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- 508 - 第5編 参考資料編

第5編 参考資料編- 511 - ω L % Wa 図-5 塑 性 図 〔参考文献〕 (社)地盤工学会:土質試験の方法と解説 -第1回改訂版- (平成12年3月) 大 分

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- 508 -

第5編 参考資料編

- 509 -

《参考-1》土の基本的事項 1.地盤材料の分類 地盤材料の分類は,大分類,中分類及び小分類とし,目的に応じた分類段階まで行う。 地盤材料を,主に観察結果と粒度試験で得られる粒度組成,及び液性限界・塑性限界試験で得ら

れるコンシステンシー特性などに基づき,図-2(地盤材料全体)及び図-3,4(土質材料)を用

いて分類し,その分類名と分類記号を求める。但し,粗粒土の小分類は主に土質材料の粒度組成

により行い,細粒土の中分類,小分類は主に観察と塑性図(図-5),液性限界の値を用いて行う。

ここで,分類記号はゴシックもしくは〔 〕が大分類,{ }が中分類,( )が小分類として

区分する。

地 盤 材 料

岩石質材料     Rm

  石分≧50%

石分まじり土質材料 Sm-R

  0%<石分<50%

土質材料      Sm

  石分=0%

注:含有率%は地盤材料に対する質量百分率

図-2 地盤材料の工学的分類体系

粒径で区分

観察により

起源で区分

土質材料Sm

礫質土    〔G〕

 礫分>砂分

注:含有率%は土質材料に対する質量百分率

図-3 土質材料の工学的分類体系(大分類)

砂質土    〔S〕

 砂分≧礫分

粗粒土Cm

粗粒分>50%

粒径で分類

細粒土Fm

細粒分≧50%

観察で分類

粘性土    〔Cs〕

有機質土   〔O〕

火山灰質粘性土〔V〕

高有機質土Pm    高有機質土  〔Pt〕

有機物を多く含むもの

人工材料 Am    人工材料   〔A〕

人工的に加工したもの

- 510 -

大  分  類 中    分    類 小    分    類

土質材料区分 土質区分 主に観察による分類 三角座標上の分類

礫          (G)

細粒分<5%砂 分<5%

砂まじり礫      (G-S)

細粒分<5%5%≦砂分<15%

細粒分まじり礫    (G-F)

5%≦細粒分<15%砂分<5%

細粒分砂まじり礫   (G-FS)

5%≦細粒分<15%5%≦砂 分<15%

砂質礫        (GS)

細粒分<5%15%≦砂分

細粒分まじり砂質礫  (GS-F)

5%≦細粒分<15%15%≦砂分

細粒分質礫      (GF)

15%≦細粒分砂 分<5%

砂まじり細粒分質礫  (GF-S)

15%≦細粒分5%≦砂 分<15%

細粒分質砂質礫    (GFS)

15%≦細粒分15%≦砂 分

砂          (S)

細粒分<5%礫 分<5%

礫まじり砂      (S-G)

細粒分<5%5%≦礫分<15%

細粒分まじり砂    (S-F)

5%≦細粒分<15%礫分<5%

細粒分礫まじり砂   (S-FG)

5%≦細粒分<15%5%≦礫 分<15%

礫質砂        (SG)

細粒分<5%15%≦礫分

細粒分まじり礫質砂  (SG-F)

5%≦細粒分<15%15%≦礫分

細粒分質砂      (SF)

15%≦細粒分礫 分<5%

礫まじり細粒分質砂  (SF-G)

15%≦細粒分5%≦礫 分<15%

細粒分質礫質砂    (SFG)

15%≦細粒分15%≦礫 分

礫      {G}砂分<15%

砂礫     {GS}15%≦砂分

細粒分まじり礫{GF}

砂      {S}礫分<15%

礫質砂    {SG}15%≦礫分

細粒分まじり砂{SF}

細粒分<15%

15%≦細粒分

細粒分<15%

15%≦細粒分

礫質土〔G〕 礫分>砂分

砂質土〔S〕 砂分≧礫分

粗粒土 Cm 粗粒分>50%

注:含有率%は土質材料に対する質量百分率

図-4 土質材料の工学的分類体系(粗粒土の工学的分類体系)

- 511 -

〔参考文献〕 (社)地盤工学会:土質試験の方法と解説 -第 1回改訂版- (平成 12年 3月)

大  分  類 中  分  類 小    分    類

土質材料区分 土質区分 観察・塑性図上の分類 観察・液性限界等に基づく分類

ωL<50%

細粒土 Fm 細粒分≧50%

図-4 土質材料の工学的分類体系(主に細粒土の工学的分類体系)

