5
S S N Batu Hijau Fig. 1 Sumbawa 西 117 9 2,600mm/ 0.47% 0.34g/t 1.7Bt 1 700kt 1999 2006 136,000t/day 33%, 23g/t 804kt PT. Newmont Nusa Tenggara ( PT. NNT ) Newmont Mining Corporation ( 45% ) ( 35%; , , , ) PT.Pukuafu Indah ( 20% ) Fig. 2 西 Benete - ( 160MW ) Benete 24km 6km 17km 4,200 3,000 Fig. 3 2,200 30 3D 2006 8,000m Fig. 4 ( young & intermediate 2 ) 4 1 by Yoichi MIZUOCHI a a. Technical Department, Nusa Tenggara Mining Corporation, 1-8-8, Chuo-ku, Tokyo, 104-0053, Japan (*Corresponding author: E-mail [email protected]) Batu Hijau 鉱山の露天掘り操業 * (Shigen to Sozai)Vol.122 p.601 605(2006) ©2006 The Mining and Materials Processing Institute of Japan * 2006 7 31 10 25 1. [ ] FAX : 03-5144-4028 E-mail : [email protected] To maintain the big mining operation rates for 700kt/day material movement at Batu Hijau Mine in Indonesia, many modern technologies have been employed. Some of them are introduced in this report. They seem to be traditional in one glance but you may find that they are the state of art technology of modern mining applying in the unique style. KEY WORDS: Batu Hijau Mine, Indonesia, Open Pit Operation Open pit mining operation at Batu Hijau Mine 露天採掘特集 : 露天資源開発の現状と新たな展開を支える技術 Fig.1 Batu Hijau Mine Location. (Edited from Microsoft Encarta map) 601 39

Batu Hijau鉱山の露天掘り操業 - JST

  • Upload
    others

  • View
    6

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: Batu Hijau鉱山の露天掘り操業 - JST

資源と素材 Shigen-to-Sozai Vol.122 (2006) No.12

1.は じ め に

 Batu Hijau 鉱山は Fig. 1 に示すようにインドネシア共和国,

Sumbawa 島の南西部,ほぼ東経 117度,南緯 9度に位置する。

乾季と雨季が交互する熱帯降雨林帯にあり,降水量はピット位置

では約 2,600mm/ 年である。

 鉱床はポーフィリ型銅・金鉱床で,平均品位は銅 0.47%,金

0.34g/t と低品位ながら,可採鉱量 1.7Bt,1日当りの鉱石・ズリ

採掘量 700kt クラスと世界でも最大級の露天掘り操業を行なって

いる鉱山である。鉱石処理法は典型的な磨鉱・浮遊選鉱で,1999

年末から精鉱の生産を開始した。2006年度の予算計画によれば

136,000t/day の鉱石を処理し,銅 33%, 金 23g/t の精鉱を年間

804kt 生産する。インドネシア法人 PT. Newmont Nusa Tenggara (PT.

