ シヲ以 テ

68

大 ナル〓 及ビ癰 ノ灰 白軟膏 療法 ニ就テ　 1851

(第3表)

患 者自身 之 ヲ壓 シツブセ リ.然 ルニ共後其周圍 ニ疼

痛 ヲ訴 ヘ次第 ニ發赤 シ熱感 サ ヘ覺 ユルニ至 ル.體 温

稍 々上昇 セ ル感ア リキ ト.昨 日ヨ リ腫脹殊 ニ甚 ダシ

ト.

食慾 中等度　 便通稍 々秘結 ニ傾 ク.

主 訴　 右顴骨 部腫 脹.

現 症　(昭 和2年11月5日 現 在)

全 身症 状　體 温38.°0C,脉 搏緊張,規 則的頻 數ナ

リ.心 音純,稍々 心働 作亢進,肺 著變 ナシ.

尿,糞 便　異常 ナ シ.

局所症状　 右 側顴骨 部 ヨ リ眼裂 ニ向 ツテ汎發性 ニ

發赤 シツ ツ中央 ヨ リ外 上方 ニ於テ2銭 銅貨大 ノ扁平

ニ シテ殊 ニ發赤 セル腫脹 ヲ認ム.其 中央 ト思惟サ ル

ル部ニ小膿疹 ヲ形成 ス.硬 結判然 タリ壓痛甚 ダシ.

右眼瞼ハ浮腫状 ニ腫脹 シ眼裂 ハ爲 メニ閉鎖 ス. 2, 3

ノ右側顎下淋巴腺腫脹 シ壓痛 ア リ.肘,鎖 骨下,腋

例4

患者　 山○桂○郎 ♂ 64歳 農

入院　 昭和3年5月11日

家族歴,既 往病歴　 特記 スベキモ ノナ シ.

現病歴　 約1週 間以前 ニ左 ノ顱頂 部ニ疼痛性小腫

脹 ヲヲ生 ゼ リ.2日 後 アル醫 師 ヲ訪 問 シ,〓 トノ診

斷 ノ下 ニ切開手術 ヲ受 ケタリ.タ メニ體 温稍々下降

ス レ ド疼痛 ハトレズ却 ツテ 日ニ日ニ增大 セ リ.食 慾

下淋 巴線ハ之 ヲ觸 レズ.

膿　 葡萄状球 菌

診 斷　顔 面〓.

治療 及 ビ經過

5/ⅩⅠ　安 靜,流 動食,灰 白軟 膏,濕 布.

8/ⅩⅠ　膿瘍限 局性 トナ リ相當量排膿 ア リ.

10/ⅩⅠ　周 リノ浮腫甚 ダ減少 シ,排 膿 相當 ア リ.一

般状態良.體 温37.°0Cニ 下降.食 慾良.

11/ⅩⅠ　大 量 ノ膿排 出サ レタ レパ灰白軟膏塗布 中止

シ,「 トリバ フラ ビンガー ゼ」 ノ「タ ンボ ン」ヲナセ

リ.

16/ⅩⅠ　膿 汁瀦溜 ヲ認 メズ.

22/ⅩⅠ　治癒退 院ス.

1)　 合併症 ナ シ.

2)　 治療 中蛋白尿 ノ出現 ナシ.

良,便 通秘結 ニ傾 ク.睡 眠安靜.

主訴　左 顱頂部疼痛性腫脹.

現症　(昭 和3年5月11日 現在)

全身症状　 顔貌稍々 憔悴 セ リ.兩 側 頸共 ニ2, 3豌

豆大淋巴腺腫脹 ヲ認 ム.上 下鎖骨窩淋 巴腺 ハ之 ヲ觸

レズ肺,心 共 ニ著變 ナ シ.

尿　 黄 色不透明,比 重1010,酸 性,蛋 白及 ビ糖 共

69

1852　 菅 龍 正

ニ陽 性.

糞便　 變 ナ シ.

局 所症状　 左顱 頂部ハ 汎發 性 ニ腫 脹 シ其中央 ニ約

1錢 銅貨大 ノ不潔 ナル壞 疽性 トナレル 組織塊 ヲ以 テ

オ ホハ レ タル潰瘍 ア リ.息 消子ハ骨部 ニマデ達 ス.

周圍 ノ硬結 甚ダ シ.

膿　 葡萄 状球 菌 ヲ證明 ス.

診 斷　 左顱 頂部癰.

治療及 ビ經過

11/Ⅴ　體温37.℃,全 身状態良.

灰白軟膏濕布併用療 法 「エ タイノキシー

ル」 内 服.

14/Ⅴ　 相 當 量 ノ膿 汁 排 出 ア リ.

22/Ⅴ　 コ ノ日 マ デ毎 日相 當 壓 ノ膿 汁 排 出 ア リ.「リ

バ ノ ー ル ガー ゼ タ ンボ ン」ヲ行 フ.灰 白 軟 膏 中止.

26/Ⅴ　 膿 汁 ヲ出 シ「リバ ノ ー ル」溶 液 ニテ 洗 滌 ス.

30/Ⅴ　 排 膿 量 甚 ダ 減少 ス.

6/Ⅵ　 コ ノ 日 ヨ リ太 陽 燈 照 射 ヲ行 フ.

9/Ⅵ　 治 癒 シ退 院 ス.

1)　 合 併 症 ナ シ.

2)　 治 療 中 蛋 白 尿 ノ增 加 ヲ見 ズ.

