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第13 回北里疾患プロテオーム研究会 - jes1950.jp...報告されている(Biochimi自国Biophysic8 ACt8 (BBAJ, 1856・ 165, 2015 図1) 。 通常の免疫シス I舗側NIrter)

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第 13 回北里疾患プロテオーム研究会(平成 27 年度北里大学共同研究振興資金 (AKPS) 支援事業)

第 66 回日本電気泳動学会シンポジウム

実行委員長小寺義男実行委員 佐藤雄一,大石正道,松本和将

平成 28 年 3 月 25 日(金)

於北里大学相模原キャンパスL2 号館 4 階 410 号室

主催 北里大学理学部附属疾患プロテオミクスセンター共催 日本電気泳動学会

後援 日本プロテオーム学会後援 国際タンパク質化学構造解析・プロテオミクス学会

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第 13 回北里疾患プロテオーム研究会(平成 27 年度北里大学共同研究振興資金 (AKPS) 支援事業)

第 66 回日本電気泳動学会シンポジウム

プログラム

時間 演題名、講演者、座長 ページ

13:00 開会の挨拶 北里大学理学部 小寺義男

-13:05

13:05 日本電気泳動学会次期会長挨拶 北里大学理学部 大石正道

-13:10

第1 部北里大学におけるブロテオミクス研究 [13: 10-14: 10] 座長 。 北里大学理学部 大石正道

13:10 1 腫嬉関連自己抗体の検出に関する研究-13:40 北皇太学医療衛生学部 鉢村和男

13:40 2 がん悪性化に関わるチロシンキナーゼ基質群の同定4

-14:10 北皇太学医学部 堺|瑳一

14:10-14:20 休憩

第2部招待講演 Part1 [14・20-15:40] 座長 北里大学医療衛生学部 長塩亮

14:20 1. r卵巣明細胞癌の悪性化後継の解明を目指したりン酸化プロテオーム解析』7

-15:00 績浜市立大学先端医科学研究センター 木村鮎子

15:00 2. r領微量プロテオーム解析手法の開発-1細胞プロテオーム解析への銚戦-J10

-15:40 京都大学大学院薬学研究科 若林 真樹

15:40 -15:50 休憩

第2部招待講演 Pa比 2 [15:50-17:10] 座長 北里大学医療衛生学部 佐藤雄一|

15:50 3. rがんのコンパニオン診断と分子標的治療』11

-16:30 ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社 谷洋一

16:30 4. rヒト・インピトロプロテオームの構築とその利用J13

-17:10 産業技術総合研究所 五島 直樹

17:10-17:15 休憩

第3部特別講演 [17:15-17:50] 座長:北里大学薬学部 服部成介

17:15 『電気泳動と質量分析でどこまで疾患病態に迫れるか? -過去の事例から-J14

-17:50 横浜市立大学先端医科学研究センター 戸田年総

17:50 開会の挨拶 北里大学医療衛生学部 佐簸雄一

-18:00

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開会にあたって

北里大学理学部附属疾患プロテオミクスセンター・センター長

北里大学理学部 小寺 義男

本日は、年度末の大変お忙しい中、第 13 回北里疾患プロテオーム研究会・第 66 回日本電気泳

動学会シンポジウム合同研究会にご参加いただき、誠にありがとうございます。

北里疾患プロテオーム研究会は 2003 年に「疾患プロテオーム研究会Jという名前で第一回目を

開催いたしました。 その後、プロテオミクスへの関心の広がりとともに、大小様々な(類似名称の)研

究会が開かれるようになりました。 そこで、、 2005 年からは研究会の名称を「北里疾患プロテオーム研

究会」に変更して継続してまいりました。 皆様のご支援とご協力のもと、第 13 回を迎えることが出来ま

したことを大変熔しく思っております。 この場をおかりして深く御礼申し上げます。

今年は、特別講演として、長年、電気泳動ならびにプロテオミクスを牽引し、ただきました績浜市立

大学先端医科学研究センターの戸田年総先生に、「電気泳動と質量分析でど.こまで、疾患病態に迫

れるか? ~過去の事例から~Jと題してご講演いただきます。

また、第一部では、北里大学におけるプロテオミクス研究の紹介を、第二部の招待講演 Partl で

は、若手研究者を代表して木村鮎子先生(横浜市立大学先端医科学研究センター)にリン酸化プロ

テオーム解析、若林真樹先生(京都大学大学院薬学研究科)に 1 細胞プロテオーム解析について

お話しいただき、第三部の招待講演 Par怯では、谷洋一先生(ロッシュ ・ダイアグ‘ノスティックス)に

がんの診断と治療について、五島直樹先生(産業技術相が号研究所)に、ヒト・インビトロプロテオー

ムの構築と利用についてご、講演いただきます。

大変お忙しい中、ご講演をお引き受けいただきました講師の先生方に、この場をお借りして、厚く

御礼申し上げます。

本研究会は、分析技術、生命科学への応用、疾患の治療 ・診断の実現という様々な切り口から議

論し、 一つの分野では完結しないプロテオーム研究の現状、展望、課題について自由に討論し、経

験を交流する場として楽しんで頂けることを願って今後も継続していきたいと考えております。

