8020 運動実績調査結果

ー兵庫県歯科医師会とー兵庫県歯科医師会と WHOWHO 神戸センター神戸センター

との共同研究結果からーとの共同研究結果からー

神田　貢

兵庫県歯科医師会情報調査室委員

2

個人情報保護に関して 本調査は患者個人の個人情報を扱う事から、その本調査は患者個人の個人情報を扱う事から、その

保護管理を厳密に行うため、文部科学省・厚生労保護管理を厳密に行うため、文部科学省・厚生労働省「疫学研究に関する倫理指針」（平成１４年働省「疫学研究に関する倫理指針」（平成１４年７月１日施行）、および個人情報の保護に関する７月１日施行）、および個人情報の保護に関する法律（平成１５年５月３０日法律第５７号）の趣法律（平成１５年５月３０日法律第５７号）の趣旨に沿い、個人が特定できないよう厳密な配慮を旨に沿い、個人が特定できないよう厳密な配慮を施されたデータ を使用した。また、データの目的施されたデータ を使用した。また、データの目的外使用を禁じ、厳密に保管する事とした。調査を外使用を禁じ、厳密に保管する事とした。調査を行うにあたって、兵庫県国民健康保険団体連合会行うにあたって、兵庫県国民健康保険団体連合会と兵庫県歯科医師会との間で上記内容を厳守すると兵庫県歯科医師会との間で上記内容を厳守する旨の確認書を取り交わした。旨の確認書を取り交わした。

3

8020 運動実績調査について 残存歯本数と医療状況の関係を調べて、「８０残存歯本数と医療状況の関係を調べて、「８０

２０運動」の実証的論拠を見出すことを目的と２０運動」の実証的論拠を見出すことを目的とした。 した。

調査主体：兵庫県歯科医師会・兵庫県国民健康調査主体：兵庫県歯科医師会・兵庫県国民健康保険団体連合会 ・兵庫県保険団体連合会 ・兵庫県

調査対象時期：平成調査対象時期：平成 1414 年年 55 月・月・ 1515 年年 55 月月 調査対象 ：兵庫県内の歯科医院と兵庫県内の歯調査対象 ：兵庫県内の歯科医院と兵庫県内の歯

科以外の医療機関を５月中にどちらも受診した科以外の医療機関を５月中にどちらも受診した７０歳以上の国保加入高齢者の医科レセプト７０歳以上の国保加入高齢者の医科レセプト

データ分析：兵庫県歯科医師会・データ分析：兵庫県歯科医師会・ WHOWHO 神戸セン神戸センターター

8020 調査のこれまでの発表経緯

　　“　　“ Elderly with twenty or more teeth need less hospital care” at the 82nd General Session of tElderly with twenty or more teeth need less hospital care” at the 82nd General Session of the IADR/AADR/CADR, 10-13 March 2004, Hawaii, United States of America - a poster presentatihe IADR/AADR/CADR, 10-13 March 2004, Hawaii, United States of America - a poster presentationon

兵庫県歯科医学大会　兵庫県歯科医学大会　 20042004 年年 66 月月 1313 日日８０２０運動実績調査結果から８０２０運動実績調査結果から平成平成 1414 年５月分医科データからの集計　調査概要と分析結果報告年５月分医科データからの集計　調査概要と分析結果報告

第第 2020 回日本歯科医学会総会　回日本歯科医学会総会　 20042004 年年 1010 月月 2929 日日 -31-31 日　パシフィコ横浜日　パシフィコ横浜８０２０運動と国民医療の関係８０２０運動と国民医療の関係－兵庫県歯科医師会と兵庫県国民健康保険団体連合会の取り組みから－－兵庫県歯科医師会と兵庫県国民健康保険団体連合会の取り組みから－

日本口腔科学会近畿地方部会　日本口腔科学会近畿地方部会　 20042004 年年 1111 月月 2020 日　新神戸オリエンタルホテル日　新神戸オリエンタルホテル８０２０運動と医療について８０２０運動と医療について－兵庫県歯科医師会と兵庫県国民健康保険団体連合会の取り組みから－－兵庫県歯科医師会と兵庫県国民健康保険団体連合会の取り組みから－