NNT) が操業を行なっているが,この会社へは外国資本である

Newmont Mining Corporation (45%) と当社ヌサ・テンガラ・マイ

ニング株式会社 (35%; 住友商事 , 住友金属鉱山 , 三菱マテリアル ,

古河機械金属の共同出資 ) が現地法人 PT.Pukuafu Indah (20%) と

共同で出資している。

 Fig. 2に示すように島南西部の Benete 湾に港を建設し,精鉱貯

鉱舎・積出し設備の他に,石炭火力 - ディーゼルハイブリッド発

電所 (160MW),一般貨物荷卸,仮置き場,水上飛行機駐機場,ボー

ト・艀桟橋などを設けた。Benete 港からピットまでは鉱山専用道

路で東へ 24km あり,その途中に選鉱場が建設された。鉱石は最

終ピット縁部に設けた一次クラッシャを経由し 6km 余のベルトコ

ンベアで選鉱場まで運ばれる。精鉱は港にあるフィルタープラン

トまでポンプで 17km スラリー輸送される。社員は 4,200名余で,

鉱山専用道路途中の鉱山町には現在約 3,000人が住んでいる。選

鉱場用水は海水と雨水を利用し,尾鉱は尾鉱スラリー流送用パイ

プラインを経て深海底に堆積される。Fig. 3にピット全景を示す。

以下本題である露天掘り採鉱に関し,約 2,200名で操業している

鉱山部門の設計を中心に技術報告する。

2.地    質

 地質部門では 30余名が生産に関わるドリルコア観察,分析値

解析,切羽露岩の地質や構造の観察,発破用削孔繰粉の観察や品

位分析を行い,岩石および変質などの地質図ならびに 3D 地質モ

デルを作成している。地質モデルと実際の地質や鉱石との乖離を

常に監視し,乖離を少なくするためのインフィルドリルを行って,

モデルを修正している。2006年度のインフィルドリルは 8,000m

を予定している。地質モデルの一つである岩石モデルでは,

Fig. 4のように岩石を基盤である火山岩類,貫入岩であるトナラ

イト (young & intermediate の 2種 ) および閃緑岩の 4種に分けて

水 落 洋 一 1

by Yoichi MIZUOCHIa

a. Technical Department, Nusa Tenggara Mining Corporation, 1-8-8, Chuo-ku, Tokyo, 104-0053, Japan (*Corresponding author: E-mail [email protected])

Batu Hijau 鉱山の露天掘り操業 *

資源と素材 (Shigen − to − Sozai)Vol.122 p.601 − 605(2006)©2006 The Mining and Materials Processing Institute of Japan

* 2006年 7月 31日受付 10月 25日受理1. ヌサ・テンガラ・マイニング株式会社 技術部 [ 著者連絡先 ] FAX : 03-5144-4028 E-mail : [email protected]キーワード:バツヒジャウ鉱山,インドネシア,露天掘り操業

To maintain the big mining operation rates for 700kt/day material movement at Batu Hijau Mine in Indonesia, many modern technologies have been employed. Some of them are introduced in this report. They seem to be traditional in one glance but you may find that they are the state of art technology of modern mining applying in the unique style.KEY WORDS: Batu Hijau Mine, Indonesia, Open Pit Operation

Open pit mining operation at Batu Hijau Mine

露天採掘特集 : 露天資源開発の現状と新たな展開を支える技術

Fig.1 Batu Hijau Mine Location. (Edited from Microsoft Encarta map)

PB 〈 40 〉 601 〈 39 〉

Page 2: Batu Hijau鉱山の露天掘り操業 - JST

資源と素材 Shigen-to-Sozai Vol.122 (2006) No.12

水落洋一                                                        

602 〈 40 〉 603 〈 41 〉

いる。鉱床はトナライトの貫入に伴うポーフィリ型銅・金鉱床と

され,トナライトが複数回貫入し,その周辺およびその内部に,

鉱染あるいは亀裂表面に主な稼行鉱物である bornite や

chalcopyrite などが沈着して生成したとされている。鉱床周辺の

火山岩類や貫入岩中には pyrite が鉱染状に分布している。鉱化は

風化剥削されていた元の山頂である海抜 600m 付近から,現在計

画の最終ピット底である海抜 -525m 以下まで高品位鉱化が連続

している。そのパイプ状をなす鉱化帯の平均直径は約 500m あり,

銅と金は岩石空間内で似たような分布をなしている。

 モデル化には主に Mintec 社の地質モデルおよび採鉱設計汎用

ソフトウエア MineSight を使っている。コア分析値や測量による

ドリル孔データベースからコンポジットを作り,探鉱ブロックモ

デルの値推定に使っている。ブロックモデルの大きさは 15m (H)

