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国立大学法人島根大学の 地域連携・地域貢献シーズ 島根大学 企画部 地域連携・研究協力課

国立大学法人島根大学の 地域連携・地域貢献シーズ - …36 浜田市人材育成講座 生物資源科学部 浜田市 教 包 37 島根大学生物資源科学部セミナー「浜田学

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国立大学法人島根大学の地域連携・地域貢献シーズ

島根大学 企画部 地域連携・研究協力課

国立大学法人島根大学の地域連携・地域貢献シーズ

島根大学

企画部

地域連携・研究協力課

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教:教育活動包:包括連携 そ:その他の地域貢献

研:研究活動 学:学生活動目 次

頁 事  業  名 実施部局等 関係市町村等

1 離島における在宅ケアの検討(隠岐 4 町村)-地域で安心して暮らし続けられる基盤があってこその「地方創生」-

法文学部 法経学科 隠岐の島町、海士町、西ノ島町、知夫村

研包

2 山陰研究ブックレット『三江線の過去・現在・未来』の刊行 法文学部 山陰研究センター 三江線沿線川本町 教

3 島根県内におけるフィールド調査による地域貢献 法文学部 社会文化学科島根県(教育庁文化課古代文化センター、島根県立古代出雲歴史博物)、大田市、隠岐の島町(教育委員会)

研包

4 松江市史編纂事業 法文学部 社会文化学科 松江市研包

5 社会文化学科初年次教育科目「社会文化入門セミナー」 法文学部 社会文化学科 松江市 教

6 2017年度地理学研究室自主ゼミ『隠岐地域調査』 法文学部 社会文化学科 隠岐の島町 教

7 (公財)しまね文化振興財団―島根大学教育学部連携事業「 0 歳からの音楽の絵本~夢の時間をあなたに~」 教育学部 音楽教育連携推進室 松江市、川本町、

(公財)しまね文化振興財団教包

8 松江市・島根県民会館・島根大学音楽教育連携推進室連携事業「音楽はバリアフリーだ!」コンサート 教育学部 音楽教育連携推進室

教包

9 県内の地域資源を活用した特産品開発 教育学部 研

10 中山間地域での小中学生・夏休み学習支援 教育学部 浜田市教包

11 1000時間体験学修【基礎体験活動】学生の体験活動による地域活性化活動、社会教育活動 教育学部 附属教育支援センター 教

12 島根大学教育学部附属学校 学習生活支援研究センター「CoCoラボ Shimafu」 教育学部 附属学校

研包

13 隠岐を舞台とした1000時間体験学修 教育学部 附属教育支援センター 海士町、知夫村教包

14 知的に障がいのある人のオープンカレッジin松江の開催 人間科学部〔旧:法文学部 福祉社会コース〕

松江市(教育委員会)、松江市社会福祉協議会、松江市手をつなぐ育成会、社会福祉法人

15 受託研究「企業内メンタルヘルスの維持管理に関する研究」(E-ラーニングコンテンツ開発) こころとそだちの相談センター ㈱山陰合同銀行

研包

16 うんなん減塩プロジェクト 人間科学部、医学部、地域包括ケア教育研究センター 雲南市

研包

17 大田総合医育成センターでの活動 医学部 大田市教包

18 島根県産の地域資源を活用した認知症予防・治療物質の開発 医学部 医学科 生理学講座飯南町、川本町、浜田市、江津市、

(公財)しまね産業振興財団

研包

19 島根県大田圏域における脳卒中対策の現状分析から事業展開へ~新任保健師の教育を兼ねて~

医学部 看護学科地域・老年看護学講座 島根県(県央保健所)

研包

20 出雲市ウィークエンドスクール事業における学習指導 医学部 看護学科地域・老年看護学講座 出雲市

教包

21 データ分析を用いた透明性の高い医師派遣 医学部 附属病院 そ

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頁 事  業  名 実施部局等 関係市町村等

22 県全域を対象とした高度外傷救急を付加した救急医療体制の強化 医学部 附属病院 そ

23 地域医療実習 医学部 県内全域 教

24 地域医療政策学講座における『地域包括ケアで活躍する人材育成』

医学部 医学科地域医療政策学講座 教

25 宍道湖の水質悪化メカニズムの解明に関する研究 総合理工学研究科 物質化学領域国土交通省中国整備局(出雲河川事務所)、島根県(環境生活部環境政策課、農林水産部水産課)

研包

26 地域防災に関する活動:「山陰防災フォーラム」 総合理工学研究科、法文学部、生物資源学部、教育学部

研そ

27 貴重な鳴砂海岸「琴ヶ浜」を国指定天然記念物に! 総合理工学研究科、エスチュアリー研究センター 大田市(教育委員会)

研包

28 ICTを活用した支援技術の特別支援学校への還元 総合理工学研究科 研

29 古民家再生等の地域貢献活動 総合理工学研究科 松江市、出雲市 教

30 産学官連携によるIT人材育成の取り組み『システム創成プロジェクト』 総合理工学研究科 島根県情報産業協会

松江市 教

31 特産品食品機能強化プロジェクト 生物資源科学部(公財)しまね産業振興財団浜田市(産業経済部はまだ産業振興機構)、一畑グループ、奥出雲町

研包

32 生物資源科学部・研究シーズによる地域活性化プロジェクト 生物資源科学部 飯南町、島根県(中山間地域研究センター、農業技術センター)

研包

33 隠岐臨海実験所 生物資源科学部 隠岐の島町(農林水産課)研包

34 なかうみ海藻のめぐみ 生物資源科学部 研

35 農の郷(みのりのさと) 生物資源科学部 研

36 浜田市人材育成講座 生物資源科学部 浜田市教包

37 島根大学生物資源科学部セミナー「浜田学」 生物資源科学部 浜田市教包

38 ふるさと魅力化フロンティア養成コースの実施 教育・学生支援機構教育推進センター 海士町、飯南町 教

39 地域産業に貢献するあたらしい産学連携 戦略的研究推進センターナノテクプロジェクトセンター 教

40 COC地域協議ワーキンググループ意見交換会戦略的研究推進センター農林水産業の六次産業化プロジェクトセンター

島根県、松江市、出雲市、大田市、安来市、雲南市 包

41 膵がん撲滅プロジェクトセンターからスピンオフした大学発ベンチャー

戦略的研究推進センター膵がん撲滅プロジェクトセンター 研

42 スーパーサイエンスハイスクールと協働した高大連携共同研究

戦略的研究推進センター膵がん撲滅プロジェクトセンター 島根県(教育委員会)

研包

43 Rubyとオープンデータを活用した地域活性化モデルの構築と効果の研究

戦略的研究推進センターRuby・OSSプロジェクトセンター

研包

44 島根大学サイエンスカフェ 産学連携センター、研究推進室 そ

45 高校生フィールド学習 産学連携センター地域医学共同研究部門 島根県(教育委員会)

教包

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頁 事  業  名 実施部局等 関係市町村等

46 全国初! 小大連携および中大連携 産学連携センター地域医学共同研究部門

出雲市(教育委員会、出雲科学館)

教包

47 全国初! 高大産連携~出雲高校課題研究 産学連携センター地域医学共同研究部門 島根県(教育委員会)

教包

48 ハンズフリー「音声認識記録システム」の開発 産学連携センター地域医学共同研究部門

研そ

49 ひらめき☆ときめきサイエンス ~ようこそ大学の研究室へ~(H27年度)「細胞の不思議な世界-ミクロの世界をさぐる-」

総合科学研究支援センター遺伝子機能解析部門 そ

50 ひらめき☆ときめきサイエンス ~ようこそ大学の研究室へ~(H25年度)「細胞の世界-ミクロの世界をさぐる-」

総合科学研究支援センター遺伝子機能解析部門 そ

51 自治体との協働で行う健康調査とそれにもとづく健康づくり活動

地域包括ケア教育研究センター、医学部、人間科学部 雲南市、隠岐の島町、邑南町

研包

52 Academic Knowledge Network (AKN):地域医療人の研究支援のためのユニークな枠組づくり

地域包括ケア教育研究センター、医学部、人間科学部

邑南町、浜田市、大田市、出雲市、隠岐の島町

研包

53 島根大学旧奥谷宿舎(島根大学サテライトミュージアム)の市民向けギャラリー無料貸出しによる中心市街地活性化・地域文化振興 ミュージアム そ

54 邑南町と世界をつなぐ縁結びプロジェクト2017 国際交流センター 邑南町、島根県(教育委員会)教包

55 COC人材育成コース・セミナー 地域未来戦略センター 雲南市教包

56 しまね地域資料リポジトリ ―GO-GURa― 地域未来戦略センター島根県、松江市、安来市、出雲市、雲南市、大田市、浜田市、飯南町、邑南町、隠岐の島町、西ノ島町、知夫村

教包

57 全国遺跡報告総覧の全国展開による遺跡報告書のデジタル化と発信 附属図書館 そ

58 シンポジウム・講演会・企画展示等による学術情報発信 附属図書館 そ

59 安全安心まちづくりボランティア 学生支援課 学

60 サイバー防犯ボランティア 学生支援課学包

61 『島根大学医学部防犯パトロール』 医学部 学務課 学

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教育活動 学生活動 その他地域貢献

活 動 概 要

人口減少社会において、地方への人口移動が国を挙げての課題になりつつあるが、いずれは誰もが高齢者にな

るわけで、高齢期になっても地域で安心して暮らし続けられる基盤があってこそ、地方への移住促進も実現性が

高くなるのではないかと考える。政府や自治体がまずすべきことは、地域の実情に合った医療・介護の提供体制

を整備することであり、そのために取り組むべき課題は多い。加えて、今後の死亡者急増時代においては、死亡

場所についても検討しておく必要がある。本プロジェクトでは、離島で暮らす高齢者の住み慣れた地域で最期を

迎えたいというニーズに対し、高齢者の地域居住要件を検討することを目的とした。

高齢化のフロントランナーであり、高齢者人口の増加はすでにピークを迎え減少に転じ始めている島根県の隠

岐島の 4 町村(知夫村、西ノ島町、海士町、隠岐の島町)を対象に、厚生労働省の「人口動態調査死亡票」の市

町村別の個票データを用いて、「死亡場所割合」の推移について二次分析を行った。また、総務省の『住民基本

台帳人口移動報告』を整理・分析するとともに、隠岐 4 町村の行政機関および関係機関を対象に、質問紙調査と

フィ―ルド調査(面接法)を実施し、質的分析も行った。

活動による成果

離島地域の高齢者が最期まで住み慣れた島で暮らし続けるためには、重度の要介護者の受け皿の整備と地域の

互助活動をベースにした、保健・医療・福祉サービス供給主体と行政および住民との連携強化が重要であること

が示唆された。ただし、その前提には、“人生の最期”に対する「覚悟」が問われるであろう。住み慣れた地域で

最期まで暮らし続けるために、“人生の最期”に対する「覚悟」と医療・福祉の“最後の砦”が前提条件であるこ

とを、高齢化のフロントランナーである離島地域の現実が提起している。

キーワード:隠岐 4町村、高齢者、在宅ケア、地方創生

離島における在宅ケアの検討(隠岐 4 町村)-地域で安心して暮らし続けられる基盤があってこその「地方創生」-

法文学部 法経学科 研究活動 包括連携

    他市区町村への65歳以上の転出者数・率 (単位:人、%)

2011年 2012年 2013年 2014年

全国265,525(0.9)

271,011(0.9)

284,388(0.8)

284,779(0.8)

島根県912(0.4)

894(0.4)

1,053(0.5)

1,002(0.5)

隠岐郡50

(0.7)34

(0.5)68

(0.9)62

(0.8)

海士町10

(1.1)14

(1.6)14

(1.5)12

(1.3)

西ノ島町10

(1.0)4

(0.3)13

(1.0)11

(0.9)

知夫村10

(3.5)3

(1.1)6

(2.0)9

(3.2)

隠岐の島町20

(0.4)13

(0.3)35

(0.6)30

(0.6)注:()は、65歳以上高齢者数に占める割合。

出所:総務省「住民基本台帳人口移動報告」、「住民基本台帳年齢階級別人口(市区町村)」より作成。

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研究活動 学生活動 包括連携 その他地域貢献

キーワード:三江線廃線問題、沿線地域の地域再生、県の行政責任

山陰研究ブックレット『三江線の過去・現在・未来』の刊行

法文学部 山陰研究センター 教育活動

活 動 概 要

島根大学法文学部山陰研究センターでは毎年、山陰研究ブックレットシリーズとして、地域における旬のテーマに沿ってブックレットを刊行し、広く地域社会に研究成果を還元している。

2017年 4 月に刊行された『三江線の過去・現在・未来:地域の持続可能性とローカル線の役割』は、現在廃線が予定されている三江線の問題を、その歴史からはじめ、廃線の経緯の整理と検証、さらには沿線地域の再生の展望や地域交通の未来など、広範に扱っている。

総勢 8 名によって執筆されたこのブックレットは、例年の倍近い700部を印刷したものの、全国規模での配本希望が相次ぎ、 1 週間もたたずに完売した。そのため、すぐに1,000部の増刷をかけることとなり、現在も順調に売上げを伸ばしている。三江線廃線問題の全国的な注目度の高さを証明する結果となった。

執筆陣には研究者のみならず、三江線廃線問題に現場から取り組んできた地元住民の方 2 名にも加わっていただき、廃線に直面する現場の苦悩も収録した、貴重な記録となっている。

本ブックレットでは第一に、県が廃線問題に際してとった対応が不十分であった点について検証し、より踏み込んだ責任ある対応が求められると主張している。第二に、廃線後の沿線地域の地域づくりに展望を示すべく、同じく廃線となった可部線での地域再生の事例分析や、交通権や地域公共交通の構築に関する議論を提起している。

今後相次ぐと予想されるローカル線廃止問題と、それに直面するであろう全国の地域にとって、有益なブックレットとして普及していくことが望まれる。

活動による成果

島根大学法文学部山陰研究センターでは、本ブックレットを発刊・販売・普及するだけに止まらず、 6 月24日には沿線地域である川本町においてシンポジウム「ともに考えよう三江線沿線のこれから」を開催した。沿線地域住民の今後の鉄道資産を活用した地域づくりに向けた動きへとつなげることを意図した企画である。実際にこのシンポジウムを始点として、さまざまな団体と研究者がつながり、今後の地域再生の動きを協議、展望しているところである。

シンポジウム・会場の様子

2

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教育活動 学生活動 その他地域貢献

活 動 概 要

島根大学法文学部考古学研究室では、長年にわたり島根県内の遺跡のフィー

ルド調査を行ってきた。遺跡の調査は、考古学の教育・研究に欠かせない学習

プログラムであり、地域社会との関わりも深い。とくに、島根県や関係市町村

との連携によって、大きな地域貢献を果たしてきた。

昨年度は、島根大学と大田市との包括的連携に基づき、考古学技術実習の一

環として石見銀山遺跡の発掘調査を行った( 9 月 1 ~15日、学部生から大学院

生まで 8 名が参加)。参加した学生にとって考古学的調査の基礎作業を学ぶ機

会となるとともに、島根大学として地元にある世界遺産の調査に参加し、石見

銀山遺跡の実態解明に協力できた。

また、古代出雲プロジェクトセンターの活動を兼ねて、島根県教育庁文化課

古代文化センターと島根県立古代出雲歴史博物館、隠岐の島町教育委員会との

共同研究も実施している。隠岐諸島における黒曜石原産地と遺跡の踏査・発掘

調査によって、火山岩解析手法を取り入れた島根発となる新しい「先史時代黒

曜石区分図」と原産地・遺跡マップの作成に取

り組んでいる。地元自治体との連携により、文

化財保護の地域的課題解決にむけ、基礎研究に

よる基盤情報の整備と重要性の高い学術的価値

の構築に資する。

活動による成果

◦『考古学実習Ⅰ・Ⅱ』の一環として、出雲弥生の森博物館との共同

ギャラリー展示『山陰最古の弥生遺跡-原山遺跡は何を語るか-』

の企画・準備・展示作業を行った。地域の大学と博物館が合同で展

示作業を行うのは珍しいケースであり、学生にとっても博物館業務

の一端に携わる貴重な機会となった。

◦大学が島根県教育委員会の協力を仰ぎ、東京都一ツ橋ホールにおい

て「『出雲国風土記』と古代の道」と題して、古代出雲文化フォーラ

ムⅤを開催し、島根大学および島根県の幅広い学術研究成果等を発

信し、古代出雲の知名度・存在感の向上に大きく寄与した。今年度も島根県教育委員会と連携して、古代出雲

文化フォーラムⅥを名古屋市で開催予定であり、本県の知名度アップに繋がることが期待される。

キーワード:古代出雲、世界遺産、隠岐諸島、地元自治体との連携

島根県内におけるフィールド調査による地域貢献

法文学部 社会文化学科 包括連携研究活動

隠岐諸島における黒曜石原産地遺跡の踏査とその成果

石見銀山遺跡の発掘調査と現地説明会の様子

学生によるギャラリートークの様子

3

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教育活動 学生活動 その他地域貢献

活 動 概 要

当事業の内容は、「松江開府400年」を契機にして始まり、平成23年度(2011年度)から現在まで継続している、

松江市が進める自治体史『松江市史』の刊行である。予定されている『松江市史』は、通史編 5 巻(自然環境・

原始・古代、中世、近世 1 ・ 2 、近現代)、史料編11巻(自然環境、考古資料、古代・中世 1 、中世 2 、近世 1 ~

4 、近現代 1 ・ 2 、絵図・地図)、別編 2 巻(松江城、民俗)の全18巻である。このうち未刊行の巻は、通史編近

世 1 ・ 2 、近現代、史料編の自然環境、近代 2 、別編松江城と、すでに残り 6 冊となっている。

また、これら『松江市史』刊行に関連して、毎月 1 回、松江市立中央図書館で松江市史講座が開催されており、

付帯出版物として「松江市ふるさと文庫」というブックレットや「松江市史研究」という研究紀要も刊行されて

いる。

本事業の目的としては、歴史学のみならず、地質学、植物学、生物学、地理学、考古学、民俗学といった多分

野にわたる学問領域を専門とする研究者たちが、各専門分野の最新の知見に基づき、松江市域の歴史や自然等に

ついて調査し、資料を公開するとともに、通史編の執筆に参画することで、一般市民にも分かりやすく、松江の

歴史を提示することにある。編纂組織としては、編纂委員会、編集委員会、分野ごとの部会からなっているが、

いずれにも島根大学の教員・元教員が参加し、編集と執筆に携わっている。

なお、特に松江市の場合、第二次世界大戦後に本格的な自治体史編纂が行われず、また島根県のそれも不十分

なかたちでしか行われていないことから、学術

研究の基礎となる資料(史料)の調査が悉皆的、

系統的に行われてこなかったという問題があっ

た。このため、今回の『松江市史』は、史料編

を重視し、事前に文化庁の補助を受けて、古文

書の調査事業も併せて行い、史料目録も刊行し

ている。こうした調査を踏まえ、松江市域の史

料や文化財の保存も図っていくとともに、市の

公文書も含めた史料の保存とその利用、活用に

向けた取り組みを行っていくことも今後の課題

となっている。

活動による成果

予定している18巻からなる『松江市史』のうち、すでに12冊が刊行されており、調査研究の成果が公開されて

いる。また、毎月の松江市史講座では、執筆担当者が100名を超える聴講者に対して、研究成果の一端を分かりや

すく解説し、市民の市史に対する関心に応えつつその理解を深めるのに貢献している。その様子は、マーブルテ

レビ(松江市内のケーブルテレビ)でも放映されているので、図書館に来た聴講者以外にも広く視聴されている。

また、編纂過程で行った史料の所在調査、整理に基づく目録の刊行により、市域内外の研究者や市民が史料を

閲覧し、研究利用することが可能になっている。史料編の刊行も同様の意義を持ち、今後全国の研究者が松江市

域の史料を踏まえた研究を行っていくことが可能となりつつある。

キーワード:地域史、通史、史料調査、史料の保存、松江城、考古、民俗

法文学部 社会文化学科

松江市史編纂事業

包括連携研究活動

4

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研究活動 学生活動 包括連携 その他地域貢献

活 動 概 要

社会文化学科では、今年度学科改組に伴い、初年次教育科目として、 1 年生前期に「社会文化入門セミナー」

を新たに開設した。今年度は学科の 1 年生54名が履修し、学科の教員 5 名が授業を担当した。授業では、学科の

学問分野(社会学・地理学・文化人類学・歴史学・考古学)の紹介、学生の他己紹介、情報のインプット・ア

ウトプットの後、受講生54名が10班に分かれて、全国有数の観光地であり、かつ全国有数の歴史的資源を有する

「松江」を対象として、学科の学問分野の方法論をもとに、フィールドワークを実施した。

フィールドワークのテーマは、観光(八重垣神社、松江城、玉造温泉、堀川遊覧船)、城下町松江の寺院(橋

北、橋南)、小泉八雲のみた松江、松江市とアイルランドとの国際交流、松江市の文化財・文化遺産(意宇六社、

城下町松江)で、観光、歴史、文化、民俗、文化財、国際交流など多岐にわたるものであった。受講生は 6 月上

旬の土日に、班ごとに、観光客へのアンケート、市役所・博物館・寺院などへの聞き取り調査、現地調査などを

実施した。

6 月29日、 7 月 6 日、13日、20日には、フィールドワークの報告会を開催した。学生にとっては、初めての本

格的なフィールドワーク、パワーポイントを使用した発表であったが、どの班も意欲的に取り組み、初めての調

査、発表とは思えないほどレベルの高いものであった。また発表後の質疑応答も活発に行われた。

活動による成果

報告会には報道関係者の取材も行われ、 7 月11日の産経新聞(山陰)「島根大生 松江・堀川遊覧船に提言「全

国唯一」アピールを」で、 9 班の「松江市の観光D(松江城と堀川)」の成果が、 7 月14日読売新聞(島根)「松

江観光の魅力掘り起こし紹介 授業で島根大生」で、 7 班の「アイルランドと松江の国際交流」の成果が大きく

報道された。受講生がフィールドワークにおいて得た成果は、今後松江の観光戦略の立案や、松江の歴史や文化

財の研究において重要な内容が入っていることから、法文学部ホームページで、パワーポイント資料を公開して

いる。今後学生が調査した成果が、松江市における観光の発展や、歴史や文化の研究に活用されることが期待さ

れる。

キーワード:フィールドワーク、グループワーク、プレゼンテーション

社会文化学科初年次教育科目「社会文化入門セミナー」

法文学部 社会文化学科 教育活動

プレゼンテーションの様子フィールドワークの様子

5

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研究活動 学生活動 包括連携 その他地域貢献

活 動 概 要

地理学研究室自主ゼミは、地理学研究室の学生が主体となり実施する自主的な地域調査活動です。毎年特定の

地域を決めた上で、その地域について各自が関心のある事柄を文献や統計データなどを用いてまとめ、隔週で開

催されるゼミナールで発表し内容について議論していきます。 1 ・ 2 回生は基本的な地域の特徴をまとめていき、

3 ・ 4 回生はこれまでの経験を活かしてより専門的な地域の課題や実際の調査対象を絞り込んでいきます。出来

上がった事前調査資料を手に、夏休みには実際に現地に行き地域調査を実施します。 2 泊 3 日の現地調査は決し

て長いものではありませんが、入念に準備した事前調査資料と実際

の地域の状況を付き合わせることによって、一見しただけでは分か

らないその地域の価値や課題、奥深さが理解できるようになってい

きます。

これまで『城下町津山』、『雲南・奥出雲』、『石見江の川』などを

調査対象地域としてきました。今年度の『隠岐地域調査』では、隠

岐の島町を中心とした、植生と地形などの自然環境、歴史的な文化

遺産、漁業・地場産業について調査を実施しました。

活動による成果

2016年度の『石見江の川地域調査』の結果は『しまね大交流会

2016』において報告し、多くの来場者に活動を知ってもらうととも

に、地域の価値について再認識いただけたという手応えを感じるこ

とができました。

2017年度『隠岐地域調査』についても昨年度同様にしまね大交流

会で報告するとともに、Web上でも調査結果を開示しより広く公表

する予定です。

キーワード:地域調査、地理的見方、地域の価値

法文学部 社会文化学科

2017年度地理学研究室自主ゼミ『隠岐地域調査』

教育活動

『しまね大交流会 2016』での報告の様子

『隠岐地域調査』の様子

隔週で開催されるゼミナール

6

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研究活動 学生活動 その他地域貢献

活 動 概 要

しまね文化振興財団との連携事業平成23年 3 月に、国立大学法人島根大学教育学部と(公財)しまね文化振興財団(島

根県民会館)は、地域の文化振興を目途とした包括的な連携協定を結んだ。 2 度の任期延長を経て、現在は、アカデミックシリーズ、スチューデントシリーズ、協働講義、アウトリーチ等の連携事業を継続開催している。「スチューデントシリーズ」の一環として

