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マクロ経済学
第16回 金融政策(3) オペ
本日の講義は,
(1)金融政策の仕組み ⇒金融市場への資金供給
(2)中央銀行による金融政策により,どの程度の資金供給が行われるのか ⇒貨幣乗数
(3)中央銀行による資金供給はコントロール可能なのか
を扱います.
金融政策の目的
・物価の安定を通じて,完全雇用,国際収支の均衡の実現を図る ・近年の操作目標では,短期金利(日本ではコールレート,アメリカ
ではフェデラル・ファンズ・レート)が利用されている. ⇒日銀の量的緩和政策(2001年3月19日~2006年3月9日)では準備預金を利用
政策手段 最終目標中間目標操作目標
(運営目標)
・公定歩合操作
・公開市場操作
・預金準備率操作
・物価安定
・完全雇用,経済成長
・国際収支,為替安定
・長期金利,貸出金利
・マネー・サプライ
・貸出額
・コールレート
・マネタリーベース
・準備預金(日銀当座預金)
金融政策の手段 (1)
①公定歩合操作:中央銀行貸出の金利 1. 公定歩合とは中央銀行が民間銀行に貸出を行う際の利子率 2. 公定歩合操作⇒中央銀行からの資金を借入れ(中央銀行貸出)を変化
⇒民間銀行の与信態度を変化⇒企業・家計の行動に影響を与える 3. かつては金融政策手段の中心的な存在.金融自由化を背景に公定歩
合と他の金利との関係が希薄 4. 95年3月以降短期金融市場の金利であるコールレートに影響を与える
政策に変更している
金融政策の手段 (2)
②公開市場操作:民間銀行が保有する手形,国債などの取引 ・ 民間銀行が保有する国債や手形などの取引を通じて,ハイパ
ワード・マネーを変化させ,その結果として民間経済主体が保有する資金量(マネーサプライ)を変更させるもの
買いオペレーション⇒金融緩和効果 民間銀行が保有している国債や手形を中央銀行が購入 売りオペレーション⇒金融引締効果 中央銀行が保有している国債や手形を民間銀行が購入
金融政策の手段 (3)
③法定準備率操作:中央銀行に預ける準備預金 ・準備率の逆数 ⇒信用創造の規模 1. 民間銀行は保有する預金の一定割合以上を無利子で中央銀行に預けるこ
とが義務付けられている 2. この一定割合のことを「準備率」,預け入れなければいけない最低金額を
「法定準備預金額」あるいは「所要準備額」と呼んでいる. 3. 預金準備率にしたがって,民間銀行は保有する預金のうち,法定準備預金
分を差し引いて運用(貸付や有価証券への投資)を行い,民間銀行として利益を得ている.しかも,準備預金は無利子であるため,準備率を変更させることは,銀行の与信態度を変更させることにつながる.
4. ただし,実際の政策としてはほとんど利用されていない.
金融政策の手段
④外国為替市場への介入:外国為替市場の安定化のための介入 ・円買いドル売り介入:売りオペと同じ ・ドル買い円売り介入:買いオペと同じ ⇒ この効果を無効とする「不胎化介入」 1. 外国為替市場への介入(正確には「外国為替平衡操作」という)とは,通貨
当局が,外国為替相場の安定を目的として外国為替市場で通貨間の売買を行うことをいう.
2. 日本の場合,為替介入は財務大臣の権限に属し,日銀が財務大臣の代理人として,財務大臣の指示に基づいて為替介入を実施している.
3. 一般的には,為替介入によって生じる自国内の貨幣供給量の変化を回復させる公開市場操作などを行なっている.これを不胎化オペレーション(介入)という.
金融政策の波及経路 (金融緩和の場合) 1. 短期金利の引下げ(ハイパワード・マネーの増加) 2. 長期金利など,他の金利の低下 3. 投資意欲などを喚起 ⇒投資の増加 4. 需要の乗数効果を通じた拡大 ⇒ Yの増加=取引動機による貨幣
需要の増加 5. マネーサプライの増加 (貨幣乗数)
金融政策の波及経路(緩和政策の場合)
ハイパワードマネー供給増加
預金準備率引き下げ
短期金利引き下げ
長期金利低下
マネーサプライ(資金供給)
(=銀行貸出)増加
株価上昇
実質金利低下(=調達コスト低下)
住宅投資増加
住宅投資増加
企業収益回復
設備投資増加
<中間目標>資金需要
増加
民間消費の増加(資産効果等)
中央銀行による資金供給の効果 (貨幣乗数) (貨幣乗数の導出)
1) ハイパワード・マネー = 現金通貨+民間銀行からの準備預金( RCH += )
2) マネー・サプライ = 現金通貨+預金( DCM += )
3) 現金性向 = 現金預金比率×預金( DC α= )
4) 準備預金額 = 預金準備率×預金( DR λ= )
ここで,上記4つの関係式を整理すると,
( )( )λαα
λαα
++
=++
=++
=DD
DDDD
RCDC
HM 1
←( DDM += α , DDH λα += )
これより,貨幣乗数は以下の通りとなる.
MMλα
α++
=1
⇒ 貨幣乗数=λα
α++1
信用乗数と貨幣乗数の相違
α=0であれば同じ
中央銀行のコントローラビリティ(1)
バブル崩壊後,金融危機(1997年)が起こる前までに,1975年程度の水準(10倍程度)まで低下
貨幣乗数の推移
▲30.0%
▲20.0%
▲10.0%
0.0%
10.0%
20.0%
30.0%
40.0%
7101 7401 7701 8001 8301 8601 8901 9201 9501 9801 200101 200401 200701 201001(四半期)
(前年同期比)
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
(信用乗数)
貨幣乗数
マネタリーベース平均残高(準備率調整後)
マネーサプライ(マネーストック平残)
(注)貨幣乗数は、M2/マネタリーベースとして算出。季節調整値を用いた。(出所)日本銀行「マネーストック」
中央銀行のコントローラビリティ(2)
(過去の教訓:80年代の米国) 短期金利は目安を失って乱高下,
金利が高水準かつ不安定化 ⇒ 商業銀行のプライムレートの変
更回数の増加 78,79年は年間15回程度
→80年38回
金融政策の変更とFFレート,実質金利の推移
-5
0
5
10
15
20
25
7901 7905 7909 8001 8005 8009 8101 8105 8109 8201 8205 8209
(年月)
(%)
F/Fレート
実質金利
(日銀理論)
・ そもそもハイパワード・マネーの制御は困難 ←日々の金融調節の結果,受動的に決定される
↑
金融調節は,民間銀行の準備預金の必要額に対して受動的に供給されるように実施
↑
でないと,コール市場の金利は乱高下することになる.金利の安定化が重要
金融政策の手段
①公定歩合操作:中央銀行貸出の金利 ②公開市場操作:民間銀行が保有する手形,国債などの取引 ・買いオペレーション:金融緩和 ・売りオペレーション:金融引締 ③法定準備率操作:中央銀行に預ける準備預金 ・準備率の逆数 ⇒信用創造の規模 ④外国為替市場への介入:外国為替市場の安定化のための介入 ・円買いドル売り介入:売りオペと同じ ・ドル買い円売り介入:買いオペと同じ ⇒ この効果を無効とする「不胎化介入」