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nnakagoshi
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サービスインタフェースの国際標準化戦略による
事業効果の分析
2010/1/16
中越
研究の背景
• 近年、通信、情報、電機などの産業において、多くの大企業は標準化活動に参画している。
3
標準化活動への参画の可否判断は、事業戦略に基づいて行われ、事前評価の過程で便益を定量的に予想することはほとんどない。
標準化活動のコスト・パフォーマンス評価
・標準化活動を行った場合、行わなかった場合の、製品コスト差異、顧客獲得差異、研究開発の成功・不成功確率の定量化による、経営層へのアピール出典:第4回事業戦略と標準化シンポジウム「 One NECとしての標準化活動強化」、原崎
出典:ICT国際競争力強化を目指した標準化・地財戦略シンポジウム「企業活動で重要性を増す国際標準」、野間口
NECの標準化活動の残存課題三菱電機の標準化戦略
研究の目的
• 企業の視点で、サービスインタフェースの国際標準化活動の有効性、事業への貢献について分析する– 「事業への貢献」とは、利益を得ること、社会貢献すること。
• 事業戦略にとって、国際標準化活動に参画するべきか、また参画する場合にはどのような方針で臨むべきかの指針を検討する
4
ネットワーク越しに提供されるサービス(Webサービス等)の使い方
サービスインタフェースの差異は、ソフトウェアにより吸収しやすく、従来数多く行われてきたソフトウェア製品、ハードウェア製品の標準化とは異な
る便益の性質を持つと考えられる。
標準化が進められている技術の一つに近年活発化しているサービスインタフェースがある。
例:「Yahoo!地図Web API」ホームページに地図を表示し、スクロールさせたり、吹き出しを表示したり、ルート再生させたりできる
標準化のタイプ
正の効果 負の効果
公開標準
デジュール
強制標準 強制法規市場強制力がある寿命が長い
当該国内市場限定企業関与困難
合意標準
国際機関標準市場影響度大信頼性高い
合意形成困難改正困難
国内標準信頼性高い地域特性可能
合意形成困難改正困難
デファクト
フォーラム標準業界標準
短期間でハイレベルな標準知財組み込みが容易
規格乱立の可能性信頼性保証なし
単独標準 企業内標準技術的自由度高い技術秘匿性高い
市場拡大機能弱い信頼性保証なし
非公開標準 合意標準
コンソーシアム標準
短期間でハイレベルな標準技術秘匿性高い
市場拡大機能なし
7
引用:新宅純二郎、江藤学、「コンセンサス標準戦略」
サービスインタフェースの標準化活動が主に行われるエリア
公的な標準
意思のあるすべての企業が自発的に合意によって策定
同様の目的で形成された企業連合で策定、閉鎖
的
市場の実勢により事実上の標準とみなされる規格や製
品
法律により義務付けられる
標準
仮説と課題
仮説:サービスインタフェースの国際標準化では、便益を得られないことがある
10
課題:便益を得るためには、企業はどのように行動するべきか?
仮説の検証方法
• 調査対象
– サービスインタフェース以外の標準化事例
• 3Com社のEDI
– サービスインタフェースの標準化事例
• デジュール標準
– Atom Publishing Protocol
• フォーラム標準
– Parlay X, Open Social, OpenID
• デファクト標準
– Open Search
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•過去の標準化について、間接法により純利益の累積現在価値を算定する•算定した値が公表値や現状に見合った便益を示しているかどうかを確認する•便益がマイナスになる場合があるかどうかを確認する
純利益とは、標準化による品種の減尐効果として金額に換算された基本収入、品種の増加防止収入、過渡期損失を合計した収益から標準化のためのコストを差し引いた値
標準化経済性研究会のレポートにより、企業・事業レベルでは、仮想評価法(CVM;Contingent Valuation Method)法か費用便益法が適している
文献(ISO、松浦、「標準化の便益」、1983)では、標準化の便益分析方法として定量的評価の間接法が示されている。
定量的評価・間接法の目的変数
名称 変数名品種減尐比 v
指数 g
基本収入率 rb
定数 1+q
q
1+k
k
d
全収入の累積現在価値 sa
平均年間収入率 ra
過渡期損益率 st
投資コスト Cinv
運用コストの現在価値 Cn
規格に影響される全活動量のうち期待される実施量 Qj
純収入の累積現在価値 Sn
規格の存続期間中の平均年間純収入 Ra
純利益の累積現在価値 P
投資利益率 Rinv
回収期間 Tpb
13
この値で有益性を判断する。コストを上回る便益が得られることを示すため、プラスである必要がある
参考文献(ISO、松浦四郎訳、「標準化の便益」 、日本規格協会、1984)に記載の目
的変数群
間接法の計算式
14
品種減少比 v P0
P1
指数 g 4z
7(z + 7)
基本収入率 rb 1 − v−g
定数
1+q 1 + i (1 + n × p) g/n
q
1+k 1 + i (1 − rb) −1/t
k
d 1 + (1− rb)
2
−1/t
全収入の累積現在価値 sa 1 − (1 + i) −n
i− 1− rb
1 − (1 + q) −n
q−1− (1 + i) −t
i − d
1− (1 + k) −t
k
平均年間収入率 ra i × sa
1 − (1 + i) −n
過渡期損益率 st
d 1 − (1 + k) −t
k − (1− rb)
1 − (1 + i) −t
i
投資コスト C inv Cd + Cp + Ci + Cc
運用コストの現在価値 C n
