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第 4 章 多自由度系の振動
第 4章 多自由度系の振動
畔上 秀幸
名古屋大学 情報科学研究科 複雑系科学専攻
November 14, 2019
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第 4 章 多自由度系の振動
はじめに
(目標) 多自由度系の運動方程式を満たす変位の解を詳しく調べる.まず,外力が作用しないときの運動方程式 (自由振動) は固有値問題になり,その解は固有対 (固有振動数と固有振動モード) で構成されることを学ぶ.そのあとで,外力が作用したときの運動方程式 (強制振動) の解の求め方についてみていくことにする.
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第 4 章 多自由度系の振動
固有値問題の基礎
§4.1 線形常微分方程式の基礎
多自由度系の運動方程式は 2階 d 元連立線形常微分方程式で与えられ,自由振動は固有値問題に帰着する.本論に入る前に,固有値問題の基礎事項をまとめておく.d を自然数とする.
問題 4.1.1 (標準固有値問題)
A ∈ Cd×d に対して,
Ax = κx (4.1.1)
を満たす x ∈ Cd と κ ∈ C を求めよ.
問題 4.1.1 を標準固有値問題とよび,その問題の解 κ ∈ C を固有値,x ∈ Cd
を固有ベクトル,(κ,x) を固有対とよぶ.
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第 4 章 多自由度系の振動
固有値問題の基礎
式 (4.1.1) は,単位行列 I = (δij)ij ∈ Rd×d (δij = 1 (i = j), 0 (i = j) はKronecker のデルタ) を用いて,
(A− κI)x = 0Rd (4.1.2)
ともかける.ここで,x = 0Rd は式 (4.1.2) を満たす.これを自明の解という.自明の解を除く解は,
|A− κI| = 0 (4.1.3)
を満たす.式 (4.1.3) を特性方程式とよぶ.特性方程式は κ についての d 次の方程式になる.複素係数の d 次方程式の解は,d 個存在する (Kronecker の定理).それらを
r ∈ {1, · · · , d} に対して κr ∈ C とかく. κr を r 次の固有値とよぶ.また,r次の固有値のときの x の解を xr ∈ Cd を r 次の固有ベクトルとよぶ.
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第 4 章 多自由度系の振動
固有値問題の基礎
標準固有値問題の解の形式についてみておこう.ここでは次の定義を用いる.
定義 4.1.2 (正定値実対称行列)
A = AT ∈ Rd×d とする.任意の x ∈ Rd に対して
x · (Ax) ≥ α ∥x∥2Rd (4.1.4)
を満たす α > 0 が存在するとき,A を正定値であるという.α ≥ 0 が存在するとき,A を半正定値であるという.また,
x · (Ax) ≤ −α ∥x∥2Rd (4.1.5)
を満たす α > 0 が存在するとき,A を負定値であるという.α ≥ 0 が存在するとき,A を半負定値であるという.
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第 4 章 多自由度系の振動
固有値問題の基礎
定理 4.1.3 (標準固有値問題の解)
問題 4.1.1 において行列 A が次のような条件を満たすとき,r ∈ {1, · · · , d} 次の固有対 (κr,xr) はそれぞれ次のようになる.
1 A ∈ Rd×d (実行列) のとき,(κr,xr) は実数か共役な複素数になる.
2 A = AT ∈ Rd×d (実対称行列) のとき,(κr,xr) は実数になる.同様に,A = (Ac)
T ∈ Cd×d (エルミート行列) のとき,(κr,xr) は実数になる.また,r, p ∈ {1, · · · , d} に対して,κr = κp のとき xr と xq は直交する.
3 A ∈ Rd×d が正定値実対称行列のとき,κr は正の実数となる.同様に,A ∈ Rd×d が半正定値実対称行列,負定値実対称行列および半負定値実対称行列のとき,κr はそれぞれ非負の実数,負の実数および非正の実数となる.
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第 4 章 多自由度系の振動
固有値問題の基礎
証明
1 Axr = κrxr が成り立つとき,
Axcr = (Axr)
c= (κrxr)
c= κc
rxcr
が成り立つ.そこで,κcr も解となり,κr = κc
r が成り立つ.すなわち,κr ∈ R である.
2 A = AT ∈ Rd×d (実対称行列) のとき,
κrxr · xcr = xc
r · (Axr) = xr ·(ATxc
r
)= xr · (Axc
r)
= xr · (κcrx
cr) = κc
rxr · xcr
より,κr = κcr ∈ R を得る.さらに,固有値が一致すれば固有ベクトルも一
致して,xr = xcr ∈ Rd を得る.エルミート行列のときも同様となる.
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第 4 章 多自由度系の振動
固有値問題の基礎
また,直交性は次のように示される.r = p に対して,
Axr = κrxr, (4.1.6)
Axp = κpxp, (4.1.7)
が成り立つ.式 (4.1.6) の両辺に左から xTp をかけて,式 (4.1.7) の両辺を
転置して右から xr をかけて,両式の差をとれば,A = AT より,
xp · (Axr)− xp · (Axr) = (κr − κp)xp · xr = 0 (4.1.8)
となる.そこで,κr = κp のとき,xp · xr = 0 となる.
3 A = AT ∈ Rd×d かつ任意の x ∈ Rd に対して式 (4.1.4) を満たす α > 0 が存在するとき,
xr · (Axr) = κrxr · xr = κr ∥xr∥2Rd ≥ α ∥xr∥2Rd > 0
が成り立つ.よって,∥xr∥2Rd > 0 より,κr ≥ α > 0 を得る.同様に,α が非負の定数のとき,κr は非負の実数となる.