例5 (第4表)

患者　 千○ち○ ♀ 35歳 無職

入院　 昭和3年2月28日

家族歴,既 往病歴　 特記 スベキモ ノナ シ.

現 病歴　 2月13日 頃背部 ニテ 左腋窩 ニ近 キ部 ニ

座瘡生 ジ〓痒性ナ リシタメ掻爬 ス.20日 頃 ニ至 リ其

部 ニ膿疹 生ゼ シヲ以テ壓 シツブス,其 夜 ヨ リ突然輕

度 ノ惡寒及 ビ疼 痛 ヲ覺 ユ.21日 アル醫 師 ニヨ リ小切

開及 ビ軟 膏療法 ヲ受 ケシモ却 ツテ次第 ニ發熱 シ腫 脹

モ增大 セ リ.惡 寒 ト共 ニ發熱39.°5C.

食慾 不振　 睡眠障害,便 通1日1囘.

主訴　 背部腫脹.

現症　(昭 和3年2月28日 現在)

全身症状　皮膚ハ正常ニシテ乾燥セズ.

體温38.°5C,顔 貌 普通,舌 苔 僅少.顎 下淋 巴腺 兩側

2, 3豌 豆大,脉 搏稍々 頻 數,緊 張普通,心 音 純,肺

尖 ニ於テ呼吸音強 シ.

尿　 淡褐色稍々 溷濁,比 重1024,反 應酸性,蛋 白

弱陽性,糖 ハ之 ヲ證 セズ.

糞便　 消化普通,蟲 卵,潜 血ナ シ.

局所症 状　背 部ニ於 テ脊柱 ヨ リ左側 ニ手掌大以上

ノ腫 脹ア リ.皮 膚 ハ發赤 シ多 クノ膿 疹形成,局 所熱

感 及 ビ劇 シキ壓痛ア リ,共 周 圍 ハ特 ニ下部 ニ於テ硬

結甚ダ シ.

膿　 葡萄状球菌 ヲ認 ム.

診斷　 背部癰.

治療及 ビ經過

70

大ナル〓及ビ癰ノ灰白軟膏療法ニ就テ　 1853

28/Ⅱ　安靜,灰 白軟 膏濕布法.夜 ハ疼痛 ノタ メ睡

眠障碍 サル.

29/Ⅱ　排膿 ア リ疼痛 稍々 減少ス.

1/Ⅲ　 輕 ク周圍 ヲ壓 シ膿 ヲ出 シ「リバノー ル」溶液

ニテ洗滌 セ リ.灰 白軟膏濕布 注.睡 眠 ハ稍々 安靜 ト

ナレ リ.

2/Ⅲ 大量 ノ排膿,中 央 ハ 「リバ ノール ガーゼタ

例6

患 者　吉 ○梅○ 郎 ♂ 80歳 農

入院　 昭和3年6月4日

家族歴　 特記 スベキ モノナシ.

既 往病歴　 30歳 頃項 部癰 ニ罹患 シ膏藥 ニテ約1箇

月 ニテ治癒 セ シメ得 タリ.50歳 左大腿 ニ癰 ヲ生 ジ之

モ軟膏療 法 ニテ3箇 月 ニテ治癒 セ リ.

現病歴　 約10日 前 項 部 ニ小ナル多數 ノ丘疹 ヲ生

ジソレガ數 日ニシテ膿 疹 トナ レ リ.且 周圍 ハ汎發性

ニ發赤 シ小 手掌大 ノ硬結 ヲ生 ジ疼痛劇 シ.

主訴　 項 部腫 脹.

現症　(昭 和3年6月4日 現在)

一 般症状　 顔貌普通,舌 白苔 ア リ.咽 頭發赤 ス.

兩側頸淋巴腺豌豆大2, 3,左 顎下淋 巴腺豌豆大1箇

觸 ル.脉 搏,心 臓 ニ著變 ナシ.肺 呼吸音一般 ニ弱 シ.

尿,糞 便　 異常ナ シ.

局所症状　 項部 ノ中央 ヨ リ稍々 左側 ニ亙 リテ鷄卵

大 以 上ノ發赤腫脹 ア リ.上 ニ數箇 ノ膿栓 ヲ認 ム.比

較的 高度 ノ硬結 ア リ.疼 痛甚 ダシ.

膿　 葡萄 状球 菌 ヲ詔 ム.

例7

患者　丸○秀 ○ ♀ 30歳 無職

入院　 昭和3年6月11日

家族歴,既 往病歴　 特 記ス ベキ モノナ シ.

現病歴　 4/Ⅵ　 左膝 下部 ヲ蚊 ニ刺サ レ〓痒 ア リシ

タメ掻 ク.多 少其 後疼 痛ハ ア リキ.然 ル ニ7日 朝同

部腫脹 シ,9日 ニ至 リ疼痛劇 シク,惡 寒 サ ヘ催 シタ

ンボ ン」ヲナス.周 圍 ハ灰 白軟膏療法 ヲ行 フ.

4/Ⅲ　 大量排膿,「 トリバ フラビ ン」5ccヲ 靜脉 内

ニ注射セ リ.

5/Ⅲ　 全ク平熱,コ ノ日ヨ リ太陽燈 照射 ヲ行 フ.

13/Ⅲ　快癒退 院.

1)　 合併 症 ナ シ.

2)　 治療 中蛋白尿 ノ增加 ヲ見 ズ.

診 斷　項 部癰.

治療 及 ビ經過

5/Ⅵ　 安靜,灰 白軟膏 濕布併用療法.

7/Ⅵ　 疼痛 減少.治 療 前同樣.

