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いま注⽬したい品質とは?(その1) ユーザビリティと利⽤時品質 〜ユーザビリティ, UX, 利⽤時の品質の考え⽅〜 IPA/SEC ソフトウェア品質説明力向上・普及WG委員 NPO法人人間中心設計推進機構(HCDNet)理事) 吉武 良治 芝浦工業大学 デザイン工学部デザイン工学科 ユーザーエクスペリエンスデザイン研究室 201536

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いま注⽬したい品質とは?(その1)ユーザビリティと利⽤時品質〜ユーザビリティ, UX, 利⽤時の品質の考え⽅〜

IPA/SEC ソフトウェア品質説明力向上・普及WG委員

(NPO法人人間中心設計推進機構(HCD‐Net)理事)

吉武 良治

芝浦工業大学 デザイン工学部デザイン工学科

ユーザーエクスペリエンスデザイン研究室

2015年3月6日

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本⽇のキーワード

●利⽤時の品質/ユーザビリティ

●ユーザーエクスペリエンスデザイン

●ユーザー中⼼設計/⼈間中⼼設計

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利⽤時の品質 = 製品品質

利⽤時の品質 ≠ 製品品質

利⽤時の品質 ≒ 製品品質

利⽤時の品質・・・使いやすさ(Usability)とは?

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ユーザビリティとは(ISOの定義)

ユーザー

利用の状況

3つを決めて3つで測る

(有効さ,効率,満足度)

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ユーザビリティとは

ユーザー

☺有効さ😭×

満足度

効率😣

利用の状況

☺😢😰 😣 😥😶

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ユーザビリティの考え⽅(ISOの定義)

• ISO 9241‐11/JIS Z 8521のユーザビリティの定義

–ある製品が,指定されたユーザーによって,指定された利用の状況下で,指定された目的を達成するために用いられる際の,有効さ,効率及びユーザーの満足度の度合い

• 関連用語の定義

有効さ(effectiveness):ユーザーが

指定された目標を達成する上での正確さ及び完全さ

効率(efficiency):ユーザーが目標を

達成する際に正確さと完全さに関連して費やした資源

満足度(satisfaction):不快さのない

こと,及び製品使用に対しての肯定的な態度

利用の状況(context of use):ユー

ザー,仕事,装置(ハードウェア,ソフトウェア及び資材),並びに製品が使用される物理的及び社会的環境

※インタラクティブシステムの人間中心設計プロセス(ISO 9241-210)等、関連のISO/JISでも同じ定義を採用しています

ユーザー、利用の状況、目的等が異なると、ユーザビリティは変化する

3つ決めることが必要、3つの尺度で測定できる

ユーザー

利用の状況

目標

有効さ

効率

満足度製品/サービス

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ユーザーエクスペリエンスデザインとは?

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機能重視からユーザー体験重視へ

時間

ユーザーが望む機能や性能

機能・性能

ギャップ

技術で実現できる機能や性能

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ユーザー体験を意識した企画・開発

機能や性能中心の企画・開発からユーザーの体験価値を重視した取り組みへ・・・

機能・性能中心の開発 ユーザー体験を重視した開発

付加価値 最新の技術 新しい体験、心地よい体験

優先する参照情報

要素技術(プロセッサ、メモリ、部品等)のロードマップ

ユーザーの業務や生活

企画・開発の焦点

個々の製品単体 様々な機器やサービスによって提供されるユーザーの体験(トータルソリューション)

製品の価格 高機能・高性能=高価格 ユーザーにとって価値

開発体制/組織 事業部制、限定的な組織間協業

横断的な組織、目的のために組織や会社を越えた協業

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ユーザーエクスペリエンス(UX)・デザインとは?●ユーザーが体験するものすべてを考慮して、トータルにデザインすること