□
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第 4 章 多自由度系の振動
固有値問題の基礎
次に,一般固有値問題を考える.運動方程式は一般固有値問題の形式となる.
問題 4.1.4 (一般固有値問題)
A ∈ Cd×d と B ∈ Cd×d に対して,
Ax = κBx (4.1.9)
を満たす x ∈ Cd と κ ∈ C を求めよ.
問題 4.1.4 を一般固有値問題とよぶ.その問題の解 κ ∈ C を固有値,x ∈ Cd
を固有ベクトル,(κ,x) を固有対とよぶ.
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第 4 章 多自由度系の振動
固有値問題の基礎
式 (4.1.9) は,
(A− κB)x = 0Rd (4.1.10)
ともかける.ここで,自明の解 (x = 0Rd) を除く解は,特性方程式
|A− κB| = 0 (4.1.11)
を満たす.式 (4.1.11) は κ についての d 次の方程式になる.複素係数の d 次方程式の解は,d 個存在して,そのときの解 (固有値) を r ∈ {1, · · · , d} に対してκr ∈ C とかく.κr のときの式 (4.1.9) あるいは式 (4.1.10) を満たす r 次の固有ベクトルを xr ∈ Cd とかく.
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第 4 章 多自由度系の振動
固有値問題の基礎
定理 4.1.5 (一般固有値問題の解)
問題 4.1.4 において行列 A と B が次のような条件を満たすとき,r ∈ {1, · · · , d} 次の固有対 (κr,xr) はそれぞれ次のようになる.
1 B ∈ Rd×d が正定値実対称行列のとき,一般固有値問題 (問題 4.1.4) は標準固有値問題
Cz = κz (4.1.12)
となる.ただし,C は B の Cholesky 分解 B = LTL (L は左下三角行列 a) を用いて,
(L−1
)TAL−1 で与えられる.
2 さらに,A ∈ Rd×d が正定値実対称行列のとき,κr は正の実数となる.同様に,α が非負の定数 (半正定値実対称行列) のとき,κr は非負の実数となる.
aL ∈ {(lij)ij ∈ Rd×d | lij = 0 (i > j)}
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第 4 章 多自由度系の振動
固有値問題の基礎
証明
1 B ∈ Rd×d が正定値実対称行列のとき,ある左下三角行列 L が存在して,Cholesky 分解 B = LTL とかける.このとき,z = Lx とおけば,
x · (Bx) = x ·(LTLx
)= z · z
が成り立つ.そこで,式 (4.1.9) は,
AL−1z = κLTz
となる.この式の両辺に左から(LT
)−1=
(L−1
)Tをかけれることによって(
L−1)TAL−1z = Cz = κz (4.1.13)
とかける.
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第 4 章 多自由度系の振動
固有値問題の基礎
2 さらに,A ∈ Rd×d が正定値実対称行列ならば,式 (4.1.13) においてC = CT が成り立つ.また,任意の z ∈ Rd に対して,w = L−1z とおけば,A ∈ Rd×d が正定値対称であることから,
z · (Cz) = z ·{(L−1
)TAL−1z
}=
(L−1z
)·(AL−1z
)= w · (Aw) ≥ α ∥w∥2Rd > 0
を満たす α > 0 が存在する.したがって,C は正定値実対称行列となり,定理 4.1.3 の (3) より,κr は正の実数となる.同様に,α が非負の定数 (半正定値実対称行列) のとき,κr は非負の実数となる.
□
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第 4 章 多自由度系の振動
固有値問題の基礎
固有ベクトルは大きさ不定である.実際,(A− κrB)xr = 0Rd が成り立つとき,任意の c ∈ R に対して,
(A− κrB) (cxr) = 0Rd
が成り立つためである.そこで,大きさを決める必要がある場合には,次のような定義が使われる.
1 xr = (xri)i に対して,
maxi∈{1,··· ,d}
xri = 1 (4.1.14)
と定義する.
2 B に対して,
xr · (Bxr) = 1 (4.1.15)
と定義する.
式 (4.1.15) を満たす xr は正規固有ベクトルとよばれる.
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第 4 章 多自由度系の振動
非減衰自由振動
§4.2 非減衰自由振動
これより,d 自由度系の運動方程式にもどって,非減衰自由振動の解u (t) : R → Rd を求めることを考える.d 自由度系の運動方程式は,非減衰のとき,質量行列M ∈ Rd×d と剛性行列
K ∈ Rd×d を用いて,
Mu+Ku = 0Rd (4.2.1)
とかけた (第 2章).式 (4.2.1) は同次形の線形常微分方程式である.この方程式の一般解は,任意の ur ∈ Cd と λr ∈ C (r の意味はあとで示す) を用いて,
u (t) = ureλrt (4.2.2)
のように与えられる.ここで,式 (4.2.2) を式 (4.2.1) に代入すれば,固有方程式(λ2rM +K
)ur = 0Rd (4.2.3)
を得る.