““8020 Survey in Hyogo Prefecture, Japan” at the meeting on Oral Health In Ageing Societies: Integration 8020 Survey in Hyogo Prefecture, Japan” at the meeting on Oral Health In Ageing Societies: Integration of Oral Health and General Health at the WHO Centre for Health Development, 1-3 June 2005, Kobe , Jaof Oral Health and General Health at the WHO Centre for Health Development, 1-3 June 2005, Kobe , Japan pan

5

歯科レセプト

歯科診療点数、日数、診療内容

性別、年齢、診療年月、歯科病名

国民健康保険受給者番号

残存歯数 (16年～咬合位保持）

医科レセプト

医科診療点数、診療実日数、診療内容、性別、年齢、入院外来別、診療年月、主病名、診療科目

国民健康保険受給者番号

医科歯科両方に提出された同一患者を受給者番号でマッチングし、医科レセプト情報に残存歯数を追加して一覧作成。個人情報は削除した。

兵庫県国民健康保険団体連合会

兵庫県歯科医師会情報調査室　 PC-UNIX 　 PostgreSQL server

オリジナルデータの作成手順

CSV ファイル

連合会からの原始データ個人番号（元は受給者番号）　個人番号（元は受給者番号）　年齢　年齢　性別　性別　残存歯数残存歯数診療点数　診療点数　主病名　主病名　診療日数　診療日数　診療科目　診療科目　診療年月診療年月

レセプト一枚で１行の csv データを個人番号で括って個人別集計ができるようデータベースを構築した

7

調査年別　データセット

5月単月調査医科レセプト

総数残存歯数記載レセプト枚数

医科歯科マッチングレセプト枚数

対象被保険者数

７０歳以上８９歳以下

歯科 75,311 41,529医科 790,893

5月単月調査医科レセプト

総数残存歯数記載レセプト枚数

医科歯科マッチングレセプト枚数

対象被保険者数

７０歳以上８９歳以下

歯科 85,239 36,146医科 844,701

35,325

30,734

15平成 年調査

14平成 年調査

71,283 35,931

62,320 31,251

8

結果（全体の概要）

2.627 3.678 4.73 5.781 6.832 7.883 8.934 9.985 11.036 12.088 above

3D (1505statistica.sta 11v*31347c)鳥瞰図 重み付き最小２乗近似

残存歯数・年齢・診療日数　　　　残存歯数・年齢・診療点数

-4803.043 393.913 5590.87 10787.8 15984.8 21181.74 26378.7 31575.65 36772.6 41969.56 above

3D (1505statistica.sta 11v*31347c)鳥瞰図 重み付き最小２乗近似

残存歯数減少加齢

診療点数

残存歯数減少加齢

診療日数

9

年齢・残存歯数・診療費の基本統計量

男性 女性N 15,480 19,845平均年齢 75.6 75.8SD 4.5 4.6

平均残存歯数 14.7 14.4SD 9.1 8.8

平均診療費（円） 46,432 39,667SD 109,817 94,120最小値 580 380最大値 3,752,170 6,804,44025％分位 13,000 13,93050％分位 22,920 23,17075％分位 42,198 39,480

平成１４年５月分男性 女性

N 13,218 17,516平均年齢 75.9 75.9SD 4.5 4.6

平均残存歯数 14.7 14.5SD 9.1 8.8

平均診療費（円） 46,566 36,431SD 118,346 83,954最小値 690 560最大値 4,135,610 4,814,54025％分位 10,980 11,61050％分位 21,705 21,33075％分位 41,173 36,800

