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1 インド・ケーララ州におけるマイクロファイナンス ―グループレンディングの機能と共同体の役割

―グループレンディングの機能と共同体の役割 · れに対するグループレンディングの機能を今一度検証する必要があると考えられる。この

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インド・ケーララ州におけるマイクロファイナンス ―グループレンディングの機能と共同体の役割

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要 約

バングラデシュのグラミン銀行で有名なマイクロファイナンスだが、南インドに位置す

るケーララ州では、1990年初頭からクドゥンバシュリ(Kudumbashree)と呼ばれる独自

のマイクロファイナンス・プログラムが実施されている。貧困女性を組織化し、グループ

連帯保証制度のもとマイクロファイナンスを実施しているこのプログラムは、現在まで、

急速に融資・貯蓄残高を伸ばしながら高い返済率を維持しており、良好なパフォーマンス

を示している。しかし、これまでのところ、各グループ内部の実態とそこでのグループレ

ンディングの機能については、明らかにされていない。プログラムの政策妥当性を検証す

る社会的な要請と、90 年代後半からみられるグループレンディングの機能に関する懐疑的

研究の潮流を受けて、ケーララ州のマイクロファイナンスにおいても、その有効性を検討

することが急務となっている。本稿は、2005年に筆者が実施した現地調査を主たる材料と

しながら、クドゥンバシュリ・プログラムのパフォーマンスをグループレンディングや共

同体(自治的大衆組織)との関係に着目して分析することで、グループ内部における金融

活動の実態を明らかにしようとするものである。

本稿の分析より、貧困層をターゲットとしているはずのグループ内部で、実は貧困者と

非貧困者が混在し、結果として貧困層への融資が制限されている事実が判明した。貧困者

を迂回しながら非貧困者へ融資することで貸し倒れリスクを軽減する、グループレンディ

ングの「二極化」とも呼ぶべき機能が働いていたのである。高い返済率を保ちながら融資・

預金残高を着実に伸ばし続けたクドゥンバシュリは、貧困層への信用供給という点では形

骸化していることが明らかとなった。

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最後に、村落共同体がプログラムに対して及ぼす影響を踏まえながら、問題解決に向け

てプログラムが目指すべき方向性と現実的な対策についても触れる。

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目次

はじめに

1章 ケーララ州におけるマイクロファイナンス・プログラム

1節 インドにおけるマイクロファイナンスの取り組み

2節 NHGプログラムの概要

3節 文献資料に基づく NHGプログラムの成果

2章 NHGプログラムの実態-チラインキル村の事例

1節 調査村の概要

2節 調査村における金融取引

3節 グループレンディングによる「二極化」

4節 自治的大衆組織の影響

3章 まとめと提言

1節 まとめ

2節 提言

<図表>

<参考文献・資料>

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はじめに

バングラデシュ・グラミン銀行の貧困削減効果が注目されて以来、いわゆるグラミン・

モデルを踏襲するマイクロファイナンスが世界中に普及してきた。しかしながら、その代

表的な手法として知られるグループレンディングや連帯保証制度については、90 年代後半

からその有効性に疑問を投げかけるような研究が蓄積され始め、スキームを変更する機関

も出始めている(Armendáriz de Aghion and Morduch[2005])。実際、グラミン銀行も 2002

年にグループレンディングを放棄し、新しい融資スキーム(グラミンⅡ)に移行している1。

モーダック[2004]によれば、グループレンディングという制度の硬直性が、顧客のリスクに

応じた貸し手による柔軟な対応を妨げていたという。

1990年代には、グループレンディングがモラルハザード(Hoff and Stiglitz[1990])、逆

選択(Hoff and Stiglitz[1990]、Ghatak[1999])、戦略的債務不履行(Besley and

Coate[1995])という情報の非対称性に起因する諸問題をいかに緩和するのかという論点に

ついての研究が数多く発表された。近年では、特に高い返済率との関係に注目して、グル

ープレンディングをはじめとする革新的手法の有効性を検討することが、マイクロファイ

ナンス研究のひとつの潮流となってきている(Coleman[1999]、Gine and Karlan[2006]、

Karlan[2006]、Kono[2006])。Armendáriz de Aghion and Morduch[2005]は、「連帯保証

制度がマイクロファイナンスを成功させている唯一の手法であるとの神話(p.4)」に反論し、

融資の逐次的拡大(dynamic incentives)2、猶予期間のない返済3、公開融資承認プロセス

1詳しくはグラミン銀行のHPも参照されたい。 2新しい借り手には、少額の融資枠を設定し、取引を繰り返すごとにそれを拡大していくという

スキームのこと。(Kono[2006])。 3 多くのマイクロファイナンス機関において、融資の返済は毎週・隔週・月一回のいずれかの頻

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(public repayments)4などの手法が重要な役割を果たしていると主張している。当初、相

互監視(peer monitoring)や相互選抜(peer selection)、返済の履行強制(enforcement)

を通じて、返済率の改善と取引費用の軽減に貢献すると考えられていたグループレンディ

ングには、過度の圧力を生じさせ、良好な顧客を融資から遠ざけながら、マイクロファイ

ナンス・プログラムの発展と持続性を脅かしているという負の側面も内在していることが

解明されてきているのである。しかし未だに、多様な農村共同体や村落構造に着目しなが

ら、この手法がどのような条件下でどのように機能するのか(あるいはしないのか)とい

う点について、確定的なコンセンサスは得られておらず、さらなる実証研究の積み重ねが

望まれているように思われる(Armendáriz de Aghion and Morduch[2005:Ch.4]、三重野

[2006])。

バングラデシュのグラミン銀行で有名なマイクロファイナンスだが、南インドに位置す

るケーララ州では、農村部に広く普及し高い水準での効果が期待されているクドゥンバシ

ュリ(Kudumbashree)5という独自のマイクロファイナンス・プログラムが実施されてい

る。このプログラムでは、1990 年初頭から、州政府主導で女性を中心とした自助団体

(Neighborhood group: 以下 NHG とする)が組織され、グループレンディングによる連

帯保証制度のもとマイクロファイナンスが行われている。そして、農村の末端部にまで広

く浸透しながら、貧困層の金融アクセス改善に貢献していると考えられているのである

度で行われている。信用を猶予期間なしの分割払いで返済させることは、借り手の情報を入手し

ながらリスクの高い顧客かどうかの判断を可能にし、情報の非対称性を緩和する(三重野[2006])。 4 参加者すべての前で融資計画と返済状況を審査することで、公平性を確保しながら債務不履行に対する社会的制裁を強化することができると考えられている(伊藤[2004])。 5 “Kudumbashree”はヒンディー語で「家庭の幸せ(prosperity of the family)」を意味する言葉である(須田[2006:補論]、Pat[2005])。