x25mx25m である。地質モデルとして岩石,酸化,変質,密度の

各モデルパラメータが,品位モデルとして銅・金品位などがこの

ブロックに割り付けられている。ブロックにはそのほか各実収率,

精鉱品位,Net Carbonate Value,鉱石価値 ($Index Value),RQD や

Point load index (PLi) など 80以上のパラメータ値が割り付けられ

ている。品位の割付は Upper Core,Upper Limb など鉱床特性形

状に応じて分けた 7つの領域毎に,銅・金それぞれの Variogram

に基づいて,Kriging (Ordinary) パラメータを変えて行なっている。

Kriging 割付精度の確認は,割付品位と採掘実績との比較により

行なっている。なお,鉱量計算では Kriging Variance とコンポジッ

トまでの距離を使って,各ブロック品位推定の確度を Measured,

Indicated, Inferred に分けている。モデルの改訂は単に新規ボーリ

ングデータの追加更新によるだけでなく,品位に関する探鉱モデ

ルと出鉱管理モデルの系統的誤差による推定法の修正,実収率モ

デルの実績反映によるモデル修正などがその都度行われている。

コア分析データは品質管理を行い,異常値があれば再分析もしく

は除外を行っている。分析精度確認のため,分析には必ず標準試

料も混入させている。

 また選鉱処理の課題である鉱石処理量に関し,岩石タイプ,

RQD,PLi を使って鉱石を 16種に分類し,ボンドワークインデッ

クスなどを使って Semi-Autogenous Grinding (SAG) Mill による処

理量モデルを作り処理量予測を立てている。

3.採 鉱 設 計

 3・1 長期採鉱計画

 設計部隊 60名余の一部が採鉱設計,Phase 設計や年次設計,

鉱量計算などを主に MineSight を使って行っている。

 ブロックの $Index,金属価格,採鉱・選鉱コストなどの経済条

件および斜面勾配設計基準から計算された Lerchs-Grossmann (LG)

ピット形状を作成する。これを基に,道路設計を伴った初期から

最終の各段階 (Phase) のピット形状設計を行っている。Phase 間の

最小距離は重機効率を考慮し 90mとしている。鉱石を一次クラッ

シャに直投する鉱石および一時的な貯鉱である高品位貯鉱用鉱石

のほかに,長期貯鉱を計画している中品位と低品位貯鉱鉱石およ

びカットオフ以下のズリに分けて採鉱計画を立てている。Phase

毎,年間に降りるベンチ数を制限して年次計画が立てられている。

最終ピットの大きさは約 2.7kmx2.2km,ピット入口から底部まで

の深さは 860m で,ほぼ円錐形である。なおピット設計には,探

鉱ブロックの $Index をベンチ深度で減価して使っている。

 ズリおよび貯鉱はピット周辺の堆積場に堆積,貯鉱されるよう

に体積計算を行い建設設計を行うが,貯鉱に関しては同時に在庫

管理用の貯鉱ブロックモデルを作り,品位など元の採鉱鉱画パラ

メータが割り付けられる。

重機配置割当て計算にも MineSight を使っているが,トラックな

ど重機の必要台数の推定には別のソフトウエア TALPAC を利用

している。

 鉱量計算はボーリング実施に伴うモデル改定に従い適宜試算さ

れ,年次ごとに報告書が作られる。鉱量は JORC などの世界基準

に則り,社内の操業計画用に Resources も含めて計算しているが,

Fig.2 Batu Hijau Mine infrastructure map. (Newmont Information Handbook September 2003)

Fig.3 Batu Hijau pit northern overview, June 2006.

Fig.4 E-W Geological section of Batu Hijau Deposit.