学生が主体となって企画・実行を行い、財団の専門職員が全面的にサポートする連携事業が「スチューデントシリーズ」である。なかでも、通常の音楽会には入場できない乳幼児や、その保護者を対象としたオリジナル音楽劇「 0 歳からの音楽の絵本」は、多くの参観者を集めている。 4 年目となる平成28年度は、シンデレラの物語による創作音楽劇を企画し、邑智郡川本町にある悠邑ふるさと会館で本番を行った。(2017年 3 月 9 日実施)手作りの音楽劇

0 歳児から楽しめる音楽劇であることから、まず市内の保育園で乳幼児観察を行い、附属幼稚園で予行演習を行うことで、通常演奏会とは異なる諸課題の抽出を試みた。さらに子どもの発達に詳しい心理学の教授から助言をいただいた。本番前日のリハーサルでは現地ホール(川本町)の音響や照明のスタッフと念入りに打ち合わせを行った。会場設営にも工夫を凝らしベビーカー置き場や授乳室、おむつ替えの場所を設け、受付には子どもが喜ぶよう風船を飾り付けるなどした。本番では演奏が始まる前に手遊び歌「はじまるよ」を行い、和やかな雰囲

気づくりに努めた。劇中の演奏は全て学生が担い、楽曲の構成や編曲も

行った。手作りのペットボトルマラカスを子ども達に配布し、アンコール曲(「星に願いを」)を全員で演奏し、終演した。

活動による成果

川本町では演奏会が行われる機会が少なく、さらに乳幼児向けの演奏会は殆ど行われたことが無かったため、来場者からは大変喜ばれた。平成29年度の再演を望む声も多く寄せられている。県民への文化接触率の向上や、子育て支援等の一翼も担うことができた。企画した学生の声

何をしたらいいのか真っ白で何もないところから始まったが、「たくさんの子どもたちに音楽を知ってもらい、楽しんでもらおう」という思いで企画・運営をした。川本町のたくさんの方々にお力添えいただき今回 0 歳の絵本を企画し本番を迎えることができた。終演後には楽しかった、明日も見たいなど子どもたちからの嬉しい声を聞き、企画して良かったと思えた。(教育学部・音楽教育専攻 3 年次生・抜粋)アンケートの声◦日頃、目の前で演じて下さるのを見る機会は少ないので、とても有難い時間となった。◦子ども達と一緒に参加できる内容で、リズムの変化もあり、とても楽しんで参加できた。

キーワード:音楽アウトリーチ、創作音楽劇、子育て支援、学外体験活動

教育学部 音楽教育連携推進室

 (公財)しまね文化振興財団 ― 島根大学教育学部連携事業

「 0 歳からの音楽の絵本~夢の時間をあなたに~」

包括連携教育活動

7

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研究活動 学生活動 その他地域貢献

活 動 概 要

ひとにやさしいまちづくりを目指して文化庁の「大学を活用した地域芸術文化振興事業」に松江市と協働で応募し、事業

名「松江市音楽文化創出・振興事業-ひとにやさしいまちづくりをめざして-」で採

択を受けた連携事業( 3 年間)の、中心的活動である。松江市及び島根大学との連携

により行った活動である。様々な障壁や通常の固定概念を飛び越え、より自由に、音

楽に関わろうとする意欲的な試みで、様々な角度から音楽的感受性のバリアフリー化

を促した。島根大学管弦楽団による第 1 部と、浜田真理子、大友良英、神戸音遊びの

会による第 2 部からなるジョイント・ステージを企画した。

(2013年11月30日 於:島根県民会館大ホール)

音楽はバリアフリーだ!「音楽はバリアフリー」を合言葉に、第 1 部は島根大学管弦楽団が“音楽表現のバリアフリー”を実現してきた

作曲家たち 5 名を紹介。各曲を部分的に演奏し、作曲技法を解説しながら音楽の知覚と感受についてその魅力を

解き明かした。また、島根大学出身の浜田真理子をソリスト(歌とピアノ)に迎え、安来のおじ作曲「水の都に

雨が降る」を教育学部教授である河添達也が編曲してオーケストラとの共演版を初演した。第 2 部では垣根を超

えた音楽コミュニケーション実践で知られる大友良英(朝ドラ「あまちゃん」の作曲でも有名)と、障がい者に

よる即興音楽集団として国際的に名

高い「神戸音遊びの会」が縦横無尽

な即興演奏を繰り広げた。

最後に島根大学管弦楽団も加えて

フリーセッションを行い、文字通り

音楽表現のバリアフリーを実現して

見せた。

活動による成果

902名の来場者があり、コンサートは大盛況のうちに終了した。その模様はNHKテレビで全国放送され、大き

な反響を呼んだ。このコンサートをきっかけに松江市の障がい者団体が神戸音遊びの会と交流を始め、松江市の

NPO法人「ゆうあい」などが実行委員会を組織。「たのしい楽団」が発足し、現在(2017年)も活動を続けてい

る。演奏した「水の都に雨が降る」のオリジナルバージョンは、雨天時のJR松江駅でBGMとして流れている。

来場者の声◦行政の支援で地域と共に大学の実践がこのような形になることはすばらしい。

◦「バリアフリー」という意味がとても深い。 ◦音楽を通じての街づくりとても感動した。

◦音楽表現のバリアフリーという少し変わった切り口からのアプローチが大変良かった。

◦演奏を聴き、自分の中のバリアがいかに凝り固まっていたかを痛感させられた。

キーワード:感受性のバリアフリー、地域文化創出、集団即興演奏

 松江市・島根県民会館・島根大学音楽教育連携推進室連携事業

「音楽はバリアフリーだ!」コンサート

教育学部 音楽教育連携推進室 包括連携教育活動

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教育活動 学生活動 包括連携 その他地域貢献

活 動 概 要

近年、地域経済の活性化や地域創生の切り札として、地域資源に注目が集

まっている。当研究室では、島根県内の地域資源を活用して産業振興の貢献

につながる研究を実施すべく、地域資源を 2 つのタイプに区分して研究を進

めている。具体的には、①高い機能性を有するものの活用されていない地域

未利用資源の発掘と活用方法の検討、②既に製品化しているものの、認知度

が低くPR力の弱い製品の掘り起こしと販売促進への検討である。平成28年度

は、①については、「サツマイモの葉柄」、「ヤマモモの葉」を中心に、②につ

いては、「鯖の塩辛」について研究を行った。

未利用資源の発掘と活用方法の検討

◦�サツマイモの葉柄について、県内保育所、幼稚園の利用状況をアンケー

ト調査するとともに成分分析を実施した。

◦ヤマモモ葉について、高い抗酸化性を保持できる製造方法を検討した。

「鯖の塩辛」掘り起こしと販売促進への検討

教育学部の学生で有志によるチームを結成し、鯖の塩辛のPR方法につい

て、販売企業と学生との話し合いにより課題を明確化した。その結果、古く

から伝わる伝統食品を食べやすく斬新で幅広い世代に受けるレシピの開発・

考案を行うこととした。

活動による成果

◦サツマイモ:サツマイモは、県内の保育所、幼稚園で最も栽培されている

農産物であった。また葉柄部の成分を測定したところ、機能性成分を豊富

に含む素材であることが明らかになった。

◦ヤマモモ葉:焙煎処理がヤマモモ葉茶の機能性成分に及ぼす影響について

実験したところ、焙煎温度は150℃、高くとも200℃程度にとどめるのが良

いことがわかった。葉をパウダーにすることにより、クッキーやわらび餅

に利用できることが分かった。この成果は新聞にも掲載された。

◦鯖の塩辛:有志により、レシピ開発をした結果、20種類程度のレシピを開

発出来た。このレシピ開発は、単なるレシピ開発ではなく、各学生ともレ

シピに対し、コンセプトやPR点などを明確にすることを心掛けた。これら

の成果を対象企業の方々に知っていただくため、平成29年 1 月26日に島根

大学にて試食会を開催した。この試食会については、新聞にも掲載された。

キーワード:地域資源、未利用資源、活用、特産品開発

県内の地域資源を活用した特産品開発

教育学部 研究活動

試食会の様子 H29.1.26

焙煎処理後のヤマモモ茶葉

サツマイモ葉柄調査の様子

鯖の塩辛研究チームの結成(教育学部有志)

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研究活動 学生活動 その他地域貢献

活 動 概 要

本事業「中山間地域での小中学生・夏休み学習支援」は、学習塾等の存在しない浜田市弥栄町にて、安城公民

館をはじめとする地元の方々と連携しながら、島根大学教育学部の学生が小中学生向けの夏休み勉強合宿に参加

し、当地の児童生徒の学習支援を行ったものである。

この学習支援事業は、2010年から2016年まで、改良を加えながら 7 年にわたって開催してきた点にも特徴があ

る。この 7 年間で参加した学生は延べ34人である。日程は 8 月中の 3 日間で、勉強の時間を中心にして、自然と

のふれあいを含むレクリエーションのほか、それぞれの専門分野を活かした学生によるレクリエーション企画も

行った。また、子どもと学生が共同生活をする機会として、食事とその準備などをはじめとする生活指導という

側面も含んでいる。この 3 日間を通して、集中して勉強に取り組む姿勢を身につけた児童生徒の姿も見ることが

できた。

派手さはなく規模の小さい事業ではあるが、山陰地域の教員養成学部が果たすべき役割として、地域のニーズ

に応えた企画であったと考える。また、弥栄地域の方々のご尽力とご理解なくしては不可能であった事業として、

この場を借りて改めて御礼を申し上げたい。

活動による成果

参加学生について◦実際の学習支援を通して、教師としての自覚やスキルを高めることができた。

◦島根県下における中山間地域(とりわけ石見地域)の教育の現状について学ぶことができた。

◦企画を支援する地域の人々とのふれあいの機会をもつことができた。

地域の児童生徒について◦地域的なハンディキャップを補う学習機会を持つことができた。

◦�ふだんはあまり見かけない現役大学生との交流の機会となり、島根大学に親しみをもってもらうことができ

た。これが、現地の子どもたちの進学意欲向上にも繋がれば幸いである。

島根大学あるいは教育学部として◦�七年におよぶ継続的な学習支援活動として、地域の人々に島根大学や教育学部に対する信頼や親しみを持っ

てもらえた。

キーワード:中山間地域、学習支援

包括連携教育活動

中山間地域での小中学生・夏休み学習支援

教育学部

会場となった公民館 学習支援をしている様子

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研究活動 学生活動 包括連携 その他地域貢献

活 動 概 要

「1000時間体験学修」は、1000時間に及ぶ体験学修を卒業要件として必修化

した教育課程であり、「基礎体験」「学校教育体験」の 2 つの体験領域から構

成されている。

基礎体験領域は、地域の様々な活動への参加や社会教育施設などでの教育

活動、小・中学校等での学習支援等を通じて、教師に必要な資質の土台とな

る社会性や豊かな人間性を養うものである。学生にとっては貴重な体験の場

となり、地域社会にとっては活動の活性化や運営スタッフの増加が見込め、

双方にとって有益な活動となっている。

写真 1 は、地域の活性化を目指した活動に学生が参加している様子である。

県東部の中山間地域を舞台に、学生の柔軟な発想を生かしながら小学生対象

の体験イベントを企画し、地域の大人も巻き込みながら、年間を通して定期

的に活動を行うことで地域おこしの一役を担っている。

写真 2 は、県内の社会教育施設での体験イベントにスタッフとして参加し

ている様子である。施設スタッフの指導を受けながら、活動のねらいを理解

してイベントを盛り上げ、参加者とのかかわりを通してコミュニケーション

スキルや社会の一員としての自覚を高めている。

平成16年度より始まった本活動は、今年で14年目を迎えた。年度によって

ばらつきはあるが、毎年400前後の活動募集があり、年間のべ2,300人程度の

学生が、西から東まで県内各地に出かけて意欲的に体験活動を行っている。

活動による成果

基礎体験活動の有意義感についてのアンケート調査( 5 :とても有意義・・・ 1 :有意義でない)では、近年

平均 4 ポイントを超えており、大半の学生が有意義感をもって活動に臨んでいることが伺える。学生の声として、

「様々な人とのかかわり方を学べる」「コミュニケーションスキルが高まる」「企画・運営能力が高まる」などが

あった。

学生を受け入れた事業所へのアンケートでも、「目標をもって参加している」「礼儀正しく熱心である」「参加者

と良好な関係を築いている」「活動ごとにスキルアップしていると感じ

る」など、肯定的な意見が 9 割以上を占めている。

1000時間を超えても、その有意義感から意欲的に体験活動に取り組

む学生が多く、昨年度卒業生の平均体験時間は1200時間を超えていた。

教員採用試験合格者の平均体験時間は1300時間を超えており、この基

礎体験活動が教師としての力を高める一役を担っていることが伺えた。

キーワード:地域理解、社会参加、コミュニケーション

 1000時間体験学修【基礎体験活動】

学生の体験活動による地域活性化活動、社会教育活動

教育学部 附属教育支援センター 教育活動

島根大学     地域社会

写真 1

写真 2

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教育活動 学生活動 その他地域貢献

活 動 概 要

「CoCoラボ Shimafu」とは、学習生活支援研究センターの愛称です。全国に先駆

け平成27年 4 月、附属学校園に設置しました。本センターは、「附属学校園内の子ど

もへの支援」「通常学級における特別支援教育の実践研究」「実践研究の成果を生か

した地域連携・地域貢献」を目的とした施設です。

附属学校園では、学習支援、生活支援、教育相談等の日々の研究の成果を生かし、

次のような地域貢献活動を行っています。

研修会の主催・講師派遣、及び共同研究◦研修会や講演会等の開催、行政機関主催の研修会への講師派遣

◦�学校園(保育園、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校等)主催の研修会への講師派遣

◦�地域の学校との共同研究(通常学級における個別の支援、授業づくり、体づくり等)

<これまでの地域貢献の例>

◦�子どもの学びの多様性に応じる授業づくり公開研修会

◦�地域の学校園研修会への講師派遣「子どもの特性理解と支

援」「学習につながる体づくり」

◦�島根大学との共同研究「ユニバーサルデザインによる授業

づくり」等

地域の各学校園からの相談業務◦�各学校園、教員からの相談(来所・電話相談等)

◦各学校園への訪問巡回相談

<これまでの相談例>

◦子どもの学習・生活状況、支援方法についての相談等

活動による成果

本学校園子ども支援コーディネーター・担任・養護教諭・保護者との連携により通常の学級に在籍する支援の

必要な子どもへの支援体制の充実を図り成果を上げています。その研究の成果を地域に積極的に情報発信すると

共に、地域の学校園での教員研修や子ども支援、授業改善、学級経営に関するアドバイス等の貢献活動につなげ

ています。学校教育現場の特別支援教育にかか

わる諸問題・諸課題の解決に資する先導的な役

割を果たし、附属学校園の地域拠点強化につな

がると共に、島根県の特別支援教育の充実、教

員の資質向上に貢献できるものと考えています。

キーワード:子どもの特性理解、授業改善、教員研修、専門巡回相談

 島根大学教育学部附属学校 学習生活支援研究センター

「CoCoラボ Shimafu」

教育学部 附属学校 包括連携研究活動

高校での講演会の様子

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研究活動 学生活動 その他地域貢献

活 動 概 要

1000時間体験学修は大学近辺の地域において行うばかりでなく、島根・鳥取の全県下において実施している。

その中でも、本項では「隠岐」での体験学修について紹介したい。離島であり遠隔地だが、平成28年度だけでも

9 つの活動募集があり、延べ21人の学生が体験学修に参加し、自らの学習を

深めつつ地域貢献に取り組んでいる。

写真 1 は、海士町で毎年開催されている「アドベンチャーキャンプinあ

ま」の様子である。水道も電気もない大自然の中での 5 泊 6 日のキャンプ活

動にサポートスタッフとして学生が参加することで、子ども達が安心して伸

び伸びと活動できるよう支援している。

写真 2 は、海士町中央公民館が主催する「普段の生活学校」に学生がス

タッフとして参加している様子である。中学生が 1 週間にわたって合宿生活

をしながら通学するこの活動で、日中は授業中の個別支援を行い、夜間は合

宿生活の支援や宿題等の学習支援を行っている。

写真 3 は、実習セメスター学校教育体験活動で知夫小中学校を訪れた学生

が全校生徒の前であいさつをしている場面である。 1 週間朝から夕方まで子

ども達と一緒に学校で過ごす中で、自らの教師力を高めながら学習支援や生

活支援に積極的に取り組んでいる。

隠岐での1000時間体験学修は、宿泊しながら数日間にわたって行うことが

ほとんどである。各町村教育委員会の協力のもと宿泊所の手配や交通費の補

助などをいただき、学生にとって有意義な活動の場となっている。

活動による成果

参加した学生や受け入れてくださった教育委員会の方の感想から、双方にとって有意義な活動となっているこ

とが伺える。

◦教育委員会の方をはじめ、先生方や子ども達、地域の方々が温かく迎えてくださり、安心して一週間を過ごす

ことができました。(中略)期間中は、島の教育や小規模校、小中一貫校の実態を学びたいと思っていました。

授業の中で魚をさばくことがあり、島ならではの授業だと感じました。また、複式学級での「わたり」授業を

観察させていただきとても勉強になりました。(中略)集会や朝終礼などで、多数の前で話をする機会をつくっ

ていただきました。集団の前で話をすることに苦手意識がありましたが、順序立てて話すよう心掛けることで

少しずつ成長できました。(参加学生)

◦学生全員が活動のねらいや内容に添って大変熱心に活動していて感激しました。学生さんが来島することで各

学校の活性化になっています。子ども達も楽しみにしているので、今後も多くの学生さんに来島していただき

たいと思います。(教育委員会担当者)

キーワード:地域理解、学校理解、社会参加、コミュニケーション

隠岐を舞台とした1000時間体験学修

教育学部 附属教育支援センター 包括連携教育活動

写真 3

写真 2

写真 1

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研究活動 学生活動 包括連携 その他地域貢献

活 動 概 要島根大学福祉社会コースでは、2007年、学生らが中心になり「オープンカレッジ実行委員会」を立ち上げまし

た。翌2008年10月から、「知的に障がいのある人のオープンカレッジin松江」(毎年度 秋・春 2 日間ずつ開講。 2年を 1 期)を開講しています。

オープンカレッジでは、地域で生活しておられる知的に障がいのある方(18歳以上)が大学に来られ、様々な講義を受講して学びます。

島根大学の教員や地域で活動する専門家の協力のもと、講議形式や演習研式の授業を開講しています。また、毎年 3 月には学外の工場見学や博物館、美術館などにも出かけます。

運営の主な担い手である学生スタッフは島根大学福祉社会コースの学生です。また地域関係者として、松江市教育委員会、松江市社会福祉協議会、松江市手をつなぐ育成会などの皆さんが、受講生募集、講師探し、学習サポーター(島根大学生や地域の方によるボランティア)募集などオープンカレッジの企画から運営まで多くの面で協力してくれています。

活動による成果毎年の参加者は、受講生20~27名、学習サポーターはのべ約100名です。行政、社会福祉法人、当事者組織、企

業等の協力も多数あります。アンケートも、講師、受講生および学習サポーターに毎回行っています。障がいのある方からは「また大学で勉強したい」「サポーターにわかりやすく教えてもらって、楽しく授業を受けられた」など好評を得ています。障がいのある人は、特別支援学校等を卒業すると、社会との接点が限られることが課題とされています。これらの活動は、障がいのある人の地域における社会参加の貴重な機会となっています。