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(Pat[2005]、Kudumbashree Official Website)6。しかし、ケーララ州のマイクロファイ

ナンス・プログラム(以下 NHGプログラムとする)の有効性に関しては、管見ではあるが、

実は十分な実証研究に裏打ちされたものとはいえないように思われる。換言すれば、NHG

プログラムによる貧困削減効果や金融組織としての NHGのパフォーマンスは、実態が十分

に検討されないまま、その「成功」要因がグループレンディングと結び付けて解釈されて

いるのである。

上述したマイクロファイナンスに関する研究上の潮流と、NHGプログラムの政策として

の妥当性を評価する現実的な関心を踏まえて、NHGプログラムのパフォーマンス評価とそ

れに対するグループレンディングの機能を今一度検証する必要があると考えられる。この

点を明らかにすることが本稿の課題である。

また、NHG の金融活動に対して、ケーララ州における村落共同体7の体現と考えられる

労働組合やカースト団体などの大衆組織が、どのような影響を与えていたのかも明らかに

しなければならない。なぜなら、強固な村落共同体を維持してきた日本で信用組合が村落

を基盤に健全なパフォーマンスを示したことから(斉藤仁[1989])、同様に農村部で密度の

濃いネットワークを形成するケーララ州の自治的大衆組織が、マイクロファイナンスのパ

フォーマンスを高めている可能性があると推測できるからである8。しかし、NHG プログ

ラムについては、この視点からの検討もこれまであまり行われてこなかった。そこで本稿

6 NHGプログラムに対する肯定的な評価とは反対に、須田[2006:補論]は現地調査にもとづいて、このプログラムが貧困層の金融ニーズ(特に融資の側面)を充足しきれていない実態を指摘して

いる。 7ここでの共同体とは、速水[2000]のいう「親密な個人的交流に基づいた相互信頼関係を紐帯とする集団」のことであり、その中でも特に中間的な村落・部落共同体を対象としている。 8 たとえば、ベトナムを事例としながら農村金融における共同体(大衆組織や集落)の役割について分析した研究として泉田[2003:第 7章]や岡江[2004]などがある。

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では、マイクロファイナンスに対する経済組織としての共同体の諸機能についても、情報

の共有や履行強制機能を通じた取引費用の削減という視点から考察したい。

本稿の構成は以下の通りである。まず 1章では NHGプログラムの背景として、インドで

実施されてきたマイクロファイナンスの変遷を簡単に概観し、その後で NHGプログラムの

特徴や成果について文献資料をもとに整理する。続いて 2 章では、筆者が行ったチライン

キル村での現地調査を主な分析材料としながら、NHGプログラムの貧困削減政策としての

有効性とグループレンディングとの間にある因果関係について考察することで、その実態

を浮き彫りにする。また、共同体の体現化としての住民組織が、どのような役割を果たし

ているのかも検証する。最後に 3 章で、本稿のまとめとそこから導かれる政策的含意に言

及したい。

1章 ケーララ州におけるマイクロファイナンス・プログラム

1節 インドにおけるマイクロファイナンスの取り組み

インドにおける農村金融システムの主な担い手は、商業銀行、地域農村銀行(Regional

Rural Bank: RRB)、単位信用農業協同組合(Primary Agricultural Credit Society: PACS)

である。全国農業農村開発銀行(National Bank for Agricultural and Rural Development:

NABARD)が、これらの農村金融システムを管理し、インド準備銀行および連邦政府の資

金を、傘下の金融機関に農業・農村貸出の原資として供給(リファイナンス)している9。

9 インドにおける農村金融システムの発展過程について詳しくは、須田[1999]を参照。

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バングラデシュと同様に、これまでインドでも人口の約 3~4割に達するといわれる膨大

な貧困層をターゲットにしたマイクロファイナンス・プログラムが実施されてきた。周知

のとおり、世界最大のマイクロクレジット・プログラムと謳われた総合農村開発計画

(Integrated Rural Development Programme: IRDP)が、1970年代末から始まり、80年

からは全国的に展開することとなった。しかし、1998年 11月までの累積借り手数は 5380

万人、累積融資総額は 1950億ルピーに上ったが、このプログラムにより貧困から抜け出せ

た世帯は 16~18%で、近年の返済率は 25~33%にとどまっており、その評価は低い(須田

[2006:1章]、中村[2004])。1990年代初めからは、SHG-銀行連結プログラム(SHG-Bank

Linkage Programme)と呼ばれるマイクロファイナンス・プログラムが新しく実施され、

IRDPとは対照的に、貧困者の生活安定化、所得向上への貢献、女性の地位向上、貯蓄動員

の精巧、高い返済率などの点で一定の評価を受けている10(須田[2006:第 5章]、中村[2004])。

2節 NHGプログラムの概要

インド全国で IRDPやSHGプログラムなどのマイクロファイナンスが実施される一方で、

ケーララ州で近年急速に拡大しているのが、州政府と住民組織が連携しながら推進してい

る NHGプログラムである。

10 全国展開する SHGプログラムやケーララ州の NHGプログラムのほかにも、インドでは様々なマイクロファイナンスが実施されている。中村[2004]によれば、現在インドで展開しているマイクロファイナンスは、①SHGモデルのほかに、②グラミン銀行踏襲モデル、③NBFC(Non-Banking Finance company)モデル、④組合モデルがある。SHG-銀行連結プログラムについて、詳しくは中村[2004]や須田[2006:第5章]を参照されたい。