ωL≧50%

シルト(低液性限界)    (ML)

シルト(高液性限界)    (MH)シルト    {M} 塑性図上で分類

ωL<50%

ωL≧50%

粘 土(低液性限界)    (CL)

粘 土(高液性限界)    (CH)粘 土    {C} 塑性図上で分類

粘性土    〔CS〕

ωL<50% 有機質粘土(低液性限界)  (OL)

ωL≧50% 有機質粘土(高液性限界)  (OH)

有機質で,火山灰質 有機質火山灰土       (OV)

有機質土   {O}有機質土   〔O〕 有機質,暗色で有機臭あり

ωL<50% 火山灰質粘性土(低液性限界)

火山灰質粘性土(Ⅰ型)   (VH1)

(VL)

火山灰質粘性土(Ⅱ型)   (VH2)

50%≦ωL<80%

ωL≧80%

火山灰質粘性土{V}火山灰質粘性土〔V〕 地質的背景

泥炭            (Pt)未分解で繊維質

黒泥            (Mk)分解が進み黒色高有機質土  {Pt}高有機質土  〔Pt〕高有機質土Pm

 有機物を多く含むもの

廃棄物           (Wa)

改良土           (I)

廃棄物    {Wa}

改良土    {I}人工材料   〔A〕人工材料 Am

塑性

指数

p

20 50 100 150 200006

20

50

100

塑 性 図

B線

(CH)

 (CL) (MH)A線:Ip=0.73(ωL-20)B線:ωL=50

液 性 限 界 ωL (%)

A線

図-5 塑  性  図

(ML)

- 512 -

2.岩の分類

〔参考文献〕

土木工事等共通仕様書(平成 19 年 3 月) 第 3章 施工共通事項

(社)日本道路協会:道路土工-土質調査指針(昭和 61年 11 月)

名     称

A B C説       明 摘     要

岩塊・玉石

岩塊・玉石

岩塊,玉石は粒径 7.5cm 以上とし,丸み

のあるものを玉石とする。

玉石まじり土,岩塊,破砕された

岩,ごろごろした河床

第三紀の岩石で固結の程度が弱いもの。

風化が甚だしく極めてもろいもの。

指先で離しうる程度のもので,亀裂間隔

は1~5㎝くらいのもの及び第三紀の岩石

で固結の程度が良好なもの。

風化が相当進み,多少変色を伴い軽い打

撃で容易に割れるもの,離れ易いもの

で,亀裂間隔は5~10cm 程度のもの。

軟   

凝灰質で堅く固結しているもの,風化が

目に沿って相当進んでいるもの。

亀裂間隔が 10~30cm 程度で軽い打撃に

より離しうる程度。

異質の硬い互層をなすもので層面を楽に

離しうるもの。

弾性波速度

700~2,800m/sec

石灰岩,多孔質安山岩のように,特にち

密でなくても相当の硬さを有するもの,

風化の程度があまり進んでいないもの,

硬い岩石で間隔30~50cm程度の亀裂を有

するもの。

弾性波速度

2,000~4,000m/sec

花崗岩,結晶片岩などで全く変化してい

ないもの,亀裂間隔が 1m内外で相当密

着しているもの,硬い良好な石材をとり

得るようなもの。

硬   

珪岩,角岩などの石英質に富む岩質で最

も硬いもの,風化していない新鮮な状態

のもの,亀裂が少なく,良く密着してい

るもの。

弾性波速度

3,000m/sec 以上

 ※ 摘要欄の弾性波速度については,目安の数値である。

- 513 -

3.数学的性質

① 土粒子の密度(ρs ) ρs = (g/cm3)

② 湿 潤 密 度 (ρt ) ρt = (g/cm3)

③ 乾 燥 密 度 (ρd ) ρd = (g/cm3)

④ 含 水 比 (ω) ω =    ×100 (%)

⑤ 含 水 率 (ωm ) ωm =    ×100 (%)

⑥ 間 隙 比 (е) е =

⑦ 間 隙 率 (n) n =    ×100 (%)

⑧ 飽 和 度 (Sr ) Sr =   ×100 (%)

⑨ 空気間隙率 (υa ) υa =   ×100 (%)