8/Ⅵ　 灰 白軟膏濕布法 ニ更 ニ「ソラ ツクス」燈 照射

ヲモ行 フ.

12/Ⅵ　 治療ハ更 ニ「トリバ フラビ ン」注射 ヲモ併用

ス.

14/Ⅵ　 膿 栓 一 部 取 出 ス.

15/Ⅵ　 排 膿 シ「リバ ノ ール」洗 滌 ヲ行 フ.腫 脹 減 少

ス.

16/Ⅵ　 膿栓又一 部取 リ,「 リバノール」液 ヲ以 テ洗

滌ス.尚 ホ他 部ハ灰 白軟膏温濕布 法ヲ續 タ.加 フル

ニ「トリバ フラビン」靜脉 内注射,「 ソラ ツクス」燈照

射 ヲナス.

19/Ⅵ　 膿栓 全部脱出 セル,灰 白軟膏塗布中 止ス.

22/Ⅵ　 治癒退院.

1)　 合併症 ナ シ.

2)　 治療 中蛋白尿 ノ出現ナ シ.

リ.局 所 ノ發 赤甚ダ シキタメ地方醫 ノ治療 ヲ受 ケシ

モ快 方 ニ向ハズ.

主訴　 左 膝下部 ノ腫脹 及 ビ疼痛.

現症　 (昭 和3年6月11日 現在)

全 身症状　 顔貌稍々苦 惱状.貧 血 ナ シ.脉 搏稍 々

頻數,心 臟 ニ著變 ナ シ.又 肺著變 ナ シ.體 温40.°0C.

71

1854　 菅 龍 正

(第5表)

食 慾減退,便 通秘結 性,睡 眠障碍 サル.

尿　 濃黄褐色 溷濁,比 重1026,反 應酸性,蛋 白中

等度陽性糖ハ陰性.

糞 便　 異常 ナ シ.

局所症状　 左膝下部 ニ手 掌大 ノ發赤セル扁平腫脹

ア リ.疼 痛劇 シ.之 ヨ リ下腿 ノ外 側 ニ沿ヒ赤色帶 ア

リ.膝 運動稍 々障碍 サル.

膿　 葡萄 状球菌.

診 斷　 左下腿 ニ於 ケル〓 及 ビ蜂窩織炎.

治 療及 ビ經過

11/Ⅵ　灰 白軟 膏温濕布法.發 熱39.°8C,氣 分惡 シ.

「ト リバ フラビ ン」靜脉 内注射 ヲナシ,「エ タイ ノキ

例8

患者　 大○夏○郎 ♂ 55歳 官 吏

入 院　 昭和3年8月14日

家族歴,既 往病歴　 特記 スベキモ ノナ シ.

現 病歴　 6月10日 頃肛門周圍 部癰 ニ罹患 シ,約30

日 ニシテ治 療 セリ.約1週 間前 ヨリ右上 腿 ノ内側 ニ

小膿疹 ヲ生 ジ次第 ニ增大 シ疼痛劇 シ.

主訴　 右 上腿部腫脹.

現 症　(昭 和3年8月14日 現在)

一般症状　 體 温37.°5C,脉 搏,呼 吸ニ 異常 ナ シ.

尿,糞 便 ニモ異 常 ナシ.

局 所症 状　 右上腿 ノ内後側,中 央 部 ヲ中心 トシテ

シイ ール」 ヲ内 服 セ シム.

12/Ⅵ　 膿 栓 ト レ膿 排 ア リ.患 者 ハ 氣 分 ヨ シ ト.體

温37.°7C,

13/Ⅵ　膿 汁相當 量排出サル.

14/Ⅵ　周圍 ノ發赤 全 ク消失.灰 白軟膏塗布 中止.

濕布 ノミ トス.「 リバ ノール」洗 滌 ヲ行 フ.

16/Ⅵ　分 泌物甚 ダ減少 ス.

18/Ⅵ　膿 潴溜殆 ドナ シ.

19/Ⅵ　快癒 退院.

1)　 合併 症 ナ シ.

2)　 治療 中蛋白尿 ノ增加 ヲ見 ズ.

手掌大 ノ腫 脹 ア リ.發 赤 シ硬結甚 ダ シ.其 中央部 ニ

ー ツノ膿疹 ア リ.壓 痛劇 シ.

膿　 不明.

診斷　 右 上腿部〓.

治療 及 ビ經過

14/ⅤⅢ　 灰白軟膏温濕布法.

15/ⅤⅢ　膿栓 トレ膿排出相當 ア リ.

17/ⅤⅢ　相當 量 ノ排膿 アリ.

20/ⅤⅢ　膿 汁瀦溜殆 トナ シ.

21/ⅤⅢ　灰 白軟膏 塗布 中止 ス.

22/ⅤⅢ　 甚 ダ快癒 シ退院 セ リ.

72

大ナル〓及ビ癰ノ灰白軟膏療法ニ就テ　 1855

1)　 合併症 ナ シ. 2)　 治療 中蛋 白尿 ノ出現ナ シ.

例9 (第6表)

患者　 大○ ミ○ ♀ 50歳 商

入院　 昭和4年4月22日

家族歴　 特筆 スベキモ ノナ シ.

既往病歴 生　來 強健 ナラズ.今 ヨ リ約20年 前項

部癰 ニ罹患セル コ トア リ.