Ca 1 − (1 + i) −n
i
規格に影響される全活動量
のうち期待される実施量
Q j Q × fj
純収入の累積現在価値 Sn sa × Qj − Cn
規格の存続期間中の平均年
間純収入
Ra ra × Qj − Ca
純利益の累積現在価値 P Sn − Cinv
投資利益率 Rinv Ra
Cinv
回収期間 Tpb Cinv
Ra
定量的評価・間接法の説明変数の本研究での適用指針
名称 変数名 本研究
標準化以前の品種数 P0 標準化時点の品種数を「標準化以前の品種数」とする
標準化以後の品種数 P1 標準化時点から過渡期間経過後の品種数を「標準化以後の品種数」とする
活動段階数z
一般的なソフトウェア開発工程数に合わせて「10」に設定する(企画、基本設計、機能設計、詳細設計、コーディング、単体テスト、機能テスト、システムテスト、導入、保守)
規格の存続期間 n 10年と仮定する
過渡期間 t Webサービスは短期間の普及が期待されるため2年とする
品種増加率の算定 p 標準化前後1年間の品種数の増加率を最小二乗法による線形近似により算定
利子率 i 10%と設定
開発コストCd
フォーラム標準、デファクト標準の場合20百万円に設定、デジュール標準の場合50百万円に設定
提出コスト Cp 10百万円に設定
実施コスト Ci 5百万円に設定
消費者コスト Cc 5百万円に設定
年間運用コスト Ca 1百万円に設定
規格に影響される活動量
Q100百万円に設定
実施率 fj フォーラム標準、デファクト標準の場合0.5、デジュール標準の場合0.75に設定 15
• 説明変数
標準化による基本収入の考え方
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ユーザの便益(価値)
供給者が得る価値(利益)
貨幣換算価値
総便益
総価値
累積総便益
標準化で価値が変化
累積台数
引用:京極他、「標準化の経済性分析のための枠踏みの整理」の図5 標準化の経済的分析の基本モデルイメージを一部変更
両方を合わせたものが、標準化自体から得られる基本収入Rb
「標準化の便益」の間接法の妥当性検証
サービスインタフェース以外の実例について、「純利益の累積現在価値」と効果の公表値を比較
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すべての実例について、算定した便益と現状が一致するため、「標準化の便益」間接法は妥当
3ComのEDI社内標準化の場合
データの出所:3Com社1998年IRおよびドイツInstitue of Information Systems,「The Standardization Problem」
• 間接法 • 公表値
1.3百万ドル
誤差34%で双方ともプラス
ほぼ一致
0.86百万ドル
名称 3Com
標準化以前の品種数 30.00
標準化以後の品種数 1.00
活動段階数 10.00
規格の存続期間 10.00
過渡期間 1.00
記録による品種増加率 0.01
利子率 0.10
開発コスト 125,000.00
提出コスト 0.00
実施コスト 0.00
消費者コスト 0.00
年間運用コスト 403,000.00
規格に影響される活動量
890,341.20
実施率 1.00
純収入の累積現在価値 988,295.03
規格の存続期間中の平均年間純収入
160,840.47
純利益の累積現在価値 863,295.03
サービスインタフェースへの間接法適用の流れ
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対象となる標準が属するカテゴリに含まれるサービスの増加傾向を調査
対象となる標準が策定された時期のサービス数を取得
対象となる標準が策定された時期の前後一年間のサービス数の増加率(減尐率)を最小二乗法で算出
対象となる標準が策定された時期の過渡期間後のサービス数を取得
標準化以前の品種数
品種増加率の算定
標準化以後の品種数
説明変数に設定
目的変数の算定
Feed API(Atom Publishing Protocol)の場合
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出典: http://www.programmableweb.com/apisのデータより
2007/10 Atom Publishing Protocol仕様公開
標準化前後1年の増加率
Atom Publishing Protocolの標準化は、コストに見合う便益を得られている
×12カ月
0
2
4
6
8
10
12
14
20
05
01
20
05
04
20
05
07
20
05
10
20
06
01
20
06
04
20
06
07
20
06
10
20
07
01
20
07
04
20
07
07
20
07
10
20
08
01
20
08
04
20
08
07
20
08
10
20
09
01
20
09
04
20
09
07
20
09
10
API数
累積
y = 0.3238x + 1.15
0
2
4
6
8
10
12
20
06
10
20
07
01
20
07
04
20
07
07
20
07
10
20
08
01
20
08
04
20
08
07
20
08
10
Series1
Linear (Series1)
名称 変数名 Feed
標準化以前の品種数 P0 4
標準化以後の品種数 P1 12
活動段階数 z 10
規格の存続期間 n 10年
過渡期間 t 2年
記録による品種増加率 p 3.8856
利子率 i 0.1
開発コスト Cd 50百万円
提出コスト Cp 5百万円
実施コスト Ci 2百万円
消費者コスト Cc 0百万円
年間運用コスト Ca 1百万円
規格に影響される活動量 Q 100百万円
実施率 fj 0.75
品種減尐比 v 0.333333333