また、福祉社会コース学生や学習サポーターにとっては、障がい理解や障がい者の理解を深める機会になっています。

キーワード:福祉社会、障がいのある人、社会参加、地域での居場所づくり

知的に障がいのある人のオープンカレッジin松江の開催

人間科学部 〔旧:法文学部 福祉社会コース〕 教育活動

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教育活動 学生活動 その他地域貢献

活 動 概 要

こころとそだちの相談センター(旧 教育学部こころとそだちの相談室)では、山陰地域における企業内の組

織的メンタルヘルスの維持管理について、どのような臨床心理学的地域支援が有効であるかを検討するため、平

成22年度より、山陰合同銀行との連携協力事業を行っている。働く人々へのカウンセリングや管理職へのコンサ

ルテーションを実施しながら、大学の有する専門的知識・技術を地域社

会に提供するための研究を継続している。

その一環として、平成25年度から、管理職向けE-ラーニング「ライン

によるケア」(部下と日常的に接する上司・管理職が、職場におけるこ

ころの健康づくりの中心的役割を果たすために行うメンタルヘルス対策

のこと)のコンテンツ開発を行い、職場でのメンタルヘルス対策の実践

につながる効果的な学習教材づくりを進めている。

≪これまでに開発したコンテンツ≫

 「ラインによるケア」( 4 回/全 5 回)

 第 1 回「こころの通うコミュニケーション」

 第 2 回「いつもと違う部下に気づける上司になろう

     ~事例性の把握とその対応~」

 第 3 回「部下からの相談への対応」

 第 4 回「職場環境とストレス」

今年度は、第 5 回「復職した部下への配慮ある対応(仮題)」を作

成する予定。

活動による成果

本活動は、メンタルダウンする労働者の増加により、管理職がメンタ

ルヘルスの対策を学ぶことが喫緊の課題となっているという企業の実態

に基づき、個人の都合に合わせて無理なくアクセスでき、繰り返し学べ

るE-ラーニングというツールを使って、より効率的に、メンタルヘルス

対策を学ぶ機会を提供できた。

さらに、単にテキストを読んで覚え、問題に答えるという従来のE-

ラーニングの提示方法ではなく、実際のカウンセリングやコンサルテー

ションで得た知見をもとに、企業のニーズに基づいた事例問題を取り入れ、クイズ形式で学習者が主体的に取り

組める工夫をしたことにより、日ごろ困っている問題や、よくある失敗など、身近な問題に役立つコンテンツを

提供できた。

今後はさらに管理職だけでなく、労働者のセルフケアを中心としたコンテンツ開発を進め、企業全体のメンタ

ルヘルスに貢献していくことが期待される。

キーワード:メンタルヘルス、E-ラーニング、ラインケア

受託研究「企業内メンタルヘルスの維持管理に関する研究」(E-ラーニングコンテンツ開発)

こころとそだちの相談センター 包括連携研究活動

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教育活動 学生活動 その他地域貢献

活 動 概 要

日本人の半数以上は塩分を多く摂り過ぎています。塩分

摂取量が多いと血圧が高くなり、脳卒中や心血管疾患の

引き金にもなってしまいます。我々が県内の 3 市町(雲南

市・隠岐の島町・邑南町)の住民約3,000人を対象に塩分

摂取量の測定を行ったところ、 1 日の塩分摂取量は男性で

9 .8グラム、女性は 9 .3グラムでした。これは厚生労働省

が目標とする男性 8 グラム、女性 7 グラムよりも高く、減

塩の必要性を強く示唆した結果です。

このプロジェクトは雲南市住民の塩分摂取量を減らすこ

とを目標としています。雲南市は調査した地域の中で最も塩分摂取量が多く、また脳卒中の発症者が多いという

地域課題を有しています。住民の塩分摂取量を減少させることは高血圧などの生活習慣病を予防することにつな

がり、ひいては脳卒中の発症を減少させることに寄与するものと期待されます。このプロジェクトは雲南市健康

推進課と共同ですすめており、塩分摂取過多となる原因の究明を行うとともに、講演会などを通じた住民への啓

蒙活動を行っています。

活動による成果

雲南市での特定健診の際に行った食習慣アンケート結果

から①みそ汁を飲む回数、②漬け物を食べる回数、③調

味料の使用頻度、④麺類の汁を飲む量、と塩分摂取量に強

い関連がみられました。雲南市においては漬け物を食べる

回数と塩分摂取量との関連が強く、この地域特有の食習慣

との関連性を示す結果と考えられました(図)。これらの

結果をもとに減塩への具体的な取り組み方を案出していま

す。日々の保健活動を通じて地元住民の生活習慣を熟知し

ている保健師らと共同で、住民が取り組みやすい方法を実践しています。減塩を自治会単位で行われている住民

主体の健康増進活動に取り込み、住民とともに減塩を考え、実践しています。

キーワード:疾病予防、高血圧、食習慣改善

うんなん減塩プロジェクト

人間科学部、医学部、地域包括ケア教育研究センター 包括連携研究活動

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研究活動 学生活動 その他地域貢献

活 動 概 要島根県では深刻な医師不足の事態となっており、特に東西に長く広がる地理的条件から県央、県西部において

は、より深刻な問題となっている。一方で、地域では一人で複数の疾患を持つ高齢者が多く、幅広い知識と技術を有する総合医の需要が高まっている。

これらの問題を解決するため、医学部では、平成16年 か ら 地 域 医 療 支 援 を 前 面 に 掲 げ、 日 本 版WWAMIプログラム事業やpostWWAMIプログラム事業を通して学部学生、若手医師、指導医の地域医療教育、研修を展開する一方で、地域医療教育学講座、地域医療支援学講座を開設した。さらに、大学と地域が一体となっての総合医育成を目標に大田市からの寄附により、平成23年に総合医療学講座、大学のサテライトキャンパスとして大田市立病院内に大田総合医育成センターを開設し、総勢16人を目標とした教授などの指導体制を整えることとした。「10年、20年後に本当に頼りになる総合医」の育

成を理念として、大学での高度先進医療、地域中核病院を現場としての小児から高齢者、内科・外科・救急、予防・介護・福祉と幅広い診療能力を有する総合医を育成し、大学病院と地域中核病院等との連携強化、地域医療の充実を目指す。

教育領域としては、学部学生 1 ・ 2 年次を対象に「地域医療早期体験実習」、 5 ・ 6 年次を対象に 2 週間から 4週間の「地域医療実習」を行い、総合医に必要な基本的な態度・知識・技術の教授を行う。また、初期・後期研修医を対象として、総合医及び総合マインドのある専門医育成のための教育研修を行う。研究領域としては、総合医育成のための総合医育成プログラムの研究・開発・実践・検証(臨床研究)を行う。

この実現のために、 1 )指導医は大田市立病院での診療に従事する一方で週 1 日は大学で学生、研修医の指導、自己学習、研究を行うこととし、 2 )継続した学習、研究のために大田市立病院から医学部図書館へのアクセスラインの開設を行った。

活動による成果平成23年開設は 2 人の教授で始まったが、平成29年 6 月には、教授、助教他、家庭医専門医取得が 1 人、総合

内科専攻医(研修中)が 1 人、総合診療専攻医が 3 人、総勢15人となり指導体制が次第に整いつつある。大田市立病院での学生、研修医数は、年々増加し平成29年度は学生36人、初期研修医10人、後期研修医 2 人が実習、研修予定である。

病院としては、大田総合医育成センター開設当初19人の医師数が平成29年は29人となり手術件数、入院患者数も次第に増加し、平成27年には初期研修プログラム基幹病院資格の年間入院数3,000件をクリアして、平成28年から大田市立病院基幹型プログラムを設置、平成29年に大田市立病院基幹型プログラムとして初めての初期研修医が誕生した。この取り組みは、始まって 6 年目を迎えた。当初の 5 年を環境整備期とし、今後 5 年、10年を充実、発展の期間と定めて大田市のみならず全県に拡げ、大学で育った総合医が地域を拠点として診療、教育に携わる姿を目指したい。

キーワード:総合医、専門医育成、地域医療の充実

大田総合医育成センターでの活動

医学部 包括連携教育活動

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教育活動 学生活動 その他地域貢献

活 動 概 要

認知症の予防・治療法の確立、をテーマとして、2000年から取り組んでいる。方法として◦認知症の予防・治療に有効な天然物由来機能性物質の開発に取りくみ、

島根県で創出された食品や素材を用いて、培養細胞・動物による基礎実験やその有効性を検証するヒト介入試験を実施している。

 実施・開発した素材:魚油のドコサヘキサエン酸(DHA)とエイコサペンタエン酸(EPA)、超高水圧加圧玄米、エゴマ油、エゴマ葉粉末、えごま玉子、お茶成分(カテキン)◦認知症の啓蒙活動島根大学、島根大学医学部、などを介して、一般市民や医療関係者、関連

企業を対象として、認知症の理解を深めるための市民公開講座やシンポジウムを主催している。

活動による成果

◦発明名「高齢者用加工食品」を特許申請(特願2017-59204) 邑智郡飯南町特産の超高水圧加圧玄米の販路拡大を目指して実施したヒト介入試験の成果をもとに特許申請を

おこなった。また、2017年 3 月に中間報告会をかねた公開講座を飯南町赤名農村改善センターでおこなった。(数社の新聞に掲載)◦NHK総合テレビ「あさイチ」で放映(2011年11月)とNHK海外向け番組 NHK WORLD「MEDICAL FRONTIERS」(Omega- 3 for Better Health)(2017年 1 月10日放送)にて世界140カ国に向けて放送

 川本町・浜田市の健常高齢者と居住系高齢者施設を対象とした「ドコサヘキサエン酸(DHA)強化食品による認知症予防・改善効果を検証するヒト介入試験」(2008~2010年、2012~2014年実施)の成果と検診の現場紹介が、NHK総合テレビとNHK海外向け番組で放映された。 ◦邑智郡川本町に50年ぶりの工場誘致 中産間地域の産業振興と地域活性化をめざし、2007年から川本町を対象としてエゴマの機能性の宣伝と検証に

関するヒト介入試験行い発表した結果、静岡県三島市に本社を構える(株)三協ホールディングが川本町に島根工場を建設し、平成30年からエゴマ油含有マイクロソフトカプセルの生産・発売をめざす、との旨の正式協定が、2017年 5 月に島根県・川本町・三協の三者結ばれた。◦「島根式」認知症予防システムビジネス展開事業 島根県産エゴマ油と七田式脳トレ(江津市しちだ教育研究所)を組み合わせた「島根式」認知症予防法を確立

するためのヒト介入試験の企画と実施を行った(2015~2016)。しまね産業振興財団が研究代表者となった経産省研究助成平成27年度健康寿命延伸創出推進事業に採択され、地域振興を目指した事業の展開に寄与できる成果が得られた。◦認知症の予防・治療・介護の最前線シンポジウムの開催 一般市民や医療関係者、関連企業を対照とした認知症の理解を深めるためのシンポジウムを2013年から年一回、

開催している。認知症の予防・治療・介護の各分野で著名な外部講師を 4 ~ 5 名招聘し、毎回、島根県内外から100名を越える参加者がある。

キーワード:認知症予防、天然物由来機能性食品、中山間地域の活性化

島根県産の地域資源を活用した認知症予防・治療物質の開発

包括連携研究活動医学部 医学科 生理学講座

化学的性質

候補物質

化学構造

疫学調査

新規効果の探索

食品

古文書・伝承

神経幹細胞培養系による評価

実験動物・ヒト介入試験による評価

認知症予防・改善効果物質の発見

18

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教育活動 学生活動 その他地域貢献

活 動 概 要

背景:平成28年度、島根県県央保健所より、新任 3 年目の保健師(以下、新任保健師)の研究力と研究結果に基

づく事業展開能力の向上を図るための支援について依頼を受けた。新任保健師が事業整理を希望したのは脳卒中

対策であった。大田圏域は島根県全体と比べて、男女ともに脳卒中の初発・再発の発症率が高く、初発の発症者

は減少傾向にあるものの、再発の発症者は横ばいであり、脳卒中対策の検討が必要だったためである。

活動内容:以下の内容について、新任保健師がPDCAサイクルに沿って主体的に事業展開できるように支援した。

課題の明確化:市町保健師への聞き取り調査

平成28年 6 月に、大田圏域 4 市町の脳卒中対策担当保健師各 1 ~ 2 名に対し、脳卒中対策の取組状況と課題、

脳卒中発症面接票(以下、面接票)による訪問指導の実情や課題について聞き取りを行った。

課題の共有化と対策の検討:市町脳卒中対策担当者会議の開催

市町保健師への聞き取り調査結果を担当者会議にて報告し、課題の共有化を図った。そして、再発予防のため

の訪問指導において、①家庭で定期的な血圧測定をしているか②脳卒中発症から受診までの時間③脳卒中発症時

の自覚症状の 3 項目を面接票に追加することを決定した。

実施した結果に基づく今後の検討:市町保健師が訪問指導した面接票からの質的分析

上記 3 項目を追加した面接票の結果を基に、脳卒中発症者の発

症から受診までの時間及び生活実態を明らかにした。分析結果を

基に、脳卒中発症後の早期受診を促すための啓発方法や家庭で

の定期的な血圧測定を推進するための方法について検討した。

研究結果に基づく事業展開の発表大田圏域内の地域保健専門職員研修会および第76回日本公衆衛

生学会総会にて、研究結果に基づく事業展開について発表した。

活動による成果

大田圏域の脳卒中対策を推進する立場にある県央保健所として、直接的に脳卒中対策に取り組む市町の声を大

事にして事業展開することができた。

また、新任保健師は、PDCAサイクルに沿った事業展開について理解を深めると共に、関係機関との協働体制

を築き、事業を発展させる力を向上させることができた。そして、取り組みの成果を整理して学会等で発表する

ことは、新任保健師の達成感につながるのみならず、県内・県外の脳卒中対策担当者に参考となる情報を提供で

きたと考える。

キーワード:脳卒中対策、保健所、人材育成、保健師教育

島根県大田圏域における脳卒中対策の現状分析から事業展開へ~新任保健師の教育を兼ねて~

医学部 看護学科 地域・老年看護学講座 包括連携研究活動

19

Page 25: 国立大学法人島根大学の 地域連携・地域貢献シーズ - …36 浜田市人材育成講座 生物資源科学部 浜田市 教 包 37 島根大学生物資源科学部セミナー「浜田学

研究活動 学生活動 その他地域貢献

活 動 概 要島根大学看護学科は教職課程を設置しており、学校において子どもの心身の健康を育む養護教諭を育成してい

る。病棟実習や地域での実習に加えて、教育実習を行い、保健・医療と連携・協働し教育ができる養護教諭の育成を目指している。

この養成課程へは、出雲市が実施している地域における学習支援事業の一つである「出雲市ウィークエンド事業」から学習指導員への依頼がある。出雲市ウィークエンドスクールとは、休日の土曜日に、平日にはできない教科学習にじっくり取り組みたい、学力アップを図りたいと願う児童生徒に、出雲市が学習の場を提供して学習支援を行っているものである。

教職課程の学生が中心となり、学生指導員として出雲市ウィークエンドスクールへ参加し、学習の指導を中心に児童生徒との交流をしている。近隣の出雲二中から、遠くは佐田町のほうへ通い、年間を通じて定期的に交流している。身近な存在として接し、学習指導の関わりだけでなく、悩み相談などを受けることも多くある。子どもにとっては、親や教員でも、友達でもない、自身の心に寄り添ってもらう身近な頼れる存在のようである。少子化の現代において、このような地域でのつながりは子どもの心身の成長に大きく貢献できるものである。

また、各会場の運営や管理を担当している塾長・副塾長は、地域の教員OBであり、教員を目指す学生へ教育実習さながらに子どもとの接し方などのご指導を下さっている。学生にとっては、教育力を身に付ける貴重な機会となっている。手本となる教育者の子どもを支える姿に感銘を受けながら、子どもの笑顔に教員への意欲をもらうこの活動は、社会貢献と共に、自身の夢である教員へ近づくための力量形成の場となっている。

活動による成果少子化、核家族化が進む中、健やかな子どもを育成する教育は、地域全体で担っていく必要がある。地域の活

動に声をかけていただき、大学生が地域一員として教育に携わり、子どもの成長を支えるこの活動は、微力ではあるが、子どもの育成へ貢献できているのではないだろうか。

学生にとっては、教育実習だけでは味わうことのできない、地域での教育を体験し、貴重な学びとなっている。学生は、子どもとの関わり方だけでなく、地域の中の学校として捉え、多角的に子どもを支えることの必要性を感じている。この活動を通して、保健・医療と連携・協働し教育ができる養護教諭を育成することに繋がっている。また、この体験から島根の教育へ関心や意欲を持ち採用試験を受験し、現在島根の教員として活躍している卒業生もいる。今後とも、地域のネットワークを形成する人材の育成へつがる活動としていきたい。

参加した学生からの感想◦子どもの発達や関わり方を学びました。この経験を養護実習や看護実習、現場に活かしていきたいです。◦勉強だけでなく、学校であったことや悩みについても話せる空間で、子ども理解につながりました。◦子どもたちと一緒に分からない問題を考え、正解が出たとき『できた!』という子どもの笑顔がとても印象

に残っています。◦生徒達が様々な問題にぶつかったときに乗り越えられるよう援助できる島根の養護教諭になりたいと改めて

思いました。◦学校だけでなく、地域で子どもを育てることの重要性を学びました。

キーワード:子ども、地域連携、教員養成、学校教育

出雲市ウィークエンドスクール事業における学習指導

医学部 看護学科 地域・老年看護学講座 包括連携教育活動

20

Page 26: 国立大学法人島根大学の 地域連携・地域貢献シーズ - …36 浜田市人材育成講座 生物資源科学部 浜田市 教 包 37 島根大学生物資源科学部セミナー「浜田学

教育活動 研究活動 学生活動 包括連携

活 動 概 要

島根県が2015年に発表した「勤務医師実態調査」によると、島根県内の医療機関が必要とする医師数に対する医療圏別の充足率(現医師数÷必要医師数)は、松江医療圏・出雲医療圏・益田医療圏・隠岐医療圏で県全体の充足率を上回っているのに対して、浜田医療圏・雲南医療圏・大田医療圏では下回っていることから地域偏在が考えられるが、本調査における必要医師数の定義が客観性に乏しい側面もある。

そのため、本院では地域の医療機関からの医師派遣要請等に対して、島根県全域の医師需要を勘案して、医師配置計画等の立案と地域における必要な医療提供の確保に資することを目的に「医師派遣検討委員会」を2015年11月に立ち上げた。本委員会では、地域への医師派遣の適正化を目指すため、医師の県内分布、必要医師数の推計値等を基にした分析結果を用いて医師派遣の妥当性等を審議しており、2017年 3 月末時点で全 7 回開催した。2016年12月からは、毎月第 1 木曜日に開催し、医師派遣の審議のみでなく各種分析方法等も検討している。

また、地域医療機関との人事交流により優秀な人材を確保し、診療、教育、研究及び地域連携を推進するため、2017年 3 月にクロスアポイントメント制度を導入した。

活動による成果

2017年 3 月末時点で常勤医師17名、非常勤医師32名、計49名(クロスアポイントメント制度 2 名を含む)の新規派遣を決定した。今後もデータに基づいた透明性のある審議を継続することで、医師の地域偏在是正等が期待される。

キーワード:医師数、医師派遣、地域偏在

データ分析を用いた透明性の高い医師派遣

医学部 附属病院 その他地域貢献

21

事業名称:

データ分析を用いた透明性の高い医師派遣

キーワード:医師数、医師派遣、地域偏在

活動概要:

島根県が 2015 年に発表した「勤務医師実態調査」によると、島根県内の医療機関が必要と

する医師数に対する医療圏別の充足率(現医師数 ÷ 必要医師数)は、松江医療圏・出雲医療

圏・益田医療圏・隠岐医療圏で県全体の充足率を上回っているのに対して、浜田医療圏・雲南

医療圏・大田医療圏では下回っていることから地域偏在が考えられるが、本調査における必要

医師数の定義が客観性に乏しい側面もある。 そのため、本院では地域の医療機関からの医師派遣要請等に対して、島根県全域の医師需要

を勘案して、医師配置計画等の立案と地域における必要な医療提供の確保に資することを目的

に「医師派遣検討委員会」を 2015 年 11 月に立ち上げた。本委員会では、地域への医師派遣の

適正化を目指すため、医師の県内分布、必要医師数の推計値等を基にした分析結果を用いて医

師派遣の妥当性等を審議しており、2017 年 3 月末時点で全 7 回開催した。2016 年 12 月から

は、毎月第1木曜日に開催し、医師派遣の審議のみでなく各種分析方法等も検討している。 また、地域医療機関との人事交流により優秀な人材を確保し、診療、教育、研究及び地域連

携を推進するため、2017 年 3 月にクロスアポイントメント制度を導入した。

活動による成果:

2017 年 3 月末時点で常勤医師 17 名、非常勤医師 32 名、計 49 名(クロスアポイントメン

ト制度 2 名を含む)の新規派遣を決定した。今後もデータに基づいた透明性のある審議を継続

することで、医師の地域偏在是正等が期待される。

(実施部局等名:医学部 附属病院)

医師派遣検討委員会 地域医療機関 病院長

①派遣依頼

各診療科

②委員会の召集③医師派遣の妥当性検証後、

適任者の推薦依頼 ④適任者の選出

⑦派遣依頼への回答 ⑤適任者の有無回答 ⑥派遣可否の報告

医師派遣までの流れ

7%

84%

出雲

3%

88%

雲南

継続 新規

出雲 200人 168人 14人

要請

人数

派遣人数

継続 新規

雲南 70人 62人 2人

要請

人数

派遣人数

9%

62%

松江

7%

72%

県全体

継続 新規

松江 122人 76人 11人

要請

人数

派遣人数

継続 新規

県全体 681人 489人 49人

要請

人数

派遣人数

9%

62%

大田

継続 新規

大田 92人 57人 8人

要請

人数

派遣人数

継続 新規

浜田 116人 70人 6人

要請

人数

派遣人数

11

%

65%

益田

継続 新規

益田 72人 47人 8人

要請

人数

派遣人数

5%

60%

浜田 100

%

隠岐

継続 新規

隠岐 9人 9人 0人

要請

人数

派遣人数

派遣要請に対する派遣決定人数と割合

21

事業名称:

データ分析を用いた透明性の高い医師派遣

キーワード:医師数、医師派遣、地域偏在

活動概要:

島根県が 2015 年に発表した「勤務医師実態調査」によると、島根県内の医療機関が必要と

する医師数に対する医療圏別の充足率(現医師数 ÷ 必要医師数)は、松江医療圏・出雲医療

圏・益田医療圏・隠岐医療圏で県全体の充足率を上回っているのに対して、浜田医療圏・雲南

医療圏・大田医療圏では下回っていることから地域偏在が考えられるが、本調査における必要

医師数の定義が客観性に乏しい側面もある。 そのため、本院では地域の医療機関からの医師派遣要請等に対して、島根県全域の医師需要

を勘案して、医師配置計画等の立案と地域における必要な医療提供の確保に資することを目的

に「医師派遣検討委員会」を 2015 年 11 月に立ち上げた。本委員会では、地域への医師派遣の

適正化を目指すため、医師の県内分布、必要医師数の推計値等を基にした分析結果を用いて医

師派遣の妥当性等を審議しており、2017 年 3 月末時点で全 7 回開催した。2016 年 12 月から

は、毎月第1木曜日に開催し、医師派遣の審議のみでなく各種分析方法等も検討している。 また、地域医療機関との人事交流により優秀な人材を確保し、診療、教育、研究及び地域連

携を推進するため、2017 年 3 月にクロスアポイントメント制度を導入した。

活動による成果:

2017 年 3 月末時点で常勤医師 17 名、非常勤医師 32 名、計 49 名(クロスアポイントメン

ト制度 2 名を含む)の新規派遣を決定した。今後もデータに基づいた透明性のある審議を継続

することで、医師の地域偏在是正等が期待される。

(実施部局等名:医学部 附属病院)

医師派遣検討委員会 地域医療機関 病院長

①派遣依頼

各診療科

②委員会の召集③医師派遣の妥当性検証後、

適任者の推薦依頼 ④適任者の選出

⑦派遣依頼への回答 ⑤適任者の有無回答 ⑥派遣可否の報告

医師派遣までの流れ

7%

84%

出雲

3%

88%

雲南

継続 新規

出雲 200人 168人 14人

要請

人数

派遣人数

継続 新規

雲南 70人 62人 2人

要請

人数

派遣人数

9%

62%

松江

7%

72%

県全体

継続 新規

松江 122人 76人 11人

要請

人数

派遣人数

継続 新規

県全体 681人 489人 49人

要請

人数

派遣人数

9%

62%

大田

継続 新規

大田 92人 57人 8人

要請

人数

派遣人数

継続 新規

浜田 116人 70人 6人

要請

人数

派遣人数

11

%

65%

益田

継続 新規

益田 72人 47人 8人

要請

人数

派遣人数

5%

60%

浜田 100

%

隠岐

継続 新規

隠岐 9人 9人 0人

要請

人数

派遣人数

派遣要請に対する派遣決定人数と割合 派遣要請に対する派遣決定人数と割合

医師派遣までの流れ

21

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教育活動 研究活動 学生活動 包括連携

活 動 概 要

外傷救急に関する教育、研究、及び診療の提供を行うため、2015年 7 月に国内初となる、Acute Care Surgery

講座(「外傷外科」「救急外科」「外科的集中治療」の 3 つの基本領域の診療を専門的に学ぶ講座)を設置した。

2016年 4 月には、県全域を対象に専門的な外傷治療の適応となる患者を集約し、ハイボリュームセンターとして

機能する高度外傷センターを設置した。2017年 8 月には、同センターの医師を 8 名まで増員するとともに、ハイ

ブリッドER(初期診療から検査、CT、血管造影、外科手術までを 1 つの部屋で実施できる手術室)等を完備し

た高度外傷センター棟の稼動を開始し、交通事故や災害等により負傷した患者に対する高度で専門的な外科的治

療の迅速な対応を24時間可能としている。

また、県西部地域等の病院からヘリコプターによる救急患者搬送をスムーズに行うため、搬送依頼元病院と消

防署間で調整していた防災ヘリの運用方法を、搬送依頼元病院と本院間で直接調整する方法に変更するとともに、

ヘリポートへの夜間照明設備を整え、夜間を含めたスムーズな患者搬送も可能としている。

活動による成果

全国に先駆けて設置したAcute Care Surgery講座と、本格的な臨床実践を行うために設置した高度外傷セン

ターで、外傷救急教育と診療を提供し、防ぎ得た外傷死(Preventable Trauma Death)や、防ぎ得た外傷後遺

障害(Preventable Trauma Disability)の減少等、地域の外傷救急医療への貢献と、今後の外傷救急医の養成に

伴う国内外傷救急医療への貢献が期待される。

2016年度は、 3 次救急患者数425人(前年度345人)、交通事故患者数506人(前年度453人)で重症患者及び交通

事故患者数が増加した。また、外傷患者搬送件数は1,870件、そのうち、重症外傷245例、重症多発外傷127例を受

け入れた。外傷患者における予測生存率50%以

上の患者の死亡率は 0 %であり、島根県内にお

ける不慮の事故死亡者数の減少に寄与している

と考えられる。また、防災ヘリによる病院間患

者搬送件数は21件(前年度11件)であり、県西

部地域からの病院間患者搬送の運用方法変更に

よる効果の反映と考えられる。

キーワード:救急医療、外傷救急、患者搬送

県全域を対象とした高度外傷救急を付加した救急医療体制の強化

医学部 附属病院 その他地域貢献

22

02468

10121416182022

2015年度 2016年度

益田 浜田 江津 大田 隠岐 邑智

0

100

200

300

400

500

2015年度 2016年度

3次救急患者数

事業名称:

県全域を対象とした高度外傷救急を付加した救急医療体制の強化

キーワード:救急医療、外傷救急、患者搬送

活動概要:

外傷救急に関する教育、研究、及び診療の提供を行うため、2015 年 7 月に国内初となる、

Acute Care Surgery 講座(「外傷外科」「救急外科」「外科的集中治療」の 3 つの基本領域の診

療を専門的に学ぶ講座)を設置した。2016 年 4 月には、県全域を対象に専門的な外傷治療の

適応となる患者を集約し、ハイボリュームセンターとして機能する高度外傷センターを設置し

た。2017 年 8 月には、同センターの医師を 8 名まで増員するとともに、ハイブリッド ER(初

期診療から検査、CT、血管造影、外科手術までを1つの部屋で実施できる手術室)等を完備

した高度外傷センター棟の稼動を開始し、交通事故や災害等により負傷した患者に対する高度

で専門的な外科的治療の迅速な対応を 24 時間可能としている。 また、県西部地域等の病院からヘリコプターによる救急患者搬送をスムーズに行うため、搬

送依頼元病院と消防署間で調整していた防災ヘリの運用方法を、搬送依頼元病院と本院間で直

接調整する方法に変更するとともに、ヘリポートへの夜間照明設備を整え、夜間を含めたスム

ーズな患者搬送も可能としている。

活動による成果:

全国に先駆けて設置した Acute Care Surgery 講座と、本格的な臨床実践を行うために設置

した高度外傷センターで、外傷救急教育と診療を提供し、防ぎ得た外傷死(Preventable Trauma Death)や、防ぎ得た外傷後遺障害(Preventable Trauma Disability)の減少等、地

域の外傷救急医療への貢献と、今後の外傷救急医の養成に伴う国内外傷救急医療への貢献が期

待される。 2016 年度は、3 次救急患者数 425 人(前年度 345 人)、交通事故患者数 506 人(前年度 453人)で重症患者及び交通事故患者数が増加した。また、外傷患者搬送件数は 1,870 件、そのう

ち、重症外傷 245 例、重症多発外傷 127 例を受け入れた。外傷患者における予測生存率 50%以上の患者の死亡率は 0%であり、島根

県内における不慮の事故死亡者数の減

少に寄与していると考えられる。また、

防災ヘリによる病院間患者搬送件数は

21 件(前年度 11 件)であり、県西部

地域からの病院間患者搬送の運用方法

変更による効果の反映と考えられる。

(実施部局等名:医学部 附属病院)

外傷外科 Trauma surgery

救急外科Emergency surgery

集中治療 Clinical Surgery

Acute Care Surgery の診療領域

防災ヘリ搬送元別患者搬送件数

高度外傷センター棟内ハイブリッドER室

3次救急患者数

3 次救急患者数 防災ヘリ搬送元別患者搬送件数

22

02468

10121416182022

2015年度 2016年度

益田 浜田 江津 大田 隠岐 邑智

0

100

200

300

400

500

2015年度 2016年度

3次救急患者数

事業名称:

県全域を対象とした高度外傷救急を付加した救急医療体制の強化

キーワード:救急医療、外傷救急、患者搬送

活動概要:

外傷救急に関する教育、研究、及び診療の提供を行うため、2015 年 7 月に国内初となる、

Acute Care Surgery 講座(「外傷外科」「救急外科」「外科的集中治療」の 3 つの基本領域の診

療を専門的に学ぶ講座)を設置した。2016 年 4 月には、県全域を対象に専門的な外傷治療の

適応となる患者を集約し、ハイボリュームセンターとして機能する高度外傷センターを設置し

た。2017 年 8 月には、同センターの医師を 8 名まで増員するとともに、ハイブリッド ER(初

期診療から検査、CT、血管造影、外科手術までを1つの部屋で実施できる手術室)等を完備

した高度外傷センター棟の稼動を開始し、交通事故や災害等により負傷した患者に対する高度

で専門的な外科的治療の迅速な対応を 24 時間可能としている。 また、県西部地域等の病院からヘリコプターによる救急患者搬送をスムーズに行うため、搬

送依頼元病院と消防署間で調整していた防災ヘリの運用方法を、搬送依頼元病院と本院間で直

接調整する方法に変更するとともに、ヘリポートへの夜間照明設備を整え、夜間を含めたスム

ーズな患者搬送も可能としている。

活動による成果:

全国に先駆けて設置した Acute Care Surgery 講座と、本格的な臨床実践を行うために設置

した高度外傷センターで、外傷救急教育と診療を提供し、防ぎ得た外傷死(Preventable Trauma Death)や、防ぎ得た外傷後遺障害(Preventable Trauma Disability)の減少等、地

域の外傷救急医療への貢献と、今後の外傷救急医の養成に伴う国内外傷救急医療への貢献が期

待される。 2016 年度は、3 次救急患者数 425 人(前年度 345 人)、交通事故患者数 506 人(前年度 453人)で重症患者及び交通事故患者数が増加した。また、外傷患者搬送件数は 1,870 件、そのう

ち、重症外傷 245 例、重症多発外傷 127 例を受け入れた。外傷患者における予測生存率 50%以上の患者の死亡率は 0%であり、島根

県内における不慮の事故死亡者数の減

少に寄与していると考えられる。また、

防災ヘリによる病院間患者搬送件数は

21 件(前年度 11 件)であり、県西部

地域からの病院間患者搬送の運用方法

変更による効果の反映と考えられる。

(実施部局等名:医学部 附属病院)

外傷外科 Trauma surgery

救急外科Emergency surgery

集中治療 Clinical Surgery

Acute Care Surgery の診療領域

防災ヘリ搬送元別患者搬送件数

高度外傷センター棟内ハイブリッドER室

3次救急患者数

高度外傷センター棟内ハイブリッドER室 Acute Care Surgeryの診療領域

22

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研究活動 学生活動 包括連携 その他地域貢献

活 動 概 要

本学医学部では、地域医療に対する意

欲の高い学生を選抜するとともに、全学

生に対して地域医療への動機付けを図り、

関心を高める教育を充実させております。

臨床実習における地域医療実習は、平

成14年度より、大学附属病院のサテライ

ト診療所と位置づけた中山間地の乙立里

家診療所で開始しました。平成18年度か

らは、実習の規模を全面的に拡大し、県

下約50のへき地(松江・出雲など都市部

以外)診療所・病院における 3 週間の宿

泊実習に拡充しました。その後、松江・

出雲地域での地域医療実習も導入し、現在では、約70の医療機関において地域医療実習を展開しております。こ

れら地域医療実習は、大学病院では学ぶことが難しいプライマリ・ケアの実際を体験でき、また、自らが地域の

ニーズを肌で知ることができるため、医学生の地域医療に対する動機付けに重要な役割を担っております。

活動による成果

地域医療実習に対するアンケート調査の結果から、学生は、地域医療に

肌で触れることで、地域医療の重要性を理解し、地域医療に対する意欲が

向上していることが示されています。地域枠卒業生が地元で医療に携わる

ことはもちろん、地域枠以外の学生においても地域志向性を涵養する地域

医療教育の充実は、地域医療を担う人材育成をミッションとする本医学部

においては、重要な取り組みとなっています。

キーワード:地域医療教育、地域医療実習、地域医療への動機付け

地域医療実習

教育活動医学部

日原診療所

大田市立病院

隠岐病院

益田医師会病院

益田赤十字病院 津和野共存病院

波佐診療所

山根病院

山崎病院

江津総合病院

隠岐島前病院

平成記念病院

奥出雲病院

安来第一病院

西川病院

中村医院

日立記念病院

安来市立病院 雲南総合病院

田井診療所 西村医院

掛合診療所

永生クリニック

西部島根心身障害医療福祉センター

島田病院

浜田医療センター

松本医院 六日市病院

高梨医院

浦郷診療所

そじき診療所

木島医院

中村診療所

久見診療所

あさひ診療所

かわもと診療所 加藤病院

飯南病院

都万診療所

知夫診療所

邑智病院

河野医院

弥栄診療所 松ヶ丘病院

島根大学医学部医学科地域医療実習

島根大学医学部

Q 将来、地域医療に携わりたいか

是非、携わりたい

機会があれば、携わりたい

どちらでもない

あまり携わりたくない

絶対に携わりたくない

11%

58%

26%

4%

1%

地域医療実習アンケート結果

地域医療実習

診療所実習 往診 健康講話 地域医療機関の指導医との教育開発会議 (FD)

診療所実習 往診 健康講話 地域医療機関の指導医との教育開発会議 (FD)

地域医療実習

診療所実習 往診 健康講話 地域医療機関の指導医との教育開発会議 (FD)

地域医療実習

診療所実習 往診 健康講話 地域医療機関の指導医との教育開発会議 (FD)

地域医療実習

診療所実習 往診 健康講話 地域医療機関の指導医との教育開発会議 (FD)

地域医療実習

23

Page 29: 国立大学法人島根大学の 地域連携・地域貢献シーズ - …36 浜田市人材育成講座 生物資源科学部 浜田市 教 包 37 島根大学生物資源科学部セミナー「浜田学

研究活動 学生活動 包括連携 その他地域貢献

活 動 概 要

医学部地域医療政策学講座の取組み講座では、文部科学省未来医療研究人材 養成拠点形

成事業で採択された「地方と都会の大学連携ライフイノ

ベーション」により、地域医療・包括ケアに関する知識

の習得および課題に対する解決策を追求する研究を実施

できる能力(リサーチマインド)の涵養を目的として、

地域包括ケアで活躍できる人材養成コース(インテンシ

ブ)を設けています。研究や勉学に志を有する、遠隔地

域の医療従事者にとって、大学のある都市部まで出向

くことは困難です。そこで、受講者の利便性を考慮し、地域施設-附属病院間でTV会議システムによるTwilight

Seminarを開講するとともにアカデミックな修士、博士課程を設けています。

地域で活躍する医療スタッフのための教育研究システムの概要地域包括ケアにおいては、医師、看護師、療法士等多職種連携が不可欠で、患者の症状や疾患とともに生活環

境も病院のほか、特別養護老人ホームや自宅等、多種多様です。そこで、Twilight Seminarの講師陣は、大学内

外の教員、医師をはじめ、各医療従事者、医療経営学・医療管理学教員や医師会、県・市町村の関連課、弁護士

等地域包括ケアに関連する多職種から構成

されます。一方、大学院では、修士課程地

域包括ケア人材養成コース(医療経営重点)

と博士課程地域医療・地域包括ケア指導者

育成コースがあります。また、セミナーや

WSも開講しています。

活動による成果

Twilight Seminarの参加者数と開講数は、平成26年度397名(19コマ)、27年

度467名(26コマ)、28年度361名(26コマ)で、今年度は 2 回終了で63名の参加

がありました。また、インテンシブコースの受入数と修了者数は36名及び 5 名、

同様に、修士課程は 6 名及び 3 名で博士課程は年限の関係で 7 名(うち 1 名が

本講座在籍)の大学院生が研究に取り組んでいるところです。また、附属病院

みらい棟ギャラクシーからTV会議システムにより島根県下全28施設に配信可能

です。年度の 6 月から約 1 年間、原則として毎週火曜日18時から、地域包括ケ

アに関する様々なテーマで講義等が提供され、受講者には知識やスキルが向上

しているものと確信しています。また、その内容を関係者にお伝えするため、

講演集も配布しました。

キーワード:地域包括ケア、人材育成、リサーチマインド、地域医療政策

地域医療政策学講座における『地域包括ケアで活躍する人材育成』

医学部 医学科 地域医療政策学講座 教育活動

・専門医取得のための研修 ・研究・講義

島根県の役割 専門医・学位取得のための勤務環境の整備

専門医・学位取得

自治医大・島根大

総合診療医 各科専門医 研究者

医師の定着化

島根県 島根大学

本学の役割 学位取得・研究支援体制 ex.TV会議システムによる講義の配信 オンサイトトレーニング 専門医取得支援体制 ex.当該診療科での研修,不在時等の支援体制

大学以外の遠隔地での研究や学位取得のための連携体制 Twilight Seminar 博士課程 修士課程

-Twilight Seminar 2014/2015-

-島根大学医学部地域医療政策学講座-

文部科学省未来医療研究人材養成拠点形成事業

地方と都会の大学連携ライフイノベーション

講 演 集

I.平成26年度第5回 地域包括ケアにおける津和野共存病院における取組み1第6回 地域包括ケアにおける津和野共存病院における取組み2第7回 リハビリテーションにおける摂食嚥下機能と栄養第8回 地域包括ケアにおけるすぎうら医院の取組み

-医療経営の観点から-第9回 加齢による身体機能変化に合わせた住環境整備第14回 安心して暮らせる地域づくり

-地域包括ケアシステムの構築に向けて-第17回 島根県立中央病院における総合診療と臨床研究第19回 「地域包括ケアは機能するのか」についての一考察

II. 平成27年度第1回 がん患者に対するリハビリテーション第2回 地域支援における作業療法の役割

みらい棟ギャラクシーでの講義 国際交流ラウンジでのWS

24

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教育活動 学生活動 その他地域貢献

活 動 概 要

青潮とは、風等の物理的要因により、硫化水素を含む水塊が浅場に一気に湧昇する現象のことである。その結

果、硫化水素と酸素の化学反応により「硫黄」が形成し、水面が青白色や乳白色を呈すことから“青潮”と呼ば

れている(図 1 -左)。青潮の原因物質である硫化水素は、生物に対して強毒性を示すため“重要監視項目”の一

つと言える。しかし、国内では硫化水素のモニタリングはほとんど行われていないのが現状である。

宍道湖では、2012年 9 月19日に宍道湖西岸(なぎさ公園付近)において“青潮”が発生した。宍道湖における

青潮の詳細な記録は残っていないが、県の研究者によると、少なくともここ30年間は青潮が発生しておらず、今

回の青潮は極めて稀な現象とのことであった。2012年に宍道湖で青潮が発生した際、約 2 トンのコイやフナ、ス

ズキ等の魚類が斃死し 1 、宍道湖の生態系に大きな影響を及ぼした(図 1 -右)。硫化水素は、極めて悪化した環

境でしか生成されない物質であることから、青潮が発生したことで、宍道湖の水質が劣悪な環境を呈すことを目

に見える形で知らせる事象となった。これまで、宍道湖における硫化水素の観測は行われておらず、硫化水素の

有無すら分かっていなかった。そこで当研究グループは、宍道湖の観測を通して水質悪化(青潮発生)メカニズ

ムの解明を目的に調査・研究を行っている。(国土交通省出雲河川事務所、島根県環境政策課、島根県水産課から

の受託研究)。

【引用文献】1 .国土交通省出雲河川事務所記者発表資料(平成24年 9 月20日)、宍道湖西岸なぎさ公園における魚類の斃死に関する情報提供.2 .国土交通省出雲河川事務所記者発表資料(平成24年 9 月26日)、米子湾及び宍道湖西岸なぎさ公園における魚類の斃死に関する  情報提供(最終版).