現病歴　 本月5日 頃右腰部 ニ座瘡 ノ如 キモ ノヲ生

ジ,〓 痒 性ナ リシヲ以テ掻爬 シ居 ル中次第 ニ增大 シ

疼痛甚 ダ シク,12日 頃 ヨ リ發熱38°.0C,就 床 スル ニ

至 ル.爾 來 アル督 師 ノ治療 ヲウ ケシガ快方 ニ向ハズ.

主訴　 背部腫脹.

現症　(昭 和4年4月22日 現 在)

全 身症状　 顔貌 苦惱状,脉 搏頻 數,心 働作 亢進,

心濁 音界 正常,肺 呼吸音一般 ニ弱 シ.

食慾 不振,便 通秘結,尿,糞 異常ナ シ.

局所症状　 本腰 部ニ手 掌大 以上 ノ發 赤セル腫脹 ア

リ.其 中心 ハ潰瘍性 ニナ リ膿苔 ニテ蔽 ハル.其 周圍

例10

患者　 岩○俊○ ♂ 19歳 大工

入院　 昭和5年7月25日

家族歴　 特 記ス ベキ モノナシ.

既往 病歴　 13歳 ノ時右肘關節部 ニ外傷 ヲ受 ケ,其

後 ニ瘻 孔殘 リ難 治 ニシテ現在尚 ホ殘 存 シ少量 ノ膿 ヲ

出 ス.

ニ多數 ノ點状 ノ膿疹 ア リ.

膿　 葡萄 状球菌 ヲ證ス.

診 斷　背 部癰.

治療 及ビ經過

22/Ⅳ　發熱39.°0C,中 央 ノ潰瘍部ハ沃度 「ホルム

ガ ーゼ タ ンボ ン」 ヲ當テ,周 リハ灰 白軟膏塗布 温濕

布 ヲ行 フ.

23/Ⅳ　同樣 ニ治療 ス.

25/Ⅳ　排膿相 當ア リ.腫 脹減少.熱 下降.治 療同

樣.

26/Ⅳ　膿殆 ド排出 サル,灰 白軟 膏中止.

30/Ⅳ　排膿殆 ドナ シ.「 ト リバ フラビンガ ーゼ」ニ

テ オホ フ.

10/Ⅴ　治癒 退院.

1)　 合併症 ナ シ.

2)　 治療 中蛋白尿 ノ出現 ナシ.

現病歴　 一 昨 日ヨ リ鼻脊 ニ座瘡樣 ノモ ノ生 ジ ソレ

ヲ掻爬 シタ リ.漸 次 ニ鼻脊 ノ發赤腫 脹,疼 痛 ヲ來 シ

昨夕 頃惡 寒 ト共 ニ發熱39.°0Cニ 達 ス.

主訴　 鼻脊 ノ發赤腫 脹及 ビ高熱.

現症　 (昭和5年7月25日 現在)

全身症状　 發 熱39.°5C,呼 吸安靜,脉 搏稍 々頻數,

73

1856　 菅 龍 正

(第7表)

睡 眠障碍 ナシ.食 慾 不振.尿,糞 便 ニ異常 ナ シ.

局所症状　 鼻 脊ハ發赤腫脹 シ鼻尖 ヨリ鼻 翼ニ亙 ツ

テ強 ク發赤 シ皮膚 ハ緊張 シ光澤 ア リ.

膿　 葡萄 状球菌 ヲ認 ム.

診斷　 鼻 尖部癰.

治療 及 ビ經過

25/Ⅵ Ⅰ　發 熱39.°5C,安 靜,灰 白軟 膏濕布 法.「 ト

リバ フラビ ン」靜脉 内注射.

26/Ⅵ Ⅰ　高 熱 ア リ.額 ヨ リ兩眼瞼 ニ亙 リ浮腫 状腫

脹,鼻 脊 ヨリ排膿 ア リ.「 トリバフラビ ン」靜脉 内注

射,軟 膏塗布2囘.

28/Ⅵ Ⅰ　稍 々下 熱,上 記浮腫状腫 脹ハ稍々 減退 ス.

鼻脊 ニ多 クノ小潰瘍形成サ ル.治 療 ハ同 樣.

30/Ⅵ Ⅰ　膿栓 殆 ド脱出.殆 ド平熱.

1/ⅤⅢ　 浮腫,膿 栓 全部消失,灰 白軟膏塗 布中止

ス.

4/ⅤⅢ　 鼻 脊 ハ全快 ス.サ レド左上腿部筋炎 ヲ併

發 セ リ.

30/ⅤⅢ　 退 院.

1)　 合併 症　左 上腿部筋炎.

2)　 治療中蛋白尿 ノ現出 ナ シ.

例11 (第8表)

患者　笹 ○良 ○ ♂ 42歳 商

入院　 昭和5年8月25日

家 族歴,既 往病歴　 特記 スベキ コ トナ シ.

現病歴　 本月15日 頃 ヨ リ項部 ニ小膿疹 ヲ生 ジ,更

ニ21日 頃 ニ至 リ其周圍 ニ再 ビ膿疹 ヲ形成 セ リ.夫等

ハ次第 ニ互 ニ癒合 シ周 リニ發赤 セル硬結 ヲ生 ジ益々

74

大 ナル〓及 ビ癰 ノ灰 白軟膏療法 ニ就テ　 1857

増大 セ リ.22日 タ 方頃 ヨ リ劇 シキ疼痛 及 ビ高熱 ヲ發

セ リ.ア ル醫師 ノ治療 ヲ受 ケ シモ治癒 セズ.

主 訴　疼 痛性項部腫脹.