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(1) ケーララ州の村落構造-活発な自発的大衆組織

それでは、NHGプログラムの概要とその特徴について俯瞰する前に、ケーララ州の村落

構造および各種大衆組織の実態について簡単に整理しておきたい。

a. ケーララ州の概要

ケーララ州は、インド南部に位置する人口約 3,200 万人の、インドの中では比較的小さ

な州である。この州は 1957年に世界で初めて選挙によって共産党政権を生んだことで知ら

れている(佐藤[2003])。その後もしばしばインド共産党(マルクス主義)が単独ないし連

立で政権につき様々な政策がとられる中で、経済発展度に比して教育や福祉分野の改善に

大きな成果をあげた(表 1参照)。そして、その発展形態は「ケーララ・モデル」として世界

的に注目されている。例えば、ケーララ州の識字率は 90.92%(男性 94.20%、女性 87.86%)

でインド全国の中で最も高く、とりわけ女性の教育水準が非常に高いことがわかる。それ

に加えて、女性の平均余命や乳幼児死亡率、女性比の優れた数値から、「女性の能動的機能

(women’s agency)」を軸とした、女子教育の進展、保健衛生の改善、乳幼児死亡率の低下、

合計特殊出生率の低下などといった一連の好循環をなす連鎖が存在していたと推測される

(佐藤[2003]、Dreze and Sen[1995])。

b. ケーララ州における活発な組織活動

このようなケーララ州の優れた社会指標の背景には、ケーララ社会で高度な組織化が実

現され、自発的な社会運動が非常に活発であったことが一因としてあげられる11。ナーヤル

と呼ばれる母系制カースト集団にはじまり、農民組合、労働者組合などの政党系組合、さ

11 Dreze and Sen[1995]は、高い教育水準を実現した背景について、独立以前のトラバンコール藩王国時代における行政の熱心な取り組みにも言及している。

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らには、ケーララ科学文化協会(KSSP)などの市民運動体、海外資金を財政的基盤とする

NGOなど、農村の末端部まで到達する多様な組織がケーララ社会では形成されている。そ

の活動分野は、食料流通、社会保障、教育、環境、保健衛生など民衆の生活の質にかかわ

る非常に広い範囲にわたっており、民衆の利益に反する事柄に対しては活発な政治批判や

アドボカシー活動が展開されていた(Frank and Chasin[1994]、斉藤千宏[1995a,1995b])

12。

(2) NHGプログラムの概要13

さて、以上みてきたように、インドの中では驚異的に高い福祉水準を達成しているケー

ララ州だが、ケーララ・モデルに対するいくつかの批判的検討が展開されているのも事実

である14。1999年の州内貧困率も、インド全国の平均(26.3%)よりは低いものの、12.72%

に達していた(Government of Kerala[2005])。貧困層にとって、フォーマル金融機関から

消費目的や資産形成のための融資を受けることは非常に難しく、高利貸しなどの搾取的な

インフォーマル金融に頼ることもしばしばあった。そこで、1999年 4月にケーララ州政府

は、クドゥンバシュリ(Kudumbashree)と呼ばれる独自の貧困削減政策を開始したので

ある。

a. 貧困層の特定と組織化

12 Frank and Chasin[1994]は、ケーララ州が高い福祉・教育水準を達成した要因として、進取的な組織活動のほかに、生態環境や国際貿易に携わった歴史の長さなどにも触れている。 13 以下は、主に州都トリヴァンドラムにある NHGプログラムのヘッドオフィスで行ったヒアリングとクドゥンバシュリ の HPによる。 14詳しくは佐藤[2003]や Prakash[2004]、Dreze and Sen[1995]などを参照されたい。

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このプログラムでは、役場(Panchayat)の協力のもと、まずは農村調査を行いながら独

