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【背景】 現在、血尿の画像診断に用いられる検査法は、 腹部超音波・CT・MRIなど多数あるが、血尿診 断において最も特異性が高いとされる検査はCT である。理由として造影尿路CT検査では小さな 腎腫瘍病変の感受性が高く、非造影の単純CT検 査では尿路結石の95%程の特異度があるからであ る。 【目的】 泌尿器科から依頼されるCT検査の目的は、血 尿の精査目的が多数を占めている。結石疾患など の場合は単純CT検査のみとなるが、造影CT検査 の場合は、総合的な泌尿器疾患の疑いで撮影依頼 を受ける事となる。しかし、当院には泌尿器疾患 に対する特定のプロトコルは存在せず、腹部の撮 影条件のみで撮影を行なっているが現状である。 そのため、泌尿器疾患に対する当院独自のCT- Urographyプロトコルの作成・検討を行うに至っ た。 【対象・方法】 ・泌尿器科依頼の尿路造影CT検査 (平成23年1月から平成23年11月の97症例) 1.CT-Urographyプロトコルの作成 科内で検討した結果、2回撮影法は被ばくを増 やしてしまう面を考慮して今回の検討では使用せ ず、1回撮影法でのプロトコルを使用した。 2.CT-Urographyプロトコルの検討 造影剤20mL注入開始後、Delay timeを3分・5 分・8分に設定し、それぞれ30件程度撮影を行う。 対象画像を診療放射線技師4名、医師1名により1 〜5段階にわけ、視覚的に画像の評価を行い検討 する。評価対象部位は、『腎実質・腎盂以降部』 『上部尿管』『下部尿管』の3項目と設定した。 【使用機器・造影剤】 ・SEMENS SOMATOM Sensation16 ・Medrad社CT用インジェクター Stellant-D ・オムニパーク300注シリンジ100mL 【結果】 【考察】 Delay time 3分では、20mLの造影剤が腎盂に すべてWash Outされる事なく、腎実質・腎盂以 降部にアーチファクト様に残存する事が多々見ら れた。そのため、実質の嚢胞や血管筋脂肪腫・腎 盂癌などの鑑別に支障を来す恐れがあり、臨床で の活用は出来ないと判断した。 Delay time5分では、20mLの造影剤は尿管まで Wash Outされ、腎実質・腎盂以降部に残存する 事が減少し、尿管と腎実質の2分化が行えた。し かし、腎機能の悪い方の尿管描出や、下部尿管か ら膀胱以降部への造影剤描出が最適とは言えず、 検討の余地有りと思われる。 Delay time8分では、20mLの造影剤は完全に Wash Outされ、腎から膀胱までの描出を行えた 症例が多く見られた。しかし、Delay time5分と 比べ明らかな画像差もなく、時間効率やスルー プットが良くない、という事も踏まえ、現場での 使用は限られてしまう結果となった。 【結語】 今回CT-Urographyの検討を行った結果、臨床 診断における適正ライン・撮影現場での有用性の 2点を踏まえ、5分のDelay timeが当院では適正で あると考えられた。しかし、被検体の個人差によ る画像の変化や画像の評価基準の違いから可否が 変わってしまうため、検討症例数を増やしより精 度の高い画像評価基準が必要である。今後の課題 として、1段階注入時の造影剤量の変化による描 出能の違いや、マルチフェーズに対応したプロト コルの作成などを含め、被検体に合わせた造影剤 量、疾患に合わせたヨード量・撮影法の検討を重 ねる必要があると考える。 9 当院におけるCT-Urographyのプロトコルの検討 東大宮総合病院 ○茂木雅和 神門基樹 島田雅之 吉井 章 3 5 8 実質・腎盂以降部 698085上部尿管 707780下部尿管 526365

9 当院におけるCT-Urographyのプロトコルの検討 CT-Urography【背景】 現在、血尿の画像診断に用いられる検査法は、 腹部超音波・CT・MRIなど多数あるが、血尿診

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Page 1: 9 当院におけるCT-Urographyのプロトコルの検討 CT-Urography【背景】 現在、血尿の画像診断に用いられる検査法は、 腹部超音波・CT・MRIなど多数あるが、血尿診

【背景】 現在、血尿の画像診断に用いられる検査法は、腹部超音波・CT・MRIなど多数あるが、血尿診断において最も特異性が高いとされる検査はCTである。理由として造影尿路CT検査では小さな腎腫瘍病変の感受性が高く、非造影の単純CT検査では尿路結石の95%程の特異度があるからである。

【目的】 泌尿器科から依頼されるCT検査の目的は、血尿の精査目的が多数を占めている。結石疾患などの場合は単純CT検査のみとなるが、造影CT検査の場合は、総合的な泌尿器疾患の疑いで撮影依頼を受ける事となる。しかし、当院には泌尿器疾患に対する特定のプロトコルは存在せず、腹部の撮影条件のみで撮影を行なっているが現状である。そのため、泌尿器疾患に対する当院独自のCT-Urographyプロトコルの作成・検討を行うに至った。

【対象・方法】・泌尿器科依頼の尿路造影CT検査

(平成23年1月から平成23年11月の97症例)1.CT-Urographyプロトコルの作成 科内で検討した結果、2回撮影法は被ばくを増やしてしまう面を考慮して今回の検討では使用せず、1回撮影法でのプロトコルを使用した。2.CT-Urographyプロトコルの検討 造影剤20mL注入開始後、Delay timeを3分・5分・8分に設定し、それぞれ30件程度撮影を行う。対象画像を診療放射線技師4名、医師1名により1〜5段階にわけ、視覚的に画像の評価を行い検討する。評価対象部位は、『腎実質・腎盂以降部』