現 症　(昭 和5年8月25日 現在)

全 身症状　 脉搏稍々 頻數,心 ニ著變 ナシ.肺 至 ル

處「バ イフエ ン」ヲ聞 ク.食 慾不振,睡 眠ハ障碍サ ル.

尿,糞 便　 異常 ナ シ.

局 所症状　 項部 ニ於 テ上 ハ外後 頭骨突起 ヨ リ下ハ

第2胸 椎 骨 ノ棘状突起 及 ビ兩側ハ耳翼後部 ニ至 ル大

ナル發赤 セル硬結 ア リ.劇 シキ壓 痛.中 央 ニ2箇 潰

瘍 ア リ,膿 汁排出 セ リ.中 央 ノ瘻 孔ハ2cm深 部 ニ達

ス.

膿　 葡萄 状球菌 ヲ認 ム.

診 斷　項 部癰.

治療及 ビ經過

25/ⅤⅢ　 中央 瘻孔 ニ輕 ク「沃度 ホルム タンボ ン」ヲ

ナス.周 圍ハ灰 白軟膏濕布 法.

26/ⅤⅢ　 更 ニ「トリバ フラビ ン」注射及 ビ赤色「ソ

ラツクス」燈照射30cm距 離 ニテ20分 行 フ(抵 抗2

トス).

27/ⅤⅢ　 發赤下方 ニ擴大 ス.膿 汁排出相 當量 ア リ.

「ト リバ フラビ ン」5.0cc靜 脉 内注射.(以 後毎 日)「ソ

ラツクス」燈照射30cm25分.

例12

患者　 井○ ケ○ ♂ 63歳 無職

入院　 昭和6年5月7日

家族歴　 特筆 スベキ コ トナ シ.

既往症歴　 屡屡 〓 ニ罹患 セ リ ト.

現病歴　 約2週 間前 ニ右 側頸部 ニ炎 症性腫脹 生 ジ

次第 ニ擴大 シ1昨 日頃 ヨリ輕度 ノ發 熱感,局 所 ノ疼

痛 アル ニ至ル.

主訴　 右側頸部炎症性腫脹.

現症　(昭 和6年5月7日 現 在)

全 身症状　 皮膚乾燥 セズ,舌 乾燥 ス,但 シ苔 ナ シ.

28/ⅤⅢ　 「ソラ ツクス」燈照射30cm30分.

29/ⅤⅢ　 多數膿栓脱出 ス.多 量 ノ膿 汁出 ヅ.但 シ

右半分 ナ リ.

「ソラ ツクス」燈照射30cm30分.

顎 強直 ヲ發 症ス.

30/ⅤⅢ　左半 ハ尚 ホ硬結 強 ジ,疼 痛劇 シ.「ソラツ

クス」燈 照射30cm30分.

1/Ⅸ　 右半 ハ快方,「 リバノールガーゼ」,左 半 モ

軟化 ノ傾 向ア リ,灰 白軟膏濕布.

2/Ⅸ　 平 熱,食 慾可良,項 部疼痛 消失,「 ト リバ フ

ラビ ン」注射 中止.

左半 分 モ膿栓 脱出 ス.灰 白軟膏塗布.顎 強直 モ快

癒.

「ソラツクス」燈 照射30cm30分.

4/Ⅸ　 膿 殆 ド出ズ.灰 白軟膏塗布中止 シ,濕 布 ノ

ミトス.

無色「ソラ ツクス」燈照 射30cm30分.

5/Ⅸ　 無 色「ソラ ツクス」燈照 射30cm30分(抵 抗

3ト ナス).

22/Ⅸ　治癒退院.

1)　 合併症 ナ シ.

2)　 治療中蛋白尿 ノ出現 ナ シ.

心 音純心濁音界通常肺呼吸音 一般 ニ弱 シ.睡 眠障碍

サレ,食 慾 不振 ナ リ.便 通 ハ秘結 ニ傾 ク.

尿　 黄褐色溷濁,比 重1020,反 應酸性蛋 白(+)

糖(-)

糞　 異常 ナ シ.

局 所症状　 右側頸部 ニ於後下顎隅角 部 ヨ リ後頭 部

毛髪 部界 ニ至ル間,發 赤性汎發性腫脹 ア リ.其 中央

ニ2錢 銅貨大以上 ノ潰瘍部 ア リ.周 リニ多 數 ノ點 状

膿疹 アリ,更 ニ周 圍ハ硬結 トナ リ壓痛劇 シ.

膿　 葡萄 状球 菌 ヲ認 ム.

75

1858　 菅 龍 正

診 斷　 右 側 頸 部 癰

治 療 及 ビ經過

7/Ⅴ　 灰 白 軟 膏 濕 布 法.

8/Ⅴ　 膿 栓 脱 出 シ始 ム.從 ツテ 腫 脹 稍 々軟 化 ノ傾

向 ア リ.

9/Ⅴ　 「ソ ラ ツク ス」燈 照 射15′30cmヲ 併 用 ス.

10/Ⅴ　 「ソラ ツク ス」燈 照 射15′30cm

11/Ⅴ　 膿 栓 又2, 3脱 出 ス.

「ソ ラ ツ ク ス」燈 照 射15′30cm

12/Ⅴ　膿栓 全部脱出,灰 白軟膏塗布 中止,「沃度ホ

ル ム ガ ー ゼ ダ ンボ ン」ヲナ ス.

13/Ⅴ　 肉 芽 發 生 稍 々 惡 シ.

15/Ⅴ　 肉 茅 發 生良 化.「 ト リバ フラ ビ ンガ ー ゼ」ニ

テ 蔽 フ.