自の指標を基準にリスクを抱えている家族を見つけ出していく。その指標とは、1)土地なし、

または土地の所有が 0.1エーカー以下、2)居住するための家がない、またはあっても著しく

荒廃したものしかない、3)衛生的なトイレがない、4)300m内に安全な飲料水へのアクセス

がない、5)何らかの理由(離婚、死別など)で世帯主が女性、6)世帯内に常時雇用されてい

る人(regularly employed person)がいない、7)指定カースト・指定部族である、8)身心

に障害のある人、または慢性的な疾患にかかっている人が世帯内にいる、9)世帯内に非識字

の成人がいる、の 9項目である(Kudumbashree Official Website)15。そしてこの項目の

うち、4つ以上に当てはまる世帯は、リスクを抱えた貧困世帯であるとみなされ、その世帯

の女性が 15~40人ほど集まって NHG(neighborhood group)へと組織化される。この NHG

は、上部組織として区(ward)レベルの ADS(area development society)、パンチャーヤ

ト(panchayat)レベルの CDS(community development society)を持つ。NHG内では

議長と書記を含む 5 人のボランティアが選出され、ADS は 10~15 の NHG のボランティ

ア 5 名が参加した連合組織である。パンチャーヤトレベルの CDS には ADS で選ばれた 7

人が参加している。NHGプログラムでは、この NHG-ADS-CDSという 3階層の組織が受

け皿となりながら、女性のエンパワメントと貧困緩和のために包括的な取り組み(マイク

ロ・エンタプライズによる所得創出、職業トレーニング、保健衛生、インフラ整備、飲料

水の供給等)が行われており、その中のひとつにマイクロファイナンスが含まれている。

15 この指標は農村部で使用されるもので、都市部での貧困層の特定は、その社会状況に適合した別の指標を用いて行われる。

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b. NHGプログラムにおけるマイクロファイナンス

それでは、NHGプログラム下で行われているマイクロファイナンスに焦点を当てて、さ

らに詳しく活動内容をみていきたい。

NHG グループは週一回メンバーの家でミーティングを開き、NHG ごとに決められた額

を貯金する。融資を受けている人は毎週そこで返済し(猶予期間のない返済)、融資希望者

への貸付承認も話し合いで決定される。融資条件や期間はグループごとに決められている

が、基本的に無担保での貸付となっている16。集められた貯蓄や融資状況の記録は、所得創

出活動ボランティアが担当し、毎ミーティング後に金融機関の口座へ集めたお金を預金し

に行く。これらのことから NHGプログラムでは、グループレンディングと猶予期間のない

返済という手法が採用されていることがわかる。さらに、このほかにも以下に述べるよう

な逐次的融資拡大も採用している。まず、活動を開始してから半年間問題なく運営されて

いる NHGは、フォーマル金融機関(国有商業銀行、信用農協など)から融資を受けること

ができるようになる。融資額の上限は預金額の 2 倍までで、年利は 12%である。銀行と連

結した後も NHGが返済を滞りなく終えれば、今度は預金額の 4倍まで融資を受けることが

できるのである。つまり、「実績を重ねるごとに NHGに対する金融機関からの融資額の上

限は増えていくのである」(須田[2006:p.165])。この年利 12%という利子率は、金融機関が

通常行う農業生産向け短期融資の利子率とほぼ同水準だが、消費目的の融資(18%程度)よ

りはだいぶ低い(須田[2006:p.176])。NHGは協同組合法などにもとづいた政府登録を行わ

16 クドゥンバシュリ・プログラムのヘッドオフィスで行ったヒアリングによれば、規則上は利子率も原則 NHGごとに決定していることになっているが、実際はスタッフによる NHGへの指導により決められているようである。また、このミーティングには州政府の役人も招かれ、プロ

グラムの説明や貯蓄・貸付活動のアドバイスも行っている。

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ないインフォーマルなグループで、その活動は政府の規制を受けない。そのため、その金

融組織としての役割に着目すれば、世界中で見られる回転型貯蓄信用講(ROSCA)のよう

なインフォーマル金融と同種のものと考えられる。

(3) NHGプログラムの特徴

NHGプログラムにおけるマイクロファイナンスのスキームを、グラミン方式(正確には

グラミン・クラシック・システム)と比較すると以下のような特徴が浮き彫りとなる17。

グラミン方式との共通点として、1)フォーマル銀行の融資対象とはならない貧困層(特に

女性)へのターゲティング、2)融資の高い返済率、3)グループレンディング制度下での無担

保融資などが挙げられる。こうした共通点は、グラミン銀行と同様に NHGプログラムにお

いても以下のようなメカニズムが働いていることを推測させる。すなわち、「取引規模が小

さく担保も持たない貧しい顧客を相互監視(あるいは相互選抜や履行強制)機能を持つ連

帯保証グループに組織することで、農村金融機関は彼らへの金融サービスにかかる取引費

用を削減できる」18(須田[2006:p.178])というものである。一方で、グラミン方式では、

連帯保証グループの大きさが 5人なのに対して、NHGは 15~20と比較的多く、グループ

規模の違いが相違点として挙げられる。

17 比較の視点として、中村[2004]や須田[2006:第 5章]による SHGプログラムとグラミン方式の比較を参考にした。 18 括弧内筆者加筆。

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3節 文献資料に基づく NHGプログラムの成果

(1) 農村部での普及

さて、次にマイクロファイナンスがどのような成果をあげているのか、ケーララ州政府

が出している年間報告書や NABARDの評価報告書を参考に紹介したい。

90年代から 2つの地域で実験的に始まった NHGプログラムは、2002年までにケーララ

州全体に拡大し、2006年現在で NHG数が約 17.7万組織あり、参加世帯数は 373.5万世帯

にも上る。1世帯 1会員の原則が守られていれば、州内女性人口(2001年の人口センサス

で約 1637.2万人)の約 22.8%がプログラムに参加していることになる。一方で、ケーララ

州における SHGプログラムの普及は、金融機関から融資を受けている SHGの累積数が約

3.37万組織(2004年 3月末現在)にすぎず(須田[2006:p.163])、すぐあとで見るように金

融機関と連結した NHG数と 2倍以上の差があることがわかる。これらのデータから NHG

プログラムの普及度は高いといえよう。

しかし、ケーララ州政府による年次報告書(Economic Review 2004)によれば、2003

年 8 月末現在でケーララ州の貧困ライン以下の世帯(number of families below poverty

line)は 172.4万世帯であるとされており、このことから現在 NHGプログラムに含まれる

世帯の 5 割以上は貧困ライン以上の世帯であるということになる。残念ながら資料がない

ために、NHGプログラム参加後にどれだけの貧困世帯が貧困ラインを超えたのか(つまり

プログラムの正確な所得創出効果)はわからないが、現時点で NHGグループにかなりの割

合で非貧困者が含まれているということはいえそうである。この事実は、グループを組織

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する際に独自の貧困指標を用いているとはいえ、貧困層をターゲットとした NHGプログラ

ムの効果に疑問を投げかける重要な論点である。(所得ベースでの)非貧困者と貧困者の混

在が NHGグループの金融活動にどのような影響を及ぼしているのかは、後で具体的に検証

したい。

(2) 預金残高・融資残高の拡大

クドゥンバシュリの HPによれば、2006年 11月末現在で、貯蓄を始めた世帯は約 372.1

万世帯に上り、貯蓄残高は約 77.1億ルピー(1世帯当たり平均 2070ルピー)である。融資

残高は約 188.8 億ルピー(同 5073 ルピー)となっており、2000 年以降、預金・融資とも

に順調に拡大してきている(表 2 参照)。さらに商業銀行や信用農協と連結している NHG

の数は、2006年 11月末現在約 7.8万組織あり、融資残高は 39.5億ルピーとなっている。

フォーマルな金融機関とリンクし融資を受けるためには、NABARDによって定められた基

準(活動年数・貯蓄残高・融資の利子率・融資返済率など 15 項目)を満たす必要がある。

そのため金融機関から貸付を受ける NHGの多さから、金融組織として良好なパフォーマン

スを達成していることが窺える。フォーマル金融機関と連結していない NHGも含め、融資

の返済率は各グループで異なるものの、概ね 95%以上の高い水準を達成している19。また、

プログラムが出している年次報告書(2001年度版)にも、「融資の返済率は 100%近くを達

成している」との記述がある。これは、前述した IRDPの返済率が 25~35%にとどまり、「計

画自体の回転資金が枯渇し」ているのとは対照的で(中村[2004:p.16])、評価に値するもの 19 クドゥンバシュリ・プログラムのプログラムオフィサーである Dr. K. krishnakumar氏へのヒアリングによる。

