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1 コブ=ダグラス型生産関数 コブ=ダグラス型生産関数とは、 b a L AK Y = (1.1) 上式で表される生産関数のことである。 この関数は非常に便利な形をしているので、生産関数のみならず、効用関数や需要関数 にも用いられる。 1.1 k 次同次関数 コブ=ダグラス型生産関数は、1 次同次関数として使われることが多い。ところで k 次の 同次関数とは、 ) ,..., , ( 2 1 n k x x x f y l l l l = (1.2) が成立する関数をいう。 (1.1)式を(1.2)式にあてはめると、 b a l l l ) ( ) ( L K A Y k = b a b a l L K A + = b a l l + = k より、 k = + b a となる。 つまり、コブ=ダグラス型生産関数には、 k = + b a k 次同次関数 という関係がある。したがって(1.1)式が 1 次同次関数であるとき、(1.1)b a L AK Y = s.t. 1 = + b a (1.1)と書くことができる。 k 次同次関数をもつ企業において、 1 < k のとき「規模に対して収穫逓減」、 1 = k のとき 規模に対して収穫不変」、 1 > k のとき「規模に対して収穫逓増」であると、それぞれ表 現する。 1

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Page 1: a babaranger.s151.xrea.com/cdfunc.pdf1.2 産出の 資本弾力性と 産出の労働弾力性 1 次同次関数であるコブ = ダグラス型生産関数には、 + = 1 a b という条件

1  コブ=ダグラス型生産関数

コブ=ダグラス型生産関数とは、

β α L AK Y = (1.1)

上式で表される生産関数のことである。

この関数は非常に便利な形をしているので、生産関数のみならず、効用関数や需要関数

にも用いられる。

1.1 k 次同次関数

コブ=ダグラス型生産関数は、1 次同次関数として使われることが多い。ところで k 次の

同次関数とは、 

) ,..., , (  2 1  n k  x x x f y λ λ λ λ = (1.2)

が成立する関数をいう。

(1.1)式を(1.2)式にあてはめると、

β α λ λ λ  ) ( ) (  L K A Y k =

β α β α λ  L K A + = β α λ λ + = k  より、  k = + β α となる。

つまり、コブ=ダグラス型生産関数には、 

k = + β α ⇔ k 次同次関数

という関係がある。したがって(1.1)式が 1 次同次関数であるとき、(1.1)は

β α L AK Y = s.t.  1 = + β α (1.1)’

と書くことができる。

k 次同次関数をもつ企業において、  1 < k  のとき「規模に対して収穫逓減」、  1 = k  のとき

「規模に対して収穫不変」、  1 > k  のとき「規模に対して収穫逓増」であると、それぞれ表

現する。

1

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1.2 産出の資本弾力性と産出の労働弾力性 1 次同次関数であるコブ=ダグラス型生産関数には、  1 = + β α という条件があることが前

節で明らかになった。それでは、この β α ,  とは、いったいどのような意味をもつのだろう

か。

ところで k 次の同次関数については、次の関係が成立している。 

) ,..., ( ...  1 1 1  n n x x  x x kf x f x f n

= + + (1.3)

この関係は、オイラーの方程式と呼ばれる。(詳しい証明は省略) (1.1) ’を(1.3)にあてはめると、 

L L Y K 

K Y Y ⋅

∂ ∂

+ ⋅ ∂ ∂

Y L 

L Y 

Y K 

K Y

⋅ ∂ ∂

+ ⋅ ∂ ∂

= 1  (1.4)

β α α  L AK K K Y

= ⋅ ∂ ∂

、 β α β  L AK L L Y

= ⋅ ∂ ∂

となることから、

α = ⋅ ∂ ∂ 

Y K 

K Y 

、 β = ⋅ ∂ ∂ 

Y L 

L Y 

となる。これは(1.4)に代入することで、  1 = + β α を満たして

いることが分かる。

ここで、 Y K 

K Y

⋅ ∂ ∂

= α を変形すると、 K dK Y dY

= α となる。これは、「資本を 1%変化したと

き、生産量が何%変化するか」を表したもので、「産出の資本弾力性」と呼ばれる。

同様に、 Y L 

L Y

⋅ ∂ ∂

= β を変形すると、 L dL Y dY

= β となる。これは、「労働を 1%変化したと

き、生産量が何%変化するか」を表したもので、「産出の労働弾力性」と呼ばれる。

1.2 まとめ

β α L AK Y = (  1 = + β α )における β α ,  は、それぞれ「産出の資本弾力性」「産出の

労働弾力性」を表している。またその和は 1 に等しい。

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1.3 技術的限界代替率

技術的限界代替率(marginal rate of technical substitution)とは、技術代替率(The technical rate of substitution)とも呼ばれ、「労働を追加的に 1 単位増やしたとき、もと

の生産量を維持するには、どれだけ資本を減らす必要があるか」を表す割合である。具体

的には、等量曲線の接線の傾きとして表される。

数学的には、以下の式で表現される。 

x K L F dL dK MRTS

=

− = ) , ( 

以下からは、(1.1)’式における技術的限界代替率を、全微分(total differential)を使って

求める。 

) , (  L K f Y = を全微分すると、  dL L Y dK 

K Y dY

∂ ∂

+ ∂ ∂

L K ,  は等量曲線に沿って変化することから  0 = dY  、つまり  0 = ∂ ∂

+ ∂ ∂  dL 

L Y dK 

K Y 

変形して、 K Y L Y 

dL dK

∂ ∂ ∂ ∂

− = (1.5)

β α L AK Y = を(1.5)にあてはめると、 

K Y L Y 

dL dK

∂ ∂ ∂ ∂

− =

β α

β α

α β 

L AK L AK 1 

1

− = 

L K

− =

α β

となり、右図のように表される。

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1.4 資本と労働の代替弾力性

労働需要の決定には、生産関数の形だけではなく、労働コストと資本コストの相対価格

も影響すると考えられる。生産要素の相対価格 r w 

が変化したとき、生産要素投入量の組み

合わせ L K 

(資本集約度)がどれほど変化するか、という指標として、資本と労働の代替弾

力性が用いられる。具体的には、以下の式で表される。 

r w r w d L K L K d 

/ ) / ( / ) / (

= σ (1.6)

コブ=ダグラス型生産関数は、 この値が 1 となる関数である。 以下より対数微分を使って、

それを証明する。 

) ( log  x f y = において、合成関数の微分によって ) ( ) ( ) ( ) ( log x f x f 

dx x df 

dx x f d y

′ = ⋅ = ′ が成り

立っていることを利用すると、 

L K L K d 

L K d 

/ ) / ( log = 、および 

r w r w d 

r w d 

/ ) / ( log = となる。これを(1.6)に代入すると、 

r w d 

L K d 

log 

log = σ (1.7)

企業が利潤最大化行動をとるものとすると、そのもとでは r w MRTS = が成り立っている。

これを(1.7)に代入し、次式を得る。 

MRTS d L K d 

log 

log = σ (1.7) ’

コブ=ダグラス型生産関数である(1.1)での技術的限界代替率は、 L K MRTS

− =

α β

とな

ることから、

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L K MRTS

− =

α β log log 

L K log log + − =

α β

したがって、 L K d MRTS d  log log = となる。これを(1.7) ’に代入し、  1 = σ を得る。

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