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第10章市場の失敗と外部性
市場の失敗
外部性 公共財 不確実性
不完全競争 分配の衡平性 など
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完全競争の条件
[A] 市場の普遍性の条件 すべての財に市場が存在し,交換が行われる. すべての財に所有権や使用権が定められている.
[B] 完全競争の条件 すべての市場で完全競争が支配し,すべての生産要素は企業間,産業間で自由に移動できる.
[C] 凸環境の条件 効用関数,生産関数は他の経済主体の消費量,生産量とは独立であり,さらに限界代替率逓減の法則,限界費用逓増の法則が成り立つ.
[D] 安定性の条件 競争均衡は安定的で,均衡からはずれてもすみやかに均衡が回復される.
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市場の失敗
普遍性の欠落 所有権や使用権が設定できないため,取引が不可能になってしまう財(大気や自然環境など)
内在的欠陥 凸環境・安定性など,市場の有効な作動を保証する諸仮定が満たされない場合
i) 収穫逓増・費用逓減 ii) 外部性 iii) 公共財 iv) 不確実性 v) 異時点間の資源配分(将来財)
機能障害:不完全競争 外在的欠陥
所得分配の不公正 市場:機能的分配
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外部性
外部性(技術的外部性)とは ある経済主体の活動が他の消費者の効用関数,他の企業の生産関数に対して,市場を経由しないで直接に与える影響
大気汚染,水質汚染,煤煙など
外部性による市場の失敗 外部性はそれを目的とする活動が存在しない,すなわち他の活動に付随して生じる
市場を経由せず取引されない
その効果・影響そのものに対して所有権が設定されていなかったり,責任の所在が不明確
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外部性の部分均衡分析
外部性による市場の失敗 個々の経済主体の意思決定が社会的費用ではなく私的費用のみを考慮してなされる
社会的費用と社会的便益とが一致する社会的に最適な状態が実現できない
図解 RR’:社会的限界費用曲線, SS’:私的限界費用曲線DD’:需要曲線, RS:外部費用
RR’=SS’+RS
市場均衡:E 総余剰最大点(パレート最適点):P 市場の失敗=点Pと点Eの不一致 点Eでは点Pより△PFE=△PQEだけ総余剰が少ない
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外部性の一般均衡分析
生産者間の外部性の一般均衡分析
2財1要素2企業1消費者の世界
a財を生産しているa企業
↓外部不経済(負の外部性)
b財を生産しているb企業
生産関数(2回連続微分可能)
仮定
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個別企業の利潤最大化問題
利潤
利潤最大化の条件
市場均衡
パレート最適条件
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a
b
a
b
a
b
a
b
a
b
b
b
ba
a
bb
ba
a
a
a
a
aa
MP
MP
MP
ME
dy
dyMRT
dxMPdxMEdxdx
dfdx
dx
dfdy
dxdx
dxMPdxdx
dfdy
0
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パレート最適条件
市場の失敗
命題外部性が存在すれば,完全競争均衡は一般にパレート最適にはならない.
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外部性の内部化(Ⅰ)部分均衡分析
課税政策 政府が単位当たりRR'とSS'の差額RSだけ,生産者に課税する.このとき,1単位の追加的生産に対してRSの費用が追加されるから,生産者の限界費用曲線SS'は上方にシフトしRR'に一致する.その結果,新しい市場均衡としてP点が達成される.
補助金政策 0x*の水準から生産量を1単位減少させるごとに,RSの補助金を生産者に与える.1単位の生産増は私的限界費用と補助金を失う機会費用の和となるから,限界費用曲線SS’は補助金の額だけ上昇し,RR’一致する.その結果,新しい市場均衡としてP点が達成される.
汚染者負担原則
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t
16
E
P
Q
S
S’
R
R’
S’’
17
E
P
Q
S
S’
R
R’
S’’
18
一般均衡分析[課税政策]
a企業に単位あたりt円の税金を課す
各企業の利潤
利潤最大の条件
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市場均衡
tの決定
→市場均衡=パレート最適
a企業が生産要素を1単位増加させたときの税額の増加分=それがもたらす外部不経済によってb企業が被る収入の減少分
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[補助金政策]
a企業に現在の生産量ya0から1単位減らすご
とにt円の補助金を与える
各企業の利潤
利潤最大の条件
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市場均衡
tの決定
→市場均衡=パレート最適
a企業が生産要素を1単位減少させたときの補助金の増加分=それに伴う外部不経済によってb企業が得る収入の増加分
命題
外部性による市場の失敗は,ピグー的課税・補助金政策を適切に使うことで解消できる.
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外部性の内部化(Ⅱ)自発的交渉
部分均衡分析
被害者が権利を持っており,加害者が被害者を補償するケース
加害者にとっては,被害者の限界費用=RR'-SS’ (単位当たりの補償額)と自己の限界費用の和が限界便益DD'を上回る限り,生産を増加させるのが得である.したがって,供給量はxPとなり,パレート最適な点が実現される.
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加害者が権利を持っており,被害者が加害者を買収するケース
被害者にとっては,加害者の限界損失=DD’-SS’(単位当たりの買収金)が被害者の限界便益=RR’-SS’を下回る限り,買収を続けることが得.したがって,供給量はxPとなり,パレート最適な点が実現される.
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被害者の便益
加害者の損失
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コースの定理
加害者,被害者いずれの側に権利が与えられても,交渉の結果はパレート最適になる
定理の限界
当事者を明確に区別することが一般に困難
当事者数の増加 → 交渉のための費用が急速に増大
交渉のための取引費用が交渉による利益より大きい限り交渉は始まらない
交渉のための諸費用が十分低いときに限り,コースの定理は成立可能となる
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一般均衡分析(1) b企業に権利があるケース
a企業は単位あたり t 円の補償をb企業に与える
各企業の利潤
利潤最大の条件
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均衡
t の決定
→均衡=パレート最適
a企業が生産要素を1単位増加させたときの補償金増加分=それがもたらす外部不経済によってb企業が被る収入の減少分
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(2) a企業に権利があるケース
b企業がa企業に現在の生産量ya0から1単位
減らすごとに t 円の対価を支払って,生産を縮小してもらう.
各企業の利潤
利潤最大の条件
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均衡
t の決定
→均衡=パレート最適
a企業が生産要素を1単位減少させたときに要求する対価=それに伴う外部不経済減少によってb企業が得る収入の増加分
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命題(コースの定理)
取引費用が十分小さいとする.このとき,被害者,加害者いずれの側に権利があっても,自発的交渉の結果はパレート最適になる.