Page 3: Batu Hijau鉱山の露天掘り操業 - JST

資源と素材 Shigen-to-Sozai Vol.122 (2006) No.12

露天採掘特集:Batu Hijau 鉱山の露天掘り操業

は 400Kt/day,一次クラッシャ投入量は 130Kt/day である。給鉱

平均品位は銅 0.60%, 金 0.47g/t,カットオフは $3.3/t である。カッ

トオフ値計算には選鉱処理費用以外に貯鉱鉱石の再運搬費用,長

期貯鉱による実収率の減少なども考慮している。

 3・2 短期の採鉱計画

 探鉱ブロックモデルとは別に,主に 1年以内の採鉱計画のため

に同 25等分相当の採鉱ブロックモデル (15m (H) x12.5mx5m) が

作られている。このブロックモデルには,繰粉の観察・分析値や

選鉱試験結果を使って品位や実収率,推定処理量を割り付け,出

鉱管理を行なっている。日々の採鉱計画では,鉱石の種類ごとに

カットオフを定め,同じタイプの鉱石ブロックを任意のポリゴン

状に切取ったそのトン数と平均品位を代表値として扱える複数の

採鉱鉱画を作り,採掘シミュレーションによって処理量や金属生

産量などの計画値を達成すべく切羽進行を管理している。銅・金

品位,実収率,推定処理量は選鉱場へも事前に通知される。これ

らの給鉱データは探鉱モデルと比較するだけでなく,同時に選鉱

場の受け入れ分析データとも比較し,差を常時管理している。

 3・3 斜面管理

 Ground Control Management Plan によって斜面管理の概念を定

めている。斜面は採掘によって変位するものとし,監視と対策で

期間中最大限の勾配を達成するように計画している。よって岩盤

モデル解析によるすべりの安全率の管理によるよりも,変位速度

や崩壊頻度による IRA (Inter ramp angle) の変更による斜面管理を

重視して行なっている。

 斜面設計は岩石分類,断層など地質構造,水の存在など地盤工

学面からピットを幾つかの領域に分け,それぞれに IRA を割り

付けて設計基準としている。IRA は 40度から 55度まで,道路も

含めた平均勾配は 34度から 48度までとしている。ベンチ高さは

15mで,転石防止に有利なダブルベンチも事故対策の観点から

計画されている。運搬道路は原則 10% 勾配で,ピット底近傍以

外では 2車線,道路幅は道路肩石積み,排水パイプを考慮し 42

mである。

 岩盤斜面の遠隔監視は,Fig. 5に示すようにレーザーとプリズ

ムを使う RTS (Robotic Total Station) 2台と,ミリ波レーダを使っ

て直接岩盤までの距離を測ることができる 1台の SSR (Slope

Stability Radar; GroundProbe 社 ) で行なっている。この他 High

Precision Global Positioning System (HPGPS) 測量に加えて,変位量

が多い領域では亀裂計を設置しているほか孔内傾斜測定,間隙水

圧観測がボーリング孔を使って行なわれている。

 観測変位量や加速度が限界値を超えた場合,Dispatch システム

や VHF トランシーバを通じて自動警報を出す仕組みとしている。

斜面の監視と事故防止という観点から,すべてのピット内作業者

には斜面崩落等の危険予知教育や連絡,退避法などが徹底されて

いる。過去に 150例以上の崩落があったため,これらの観察結果

はデータベースとして保存し,崩落の予想に使われている。また

ピット壁の変位や表面に出ない亀裂を,数値モデル (UDEC) や亀

裂構造推定モデル (SIROVISION) を使って予測・解析している。

斜面崩落を抑える方法の一つとして間隙水圧低減対策を行なって

対外的には Table 1に示すように米国証券取引委員会の Industry

Guide 7に従った Reserves (Proven,Probable) のみを公表している。

2006年度の採鉱計画では銅 $1.20/Lb,金 $400/oz を金属想定価格

に使っている。採鉱運搬量は 700Kt/day,内貯鉱も含めた鉱石量

Table 1  Reserve Summary-Copper & Gold, December 31, 2005 Reserves are reported at US$400/Au oz and US$1.00/Cu Lb applying a dollar index value above US$3.30.

Fig.5 Top: RTS (Robotic Total Station) in Hat and Bottom: SSR (Slope Stability Radar).

Fig.6 Depressurization horizontal drilling.

602 〈 40 〉 603 〈 41 〉

Page 4: Batu Hijau鉱山の露天掘り操業 - JST

資源と素材 Shigen-to-Sozai Vol.122 (2006) No.12

水落洋一                                                        

604 〈 42 〉 605 〈 43 〉

いる。Fig. 6に示すように長さ 350m程度までの浅い水平孔を削

孔し,水圧を減じることで岩盤の内部摩擦角を増すことを狙って

いる。また現在ピット岩壁内部に斜坑を開削し,排水設備を設け

ると同時に,最終ピット裏側に排水坑道を切った場合の採算性を

検討している。さらに斜面変位が加速しつつある領域では,その

上部のズリを計画より早めに採掘し,上載荷重を減らすことで崩

落の抑制を図っている。

 自動監視以外の斜面監視や地形測量など定期の測量は原則とし

て Differential GPS による測量を行なっている。採掘量計算は,

測量による容積計算と Dispatch システムの車数によるトン数計

算結果との比較が行われ両数値の整合を確認している。

4.削孔・発破

 削孔・発破部隊は 90名余で構成され,削岩機は Ingersoll Rand

(IR) 社 製 Rotary Diesel Drill DM-H x 5 台 ( ビ ッ ト 径 12-1/4”)