V :土全体の体積   m :土全体の質量

VS:土粒子の体積   mS:土粒子の質量

Vω:水の体積   mω:水の質量

Va:空気の体積   ma:空気の質量

Vυ:土の間隙部分の体積

msVs

msV

mω

ms

mω

Vυ

Vs

Vυ

Vω

Vυ

Va

空  気

土 粒 子

ma = 0

 mS= VS・ρS

  mω = Vω・ρω   m = V・ρtVυ

Va

Vω

VS

- 514 -

なお,水で飽和している土については,Sr=100%,υa=0とすればよい。

〔参考文献〕

(社)地盤工学会:土質試験の方法と解説 -第 1回改訂版-(平成 12 年 3月)

  ⑩ 各相関関係

・ ρd=        = (g/cm3)

・ е=    -1

・ ρt=       100   =      100 (g/cm3)

・ Sr= (%)

・ ρs= (g/cm3)

・ ωm=        ×100 (%)

・ ω=        ×100 (%)

・ n=     ×100 (%)

・ е=

1+е

е

100-n

ρs

ρd

(1+е)

ρω・ 1+ ω

1+(   )100ω

ρs

1+е

ρt

ω・ρs

е・ρω

Sr・е・ρωω

ω

100+ω

ωm

100-ωm

(1+е)

ρω・е・ Sr +ρs

- 515 -

《参考-2》土の締固め管理

1.締固めの基準

締固めは,重要な作業であるから,盛土の設計に当たっては締固めの程度,締固め時の含水比,

施工層厚などの締固めに関する基準を定めておかなければならない。

規定の方式には,大別して品質規定方式と工法規定方式の 2つがある。両者の適用にはそれぞ

れの適・不適があるから,両者の特色をよく理解し,盛土の構造物としての重要度,規模,土質

条件などの現場の状況に応じて適当なものを採用する。

(1)品質規定方式

a.基準試験の最大乾燥密度,最適含水比を利用する方法(乾燥密度規定と略称)

最も一般的な方法である。これは現場で締固めた土の乾燥密度と基準の締固め試験の最大乾燥

密度との比を締固め度と呼び,この値を規定する方法である。(図-1参照)

締固め度=

基準となる室内締固め試験としては,JIS

A1210「突き固めによる土の締固め試験方法」

の突固め方法の呼び名のA方法及びD(また

はE)方法が用いられることが多い。

施工時の土の含水比を最適含水比ωopt を

標準として一定の範囲内にあるよう要求する

こともある。

道路盛土では,施工含水比がωopt と 90%

(または 85%)締固め度の得られる湿潤側の

含水比の範囲を規定値として用いている。

b.空気間げき率または飽和度を施工含水比で規定する方法

(空気間げき率または飽和度規定と略称)

締固めた土が安定な状態である条件として,空気間げき率または飽和度を一定の範囲内にあ

るように規定する方法である。

現場における締固めた土の飽和度及び空気間げき率は,現場の土の単位体積質量を測定して

次の式から求める。

乾燥側

最適含水比

湿潤側

含水比ω(%)

乾燥密度ρ

d(t

/m3 )

0.9×ρdmax

ρdmax

最大乾燥密度

ωopt

突固め曲線

ゼロ空気間げき率曲線

図-1 乾燥密度で規定する方法

飽和度 Sr= =×100

Sd ρ

ρ

ρ

ρ

ω

ωω − (%)

空気間げき率 υa= )100(100100ω S

dρρ

ωρ +−=× (%)

現場における締固め後の乾燥密度(ρd) ×100(%)

基準となる室内締固め試験における最大乾燥密度(ρdmax)

Vω

Vυ

Va

- 516 -

この方法は,

① 密度管理の適用が困難な土

② 各種の土が混入し,その混合割合が変化し,基準となる最大乾燥密度を決めがたい場合

③ 試料の乾燥の程度によって,最大乾燥密度や最適含水比が変化する土

④ 自然含水比が最適含水比より著しく高く,施工含水比の調整が困難な土

⑤ 泥岩・凝灰岩などのスレーキングによる沈下が問題となるぜい弱岩

などに適用しており,土木工事施工管理基準においてυa=2~10%,Sr=85~95%で管理

することになっている。

(2)工法規定方式

盛土の締固めに使用する締固め機械,締固め回数などの工法そのものを規定する方法である。

盛土材料の土質,含水比があまり変化しない現場では,この方法は便利である。

しかし,この方法を適用する場合には,あらかじめ現場締固め試験を行って盛土が所定の性

質を持つように締固まるかどうかを調べておく必要がある。この方法は,岩塊,玉石などの場

合には特に便利である。

(3)締固め機械

締固めに用いる機械は,その現場にあった機種を選定することが,締固め管理の第一歩であ

る。以下に主要な締固め機械の特性を示す。

①主要締固め機械諸元

重 量(t) 線 圧(kgf/cm)