17/Ⅴ　 甚 ダ 快癒 退 院.

1)　 合 併 症 ナ シ.

2)　 治 療 中 蛋 白尿 ノ增 加 ヲ見 ズ.

第3章　 總 括 及 ビ 考 案

以上ノ症例テ總括表記セバ次ノ如 シ.

(第9表)

76

大ナ ル〓及 ビ癰 ノ灰 白軟膏療 法 ニ就テ　 1859

即 チ

1)　 初 診 時 體 温38°.0C以 上 ノモ ノ8例

2)　 初 診 時 尿 ニ蛋 白 ヲ證 シタル モ ノ4例,蛋 白 及 ビ糖 ヲ共 ニ證 シタル モ ノ1例

3)　 〓3例 ニ對 シ癰9例

4)　 發 赤 性 腫 脹 手 掌 大 以 上 ノモ ノ9例

之 ニ ヨ リテ モ其 多 ク ハ重 症 ナ ル モ ノナ ル コ ト明 カ ナ リ,而 モ局 所症 状 劇 シク 入院 治療 ヲ餘 儀

ナ ク セ ラ レタル モ ノ ノ ミナ リ.

カ カ ル〓 及 ビ癰 ニ對 シテ何 等 觀 血 的 療 法 ニ ヨ ラズ,灰 白 軟 膏 療 法 ヲ行 ヒタ リ.

本 療 法 ハ先 ヅ灰 白 軟 膏 ヲ約2mmノ 厚 サ ニ「ガー ゼ」又 ハ「リン ト」布 ニ塗 布 シ,ソ レヲ罹 患 部

ニ充 分 ニ當 テ其 上 ヨ リ1%ノ 醋 酸 礬 土 水 ノ温 濕 布 ヲ行 フ.其 灰 白 軟 膏 片 ノ中央 部 ニハ排 膿 起 ル

ニ從 ヒ膿 汁 潴溜 ス ル ガ故 ニ此 部 ニ當 ル處 ニ小 ナ ル 孔 ヲ アケ置 キ排 膿 ヲ計 ル ベ シ.周 圍 ハ通 常 灰

白軟 膏 膠 着 スル ガ故 ニ変 換 ニ際 シテーー 除 去 スル必 要 ナ リ其 マ マ ニ放 置 ス ベ シ.浸 潤 部 ヨ リ周

圍 ハ亞 鉛 華 「オ レー フ」油 ヲ充 分 ニ厚 ク塗 布 シテ 皮 膚 炎 ヲ除 ク ベ シ.皮 膚 炎 ハ可 及 的 避 ク可 キ モ

ノ ナ リ.依 ツテ膿 栓 互 ニ融 合 シ排 膿 盛 ン トナ レバ最 早 灰 白 軟 膏 ノ必 要 ナ キ ガ故,速 ニ中止 シテ

單純 ニ「沃 度 ホ ル ム ガー ゼ」ヲ當 テ,排 膿 止 ム時 ハ 「トリバ フ ラ ビ ン」又 ハ 「リヴ ノー ル ガー ゼ」

ト交換 ス.如 何 ニ大 ナ ル癰 ト雖 モ何 等 ノ痕 跡 テ殘 サ ズ シ テ治癒 セ ラル ル ニ ハ驚 クバ カ リナ リ.

時 トシテ 治 癒後 ニ局 部 ニ〓 痒 ヲ覺 ユ ル事 ア リ.更 ニ治 療 中蛋 白尿 ノ出 現,口 内 炎 ヲ起 ス コ トア

ル ガ故 ニ蛋 白尿 ニ對 シテ ハ度 度 ノ檢 尿 ノ必 要 ア リ,口 内 炎 ニ對 シテハ2%ノ 硼 酸水 ヲ投 與 シ含

嗽 ヲ命 ズ ベ シ.

本 療 法 ニ ヨ リ治 療 セ シ コノ12例 ノ治 癒 機 轉 ノ類 別 ヲ試 ム レバ次 ノ如 シ(第9表 參 照).

1)　 膿 栓 脱 出 初　 平 均3日 目

2)　 體 温 下 降　 平 均4.2日 目

3)　 灰 白 軟膏 中 止　 平 均6.6日 目

4)　 合 併症 ヲ惹 起 セ シモ ノ12例 中3例 ア リ シノ ミ,即 チ例1ノ 筋 炎,例2ノ 肺 炎,例10ノ

筋 炎 ナ リ.而 モ例10ハ 他 部 ニ以 前 ヨ リ創 傷 瘻 孔 等 ア リ,膿 汁 ノ潴 溜 相 當 量 ア リシヲ以 テ 直 ニ癰

ヨ リノ モ ノ トハ斷 定 シ難 シ.例2ノ 肺 炎 モ タ マ タ マ其經 過 中 ニ起 リシモ ノナ リ.タ ダ例1ノ ミ

ハ他 ニ原 因 ヲ見 出 シ得 ザ リキ.

5)　 治 療 中蛋 白尿 ノ出 現 ハ1例 モ之 ヲ見 ザ リキ.

斯 ク ノ如 キ良 好 ナル結 果 ハ醋 酸礬 土 水 モ與 リテカ ア リ シモ ノ ナ レ ド主 トシテ灰 白軟 膏 ノ奏 效

セ シモ ノナ ラ ン.