(Fig. 7),Atlas Copco L8 x1台のほかに補助機として DMM-2 truck

drill x 1台を使用している。L8はPre-splitting用に新たに導入した。

2006年の削孔予定長は 1,662km, 85,750本である。発破孔は垂直

孔で,孔長は原則として 1.5m の余掘りを入れて 16.5m である。

 削孔・発破は磨鉱工程も含んだ総合的破砕工程の一部と捉える

Mine to Mill の考え方を導入し,その最適化を試行している。起

砕鉱石の破砕粒度分布測定 (Digital camera Image を粒度解析 ) を

通じて発破モデルが作られ,2004年 8月以来“Cookbook” と称

する削孔・装薬パターンの規格を設けている。“Cookbook”では

鉱石およびズリを SAG 処理量モデルと同様に,それぞれ RQD

および PLi によって合計 9つのタイプに分けている。タイプ毎に

削孔速度や弾性波速度が想定され,込物長,孔間隔,列間隔,

ANFO- エマルジョン混合比,装填長,爆薬原単位 (Pf) が設定さ

れている。“Cookbook”と SAG 処理量モデルとを連結させて給

鉱および処理計画に使用している。過去には発破による退避時間

減少や,発破ブロック間に生じる大塊発生を防ぐ目的で大ブロッ

ク発破を試行したが,現在は岩壁保護の観点から発破規模は小さ

くなり,起砕量は 1Mt/ 回程度までとなっている。

 また岩壁保護が必要な場合か否かで発破法も異なる。制御発破

には Pre-splitting,Trim blast, Line drilling などが使われている。

爆薬は ANFO の他,水孔には ANFO- エマルジョン混合爆薬を製

造用トラックから直接装填している。油脂には重機の廃油を

75%まで混合再利用している。親ダイは孔底側に置き,雷管は

Nonel,込物には砕石を使用している。制御発破や産物粒度調整

のために電子雷管 i-kon の試験も行なっている。平均の Pf は

0.26kg/t 程度である。

5.積込・運搬

 起砕鉱石およびズリは,Fig. 8に示すように電気ショベル P&H

4100A x 6台,P&H 2800XP x 1台,エクスカベータ Caterpillar (Cat)