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第 4 章 多自由度系の振動
非減衰自由振動
運動エネルギーの正定値性と対称性からM は正定値実対称行列となる.また,ひずみエネルギーの半正定値性 (剛体運動が制限されていれば正定値性) と対称性から K は半正定値実対称行列となる.そこで,式 (4.2.3) は係数行列が半正定値の標準固有値問題にかきかえられる.したがって,定理 4.1.5 の (2) より,r ∈ {1, · · · , d} に対して,λ2
r ∈ R および ur ∈ Rd となり,
λ2r ≤ 0 (4.2.4)
を得る.これより,
λr = ±iωr (4.2.5)
となる.式 (4.2.5) と ur ∈ Rd を式 (4.2.2) に代入すれば,
u (t) = ureiωr + uc
re−iωr = arure
±iωr + acrure−iωr (4.2.6)
となる.ここで,ur は
ur · (Mur) = 1 (4.2.7)
を満たす正規固有ベクトルとして,ar ∈ C は任意の定数とする.16 / 69
第 4 章 多自由度系の振動
非減衰自由振動
実定数係数 d 元連立 2階常微分方程式の同次形の一般解は,独立な 2d 個の実数か共役な複素数からなる解の線形結合で与えられる.式 (4.2.6) の場合,e±iωr
は共役な複素数なので,線形結合の任意の係数も共役な複素数となり,
u (t) =∑
r∈{1,··· ,d}
(ure
iωrt + ucre
−iω1t)=
∑r∈{1,··· ,d}
Re[ure
iωrt]
=∑
r∈{1,··· ,d}
ur (ar cosωrt− br sinωrt)
=∑
r∈{1,··· ,d}
urcr cos (ωrt+ ϕr) (4.2.8)
となる.ただし,r ∈ {1, . . . , d} に対して ar と br あるいは cr と ϕr は 2d 個の任意の実定数である.式 (4.2.8) より,ωr を r 次の固有円振動数とよぶ.また,ur ∈ Rd を r 次の正規固有振動モードとよぶ.
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第 4 章 多自由度系の振動
非減衰自由振動
例題 4.2.1 (2自由度ばね質点系の自由振動)
図 4.1 のような 2自由度ばね質点系の固有振動数と正規固有振動モードを求めよ.
k
u1
k
u2
km m
図 4.1: 2自由度ばね質点系
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第 4 章 多自由度系の振動
非減衰自由振動
解答 図 4.1 のような 2自由度ばね質点系の運動方程式は,第 2章の問題 2.4.2 (2 自由度ばね質点系) と同様に,Lagrange の運動方程式から(
m 00 m
)(u1
u2
)+
(2k −k−k 2k
)(u1
u2
)=
(00
)(4.2.9)
のように得られる.ここで,一般解を(u1 (t)u2 (t)
)=
(ur1
ur2
)eλrt (4.2.10)
とおく.式 (4.2.10) を式 (4.2.9) に代入して,固有方程式(λ2rm
(1 00 1
)+ k
(2 −1−1 2
))(u1
u2
)=
(00
)(4.2.11)
を得る.これより,特性方程式は∣∣∣∣λ2rm
(1 00 1
)+ k
(2 −1−1 2
)∣∣∣∣ = (λ2rm+ 2k
)2 − k2
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第 4 章 多自由度系の振動
非減衰自由振動
= m2λ4r + 4mkλ2
r + 3k3 = 0
となる.そこで,
λ2r =
−2mk ±√4m2k2 − 3m2k2
m2= (−2± 1)
k
m⇒
{λ21 = −k/mλ22 = −3k/m
となる.λr = ±iωr より,1次と 2次の固有円振動数は
ω1 =
√k
m, ω2 =
√3k
m
となる.1次の固有振動モード u1 =
(u11 u12
)Tは,λ2
1 = −k/m を式 (4.2.11) に代入することによって得られる.すなわち,固有振動モードは大きさ不定であるので,u11 = 1 とおけば,(
k −k−k k
)(1u12
)=
(00
)⇒ u12 = 1 ⇒
(u11
u12
)=
(11
)
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第 4 章 多自由度系の振動
非減衰自由振動
となる.2次の固有振動モード u2 =(u21 u22
)Tは,λ2
2 = −3k/m を式 (4.2.11) に代入することによって(
−k −k−k −k
)(1u22
)=
(00
)⇒ u22 = −1 ⇒
(u21
u22
)=
(1−1
)となる.図 4.2 に u1 と u2 による振動の様子を示す.1次と 2次の固有振動モードを正規化すれば,(
u11
u12
)T (m 00 m
)(u11
u12
)= 2m ⇒
(u11
u12
)=
1√2m
(11
),(
u21
u22
)T (m 00 m
)(u21
u22
)= 2m ⇒
(u21
u22
)=
1√2m
(1−1
)となる. □
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第 4 章 多自由度系の振動
非減衰自由振動
k
1 1
km m
t t
(a) モード 1 u1
k
1 −1
km m2k 2k
t t
(a) モード 2 u2
図 4.2: 2自由度ばね質点系の固有振動モード
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第 4 章 多自由度系の振動
減衰自由振動
§4.3 減衰自由振動
多自由度系に粘性減衰が含まれている場合を考える.図 4.1 のような 2自由度ばね質点粘性減衰系を考えてみよう.
k1
u1
k2
u2
k3
m mc1 c2 c1
図 4.1: 2自由度ばね質点粘性減衰系
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第 4 章 多自由度系の振動
減衰自由振動
粘性減衰の場合には,Lagrange 関数
l (u, u) =1
2m1u
21 +
1
2m2u
22 −
1
2k1u
21 −
1
2k2 (u2 − u1)
2 − 1
2k3u
22
と散逸関数
v (u) =1
2c1u
21 +
1
2c2 (u2 − u1)
2+
1
2c3u
22
を定義して,拡張 Lagrange の運動方程式
d
dt
∂l
∂u− ∂l
∂u+
∂v
∂u= 0Rd (4.3.1)
に代入することによって,運動方程式が得られる.実際,
m1u1 + k1u1 − k2 (u2 − u1) + c1u1 − c2 (u2 − u1) = 0,
m2u2 + k2 (u2 − u1) + k3u2 + c2 (u2 − u1) + c3u2 = 0
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第 4 章 多自由度系の振動
減衰自由振動
が得られる.行列とベクトルを用いてかきかえれば,(m1 00 m2
)(u1
u2
)+
(c1 + c2 −c2−c2 c2 + c3
)(u1
u2
)+
(k1 + k2 −k2−k2 k2 + k3
)(u1
u2
)=
(00
)となる.このように,d 自由度粘性減衰系の運動方程式は,一般粘性減衰行列
C ∈ Rd×d を用いて,
Mu+Cu+Ku = 0Rd (4.3.2)
とかける.一般粘性減衰行列は,通常,正定値対称行列であると仮定される.