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であると考えられる。

2章 NHGプログラムの実態-チラインキル村の事例

以上、ケーララ州のクドゥンバシュリ・プログラムの成果についてマイクロファイナン

スの取り組みを中心に整理し、NHGプログラムが農村家計に与えた影響を俯瞰した。NHG

プログラムで行われているマイクロファイナンスに関する報告書が少なかったため、パフ

ォーマンスの全体像をデータに基づきながら詳細に分析することはできなかった。しかし、

おおよそこのプログラムが預金残高と融資残高を伸ばしながら順調に農村部に浸透し、高

い返済率を達成していることが明らかとなった。次に本章では、実際にグループレンディ

ングという手法が農村地域でどのように機能し、高い返済率や金融アクセスの改善とどの

ような因果関係を持っているのか、さらにはそこから見えてくる問題点はどのようなもの

なのかを明らかにしたい。

1節 調査村の概要

チラインキル村(Chirayinkil Gram)は、ケーララ州南部のティルバナンタプラム県(旧

称トリヴァンドラム県)にある。面積は 10.9k ㎡で、人口と世帯数はそれぞれ 33,000 人、

6,280世帯である。チラインキルの労働者の職業構成は、第一次産業が主労働者(1年以上

働いた者)の 35%であり、主にココヤシ繊維の加工業が多く、沿海地域では漁業が中心産

業となっている。一方で、90 年代以降海外への出稼ぎ労働者が急速に増えており、主労働

者の 1~2 割は UAE(アラブ首長国連邦)やドバイなどの中東産油国への出稼ぎ労働者で

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ある(須田[2004])。須田[2006]が 2003 年にチラインキル村で行った標本調査によると、

世帯の経済状況別に分けられた富裕層・中間層・貧困層のうち、貧しくなるほど海外出稼

ぎ者が少なくなっていることがわかっている。「経済基盤の重心が農業・漁業、そしてココ

ヤシ繊維産業といった伝統的産業から海外への出稼ぎへと急速に移っていく中で」、それに

上手く乗った世帯とそうでない世帯との間に貧富の格差が生じていると考えられる(須田

[2006:pp.154-155])。

このような状況下で、チラインキル村でも 1997-98年度から NHGプログラムが導入さ

れ、2003 年現在 95 の組織が活動しており、参加者は 2,395 人に上る。これはチラインキ

ル村のおよそ 4割の世帯が NHGに組織されていることになる(須田[2006:p.164])。

2節 調査村における金融取引

それでは、このような経済構造の変化と NHGプログラムの導入を背景に、チラインキル

村ではどのような金融取引が行われているのだろうか。この点について、須田[2006]がチラ

インキル村で、101 世帯(富裕層:25 世帯、中間層:40 世帯、貧困層:36 世帯)を対象

に実施した標本調査を要約する形で整理したい。

(1) 村民の借入ニーズと実態

まずはチラインキル村の住民がどのような資金ニーズを持ち、各金融主体がそれをどの

程度充足しているのかについてみる。調査の結果、過去 1 年間に最も多くの支出を要した

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項目として「医療費」をあげた世帯の割合が最も多かった(31.6%)20。しかもこの割合は、

貧しいほど高くなる(富裕層:22.7%、中間層:28.6%、貧困層:39.0%)。医療費をいかに

して払うのかということが、貧困層にとってきわめて切実な問題であることがわかる(須

田[2006:p.135])。このような資金ニーズに対する各金融機関の貢献は、どの程度のもので

あろうか。調査世帯全体において、上述した資金ニーズの財源として最も多いのは農協で

41.8%であった。次に多いのが年利 48~120%にもなるという高利の金貸しで、31.6%を占

める。金貸しの割合が村全体で非常に大きいことから、この村に近代的金融サービスが浸

透し始める一方で、インフォーマル金融の特徴として挙げられる「しぶとさ」(三重野

[2006]p.124)が確認できる。ここで貧困層に目を転じると、農協の 40.0%に対して、金貸

しと親戚・友人の合計が 68.6%を占め、信用制約に直面しながらフォーマル金融の利用が

制限されている実状が窺える(須田[2006:p.135])。この理由として、貧困層が低金利の農

協による融資を利用するためには、煩雑な手続きや担保を要求されるため、取引費用が相

対的に低いインフォーマル金融(金貸し、親戚・友人)を利用しているということが考え

られる(須田[2006:p.161])。しかし、ここで気になるのは、貧困層は金貸しに比べれば低

利でかつ無担保の NHGから借入していないのであろうか、ということである。

(2) 村民の預金と借入における NHGの役割

そこで NHGに関する経済階層別の利用状況を預金・融資両方の側面から、もう少し詳し

く見てみたい(表 3 参照)。調査対象である 101 世帯中、富裕層の NHG への預金は、13 20 医療費の次に多いのは順次、「住居の新・改築」(21.4%)、「資産の購入」(17.3%)、「子どもの教育」(11.2%)といった項目である。

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世帯(富裕層全体のうち 52%)であるが、借入世帯はわずか 2 世帯にすぎない。一方、中