– あるシーンにおいてユーザーが接するものすべて

– ユーザーと人工物、環境、関係者と関わるすべての時間や接点

●ユーザーインタフェース・デザイン ⇔ ユーザーエクスペリエンス・デザイン

興味をもつ

注文する 購入する

開梱する

導入する

使う

質問をする

使い込むサポートを受ける

アップグレードする

トータル・ユーザー・エクスペリエンス

画面デザインナビゲーションデザイン

利用の状況(タスク/シーン)対象ユーザー(ペルソナ)とシナリオ

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ユーザビリティと魅⼒的品質/UX

水準ゼロレベル

ユーザビリティやあたり前品質

POSITIVEへ

Non-NEGATIVEへ

•操作しづらさ•わかりにくさ•応答の遅さ•不快さ•故障/フリーズ・・・

よりよいユーザー体験や魅力的品質

違和感なく使えるのが当然

不具合を体験すると次からは利用しなくなる

これがあるから購入する積極的に利用する

Non-negativeへの取り組みもPositiveへの取り組みもどちらも重要!

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•感動•楽しい/嬉しい•快適/満足

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• ユーザーエクスペリエンス (UX) /ユーザビリティは、

– 商品開発において実現すべき目標や特性のひとつです。

• 人間中心設計(HCD)やユーザー中心設計(UCD)は、

– 上記を実現するためのプロセスや手法などを用いた取り組みです。

使用者や利用の状況等によって商品/サービ

スごとに異なります

すべての商品やサービスで共通です

ユーザーエクスペリエンスとユーザー中⼼設計

UXD(ユーザーエクスペリエンスデザイン)は、商品やサービスの企画・開発において、よりよい体験を実現するためのデザイン= HCDやUCDとほぼ同義に使用されることが多い

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⼈間中⼼設計の国際規格 ISO 9241-210

インタラクティブ・システムの⼈間中⼼設計(HCD:Human-Centred Design)のプロセスに関する国際規格ISO 13407が1999年に発⾏され、翌年に⽇本⼯業規格JISとして制定されました。2010年には、その改訂版ISO 9241-210が発⾏されています。HCDは、ユーザー中⼼設計(UCD)と呼ばれることもあります。

ISO 13407: 1999 Human-centred design processes for interactive systems

JIS Z8530: 2000インタラクティブシステムの人間中心設計プロセス(13407の翻訳JIS)

ISO 9241-210: 2010 Ergonomics of human-system interaction Part 210: Human-centred design for interactive systems

人間中心設計の企画

利用の状況の把握と明示

ユーザーと組織の要求事項の

明示

設計による解決案の作成

要求事項に対する設計の評価

システムが特定のユーザー、及び組織の

要求事項を満足

ISO 9241-210のプロセス

適切に繰り返す

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UXデザインを実践・推進するために

ユーザー中心設計(UCD)/人間中心設計(HCD)

プロセス

手 法

スキル(人)

●ユーザー,タスク,環境等を正しく理解●調査・設計・評価の繰り返し

●UXDのための適切な手法の採用●ユーザーの参加

●適切なスキルをもった人材の参画●チームでの活動

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UCDプロセスのエッセンス

ユーザーの理解

と現状分析

デザインコンセプト

/プロトタイプ作成コンセプト評価

プロトタイプ評価

プロセス

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UCDはソリューションの可視化とその評価の繰り返し

デザイン案の可視化(プロトタイプの例)

デザイン案の評価(評価方法の例)

オズの魔法使いプロトタイプ

詳細プロトタイプ

デジタルプロトタイプ

簡易プロトタイプ

ワイヤーフレーム

シナリオ(文章) ヒューリスティック評価

認知的ウォークスルー法

デザインウォークスルー

(グループ)インタビュー

ユーザビリティテスト

ステークホルダーレビュー

専門家による評価

専門家による評価

ユーザーによる評価

ユーザーによる評価

ユーザーによる評価

関係者によるレビュー

設計の洗練

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UCD⼿法の例⼿ 法

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調査・分析手法/分析・可視化ツール デザイン/評価手法

・質問紙法/アンケート調査・デプスインタビュー・グループインタビュー・フィールド調査/エスノグラフィー・観察法(自然観察法、実験的観察法他)・フォトエッセイ・フォトダイヤリー・タスク分析・上位下位関係分析法・プロトコル分析・エクスペリエンスマップ・カスタマージャーニーマップ・発話エモーションマップ