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第 4 章 多自由度系の振動
減衰自由振動
式 (4.3.2) は同次形の線形常微分方程式である.この方程式の一般解は,任意の ur ∈ Cd と λr ∈ C を用いて,
u (t) = ureλrt (4.3.3)
のように与えられる.ここで,式 (4.3.3) を式 (4.3.2) に代入すれば,固有方程式(λ2rM + λrC +K
)ur = 0Rd (4.3.4)
を得る.この固有方程式が自明の解以外の解をもつためには,特性方程式∣∣λ2rM + λrC +K
∣∣ = 0 (4.3.5)
を満たす必要がある.式 (4.3.5) は λr について 2d 次の実数係数方程式になる.その解は 2d 個存在する.
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第 4 章 多自由度系の振動
減衰自由振動
M と C の正定値性および K の半定値性を考慮すれば.式 (4.3.5) の解は,非正の実数か実部が非正の共役な複素数となる.実際,λr = α+ iβ とおくとき,式 (4.3.4) の両辺に対して,左から uT
r をかければ,
λ2rur · (Mur) + λrur · (Cur) + ur · (Kur)
=(α2 − β2 + i 2αβ
)ur · (Mur) + (α+ iβ)ur · (Cur) + ur · (Kur)
=(α2 − β2
)ur · (Mur) + αur · (Cur) + ur · (Kur)
+ i {2αβur · (Mur) + βur · (Cur)}= 0
となり,
α = − ur · (Cur)
2ur · (Mur)< 0
が得られるからである.
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第 4 章 多自由度系の振動
減衰自由振動
特性方程式 (式 (4.3.5)) の解 λr のうち,0 は運動に寄与しない.負の実数のとき過減衰となる.また,共役な複素数の場合は,
λr = −σr ± iωrD (4.3.6)
となる.このとき,σr > 0 を r 次のモード減衰率,ωrD を r 次の減衰固有円振動数とよぶ.C が一般粘性減衰行列のときには,式 (4.3.6) の右辺を,1自由度系のときのような減衰比 ζr を用いた
− ζrωr ± iωr
√1− ζ2r
の形式にかくことはできないことに注意する.ζr は実験モード解析で使われる.のちに示す比例粘性減衰の場合はこのようにかけることになる.
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第 4 章 多自由度系の振動
減衰自由振動
特性方程式 (式 (4.3.5)) の解 λr がすべて共役な複素数の場合は,自由振動の解は
u (t) =∑
r∈{1,··· ,d}
(ure
(−σr+iωrD)t + ucre
(−σr−iωrD)t)
=∑
r∈{1,··· ,d}
Re[ure
(−σr+iωrD)t]
=∑
r∈{1,··· ,d}
ure−σrt (ar cosωrDt− br sinωrDt)
=∑
r∈{1,··· ,d}
urcre−σrt cos (ωrDt+ ϕr) (4.3.7)
となる.ただし, r ∈ {1, . . . , d} に対して ar と br あるいは cr と ϕr は 2d 個の任意の実定数である.
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第 4 章 多自由度系の振動
減衰自由振動
次に,C がM と K を用いて
C = αM + βK (4.3.8)
とかける場合を考えよう.ここで,α と β は正の実定数とする.式 (4.3.8) が成り立つとき,比例粘性減衰あるいは Rayleigh 減衰とよばれる.比例粘性減衰のとき,固有方程式は実固有値問題になる.実際,式 (4.3.8) を
固有方程式 (式 (4.3.4)) に代入し,両辺を 1 + β でわれば,(λ2r + α
1 + βM +K
)ur = 0Rd (4.3.9)
となる.そこで,比例粘性減衰のときの固有振動モード ur は非減衰のときの固有振動モード (実ベクトル) と一致することがわかる.また,λr は非減衰の固有円振動数 ωr と
− ω2r =
λ2r + α
1 + β(4.3.10)
の関係をもつことになる.30 / 69
第 4 章 多自由度系の振動
減衰自由振動
式 (4.3.10) は
λ2r +
(α+ βω2
r
)λr + ω2
r = 0
とかきかえられる.これより,
λr =−(α+ βω2
r
)±√(α+ βω2
r)2 − 4ω2
r
2
= −ζrωr ± iωr
√1− ζ2r
= −σr ± iωrD (4.3.11)
とかけることになる.ただし,
σr = ζrωr =α+ βω2
r
2, (4.3.12)
ζr =1
2ωrα+
ωr
2β (4.3.13)
である.σr を r 次のモード減衰率,ζr を r 次のモード減衰比という.
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第 4 章 多自由度系の振動
減衰自由振動
例題 4.3.1 (2自由度ばね質点比例粘性減衰系のモード減衰比)
図 4.1 のような 2自由度系において,比例粘性減衰を仮定したときの 1次と 2次のモード減衰比を求めよ.ただし,m1 = m2, c1 = c2 = c3 および k1 = k2 = k3をそれぞれ m, c および k とおく.