間層の預金は 28 世帯(中間層全体のうち 70%)、借入は 20 世帯(同 50%)であり、実は

NHGの利用率が最も高い階層である。これに対してプログラムが最も重視しているはずの

貧困層では、NHGへの預金が 16世帯(貧困層全体のうち 44%)であるものの、借入世帯

は 8 世帯(同 22%)にすぎない。世帯数ではなく金額ベースでみると、貧困層の預金残高

(224,710ルピー)および融資残高(899,200ルピー)に占める NHGの割合は、それぞれ

わずか 15%(33,710ルピー)、1.4%(12,350ルピー)にすぎない。一方で、金貸しからの

借入残高(386,500ルピー)が全体の 43.0%にも達しているのである。また、NHGへ預金

している総世帯数は、全部で 57世帯あるが、そのうち貧困層が占める割合は 28%(16世

帯)で、中間層の 49%(28世帯)と大きな差がある。この傾向は、借入になるとさらに顕

著になる。NHGからの借入世帯数は全部で 30世帯あるが、このうち貧困層は 26%(8世

帯)なのに対し、中間層は 67%(20世帯)となっている。NHGから借入残高のある世帯

のうち約 7割は中間層なのである。これらのことから、「貧困世帯へ低金利の資金を供給す

るというNHGの主要な目的は十分に達成され」ているとはいえず(須田[2006:pp.167-168])、

NHGの利用世帯として中間層の割合が最も高いという実態が浮き彫りとなった。

3節 グループレンディングによる「二極化」

ではなぜ NHGによる貧困層への融資が制限されているのだろうか。

NHGは金融機関と連結した後は年利 12%の低利な融資を利用することができるが、グル

ープ内の貸付は月利 2%(年利 24%)で若干高めとなっている。しかし、親戚・友人はと

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もかく金貸しなどのインフォーマルな金融よりは低利のはずであるから、利子率だけでは

貧困層への融資が制限されている説明として不十分である。そこで筆者は貧困層への融資

を阻害している要因として、グループレンディングが参加者の貸し手と借り手への「二極

化」を引き起こしている点に注目したい。そしてそれこそが、本稿の問題意識のひとつで

ある、マイクロファイナンスのパフォーマンス(貧困削減効果や高い返済率)とグループ

レンディングの相互関係を解き明かすキーワードなのである。

1章 3節でも指摘したように、NHGプログラムでは、所得という一面的な価値観にとら

われず生活の質全体を包括的に考慮した指標を用いているため、貧困層・中間層・富裕層

が混在することでグループ内に経済的な格差が生じてしまう。

ではグループ内で借入希望者の承認を行う際に、どのような基準が用いられているのだ

ろうか。筆者がチラインキル村で、ある NHGリーダーにインタビューしたところ、彼女ら

が毎週行うミーティングで借入希望者の承認をする際に考慮するのは、その人の「返済能

力」であり、それは例えば「収入や所得」などで判断されるという。実質的な融資案件の

決定は、参加者の「経済的な」属性で決定されている可能性があるのである。すなわち、

グループ内の構成員は、選出理由から経済的均質性を欠き、その点では格差が存在しうる

にもかかわらず、借入の可否は、事実上「経済的」に返済能力があるかどうかに集約され

ていたと推測されるのである。このような状況下(グループ内における貧困者と非貧困者

の混在)では、相互監視型のグループレンディングが、融資を債務不履行がもともと起こ

りづらい非貧困者へと集中させるように機能してしまうのである。貧困層は、融資を受け

ることができなければ、NHG内では毎週定額を貯蓄する義務があるので赤字の貸付主体と

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なってしまう。こうして、グループレンディングが「低リスクの非貧困者(この場合中間

層)」という借り手と「高リスクの貧困者(この場合貧困層)」という貸し手とに「二極化」

させる働きをしていると考えられるのである。NHGプログラム内部で生じていたこの「二

極化」が、貧困層の借入先として NHGの割合を減少させており、マネーレンダーへの依存

から脱し切れていなかったのではないかと推測される。無論、グループ内での比較的高い

利子(年利 24%)での貸付条件が、貧困層が貸付を受ける障壁となることで、このような

グループレンディングの「二極化」機能をさらに加速させるように働いていることも否定

しきれない。

高い返済率を保ちながら融資・預金残高を着実に伸ばし続けた NHGの実態は、リスクの

高い貧困層への借入を制限しながら、債務不履行の生じづらい低リスクの中間層が高い頻

度・金額で利用していた結果だったのである。

4節 自治的大衆組織の影響

さて、ここで本稿のもう一つの問題意識である、共同体の機能がどのように具現化され、

マイクロファイナンスの効果に影響を及ぼしているのか、という点についても検討してみ

たい。

結論を先取りしてしまうと、先述したケーララ州に存在する農民組織は NHGプログラム

の推進にポジティブな役割を果たしていたと考えられるが、そこには以下のような背景が

ある。インドでは 1970年代からの IRDPが、1999年以降は SGSY(Swarnjayanti Gram

Swarojgar Yojana:50周年記念農村自営計画)と名を変えながらも存在し、様々な批判を

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浴びながらも、中央政府主導で農村金融網が行き渡っていた。つまり中央政府、中央銀行

の管理監督が NABARDなどのリファイナンス機関を通じて、末端の農村金融機関にまで届

く体制は整っていたといえる。しかし、膨大な農村人口に埋没する貧困層をみつけだし

NHGとして組織化していくためには、官(地方行政)のイニシアティブだけでは不十分で

あり、そもそも農村部に深く根付いている住民組織や互助組織の協力がなければ、プログ

ラムを継続するのは難しくなってしまう。だからこそ、上述したような形で協同組合や労

働組合が役場などと協力しながら、NHGプログラム推進に一役買っていたと考えられるの

である。

佐藤[2003]はケーララ州の優れた配給制度、医療制度、さらには教育制度のすべてにわた

って、住民、患者、父母などによるきわめて活発な参加と監視活動がみられたことを指摘

し、それらの組織化活動が福祉政策の健全で効率的な運営にも寄与していたことを言及し

ている。この自治的大衆組織(農業労働者組合、公務員組合、協同組合など)が、州政府

の制度運営に対するモニタリングと協働を通じて、NHGの結成・育成や銀行からの貸出コ

ストを抑えていたことは想像に難くない。これらの中間組織が信頼関係を紐帯とした共同

体の体現として、多くの住民を NHGへと組織化し、金融活動の仲介にかかわることで、情

報の非対称性・履行強制問題を克服し、取引費用の軽減に貢献していたのである。

また、このようなボランタリーな大衆組織の活動は、ケーララ社会における「女性の能

動的機能(women’s agency)」を発現させ、農民の「意識化」を促していったと考えられる。

リーテンは、ケーララ州の生活水準の高さ(福祉の実現)は人々の意識の転換と権利意識

の向上が鍵となっているとの見解を示し(Lieten[2002])、佐藤[2003]はその意識化の具現

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化として農民組織の高度な組織化があると考えた。こうした組織化にみられるような人々