灰 白軟 膏 ノ效 果 ニ就 キ テ ハ既 ニ1926年Junkermannハ 血 液 ノ直 接 解 毒 作 用 ヲ モ呈 スル ナ ラ

ン ト述 ベ タ リ.Zechlinハ 局 所 ノ充 血 ノ ミナ ラズ,蒸 發 ニ ヨル水 銀 ノ特 別 ナル 深 達 作 用 ヲ呈 ス

ル 外,全 身 的 ニ刺 戟 體 作 用 ヲモ 呈 ス ト述 ベ タ リ.津 田敎 授 ハ又 昭和3年 「診 斷 ト治 療 」 ニ於 テ

77

1860　 菅 龍 正

灰白軟膏ハ局所 ニ働 キテ細菌 ノ毒性 ヲ減 ジ,其 發育ヲ阻止スルモノノ如 ク且又血行内ニ吸收サ

レテ細菌ノ血行内傳染ニ效 アルモノノ如 シト述ベラレタ リ.余 モ亦之等諸説 ニ賛意ヲ表 スルモ

ノニシテ,上 記臨牀例 ニ徴 シテ灰白軟膏ハ其局所 ノ皮膚 ヲ軟化 シ從 ツテ皮膚緊張 ヲ去 リ安靜ヲ

保タ シメ痂皮形成 ヲ遮 リ膿汁排出ヲ助長セシムルノミナラズ,深 達作用 ヲ呈 シ其細菌ニ作用 シ

其毒性 ヲ減少シ且發育ヲ阻止 シ從ツテ膿汁 ヲ限局セシムルモノニシテ,更 ニ進 ンデ細菌 ノ血行

内傳染 ニモ效 アルモノナラント思惟 ス.

濕布 ノ局所作用ニ就キテハ周知 ノ如 ク皮膚血管ノ擴張ヲ促 ス.從 ツテ皮膚 ノ血行ハ旺盛 トナ

リ,續 發的ニ炎症 ヲ起 シタル部ノ靜脉鬱血ヲ防止 シ消炎作用 ヲ呈スル ト同時 ニ刺戟 ニヨリ細菌

ノ活動ヲ喚起 シ物質代謝機能 ヲ盛 ンニシテ吸收作用ヲ誘起 スルモノナラン.醋 酸礬土水濕布ハ

更 ニ灰白軟膏ノ浸潤作用ヲ助長 シ排膿ヲ容易ナラシムルノミナラズ 收斂竝ニ 防腐作用 ヲモ現

ス.

飜 ツテ切 開 療 法 ヲ考 察 ス ル ニ1925年Downハ 切 開 ハ 緊 張 ヲ輕 快 ナ ラ シムル タ メ及 ビ 壞 疽

組 織 ノ除 去 ト云 フ點 ニ於 テ2ツ ノ適 應症 ア リ トテ 切 開法 ヲ賞 賛 セ リ.1923年Franke及 ビ

Hrynatschak, 1925年Goldschmidtモ 亦 切 開 賛成 者 ナ リ.

然 ルニJunkermann (1926)ハ 〓 及 ピ癰 ニ對 シテハ 姑 息 的 療 法 テ行 ヒ,波 動 ヲ伴 フ場 合 以外

ハ 外科 的 切開 ヲ行 フハ1ツ ノ罪 惡 ナ リ ト極 言 セ リ.1924年Ditrichハ40例 ノ上 口唇 〓 例 ヲ掲 ゲ

切 開 例22ニ 對 シ死 亡 率13.6%,姑 息 的 療 法 テ行 ヒ シ例18ニ 對 シテ死 亡率5.5%ナ リ ト述 べ,

Marian (1925)ハ 顔 面 ノ〓 及 ビ癰 ノ切 開 ノ非 ヲ述 べ,皆 切 開 法賛 成 者 ニ反馭 ヲ ナ セ リ.又 最 近

W. Gerlachモ 亦 切 開 法 ニ反 對 シテ次 ノ如 ク述 ベ タ リ,即 チ〓 及 ビ癰 ニ於 テ 自 然 ハ其 傳染 竈 ノ

マ ハ リニ炎 症 壁 ヲ作 ル,コ ノ反抗 作用 ニ缺 クル所 ア レバ毒 素ノ 襲 撃 ノ タ メニ其 壁 ハ周 圍 ヘオ シ

ヤ ラル.故 ニ我 我 ハ其 毒 作 用 テ弱 メル カ或 ハ防禦 壁 ヲ強 ム可 ク治 療 方針 ヲ タ テザ ル ベ カ ラズ.

然 ル ニ普 通 切 開 手 術 ニ ヨ リテ恐 ラク傳 染菌 ノ毒 力 ヲ減 少 セ シメ得 レ ド確 カ ニ 自然 ノ防 禦 壁 ヲ害

シ 又ハ毀 ス ト.

余 ハ爰 ニ例3,例4ニ 於 テ切 開 ニ ヨ リ却 ツテ惡 化 シ,之 ヲ本 灰 白軟 膏 療 法 ノ姑 息 的 療 法 ニ ヨ

リ完 全 ニ治 癒 セ シメ得 タ リシ ヲ見 ル ニ及 ビ益々 切 開 法 ノ非 ナル コ トニ確 心 ヲ得,後 者 ノ諸 説 ニ

賛 意 ヲ表 スル ト共 ニ灰 白軟 膏 療 法 ノ如 何 ニ大 ナル〓 及 ビ癰 ニ對 シテ モ確 實 ニ奏 效 ス ル モ ノ ナ ル

事 ヲ信 ズル モ ノ ナ リ.