活動による成果

宍道湖湖心を対象に調査を行った結果、2012年と2016

年の 8 月に高濃度の硫化水素が検出された(図 2 )。気象

データの解析結果から、硫化水素が検出された年は、 7 月

下旬から 8 月中旬まで気候が穏やかだったのに対し、他

の年は 8 月上旬から風速 8 m/s以上の強風が高頻度で観測

された。硫化水素の分析は、島根大学で開発した手法を

用いて分析しており、現在、県内外の調査機関や他分野の研究者に対して技術移転を行っている。これまで観測

例がなかった硫化水素のデータを蓄積することで、宍道湖の水質保全策の構築につなげたい。

キーワード:宍道湖、水質、青潮、硫化水素

宍道湖の水質悪化メカニズムの解明に関する研究

総合理工学研究科 物質化学領域 包括連携研究活動

図2 宍道湖湖心の湖底直上水中の硫化水素濃度の時系列変化

図1 水面が白濁した様子(左)、青潮により死亡した魚(右)※写真は、国土交通省出雲河川事務所記者発表資料2(平成24年9月20日)から引用した。

0

5

10

15

7月 8月 9月 10月

2012

2013

2014

2015

2016

22

硫化

水素

( mgS

/L) 12

欠測

25

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教育活動 学生活動 包括連携

活 動 概 要

山陰地方において、脆弱な地質環境と特有の気象条件によって、地すべり、土石流、洪水、地震など自然災害

がしばしば発生し、地域住民生活に甚大な災害と不便を齎している。これまでに、政府機関、国立大学、自治体、

民間会社、住民団体などが災害による損失を最小限まで抑える努力を続けてきた。例えば、災害情報の発信や防

災学習会などを通して、ある程度住民の防災意識の啓発や自主防災能力の向上に大きく貢献できたと言える。し

かし、災害発生の頻度や地域全体が面している自然災害の危険度は他の地域よりはるかに大きい代わりに、地域

全体における防災情報の交換場所は設けていないことから、島根大学では、総合理工学研究科地球資源環境学領

域の教員を中心とする大学の研究者、国・地方自治体・民間の防災関係者により、「山陰防災フォーラム」を組織

し、以下の活動を行ってきた。

◦公開フォーラム、シンポジウム、ワークショップ、防災学習会、現地見学会を通じて、自然災害防止に関す

る経験の交流と研究の推進:地域内外の専門家を要請し、最新の防災関連知識の更新や啓発活動を実施する。

また、災害発生する可能性の高い地域や災害発生場所での災害に対する検証活動を行うことによって、地域

防災力を高める。

◦ウェブサイトによる情報発信:ウエブサイトを設立し、フォーラムの活動内容、地域における災害情報、

フォーラム参加団体・個人へのリンクをし、情報発信に努める。また、メーリングリストを作って、構成員

のネットワークを形成し、情報交換の場を設ける。

活動による成果

2010年秋に「山陰防災フォーラム」が正式的に発足してから、 7 年間で14回の講演会を行って、数回の現地討

論会を行った。講演会の開催場所は大学キャンパスだけでなく、大田市など災害発生したばかりの現場近くでも

行っている。平均的に毎回の参加者数は50人程度で、合計は700人を超えている。参加者は大学教員と大学院生・

学生だけでなく、国・自治体行政における防災担当者、地元企業の防災技術者、一般市民も積極的に参加し、議

論に加わっている。これをベースに、島根大学を中心として防災教育のネットワークがほぼできている。

キーワード:春・秋講演会、現地見学会、防災情報発信

地域防災に関する活動:「山陰防災フォーラム」

その他地域貢献研究活動総合理工学研究科、法文学部、生物資源科学部、教育学部

斜面災害の現地見学会防災フォーラム講演会

26

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教育活動 学生活動 その他地域貢献

活 動 概 要

鳴砂は歩くと「キュッキュッ」と音を発する砂で、かつては日本全国に分布していたが、近年は沿岸の開発や海洋汚染により急速に減少しつつある。大田市仁摩町馬路の琴ヶ浜は、その音質および規模において我が国随一の鳴砂海岸であり、すでに国の天然記念物に指定されている京都府の「琴引浜」、および宮城県の「十八鳴浜および九九鳴き浜」とともに日本三大鳴砂と呼ばれている。琴ヶ浜も同様に国指定天然記念物とすることは、地元の方々の悲願となっていた。

総合理工学研究科 林 広樹 准教授(エスチュアリー研究センター兼任教員)を中心とする研究グループは、大田市教育委員会から委託を受けて琴ヶ浜の学術的価値を評価するための調査を実施し、鳴砂が海中でも水深 7 mぐらいまで分布していること、およびこの領域の砕波によって砂が反復移動することにより磨かれ、この天然の洗浄作用によって鳴砂が供給されていることを突きとめた(図)。

これまでの研究成果は、2014年11月30日の地元報告会や2016年 7 月31日の「 5 年生・親子でおもしろ実験室」(仁摩公民館・温泉津公民館主催)などで普及し、琴ヶ浜の学術的な価値を地元の方に伝える活動を続けている。

活動による成果

琴ヶ浜の天然記念物指定に向けた具申書は2017年 1 月に文化庁へ提出され、 6 月16日の文化審議会において審議の結果、文部科学大臣へ指定の答申がなされた。その後、10月13日の官報告示により国の天然記念物に指定された。この指定により、琴ヶ浜の貴重な自然遺産としての認知が高まり、地域ブランド力向上による観光振興や、島根県の美しい海浜環境の保全に対する一層の意識向上が期待される。

キーワード:鳴砂、海岸環境、大田市仁摩町馬路

貴重な鳴砂海岸「琴ヶ浜」を国指定天然記念物に!

包括連携研究活動総合理工学研究科、エスチュアリー研究センター

琴ヶ浜(2013年11月14日撮影)

図 2013年9月における琴ヶ浜沖の鳴砂分布状況(林ほか、2014)

27

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教育活動 学生活動 包括連携 その他地域貢献

活 動 概 要

廣冨研究室では、ICTを活用して障害者・高齢者の生

活やリハビリテーションを支援する技術の研究開発を

行っている。

知的障害の特別支援学校においては、聴覚情報より視

覚情報の方が理解しやすい広汎性発達障害児や知的障

害児を支援するコミュニケーションエイド「STalk 2 」

の開発と導入を進めている。STalk 2 は、音声認識など

で入力した単語を写真やイラストなどの視覚的なシン

ボルに変換し、「いつ」、「どこ」、「誰」、「どのように」、

「何をする」で構造化したメッセージとして表示する

Google社の基本ソフト(OS)Android用のアプリであ

る。発達障害児や知的障害児のコミュニケーションに

は、写真やイラストを印刷したカードが使用されてきた

が、いつも全てのカードを持ち歩けるわけではないた

め、最低限必要なものだけが携帯されることが多かっ

た。STalk 2 を使用すると、カードの持ち運びの煩わし

さを一気に解消でき、さらに準備していなかった写真な

ども手軽に表示できるため、多様なコミュニケーション

を円滑に行うことが可能となる。STalk 2 は、山陰地方

の特別支援学校や施設に導入が進んでおり、2017年度島

根県内では 5 校で使用されている。

肢体不自由の特別支援学校においては、脳性麻痺などによる運動障害のため、コンピュータ操作が困難な児

童・生徒の支援を行っている。コンピュータ操作に使用する身体部位の機能性を向上させるには、座位保持装置

の設定や操作する機器の配置を適切に行う「ポジショニング」が欠かせない。ポジショニングは、理学療法士や

作業療法士の観察に基づいて行われるため、主観的判断に依存する度合いが大きい。モーションセンサで不随意

な動きを計測することにより、その解析結果を定量的に可視化することが可能となる。この技術を用いて、コン

ピュータを操作する際のポジショニング支援をはじめ、ニーズに応じたアプリの開発や選定などの活動を行って

いる。

活動による成果

島根県特別支援学校教育研究会の実践交流部会や校内研修会、個別の教育相談などを通じて、これらの研究成

果(福祉機器コンテスト2013機器開発部門最優秀賞などを受賞)を社会に還元することにより地域貢献を行って

いる。

キーワード:ICTを活用した支援技術

ICTを活用した支援技術の特別支援学校への還元

研究活動総合理工学研究科

STalk2によるコミュニケーション支援

不随意運動の計測・可視化によるポジショニング支援

28

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研究活動 学生活動 包括連携 その他地域貢献

活 動 概 要

平成25~27年度に松江市殿町においてウッドデザインプロジェクトセンターの活動として古民家再生プロジェ

クトを実施し、学生による設計によって、リノベーションを実施した。水燈路における建築作品の展示会、学生

の自主的な取り組みによるカフェなどを行うことでまちづくり活動を展開した。

平成27年度には、出雲市平田町において古民家再生を行った(写真参照)。古民家再生技術を普及させるため

に、最小限の予算(50万程度)で事業化するモデルを構築することを目的とし、地元の協力のもと、学生の基本

設計とセルフビルドによって改修工事を行った。まちおこしに関連する活動拠点として有効活用されており、新

聞・テレビで報道された。

平成28年度には、COC(Center of Community)事業の一環として地域資源の発掘とまちづくりの提案を行い、

タウントレイルを制作するとともに、イベントの企画・提案を行った。一方で、リノベーション技術の普及のた

めに設計提案を行っており、設計競技などで公表した。

活動による成果

古民家再生のモデルケースとして、学生による設計とセルフビルドの可能性を示した点が活動の成果としては

大きいと考える。予算を最低限に抑えたモデルを提案したことで、今後の展開が期待される。また学生にとって

は、実際の古民家にふれることで、建築史の知識を得るとともに、伝統工法を理解できる機会を得た。また実際

の建物を設計することで実務的な経験を積むことができ、設計技術が飛躍的に向上する機会を得た。

またタウントレイルの制作によって、地域に暮らす人々では気づきにくい地域資源を再発見したことで、これ

まで見落としていた魅力を抽出することにつながり、あらたなまちづくりに向けた動きが展開されつつある。

なお、平田町内に古民家再生を展開するための提案も行っており、「新・木造の家」設計競技において、最優秀

賞を受賞するなどの成果をあげた。卒業設計でも木綿街道を取り上げ、宿泊施設の実施設計に向けた図面の作成

とともに模型を制作し、具体的な提案を行った。卒業設計は、広島八大学卒業設計展において優秀賞を受賞する

とともに、日本建築学会中国支部長賞も受賞した。

キーワード:古民家再生

古民家再生等の地域貢献活動

教育活動総合理工学研究科

29

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研究活動 学生活動 包括連携 その他地域貢献

活 動 概 要

総合理工学部数理・情報システム学科情報システムコースでは、島根県情報産業協会と松江市などの協力を得

て、社会の要求をITで解決するデザイン能力を身に付ける「システム創成プロジェクトⅠ・Ⅱ」を2016年度から、

「システム創成プロジェクトⅢ」を2017年度から必修科目として開講している。

2 年次前期開講の「システム創成プロジェクトⅠ」では、ITシステムの開発におけるプロジェクトの進め方と

プログラミングの基礎力を身に付ける。 2 年次後期開講の「システム創成プロジェクトⅡ」と 3 年次前期・後期

開講の「システム創成プロジェクトⅢ」では、 2 年生と 3 年生がチームを組み、プログラミング言語Ruby等を用

いたシステム開発を行う。

すべての授業において、企業から現役エンジニアを招聘しており、学生はIT企業における開発業務の実態を知

り、大学で学んでいるコンピュータサイエンスの知識・技術が実際にどう役立つのかを学ぶことができる。

2017年度の「システム創成

プロジェクトⅡ・Ⅲ」では、

webアプリケーションやド

ローンの組み込みソフトウェ

アなどのテーマを県内のIT企

業 6 社が提案、学生は希望す

るチームに所属して開発を進

めている。オープンキャンパ

スや年度末の発表会でその成

果を報告する予定である。

活動による成果

2016年度後期に実施した「システム創成プロジェクトⅡ」の授業アンケートにおいて、「授業に積極的に参加

(100%)」、「総合的に判断してこの授業に満足(96%)」、「課題をより良いものにしようと努力した(96%)」、「授

業内容が興味深く、さらに学ぼうと思った(88%)」など、授業内容に満足し、意欲的に取り組んだと回答した学

生が多かった(( )内は「そう思う」および「少しそう思う」と回答した学生の割合である)。このことは、「実

際の企業の方に、実践的な講義を受けることは新鮮であり、面白かった。」などの自由記述のコメントからも確認

できた。

本プロジェクトは、学生と交流を深めながら、将来的な人材確保につなげられる取組みとして県内IT企業から

期待されている。2017年度は、「システム創成プロジェクトI」を48名、「システム創成プロジェクトII」を15名、

「システム創成プロジェクトIII」を22名が受講している。2018年度の改組後は、知能情報デザイン学科データサイ

エンスコースと情報システムデザインコースの必修科目として開講されるため、より多くの学生が受講する授業

へと発展していく見込みである。

キーワード:IT人材育成

産学官連携によるIT人材育成の取り組み『システム創成プロジェクト』

教育活動総合理工学研究科

授業風景

30

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教育活動 学生活動 その他地域貢献

活 動 概 要

生物資源科学部の「ミッションの再定義」をさらに発展させた「特産品食品機能強化プロジェクト」(代表:川向 誠、他13名)が島根大学戦略的機能強化経費として採択されことを受けて、島根県産の食品の機能性成分を同定することにより食品の機能強化を図り、島根県産の食品の付加価値を高める活動を行なった。このプロジェクトに関連して、これまでに、地元企業や団体から支援を受けている食品機能強化プロジェクトとしては、下記の事例を挙げることができる。◦「コエンザイムQ10含有食品の開拓と生産微生物の探索」(しまね産業振興財団)H27◦「干しカレイの成分特製の解明」(はまだ産業振興機構)H27◦「低カリウムメロンプロジェクト」(一畑グループ)H28◦「粉末化によるエゴマ油の食品機能の強化と機能検証に向けた調査・研究」(奥出雲町)H29

活動による成果

食品の成分分析や機能性成分の発掘などを通して食品の機能強化を推進する研究を推進した。平成29年 2 月29日に「特産品食品機能強化プロジェクト」の研究成果報告会を行い、地域の食品業界のメンバーとの交流を深め、今後の地域の特産食品の機能強化について討論した。今年度の成果は「平成28年度戦略的機能強化推進経費成果報告書」として取りまとめている。具体的な成果を下記に箇条書きで示す。◦エゴマは島根県産のエゴマ油として販売が促進されていることから、エ

ゴマのリノレイン酸の成分分析を行い、シクロデキストリン包摂体が取り込みに有効であることを見出した。◦CoQ10はサプリメントとして、世界で年間1000億円の売り上げを示す

人気のサプリメントである。そこで、エゴマの実のCoQ10含量を調査し、その含有量が多いことを見出した。◦島根県から酵母類を多数単離し、CoQ10を生産する酵母を発見した。◦カレイのアミノ酸やイノシン酸の定量を行い、ヤナギムシカレイにIMP

の成分が多いことを見出し、その原因を突きとめた。IMPは旨味の成分として知られていることから付加価値が高まることができる。◦隠岐の島のイカの生殖行動について調査し、その繁殖行動への利用を考

察した。◦宍道湖のウナギの生息状況を、環境DNAを元に調査し、大橋川周辺に多いことを見出した。ウナギの生息域の

簡便な同定法を開発したことで、収穫の特定に貢献できる。◦ユーグレナは食品として人気のある製品であり、新しいユーグレナを発見すれば利用価値があることから、近

隣の沿海・汽水域よりユーグレナを探索、単離した。

キーワード:地域の特産食品、機能性食品、サプリメント

特産品食品機能強化プロジェクト

生物資源科学部 包括連携研究活動

31

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教育活動 学生活動 その他地域貢献

活 動 概 要

「ミッションの再定義」をさらに発展させた「生物資源科学部・研究シーズによる地域活性化プロジェクト」

(代表:浅尾俊樹、他 7 名)が島根大学戦略的機能強化経費として採択され、山陰地域を中心に地域活性化を図っ

ている。

平成25年度より飯南町、島根県中山間地域研究センターと連携し、「島根大学サテライトキャンパスin飯南」を

開催し、昨年度は「2016中山間フェアinいーなん」(10/22)でポスターでの教育研究紹介、シンポジウムでの研

究報告、農場生産物販売などを行った。

「島根大学生物資源科学部セミナーin広島2016」(12/ 3 )、「松江における特産農産物の生産とその活用につい

て」の講演会( 1 /30)と現地見学( 2 / 1 )、「島根大学生物資源科学部の研究シーズによる地域活性化と人材育

成、地域企業とのコラボ」( 2 /24)を実施し、学部研究シーズを紹介するとともに、地域の自治体や企業の取り

組みを見聞し、地域とのコラボについても図った。

学部として、商標登録「しまね夢メロン」(低カリウムメロン)を取得し、島根大学と包括協定を結んでいる一

畑ホテルでの透析患者向け食事会、ホテルニューオータニでの提供、ビッグサイトでの試食と紹介、テレビ番組

等のマスコミを通しながら、島根大学で研究開発したメロンを地域の特産物として発展させている。

活動による成果

本プロジェクトの成果については「平成28年度戦略的機能強化推進経費成果報告書」にまとめた。他に「研究

シーズ集」(41件)および「教育・地域貢献シーズ集」(38件)を冊子体にするとともに学部HPのバナーにも掲載

し、学部研究シーズをわかりやすく、伝えようとしている。島根県農業技術センターおよびその他の公設研究機

関との共同研究等の連携として23課題(うち農業技術センター13題)の取り組みが行われている。また、農業技

術センターの研究員が学部教員の協力の下、連大で学位を多数取得している。

キーワード:学部研究シーズ、地域特産物、地域活性化

生物資源科学部・研究シーズによる地域活性化プロジェクト

生物資源科学部 包括連携研究活動

地域活性化と地域企業とのコラボ学部セミナーin広島

32

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教育活動 学生活動 その他地域貢献

活 動 概 要

公開研究報告「隠岐島の生物資源価値の再発見」を共催で開催(隠岐の島町)平成27年 3 月29日隠岐の島町ふれあいセンターにおいて「隠岐島の

生物資源価値の再発見」と題して公開研究報告会を隠岐の島町と合同

開催した。町長の開会の辞に引き続き、東京大学赤坂氏による「地域

活性化に貢献する海洋科学」と題した基調講演、さらに隠岐近海の海

洋資源や島嶼生物の生態などについて生物資源科学部から 7 名の発表

と、隠岐の島町農林水産課と島根県隠岐支庁水産局から隠岐の水産業

の現状や新たな取り組みについて報告があり、約60名の一般町民が参

加した会場から活発な質問や意見交換がなされた。

公開講座、高大連携平成24年より島根県高校海洋調査実習を毎年開催し、延べ100名を

超える高校生が隠岐の自然や海洋環境について学んできた。地元水産

高校との連携では、毎年数回、海洋に関する講義や実習を行い、地元

産業や伝統文化の継承者に自然豊かな隠岐の魅力を伝えている。隠岐

高校においても、毎年 2 ~ 3 回程、出前授業を行い、世界ジオパークに認定された隠岐に存在する生物多様性や

独特な生態系について説明してきた。

最近 5年間の主な活動◦隠岐高校「オキタンポポ花粉調査」(2013年 3 /27, 4 / 2 )

◦SPP岡山県立創志学園高校「日本海を楽しむ~生物海洋実習」(2012年 7 /24~27)

◦隠岐水産高校「海洋生物実習」(2014年 3 /14;2015年 7 / 8 , 7 /14,12/17,12/25;2016年 2 /23)

◦SPP隠岐の島中学合同海洋生物調査実習(2014年 7 /30~ 8 / 1 )

◦隠岐高校夏期授業特別企画(2013年 6 /10;2014年 8 /25)

◦隠岐水産高校 3 年生臨海実習(2014年12/12)

◦隠岐高校「隠岐ジオパーク探求」特別授業(2014年 6 / 9 , 6 /13;2015年 6 /17, 6 /19, 6 /24;2016年 6 /29,

7 / 1 )

◦松江北・松江南・隠岐高校 3 校合同臨海実習(2015年 8 / 3 ~ 5 ,2016年 8 / 3 ~ 5 )

活動による成果

合同報告会や中等教育機関との連携活動を契機に、町役場農林水産課からの受託研究、技術指導、水産協議会

への参画など、地域課題解決へ向けた直接的な取り組みを行うようになった。具体例では、近年発生した赤潮に

よる魚介類の大量斃死の原因となったプランクトンを遺伝子解析から種を同定し、情報を提供した。また、地元漁

師や水産関係者からの貴重な情報を得て、海洋生物の捕獲・採集を行なえるようなネットワークが出来つつある。

キーワード:隠岐島、海洋資源、高校海洋調査実習、隠岐ジオパーク

隠岐臨海実験所

生物資源科学部 包括連携研究活動

33

Page 39: 国立大学法人島根大学の 地域連携・地域貢献シーズ - …36 浜田市人材育成講座 生物資源科学部 浜田市 教 包 37 島根大学生物資源科学部セミナー「浜田学

教育活動 学生活動 包括連携 その他地域貢献

活 動 概 要

しまね大学発・産学連携ファンドを活用して起業した、中海の海藻を活用した農村地域の再生事業に取り組む

「株式会社 なかうみ海藻のめぐみ」(連携教員:松本真悟)が島根大学発ベンチャーに認定された。

中海の海藻は干拓事業が始まる前の昭和30年代に漁師が回収して、肥料として農業利用していた実績があり、

その量は年間50,000tにも上っていた。このことから、莫大な資源量を確保することが可能である。松本らは環境

浄化のために回収される海藻類の地域別、時期別、種類別に理化学分析を行い、海藻の有機質肥料としての特性

ならびに適性を検討した。回収された海藻のほとんどはオゴノリ(シラモ・ツルシラモ)やウシケノリ等の紅藻

類であり、カリ(K2O)含有率が 9.9~12.6%と極めて高い値を示した。これらの結果は、市販の有機質肥料の無

機成分含有率と比較すると著しく異なるものであった。すなわち、市販の有機質肥料のカリ含有率は 1 %以下の

ものが大半であり、有機農業者にとってはカリウムの供給源に苦慮しているのが現状である。このことから、中

海の海藻は極めて特徴的な有機質カリ肥料として活用できると考えられた。また、これらの海藻を宍道湖中海周

辺地域で利用促進を図ることによって、新たなブランド農産物を生み出すことが期待されることから、「株式会社

なかうみ海藻のめぐみ」を設立した。現在、海藻肥料の製造販売とともに、島根大学松本研究室と栽培試験など

の共同研究を行っている。

活動による成果

海藻肥料を用いて栽培したコメが平成27年度から境港市の学校給食用の食材として採用されており、その成果

が着実に地域の農業生産に浸透し始めている。

キーワード:中海、宍道湖、海藻、肥料、カリウム

なかうみ海藻のめぐみ

生物資源科学部 研究活動

34

Page 40: 国立大学法人島根大学の 地域連携・地域貢献シーズ - …36 浜田市人材育成講座 生物資源科学部 浜田市 教 包 37 島根大学生物資源科学部セミナー「浜田学

教育活動 学生活動 包括連携 その他地域貢献

活 動 概 要

株式会社農の郷(みのりのさと:難波 晋社長、安来市)は、特殊フィルムを用いたアイメックシステムでトマ

トを栽培し、青果物およびその加工品による高付加価値化と六次産業化に取り組む企業として、しまね大学発・

産連携ファンドの投資で平成28年11月に設立され、同年12月に島根大学発ベンチャーに認定された。この栽培シ

ステムで育成したトマトは食味、香りとも良好で、糖度や栄養価(リコピン、ギャバ等のアミノ酸)が非常に高

い。したがって、市場での評価は高く、他の農法で作られたトマトのおよそ 3 倍の取引価格で流通される。

島根大学では、アイメックトマトに含まれる機能性成分について高性能分析機器を用いての分析や新たな機能

性成分の発見等のエビデンス提供でアイメックトマトの差別化を図っている。また、アイメックトマトを用いた

新しいジャンルの加工品を開発することで、 6 次産業化にも取り組んでいる。

活動による成果

大学・自治体・事業者と連携しながら新たな産学官連携ビジネスモデルの構築を目指し、地域特産品の機能性

成分の分析と加工、環境循環型技術開発、地域ビジネス開発にわたるシーズを元に産業展開していくことで、こ

の会社を核に地域振興につなげていくことを目指している。

キーワード:アイメック、トマト、加工品

生物資源科学部

農の郷(みのりのさと)

研究活動

35

Page 41: 国立大学法人島根大学の 地域連携・地域貢献シーズ - …36 浜田市人材育成講座 生物資源科学部 浜田市 教 包 37 島根大学生物資源科学部セミナー「浜田学