解答 図 4.1 の運動方程式は(m 00 m
)(u1
u2
)+
(2c −c−c 2c
)(u1
u2
)+
(2k −k−k 2k
)(u1
u2
)=
(00
)であった.そこで,(
2c −c−c 2c
)=c
k
(2k −k−k 2k
)が成り立つことから,
α = 0, β = c/k
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第 4 章 多自由度系の振動
減衰自由振動
となる.そこで,例題 4.2.1 の結果
ω1 =√k/m, ω2 =
√3k/m
を式 (4.3.13) に代入することによって,
ζ1 =c
2√mk
, ζ2 =
√3c
2√mk
を得る. □
33 / 69
第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
§4.4 強制振動
多自由度系の強制振動について考える.ここでは,強制振動の解を次の3つの方法で求めてみよう.
1 方法 1: 時間積分による方法
2 方法 2: 動剛性行列を利用する方法
3 方法 3: 固有振動モードを利用する方法
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第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
■ 方法 1: 時間積分による方法
d 自由度粘性減衰系に外力 p ∈ Rd が作用したとき,式 (4.3.2) は(C MM 0
)(uu
)+
(K 00 −M
)(uu
)=
(p0
)(4.4.1)
となる.これを
My + Ky = b (4.4.2)
とかくことにする.ただし,
M =
(C MM 0
), K =
(K 00 −M
), y =
(uu
), b =
(p0
)とおいた.M と C は正定値対象行列より,M は正則行列となり,式 (4.4.2) は
y = M−1(b− Ky
)(4.4.3)
とかける.35 / 69
第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
そこで,初期条件が与えられたときに,式 (4.4.3) を満たす y (t) を求める問題は,次のような常微分代数方程式の初期値問題となる.
問題 4.4.1 (常微分代数方程式の初期値問題)
ψ : Rn → Rn が与えられたとき,
dy
dt= ψ (y) ,
y (0) = y0
を満たす y : (0, tT) → Rn を求めよ.
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第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
Runge-Kutta 法
問題 4.4.1 に対して,h を時間刻みを表す正定数として,k ∈ {0, 1, · · · , n} に対して tk = kh,yk = y (tk) とかくことにする.
定義 4.4.2 (2次の Runge-Kutta 法)
問題 4.4.1 に対して,yk+1 の近似解を
yk+1 = ψ (yk) +d1 + d2
2h
で計算する方法を 2次の Runge-Kutta 法という.ただし,
d1 = ψ (yk) ,
d2 = ψ (yk + d1h)
とする.
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第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
2次の Runge-Kutta 法の誤差は h2 のオーダーである.なぜならば,
yk+1 = yk + ykh+1
2ykh
2 +O(h3)
に対して, a, b を未知数として
yk+1 = yk + aψ (yk)h+ bψ (yk + ykh)h
= yk + aψ (yk)h+ b
(ψ (yk) +
∂ψ
∂yT
(ψ (yk) ykh+O
(h2)))h
= yk + aψ (yk)h+ b(ψ (yk) +
(ψ (yk) + ykh+O
(h2)))h
= yk + (a+ b)ψ (yk)h+ bψ (yk) +O(h3)
が成り立つことから,a = b = 1/2 となるためである.
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第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
定義 4.4.3 (4次の Runge-Kutta 法)
問題 4.4.1 に対して,yk+1 の近似解を
yk+1 = ψ (yk) +d1 + 2d2 + 2d3 + d4
6h
で計算する方法を 4次の Runge-Kutta 法という.ただし,
d1 = ψ (yk) , d2 = ψ
(yk + d1
h
2
),
d3 = ψ
(yk + d2
h
2
), d4 = ψ (yk + d3h)
とする.
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第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
θ 法
ある θ ∈ [0, 1] を選び,
yk+θ = θyk+1 + (1− θ)yk
のようにかく.このとき,
1
h(yk+1 − yk) = ψ (yk+θ) (4.4.4)
を満たすように y1, y2, . . . を求める方法を θ 法という.θ = 0 のとき,前進Euler 法,θ = 1 のとき,後退 Euler 法,θ = 1/2 のとき,Crank-Nicolson 法という.
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第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
θ = 0 (前進 Euler 法) のとき,式 (4.4.4) は,
yk+1 = yk + hψ (yk) (4.4.5)
となる.式 (4.4.5) では,既知の yk を用いて右辺を計算し,その値を左辺に代入することを繰り返す方法である.このように,式 (4.4.4) の右辺を yk で計算する方法を陽解法という.それに対して,θ = 1 (後退 Euler 法) のとき,y = yk+1 のときの 式 (4.4.3)
の右辺を式 (4.4.4) の ψ (yk+1) に代入した式より,
yk+1 =(I + hM−1K
)−1 (yk + hM−1b
)(4.4.6)
となる.このように,式 (4.4.4) の右辺を yk+1 で計算する方法を陰解法という.陰解法では,式 (4.4.6) のように,逆行列計算が必要となる.
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第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
さらに,θ = 1/2 (Crank-Nicolson 法) のとき,
yk+1 =
(I +
h
2M−1L
)−1 (yk + hM−1b− h
2M−1Lyk
)(4.4.7)
となる.そのほか,運動方程式に対する陰解法として Newmark 法や Wilson 法などが
よく用いられる.詳細は文献を参照されたい.
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第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
時間積分による方法の特徴は次のようである.
1 陽解法
利点 過渡応答に適する.各種非線形性を考慮できる.解析が落ちない.早い.
欠点 精度が悪い.
2 陰解法
利点 過渡応答に適する.各種非線形性を考慮できる.精度が良い.欠点 収束しない場合に解析が落ちる.遅い.
