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Aging、抗酸化そして食と健康
京都府立医科大学学長 吉川 敏一
長寿ネズミのゲノム解明
ハダカデバネズミの特徴アフリカに生息するネズミの仲間寿命約30年(普通のネズミは約3年)がんになりにくい
空気中に含まれる酸素が少ない地中で生活できる
Nature 2011, Oct 13
細胞の寿命を調節している「テロメア」と呼ばれる染色体を保護する遺伝子が活性化して、長寿につながっている可能性がある。DNAの傷を修復してがん化を防ぐ遺伝子が活発に働く。脳や肝臓、腎臓で働いている遺伝子発現が20年たっても生まれた直後とほとんど変わらない。
カロリー制限(70%)は霊長類(サル)の寿命を延長し、生活習慣病を予防する!
カロリー制限20年間自由摂食20年間
(Science 2009, 325:201-204)
エイジングの原因
その他
細胞機能低下
遺伝子変異
免疫能の低下
ホルモンレベルの低下
酸化ストレス
エイジングの原因
加齢にともなう身体機能の衰え
・・・そしてピンピンコロリ!
わが国の年齢調整死亡率の変化を考慮すれば、健康寿命延伸対策で必要なことは、悪性新生物と動脈硬化性疾患の予防対策である。
悪性新生物と動脈硬化性疾患は異なる疾患群であるが、共通の基盤病態が存在する可能性がある。
肥満
糖尿病 脂質異常
悪性新生物・動脈硬化性疾患
肥満はがんによる死亡の危険因子Calle EE et al. E Engl J Med 2003
がん死の相対危険度
がんの種類
前立腺(>35)非ホジキンリンパ腫(>35)
全がん(>40)全がん(>30)腎臓(>35)
多発性骨髄腫(>35)胆嚢(>30)
結腸、直腸(>35)食道(>30)胃(>35)
膵臓(>35)肝臓(>35)
1.34
1.49
1.52
1.68
1.70
1.71
1.76
1.841.91
1.942.61
4.52
日本人糖尿病の死因(疾患別)(全症例 18,385例での検討,
1991~2000年)
(%)
0 2 4 6 8 10 12胃がん
一般感染症
肝硬変症
膵がん
肺がん
糖尿病性腎症
肝がん
肺炎
脳血管障害
虚血性心疾患
3.5%
4.4%
4.7%
4.8%
5.3%
6.8%
8.6%
9.6%
9.8%
10.2%
糖尿病 50(1) 47-61, 2007
長寿遺伝子の発見
age-1
• 1988年
• 遺伝子に突然変異が生じた線虫の平均寿命が1.7倍に延びた
daf-2
• 1993年
• 通常の2~3倍生きる「耐性幼虫」の研究から発見
Sirtuin
• 2000年
• 酵母菌における研究で、この遺伝子を活性化することで長寿になることを発見。初の長寿遺伝子
長寿遺伝子とは?
カロリー制限
IGF/インスリンシグナルの抑制
サーチュインの活性化
長寿に関わる遺伝子群の発現、維持
長寿
カロリー制限(70%)は霊長類(サル)の寿命を延長し、生活習慣病を予防する!
カロリー制限20年間自由摂食20年間
(Science 2009, 325:201-204)
カロリー制限は年齢関連死亡を抑制する
年齢関連死亡
生存率
5/38(13%)
14/38(37%)
p=0.03
(Science 2009, 325:201-204)
カロリー制限は年齢関連疾患の発症を抑制する
年齢関連疾患非発症率
(Science 2009, 325:201-204)
年齢関連疾患とは?・糖尿病・がん・血管性疾患・脳萎縮
同じくらい太っていても・・・
皮下脂肪が多いタイプ 内臓脂肪が多いタイプ
腸管膜に付着した内臓脂肪
酸化ストレスと病態
酸化ストレス
細胞接着 DNA障害
NO不活化
LDL酸化 膜損傷
炎症 がん
動脈硬化
高血圧
細胞障害癌治療
加齢は、人間にとって避けることのできない現象である。
ならば、せめて加齢による老化を止める、あるいは遅らせる方法はないだろうか?