・ペルソナ・シナリオ法・ペーパープロトタイピング・オズの魔法使いプロトタイプ・ヒューリスティック評価・認知的ウォークスルー・詳細プロトタイピング・アクティングアウト・ユーザビリティテスト・思考発話法・パフォーマンス評価・視線計測・生理指標による評価・官能検査/官能評価・デザインガイドライン

代表的な⼿法/ツール

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HCDの専⾨家資格の例

人間中心設計専門家– 認定団体:NPO法人人間中心設計推進機構

– 現在、2種類の資格• 人間中心設計専門家,人間中心設計スペシャリスト

– http://www.hcdnet.org/certified/

人間工学専門家(CPE)– 認定団体:一般社団法人日本人間工学会

– 現在、3種類の資格• 人間工学専門家,人間工学準専門家、人間工学アシスタント

– https://www.ergonomics.jp/cpe/

スキル

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HCD専⾨家コンピタンス体系

B. プロジェクトマネジメントコンピタンス

プロジェクトにおいてHCDプロセスを推進しマネジメントすることに関する能力

ユーザーの要求を満たす製品の実現

要求分析と仕様化

HCDプロセスの計画立案

設計解決案の作成

要求に対する評価

利用状況把握と明示

A. 基本コンピタンス

K. HCDに関する基礎知識 HCDに関する理論・関連学問知識・実務知識

C. 導入推進コンピタンス

組織に対してHCDを適用・導入し普及・推進することに関する能力

プロジェクトにおいてHCDのプロセスの各活動を実施して適切な成果物を産出できる能力

A1. 調査設計能力A2.ユーザー調査実施能力A3.定性・定量データの分析能力

A4. 現状のモデル化能力

A12.ユーザーによる評価実施能力

A13.専門知識に基づく評価実施能力

A5. ユーザー体験の構想・提案能力A6. ユーザー要求仕様作成能力A7. 製品・事業の企画提案能力

A10. 情報構造の設計能力A11. プロトタイピング能力

認定専門家実務経験5年以上

認定スペシャリスト実務経験2年以上

検定(予定)

資格認定との対応

L. テクニカルコミュニケーション能力HCDのプロジェクト及び活動を円滑に実施するために必要となる基礎的なコミュニケーション能力

A8. 製品・システム・サービスの要求仕様作成能力

A9. デザイン仕様作成能力

スキル

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NPO法⼈HCD-Netのウェブサイトより

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SQuaREによる定義

利用時の品質

– 特定の利用状況において,特定の目標を達成するために,特定の利用者が彼らのニーズを満たすために,有効性,効率性,リスク回避性及び満足性を満足して製品又はシステムを使用することができる度合い

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SQuaREにおける 利⽤時の品質モデル

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SQuaREにおける 製品品質モデル

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SQuaREの品質モデルの対象

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品質モデルが直接対象とする実体利用時の品質に影響を与える幾つかの要因

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2506xの拡張部⾨:Usability関連規格

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ISO/IEC 2503n品質要求部門

ISO/IEC 2501n品質モデル部門

ISO/IEC 2500n品質管理部門

ISO/IE C 2502n品質測定部門

ISO/IEC 2504n品質評価部門

ISO/IEC 25050~ISO/IEC 25099 SQuaRE拡張部門

• 25062 Common Industry Format(CIF) for Usability Test Reports• 25063 Context of use description• 25064 User needs report• 25065 User requirements specification• 25066 Usability evaluation report• User interaction specification• User interface specification

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講演のまとめ

1. 利⽤時の品質や使いやすさを考える場合,利⽤者,⽬標,利⽤の状況の特定が必要

2. 使いやすさは,有効さ,効率,満⾜度などで測ることが可能

3. 使いやすさやUX向上のためのHCD/UCD プロセス,⼿法,スキル(HCD専⾨家等) SQuaREの品質モデルと拡張規格の活⽤

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ありがとうございました

芝浦工業大学

ユーザーエクスペリエンスデザイン研究室

http://www.sic.shibaura‐it.ac.jp/~yoshitak/