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第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
■ 方法 2: 動剛性行列を利用する方法
d 自由度粘性減衰系の運動方程式 (式 (4.3.2)) を Fourier 変換すれば,(−iω2M + iωC +K
)u (ω) = B (ω) u (ω) = p (4.4.8)
とかける.ここで,B (ω) は動剛性行列とよばれる.式 (4.4.8) より,
u (ω) = B−1 (ω) p (4.4.9)
を得る.式 (4.4.9) を用いて,ω ごとに u (ω) を求め,
u (t) = F−1 [u (ω)] (4.4.10)
のように逆 Fourier 変換すれば,u (t) が得られることになる.
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第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
動剛性行列を利用する方法の特徴は次のようである.
利点 • 狭周波数領域加振の応答に適する.• 伝達関数を用いた部分構造合成法に利用される.
欠点 • 広周波数領域加振の場合に計算量が増加する.• 各種非線形性を考慮できない.
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第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
■ 方法 3: モードを利用する方法
ここでは,変位ベクトルを物理座標系からモード座標系に変換することによって,運動方程式を非連成化して解くことを考える.そのために,次の手順を用いる.
1 モード対を求める.
2 物理変位をモード変位に変換する.⇒ 運動方程式が非連成化される.
3 モード変位の運動方程式を解いて物理変位に変換する.
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第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
(1) モード対を求める.
最初は,減衰がない系を考える.4.2 章でみてきたように,このときの固有方程式は,(
λ2rM +K
)ur = 0Rd (4.4.11)
を満たす固有対(λ2r, ur
)より,r ∈ {1, · · · , d} に対して,r 次の正規固有振動
モード ur ∈ Rd (∥ur∥2Rd = 1) と固有円振動数 ωr (λr = ±iω2r) を求める.
ここで,ur は 正規M 直交かつ K 直交であることに注目する.ur が正規M 直交かつ K 直交であるとは,式 (4.4.11) の両辺に左から p ∈ {1, · · · , d} に対して uT
p をかけたとき,
uTpMur = δpr, uT
pKur = −λ2rδpr (4.4.12)
が成り立つことをいう.ただし,δpr は Kronecker のデルタである.
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第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
(正規M 直交かつ K 直交の証明)
M は正定値対称行列なので,Cholesky 分解することができる.すなわち,左下三角行列 L を用いて
M = LTL
とかける.この式を式 (4.4.11) に代入し,左から(LT
)−1=
(L−1
)Tをかけて,
vr = Lur とおけば,(L−1
)TKL−1vr = −λ2
rvr
となる.この式は固有方程式となっており,定理 4.1.3 (2) より,r, p ∈ {1, · · · , d} に対して,λr = λp のとき vr と vp は直交する.すなわち,
vp · vr = up ·(LTLur
)= up · (Mur) = δpr
が成り立つ.さらに,式 (4.4.11) において,左から uTp をかけて,正規M 直交
を用いれば,K 直交が得られる.
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第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
(2) 物理変位をモード変位に変換する.
ur は 正規M 直交かつ K 直交であることに注目して,外力による変位 u (t)を,ここでは物理変位とよぶことにして,それをあらたに定義するモード変位に変換することを考える.一般に,d 次元ベクトル空間の任意のベクトルは d 次元ベクトル空間の d 個
の独立なベクトルの線形結合で与えられる.正規固有振動モード ur (r ∈ {1, · · · , d}) は正規M 直交ベクトルなので,そ
れらは d 次元ベクトル空間の独立なベクトルである.そこで,物理変位 u (t) はu1 (t)...
ud (t)
=(u1 · · · ud
)ξ1 (t)...
ξd (t)
=
u11 · · · ud1
.... . .
...u1d · · · udd
ξ1 (t)
...ξd (t)
とかける.この式を
u (t) =∑
r∈{1,··· ,d}
urξr (t) = Uξ (t) (4.4.13)
とかくことにする.ここで,U と ξ (t) を正規モード行列とモード変位という.49 / 69
第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
式 (4.4.13) を非減衰系の運動方程式に代入すれば,
MUξ (t) +KUξ (t) = p (t)
となる.この式の両辺に左から UT をかければ,
UTMUξ (t) + UTKUξ (t) = UTp (t)
となる.ここで,ur は 正規M 直交かつ K 直交であることを用いれば,1 0 · · · 00 1 · · · 0...
.... . .
...0 0 · · · 1
ξ1 (t)
ξ2 (t)...
ξd (t)
+
ω21 0 · · · 00 ω2
2 · · · 0...
.... . .
...0 0 · · · ω2
d
ξ1 (t)ξ2 (t)...
ξd (t)
=
u1 · p (t)u2 · p (t)
...ud · p (t)
となる.この式は,r ∈ {1, · · · , d} に対して
ξr (t) + ω2rξr (t) = ur · p (t) (4.4.14)
とかける.式 (4.4.14) を非連成化されたモード変位による運動方程式という.50 / 69
第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
(3) モード変位の運動方程式を解いて物理変位に変換する.
式 (4.4.14) の Fourier 変換を
− ω2ξr (ω) + ω2r ξr (ω) = ur · p (ω) (4.4.15)
とかく.式 (4.4.15) より,
ξr (ω) =ur · p (ω)ω2r − ω2
(4.4.16)
を得る.式 (4.4.16) を逆 Fourier 変換すれば
ξr (t) = F−1[ξr (ω)
](4.4.17)
を得る.ξr (t) (r ∈ {1, · · · , d}) は,式 (4.4.13) と同様,
u (t) =∑
r∈{1,··· ,d}
urξr (t) = Uξ (t)
によって,物理変位 u (t) に変換される.51 / 69
第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
上記 (3) において,逆 Fourier 変換と座標変換を入れ替えることもできる.