機 種 型 式 自 重 バラスト付 前 輪 後 輪

備 考

標 準 6~10 9~13 22~32 62~82 マカダ

ム3輪 屈 折 9~11 11~15 50~60 53~65 ロードローラ

タンデム2輪 6~8 9~10 30~36 40~48

舗装・路盤

(土工も可)

バラスト付重量(t) タイヤ本数 機 種 型 式

自 重

(t) 計 前輪 後輪 前 輪 後 輪 備 考

3 3.2 1.9 1.3 4 3

5 15 6.7 8.3 4 5

8.5 20 8.5 11.5 4 5 土工及び

8.5 20 8.5 11.5 3 4 舗装・路盤

11~13 27~30 12~17 12~17 3~5 4

タイヤローラ

自走式

被けん

引式は

使用例

少なし

16 35 15 20 3 4

ここに, Sr : 飽和度(%) υa : 空気間隙率(%) V : 土の体積(cm3) Va : 土中の空気間隙体積(cm3)

Vω : 土中の水の体積(cm3) ρω : 水の密度(g/cm3) ρd : 乾燥密度(g/cm3) ρs : 土粒子の密度(g/cm

3) ω : 現場で測定した含水比(%)

- 517 -

振動輪 機 種 型 式

自 重

(t) 片輪 両輪

起振力

(tf)

最大振動数

(vpm) 備 考

0.5~0.6 ○ 1.5 前後 3000~3500

0.7~0.8 ○ 2 〃 ハンドガイド式

0.9~1.0 ○ 2.5 〃

土工及び

舗装・路盤

タンデム式

片輪振動 1.5~4.0 ○ 1.5~4.0 3000 前後

舗装・路盤

(土工も可)

タンデム式

両輪振動 2.5~20 ○ 2.5~20 〃 〃

コンバインド式

フラットタイヤ付 1.5~12 ○ 1.5~10 〃 〃

4~7 ○ 6~13 1800

10 ○ 20 〃 駆 動 用

タイヤ付 15~18 ○ 30 〃

6 ○ 20 1500

振動ローラ

型 被けん引式 10~15 ○ 30~40 〃

平滑輪型及びタ

ンピング型あり

ハンドガイド式 0.04~0.35 0.6~3.5 3000~6000振動

コンパクタ 油圧組合せ式 0.15~1.35 1.5~17 2400

土工・路盤

自 走 式 20,30 バラスト付 22,35t タンピング

ローラ 被けん引式 2~13 〃 3~21t 土 工

タンパ

(ランマー) 0.06~0.12

打撃数

500~700 〃

標準型 7~21 ブルドーザ

湿地型 7~28 〃

(注)本表は各社の製品を大まかに区分整理してまとめたものである。

また,欄内の(~)はその範囲にいくつかの機種があることを示す。

- 518 -

◎:有効なもの ○:使用できるもの ●:トラフィカビリティの関係で,他の機種が使用できないのでやむを得ず使用するもの ★:施工現場の規模の関係で,他の機種が使用できない場所でのみ使用するもの

〔参考文献〕(財)地域開発研究所:土木施工管理技術テキスト -土木一般編-(改訂第 4版)

(社)土質工学会:土質基礎工学ライブラリー36 「土の締固めと管理」

ブルドーザ

振動コンパクタ

締固め機械 土質区分

ロードローラ

タイヤローラ

振動ローラ

自走式タンピングローラ

被けん引式タンピングローラ

普 通 型

湿

タンパ

備 考

岩塊などで掘削・締固めによっても容易に細粒化しない岩

◎ ★ ★ 硬岩

風化した岩,土丹などで部分的に細粒化してよく締固まる岩

○ ◎ ○ ○ ★ ★ 軟岩

単粒度の砂,細粒分の欠けた切込砂利,砂丘の砂など

○ ★ ★砂

礫混じり砂 細粒分を適度に含んだ粒度分布のよい締固め容易な土,まさ,山砂利など

◎ ◎ ○ ★ ★砂,砂質土 礫混じり砂質土

細粒分は多いが鋭敏比の低い土,低含水比の関東ローム,破砕の容易な軟岩

○ ◎ ◎ ★粘性土

礫混じり粘性土

含水比調節が困難でトラフィカビリティが容易に得られない土,シルト質土など

● 水分を過剰に 含んだ砂質土

関東ロームなど,高含水比で鋭敏比の高い土

● ● 鋭敏な粘性土

粒度分布のよいもの ○ ◎ ◎ ★ ★ 粒調材料 路

単粒度の砂及び粒度の悪い礫混じり砂,切込砂利など

〇 〇 ◎ ★ ★砂

礫混じり砂

裏 込 め ○ ◎ ★ ★ドロップハン マーを使うこ ともある

砂 質 土 ◎ ◎ ★

粘 性 土 ○ 〇 〇 ★

面 鋭敏な粘土,粘性土 ● ★

- 519 -

② 建設機械(締固め機械)