引き続きご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

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電気泳動学会からのご挨拶

日本電気泳動学会 次期会長

北里大学連学部大石正道

このたび、第 13 回北里疾患プロテオーム研究会・第 66 回日本電気泳動学会シンポジウム

にご参加下さり、誠にありがとうございます。 また、本シンポジウムを立案され、日本電気

泳動学会と共催にして下さった、北里大学の小寺義男先生を初め関係者の方々に感謝申し上

げます。 本来ですと、日本電気泳動学会の現会長である横浜市立大学の平野久先生から挨拶

を差し上げるところですが、本シンポジウムは平成 28 年度の春季シンポジクムを 3 月に前倒

しして行うことになりましたため、次期会長に就任予定の北里大学の大石正道からご挨拶申

し上げます。

今回のシンポジウムでは、北里大学におけるプロテオミクスの研究紹介、 4名の方の招待

講演に続き、日本電気泳動学会の元会長で横浜市立大学の戸田年総先生が、「電気泳動と質量

分析で、どこまで疾患病態に迫れるか?~過去の事例から~J というタイトルで、特別講演

をして下さることになっていますので、皆様、どうか最後までお聞き下さるよう、よろしく

お願い申し上げます。

ところで、日本電気泳動学会は 1950 年に日本電気泳動研究会として設立され、翌年には機

関誌「生物物理化学」が創刊されましたので、 2016 年の今年は創立 66 周年になります。 本

学会では毎年春に春季シンポジウムを東京近辺で開催し、秋には総会を地方各地で開催して

参りました。 よ って、本シンポジウムはこれまで一度も中断されることなく無事に第 66 回を

迎えたことになります。

この 4 月から、日本電気泳動学会事務局は、横浜市立大学から北里大学理学部へ移転致し

ます。 それに伴い、学会事務局は小寺義男先生と医療衛生学部の長塩亮先生が担当されます。

現在、事務局の引き継ぎ作業を行っているところです。

また、今年の 8 月 26 日(金) ~27 日(土)には、北海道釧路市で第 67 回日本電気泳動学

会総会が、国立がんセンター研究所の近藤格先生を総会長として開催されます。 日本電気対〈

動学会のことを詳しく知りたい方、学会への入会を希望される方がいら っ しゃいましたら、

日本電気泳動学会のホームページ http: //www . j es 1 950 . jp/ をご覧ください。

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腫編関連自己抗体の検出に関する研究

北里大学医療衛生学部臨床検査学

鉢村和男長塩亮柳田憲吾萩生田大介前回忠計佐藤雄一

1. heterogeneous 系測定法による抗体検出の問題点

現在、 癌の発見・ 診断・治療効果の判定等のための補助手段として多くの腫蕩マーカーが

測定され、有用な情報として臨床側に提供さ

れている。 腫療マーカーのほとんどは抗原蛋

白 (TAAg) であり、良質で高親和性(高力

価)抗体が準備できれば、その検出はさほど

困難ではない。

一方、癌患者は TAAg が増加する前に腫

蕩関連自己抗体 (TAAb)を産生することが

報告されている (Biochimi自国 Biophysic8 ACt8

(BBAJ, 1856 ・ 165, 2015 図1) 。 通常の免疫シス

I舗側NIrter)情diω gE出

C�c eJ

- relat4掃Ag

舗町時

図1. TAAbと TAAg の経時的体内動態

テムがそうであるように、わずかな非自己(あるいは修飾)蛋白に対し Host は抗体を産生し、

“持続的"な抗原刺激があればより多くの抗体を量産する 。 TAAbは、患者が癌初期などで

TAAg が少ない段階であっても産生され続けら

れることにより、 TAAgが検出可能量まで増加

する前に検出でき、結果として癌の早期発見に

繋がる新たな腫君事マーカーとなり得る。

近年保険適用が認可された血中抗 p53 自己抗

体検査は、これまで測定されてきた“抗原"とは異

なり、“抗体"を腫湯マーカーとする先駆けである。

しかし抗体は抗体であるが故に一様ではなく、

抗原検出系では問題とならない“親和性の違い"

が存在する。 特異性は同一でも、患者間・患者

内で親和性の異なる抗体が混在し (Mol Jmmunol,

39: 801 , 2003 悶 2) 、それらをすべて検出できて

ZJす(b) o /9

~( /

図 2. 抗体の成黙過程と親和性

いるのか疑問が残る。 早期に産生される低親和性抗体が、 ELISA など heterogeneous な方法

では B/F 分離(洗浄)時に抗原から離脱してしまう可能性は否定できない。 この疑問は、我々

が追及している癌のより早期発見のための TAAbの検出には致命的な弱点、 となる。 そのため、

洗浄の必要のない抗体測定法(エパネセント波励起蛍光法 :EN 法)に着目した。

2. ELISA (日常測定法)結果との比較による EN 法の評価

EN 法を評価するため、乳癌および大腸癌患者 207 例で抗 p53 抗体測定結果を ELISA と

比較した(図 3) 0 ELISA結果は、北里大学病院臨床検査部による測定結果を用いた。 相関

1

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ヨ田

.一一一一一一

図3. EN法とELISAによる

抗p53抗体測定結果の相関

n = 2fJ7 r = 0.862

1田 2∞

ELlSA (U/ml)