式 (4.4.16) で得られた ξr (ω) (r ∈ {1, · · · , d}) は,
u (ω) =∑
r∈{1,··· ,d}
ur ξr (ω) =∑
r∈{1,··· ,d}
uruTr
ω2r − ω2
p (ω) = G (ω) p (ω)
(4.4.18)
によって,物理変位の Fourier 変換 u (ω) に変換することができる.ここで,G (ω) は多自由度系の周波数応答関数あるいは伝達関数を表す.さらに,
u (t) = F−1 [u (ω)] (4.4.19)
によって,時間関数の物理変位 u (t) に変換される.
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第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
比例粘性減衰への拡張
上記の方法を比例粘性減衰系に拡張する.このときの運動方程式は
Mu (t) + (αM + βK) u (t) +Ku (t) = p (t) (4.4.20)
となる.一方,非減衰のこのときの固有方程式は(λ2rM +K
)ur = 0Rd
となる.このときの正規固有振動モード ur を用いて,式 (4.4.13) と同様,
u (t) = Uξ (t) (4.4.21)
によって,モード変位 ξ (t) が物理変位 u (t) に変換されるとする.式 (4.4.21)を式 (4.4.20) に代入し,左から UT をかければ,r ∈ {1, · · · , d} に対して
ξr (t) + (α+ βωr) ξr (t) + ω2rξr (t) = ur · p (t) (4.4.22)
となる.α, β と減衰係数 σr, 減衰比 ζr との関係は式 (4.3.12) と式 (4.3.13) で与えられる.
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第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
式 (4.4.22) を Fourier 変換すれば,(−ω2 + i2ζrω
2rω + ω2
r
)ξr (ω) = ur · p (ω) (4.4.23)
となる.そこで,
ξr (ω) =uTr
ω2r − ω2 + i2ζrω2
rωp (ω) (4.4.24)
を得る.ξr (ω) を逆 Fourier 変換すれば,
ξr (t) = F−1[ξr (ω)
](4.4.25)
となる.さらに,ξr (t) (r ∈ {1, · · · , d}) より
u (t) =∑
r∈{1,··· ,d}
urξr (t) = Uξ (t)
によって,物理変位 u (t) に変換される.
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第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
一方,逆 Fourier 変換と座標変換を入れ替えた場合には,次のようになる.式 (4.4.24) で得られた ξr (ω) (r ∈ {1, · · · , d}) は,
u (ω) =∑
r∈{1,··· ,d}
ur ξr (ω) =∑
r∈{1,··· ,d}
uruTr
ω2r − ω2 + i2ζrω2
rωp (ω)
= G (ω) p (ω) (4.4.26)
によって,物理変位の Fourier 変換 u (ω) に変換することができる.G (ω) は多自由度系の比例粘性減衰のときの周波数応答関数あるいは伝達関数を表す.さらに,
u (t) = F−1 [u (ω)] (4.4.27)
によって,時間関数の物理変位 u (t) に変換される.
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第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
一般粘性減衰への拡張 [1, 3.4 節, p. 76]
さらに,一般粘性減衰に拡張する.運動方程式は,式 (4.4.1) と同様,(C MM 0
)(u (t)u (t)
)+
(K 00 −M
)(u (t)u (t)
)=
(p (t)0
)(4.4.28)
となる.これを
My (t) + Ky (t) = b (t) (4.4.29)
とかくことにする.式 (4.4.29) の同次形に y = yreλrt を代入すれば,
r ∈ {1, · · · , d} に対して,固有方程式(λrM + K
)yr = 0Rd (4.4.30)
を得る.ここで,M は実正定値対称行列になるが,K は実対称行列でしかない.
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第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
式 (4.4.30) の固有値 λr は,式 (4.3.6) と一致する.また,固有ベクトルは,r ∈ {1, · · · , d} に対して
yr =
(ur
λrur
), yc
r =
(ucr
λcru
cr
)のような共役な 2d 個の複素ベクトルとなる.ここで,yr は M 直交性をもつことを考慮して,正規化条件を
ycp ·
(Myr
)= yp ·
(Myc
r
)= δpr
とおく.これらの固有ベクトル yr と ycr (r ∈ {1, · · · , d}) を用いて,
y (t) =
y1 (t)...
yd (t)
=(y1 · · · yd yc
1 · · · ycd
)
ξ1 (t)...
ξd (t)ξc1 (t)...
ξcd (t)
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第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
=
(U U c
UΛ U cΛc
)(ξ (t)ξc (t)
)=
∑r∈{1,··· ,d}
(yrξr (t) + ycrξ
cr (t)) = Y η (t) (4.4.31)
とかくことにする.ただし,
U =(u1 · · · ud
), Λ =
λ1 0 · · · 00 λ2 · · · 0...
.... . .
...0 0 · · · λd
(4.4.32)
である.
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第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
式 (4.4.29) に式 (4.4.31) の変換を代入し,Y T を左からかければ,
Y TMY η (t) + Y TKY η (t) = Y Tb (t) (4.4.33)
となる.ここで,yr の正規 M 直交性と K 直交性を用いれば,r ∈ {1, · · · , 2d}に対して
ηr (t) + γrηr (t) = yr · b (t) (4.4.34)
を得る.ただし,
γr =
{−λr = σr − iωDr (r ∈ {1, · · · , d})−λr = σr + iωDr (r ∈ {d+ 1, · · · , 2d})
(4.4.35)
である.式 (4.4.34) を Fourier 変換すれば
(iω + γr) ηr (ω) = yr · b (ω) (4.4.36)
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第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
となる.式 (4.4.31) に式 (4.4.36) を代入すれば,
y (ω) =
(u (ω)Λu (ω)
)=
(U U c
UΛ U cΛc
)(Σ (ω) 00 Σ∗ (ω)
)(UT U cT
ΛUT ΛcU cT
)(p (ω)0
)(4.4.37)
となる.ただし,
Σ (ω) = diag
(1
i (ω − ωDr) + σr
)r
, Σ∗ (ω) = diag
(1
i (ω + ωDr) + σr
)r
である.