の意識化は、マイクロファイナンスのような経済制度における人々の主体的かつ積極的な

参加をも助長したのである。それは、プログラムの最上部に位置する CDSに参加する女性

の多くが、女性組織や地域の教育や保健衛生委員など、なんらかの形で組織活動に従事し

た(あるいは従事している)経験を持つということからも容易に推測できる21。

3章 まとめと提言

1節 まとめ

以上インド・ケーララ州のマイクロファイナンス(NHGプログラム)の実態を捉えなお

し、グループレンディングのメカニズムや自発的な大衆組織が果たす役割を分析してきた。

Pat[2005]は NHGプログラムの高い返済率と住民参加率、さらに預金残高・融資残高の拡

大を指摘し、貧困層をターゲットとしている(はずの)プログラムを、信用ニーズを持つ

全州の人々に広げるべきであると論じた。しかし、実態はパットが想定していたものとは

異なるものであった。そもそも NHGプログラムの「成功」の根拠となっていた高い資金回

収率と農村部への金融サービスの浸透が、実は経済的リスクの低い借り手(中間層)に融

資が集まっている結果であり、当初目的とされていた貧困削減効果は形骸化してしまって

いると思われる。非貧困者の混在という事実そのものは、農村部における健全かつ近代的

な金融サービスの拡大という視点から見れば、それほど問題とはならないのかもしれない。

21 前述した NHGプログラムのヘッドオフィサーへのインタビューによる。

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むしろ、全階層的な農村住民の参加は、貯蓄動員の推進と金融規律の向上といった金融発

展の基本的条件をもたらす点で望ましいともいえる(須田[2006:p.206])。しかし、NHGプ

ログラムにみられるように、非貧困者の参加が貧困者の利益を阻害することにつながるロ

ジックが働くのであれば、重要な問題といわざるをえない。

一方、共同体の体現化としての大衆組織が果たす役割は、直接的関与と間接的関与の 2

つに大別されよう。直接的関与とは、州政府(実際は役場)と協力しながら住民の NHGへ

の組織化を推進したことである。他方、間接的関与とは、高度な組織化を媒体として生み

出されたケーララ社会内部での高い情報共有と社会的制裁の厳しさが、情報の非対称性の

克服や履行強制メカニズムなどの機能を果たしていたことである。

以上の分析結果については、分析過程における客観的事実の少なさと議論の抽象性から

その普遍性・一般性には慎重になるべきであろう。しかし、批判を覚悟の上でグループレ

ンディングによるこの「二極化」について、若干ながら理論的な解釈を試みたい。このメ

カニズムは、借り手間の均質性がグループレンディングにおける返済率といかに関係する

のか、という問題と密接につながっている。グループ内の経済・社会的均質性と返済率の

関係については、均質性が高ければ、情報ネットワークがより充実するため逆選択の回避

のためにプラスであることに異論は少ないであろう(牧野[2004])。しかし、均質性とモラ

ルハザードや戦略的債務不履行の防止の因果関係については議論の余地がある。均質性が

メンバー間の緊密度を高め、社会的制裁を強くすると考えた Karlan[2006]は、地理的近接

性と文化的均質性にみられるような社会的結束がループ内に存在する場合、モラルハザー

ドの回避と履行強制がより効果的に行われていることを実証した。その一方で、均質性を

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グループメンバーの直面するリスクという視点から検討すると、逆の結論が導かれる。職

業や階層などの均質性が低い方が、グループメンバー相互間のリスク分散によって返済率

を高めることができる可能性があるのである。

この文脈から本稿の分析結果を捉えなおすと、以下のような解釈ができよう。NHGプロ

グラムでは、収入や配偶者(夫)の就業形態の違いから各メンバーの直面するリスクが異

なるため、高リスク者の貯蓄が低リスク者への融資となる資金フローがおこっているので

ある。すなわち、グループ内の経済的な均質性が低いためにそれぞれのリスクが異なると、

グループレンディングには参加者を資金の貸し手(貧困層)と借り手(非貧困層)に分化

させる機能が潜んでいるのである。本稿の分析により、グループ内の均質性が欠如してい

ることで経済的リスクの相違が存在すると、グループレンディングの合理的帰結として貧

困層の少額貯蓄が非貧困者の融資源へ変質するという、予想外の資金フローが発生するこ

とが明らかになったのである。

2節 提言

では、限定的な貧困削減効果という NHGプログラムが抱える問題について、愚見ながら

解決策を述べたい。まずは NHGが目指すべき理想のシナリオを提示したい。自治的大衆組

織が NHGプログラムにおいて間接的・直接的な役割を果たしていたということは、ケーラ

ラ州の共同体には、NHGプログラムにおいてと同様に、フォーマル金融機関と貧困層を結

ぶ仲介組織となりうる潜在的可能性があるといえる(須田[2006:補論])。この機能をさらに

活かして貧困層に金融サービスを広めていくことが最も効果的と考えられる。農民組織や

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NHGのような仲介組織を普及しつつ機能を高めることによって、金融機関は貧困層融資の