1・

7臼)0目

仰向

2()()()()

副l<X回

soαm

係数は 0.859 と良好であり、 EN 法結果の

正確性を確認、 した。

一方で、 ELISA法陰性 182 例のうち EN

法で 22 例 (12.1%) の陽性例が確認され

た。 逆に、 ELISA 陽性で EN 法陰性例が

3 例 (12.0%) 確認された(表1) 。 ただ、

そのうち 2 例は 2.0Ulml 以下(基準上限

l.3U/mOの弱陽性例で、あった。 逆軍隊例も

確認されたが. EN 7:去は ELISA との相関

係数も良好で,抗 p53 抗体の検出におい

て ELISA と同等,低濃度域ではそれ以上

の性能を持った方法と評価できる。

表1.抗 p53 抗体測定における

EN法と ELISA法の陽性率比較

EN

3 乳癌患者の腫療関連自己抗体

手L癌患者 141 例について、抗 p53 抗体のほか

Estrogen Receptor (ER) 、 Progesterone Receptor

(PgR) 、 HER2、 CA15'3、 CEA、 CYFRA の 6 種

の TAAg に対する患者間 TAAbを比較した(図 4) 。

患者間で抗体価の違いが観察され、同一患者内で

も抗原によって抗体価の違いが確認できる。

抗 p53 抗体陰性例でも、他のいずれかの抗体が

陽性なのは 39.5% に認められ、自己抗体の

combination assay は、抗p53抗体のみの時の不十分な癌検出感度を糟加させた。 7種の TAAb

による∞mbination assay で、どれか 1 種以上が陽性となった症例は 52.5%であった。

陰性

160

22

ELlSA

陽性

.p53

.HER2

• CA15-3

.CEA

.CYFRA

.ER

.PgR

時……刊

明8H

間町

一心的

4αXlO

35∞0

3αXlO

25∞0

2αXlO

15000

1αXlO

5000 。

図 4 乳癌息者の患者別 TAAbの比較

2

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4. 早期肺癌患者(ステージ1)の腫籍関連自己抗体

早期肺癌患者 35 例(腺癌 (AC) 27 例、扇平上皮癌 (SCC) 8 例)について、乳癌同様 7

種の自己抗体を同時測定した(図 5) 。早期肺癌患者においても、 combination assay による

抗体陽性患者は 54 .3% と高率に認められた。 AC と SCC との抗体陽性率の差異は、 SCC の

例数が少なかったため今回の結果からだけでは両者に特徴的な評価は厳しいが、両者とも

CYFRA に対する自己抗体が高率に認められた。

35∞0

3αJOO

25∞0

20∞0

15∞o

図 4 早期肺癌患者の患者男IJ TAAb の比較

5 . 抗 p53 抗体のみと多種同時測定時のバイオマーカー性能比較

35

.TP53

・ ER

・ PGR

・ HER2

.CEA

.CYFRA

・ CA15-3

乳癌患者において、 7 種の自己抗体の多種同時測定は、抗 p53 抗体のみの時の感度を 2 倍

以上改善 した。また早期肺癌患者でも多種同時測定すると、その半数以上から TAAbが確認

された。

6 . まとめ

・ 癌患者は高頻度に TAAb を産生

• EN ì':去アレイ システムによる TAAbの combination assay は癌の検出感度を上昇させ

早期発見の補助的血清検査として有望

・ 自費癌検診も可能な低価格(多種同時測定が数千円で実用化可能)

・ 癌検診 ・ 人間ドック等への導入

. 自己免疫 ・ 神経免疫疾患等,癌以外の難治性疾患の早期診断補助

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がん悪性化に関わるチロシンキナーゼ基質群の同定

北里大学医学部生化学

堺隆一

腫療の発生、進展において EGFR、 Met などの受容体チロシンキナーゼや Src ファミリーな

どの非受容体型チロシンキナーゼの活性化が悪性形質の獲得に深くかかわることが明らかに

なっている。 現在臨床に導入されている分子標的薬の多くがこのチロシンキナーゼを標的と

して阻害する分子であるが、最近では分子標的薬の長期使用によりキナーゼ自体の変異、側

面IJ シグナノレや下流シグ、ナノレの経路の活性化などにより薬剤耐性ができることが治療における

深刻な問題になっている。

臆蕩の悪性化に伴うチ

ロ シンキナーゼの活性化

は、右図のように自己リン

酸化や基質蛋白質群のチ

ロシン リン酸化を介して

チロシンリン酸化依存的

な蛋白質ー蛋白質結合を

引き起こし、細胞内蛋白質

の局在の変化や下流の酵

素群の活性化といった一

連のいわゆる「悪性化シグ

ナノレJ の引き金となる重要

チロシンリン酸化による腫婦の地殖 ・転移の制御

な変化であると考えられる。腫療で活性化したチロシンキナーゼの特異的な基質分子を同定

し、その制御する細胞機能や腫蕩と関わる特性を明らかにすることは、副作用の少ない分子

標的薬の開発につながり、またキナーゼ限害剤に対する薬剤耐性を克服するためにも重要で

あると考えられる。

我々は 1990 年から当時国内外で追い求められていた活性型 Src キナーゼの主要基質分子

p130 の同定に着手し、数年にわたる条件検討ののち、アダプター分子 Crk との結合を利用し

てリン酸化した p130 を効率よく精製する手法を樹立した。 精製で得られた数μg の p130 か

ら決定した部分アミノ酸配列情報により p130 をクローニングし、 p130Cas(Cas:

Crk-associated substrate of Src kinase) と命名して 1994 年に世界に先駆けて報告するこ

とができた (Sakai R et al , BUBO J, 1994)0 Cas は SH3 ドメインに加えて Crk の SH2 との

結合に関わる YxxP 配列を 15 回繰り返して持つ全く新しい構造のドッキング蛋白質であり、

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細胞 細胞外マトリックス聞の接着においては接着班の主要構成要素としてインテグリンや

Src のシグナルを伝える分子であることを明らかにした (Nojima Y et a1 , J Biol Chem 1995) 。

その後ノックアウトマウスから樹立した Cas を欠損する線維芽細胞を用いて Cas が Src によ

る線維芽細胞のがん化に必須な蛋白質であること (Honda H et a1,焔 t. Genet 1998) 、細胞

の運動、浸潤の際の牽引力の分子センサーであること (Sawada Y et a1 , Cell 2006) など多

くの こ とを明らかに

してきた。

この蛋白質の精製

の過程で、右図に示す

ようなチロシンリン

酸化蛋白質の他分子

との親和性を用いた

2 段階精製法につい

て独自の手法を樹立

した。 この手法を質量

分析に応用して、留学

から戻った 2000 年か

らは国立がん研究セ

ンター研究所で、転移、

浸潤に関わる Src フ

/¥¥

附・Eポμ圃...... 帽による湾出

JD/VJ PAGEI<:て倹出・切り出し

通常2l:tの比較で行う・高転移性四低転移性の蔓犠-噌殖因子や阻害剤添加の有曹E.議剤耐性按圃銀縁

一一一

~~

質量分衡によるリン.化宮ンパヲ貨の同定

+分子量.締異..体信どによる確認

腫燭悪性化に関わるチロシンリン酸化蛋由貿群の同定

ァミリーキナーゼの新規基質分子群の同定、神経芽麗における ALK キナーゼの基質蛋白質群

の同定、スキルス胃がんにおける Met や FGF 受容体の基質分子群の同定など複数の系でチロ

シンキナーゼの基質分子の解析を行ってきている。

過酸化水素水や紫外線刺激など酸化ストレスに応じて細胞内で Src ファミリーキナーゼが

活性化することが知られているが、胃がん細胞などにおいて酸化ストレスの直後から Src に

より強いりン酸化を受け、細胞生存シグ、ナルを媒介することで腫蕩のストレスに対する抵抗

性をもたらす新規分子 Ossa/c90rfl 0 を同定した (Tanaka M et a1 , Mol Cell Biol 2009) 。

また悪性腫療が遠隔転移するためには、浮遊状態で生存するいわゆる足場非依存性が必要

であるが、肺がん細胞株においてこの足場非依存性の強いグ、ループの細胞株で共通してチロ

シンリン酸化する Src 結合蛋白質を質量分析により同定したところ、当時まだ、機能のわかっ

ていない CDCP1 という膜蛋白質であった。 CDCP1 は実際にがん細胞が足場非依存性に生存す

るために重要な蛋白質で、 in vivo で遠隔転移や腹膜揺種に関わること、肺がん、目撃がん、

腎がんなど多くの固形腫療の臨床症例で CDCP1 発現の高い群が有意に予後不良であることな

どを示した (Uekita T et a1 , Mol Cell Biol 2007; Am J Pathol 2008; Mi yazaya Y et a1 Cancer

Res, 2010)0 CDCP1 は細胞膜上で PKCõ とリン酸化依存的な結合をし、この結合が足場非依存

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性など臆蕩の悪性化に関わるシグナルを媒介することが明らかになっている。

右図のようにこれらの p130Cas 、 CDCP l 、 Ossa はいずれも Src ファミリーのN末の制御領域

に結合して、腫蕩における Src ファミリーの活性化に寄与することを示した。

腫揚特異的な Src ファミリー活性化分子は、これ以外にもまだ多く存在することがこれま

での解析から示唆されており、その幾っかは既に質量分析で同定して機能解析が進んでいる。

このような分子群の同定には、蛋

白質問一蛋白質問の結合に基づい

た手間と経験を要する過程が必要

とされ、このような活性制御分子

の絶対量が少ないことと相候って、

他の分野に比べ解析のペースが上

がらない。一方、 Src など特定の分

子との結合で絞り込まないチロシ

ンリン酸化プロテオームについて

も試みてはいるが、どうしても機

能的に重要な蛋白質の選択の段階Srcファミリーキナーゼの基質群による悪性形貨の誘導

で研究が滞りがちになる。 我々の Src ファミリー基質群の探索を例に、この分野の研究の問

題点と発展性について議論したい。

6

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卵巣明細胞腺癌の悪性化織繊の解明を目指したリン酸化プロテオーム解析

