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事業承継を考える〜バトンを落とさないための準備〜 4 ×1 0 0 5 10 10 現経営者の子をはじめとし た親族に承継させる方法 <メリット> ・内外の関係者から心情的 に受け入れられやすい ・後継者の早期決定により 長期の準備期間の確保が 可能 ・相続等により財産や株式 を後継者に移転できるた め所有と経営の一体的な 承継が期待できる 親族内承継 役員・従業員承継 親族以外の役員・従業員に 承継する方法 <メリット> ・経営者としての能力のあ る人材を見極めて承継す ることができる ・社内で長期間働いてきた 従業員であれば経営方針 等の一貫性を保ちやすい 社外への引き継ぎ (M&A等) 株式譲渡や事業譲渡等に より承継を行う方法 <メリット> ・親族や社内に適任者がい ない場合でも、広く候補 者を外部に求めることが できる ・現経営者は会社売却の利 益を得ることができる 1 9 8 0 60 3 20 70 退7 【巻頭インタビュー】 竹川 充 MITコンサルティング株式会社 代表取締役 2012年より、中小機構の事業承継コーディネ ーターとして中小企業の事業承継に関する相 談への対応・助言、各種セミナー講師等の活 動を行う。また、ふくい産業支援センターの コーディネータとして、経営戦略や財務戦略、 事業承継を中心に、中小企業の課題解決に取 り組んでいる。中小企業診断士。 出展:中小企業庁「事業承継ガイドライン」2016. 12 事業承継に向けたステップ 事業承継3つのパターン 2 vol.24 CONTENTS 01 特集 事業承継を考える ~バトンを落とさないための準備~ ◦巻頭インタビュー MITコンサルティング㈱ 竹川充 氏 ◦企業事例 ㈱TAYASU/㈱ハヤカワ/西村英一 氏 ◦事業承継への準備と心構え よくある事業承継トラブル 企業事例:㈱カワムラモータース 後継者育成研修/相談窓口 11 完成への道のり ㈱はな里 13 今月の注目企業 いとや提灯店 15 脱 I T オンチ経営 16 産業支援センター入門 7-D 17 学びと人材育成 18 今月の社是 19 グッドデザインシンキング 20 インフォメーション 事業承継を考える ~バトンを落とさないための準備~ 中小企業庁は、平成28年12月に「事業承継ガイドライン」をとりま とめ公表しました。これによると、中小企業経営者の高齢化が進み、 経営者の年齢のピークは66歳に達しており、今後 5 年から10年の間 に、多くの中小企業が事業承継のタイミングを迎えようとしていま す。中小企業に蓄積されたノウハウや技術といった価値をきちんと 次世代に受け継ぐことが、企業のさらなる活性化のために重要であ り、いかに事業のバトンをタイミングよくスムーズに渡すことがで きるかが大きな課題となっています。 では、事業のバトンを後継者にしっかりと受け継ぐにはどのような 準備と心掛けが必要なのでしょうか。県内企業の事例や専門家の解 説を通じご紹介します。「気がついたときには手遅れ」とならない ために、今回の特集が事業承継を考えるきっかけになれば幸いです。

事業承継3つのパターン 事業承継を考える · 2017. 6. 16. · 事業承継を考える〜バトンを落とさないための準備〜 す。をしていただきたいと思いまえて、早めにしっかりと準備よりも難しい重要な仕事と捉

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Page 1: 事業承継3つのパターン 事業承継を考える · 2017. 6. 16. · 事業承継を考える〜バトンを落とさないための準備〜 す。をしていただきたいと思いまえて、早めにしっかりと準備よりも難しい重要な仕事と捉

事業承継を考える〜バトンを落とさないための準備〜

よりも難しい重要な仕事と捉

えて、早めにしっかりと準備

をしていただきたいと思いま

す。事

業承継を控える読者への

メッセージをお願いします

 

昨年開催されたリオ五輪

の男子4×1

0

0mリレーで

は、日本チームが見事銀メダ

ルに輝きましたね。個人レベ

ルでは他のチームには到底及

ばない中、バトンパスの上手

さで勝ち取ったメダルといえ

ます。事業承継も同じで、そ

の出来不出来次第で隣のレー

ンを走る同業他社と業績が逆

転することも十分に考えられ

ます。

 

事業承継に向けた気運は上

がってきているようには感じ

ますが、5年後の廃業が増え

ないようにもっと意識を高め

ていかなければなりません。

超高齢化社会に向かっていま

すが、経済を支える中小企業

がしっかりと残り、強くなっ

ていくことが地域の産業力を

落とさないことに繋がります。

早めの取り組みで、事業を一

歩前進させるチャンスにして

いただければと思います。

なったら譲れる」といった単

純な答えはなく、いつ事業を

次に譲るかを決めるのは現経

営者ご本人なのです。「あと

何年後に」「自分が何歳を迎

えるときには」と引き際を自

身で決断できるかが重要とな

ってきます。まだまだ行け

る!と元気なうちにその時期

を決めることは簡単なことで

はありません。新事業をやる

継に関してはそうではありま

せん。事業を渡す側にとって

も後継者にとっても、ゆとり

を持った期間を設けることは

大切なことです。10年という

と長く感じられるかと思いま

すが、あっという間ですよ。

 

これまで事業承継に関する

相談を受けてきて、意思決定

に時間がかかる問題であると

いつも感じています。「こう

10年かけて準備をするぐらい

でも良いのではないでしょう

か。株式や資産の移譲など、

目に見える手続きはそれほど

時間の掛かるものではありま

せんが、前述の経営資源の承

事業承継についてはいつ

頃から考えるべきなので

しょう?