ブ ル ド ー ザ ( 普 通 ) 振動ローラ(コンバインド型)

振動ローラ(タンデム型)

タ イ ヤ ロ ー ラ

ロードローラ(マカダム両輪駆動)

振動ローラ(ハンドガイド式)

タンパ

ブルドーザ(普通)

振動ローラ(タンデム型)

振動ローラ(コンバインド型)

タイヤローラ

振動ローラ(ハンドガイド式)

ロードローラ(マカダム両輪駆動)

タンパ

- 520 -

《参考-3》土質とN値 我国の多くの設計基準(示方書)は,N値が分かれば一応の設計が可能となるように作成されて

いる。また,N値は非常に多くの現場で測定され,そのデータが蓄積されているし,また杭の載荷

試験や地耐力試験の結果等と比較され,かなりの精度で設計に必要な土質定数が推定できるように

なっている等,実用面での価値は高い。 しかしながら,N値の持つ意味が土質により大きく変わるということが理解されないまま,機械

的に使われていることも少なくない。つまり,同じN値であっても,土質により工学的性質が非常

に異なることに注意する必要がある。これを定性的に示すと下図(N値と地盤の良否)のようにな

る。

粘性土層ではN値が小さくても良好な地盤であるのに対し,砂,礫と粒径が大きくなるにし

たがって,N値が大きくないと良好な地盤とは言えなくなる。

<参考:粘性土と砂質土でのN値による取扱いの相違>

道路橋示方書・同解説などには粘性土層と砂質土層で,下表のとおりN値の取扱いを変えてい

る。

また,N値から許容地耐力(qa)を次式のように判断しても大きな誤りはないと考えられてい

る。

・礫 層 qa =N/2 (tf/㎡)

・砂 層 qa =N (tf/㎡)

・粘 土 層 qa =2.5N (tf/㎡)

〔参考文献〕(社)土質工学会:N値およびC・φ -考え方と利用法-(1992)

粘土層 砂層 礫層

地盤の良否

土 質

土 性 粘性土層 砂質土層

地盤基盤面 N値 25 以上 N値 50 以上

せん断波速度

(m/s)

Vs=100N1/3

(1≦N≦25)

Vs=80N1/3

(1≦N≦50)

摩 擦 力

打ち込み杭

fs = N

(≦15)

fs = 0.2N

(≦10)

場所打ち杭 fs = N

(≦15)

fs = 0.5N

(≦20)