横浜市立大学先端医科学研究センター

木村鮎子

【はじめに】

癌の悪性化は、癌細胞が変異を蓄積し、より悪性度の高いものが選択されることによって

進行していく 。 多数の要因が複雑に関わり合う癒の悪性化機構の全貌を理解するには、ゲノ

ムレベルの変異や遺伝子 ・ タンパク質の発現量変化に加え、タンパク質の質的変化を

もたらす翻訳後修飾レベノレの変化に着目した解析を行うことが重要となる。その中でもリン

酸化修飾は、シグナル伝達やタンパク質問相互作用の制御など、様々な重要な生体内機構に

関わり、その異常が痕化の直接の要因となる例が数多く報告されていることからも、癌の

悪性化機構の研究において重要な意味を持つと考えられる。

卵巣明細胞腺癌 (Ovarian clear cell carcinoma: OCCC) は、癌治療の第一選択薬として

用いられるととの多い白金製剤系の抗癌剤に耐性を有し、さらに、高い転移 ・ 再発率を有す

るなど、多様な卵巣癌組織型の中でも特に高い悪性度を示すことから、治療が困難となる例

も多く、有効な新規治療法の開発につながる病態機構の解明が切に望まれている。

本発表では、 OCCC の悪性化に関わるタンパク質リン酸化修飾の同定を 目指して、卵巣癌

組織由来の培養細胞株を用いたリン酸化プロテオーム比較定量解析と、その結果に基づいて

リン酸化修飾部位変異導入細胞株の解析を行った結果などについて報告する。

1.卵巣癌組織由来の熔養細胞株を用いた リ ン酸化プロテオームの比較定量解析

OCCC を含む複数の卵巣癌組織型に由来する 11 種の培養細胞株の抽出液を試料として、

Ti02 カラムを用いて濃縮したリ

ン酸化ペプチドを

LTQ'Orbitrap Velos 質量分析計

で分析し、 リン酸化プロテオー

ムの比較定量解析を行った。 結

果、 OCCC 細胞株では、癌の悪

性化との関わりが予想される 、

転写や細胞間接着、細胞骨格の

再構成などに関わる多数のタン

パク質のリン酸化ペプチドレベ

ルの減少が検出された。演者ら

図1 . MRM ;去によるうZンパク質リン酸化レベルの測定

lC >---<

MS

検出計zt料+ 司þ

イオン化 ..

. :・→・E- ・ ←イオン選択① 断片化 イオン選択②

| 非リン磁化ペプチド量 I I リン厳化ペプチド量 | 圃圃園回盛田鹿盟国国圃・

11+ ::11 ・1凹 1

ー拡

7

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はこのうち、 SWI/SNF (SWItch/

Sucrose NonFermentable)クロマ

チン再構成複合体の構成因子であ

り、 occc における遺伝子変異が

多数報告されている癌抑制因子

ARIDIA と、複合体

コアサブ、ユニット Brgl の 2 つの因

子に着目した。免疫プロット法によ

るタンパク質量の確認と、三連四重

極型質量分析計 (QTRAP5500)を …調傷

一…叫…可

!'-.... 癌の仰制

用いた MRM ⑪1ultiple reaction

momωring)法によるリン酸化/非リン酸化ペプチドの同時定量によるタンパク質リン酸化レ

ベル解析(図 1)を行ったところ、 occc 細胞株の半数では ARIDIA のタンパク質レベルが著

し く 減衰もしくは消失しており、残り半数では ARIDlA • Brg 1 の正常な発現が見られるもの

の、 Brgl のヒストン結合ドメイン近傍のセリン (SerI452)におけるリン駿化レベルが、他の

組織型の 10%以下にまで低下していることが分かつた(図 1) 1)。

本結果を元に、合成リン酸化ペプチドを抗原とする抗リン酸化 Brgl 抗体を作成し、 occc

細胞株 10 種、 occc 以外の組織型の卵巣癌細胞株 5 種、卵巣以外の組織の癌に由来する細

胞株 11 種、非癌細胞株 1 種を用いて免疫プロ ッ ト解析を行ったところ、 Brgl のリン酸化レ

ベル低下は、 occc 細胞株とごく 一部の癌細胞株においてのみ特徴的に見られる現象である

ことが確認された。

これらの結果から、 occc では ARIDIA の欠失に加えて、 Brgl のリン酸化レベノレが低下

しており、このことが SWIISNF 複合体の機能低下を引き起こし、癌の悪性化を進展させる

要因のーっとなっている可能性が示された(図 2)。

2.Bre: l リン酸化部位変異導入細胞株を用いた解析

これまでにも、微々な組織に由来する癌組織や癌細胞株を用いた解析により、 ARIDIA を

はじめとする SWIISNF 複合体因子の変異や欠失による SWIISNF 複合体の機能低下が、

癌化や癌の悪性化の抑制に関わる種々のプロセスを阻害する事例は多数報告されている 2)。

一方で、 SWIISNF 複合体を構成する約 30 の因子においては、リン酸化・アセチル化を含む

200 箇所近くの翻訳後修飾部位の存在が知られているが (Unipro低B:

http://www.皿iprot.org/)、それらの機能や癌との関連についてはこれまでほとんど情報がな

かった。 そこで演者らは、上記の解析で見出された Brgl のリン酸化 (Serl452.p) に着目し、

HEK293T 細胞を用いて、リン酸化部位のセリンをアラニン(リン酸化欠損変異)もしくはア

スパラギン酸(リン酸化擬態変異)に置換する変異を導入した安定発現細胞株を構築し、

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解析を行った。

その結果、 Brg1 リン酸化欠損変異株では、 野生株 ・ リン酸化擬態変異株と 比べて、 細胞

増殖の若干の充進が観察されたのに対し(> l.25-fold, p < 0 _05)、白金製剤IJ (シスプラチン ・

カノレボプラチン)に対する薬剤耐性能や細胞遊走能などに、里子生株 ・ 変異細胞株間での有意

な差異は検出されなかった。さらに、これらの細胞株を用いて、 Brg 1 の リ ン酸化状態の変化

による リ ン酸化プロテオーム変動の解析を試みたところ、 Brg1 リン酸化欠損 ・ 擬態変異株に

おいて、細胞の増殖や形態変化に関わるタンパク質の転写や活性を調節するいくつかのタン

パク質に由来するリン酸化ペプチドの量的変動が検出された (ANOVAp < 0_05)。 この中に

は、 p53 の活性を抑えて細胞増殖を充進させるとの報告がある、 p53 結合タンパク質も含ま

れており、 OCCC の悪性化に関わる要因のーっと して、 Brg1 のリ ン酸化が p53 の癌抑制活

性を制御する機構が存在する可能性が示された。

References

l. Kimura, A_ et aL: J Prot泡ome Res , 13 ・ p_ 4959-69_ (2014)

2_ Weissman, _゚ et aL Cancer Res, 69 ・ p_8223 ・ 30 _ (2009)

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極微量ブロテオーム解析手法の開発-1 細胞プロテオーム解析への銚戦~