研究活動 学生活動 その他地域貢献

活 動 概 要

浜田市では西条柿やピオーネが特産作物として振興され、無添加・天然果汁100%のトマトジュース「もぎたて

トマト」も製造されていることから加工用トマトの栽培も増えている。また、浜田港は全国10位の漁獲量を誇り、

カレイやアジ、ノドグロ(アカムツ)等の水産物も全国的に有名である。

島根大学生物資源科学部と浜田市は、平成22年10月に包括的連携協定を締結し、人材育成や農林水産業の振興、

地域資源の活用等の分野で連携を進めている。平成22年度より毎年、農林水産業や食品加工業従事者等を対象に

浜田市・島根大学生物資源科学部連携企画として「人材育成講座」を開講している。

平成27年度は、「西条柿の東京進出」、「加工用トマトの現状と課題」、「白色反射シートのカーテン処理による果

樹の糖度、着色の向上と果実等を用いた加工品開発」、「カレイの塩分濃度の簡易測定方法の開発」の 4 課題の講

演の他、「シジミの多価不飽和脂肪酸代謝」、「カレイのうま味成分を分解する酵素」、「カレイに含まれる栄養成

分の産地による比較」、「生および干物カレイのコラーゲンの電気泳動による分析」、「どこまでできる?スマート

フォンによる森林測量」、「旅行行動による地域感情の形成に関する構造分析」、「隠岐諸島における世界ジオパー

ク認定による誘客効果の検証」、「雨水利用と屋上緑化を融合した小規模屋上緑化潅水システムにおける土壌水分

動態」、「軟体動物におけるビタミンA代謝の機構とその多様性」の 9 課題のポスター発表を行った。

平成28年度は、トマトと西条柿の栽培に特化した内容とし、「トマトとカキの病害について」の基調講演を行っ

た。次に、トマトと西条柿の栽培と加工について 3 分科会に分かれて、島根大学から情報提供を行った後、生産

者と活発な議論を行った。

活動による成果

◦産学官で開発した西条柿ドリンク「晩夕飲力」は、JAしまね いわみ中央地区本部で生産・販売され、一部は

ネットショップでも販売されている。

◦ピオーネの着色向上のための白色反射シートのカーテン処理が現場で実施された。

◦西条柿、赤梨を用いた加工品を開発し、商品化を検討している。

キーワード:西条柿、トマト、栽培、加工

浜田市人材育成講座

生物資源科学部 包括連携教育活動

平成28年度人材育成講座の様子

36

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研究活動 学生活動 その他地域貢献

活 動 概 要

生物資源科学部農林生産学科農業生産学教育コースおよび農村経済学教育コース 1 年生向け基礎セミナーの一

部として、平成29年 7 月 8 日(土)に浜田市へ学生を派遣し、浜田市の水産業・農業について視察を行い、浜田

市の農水産業の理解を深める「浜田学」を実施した。現地見学やヒアリング、ディスカッションにより、浜田市

の水産業・農業を組み合わせた 6 次産業化の検討や、浜田市の水産業・水産加工業・水産物販売などの課題解決

に向けた考察に取り組んだ。

農業生産学教育コースでは、「浜田の海産物と近隣地域の農産物を六次産業としてコラボしてみよう」、農村経

済学コースでは「浜田の農水産物の生産から販売まで学ぶ」をスローガンに実施した。

1 班:農業生産学教育コース 農業生産基礎セミナー( 1 年生)35名

8 :00 島根大学出発

10:30 浜田市に到着し、水産業の説明・見学とディスカッション

12:00 昼食

13:30 農業関係視察・ヒアリング調査

15:30 水産事業者へのヒアリング

16:30 浜田市出発

19:00 島根大学到着

2 班:農村経済学教育コース 農村経済学基礎セミナー( 1 年生)19名

8 :00 島根大学出発

10:30 浜田市に到着し、水産業の説明・見学とディスカッション

12:00 昼食

13:30 水産事業者へのヒアリング

15:00 水産加工業の企業訪問・ヒアリング

16:30 浜田市出発

19:00 島根大学到着

活動による成果

農業生産学教育コースでは、六次産業化にも取り組んでいることから、学生に実際に島根県西部における農林

水産物を利用して、どのような六次産業化として展開が可能か、現地見学とグループディスカッションを通して、

浜田市の現状(強みおよび問題点)、潜在力、将来の展望を考えることができた。

農村経済学教育コースでは、農水産物を基礎とした地域活性化に取り組んでいることから、島根県の農水産物

の付加価値の現状と課題を認識することができた。

この経験を、今後の研究活動に繋げていく。

キーワード:浜田市、農水産業、セミナー

島根大学生物資源科学部セミナー「浜田学」

生物資源科学部 包括連携教育活動

37

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研究活動 学生活動 包括連携 その他地域貢献

活 動 概 要

ふるさと魅力化フロンティア養成コースは、教育をキー

ワードとした地域教育魅力化人材を育成するためのプログ

ラムとして開発したもので、 1 年間(120時間以上)のノン

ディグリーコース(学位取得を目的としないコース)であ

る。具体的には、高校を中心とする「教育の魅力化」と地

域振興とを結びつけて地域活性化に取り組む隠岐郡海士町

及び飯石郡飯南町と連携することにより、大学の教育・研

究資源と組み合わせながら教育再開発を柱とした「ふるさ

と魅力化フロンティア(地域活性化人材)」を養成するコー

スである。

このコースでは、集中的に実施する授業及び隠岐郡海士

町や津和野町等での実習のほか、遠隔ライブ授業やオンデマンド授業によりプログラムを構成しており、社会人

受講者の利便性等にも配慮している。

積極的に地域活性化に取り組んでいる海士町等での実習では、高校や学習センターでの観察・体験実習のほか、

関係者へのヒアリング、

フ ィ ー ル ド ワ ー ク を 行

うなど、多様な人との交

流を行う中で、講義科目

で学んだ知識を統合する

ことによって、コーディ

ネーターの役割の理解を

深める工夫を行っている。

活動による成果

平成28年度は、11都府県から第 1 期生16名を受け入れ、全員

が履修プログラムを修了した。修了生のアンケートでは本コー

スの総合満足度(「大変満足」・「かなり満足」)は83%に達して

おり、「講義・実習で学修したことの仕事への適用」についても

実践性を重視したこれまでにない学修スタイルが評価され、満

足度は84%となり、修了生の学修成果がそれぞれの地域での課

題解決に結びつくことが期待されている。

キーワード:高校魅力化、地域教育魅力化、地域活性化

ふるさと魅力化フロンティア養成コースの実施

教育・学生支援機構 教育推進センター 教育活動

ふるさと魅力化フロンティア養成コース概念図

授業風景

修了生アンケート

遠隔ライブの様子

38

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研究活動 学生活動 包括連携 その他地域貢献

活 動 概 要

島根大学のナノテクプロジェクトは島根県と米国テキサス州とのナノテク共創委員会に端を発し、2004年か

ら2013年まで大学の重点研究プロジェクトとして全学的にナノテク分野の研究の活性化に取り組んできました。

2013年には自主的な組織としてナノテクプロジェクトセンターを開設しました。

この間、2008年~2011年には島根県と地域企業12社を含めた文科省の地域イノベーション戦略支援プログラム

都市エリア型(宍道湖。中海エリア)等の産学官連携事業にも積極的に取り組んできました。このような地域の

産学官支援事業は全国で行われ、研究資金の支援や産学官交流会の開催が実施されてきましたが、中小企業では

わずか 1 %しか産学連携が行われておりません。その原因は、中小企業の開発に取り組む人材不足と考えられま

す。ナノテクプロジェクトセンターでは、これまでの産学官連携の経験を踏まえ、学生を企業に派遣して、企業

の課題を解決するPBL(Project Based Learning)を通して人材不足を補う新しい産学連携を提案しました。こ

の新しい産学連携は、企業のための研究開発だけでなく、学生の実践的な教育にも大きな成果が期待でき、ほと

んどの企業に適用可能なことから地域の活性化が期待できます。ナノテクプロジェクトセンターでは、従来の産

学連携に加え、ナノテクの基礎的な技術や知識によるPBL教育の課題解決の支援などを通し、新しい地域の産学

連携への貢献を目指しています。

活動による成果

このコンセプトは島根大学のCOI(Center of Innovation)事業やCOC(Center of Community)事業の申請

の中にも採用されました。この内、平成25年度の文科省COC事業「課題解決型教育(PBL)による地域協創型人

材養成」が採択になました。実際のPBLについてはナノテクプロジェクトセンターの支援により得られた成果を学

生が東京ビックサイトの展示会において 3 件の発表をするなど、新しい産学連携の成功に寄与ができています。

キーワード:ナノテク、PBL

地域産業に貢献するあたらしい産学連携

教育活動戦略的研究推進センターナノテクプロジェクトセンター

PBLを通した新しい産学連携を提案

39

事業名称:

地域産業に貢献するあたらしい産学連携

キーワード:ナノテク、PBL 活動概要:

島根大学のナノテクプロジェクトは島根県と米国テキサス州とのナノテク共創委員会に端

を発し、2004 年から 2013 年まで大学の重点研究プロジェクトとして全学的にナノテク分野の

研究の活性化に取り組んできました。2013 年には自主的な組織としてナノテクプロジェクト

センターを開設しました。 この間、2008 年~2011 年には島根県と地域企業 12 社を含めた文科省の地域イノベーショ

ン戦略支援プログラム都市エリア型(宍道湖。中海エリア)等の産学官連携事業にも積極的に

取り組んできました。このような地域の産学官支援事業は全国で行われ、研究資金の支援や産

学官交流会の開催が実施されてきましたが、中小企業ではわずか 1 % しか産学連携が行われ

ておりません。その原因は、中小企業の開発に取り組む人材不足と考えられます。ナノテクプ

ロジェクトセンターでは、これまでの産学官連携の経験を踏まえ、学生を企業に派遣して、企

業の課題を解決する PBL(Project Based Learning)を通して人材不足を補う新しい産学連携

を提案しました。この新しい産学連携は、企業のための研究開発だけでなく、学生の実践的な

教育にも大きな成果が期待でき、ほとんどの企業に適用可能なことから地域の活性化が期待で

きます。ナノテクプロジェクトセンターでは、従来の産学連携に加え、ナノテクの基礎的な技

術や知識による PBL 教育の課題解決の支援などを通し、新しい地域の産学連携への貢献を目

指しています。

活動による成果:

このコンセプトは島根大学の COI(Center of Innovation)事業や COC(Center of Community)事業の申請の中にも採用されました。この内、平成 25 年度の文科省 COC 事業

「課題解決型教育(PBL)による地域協創型人材養成」が採択になました。実際の PBL につ

いてはナノテクプロジェクトセンターの支援により得られた成果を学生が東京ビックサイト

の展示会において 3 件の発表をするなど、新しい産学連携の成功に寄与ができています。

(実施部局等名:戦略的研究推進センター ナノテクプロジェクトセンター)

経営者

研究開発部門

製造・販売部門

大学技術提供 資金提供

共同研究

受託研究

従来の産学連携

研究開発型企業

経営者

製造・販売部門

中小企業

学生指導 学生派遣

PBL

インターンシップ

学生が企業の課題解決に向けてPBLを実施

新しい産学連携

人材と研究環境を提供

PBL を通した新しい産学連携を提案

39

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教育活動 研究活動 学生活動 その他地域貢献

活 動 概 要

島根大学は平成25年度にCOC(Center of Community)事業(地域社会、特に地方が抱える産業・市街地の空洞化や地域医療危機、過疎・高齢化等の諸課題に対し、大学が地元自治体や企業等と連携することで、地域の課題を把握し、全学をあげてその解決に向け取り組む事業)に採択されています。「COC地域協議ワーキンググループ意見交換会」とは、COC事業対象自治体である島根県、松江市、出雲市、

大田市、安来市、雲南市とプロジェクトセンターが行う連携会議です。農林水産業の六次産業化プロジェクトセンターでは、平成26年度から以下の日程で計 7 回の意見交換会を開催

し、毎回、地域活性化や六次産業化に対する各自治体の取組み、開発中の製品、アズキやエゴマの栽培等について意見交換を行っています。

開催日 参加自治体

平成26年 9 月19日 島根県、松江市、出雲市、大田市、安来市、雲南市

平成27年 1 月27日 松江市、出雲市、大田市、安来市、雲南市

平成27年12月21日 松江市、安来市、雲南市

平成27年12月22日 島根県、出雲市、大田市

平成27年12月25日 安来市

平成28年11月28日 島根県、出雲市、大田市、安来市

平成29年 2 月28日 松江市、安来市、雲南市

COC地域協議ワーキンググループ意見交換会の様子

活動による成果

各自治体の地域活性化や六次産業化への取組みについての情報共有、分析等の技術的な課題についての情報提供を通して、COC事業対象自治体と農林水産業の六次産業化プロジェクトセンターとの連携を深めてきました。当プロジェクトセンターでの活動を活かしたセミナー講師の派遣や、主として「アズキ」、「エゴマ」に関する研究を含めた地域協力が具体化するなど、積極的な六次産業化の地域貢献が実を結びつつあります。

キーワード:地域活性化、COC事業対象自治体、意見交換

COC地域協議ワーキンググループ意見交換会

戦略的研究推進センター農林水産業の六次産業化プロジェクトセンター 包括連携

平成26年度 第1回意見交換会(9月19日) 平成28年度 第1回意見交換会(11月28日)

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教育活動 学生活動 包括連携 その他地域貢献

活 動 概 要

「日本再興戦略2016」にもあるように、第 4 次産業革命はベンチャーの時代でもある。世界に先駆けて第 4 次産

業革命を実現できるかは、オープンイノベーションを実践し、企業の内外のリソースを効率的かつ柔軟に活用で

きるかにかかっている(ニッポン一億総活躍プランより)。そして、ローカル・アベノミクスの実現に向けて、地

域の知識基盤社会の中核的拠点として大学の「知の創出機能」を最大化していくことが重要である。

山陰地域における知と文化の拠点としての島根大学の強み・特色を最大限に活かし、高い付加価値を生み出す

島根大学へと転換をさらに推進するため、「ベンチャー・チャレンジ2020」(平成28年 4 月19日)にあるように、

島根大学の研究シーズ・技術を基にした、高い競争力を持ちグローバル・ベンチャーへと成長する可能性を持つ

研究開発型の大学発ベンチャーを速やかに創出する必要がある。学長主導の基、15のプロジェクトセンターが設

置された。その一つである膵がん撲滅プロジェクトセンターのサブリーダーである 松崎 有未 教授は「しまね大

学発・産学連携ファンド」から投資を受け、本プロジェクトでも進めている抗体を用いた細胞分離に関する研究

シーズを基に、高品質の間葉系幹細胞を基礎・臨床研究用途に提供する「PuREC株式会社」を起業した(平成28

年 1 月 5 日)。治療効果の高い再生医療の早期実現、さらに地域経済の活性化に繋げることが期待される。記者会

見の様子は平成28年 1 月28日付けの山陰中央新報社に掲載された。その他、NHKしまねっと( 1 月18日)、日経新

聞( 1 月26日)、NHKしまねっと( 1 月27日)などで報道された。

活動による成果

平成28年度補正予算「革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金」(中小企業庁)に「PuREC株式会

社」が応募した「臨床グレード超高純度間葉系幹細胞分離システム構築」が採択された(2214万円)。

平成29年度革新的医療技術創出拠点プロジェクト関連シーズ(橋渡し研究戦略的推進プログラム・シーズB)に

島根大学医学部 竹谷 健 教授を研究代表者として「PuREC株式会社」・株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジ

ニアリングが分担企業として応募した「先天性骨系統疾患に対する高純度間葉系幹細胞を用いた骨再生技術開発」

が採択された(平成29年 7 月から平成31年 3 月までの 2 年 9 ヶ月、総額 2.1億円(うち間接経費4770万円)金額は

応募時点)。

解説:しまね大学発・産学連携ファンド島根大学の保有する研究シーズを基にした起業などを支援する総額10億2,000万円のファンド。

株式会社地域経済活性化支援機構が、株式会社山陰合同銀行との間において、地域経済の活性化に資する産学連携の推進を目的とする「しまね大学発・産学連携投資事業有限責任組合」を、REVICキャピタル株式会社及びごうぎんキャピタル株式会社を無限責任組合員として、平成27年1 月 1 日に設立した。

キーワード:大学発ベンチャー、PuREC株式会社、高品質の間葉系幹細胞、再生医療

膵がん撲滅プロジェクトセンターからスピンオフした大学発ベンチャー

研究活動戦略的研究推進センター膵がん撲滅プロジェクトセンター

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教育活動 学生活動 その他地域貢献

活 動 概 要

膵がん撲滅プロジェクトセンターでは文科省からスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受けた県下の高校と協働して生徒を受入れ、島根大学においてともに研究活動を行うことで地域における問題点などについて高校生の主体的な学びを深化・発展させ、地域でも行える科学研究実践活動を継続的に実施している。本活動は地域基盤型教育と地域課題解決型研究を兼ね備え、地域協創型人材の養成を図り、大学の地域の知の拠点化を推進している。

地元の高校生の能力や意欲に応え島根大学との化学反応で一人一人の能力をさらに伸ばすことができればと考えサイエンスの底上げを目的として、可能な限り積極的に受入れている。文科省のSSHプログラムに採択されている、県西部の益田高等学校や医学部から 2 km以内に位置する出雲高等学校の運営指導委員(出雲高等学校では委員長)をセンター長が引き受けることで、より綿密な高大連携が可能となっている。益田高等学校:平成20年~平成26年( 7 年間)毎年夏休み期間に 3 名から 6 名を 2 泊 3 日で島根大学に受け入

れた。出雲高等学校:平成25年から現在に至るまで毎年、理数科 2 年生10名(関係 2 講座各 5 名)を受入れ、SSHの

課題研究として 6 月(初期は10月)から次の 1 月までの月曜日の午後を利用して、半年間以上継続して研究を一緒におこなっている(その他医学部の 2 講座でも各 5 名を受入れていただいている)。毎年地域に根ざし、地域に還元できる研究という観点で研究テーマを生徒と一緒に設定している。

活動による成果

平成25年度に受け入れた出雲高校の生徒と行った「出西生姜の膵がんに対する抗腫瘍効果」に関する共同研究が第58回日本学生科学賞の優秀賞に選ばれた。

平成26年度に受け入れた出雲高校の生徒と行った「世界最先端の遺伝子編集研究」に関する共同研究の成果を日本生化学会中国・四国支部例会で生徒らが発表した。

平成28年度に受け入れた出雲高校の生徒と行っている「出雲に生息する微生物が産生する物質による膵がん細胞の死滅」に関する共同研究は、 1 )島根に多く、予後が極めて悪い膵がん患者を救いたい、 2 )島根県は湿度が高いため、膵がん細胞を殺す物質を産生する、出雲に生息する新しい微生物が発見できるかも知れないという生徒自身の発想でテーマ設定された。研究を進めた結果、新規の微生物ではなかったが、膵がん細胞を殺す物質を産生する微生物を発見した(図 1 ・ 2 )。

現在、その物質の同定を進めている。同定できれば膵がんに対する新薬として開発することができるかもしれません。その成果は平成29年 2 月 9 日出雲市市民会館で一般に公開して行われた出雲高等学校SSH・SGH研究成果発表会で生徒たちが発表し 1 位を獲得した。それを受け、今年 8 月には神戸で行われる全国SSH生徒研究発表会で発表予定である。

キーワード:スーパーサイエンスハイスクール、高大連携共同研究、膵がん

スーパーサイエンスハイスクールと協働した高大連携共同研究

戦略的研究推進センター膵がん撲滅プロジェクトセンター 包括連携研究活動

図 1 微生物の光学顕微鏡写真桿菌であることが判明した。

図 2 微生物の培養上清を膵がん細胞株に添加した後のギムザ染色生存した細胞は下段のように、紫色に染まる。培養上清を添加した上段では細胞が死滅したため、染まっていない。

42

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教育活動 学生活動 その他地域貢献

活 動 概 要

松江市発のプログラミング言語「Ruby」を利用して、地域のオープンデータやユーザ発信データを「見える

化」し地域課題の解決につなげるアプリケーションの研究と開発を、地域の行政・情報産業・コミュニティと協

同して行う。

活動による成果

◦「松江ソーシャルネットワークマップシステム」の研究・開発成果は松江市と地元IT企業が連携して開発した

「Matsueオープンデータバンク」へ引き継がれ、オープンデータ化が進められている。

◦2014年度から2017年度にかけて「アーバンデータチャレンジ」(社会基盤情報流通推進協議会主催)への参加を

通じてオープンデータを活用するアイデアソン・ハッカソンを開催、学生と市民が共同してオープンデータを

活用して地域課題を解決するアプリケーションの開発を進めた(2015年度は学生賞を受賞)。

◦研究成果を活用し、実践的なプログラミングの学習を進める「Ruby・OSS履修プログラム」を開設した(2016

年度は 5 名が修了)。

キーワード:Ruby、オープンデータ

Rubyとオープンデータを活用した地域活性化モデルの構築と効果の研究

包括連携研究活動戦略的研究推進センターRuby・OSS プロジェクトセンター

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事業名称:

Ruby とオープンデータを活用した地域活性化モデルの構築と効果の研究

キーワード:Ruby、オープンデータ

活動概要:

松江市発のプログラミング言語「Ruby」を利用して、地域のオープンデータやユーザ発信

データを「見える化」し地域課題の解決につなげるアプリケーションの研究と開発を、地域の

行政・情報産業・コミュニティと協同して行う。

活動による成果:

1.「松江ソーシャルネットワークマップシステム」の研究・開発成果は松江市と地元 IT 企業

が連携して開発した「Matsue オープンデータバンク」へ引き継がれ、オープンデータ化

が進められている。 2.2014 年度から 2017 年度にかけて「アーバンデータチャレンジ」(社会基盤情報流通推進

協議会主催)への参加を通じてオープンデータを活用するアイデアソン・ハッカソンを開

催、学生と市民が共同してオープンデータを活用して地域課題を解決するアプリケーショ

ンの開発を進めた(2015 年度は学生賞を受賞)。 3.研究成果を活用し、実践的なプログラミングの学習を進める「Ruby・OSS 履修プログラ

ム」を開設した(2016 年度は 5 名が修了)。

(実施部局等名:戦略的研究推進センター Ruby・OSS プロジェクトセンター)