5230 x 2台およびホイールローダ Cat 994 x 3台によって,Cat

793C トラック x 111台に積み込まれる。

 2006年予算によればトラックの能率は,約 300t/truck hour,

4100A ショベル能率は約 4,500t/Shovel hour である。運搬部隊に

は約 900人が 4クルー,2方制で携わっている。上記以外の主要

な補助重機は Cat 785トラック,D11R ドーザー,T790ドーザー,

24H グレーダーなどがある。

 これら重機の運行は毎日の採鉱計画に従い Dispatch システム

を使って管理している。ショベル,トラックやドーザーなどの主

要重機には DGPS が備えられ,Dispatch 経由で位置把握を行って

いる。各重機搭載の Dispatch 端末はピット内の複数のリピータ

を経由して,Dispatch コンピュータと LAN で繋がり,ショベル

には鉱石の種類やバケットの積込み位置,トラックには行先指示

や燃料補給など作業指示を行い,オペレータの応答確認を行って

いる。Batu Hijau 鉱山では複数の切羽から性質の異なった鉱石が

同時に出鉱されるため選鉱成績の変動が激しい。Dispatch により

投入鉱石切羽と選鉱成績を対応させ鉱石混合の管理をすることも

行っている。貯鉱用鉱石はピットの北側にある Sejorong 貯鉱場,

ズリはピットの南側にある Tongoloka ズリ堆積場に運搬される。

往復運搬距離は平均して約 10km,平均 12km/hour のトラック速

度である。

6.重機メンテナンス

 Cat のトラックや大型ドーザー,P&H のショベルや IR のドリ

ルなど主要重機は,メンテナンス費用を運転時間比例とする維持

修理契約を販売店と行い,小型の重機は自営修理を行っている。

タイヤ管理は外注化している。主要な修理工場は燃料補給所,交

替休憩所などとともに一次クラッシャ近傍にある。メンテナンス

コスト総額の 47%がトラックで,20%がショベルやローダーで

ある。採鉱コストの約 25%が燃料費である。Cat 社の Vital

Information Management System (VIMS) を導入し,トラック載荷

重のほかエンジンやタイヤなどの管理を行っている。一部データ

は Dispatch システムとも Link している。

7.水 管 理

 熱帯降雨林地帯で露天掘り操業を行う際の重要事項の一つが,

ピットや堆積場の降水や浸出水の集排水である。水は,ズリ堆積

場周辺から系外に迂回させているジャングル去流水の他に,処理

Fig.7 Drilling by Rotary Diesel Drill DM-H, DMM-2 & Cat 5230.Fig.8 Loading by P&H4100A to Caterpillar 793C

truck at NE of Phase4 Pit.

Page 5: Batu Hijau鉱山の露天掘り操業 - JST

資源と素材 Shigen-to-Sozai Vol.122 (2006) No.12

露天採掘特集:Batu Hijau 鉱山の露天掘り操業

Number of injuries/Number of hours worked) x200,000 = 0.97 (2005年

度 ) と好成績を示している。環境問題は認可条件にも関わる操業

上の重要事項である。鉱山業はその土地の固有性に根ざした産業

であるため,地域住民や動植物への悪影響を出来るだけ緩和し,

さらに住民への寄与が無ければ操業が出来ない。Batu Hijau 鉱山

は社会的責任の点から地元住民の参加型コミュニティ開発プログ

ラムを実施しており,インドネシア環境省の環境評価プログラム

PROPER でトップクラスにランクされている。堆積場管理は鉱業

エネルギー省から Best Waste Management との評価を受けている

が,今後とも改善を継続する。計画面まで積み上がった堆積場は

操業と平行して表土で覆土し,早期緑化を行なっており,また融

資元の米国輸銀が定めている堆積場基準勾配 3:1も,熱帯降雨林

帯にある Batu Hijau では返って表土層の侵食が多く不合理である

ため,「2:1勾配」 (Fig. 9) を適用することが了解され実施してい

る。また閉山後のピットはピット Lake にすることを考えている

が,これを実現するためには多くの研究を進め課題を解決しなけ

ればならない。

9.ま と め

 Batu Hijau 鉱山で使われている技術は一見従来の鉱山技術と変わ

らないように見えるが,採掘量 700,000t/day 台という大規模操業を

維持するために最新の技術を取り入れている様子を報告した。

対象となる酸性を帯び重金属が含まれるピット内降雨や流入水,

ピット浸出水,場内降水,ズリ堆積場降雨表流水や浸出水がある。

降雨のため 2つの採掘パターンがある。降雨や浸透地下水による

ピット壁面不安定のため Pit の比較的上部で採掘を行い,ポンプ

能力を超える降水をピット底に貯める雨季操業と,排水が完了し,

ピット底近傍の高品位鉱石を採掘できる乾季操業に分けられる。

雨季操業ではピット底サンプにポンプ (0.158m3/s x 6台 ) を取り

付けたポンツーンを浮かせ,運搬道路沿いにパイプを這わせ,2

基並列 3段 ( 箇所 ) の電動ブースターポンプ (2x 0.473m3/s, 90m

静水頭 ) を使ってピット出口まで揚水する。乾季は降雨も少なく

固形物濃度が高くなるので,サンプポンプにはスラリー用ポンプ

を使い,エンジン駆動で行うなど雨季とは別系統で揚げている。

一方 Tongoloka ズリ堆積場底部から浸出してくる水および表流水

は,一時貯水池を経て,ピット底から汲み上げた水同様 Santong

ダムに貯水される。この水はダムで全量取水後,石灰で中和し選

鉱用水として使用している。また Santong 貯鉱場からの浸出水は

水処理設備にて NaHS を添加して,銅を含む重金属類を沈殿回収

している。なおジャングルから Santong 川へ去流する清水は,下

流側に迂回させている。

8.安全・環境

 全鉱山部門の安全成績は Lost time accident= 1, Injury rate =

Fig.9 2:1 slope revegetation of Tongoloka Waste Dump Toe. (Left: Construction stage August 2005 & Right: February 2006)

604 〈 42 〉 605 〈 43 〉