平成１５年５月分

10

　 　 14年齢別 男女別件数 平成 年５月分

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89

男性女性

　 　 15年齢別 男女別件数 平成 年５月分

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

2,000

70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89

男性女性

11

　 　残存歯数別 男女別 平均年齢14 5平成 年 月分

7071

72737475

767778

7980

02468101214161820222426283032

男性女性

　残存歯数別 男女別平均年齢15平成 年５月分

71

72

73

74

75

76

77

78

79

02468101214161820222426283032

男性女性

12

　年齢別 男女別診療費（円）15平成 年５月分

010,000

20,00030,00040,00050,000

60,00070,00080,000

90,000100,000

70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89

男性女性

　年齢別 男女別診療費（円）14平成 年５月分

010,000

20,00030,00040,00050,000

60,00070,00080,000

90,000100,000

70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89

男性女性

13

　残存歯数別 男女別平均診療費（円）14平成 年５月分

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

02468101214161820222426283032

男性女性

　残存歯数別 男女別平均診療費（円）15平成 年５月分

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

02468101214161820222426283032

男性女性

年齢・残存歯数・診療費の相関係数

男性年齢 残存歯数 診療費

年齢 1 - 0.209(**) 0.048(**)残存歯数 1 - 0.042(**)

女性年齢 残存歯数 診療費

年齢 1 - 0.251(**) 0.037(**)残存歯数 1 - 0.041(**)

Pearson 　 15の相関係数 平成 年５月分

**.　 　1%　 　( )相関係数は 水準で有意 両側

男性年齢 残存歯数 診療費

年齢 1 - 0.217(**) 0.040(**)残存歯数 1 - 0.046(**)

女性年齢 残存歯数 診療費

年齢 1 - 0.283(**) 0.059(**)残存歯数 1 - 0.036(**)**.　 　1%　 　( )相関係数は 水準で有意 両側

Pearson　 　 14の相関係数 平成 年５月分

15

年齢・性別・残存歯数から診療費を予測する重回帰分析

14平成 年５月分 = - 19174 + 935× - 344×男性診療費 年齢 残存歯数 = - 26243 + 935× - 344×女性診療費 年齢 残存歯数

　 R2 　 0.004調整済み 乗

15平成 年５月分 = - 5077 + 752× - 370×男性診療費 年齢 残存歯数 = - 15301 + 752× - 370×女性診療費 年齢 残存歯数

　 R2 　 0.005調整済み 乗

16

共分散分析　分散分析＋回帰分析　 ⇒ 　共分散分析　

残存歯数によって水準を次の５つに分類して、年齢・性別の影響を除去した上で各水準間に有意差があるかを求めた。

•残存歯０本群

•残存歯１～８本群

•残存歯９～１６本群

•残存歯１７～２４本群

•残存歯２５～３２本群

共分散分析結果

切片 - 27,502年齢 932女性 - 7,023残存歯０本群 10,828残存歯１～８本群 7,344残存歯９～１６本群 2,443残存歯１７～２４本群 1,657残存歯２５～３２本群 0

14 　平成 年５月分 パラメータ推定値

残存歯群水準と年齢及び性別との間には交互作用は認めらなかった。　　 **P<0.01

男性無歯顎者の診療費＝ -27502＋年齢 ×932 + 10828

男性 25 本以上の診療費＝ -27502＋年齢 ×932 + 0

**

**

**

**

**

共分散分析結果

切片 - 15,020年齢 763女性 - 10,181残存歯０本群 10,209残存歯１～８本群 7,268残存歯９～１６本群 3,967残存歯１７～２４本群 1,308残存歯２５～３２本群 0

15 　平成 年５月分 パラメータ推定値

**

**

**

**

残存歯群水準と年齢及び性別との間には交互作用は認めらなかった。　　 **P<0.01

男性無歯顎者の診療費＝ -15020＋年齢 ×763 + 10209

男性 25 本以上の診療費＝ -15020＋年齢 ×763 + 0

残存歯数の各水準間における多重比較

診療費について、残存歯数による分類間での多重比較では次の分類間で差異が認められた。

平成１４年分 残存歯０本群 残存歯１～８本群 残存歯９～１６本群 残存歯１７～２４本群 残存歯２５～３２本群残存歯０本群 ○ ○ ○残存歯１～８本群 ○ ○ ○残存歯９～１６本群 ○ ○残存歯１７～２４本群 ○ ○残存歯２５～３２本群 ○ ○

平成１５年分 残存歯０本群 残存歯１～８本群 残存歯９～１６本群 残存歯１７～２４本群 残存歯２５～３２本群残存歯０本群 ○ ○ ○残存歯１～８本群 ○ ○残存歯９～１６本群 ○ ○残存歯１７～２４本群 ○ ○残存歯２５～３２本群 ○ ○ ○