第4章　 結 論

中 等 大 或 ハ ソ レ以 下 ノ〓 ニ對 ス ル療 法 トシテ ハ 切開 法,焼 灼 法 ヲ避 ケ非 觀 血 的 療 法 ヲ行 フベ

キ ハ勿 論 ナ レ ド大 ナ ル〓 反 ビ癰 ニ對 シテ ハ現 今 ニ於 テ モ觀 血 的 療 法 ヲ行 フ人 ア リ.サ レ ド余 ハ

カ カル 際 絶 對 ニ切 開,焼 灼 ノ要 ナク,操 作 簡 單 ナル 灰 白軟 膏 療 法 ニ ヨ リ完 全 ニ而 モ無 痛 迅 速 ニ

治癒 セシメ得ルモノナ リト思惟 ス.

78

大 ナル〓 及ビ癰 ノ灰 白軟膏療法 ニ就テ　 1861

本療法ニヨレバ概 ネ2, 3日 ニシテ〓 ハ軟化シ,癰 モ多數 ノ膿點相互ニ融 合シ1箇 ノ皮下膿瘍

ヲ形成 シテ多數 ノ瘻孔 ヨリ排膿セラルルニ至ル.而 シテ如何ニ大 ナル癰 ト雖モ切開法 ニヨルガ

如 キ醜惡ナル瘢痕 ヲ殘サズ完全ニ治癒 セシメ得.故 ニ顔面ノ〓及ビ癰 ニ於テ本療法ハ好適ナル

モノニシテ殊ニ容貌 ヲ重ズル婦人ニ於 テハ是非 トモ本療法 ヲ試 ミラレンコ トヲ推奨 スルモノナ

リ.

斯 ク ノ如 キ良好 ナル 成 績 ハ醋 酸 礬 土 水濕 布 モ亦 與 リテ カ ア リ ト雖 モ主 トシテ灰 白軟 膏 ノ奏 效

セ シモ ノ ナ ル コ トハ論 ヲ俟 タ ズ.灰 白 軟 膏 ハ局 所 ノ軟 化 作用 ヲ有 スル ハ勿 論,深 達 作 用 ヲ モ呈

シ其 細 菌 ニ作 用 シ其 毒 性 ヲ減 少 シ且 發 育 ヲ阻 止 ス ル ノ ミナ ラ ズ,更 ニ進 ンデ細 菌 ノ血行 内傳 染

ニ效 ア ル モ ノ ノ如 シ.

本 治 療 中局 所 ノ皮膚 炎,口 内炎 又 蛋 白尿 ヲ現 出 スル コ トア リ.口 内炎 ハ度 度 ノ含 嗽 ニ ヨ リ,

皮 膚 炎 ハ周 圍 ニ充 分 亞 鉛 華 「オ レー フ」油 ヲ塗 布 スル コ トニ ヨ リ容 易 ニ豫 防 シ得.蛋 白尿 ヲ出現

ス ル コ トア リ トセ ラル レ ドモ甚 ダ稀 ナ ル モ ノ ノ如 シ.

脱 稿 スルニ臨 ミ終 始御 懇篤 ナル御指導 ト御校閲 ヲ賜ハ リシ恩師津田敎 授 ニ深甚 ノ感謝 ノ意 ヲ表 スル ト

共 ニ西山助敎 授 ノ御 助力 ヲ深謝 ス.

主 要 文 獻

1) Zechlin, Munchen. med. Wochenschr. Jg. 73, Nr. 42, 1926. 2) Junkermann, Ebenda. Jg. 73,

Nr. 14, 1926. 3) Kirschner und Frey, Med. germano-hispano-americ Jg. 3, Nr. 8, 1926. 4)

Ruszynski, Arztl. Monatschr. 1925. 5) Kissmeyer, Munchen. med. Wochen. med. Wochenschr. Jg.

74, Nr. 7, 1927. 6) Carp u. Lous, Arch. of surg. Bd. 14, Nr. 4, 1927. 7) Gerlach, Deutsche

Zeitsehr, fur Chir. 232, Bd. 8, 1931. 8) Zienrann, Med. Klinik. Nr. 20, 1924. 9) Urban und

Schwarzenberg, Lehrbuch der Strablentherapie. 1 und 2. 10) 百 瀬,實 驗 醫 報,第177號,昭 和4年

7月 温 11) 中 谷,實 驗 治 療,第98號,昭 和4年4月. 12) 鈴 木,「 グ レ ン ツゲ ビ ー ト」,第2年,

第10號.昭 和3年11月. 13) 津 田,診 斷 ト治 療,昭 和3年. 14) 田 代,治 療 藥 報,第314號,

昭 和3年12月. 15) 新 海,倉 田,治 療 藥 報,昭 和3年10月. 16) 津 末,治 療 藥 報,昭 和3年9月.

17) 石 田,赤 岩,「 グレ ンツ ゲ ビ ー ト」,第2年,第8號,昭 和3年8月. 18) 宮 原,治 療 藥報,第236

號. 19) 三 栖,實 驗 醫 報,第127號. 20) 波 多 腰,日 本 外 科 室 凾,第3卷,第1號. 21) 淺 見,

治 療 新 報,第407號. 22) 横 田,實 地 醫 家 ト臨 牀.第5巻,第11號. 23) 原 田,東 京 醫 事 新 誌,

第2625號. 24) 佐 藤,紫 外 線療 法,昭 和5年 版. 25) 三 輪,東 京 醫 事 新 誌,第2652號. 26)

江 藤,治 療 藥 報,第262號.

79