良質な支持層

(直接基礎) N値≧20* N値≧30

*粘性土層が基礎底面下 3mかつ基礎幅×0.5 以上深い位置にある時はN値≧8の粘性土を

良質な支持層とする。

小 大 N値

- 521 -

《参考-4》切土のり面勾配 自然地盤は,不均質な土砂・岩塊,節理・層理などの地質的な不連続面や風化・変質部を含むた

め,究めて複雑で不均一な構成となっている。しかも,切土のり面は降雨や地震あるいは経年的な

風化によって,施工後徐々に不安定となっていくものであるため,精度の高い地盤定数を設定して

有意な安定計算ができるケースは,均一な土砂等を除きほとんどないと考えてよい。したがって,

一般的な場合においては,下表の標準値を参考として,のり面・斜面安定のための調査結果や用地

条件及び維持管理の条件などを総合的に判断して,のり面勾配を決定すべきである。

③シルトは粘性土に入れる。

④上表以外の土質は別途考慮する。

⑤のり面の植生工を計画する場合には次表の「勾配と植物の生育状態」も考慮する。

切土に対する標準のり面勾配

地山の土質 切 土 高 勾 配

硬 岩 1:0.3~1:0.8

軟 岩 1:0.5~1:1.2

砂 密実でない粒度分布の

悪いもの 1:1.5~

5m以下 1:0.8~1:1.0 密実なもの

5~10m 1:1.0~1:1.2

5m以下 1:1.0~1:1.2 砂 質 土

密実でないもの 5~10m 1:1.2~1:1.5

10m以下 1:0.8~1:1.0 密実なもの,または粒

度分布のよいもの 10~15m 1:1.0~1:1.2

10m以下 1:1.0~1:1.2

砂利または岩塊

混じり砂質土 密実でないもの,また

は粒度分布の悪いもの 10~15m 1:1.2~1:1.5

粘 性 土 10m以下 1:0.8~1:1.2

5m以下 1:1.0~1:1.2 岩塊または玉石

混じりの粘性土

5~10m 1:1.2~1:1.5

注)①上表の標準勾配は地盤条件,切土条件等により適用できない場合がある。 ②土質構成等により単一勾配としないときの切土高及び勾配の考え方は下図のよう

にする。

ha

hb

ha:aのり面に対する

   切土高

hb:bのり面に対する

   切土高

・ 勾配は小段を含めない。

・ 勾配に対する切土高は当

該切土のり面から上部の

全切土高とする。

- 522 -

〔参考文献〕(社)日本道路協会:道路土工―のり面工・斜面安定工指針―(平成 11年 3月)

P137~138,P220

勾配と植物の生育状態 勾 配 植物の生育状態

1:1.7 より緩

(30 度以下)

高木が優占する植生の復元が可能。

周辺からの在来種の侵入が容易。

植物の生育が良好で,植生被覆が完成すれば表面浸

食はほとんどなくなる。

1:1.7~1:1.4

(30~35 度)

放置した場合に周辺からの自然侵入によって植物群

落が形成されるためには 35 度以下の勾配であるこ

とが必要。

1:1.4~1:1.0

(35~45 度)

中・低木が優占し,草本類が地表を覆う植物群落の

造成が可能。

1:1.0~1:0.8

(45~50 度)