『上部尿管』『下部尿管』の3項目と設定した。

【使用機器・造影剤】・SEMENS SOMATOM Sensation16・Medrad社CT用インジェクター Stellant-D・オムニパーク300注シリンジ100mL

【結果】

【考察】 Delay time 3分では、20mLの造影剤が腎盂にすべてWash Outされる事なく、腎実質・腎盂以降部にアーチファクト様に残存する事が多々見られた。そのため、実質の嚢胞や血管筋脂肪腫・腎盂癌などの鑑別に支障を来す恐れがあり、臨床での活用は出来ないと判断した。 Delay time5分では、20mLの造影剤は尿管までWash Outされ、腎実質・腎盂以降部に残存する事が減少し、尿管と腎実質の2分化が行えた。しかし、腎機能の悪い方の尿管描出や、下部尿管から膀胱以降部への造影剤描出が最適とは言えず、検討の余地有りと思われる。 Delay time8分では、20mLの造影剤は完全にWash Outされ、腎から膀胱までの描出を行えた症例が多く見られた。しかし、Delay time5分と比べ明らかな画像差もなく、時間効率やスループットが良くない、という事も踏まえ、現場での使用は限られてしまう結果となった。

【結語】 今回CT-Urographyの検討を行った結果、臨床診断における適正ライン・撮影現場での有用性の2点を踏まえ、5分のDelay timeが当院では適正であると考えられた。しかし、被検体の個人差による画像の変化や画像の評価基準の違いから可否が変わってしまうため、検討症例数を増やしより精度の高い画像評価基準が必要である。今後の課題として、1段階注入時の造影剤量の変化による描出能の違いや、マルチフェーズに対応したプロトコルの作成などを含め、被検体に合わせた造影剤量、疾患に合わせたヨード量・撮影法の検討を重ねる必要があると考える。

9 当院におけるCT-Urographyのプロトコルの検討

東大宮総合病院○茂木雅和 神門基樹 島田雅之 吉井 章

当院におけるCT-Urography のプロトコルの検討

東大宮総合病院

○茂木雅和 神門基樹 島田雅之 吉井章

【背景】 現在、血尿の画像診断に用いられる検査法は、

腹部超音波・CT・MRIなど多数あるが、血尿

診断において最も特異性が高いとされる検査は

CTである。理由として造影尿路CT検査では

小さな腎腫瘍病変の感受性が高く、非造影の単

純CT検査では尿路結石の95%程の特異度があ

るからである。 【目的】 泌尿器科から依頼されるCT検査の目的は、

血尿の精査目的が多数を占めている。結石疾患

などの場合は単純CT検査のみとなるが、造影

CT検査の場合は、総合的な泌尿器疾患の疑い

で撮影依頼を受ける事となる。しかし、当院に

は泌尿器疾患に対する特定のプロトコルは存在

せず、腹部の撮影条件のみで撮影を行なってい

るが現状である。そのため、泌尿器疾患に対す

る当院独自のCT-Urographyプロトコルの作

成・検討を行うに至った。 【対象・方法】 ・泌尿器科依頼の尿路造影CT検査 (平成23年1月から平成23年11月の97症例) 1.CT-Urographyプロトコルの作成 科内で検討した結果、2回撮影法は被ばくを増

やしてしまう面を考慮して今回の検討では使用

せず、1回撮影法でのプロトコルを使用した。 2.CT-Urographyプロトコルの検討 造影剤20mL注入開始後、Delay timeを3分・

5分・8分に設定し、それぞれ30件程度撮影を

行う。対象画像を診療放射線技師4名、医師1名により1〜5段階にわけ、視覚的に画像の評

価を行い検討する。評価対象部位は、『腎実質・

腎盂以降部』『上部尿管』『下部尿管』の3項目

と設定した。 【使用機器・造影剤】 ・SEMENS SOMATOM Sensation16 ・Medrad社CT用インジェクター Stellant-D

・オムニパーク300注シリンジ100mL

【結果】 3分 5分 8分 実質・腎盂以降部 69% 80% 85%

上部尿管 70% 77% 80% 下部尿管 52% 63% 65%

【考察】

Delay time 3分では、20mLの造影剤が腎盂

にすべてWash Outされる事なく、腎実質・腎

盂以降部にアーチファクト様に残存する事が

多々見られた。そのため、実質の嚢胞や血管筋

脂肪腫・腎盂癌などの鑑別に支障の恐れがあり、

臨床での活用は出来ないと判断した。 Delay time5分では、20mLの造影剤は尿管

までWash Outされ、腎実質・腎盂以降部に残

存する事が減少し、尿管と腎実質の2分化が行

えた。しかし、腎機能の悪い方の尿管描出や、

下部尿管から膀胱以降部への造影剤描出が最適

とは言えず、検討の余地有りと思われる。 Delay time8分では、20mLの造影剤は完全に

Wash Outされ、腎から膀胱までの描出を行え

た症例が多く見られた。しかし、Delay time 5分と比べ明らかな画像差もなく、時間効率や

スループットが良くない、という事も踏まえ、 現場での使用は限られてしまう結果となった。 【結語】 今回CT-Urographyの検討を行った結果、臨

床診断における適正ライン・撮影現場での有用

性の2点を踏まえ、5分のDelay timeが当院で

は適正であると考えられた。しかし、被検体の

個人差による画像の変化や画像の評価基準の違

いから可否が変わってしまうため、検討症例数

を増やしより精度の高い画像評価基準が必要で

ある。今後の課題として、1段階注入時の造影

剤量の変化による描出能の違いや、マルチフェ

ーズに対応したプロトコルの作成などを含め、

被検体に合わせた造影剤量、疾患に合わせたヨ

ード量・撮影法の検討を重ねる必要があると考

える。