若さを保つサイエンス=抗加齢医学
カギは、老化を支配する活性酸素の生成をいかに制御するかということである。
予防医療と
バイオマーカーの重要性
生体内抗酸化能測定の問題点
I. 血漿(血清)中の抗酸化能
PAO、STAS、CoQ10酸化率、Vit.E、Vit.C
Ⅱ. 細胞膜中の抗酸化能
赤血球の溶血率、膜構成蛋白の酸化物
Ⅲ. 細胞核中の抗酸化能
Ⅳ. 疾病特異性の抗酸化能
動脈硬化:LOX1アゴニストとしての酸化物
21
抗酸化作用の評価法の問題点
・食品成分の抗酸化能を試験管内で評価
ORAC、SOACなど…
→生体内での効果を反映するとは限らない
・食品成分を摂取した人(動物)の血液の抗酸化能を評価
PAO、STAS、CoQ10酸化率…
→高いからリスクが低い、とも限らない
酸化ストレスに対する身体の反応と病気のリスク、このどちらにも直結するバイオマーカーが求められる。
血管内皮細胞上の主要な酸化LDL受容体、LOX-1の発見(Nature 1997 Sawamuraら)
(A)LOX-1は273アミノ酸からなる細胞膜一回貫通型II型受容体、分子量約50kDa
(B)リガンド結合部位であるレクチン様ドメイン内には、6個のシステイン残基
(C)二量体化の立体構造の表面に現れる塩基性アミノ酸の隆起がリガンド結合に重要な役割を果たす
LOX-1の特性
① 酸化(変性)LDLに結合する。
② LDLには結合しない。
③ 糖化LDLにも結合しない。
④ 他の過酸化物質にも結合する。
⑤ 高血圧、高脂血症、糖尿病、炎症などの動脈硬化危険因子
により発現が誘導される。
⑥酸化(変性)LDLとの結合により、シグナル伝達を司る。
0.01
0.1
1
10
100
Q1 Q2 Q3 Q4
LO
X index (
x106
)
0
1
2
3
4
Odds r
atio (
95%
CI)
LOX index
分布範囲
心血管疾患オッズ比
虚血性脳卒中オッズ比
四分位のLOX-indexと10年後発症のリスク
★10年後の脳梗塞発症のリスクを予測
※「高血圧」に匹敵するオッズ比3.0以上のバイオマーカーは初めて
LOX-indexの有用性
14
若さを保つには運動が大切!
体力-肥満-死亡率の関係
1 2 3 小
大
0
2040
60
80
100
120
140
160
死亡率(1万
人/年
間)
JAMA 1989 262: 2395-401.
<20
20-25
>25
体脂肪率
運動で予防・改善が期待できる生活習慣病
生活習慣病 運動効果 予防・改善効果
2型糖尿病 骨格筋の糖代謝亢進(インスリン抵抗性改善) 血糖値上昇抑制
高脂血症 骨格筋の脂質代謝亢進(中性脂肪分解能の上昇) 血清中性脂肪低下
HDL-C上昇
肥 満 骨格筋のエネルギー代謝亢進(基礎代謝の上昇) 体脂肪減少
高血圧 末梢血管拡張作用・体液量の減少 血圧上昇抑制
骨粗鬆症 骨吸収抑制・骨形成促進 骨密度の低下防止
大腸がん 免疫能向上、抗酸化能力向上 細胞のがん化抑制
身体活動量と生活習慣病予防(疫学試験より)
総死亡率
冠動脈疾患
高血圧症
糖尿病 週1回未満 対 それ以上の運動
運動:週2,000kcal未満 対 2,000kcal以上
運動:週2,000kcal未満 対 2,000kcal以上
強い運動習慣なし 対 あり
運動:週2,000kcal未満 対 2,000kcal以上
身体活動量
1.43
1.30
1.602.20
1.31
1.32
相対危険度
健康・体力づくり事業財団 健康日本21参考資料より
運動習慣なし 対 あり
「健康づくりのための運動指針2006」(厚生労働省)より
=(メッツ・時)
健康づくりのための身体活動量の目は?
「健康づくりのための運動指針2006」(厚生労働省)より
③当面の目標達成までの期間は?
確実にじっくりコース: ①-② 6cm ÷
=
腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上の人は、次の①~⑤の順番に計算して、自分にあった腹囲の減少法を作成してみましょう。
①あなたの腹囲は? ① 96cm
②当面目標とする腹囲は?メタボリックシンドロームの基準値は男性85cm、女性90cmですが、それを大幅に超える場合は、無理をせずに段階的な目標を立てましょう。
② 90cm
急いでがんばるコース: ①-② 6cm ÷
0.5cm/月
2cm/月
=
③ 3か月
③12か月
無理なく内臓脂肪を減らすために~運動と食事でバランスよく~
がんばるコース: ①-② 6cm ÷1cm/月 = ③ 6か月
⑤そのエネルギー量はどのように減らしますか?
運動で
食事で
1日あたりに減らすエネルギー
467 kcal
④目標達成まで減らさなければならないエネルギー量は?
④ 42,000 kcal
1日あたりに減らすエネルギー
467 kcal
kcal
kcal
※腹囲1cmを減らす(=体重1kgを減らす)のに、約7,000kcalが必要
30日÷ ③ 3か月 ÷ =④ 42,000 kcal
×7,000kcal =※
①-② 6cm
無理なく内臓脂肪を減らすために~運動と食事でバランスよく~
フルマラソン17回分
100kcalに相当する身体活動 (運動・生活活動)
100kcalに相当する食事
100kcalに相当する嗜好品
有効な老化予防法について、詳しくは、、、