低木や草本類からなる樹高や草丈の低い植物群落の

造成が可能。高木を導入すると,将来基盤が不安定

になる恐れがある。

1:0.8 より急

(50 度以上) 植生工以外ののり面保護工が原則である。

※植物群落:森林や草原等の一定の相観(外形)と種類構成を持つ植物の集合体をいう。 植生を区分する際の単位であり,本指針では緑化の目標を草地型,低木林

型といった群落タイプにより表している。

- 523 -

《参考-5》薬液注入工法による建設工事の施工に関する暫定指針

薬液注入工法による建設工事の施工に関する暫定指針について

昭和 49 年 8 月 16 日 49 地第 1940 号

大臣官房地方課長から各地方農政局長あて

薬液注入工法による建設省所管の建設工事の施工については,先に昭和 49年 5月 2 日付け建設省

官技発第 102 号をもって指示したところであるが,今般,その取扱いについて,別添のとおり薬液

注入工法による建設工事の施工に関する暫定指針を定めたので,下記事項に留意し,その取扱いに

ついて遺憾なきを期せられたい。

記 1.この暫定指針は,今後新たに着手する薬液注入工法による建設省所管の建設工事に適用する

ものであること。

2.この暫定指針は,現段階においては,薬液の地中での性質が必ずしも明らかでないものがあ

ることにかんがみ,安全性重視の観点に立って,その性質が明確になるまでの間,薬液の種類

を限定することとしたが,今後研究の進展に伴い,その見直しを行うものであること。

3.現在,薬液の注入を一時中止している工事の再開については,次の各号に定めるところによ

ること。

(1) 周辺の井戸水に関し,別表 1に掲げる検査項目について,同表の検査方法により,検査を

行い,その測定値が同表に掲げる水質基準に適合しているか否かを確認すること。この場合

において,同基準に適合していないものがあるときは,簡易水道の敷設等飲料水の確保に関

し代替措置を講じること。

(2) 再開工事において使用する薬液は,水ガラス系の薬液で劇物又はふっ

弗素化合物を含まないも

のに限るものとする。

(3) 再開工事の施工については別添暫定指針第 3章の,また,同工事の施工に伴う地下水等の

水質の監視については同第 4章の例によること。

(4) この暫定指針でその使用を認められていない薬液を注入した地盤を掘削することとなる場

合においては,次によること。

(イ) 掘削残土の処分に当たっては,地下水等としゃ断すること。

(ロ) 地下水等の水質の監視については,別表1に定める検査項目,検査方法及び水質基準によ

り行うこと。この場合において,採水回数は,薬液注入完了後 1年間,1月に 2回以上行う

ものとする。

(ハ) 排出水の処理に当たっては,別表 2の基準に適合するように行うこと。

4.なお,この暫定指針においては,工事施工中緊急事態が発生し,応急措置として,行うもの

については適用除外とすることとしたが,この通知の趣旨にかんがみ安全性の確保に努め,

特に地下水等の水質の事後の監視については,上記 3の(4)に準じて厳重に行うこと。

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別表-1 水 質 基 準

薬液の種類 検 査 項 目 検 査 方 法 水 質 基 準 備 考

水素イオン濃度

水質基準に関する省令(昭和

41年厚生省令第11号。以下「厚

生省令」という。)又は日本工

業規格K0102 の 8 に定める方

pH 値 8.6 以下であ

ること。

過マンガン酸カリ

ウム消費量

厚生省令に定める方法

10ppm 以下である

こと。

薬液成分として有機

物を含むものに限

る。

水ガラス系

ふっ

弗素

厚生省令に定める方法

0.8ppm 以下である

こと。

薬液成分として弗素

化合物を含むものに

限る。

尿 素 系

ホルムアルデヒド

日本薬学会協定衛生試験法の

うち保存料試験法の 17.b-1

による方法

検出されないこ

と。

アクリルア

ミド系

アクリルアミド

ガスクロマトグラフ法(試料

を 10 倍に濃縮し,炎イオン化

検出器を用いて測定するもの

に限る。)

検出されないこ

と。

リグニン系

六価クロム

厚生省令に定める方法

0.05ppm 以下であ

ること。

注:検出されないこととは,定量限界以下をいう。

定量限界は,次のとおりである。

ホルムアルデヒド 0.5ppm

アクリルアミド 0.1ppm

- 525 -

別表-2 排 水 基 準

薬液の種類 検 査 項 目 検 査 方 法 水 質 基 準 備 考

水素イオン濃度

日本工業規格K0102 の 8 に定

める方法

排水基準を定める

総理府令(昭和 46

年総理府令第 35

号。以下「総理府

令」という。)に定

める一般基準に適

合すること。

生物化学的酸素要

求量又は化学的酸

素要求量

日本工業規格K0102の16又は

13 に定める方法

総理府令に定める

一般基準に適合す

ること。

薬液成分として有機

物を含むものに限

る。

水ガラス系

ふっ

弗素

日本工業規格K0102の28に定

める方法

総理府令に定める

一般基準に適合す

ること。

薬液成分として弗素

化合物を含むものに

限る。

水素イオン濃度

日本工業規格K0102 の 8 に定

める方法

総理府令に定める

一般基準に適合す

ること。

尿 素 系

ホルムアルデヒド

日本薬学会協定衛生試験法の

うち保存料試験法の17.b-1 に

よる方法又は日本工業規格K

0102 の 21 に定める方法

5ppm 以下であるこ

と。

アクリルア

ミド系

アクリルアミド

ガスクロマトグラフ法(炎イ

オン化検出器を用いて測定す

るものに限る。)

1ppm 以下であるこ

と。

リグニン系

六価クロム

日本工業規格K0102 の 51.2.1

に定める方法

総理府令に定める

一般基準に適合す

ること。

- 526 -

薬液注入工法による建設工事の施工に関する暫定指針

昭和 49 年 7 月 10 日

建 設 省

第1章 総 則

( 解 説 )

目的にいう,人の健康被害とは,工事現場付近の地下水等を利用する住民の健康被害の発生防止

はもとより,工事関係者の健康被害をも含むものである。また,地下水等とは,地下水及び河川・

湖沼・海域等の公共用水を含むものである。

この暫定指針は,本指針が定められるまでの間使用されることは言をまたないが,昭和60年6月

現在未だに効力を有している。

(参考)公害対策基本法,水質汚濁防止法,労働基準法,労働安全衛生法等

( 解 説 )