 〝事業承継には時間がかか

る〟というのが大前提です。現経営者の子をはじめとし

た親族に承継させる方法<メリット>・内外の関係者から心情的

に受け入れられやすい・後継者の早期決定により

長期の準備期間の確保が可能

・相続等により財産や株式を後継者に移転できるため所有と経営の一体的な承継が期待できる

親族内承継 役員・従業員承継

親族以外の役員・従業員に承継する方法<メリット>・経営者としての能力のあ

る人材を見極めて承継することができる

・社内で長期間働いてきた従業員であれば経営方針等の一貫性を保ちやすい

社外への引き継ぎ(M&A等)

株式譲渡や事業譲渡等により承継を行う方法<メリット>・親族や社内に適任者がい

ない場合でも、広く候補者を外部に求めることができる

・現経営者は会社売却の利益を得ることができる

 

リレーに例えてお話をしま

すが、バトンを落とすのは決

まってバトンパスのタイミン

グです。事業の引継ぎもそれ

ぐらいの脆さを持ち合わせて

います。当然バトンには会社

にとって大事なもの、人材や

資金はもちろんのこと、社長

のもつ信用やノウハウ、得意

先との人脈といった目に見え

にくい経営資源が込められて

います。事業承継対策は、経

営者自身やその家族だけでな

く、従業員や取引先など多く

の関係者、ひいては事業その

ものの存続にも関わる大きな

問題です。何よりも「早めの

取り組み」「戦略的な計画づ

くり」が重要なこととお伝え

したいですね。

く抱えていたとしても、社長

一人の影響で大きく変わるも

のです。特に県内にも多い下

請製造や卸売業といった代わ

りが利く業種の場合、経営者

の資質が問われることになる

といえます。〝会社が別のも

のに変わる〟そう捉えても過

言ではない。それぐらいの気

持ちで臨むべき重要な課題で

す。対策を怠ると大きな問題

に発展するケースが多く見ら

れます。以下の例をご覧くだ

さい。

〈事業承継対策を怠ることで

起こりうる問題〉

・経営権の委譲が進まず、

メインバンクからの信頼

を失う

・事業承継の準備を軽視

し、そのうちに現経営者

の判断能力が低下してし

まう

・経営者が高齢であるため

に、取引先・従業員から

の不安が高まる

・事業承継対策しないまま

経営者が亡くなり、お家

騒動に発展する

・株式が分散し、経営権が

第三者に脅かされる

事業承継について、県内中

小企業経営者の現状は?

 

事業承継や後継者問題は、

ここ数年がピークになるので

はないでしょうか。1

9

8

0

年前後に創業した企業が多

く、それらがいよいよ世代交

代の時期に差し掛かってきて

います。全国的に見ても、60

歳以上の経営者が全体の3割

程度だった20年前に比べ、現

在は半数以上に増えているの

が現状ですし、70代でも現役

で活躍されている経営者も多

くいらっしゃいます。しかし、

体力的な不安などから「いよ

いよ引退も考えなければ」と

相談に来られる経営者も増え

てきた印象ですね。事業承継

のコンサルティングを始めた

7年前とは明らかに状況は変

わってきています。

事業承継を考える上で、

心掛けるべきことは

ありますか?

 

とりわけ、中小企業にとっ

て経営者が変わるということ

は大きなインパクトのあるこ

とです。どれだけ名前のある

会社であっても、従業員を多

【巻頭インタビュー】竹川 充 氏MITコンサルティング株式会社 代表取締役

2012年より、中小機構の事業承継コーディネーターとして中小企業の事業承継に関する相談への対応・助言、各種セミナー講師等の活動を行う。また、ふくい産業支援センターのコーディネータとして、経営戦略や財務戦略、事業承継を中心に、中小企業の課題解決に取り組んでいる。中小企業診断士。

出展:中小企業庁「事業承継ガイドライン」2016.12

事業承継に向けたステップ

事業承継3つのパターン

2 vol.24 1vol.24

CONTENTS

01 特集 事業承継を考える    ~バトンを落とさないための準備~ ◦巻頭インタビュー  MITコンサルティング㈱ 竹川充氏 ◦企業事例  ㈱TAYASU/㈱ハヤカワ/西村英一氏 ◦事業承継への準備と心構え  よくある事業承継トラブル  企業事例:㈱カワムラモータース  後継者育成研修/相談窓口11 完成への道のり ㈱はな里13 今月の注目企業 いとや提灯店15 脱I Tオンチ経営16 産業支援センター入門 7-D17 学びと人材育成18 今月の社是19 グッドデザインシンキング20 インフォメーション 他

事業承継を考える~バトンを落とさないための準備~

中小企業庁は、平成28年12月に「事業承継ガイドライン」をとりまとめ公表しました。これによると、中小企業経営者の高齢化が進み、経営者の年齢のピークは66歳に達しており、今後 5 年から10年の間に、多くの中小企業が事業承継のタイミングを迎えようとしています。中小企業に蓄積されたノウハウや技術といった価値をきちんと次世代に受け継ぐことが、企業のさらなる活性化のために重要であり、いかに事業のバトンをタイミングよくスムーズに渡すことができるかが大きな課題となっています。では、事業のバトンを後継者にしっかりと受け継ぐにはどのような準備と心掛けが必要なのでしょうか。県内企業の事例や専門家の解説を通じご紹介します。「気がついたときには手遅れ」とならないために、今回の特集が事業承継を考えるきっかけになれば幸いです。