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第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
式 (4.4.37) より,
u (ω) =∑
r∈{1,··· ,d}
(uru
Tr
i (ω − ωDr) + σr+
ucru
cTr
i (ω + ωDr) + σr
)p (ω)
= G (ω) p (ω) (4.4.38)
を得る.G (ω) は多自由度系の一般粘性減衰のときの周波数応答関数あるいは伝達関数を表す.さらに,
u (t) = F−1 [u (ω)] (4.4.39)
によって,時間関数の物理変位 u (t) に変換される.
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第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
モードを利用する方法の特徴は次のようである.
利点 • 不要な高次/低次モードを省略すれば自由度数を大幅に減少できる.
• モード変位によって応答における各モードの寄与度が評価できる.
欠点 • 固有値解析が必要である.• 各種非線形性を考慮できない.
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第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
例題 4.4.4 (2自由度ばね質点系の強制振動)
図 4.1 のような外力 p = (p1, p2)T が作用する 2自由度ばね質点系に対する変位
応答をモードを利用して求めよ.
k
p1
k
p2
k
m m
u1 u2
図 4.1: 外力が作用する 2自由度ばね質点系
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第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
解答 この系の運動方程式は,(m 00 m
)(u1
u2
)+
(2k −k−k 2k
)(u1
u2
)=
(p1p2
)(4.4.40)
のような非同次形の微分方程式となる.例題 4.2.1 では,同次形の固有方程式から,1次と 2次の固有円振動数は
ω1 =
√k
m, ω2 =
√3k
m(4.4.41)
となり,1次と 2次の正規固有振動モードは
u1 =
(u11
u12
)=
1√2m
(11
), u2 =
(u21
u22
)=
1√2m
(1−1
)となる結果を得ている.そこで,物理変位は
u (t) = Uξ (t) =
(u11 u21
u12 u22
)(ξ1 (t)ξ2 (t)
)=
1√2m
(1 11 −1
)(ξ1 (t)ξ2 (t)
)(4.4.42)
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第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
のようにモード変位 ξ (t) によって与えられる.式 (4.4.42) を式 (4.4.40) に代入して,左から UT をかければ,
1
2m
(1 11 −1
)(m 00 m
)(1 11 −1
)(ξ1 (t)
ξ2 (t)
)+
1
2m
(1 11 −1
)(2k −k−k 2k
)(1 11 −1
)(ξ1 (t)ξ2 (t)
)=
1√2m
(1 11 −1
)(p1 (t)p2 (t)
)となる.行列積を計算して,式 (4.4.41) を用いれば,(
1 00 1
)(ξ1 (t)
ξ2 (t)
)+
(ω21 00 ω2
2
)(ξ1 (t)ξ2 (t)
)=
1√2m
(1 11 −1
)(p1 (t)p2 (t)
)(4.4.43)
のような非連成方程式となる.式 (4.4.43) は
ξ1 (t) + ω21ξ1 (t) =
1√2m
(p1 (t) + p2 (t)) , (4.4.44)
ξ2 (t) + ω22ξ2 (t) =
1√2m
(p1 (t)− p2 (t)) (4.4.45)
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第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
となる.これらを Fourier 変換して,モード変位について解けば,
ξ1 (ω) =1√2m
1
ω21 − ω2
(1 1
)(p1 (ω)p2 (ω)
), (4.4.46)
ξ2 (ω) =1√2m
1
ω22 − ω2
(1 −1
)(p1 (ω)p2 (ω)
)(4.4.47)
となる.これらの式は
(ξ1 (ω)
ξ2 (ω)
)=
1√2m
1
ω21 − ω2
1
ω21 − ω2
1
ω22 − ω2
−1
ω22 − ω2
(p1 (ω)p2 (ω)
)(4.4.48)
のようにかくことができる.さらに,物理変位に変換すれば,
u (ω) =
(u1 (ω)u2 (ω)
)=
1√2m
(1 11 −1
)(ξ1 (ω)
ξ2 (ω)
)
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第 4 章 多自由度系の振動
強制振動
=1
2m
1
ω21 − ω2
+1
ω22 − ω2
1
ω21 − ω2
− 1
ω22 − ω2
1
ω21 − ω2
− 1
ω22 − ω2
1
ω21 − ω2
+1
ω22 − ω2
(p1 (ω)p2 (ω)
)
= G (ω) p (ω) (4.4.49)
となる.式 (4.4.18) に合わせれば,
u (ω) =1
2m
(1
ω21 − ω2
(11
)(1 1
)+
1
ω22 − ω2
(1−1
)(1 −1
))(p1 (ω)p2 (ω)
)(4.4.50)
となる.時間関数の物理変位 u (t) は(u1 (t)u2 (t)
)=
(F−1 [u1 (ω)]F−1 [u2 (ω)]
)(4.4.51)
によって得られる.□
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第 4 章 多自由度系の振動
まとめ
§4.5 まとめ
多自由度系の運動方程式を満たす変位の解を詳しくみてきた.
1 外力が作用しないときの運動方程式 (自由振動) は固有値問題になり,その解は固有対 (固有振動数と固有振動モード) で構成されることをみた.
2 外力が作用したときの運動方程式 (強制振動) の解の求め方をみてきた.• 方法 1: 時間積分による方法• 方法 2: 動剛性行列を利用する方法• 方法 3: モードを利用する方法
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第 4 章 多自由度系の振動
参考文献
参考文献
[1] 長松昭男.モード解析.培風館, 7 1985.
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