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多数歯群で多く見られる病名 少数歯群で多く見られる病名ウイルス肝炎 * 胃の悪性新生物 *その他の内分泌、栄養及び代謝疾患 *** 気管、気管支及び肺の悪性新生物 **結膜炎 ** 糖尿病 ***白内障 *** 精神作用物質使用による精神及び行動の障害 **その他の眼及び付属器の疾患 * アルツハイマー病 *高血圧性疾患 * 脳梗塞 **痔核 ** 肺炎 *急性咽頭炎及び急性扁桃炎 ** 慢性閉塞性肺疾患 **アレルギー性鼻炎 *** 喘息 *慢性副鼻腔炎 * 骨折 *胃炎及び十二指腸炎 **皮膚炎及び湿疹 *前立腺肥大（症） **乳房及びその他の女性性器の疾患 *

年齢からの回帰式による残存歯数分類別によく見られた主病名　平成１４年分データ

21

年齢からの回帰式による残存歯数分類別によく見られた主病名　平成１５年分データ

多数歯群で多く見られる病名 少数歯群で多く見られる病名真菌症 ** 胃の悪性新生物 *その他の内分泌、栄養及び代謝疾患 *** 気管、気管支及び肺の悪性新生物 **自律神経系の障害 * 貧血 **白内障 *** 糖尿病 *屈折及び調節の障害 ** 脳梗塞 *その他の眼及び付属器の疾患 * その他の損傷及びその他の外因の影響 *その他の耳疾患 *痔核 *アレルギー性鼻炎 ***椎間板障害 *前立腺肥大（症） ***

考察とまとめ

残存歯数と診療費と残存歯数と診療費との間には統計的関係がの間には統計的関係が認められた。認められた。

年齢と性別による影響を制御した年齢と性別による影響を制御した上での共分散分析によって、残存歯上での共分散分析によって、残存歯数が０本の高齢者の診療費は残存歯数が０本の高齢者の診療費は残存歯数が２５本以上の高齢者の診療費に数が２５本以上の高齢者の診療費に対して月に１万円以上多かった。対して月に１万円以上多かった。

残存歯数と全身の疾病との因果関残存歯数と全身の疾病との因果関係まで言及できないため、残存歯数係まで言及できないため、残存歯数を増やすだけで診療費を削減できるを増やすだけで診療費を削減できるとは言えない。とは言えない。

今後多方面の組織や機関と協力し今後多方面の組織や機関と協力して、より詳細な調査を行う事ができて、より詳細な調査を行う事ができれば、残存歯数を多く保つ事が全身れば、残存歯数を多く保つ事が全身の健康を維持増進するためにいかにの健康を維持増進するためにいかに重要であるかと主張するための論拠重要であるかと主張するための論拠を見つける事ができるだろう。を見つける事ができるだろう。

26

謝辞 貴重な診療時間を割いて残存歯数を記載してくだ貴重な診療時間を割いて残存歯数を記載してくだ

さった兵庫県歯科医師会会員の先生がたさった兵庫県歯科医師会会員の先生がた １人分ずつのパンチカードに残存歯数を打ち込ん１人分ずつのパンチカードに残存歯数を打ち込ん

でくださった兵庫県国民健康保険団体連合会の皆でくださった兵庫県国民健康保険団体連合会の皆様様

大阪大学大学院医学系研究科社会環境医学講座　大阪大学大学院医学系研究科社会環境医学講座　多田羅浩三教授・大阪大学大学院歯学研究科口腔多田羅浩三教授・大阪大学大学院歯学研究科口腔総合診療部　玉川裕夫助教授総合診療部　玉川裕夫助教授

分析を進める上でなくてはならないアドバイスを分析を進める上でなくてはならないアドバイスを頂いた頂いた WHOWHO 神戸センターの上田博司博士神戸センターの上田博司博士

情報調査室のスタッフ全員情報調査室のスタッフ全員

心から感謝申し上げます心から感謝申し上げます