京都大学大学院薬学研究科、 JST さきがけ

若林真樹

近年成熟期を迎えつつあるプロテオーム解析技術は、基礎 ・ 臨床医学の様々な分野で実用

化され始めている。一方で、 1 分子計測や 1 細胞解析に関わる様々な高感度解析技術の汎用

化に伴い細胞の個性や多様性に関する知見が求められている昨今、多種、多数の細胞の平均

値としてしかデータを取得できないことはしばしば問題として指摘される。 また、ゲノム、

トランスクリプトームをはじめとするオミクス解析分野でも 1 細胞解析技術の実用化が進ん

でおり、対応する 1 細胞プロテオーム解析技術を確立することで、 1 細胞レベルでの統合的

オミクス解析が可能となれば、生命科学研究に与えるインパクトは非常に大きいものになる

と期待される。 単一細胞内の全タンパク質のシク守ナルを同等に僧幅することが難しい現状で、

1 細胞プロテオーム解析を達成するためには、試料のロスを極小化し、液体クロマトグラフ

ィーー質量分析計 (LC-MS) 測定系を極限まで高感度化する手法の開発が必須である。

本発表では、サンプル調製から質量分析計による測定まで各段階において技術開発を重ね、

極微量臨床試料のプロテオーム、リン酸化プロテオーム解析が可能となるように計測システ

ムの高感度化を試みた経緯を紹介するとともに、新しく開発した 1 細胞サンプル調製技術を

組み入れることで構築した単

一細胞プロテオーム解析技術

(図1)を紹介したい。 また、

本手法を用いて ApJysia

CaJifornica から採取した各

種神経細胞の 1 細胞プロテオ

ーム解析を行った結果を紹介

する。 A. CaJifornica は神経

生理の 1 細胞解析モデ‘ルとし

て用いられる直径 200 llill

程度の細胞であり

Mass spec

nanoLC

Sample-prep column

mixing

図1.単一細胞プロテオーム解析システムの概要

UniprotKBfI'rEMBL に登録される 635 タンパク質 (2016 年 1 月現在)のうち、少なくとも

180 以上、 NCBInr に登録されるタンパク質のうち 1000 以上のタンパク質を 1 細胞試料から

同定することに成功している。本シンポジウムでは、当技術を含めた高感度プロテオーム解

析技術に関する今後の展望等についてもご議論頂ければ幸いである。

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『がんのコンパニオン鯵断と分子標的治療』

ロシュ・ダイアグノスティック(縁) L鋼部

谷洋一

病理検査 ・ 診断の現場では、 一般的なヘマトキシリン色素とエオジン色素を使用した HE

染色による形態学的な検索を主体として、細胞 ・ 組織成分や細胞に感染した細菌 ・ カビを染

め出す特殊染色に加えて、細胞に局在する腫蕩抗原等を抗原に特異的な抗体で検出する免疫

染色法を利用して悪性腫療の診断や鑑男IJ業務が行われています。 また、白血病 ・ 悪性リンパ

腫をはじめ固形癌でも発癌に関与する種々の遺伝子増幅や転座 ・ 欠失のような遺伝子異常が

報告され、これらの遺伝子異常を in situ hybridization で検出する FISH/DISH/CISH 法や点突

然変異を検索するために核酸を増幅させる PCR 法も病理検査 ・ 診断に導入されてきました。

特定の癌種のみに認められる遺伝子異常から生じた異常タンパクや過剰に発現したタンパク

が“がん"細胞の増殖、転移、血管新生、アポトーシス回避に関連するため、治療の標的と

して注目されており、数々の分子標的治療薬が開発されています。

近年、これらの分子標的治療薬の医薬品承認とともに一人一人の患者さんに適した個別化

医療が推進されています。 分子標的治療薬はモノクローナノレ抗体を利用したキメラ抗体、ヒ

ト化抗体、ヒト抗体を含b抗体薬とチロシンキナーゼ等の酵素阻害剤に大別され、治療薬の

選択には治療効果を予測するためにコンパニオン診断(CoDx, CDx)が実施されるようになり

ました。 乳癌の治療には上皮成長因子受容体四2 を欄旬こした抗体薬いーセプチン、ノレジェッ夕、

カドセイラ等)州吏用さ九日本人の砲週の第一イ主である崩暗には厄R ファミリーの中の民間のチロシン

キす」ゼを樗動としtd摩素阻害薬邸内 TKI(イレッサ、タルセパ、ジオトリフ年紛糾吏用されてし、ます。 阻R2

検査として、ホノレマリン固定パラフィン包埋した病硝脳級(阿PE)検体を使ったHER2タンパクの過寮院現を

判定する免疫染色法による四2 タンパク検査、あるいは四2 遺伝子の増幅を判定する in situ

hybridization 法を未明した肥R2遺伝子検査が実施されて、四2 タンパクi岬院現あるし、は回2遺伝子

培幅のある阻R2陽性の患者さんに四2 分子欄"Jì繍料育つれています。 ハーセプチンを他の抗癌剤ドセ

タキセルと併用した場合の奏効率尚司 40略ですが、カドセイラはさらに齢、奏努民 48.0怖が報告されてい

ます。

日本人の持!神棚包性所轄(舵LC) 嚇甘 50刊に EGFR 遺伝子の変異が報告されてし、ます。腕稿肝E検{材も

マクロダイセクションを行って腫猿細櫛ßを回収し、核酸の抽出をしてリアルタイム町出こよって邸内

遺伝子変異検査が実施されます。 検査の結果、邸内遺伝子変異(酬がエクソン 19 の欠失あるいはエクソ

ン 21 の凶問)がある患者さんには邸内引I による分子欄句糊寮が開始されますユ 化学療法による治

療歴のない EGFR 遺伝子変異陽性の愚者さんにおいて、 奏効率は 7 1. 2%ですが、湖離9

ヶ月から 14 ヶ月の問に患者さ人泊 50-側に回開ー閣に対する耐由宣伝子変異(T7制)が生じる事が知ら

れています。 T7ωMf餅繭推変異が生じた魯者さんには再度ノえイオプ、ンー(生駒方市わ払T790M闘企の

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患者さんには第三世代の 日間一花I といわれるタグリ ッソ(Osi冊目inib) の'l~擦が違切そされます二ノtイオプ

シー(生駒 キサ同粕句手術によって細包あるい時H織と して検体料専られる場合は上述の阿PE検体を対象

と した遺伝子検査は有効ですが、 バイオプシ」や刊すができない約兄の患者さんでは、遺伝子検査の実施

が難しくなります。

品丘、癒綱包からは血中に放出された鵬、 cffiNA(Cell free 蜘)と附設もる血中を循環する蜘が発

見さ才k 血液検体を手il用して遺伝子変異を検出するリキッドバイオプシ」が新たな検査として注目を浴び

ています。 治療中の患者さんから 2度目のバイオプ、ンーを実施する事が困難な場合もあり、 179側変異の

検出が難しいとされてきましたが、血策検体から邸内遺伝子変異検査が可能になりました。今後綱録郎裁

を必要としない非侵襲性で簡易なリキッドバイオプ、ンーを手l聞した様々な遺伝子変異の検出キットが開発

さ九沼産なコンパニオえ術、 f餓寮効果のモニタリング、なら前こ薬師、旋回漢の早期発見に貢献する

ことが第持されますユ

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ヒト・インピトロ・プロテオームの構築とその利用

産業妓術総合研究所 倉l薬分子プロファイリング研究センター

五島直樹

プロテオーム研究は細胞を構成するタンパク質群の研究だけにとどまらず、プロテオーム

を基盤とした新たなオミックス研究に発展 してきている。 細胞構成タンパク質は下図ー左の

2 次元 (20) 電気泳動ゲルを見てわかるように量的に不均一なタンパク質群で構成されてい

る。 プロテオームを基盤とした研究展開を考えた場合、均一なプロテオームが必要であり、

カタログ化することが重要であると考えた。 我々はヒトタンパク質発現 リ ソース (HuPEX、

Human Proteome Expression Resource) を利用して網羅的にタンパク質合成を行い、インピ

トロのプロテオームを構築した。 さらに、このインビトロ ・ プロテオームを基板にアレイ化

したプロテインアレイを作製した(下回一右) 。

{不鈎ーブロテオーム〉 {均一ブロテオーム}例タンパクチップ

現在、プロテインアレは未変性状態でアレイ化するアクティブアレイと 1 次構造の状態で

アレイ化する変性アレイを作製しており、これらを用いた最新の成果を紹介する。

1) Naolく i Goshima et al. Human protein factory for converting the transcriptome into

an in vitro-expressed proteome. Nature Methods. 5 (12) :1011-7 (2008)