指数 g 0.336134454
基本収入率 rb -0.446694706
定数 1+q 1.245061469
q 0.245061469
1+k 0.91454323
k -0.08545677
d 0.915701468
全収入の累積現在価値 sa 1.315339346
平均年間収入率 ra 0.214065421
過渡期損益率 st -0.414699167
投資コスト Cinv 57
運用コストの現在価値 Cn 6.144567106
規格に影響される全活動量のうち期待される実施量
Qj 75
純収入の累積現在価値 Sn 92.50588383百万円
規格の存続期間中の平均年間純収入 Ra 15.05490659百万円
純利益の累積現在価値 P 35.50588383百万円
投資利益率 Rinv 0.264121168
回収期間 Tpb 3.786141059年
(標準化機関:IETF)
品種増加率
1年前の想定品種数
各APIの分析結果名称 Parlay X 2.1 Open Social
Atom Publishing Protocol
OpenSearch OpenID
カテゴリ Telephony Social Feed Search Security
純利益の累積現在価値 -41.3291 44.1478 35.5059 3.1090 78.6741
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間接法の結果は妥当と考えられ、予想以上に便益を得られている場合が多いと思われる
主要な事業者は20社だが、Parlay XをサポートするのはBT, Sprint Nextelの2社のみ。よって普及し
ておらず、実際に便益を得られ
ていないと、分析結果と一致する可能性が高い。
OpenIDは、国内でYahoo!Japan,mixi,BIGLOBE,楽天など、海外でAOL,Orange,Google,Facebookなど25,000サイトが対応、5億ユーザが使用している普及が急速に進んでいることから、便益が得られ
ており、分析結果と一致する可能性が高い。
Mixi, MySpace,Yahoo!など34のSNS、14の開発者サイトが対応し、普及が急速に進んでいることから、便益が得られ
ており、分析結果と一致する可能性が高い。
Six Apart LiveJournal、Blogger, Yahoo, Google, Mixiなど多くのブログソフ
ト、サイトが対応。分析結果と一致する可能性が高い。
• 出展• IDATE,「世界の通信サービス市場」の情報
http://www.gii.co.jp/report/iu64570-telecom-svc.html• http://wiki.opensocial.org/index.php?title=Main_Page#Container_I
nformation• http://en.wikipedia.org/wiki/Atom_(standard)• http://ja.wikipedia.org/wiki/OpenSearch
http://marketshare.hitslink.com/search-engine-market-share.aspx?qprid=4&qpmr=100&qpdt=1&qpct=3&qptimeframe=M&qpsp=128
• http://www.janrain.com/openid
Yahoo!、MS LiveSearchなど大手がサポートしているが、シェア80超を誇るGoogleがサポートしていない。便益は小さいと考えられるため、分析結果と一致する可能性が高い。
結論
• 仮説:「サービスインタフェースの国際標準化では、
便益を得られないことがある」に対する回答
– 間接法により得られる純利益の累積現在価値は、
現状と比較して妥当な結果を示していると思われ
る
– サービスインタフェースの国際標準化では、便益
を得られないことがありえる
– サービスインタフェースの標準化事例はまだ尐な
いが、今後増加することで、説明変数の精度を高
められると期待できる28
賛同者を得た標準化の事例
• インテル(ハードウェア)の場合
– CPUに事業コアを置き、データバスインタフェースをオープンにすることで、マザーボード、周辺機器などの補完業者を育てイノベーションを促進する戦略を実施
• インテルのビジョンを補完業者に伝達• 影響力のある補完業者の小グループから合意形成• 潜在的な補完業者に事業機会を強調• 業者間の調整などの業界の調整• 補完業者が相互に接続試験をできる環境を提供
• サン・マイクロシステムズ(ソフトウェア)の場合
– Java Community Process(JCP)のコミュニティ環境を提供し、Javaの育成を事業から分離• APIをコミュニティの中で標準化• 補完業者は、グローバルスタンダードの市場を拡大でき、Javaに貢献できるメリット• リファレンス実装を提供し、補完業者の製品開発を促進
– JCPが迷走しないように、サンがつかず離れずコントロールすることが必要(引用:http://japan.cnet.com/blog/watanabe/2005/09/23/entry_post_93/)
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プラットフォームリーダシップが重要
自社の基盤製品のために、補完企業を巻き込んで、産業としてのイノベーションを推進すること
賛同者を得るための施策
• ハードウェアにおいても、サービスを含むソフトウェアにおいても、リーダシップを取ることが企業優位の手段である
• リーダシップを取るためには、単に標準やプラットフォームを提供するだけでなく情報提供やリファレンス実装の提供など、サポートが重要である
• 補完業者がメリットを自覚できるビジネスプランを示すことも有効と考えられる
30