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1.マイコンで LED の明るさやモータ の回転数をスムーズに制御するには LED の明るさやモータのスピードを調整するにはどうす ればよいでしょうか? LED の明るさやモータのスピードは,電圧(電流)の大 きさを変更することで制御できます.H または L しか出力 できないディジタル回路で電圧や電流を制御する信号を生 成するには,マイコンに搭載されているPWM(Pulse Width Modulation)という変調機能を利用します. ● パルス幅変調 PWM とは? PWM はパルス幅変調と呼ばれる変調方式の一種です. パルス幅変調では,図1 のように規則的なパルスのハイ・ レベルとロー・レベルの信号の時間の割り合いを変化させ ます.1 周期におけるハイ・レベルの期間の割り合いを デューティ比といいます.ハイ・レベルの期間が違うだけ で波長や振幅(電圧)は一定です. 一般にディジタル回路ではハイ・レベルは 3.3V,ロー・ レベルは 0V というように出力電圧は一定なので,電圧を 変化させるのは困難です.そこで,ハイ・レベルの期間を 変えるパルス幅変調を使用します.PWM でハイ/ローの期 間を変化させると,LED の明るさやモータの回転速度を 制御できます(図2図3). 2.LPC2388 の PWM モジュール を使う 付属 ARM マイコン基板(本誌 2009 年 5 月号に付属)に 実装されている LPC2388 では,六つの PWM 出力を制御 できます.それぞれの PWM 信号はタイマ・カウンタまた は外部出力を基準に動作します.制御には二つのモードが あり,シングル・エッジ・モードでは一つの,ダブル・ エッジ・モードでは二つのマッチ・レジスタ(MR)の値を 設定して,パルス幅を制御します. 例として,タイマ・カウンタを基準としたシングル・ エッジ・モードで動作する PWM 信号の生成方法を説明し ます.PWM 信号は,全体の周期とハイ・レベルの期間の 二つの要素で生成されます.全体の周期はマッチ・レジス タ 0 の値で,ハイ・レベルの期間はマッチ・レジスタ 1 の 値で決定します. 140 Oct. 2009 付属ARMマイコン基板を利用して, PWM機能を理解する LEDの明るさを滑らかに変化させ,蛍の光を作ろう! PWMはモータの回転速度やLEDの明暗の制御など,パワーを滑らかにコントロールするのに欠かせない技術だ. 本稿では,付属ARMマイコン基板搭載のLPC2388に内蔵されているPWMモジュールを使用し,LEDを蛍の光の ようにぼんやりと点灯させる. (編集部) 三好 健文 付属ARMマイコン基板を利用して, PWM機能を理解する 2009年5月号 KEYWORD ―― パルス幅変調,振幅変調,PWM,マッチ・レジスタ 関連データ デューティ比 t /T デューティ比 :50% デューティ比 :75% デューティ比 :25% 電圧 ハイ・レベルの期間 ハイ・レベルの期間 t ハイ・レベルの期間 ハイ・レベルの期間 t ハイ・レベルの期間 ハイ・レベルの期間 t 1波長の周期 1波長の周期 T ハイ・レベルの期間(t ハイ・レベルの期間(t ハイ・レベルの期間(t 1波長の周期(T 販売部 Tel:(03)5395-2141 / FAX:(03)5395-2106 e-mail : [email protected] 詳細は http://shop.cqpub.co.jp/をご覧ください ◆マイコン基板付き号&バックナンバの問い合わせ先◆ 図1 パルス幅変調 (PWM) された信号 ハイ・レベルの期間が違う.電圧振幅と周期は変化しない.電圧振幅が連続的に変 化するアナログ信号を H/L の時間変化で表すことができる.

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Page 1: 付属ARMマイコン基板を利用して, PWM機能を理解する · PDF file1.マイコンでledの明るさやモータ の回転数をスムーズに制御するには ledの明るさやモータのスピードを調整するにはどうす

1.マイコンでLEDの明るさやモータの回転数をスムーズに制御するには

LEDの明るさやモータのスピードを調整するにはどうす

ればよいでしょうか?

LEDの明るさやモータのスピードは,電圧(電流)の大

きさを変更することで制御できます.HまたはLしか出力

できないディジタル回路で電圧や電流を制御する信号を生

成するには,マイコンに搭載されている PWM(Pulse

Width Modulation)という変調機能を利用します.

● パルス幅変調 PWMとは?

PWMはパルス幅変調と呼ばれる変調方式の一種です.

パルス幅変調では,図1のように規則的なパルスのハイ・

レベルとロー・レベルの信号の時間の割り合いを変化させ

ます.1周期におけるハイ・レベルの期間の割り合いを

デューティ比といいます.ハイ・レベルの期間が違うだけ

で波長や振幅(電圧)は一定です.

一般にディジタル回路ではハイ・レベルは3.3V,ロー・

レベルは0Vというように出力電圧は一定なので,電圧を

変化させるのは困難です.そこで,ハイ・レベルの期間を

変えるパルス幅変調を使用します.PWMでハイ/ローの期

間を変化させると,LEDの明るさやモータの回転速度を

制御できます(図2,図3).

2.LPC2388のPWMモジュールを使う

付属ARMマイコン基板(本誌2009年 5月号に付属)に

実装されているLPC2388では,六つのPWM出力を制御

できます.それぞれのPWM信号はタイマ・カウンタまた

は外部出力を基準に動作します.制御には二つのモードが

あり,シングル・エッジ・モードでは一つの,ダブル・

エッジ・モードでは二つのマッチ・レジスタ(MR)の値を

設定して,パルス幅を制御します.

例として,タイマ・カウンタを基準としたシングル・

エッジ・モードで動作するPWM信号の生成方法を説明し

ます.PWM信号は,全体の周期とハイ・レベルの期間の

二つの要素で生成されます.全体の周期はマッチ・レジス

タ0の値で,ハイ・レベルの期間はマッチ・レジスタ1の

値で決定します.

140 Oct. 2009

付属ARMマイコン基板を利用して,

PWM機能を理解する

L E D の 明 る さ を 滑 ら か に 変 化 さ せ , 蛍 の 光 を 作 ろ う !

 PWMはモータの回転速度やLEDの明暗の制御など,パワーを滑らかにコントロールするのに欠かせない技術だ.本稿では,付属ARMマイコン基板搭載のLPC2388に内蔵されているPWMモジュールを使用し,LEDを蛍の光のようにぼんやりと点灯させる. (編集部)

三好 健文

付属ARMマイコン基板を利用して,

PWM機能を理解する 2009年5月号

KEYWORD――パルス幅変調,振幅変調,PWM,マッチ・レジスタ

関連データ

デューティ比  =t /T

デューティ比 :50%

デューティ比 :75%

デューティ比 :25%

電圧

ハイ・レベルの期間ハイ・レベルの期間(t)

ハイ・レベルの期間ハイ・レベルの期間(t)

ハイ・レベルの期間ハイ・レベルの期間(t)

1波長の周期1波長の周期(T)

ハイ・レベルの期間(t)

ハイ・レベルの期間(t)

ハイ・レベルの期間(t)

1波長の周期(T)

販売部 Tel:(03)5395-2141 / FAX:(03)5395-2106e-mail: [email protected]

詳細は http://shop.cqpub.co.jp/をご覧ください

◆マイコン基板付き号&バックナンバの問い合わせ先◆

図1 パルス幅変調(PWM)された信号

ハイ・レベルの期間が違う.電圧振幅と周期は変化しない.電圧振幅が連続的に変化するアナログ信号をH/Lの時間変化で表すことができる.