Keywords in vitro proteome, protei n-array,トluPEX, cDNA

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電気泳動と質量分析でどこまで疾患病態に迫れるか? -過去の事例から~

機浜市立大学先端医科学研究センター

戸田年総

1995 年に最初に誌上発表されたプロテオーム解析は、二次元電気泳動で分離したタンパク質

スポツトをゲゲ、ル内で

j法告は、翻訳後修飾を受けたタンパク質をインタクトな状態で分離分析することができる利点

がある反面、再現性の高い二次元電気泳動パターンを得るには熟練を要することや、自動化

が困難でスループットが低いと いう欠点、もあった。 これに対し、電気泳動を省いて試料中の

すべてのタンパク質成分をあらかじめトリプシンなどで消化し、得られたペプチド混合物を

MS/MS 解析するショッ トガン法が登場すると、自動分析が容易に行なえることやスループッ

ト が高いこと などが評価され、多くの研究者がショッ トガン法を実施する ようになった。 し

かしショットガン法では、始めからペプチド断片化して解析するため、スプライスバリアン

トや多重に翻訳後修飾を受けたタンパク質を元の姿のまま解析するには不向きであることな

ど欠点もある。 そこで本シンポジウムでは、 電気泳動と質量分析の組み合わせによるプロテ

オーム解析でどこまで疾患病態の理解に迫れるのか、過去の研究事例から検証してみたい。

電気泳動の最大の利点は、タンパク質を消化せずに分離分析できることであるが、ウエス

タンプロットやレクチンプロット、 リガンドプロットなど特異的な検出を行なえることも大

きな利点である。 自己免疫疾患の一つである橋本病(慢性甲状腺炎)では、患者血清中に抗

サイロク企ロプリン抗体や抗甲状腺ペルオキシダーゼ、抗体が出現し、これが甲状腺炎を引き起

こす原因になっていると考えられているが、さらに重篤な脳炎(橋本脳症)を合併すること

があり、早期に診断し治療方針を決定するために脳炎を引き起こす原因 と なっている自己抗

体を見つけ出し、その標的抗原を明 らかにすることが望まれていた。 そこで熊本大学の荒木

令江博士らは九州大学の越智博文博士らとの共同研究で、肺炎により死亡した患者の病理解

剖脳組織タンパク質を二次元電気泳動展開し、橋本脳症の患者血清でウエスタ ンプロット し

たところ、分子量が同じで等電点が異なる一連のタンパク質スポッ トが患者血清と反応する

ことを見いだした。 そこでそれらのスポットを切り 出し、東京都健康長寿医療センター研究

所の我々のラボ(産学公連携プロテオーム共同研究センター)でゲル内消化し、 MALDI "TOF

質量分析、 Mascot 検索 (PMF) を行なった結果、すべて 臼エノラーゼであると 同定された。

さらに興味深いことに、 抗ヒト a エノラーゼ ・ヤギ抗体を用いてウエスタンプロットを行っ

たところ、酸性等電点側に、橋本脳症患者血清と は反応 しない臼 エノラーゼスポットが存在

することがわかり、 橋本脳症における自己抗体の生成には何らかの翻訳後修飾が関わってい

ることが示唆された。 また、 リコ ンビナント・ヒト aエノラーゼに対するウエスタンプロッ

ト解析を行なったところ、ステロイ ド剤奏功性の橋本脳症患者では抗 a エノラーゼ抗体が高

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値であるのに対し、ステロイド剤不応答の症例では抗臼エノラーゼ抗体が陰性であった。 ま

た、脳症を伴わない橋本病患者および健常者では抗日エノラーゼ抗体が低値または陰性であ

った。

大部分の α エノラーゼは細胞質ーに局在し、解糖系の酵素として機能していると考えられて

いるが、神経細胞においては細胞膜上にも存在し、プラスミノーゲン結合活性を示すことが

知られており、橋本病患者の一部において何らかの原因で生じた抗aエノラーゼ抗体(自己

抗体)が神経細胞の膜上の aエノラーゼと反応することによって脳炎が引き起こされたもの

と考えられる。また、急性小脳失調症患者においても抗N 末端 a-エノラーゼ抗体の出現をみ

とめた症例が報告されており、橋本脳症との関連性が示唆されている。

電気泳動と質量分析によるプロテオーム解析は、ショットガン法に比べるとスループット

が低く網羅性の点でも劣るが、この他にもダウン症における心奇形の発症メカニズムの解明

や、アルツハイマー病患者脳で増加するシトノレリン化タンパク質の同定など様々な疾患にお

いて病態の解明に寄与しており、今後さらに、 Phos -Tag 親和電気泳動と質量分析の組み合わ

せによるプロテーム解析など、電気泳動の利点を生かした研究が進められることによって、

ショットガン法では見つけにくいニッチな領域での疾患病態の解明につながる こ とが期待さ

れる。

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