リスクと取引費用を削減することができるのである。そして高い資金ニーズを持ちながら

フォーマル金融機関から十分な融資を受けられなかった貧困層への融資が可能となる。

しかし、NHG内部でさえ融資が制約される貧困層に対して、農協をはじめとするフォー

マル金融機関が早急に金融サービスを拡大するのは難しいのが現実であろう。そこで筆者

は、フォーマル金融機関による融資能力が改善される前に、NHGプログラムが貯蓄サービ

スの多様化を進めるべきであると考える。

現在、メンバーによる NHGへの貯金に利子はつかず、ミーディングごとに強制的に決ま

った額を徴収するという硬直的な貯蓄システムがとられている。一方で、預金利子はない

ものの、貸付から得た利子は NHGの利益となり最終的にはメンバーに平等に分配されてい

る。この経済的恩恵が、NHGプログラムにおける貧困層の貯蓄動員を実現していたひとつ

の要因でもある。グループレンディングの「二極化」によって融資が制限されながらも、

貯蓄には比較的積極的だった貧困層の行動もこれで説明がつく22。そもそも、貧困層は一般

の信用市場(インフォーマルも含む)で他者に資金を貸し付けるほどの金銭的余裕は皆無

に等しい。しかも、情報の非対称性がある状況下では、仮に貸付を行ったところで,契約

履行を監視することは非常に難しい。それが、NHG内でなら、良質な借り手を探す取引費

用が節約できる上に、デフォルトというリスクも負わずに、ほぼ確実に 12%の利子が還元

されるのである。人的ネットワークが事業に結びつきにくい貧困層が、100~1000 ルピー

程度の資金を運用する場合,他に条件の良い投資先がないことを踏まえれば、NHGへの参 22 無論、貯蓄動員を成功させた要因については、融資の逐次的拡大など他の革新的手法の貢献度も検証する必要がある。

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加はそれこそ合理的な行動といえよう。単体世帯では信用市場に参入しえなかった貧困層

を、政策的に組織化し、集合的な貸付主体ならしめた点こそが、NHGプログラムの本質的

な存在理由ともいえるのである。そこで、貧困層の貯蓄能力に着目しながら、それを活か

して金融資産を増加させるためにも、自由裁量度の高い個人貯蓄システムや複数の積立定

額貯金システムを導入すべきである23。頻繁に少額の現金を安心して積み立てることのでき

る貯蓄サービスは、ローンへのアクセスと同様か、それ以上に重要だからである(伊東

[2004])。従来、まとまった資金を得るために、融資の申請という選択肢さえも満足に用意

されていなかった貧困層にとって、自ら積み立てた貯蓄を引き出すという新たな選択肢が

加わるのである。農村金融市場への参入におけるリスクを軽減する意味でも、貯蓄の役割

を見直すことが、NHGプログラムの方向性として現実的であろう。近代的金融制度の浸透

過程として NHGが果たす役割は、貸付主体として貧困層を参入させ、貯蓄力の上昇と共に

フォーマル金融機関の利用を可能にさせるというシナリオの中にこそ見出されるのである。

最後に、本稿では NHGプログラムの発展が、農村経済全体と結びついてどのような意味

を持っているのかという点について、地域の産業構造なども踏まえて包括的に検証するこ

とができなかった。ケーララ州の NHGプログラムやそこでの資金フローが、農村経済全体

の中で持つ意味を解明していくことは、筆者の今後の研究課題としたい。

23 バングラデシュのグラミン銀行も 2002年から始まった新システム下で、多様な貯蓄商品の導入に踏み切っている(伊東[2004])。

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<図表>

表 1 ケーララ州の経済・社会指標

ケーララ州(2001年度)と

インドにおける順位

インド全体(2001年度)

一人当たりの所得 18.262ルピー (9/25位) 15.626ルピー

平均寿命(男性)

(女性)

71.7歳 (1/25位)

75.0歳 (1/25位)

63.9歳

66.9歳

乳児死亡率(男児)

(千人中) (女児)

(計)

15人 (15/15位)

13人 (15/15位)

14人 (15/15位)

67人

69人

68人

出生率 (千人中) 17.9人 (15/15位) 25.8人

死亡率 (千人中) 6.4人 (15/15位) 8.5人

女性比(男性千人に対

する女性の割合)

1036人 (順位データなし) 933人

識字率(男性)

(女性)

(合計)

94.20% (1/35位)

87.86% (1/35位)

90.92% (1/35位)

75.85%

54.16%

65.38%

出所:Government of Kerala HP(2005)、須田(2004)第1表より

注:各順位の分母は主要 15州、25州、直轄地含む全 35州となっている

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表 2 NHG の預金残高と融資残高の推移(単位:ルピー)

年 預金残高 融資残高

2000 8,839,604 5,614,067

2001 130,052,474 119,632,737

2002 575,000,000 n.a.

2003 1,635,200,000 1,981,600,000

2005 4,740,000,000 10,040,000,000

2006 7,706,020,501 18,879,029,033

出所:現地での聞き取り調査と Kudumbashree の HP をもとに筆者

が作成

注:2002年(融資)と2004年(預金・融資)についてはデータが入手

できず欠損値とした。

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表 3 NHG・金貸しの経済階層別預金残高と借入金残高(世帯、ルピー)

NHG への預金 NHG からの借入 金貸しからの借入

総世帯

13 2 4

33,430 700 93,000 富裕層

1,337 28 3,720

25

28 20 8

64,975 57,250 180,300 中間層

1,624 1,431 4,508

40

16 8 19(1)

33,710 12,350 386,500

貧困層

936 343 10,736

36

預金(借入)世帯

57 30 31(1) - 全

預金(借入)残高 132,115 70,300 731,800 -

出所:須田[2006:pp.156-157]の表 4-10、表 4-11 をもとに筆者作成

注: 「全体」の行を除く各セルの上段は、預金(借入金)のある世帯数(うち括弧内の数字は借入金残高

が不明な世帯の数)。中段は、預金残高(借入残高)の合計。下段は、総世帯数で除した平均預金額

(借入金)

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