松江ソーシャルネットワークマップ

http://map2.opendata-matsue.jp/

・松江ソーシャルネットワークマップシステムの構築(Ruby で構築)と運用によって地域情報をオー

プンデータのフォーマットに変換して公開する仕組みの構築と運用・アプリケーションの開発を行

った(松江ソーシャルネットワークマップ) ・オープンデータとその活用による経済効果推計について手法面・データ面からの検討に基づき推計

方法を確立、行政機関へのアンケート調査とヒアリング調査によってオープンデータ化による経済

効果を直接推計し、国内外の学会で発表、オープンデータ研究に貢献した。

Ruby を活用して、地域のオープンデータやユーザ発信デ

ータを「見える化」し地域課題の解決につなげるアプリケ

ーションの開発を、地域の行政・情報産業と協同して実施

特別副専攻「Ruby・OSS 履修プログラム」

研究成果を活用し、実践的なプログラミングの学習と、こ

れを活用するための経済学・経営学の学習を通じて、実社

会の場で活躍することができる高度な人材を育成すること

を目的とした「Ruby・OSS 履修プログラム」を開設

43

Page 49: 国立大学法人島根大学の 地域連携・地域貢献シーズ - …36 浜田市人材育成講座 生物資源科学部 浜田市 教 包 37 島根大学生物資源科学部セミナー「浜田学

教育活動 研究活動 学生活動 包括連携

活 動 概 要

サイエンスカフェは、お茶を飲みながら和気あいあいあとした雰囲気の中で大学の研究者から一般市民が科学的な知見について話を聞くイギリス・フランスが発祥のイベントである。

島根大学では、平成17年に島根大学重点研究プロジェクト「健康長寿社会を創出するための医工農連携プロジェクト」でプロジェクトの成果をわかりやすい言葉で市民に語りかけようという趣旨で始まった。そして、平成20年 3 月にプロジェクトが終了したことに伴い、第22回目のサイエンスカフェで一度終了した。しかし、サイエンスカフェ再開の強い要望が市民の方々からあり、平成20年にサイエンスカフェが再開し、その後、平成28年度の第69回まで続いた。年に約 6 回の頻度で、本学や貸し会議室等で開催している。

平成29年度より新たな体制でスタートし、第70回島根大学サイエンスカフェが、同年 7 月27日に松江テルサにて開催された。「食べたいけれど食べられない……低カリウムメロンの思い」と題して、生物資源科学部の浅尾 俊樹 教授が発表し、43名の市民の方々にご参加いただいた。

活動による成果

これまで12年間で70回のサイエンスカフェを開催し、多くの市民の方々にご参加頂いた。そして、大学の持っている専門的な知見を分かり易い形で市民へ提供することより、「科学」をより身近なものに感じて頂くことができた。また、継続的に本学教員と地域の皆様がFace to Faceで接する機会をつくることにより、大学と市民の方々との交流をより深めることができた。

キーワード:市民セミナー

島根大学サイエンスカフェ

産学連携センター、研究推進室 その他地域貢献

第69回サイエンスカフェの様子

第70回サイエンスカフェのチラシ第70回サイエンスカフェの様子

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Page 50: 国立大学法人島根大学の 地域連携・地域貢献シーズ - …36 浜田市人材育成講座 生物資源科学部 浜田市 教 包 37 島根大学生物資源科学部セミナー「浜田学

研究活動 学生活動 その他地域貢献

活 動 概 要

島根県内の高校生が大学入学前に最先端の「生きた科学」に接し、科学への興味を一層、深める機会を提供す

ることを目的に平成18年度から実施している。

産学連携センター(出雲)研修室にて、実際に研究に携わった教員が研究に至った経緯、研究内容、今後の展

望についてやさしく説明した後、各研究室へ移動し、地元企業との産学連携により開発した医療機器等を実体験

する。体験実習の後、生徒と大学教員とで質疑応答など自由な討論を実施する。

産学連携による実用化研究を体験し、科学の無限の可能性を肌で感じることができ、毎回生徒からは高評価を

得ている。体験実習は、 1 )ナノ医療、 2 )遠隔地医療、 3 )再生医療、 4 )アレルギー医療の 4 テーマを実施

している。

活動による成果

2016年度は、益田高校15名、出雲高校41名、松江南高校35名、浜田高校27名を受け入れた。平成18年の開始か

ら1,188名の生徒がこのフィールド学習を体験している。

このフィールド学習をきっかけに参加者の中から島根大学医学部(医学科、看護学科)に入学し、卒業生も多

数出た。将来、地域医療の貢献に繋がることが期待される。

キーワード:高大接続、医療機器、先端医療、産学連携

高校生フィールド学習

包括連携教育活動産学連携センター 地域医学共同研究部門

益田高校 出雲高校

浜田高校松江南高校

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研究活動 学生活動 その他地域貢献

活 動 概 要

出雲科学館からの紹介で、当時、出雲市四絡小学校 6 年生の片岡柾人君が正式な科学技術相談を当センターへ申し込んだ。間違いなく全国最年少記録(小大連携)である。それから産学連携センター地域医学共同研究部門

(出雲)の 中村 守彦 教授による研究指導が始まった。片岡君は、小学校 1 年生から自力でコツコツと研究を進め、ダンゴムシの唾液や糞に抗菌作用をもつ物質があ

ることを見つけた。「ダンゴムシは害虫ではなく益虫!」だというのが結論。第三中学校へ進学してからも「コラボ(中大連携)」は続いている。

既に大学生レベルの研究を進め、新しい抗生物質の同定に余念がなく、専門誌の英語論文の抄読にも挑戦している。

活動による成果

片岡君はこのテーマで 2 度目となる文部科学大臣賞を(中学の部)受賞し、さらに2017年に野依科学奨励賞も受賞した。

本人と保護者の了解を得て、この取組(中大連携)は、『常識は疑え!』と題して、数々の講演会・セミナーや講義(医学部、全学共通科目、大学院(医学系、理工系、農学系))で紹介され、大きな反響があった。

キーワード:小大連携、中大連携、文部科学大臣賞、野依科学奨励賞

全国初! 小大連携および中大連携

産学連携センター 地域医学共同研究部門 包括連携教育活動

医学系大学院生とのディスカッション

文部科学大臣賞の受賞(2016)

日本学生科学賞の発表前夜の特訓風景(中村教授、片岡君)

46

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研究活動 学生活動 その他地域貢献

活 動 概 要

出雲高校SSH高大連携事業の一環として、 1 年次にフィールド学習を体験した 2 年生(理数科)の生徒たちが産学連携センター地域医学共同研究部門(出雲市)で全国でも珍しい『高大産連携』による調湿木炭の課題研究に取り組み、新商品を提案した。

生徒が主体となり研究方法を考え、当部門の研究室を利用して実験を行った。この研究成果は出雲高校の校内発表会 8 項目の中から 2 項目に選ばれ、県大会に出場した。今回の研究ではタンス用「炭八」の調湿機能を確かめることを目的とし、一般的に使われているシリカゲルや

塩化カルシウムと比較検討した。また、炭八の工場見学で目に止まった、廃棄処分するはずの炭八の「すす」を利用してブーツキーパーを考案

し、研究発表会で紹介した。

活動による成果

この取り組みについては2013年 4 月19日の毎日新聞で掲載された。また、共同研究先の出雲土建(出雲カーボン)のホームページ上で、高校生の研究成果と商品開発へ向けた提

案内容が公開された(現在も閲覧可能)。http://www.sumi8.jp/article/14808580.html

キーワード:高大産連携、高校課題研究

全国初! 高大産連携~出雲高校課題研究

産学連携センター 地域医学共同研究部門 包括連携教育活動

当部門の研究室での実験の様子 高校生が提案したブーツキーパー

課題研究に参加した出雲高校生、担当教諭(化学)、企業研究者(出雲土建)、 島根大学(教授、技能補佐員、大学院生)

47

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教育活動 学生活動 包括連携

活 動 概 要

地域医療の質向上を目指して、医学部(附属病院)と地元企業との共同研究を進めている中の一つとして、音

声認識技術を活用して救急医療を支援する新しいシステムを、山陰制御(安来市)、NTTドコモ(松江市)とテッ

クシロシステム(広島市)で確立した。

救急患者搬送時の病院前救護において救急救命士は、患者に対する確認事項、搬送先医療機関への連絡、医師

との会話、患者処置記録など多伎に渡る。しかし、走行中に時間経過や処置内容等の記録を手書きで残すのは、

救急処置に専念し難く容易ではない。

このシステムは患者対応で両手が塞がった状態においても処置記録がデータ化され、コールバックシステム

(処置報告内容の確認や、心肺停止時の薬剤投与時刻の予告など)により、救急車内での処置を支援する。

今後、当システムを機能拡張し、搬送先の医師へリアルタイムに適切な指示が伝わることによって、搬送先医

療機関も的確な受け入れ準備ができ、救命率の向上が期待できる。

なお、この救急システムについては2016年に特許を取得した。

活動による成果

本取り組みが起点となって地域連携

が整い、島根県西部や隠岐の島など

救急医療が厳しい状況にある地域も

含めて本システムが活用されることに

なった。

また、全国に先駆けて設立された医

学部Acute Care Surgery講座も新た

に参画することになり、特に外科領域

で先進的な医療を提供できると期待さ

れる。

このシステムについては平成27年 4

月30日に記者発表し、各紙面で取り上

げられた。

キーワード:救急医療、ハンズフリー、音声認識、産学官地域連携

ハンズフリー「音声認識記録システム」の開発

産学連携センター 地域医学共同研究部門 その他地域貢献研究活動

記者発表の様子 開発した音声認識システム

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教育活動 研究活動 学生活動 包括連携

活 動 概 要

総合科学研究支援センターでは独立行政法人日本学術振興会の助成事業ひらめき☆ときめきサイエンスの体験

学習会を隔年で開催し地域貢献を行ってきている。平成27年度は「細胞の不思議な世界-ミクロの世界をさぐ

る-」を実施した。主に松江市の小学 5 ・ 6 年生を対象として募集を行い、 8 月 7 日に大学の生物顕微鏡、実体

顕微鏡、蛍光顕微鏡、電子顕微鏡などを使用した生物分野の体験学習会を松江キャンパスで実施した。総合科学

研究支援センター遺伝子機能解析部門、生物資源科学部の共同体制で実施した。講義「ゾウリムシの一生」や大

学内を散策して生物を観察・採取するキャンパスツアーも実施した。最後に未来博士号を授与した。

活動による成果

24名の参加者があった。大学の研究室において、教員、大学院生、学部生とともに実習を体験することで生物

や細胞に関する知識が大いに深まり、大学で学ぶことについての関心も高くなった。今後の社会、地域を担う人

材の育成に貢献することができた。

キーワード:体験学習、細胞、大学の研究室

ひらめき☆ときめきサイエンス ~ようこそ大学の研究室へ~(H27年度)「細胞の不思議な世界-ミクロの世界をさぐる-」

その他地域貢献総合科学研究支援センター 遺伝子機能解析部門

8 7

不思議な世界

何の写真でしょう?(答えは裏面)

の細胞

理科・生物の実験が好きな人、島根大学で「ひらめき☆ときめきサイエンス〜ようこそ

大学の研究室へ〜KAKENHI」(独立行政法人日本学術振興会事業)に参加してみま

せんか? めずらしい生物、おもしろい形の細胞を最新の顕微鏡で観察してみましょう。

どんどん拡大していくとどんな世界が見えてくるか、小さな世界を楽しみましょう。

参 加 費

無 料(昼食あり)

内  容ルーペ、生物顕微鏡、電子顕微鏡など大学の最新顕微鏡も使っていろいろな生物のおもしろい姿を観察してみます。不思議な形の生物、美しく輝く細胞など、ミクロの世界をさぐってみます。生物のおもしろい話もあります。

特  典ルーペを配付します。プログラム終了後持ち帰っていただけます。

申込方法FAX、E-mailのいずれかで、1. 氏名(フリガナ)、2. 学校名・学年、3. 住所、4. 電話番号、5. 保護者の同意の有無を明記の上、裏面の送付先にお申し込み下さい。FAX用申込書は裏面のものをご利用下さい。

申込締切2015年 7 月22日㈬ 必着締切後に詳しい案内をお送りします。応募者多数の場合は、ご希望に添えない場合がございます。

スケジュール裏面をご覧下さい。

年 月 日2015 9:30より会場: 島根大学生物資源科学部 1 号館(松江市西川津町1060)

お問い合わせ先:島根大学研究機構総合科学研究支援センター ひらめき☆ときめきサイエンス係TEL 0852-32-6109 http://shimane-u.org/gyoji.htm をご覧下さい。

ミクロの世界をさぐる

◉ 小学5年生・6年生対象(定員24名)◉

1 2

3

わかるかな?

49

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教育活動 研究活動 学生活動 包括連携

活 動 概 要

総合科学研究支援センターでは独立行政法人日本学術振興会の助成事業ひらめき☆ときめきサイエンスの体験学習会を隔年で開催し地域貢献を行ってきている。平成25年度は「細胞の世界-ミクロの世界をさぐる-」を実施した。主に松江市の小学 5 ・ 6 年生と中学生を対象として募集を行い、 8 月 6 日に中学生を対象、 8 月 7 日に小学 5 ・ 6 年生を対象として、大学の生物顕微鏡、実体顕微鏡、蛍光顕微鏡、電子顕微鏡などを使用した生物分野の体験学習会を松江キャンパスで実施した。総合科学研究支援センター遺伝子機能解析部門、生物資源科学部の共同体制で実施した。真野昌二氏(基礎生物学研究所)による講義「細胞とオルガネラの世界」、児玉有紀氏

(島根大学生物資源科学部)による講義「ゾウリムシの一生」も実施した。最後に未来博士号を授与した。

活動による成果

8 月 6 日は17名、 8 月 7 日は26名の参加者があった。大学の研究室において、教員、大学院生、学部生とともに実習を体験することで生物や細胞に関する知識が大いに深まり、大学で学ぶことについての関心も高くなった。今後の社会、地域を担う人材の育成に貢献することができた。

キーワード:体験学習、細胞、大学の研究室

ひらめき☆ときめきサイエンス ~ようこそ大学の研究室へ~(H25年度)「細胞の世界-ミクロの世界をさぐる-」

その他地域貢献総合科学研究支援センター 遺伝子機能解析部門

理科・生物の実験が好きな人、島根大学で「ひらめき☆ときめきサイエンス~ようこそ大学の研究室へ~ KAKENHI」(独立行政法人日本学術振興会事業)に参加してみませんか?めずらしい生物を最新の顕微鏡で観察してみましょう。どんどん拡大していくとどんな世界が見えてくるか、小さな世界を楽しみましょう。

無料(昼食あり)ルーペ、生物顕微鏡、電子顕微鏡など大学の最新顕微鏡も使っていろいろな生物のおもしろい姿を観察してみます。奇妙な形の生物、美しく輝く細胞など、ミクロの世界をさぐってみます。生物のおもしろい話もあります。ルーペを配付します。プログラム終了後持ち帰っていただけます。

FAX、E-mail のいずれかで、1. 氏名(フリガナ・性別)、2. 学校名・学年、3. 住所、4. 電話番号、5. 保護者の同意の有無を明記の上、裏面の送付先にお申し込み下さい。FAX 用申込書は裏面のものをご利用下さい。

2013年7月23日(火)必着締切後に詳しい案内をお送りします。応募者多数の場合は、ご希望に添えない場合がございます。裏面をご覧下さい。

何の写真でしょう?(答えは裏面)

参  加  費

内  容

特  典申込方法

申込締切

スケジュール

細胞世界

【お問い合わせ先】 島根大学研究機構総合科学研究支援センター ひらめき☆ときめきサイエンス係 TEL0852-32-6109 http://shimane-u.org/gyoji.htmをご覧下さい。

小学5年生・6年生対象プログラム

中学生対象プログラム

日 時 日 時

会 場 会 場島根大学生物資源科学部1号館(松江市西川津町1060)

島根大学生物資源科学部1号館(松江市西川津町1060)

2013年8月6日(火)10:00より

2013年8月7日(水)9:30より

定員

20名

定員

20名

ミクロの世界をさぐる

2

3

1

ひらめき★ときめきサイエンス

50

Page 56: 国立大学法人島根大学の 地域連携・地域貢献シーズ - …36 浜田市人材育成講座 生物資源科学部 浜田市 教 包 37 島根大学生物資源科学部セミナー「浜田学

教育活動 学生活動 その他地域貢献

活 動 概 要

地域包括ケア教育研究センター(CoHRE)では、生活習慣病の予防や健康長寿の実現を目標に、2006年に雲南市で健康調査を開始し、その後、隠岐の島町、邑南町を加えて、各自治体と協働して毎年約3,000名の健康調査を実施してきた。この中で、医学部教員の専門的検査(頸動脈エコー検査、体組成検査、ロコモ検査、膝関節症検査、骨密度検査、肺機能検査、眼圧・緑内障検査、中心血圧・脈波伝導速度検査、認知機能検査、塩味感受性試験、口腔内細菌検査など)を行うとともに、島根県特有の地域社会のつながり(ソーシャル・キャピタル)、住環境、食習慣に着目した調査を実施した。これらのデータをもとに、生まれつきの体質(「遺伝的素因」)、食事などの「生活習慣」、地域での「人間関係」や「住環境」が、生活習慣病や長寿にどう関わるのかを明らかにしてきた(図 1 )。また、これらの研究成果は、健康調査を実施している 3 つの自治体で毎年40回以上の住民説明会、健康に関する講演会を通じて住民に還元するとともに、自治体の保健医療従事者と共同で、健康づくりの活動や、地域が主体となった健康維持・増進のまちづくりの取組に協力してきた。

このような経験に基づき、健康長寿実現の戦略として考えているのが、地域をベースにした共助を軸に、地域ぐるみで健康長寿に取り組めるようなコミュニティ(地域包括ケア実践可能なコミュニティ)を創っていくことである。この目標に向かい、医学部、人間科学部と連携して、新たな文理融合型研究を推進している(図 2 )。

活動による成果

これまでの健康調査で、5,000件以上のDNAサンプル、血液サンプルを収集保管しており、健康データものべ7,000件を越えている。これらのサンプルやデータを用いた医学的研究によって、この 5 年間に32編の論文を国際誌に発表し、自治体との共同研究も毎年 3 ~ 4 件実施している。さらに蓄積した10年以上の健康データをもとに、国内外の研究機関との共同研究を計画している。

キーワード:健康調査、地域健康づくり、健康長寿、地域包括ケア

自治体との協働で行う健康調査とそれにもとづく健康づくり活動

包括連携研究活動地域包括ケア教育研究センター、医学部、人間科学部

51

事業名称:

自治体との協働で行う健康調査とそれにもとづく健康づくり活動

キーワード:健康調査、地域健康づくり、健康長寿、地域包括ケア

活動概要:

地域包括ケア教育研究センター(CoHRE)

では、生活習慣病の予防や健康長寿の実現を

目標に、2006 年に雲南市で健康調査を開始

し、その後、隠岐の島町、邑南町を加えて、

各自治体と協働して毎年約 3000 名の健康調

査を実施してきた。この中で、医学部教員の

専門的検査(頸動脈エコー検査、体組成検査、

ロコモ検査、膝関節症検査、骨密度検査、肺

機能検査、眼圧・緑内障検査、中心血圧・脈

波伝導速度検査、認知機能検査、塩味感受性

試験、口腔内細菌検査など)を行うとともに、

島根県特有の地域社会のつながり(ソーシャ

ル・キャピタル)、住環境、食習慣に着目し

た調査を実施した。これらのデータをもとに、生まれつきの体質(「遺伝的素因」)、食事など

の「生活習慣」、地域での「人間関係」や「住環境」が、生活習慣病や長寿にどう関わるのか

を明らかにしてきた(上図)。また、これら

の研究成果は、健康調査を実施している 3つの自治体で毎年 40 回以上の住民説明会、

健康に関する講演会を通じて住民に還元す

るとともに、自治体の保健医療従事者と共同

で、健康づくりの活動や、地域が主体となっ

た健康維持・増進のまちづくりの取組に協力

してきた。 このような経験に基づき、健康長寿実現の戦

略として考えているのが、地域をベースにし

た共助を軸に、地域ぐるみで健康長寿に取り

組めるようなコミュニティ(地域包括ケア実

践可能なコミュニティ)を創っていくことである。この目標に向かい、医学部、人間科学部と

連携して、新たな文理融合型研究を推進している(右図)。 活動による成果:

これまでの健康調査で、5,000 件以上の DNA サンプル、血液サンプルを収集保管しており、

健康データものべ 7,000 件を越えている。これらのサンプルやデータを用いた医学的研究によ

って、この 5 年間に 32 編の論文を国際誌に発表し、自治体との共同研究も毎年 3~4 件実施し

ている。さらに蓄積した 10 年以上の健康データをもとに、国内外の研究機関との共同研究を

計画している。

(実施部局等名:地域包括ケア教育研究センター、医学部、人間科学部)

51

事業名称:

自治体との協働で行う健康調査とそれにもとづく健康づくり活動

キーワード:健康調査、地域健康づくり、健康長寿、地域包括ケア

活動概要:

地域包括ケア教育研究センター(CoHRE)

では、生活習慣病の予防や健康長寿の実現を

目標に、2006 年に雲南市で健康調査を開始

し、その後、隠岐の島町、邑南町を加えて、

各自治体と協働して毎年約 3000 名の健康調

査を実施してきた。この中で、医学部教員の

専門的検査(頸動脈エコー検査、体組成検査、

ロコモ検査、膝関節症検査、骨密度検査、肺

機能検査、眼圧・緑内障検査、中心血圧・脈

波伝導速度検査、認知機能検査、塩味感受性

試験、口腔内細菌検査など)を行うとともに、

島根県特有の地域社会のつながり(ソーシャ

ル・キャピタル)、住環境、食習慣に着目し

た調査を実施した。これらのデータをもとに、生まれつきの体質(「遺伝的素因」)、食事など

の「生活習慣」、地域での「人間関係」や「住環境」が、生活習慣病や長寿にどう関わるのか

を明らかにしてきた(上図)。また、これら

の研究成果は、健康調査を実施している 3つの自治体で毎年 40 回以上の住民説明会、

健康に関する講演会を通じて住民に還元す

るとともに、自治体の保健医療従事者と共同

で、健康づくりの活動や、地域が主体となっ

た健康維持・増進のまちづくりの取組に協力

してきた。 このような経験に基づき、健康長寿実現の戦

略として考えているのが、地域をベースにし

た共助を軸に、地域ぐるみで健康長寿に取り

組めるようなコミュニティ(地域包括ケア実

践可能なコミュニティ)を創っていくことである。この目標に向かい、医学部、人間科学部と

連携して、新たな文理融合型研究を推進している(右図)。 活動による成果:

これまでの健康調査で、5,000 件以上の DNA サンプル、血液サンプルを収集保管しており、

健康データものべ 7,000 件を越えている。これらのサンプルやデータを用いた医学的研究によ

って、この 5 年間に 32 編の論文を国際誌に発表し、自治体との共同研究も毎年 3~4 件実施し

ている。さらに蓄積した 10 年以上の健康データをもとに、国内外の研究機関との共同研究を

計画している。

(実施部局等名:地域包括ケア教育研究センター、医学部、人間科学部)

図1

図2

51

Page 57: 国立大学法人島根大学の 地域連携・地域貢献シーズ - …36 浜田市人材育成講座 生物資源科学部 浜田市 教 包 37 島根大学生物資源科学部セミナー「浜田学

教育活動 学生活動 その他地域貢献

活 動 概 要

地域包括ケア教育研究センター(CoHRE)では、地域医療の第一線で活躍する医師、看護師、保健師などの医

療人が、現場での経験に基づくオリジナルのアイデアをユニークな研究に結びつけるためのサポートをする枠組

としてAcademic Knowledge Network (AKN)を起ち上げた。これは、CoHREのメンバーが、大学の持つ研究

のノウハウを地域医療の現場に届けてその研究をサポートする仕組で、研究は大学に来なければできないとされ

ていたこれまでの常識を覆すユニークな試みである。平成26年度より開始し、邑智病院、浜田医療センター、浜

田市国保診療所連合、大田市立病院、出雲市民病院、出雲総合医療センター、隠岐病院で説明会を行い、現在ま

でに 9 名の医師がこの仕組を通じて研究活動を行っている。

活動による成果

AKNの活動を通じて、平成26年度からの 3 年間で論文11編、学会発表 9 件を発表した。また、 1 名は国際誌に

論文を発表し、医学博士の学位を取得することができた。論文発表や学位取得をした医師は、その後も継続して

研究に取り組んでおり、リサーチマインドを持ちながら地域医療を支える医師、医療人を育てる試みとして、成

果を挙げつつある。自らの知的興味にもとづいて行う研究をサポートすることで、研究することが医療現場でも

可能であることを実際に体験していただき、それによって仕事へのモチベーションを上げることができれば、地

域医療の充実に繋がっていくと考える。

キーワード:リサーチマインド、地域医療、研究支援

Academic Knowledge Network (AKN):地域医療人の研究支援のためのユニークな枠組づくり

包括連携研究活動地域包括ケア教育研究センター、医学部、人間科学部

52

事業名称:

Academic Knowledge Network (AKN): 地域医療人の研究支援のためのユニークな枠組づくり

キーワード:リサーチマインド、地域医療、研究支援

活動概要:

地域包括ケア教育研究センター(CoHRE)では、地域医療の第一線で活躍する医師、看護

師、保健師などの医療人が、現場での経験に基づくオリジナルのアイデアをユニークな研究に

結びつけるためのサポートをする枠組として Academic Knowledge Network (AKN)を起ち上

げた。これは、CoHRE のメンバーが、大学の持つ研究のノウハウを地域医療の現場に届けて

その研究をサポートする仕組で、研究は大学に来なければできないとされていたこれまでの常

識を覆すユニークな試みである。平成 26 年度より開始し、邑智病院、浜田医療センター、浜

田市国保診療所連合、大田市立病院、出雲市民病院、出雲総合医療センター、隠岐病院で説明

会を行い、現在までに 9 名の医師がこの仕組を通じて研究活動を行っている。

活動による成果:

AKN の活動を通じて、平成 26 年度からの 3 年間で論文 11 編、学会発表 9 件を発表した。

また、1 名は国際誌に論文を発表し、医学博士の学位を取得することができた。論文発表や学

位取得をした医師は、その後も継続して研究に取り組んでおり、リサーチマインドを持ちなが

ら地域医療を支える医師、医療人を育てる試みとして、成果を挙げつつある。自らの知的興味

にもとづいて行う研究をサポートすることで、研究することが医療現場でも可能であることを

実際に体験していただき、それによって仕事へのモチベーションを上げることができれば、地

域医療の充実に繋がっていくと考える。

(実施部局等名:地域包括ケア教育研究センター、医学部、人間科学部)

52

Page 58: 国立大学法人島根大学の 地域連携・地域貢献シーズ - …36 浜田市人材育成講座 生物資源科学部 浜田市 教 包 37 島根大学生物資源科学部セミナー「浜田学

教育活動 研究活動 学生活動 包括連携

活 動 概 要松江城下町の一角にある大正時代の洋館・島根大学旧奥谷宿舎(島根大学サテライトミュージアム)を作品展

示発表の場として、市民に無料で貸し出す事業。主な実績は以下の通り。H21年度 「奥谷タイムトンネル 2 -古くて新しい島根をさがしに-」H22年度 作品展示・ワークショップ「幼子を包む空間~シュタイナー教育の現場より・季節のテーブルを中心に」 アート展示「のび て ちぢむ 時間 のこと」 「『赤山講話』発祥の地 バークレー・F・バックストン写真展」 作品展示・ワークショップ「シュタイナー教育の現場より・私の手のはたらき~生活科」 写真展「水無月展」 詩・写真など作品展「心」 洋画作品展「池尻都作品展」 作品展示・ワークショップ「シュタイナー教育の現場より・絵画」 水彩画・油彩画・写真展示と絵画教室「古代出雲の里松江“秋の色”」 水彩画・油彩画・写真展示と絵画教室「メリークリスマス!」 島根大学法文学部言語文化学科芸術学演習成果発表「七色八雲 百二十年の響鳴」 「 3 月- 3 回生の美術展“マーチ”」H23年度 写真展「The Story ~We have each story in our life 高尾希三子と高橋直子の写真展」H24年度 写真展「こころ」 写真展「釜ヶ崎劇場2011」 絵画展「天上の美 in 島根大学旧奥谷宿舎」 写真展「仄暗い世界の果て」 絵画展「良子の世界~笑顔がいっぱい~」H25年度 浅井菜保子リトグラフ版画展「PLANT COLLECTION展」 企画展「平和学習を通して~学んだこと・伝えたいこと~」H26年度 作品展「みなのことのは-きみのこころとことば」 絵画展「良子の世界~笑顔がいっぱいⅡ」H27年度 写真展「松本博美写真展 松江散歩・たたらの里」H28年度 作品展「心の花びら展in島根」 島根大学写真部作品展「水無月展」 写真展「福間彰 島根大学名誉教授卒寿記念“人生のあゆみ”」H29年度 島根大学版画教室と公開講座リトグラフ版画の作品展示 「松

江ゆかりの石版画」展

活動による成果毎年、様々な団体・個人の作品展示の場として利用されている。地道だが長年継続してきたことによって、市

民が気軽に利用できる文化活動の場として認知されてきている。大学による具体的な地域活性化、地域文化振興につながっている。

キーワード:大学による中心市街地活性化、地域文化振興

島根大学旧奥谷宿舎(島根大学サテライトミュージアム)の市民向けギャラリー無料貸出しによる中心市街地活性化・地域文化振興

その他地域貢献ミュージアム

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研究活動 学生活動 その他地域貢献

活 動 概 要

島根大学と包括協定を締結している邑南町の、島根の昔ながらの生活文化を色濃く残す里山で、農家民泊・地

元住民との交流・伝統文化体験を軸に、留学生と地域住民の交流と異文化理解を促進している事業です。平成22

年から実施しており、これまでに延べ142人の留学生が参加しました。本事業はこれまで中島記念国際交流財団に

よる「留学生地域交流事業」助成、しまね国際センターの「世界とつながる島根づくり」助成を受け実施してき

ました。

主な内容は、町内小学校での巡回交流会、県立矢上高校生徒との多国籍料理クッキングや英語ディベート大会、

高齢者福祉施設利用者との交流、一般住民を対象とした国際交流祭り、石見神楽体験など、世代と国籍を超え、

双方に異文化理解を深め、同時に邑南町の魅力を存分に体感できるよう毎年趣向を凝らした企画を行っています。

本事業は、邑南町役場、教育委員会、NPO法人瑞穂アジア塾、地域の公民館等との強力な連携により実施して

おり、回を重ねるにつれ地域住民にも認知され、民泊での留学生受入れや、各所での交流企画実施に大変積極的

な協力を得ています。

留学生の日本文化理解を促進するだけでなく、同時に中山間地域における国際交流の機会提供という意味にお

いても、留学生と地域住民、双方にとって得るものの多い有意義な事業となっています。

活動による成果

留学生にとっては、地域住民との交流を通し、島根の里山文化を体験し理解を深めることができます。都会地

やキャンパス内では成し得ない、世代と国籍を超えた人情味溢れる交流で相互理解を促進し、人間的な成長を図

ることを目指しています。地域住民にとっては、中山間地域における定期的な国際交流の機会となっているほか、

町の未来を担う小学生、高校生たちとの交流では双方向に異文化理解のマインドを養うことができ、さらに高齢

者との交流では自国との比較から学びを深め、お年寄りの生きがい作りということでも喜んでもらっています。

~ 参加者からの感想 ~【邑南町の皆さん】◦�日本と他国、それぞれの文化の良さを学んだ。◦�民間交流こそが世界理解への一歩だと感じた。◦�小さな町の子供たちに世界への窓を開いてもら

う良い機会となった。◦�一期一会であっても、ぜひ邑南町の思い出をそ

れぞれの国に持ち帰ってもらいたい。

【参加した留学生】◦�民泊の方のもてなしは温かく家族のようだった。◦�日本人の暮らし、伝統、倫理観などに感動した。◦�稲刈り、釣り、風呂沸かし、和服体験など、日

本の文化にたくさん触れることができた。◦�都会では体験できない、豊かな自然と人々との

交流は、一生忘れられない思い出となった。

キーワード:留学生、地域交流、異文化理解、中山間地域、世界との縁結び

邑南町と世界をつなぐ縁結びプロジェクト2017

包括連携教育活動国際交流センター

農家民泊で稲刈り体験

小学生との運動会 石見神楽社中との交流

高校生によるお点前披露

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研究活動 学生活動 その他地域貢献

活 動 概 要

COC人材育成コース(COC:Center of Community)を対象とした正課外の教育活動である。「入学セミナー」

「フレッシュマンセミナー」「課題探求セミナー」「未来づくりセミナー」などがあり、COC人材育成コースの教育プログラムに組み込まれている。

フレッシュマンセミナーは、COC人材育成コースとして入学した 1 年生が、コース生として初めて一泊二日のフィールドワークを行うものである。平成28年度・29年度と雲南市掛合町波多地区を訪問し、地域を体験し、地域づくりを学び、地域貢献活動を行った。

未来づくりセミナーは、毎月開催される座学のセミナーである。毎回、山陰地域の自治体、企業、NPO等から講師を招き、地域の現状や課題について講義を受ける。平成29年度は島根県をはじめとした自治体が講師役となり、地方創生の取り組みについて実例を学び、学生どうしが議論する。

活動による成果

地域に対する成果◦受入体制の整備

継続的にコース生を受け入れることにより、地域側の受入体制整備が進展している。◦地域づくりの促進

セミナーでの地域貢献活動が地域づくりの一端を担っている。例えばフレッシュマンセミナーの竹林伐採作業により、波多コミュニティ協議会が運営する「さえずりの森」の環境整備を行うことができた。

キーワード:地域志向教育、フィールドワーク

COC人材育成コース・セミナー

包括連携教育活動地域未来戦略センター

地域の方と波多地区の巡検

未来づくりセミナーでのディスカッション波多地区の竹林伐採作業

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研究活動 学生活動 その他地域貢献

活 動 概 要

本事業は、COC(Center of Community)事業において、附属図書館と地域未来戦略センターが協働で県内の地域資料をデジタルアーカイブするシステムを開発し、当該資料の保存と活用を推進するための取り組みである。システムは「しまね地域資料リポジトリ―GO-GURa―」として、附属図書館ホームページ内に公開されている。http://coc.lib.shimane-u.ac.jp/ja

【システム概要】(利用者向けリーフレットより抜粋)

活動による成果

◦資料登録件数:5,888件 (平成29年 6 月時点)◦資料登録団体数:16団体 ( 上記の内、県内自治体:島根県、松江市、安来市、出雲市、雲南市、大田市、飯南町、邑南町、浜田市、隠

岐の島町、西ノ島町、知夫村)◦資料ダウンロード件数:8,834件◦本学における教育利用実績(平成29年度) 教養育成科目:スタートアップセミナー及び島根学

キーワード:地域資料、デジタルアーカイブ

しまね地域資料リポジトリ―GO-GURa―

包括連携教育活動地域未来戦略センター

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教育活動 研究活動 学生活動 包括連携

活 動 概 要

遺跡の発掘調査報告書(以下「遺跡報告書」)は、発行部数が少なく配布先が限られていることから、入手が難しい資料の一つであるが、考古学分野の教育・研究活動には欠かすことができない。このような遺跡報告書を必要とする人がいつでも利用できるように、デジタル化してインターネット上で公開する「遺跡資料リポジトリ・プロジェクト」を本学附属図書館が中国地方の国立大学に呼びかけて、2008(平成20)年に開始した。本学図書館が代表機関となって推進したこのプロジェクトは、国立情報学研究所から 5 年間にわたって助成を受けて全国22の府県に拡大し、約 1 万 5 千冊の遺跡報告書をデジタル化して公開した。

国立情報学研究所の助成事業が終了した2013(平成25)年からは、本プロジェクトの成果を国立文化財機構 奈良文化財研究所(以下「奈文研」)へ移管する協議を進め、2015(平成27)年にはシステムの構築とコンテンツの移行が完了し、「全国遺跡報告総覧」として新たに公開されている。本学図書館は引き続き事務局として、奈文研と共同で運用を行っている。現在、43道府県の約380機関が発行する遺跡報告書約 2 万冊がWeb上に公開されており、利用件数は年間80万件以上(本文データのダウンロード件数)と活発に利用されている。また、参加機関のさらなる拡大と利活用促進のためにシンポジウムも開催している。

全国の大学図書館や自治体等との積極的な協力により、遺跡報告書の全文公開による可視化に努めたことなどが評価され、本学図書館は平成26年度に国立大学図書館協会賞を受賞している。

活動による成果

全国の大学図書館21館が連携して取り組みを進めた本事業は、埋蔵文化財研究の一大拠点である奈文研へ移管できたことにより、参加機関が着実に拡大し、また、遺跡報告書の発行機関が直接コンテンツを登録する運用が定着して、コンテンツが安定的に増加しつつある。このように、本事業は埋蔵文化財行政を基盤とした事業へとさらに発展できる可能性を持っていると言えよう。

さらに、システム改修等を継続して進め、外部システムとの連携による遺跡報告書の可視性の向上、英語による検索機能、本文中に含まれる頻出用語の抽出と解析などの機能が実現された。これらの機能は、考古学研究に大きく寄与できる可能性を秘めている。

キーワード:考古学、発掘調査報告書、デジタル化、学術情報流通の促進

全国遺跡報告総覧の全国展開による遺跡報告書のデジタル化と発信

その他地域貢献附属図書館

全国遺跡報告総覧Webサイトhttp://sitereports.nabunken.go.jp/ja

シンポジウムの様子

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教育活動 研究活動 学生活動 包括連携

活 動 概 要本学附属図書館は、様々な学内外の機関と連携したシンポジウムや講演会等をはじめ、本学が所蔵する資料の

企画展示を毎年継続して開催することで、分かり易い形での学術情報発信に努めている。以下に紹介するのは、2016(平成28)年度に開催した主な事業である。シンポジウム◦「古典籍発見の軌跡とその展望」

図書館振興財団の助成事業の一環として、河本家古典籍の調査が開始されてから現在に至るまでの調査研究とデジタル化の成果を総括するシンポジウムを開催。

  日時:2016(平成28)年10月30日(日)13:00~16:30  会場:琴浦町生涯学習センター「まなびタウンとうはく」  主催:国指定文化財河本家住宅保存会・島根大学附属図書館◦全国遺跡報告総覧シンポジウム 本学附属図書館が事務局を務める「全国遺跡報告総覧」を普及・拡大するためのシンポジウムを開催。  日時:2016(平成28)年11月28日(月)13:00~17:30  会場:奈良文化財研究所 平城宮跡資料館講堂  主催:全国遺跡報告総覧プロジェクト/共催:島根大学附属図書館・奈良文化財研究所講演会・研修会◦ファシリテーション研修会 松江市立図書館との合同により、県内の図書館職員を対象とした研修会を本学教員が講師を務めて開催。  日時:2016(平成28)年12月13日(火)10:00~17:00  会場:タウンプラザしまね  講師:荒川長巳島根大学保健管理センター教授企画展示(会場はいずれも附属図書館展示室)◦「松江が生んだ美術史家・相見香雨『自筆調査録』」展  期間:2016(平成28)年 7 月 1 日~ 7 月31日  主催:桑原羊次郎・相見香雨研究会/附属図書館◦「旧制松江高校出身の異才編集者-花森安治と田所太郎-」展  期間:2016(平成28)年 7 月16日~ 8 月28日  主催:ミュージアム/附属図書館◦「江戸力-手錢家蔵書から見る出雲の文芸-」展  期間:2016(平成28)年11月 9 日~11月30日  主催:出雲文化活用プロジェクト(手錢記念館/法文学部山陰研究センター/附属図書館)◦「足立文庫を通じて見る戦前・戦中・戦後」展  期間:2016(平成28)年12月10日~2017(平成29)年 1 月22日  主催:法文学部山陰研究センター/附属図書館

活動による成果大学と地域の様々な機関が連携することで、大学がもつ多様なリソース(学術資料や教員の専門知識・スキル)

を効果的に地域に発信するとともに、地域の機関がもつ多様なリソース(学術資料や地域の研究者等の知識・スキル)を学内の学生・教職員に対して効果的に発信できている。大学図書館がキュレーターとしての役割を果たすことで、大学と地域の双方向の学術情報の交流機会を創出している。

キーワード:学術情報の発信、交流

シンポジウム・講演会・企画展示等による学術情報発信

その他地域貢献附属図書館

ファシリテーション研修会

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教育活動 研究活動 包括連携 その他地域貢献

活 動 概 要

本学では毎年学生の防犯ボランティアを募り、「地域安全協力員・子ども安全支援員」として松江警察署長から委嘱状が交付されている。平成29年度は平成29年 6 月21日(水)に本学の学生市民交流ハウス前において委嘱式が行われ(62名の学生が参加)、241名の学生が委嘱された。

防犯ボランティア活動として、 7 ~ 8 月及び年末に「セーフティかわつ」主催で行われる「川津地区内の防犯パトロール」、及び「歳末特別警戒パトロール」への参加、街頭での防犯・非行防止等に係る啓発チラシの配布、松江キャンパス内での自転車の鍵掛けチェック等を行い、学生及び市民に向けての防犯意識の高揚に尽力している。

活動による成果

「地域安全協力員・子ども安全支援員」として参加する学生は、防犯ボランティア活動を通じて、自らの防犯意識が高まるだけでなく、活動を通じて社会貢献、地域貢献の意識の高揚に繋がる。また、地域の方々との交流を通して、自分自身が「地域社会の一員」であることを自覚するとともに、川津地区そして松江市内全域での防犯意識を高めることにより、犯罪の少ない社会の構築にも繋がることになる。

キーワード:防犯活動支援、地域貢献、社会人力育成

安全安心まちづくりボランティア

学生支援課 学生活動

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教育活動 研究活動 その他地域貢献

活 動 概 要

本学では毎年学生ボランティアを募り、「サイバー防犯ボランティア」として島根県警から委嘱状が交付されて

いる。平成29年度は、平成29年 7 月26日(水)に総合理工学部第 3 会議室において委嘱式が行われ、102名(内留

学生10名)の学生が委嘱された。

「サイバー防犯ボランティア」の委嘱を受けた学生は、委嘱式当日に島根県警主催によるサーバー犯罪防止ボラ

ンティア実施に関する講習を受け、各自が日常生活の中で日々インターネット上での違法・有害情報、犯罪に繋

がるような情報が掲載されていないかを監視し、不適切な情報を発見した際は、インターネット・ホットライン

センター等へ通報することとしている。

活動による成果

島根大学では平成24年度に島根県警と包括協定を締結し、学生によるサイバー防犯ボランティア活動や警察の

方を講師に招いた授業・共通教育科目「地域社会の生活と安全」を開講することにより、学生自身が良好な治安

確保のための自らの役割り、安全安心確保のための社会を挙げた取組などについて理解し、「安全・安心な地域社

会の実現」に向けた意識の醸成に繋げている。

キーワード:防犯活動協力、地域貢献、社会人力育成

サイバー防犯ボランティア

学生支援課 包括連携学生活動

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教育活動 研究活動 包括連携 その他地域貢献

活 動 概 要

島根大学医学部[学生]の取り組み

医学部では、塩冶地区・島根大学医学部連絡協

議会での連携協力計画「島根大学医学部防犯パト

ロール」に基づき、医学部学生が独自に取組む事

業と位置付け平成24年11月から実施している。出

雲市貢献プラン事業(学外ボランティア活動)と

して、大学から貸与された「パトロール中」ス

テッカーを貼付し、出雲市内(塩冶地区ならびに

通学経路)でのパトロール活動を複数の学生団体

(概ね、各月 5 団体程度)が、個人所有の自家用

車(大学登録済)を使用し通学時間に合わせ巡回

を行う。活動報告は、実施月の翌月初めに学務課学生支援担当に「島根大学医学部[学生]パトロール日誌」の

提出を持って活動報告書としている。学生支援担当は取り纏めた活動報告書を、出雲市貢献プラン事務局(一般

財団法人恵雲会)に提出し、当該事務局から活動団体に支援金が付与され実施学生には個別に大学から課外活動

ポイント(ビビットポイント)も付与される。

活動による成果

医学部周辺および出雲市内での防犯パトロールを行うことにより犯罪抑止[防止]、学生の防犯に対する意識改

革ができた。

キーワード:犯罪抑止、防止

『島根大学医学部防犯パトロール』

医学部 学務課 学生活動

学生防犯パトロール

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国立大学法人島根大学の地域連携・地域貢献シーズ

平成29年12月

編集・発行 島根大学�企画部�地域連携・研究協力課      〒690-8504 島根県松江市西川津町1060      TEL 0852-32-6614(地域連携推進グループ)

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国立大学法人島根大学の地域連携・地域貢献シーズ

島根大学 企画部 地域連携・研究協力課

国立大学法人島根大学の地域連携・地域貢献シーズ

島根大学

企画部

地域連携・研究協力課