暫定指針は,建設省事務次官名で通達したもので,建設省所管の建設工事に適用されるが,他省

庁及び都道府県にも参考資料として送付しており,他省庁における薬液注入工事も本暫定指針に基

づいて施工されている。

工事施工中緊急事態が発生した場合の応急措置として施工する場合には,この暫定指針を適用し

ないこととしているが,これは作業従事者の安全と災害の防止を考慮したからである。

応急措置とは,何らかの緊急事態が発生し工事の続行が困難となった場合で,薬液注入工法を採

用し災害の発生防止を図るとか,水ガラス系薬液ではその目的達成が困難であることが明らかとな

り,水ガラス系以外の薬液を使用するほかに工事を進める方法がない場合の措置である。この場合

であっても地下水の監視については,第 4章に準じて厳格に行わなければならない。

(参考)毒物劇物取締法

1-1 目 的

この指針は,薬液注入工法による人の健康被害の発生と地下水等の汚染を防止するために必要

な工法の選定,設計,施工及び水質の監視についての暫定的な指針を定めることを目的とする。

1-2 適用範囲

この指針は,薬液注入工法による建設工事に適用する。ただし,工事施工中緊急事態が発生し,

応急措置として行うものについては,適用しない。

1-3 用語の定義

この指針において,次に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 薬液注入工法

薬液を地盤に注入し,地盤の透水性を減少させ,又は地盤の強度を増加させる工法をいう。

(2) 薬 液

次に掲げる物質の一以上をその成分の一部に含有する液体をいう。

イ けい酸ナトリウム

ロ リグニン又はその誘導体

ハ ポリイソシアネート

ニ 尿素・ホルムアルデヒド初期縮合物

ホ アクリルアミド

- 527 -

( 解 説 )

薬液注入工法とは,何らかの方法で地中に薬液を注入し,地中において固結せしめる方法をいう。

薬液は,当時市場に出廻っていたものを挙げたもので,その後に開発された薬液についても,暫

定指針に沿うように運用されるべきである。

上記に示すように,薬液とは配合した注入液を示している。またシリカゾル系(非アルカリ系)

は暫定指針による規制以後に開発されたものであるが,暫定指針に沿って運用している。

第2章 薬液注入工法の選定

( 解 説 )

薬液注入工法の採用の決定に当たり,同工法が採用される箇所については,あらかじめ土質調査,

地下埋設物調査及び地下水位調査を行うこととしている。それらの調査結果に基づいて,先ず同工

法以外の工法を検討し,同工法によらなければ工事の実施が困難であると認められる場合に限って

同工法が採用できるとしている。

工事の実施が困難である場合とは,技術的,あるいは財政的の両面があるが,薬液で固めないと

切羽の崩壊が防げないとか,近接の構造物の保護が出来ないとか,地盤沈下等の被害が起きるなど

の場合がある。また,これらの調査資料は同工法を採用する場合の工事計画をたてるためにも活用

されるものである。

2-1 薬液注入工法の採用

薬液注入工法の採用は,あらかじめ 2-2 に掲げる調査を行い,地盤の改良を行う必要がある

箇所について他の工法の採用の適否を検討した結果,薬液注入工法によらなければ,工事現場の

保安,地下埋設物の保護,周辺の家屋その他の工作物の保全及び周辺の地下水位の低下の防止が

著しく困難であると認められる場合に限るものとする。

2-2 調 査

薬液注入工法の採用の決定に当たって行う調査は,次のとおりとする。

(1) 土質調査

土質調査は,次に定めるところに従って行うものとする。

(イ) 原則として,施工面積 1,000m2につき 1 箇所,各箇所間の距離 100mを超えない範囲

でボーリングを行い,各層の試料を採取して土の透水性,強さ等に関する物理的試験及び

力学的試験による調査を行わなければならない。

(ロ) 河川の付近,旧河床等局部的に土質の変化が予測される箇所については,(イ)に定める

基準よりも密にボーリングを行わなければならない。

(ハ) (イ),又は(ロ)によりボーリングを行った各地点の間は,必要に応じサウンディング等に

よって補足調査を行い,その間の変化を把握できるように努めなければならない。

(ニ) (イ)から(ハ)までにかかわらず,岩盤については,別途必要な調査を行うものとする。

(2) 地下埋設物調査

地下埋設物調査は,工事現場及びその周辺の地下埋設物の位置,規格,構造及び老朽度につ

いて,関係諸機関から資料を収集し,必要に応じつぼ掘により確認して行うものとする。

(3) 地下水位調査

地下水位調査は,工事現場及びその周辺の井戸等について,次の調査を行うものとする。

(イ) 井戸の位置,深さ,構造,使用目的及び使用状況

(ロ) 河川,湖沼,海域等の公共用水域及び飲用のための貯水池並びに養魚施設(以下「公共

用水域等」という。)の位置,深さ,形状,構造,利用目的及び利用状況

- 528 -

( 解 説 )

(1) 土質調査

調査範囲については,薬液注入工事を施工する区域及び工事の実施により,影響が予測され

る周辺区域とするが,工事内容,土質,地下水の状況及び施工法によって異なるので個々の現

場ごとに既応のデータなどを参考にして決定すべきものである。

ボーリング箇所の選定は,薬液注入箇所及びその周辺の土質の全般的な状況が把握できるよ

うに行うものである。

土質調査は,「市街地土木工事公衆災害防止対策要綱」の「土留工に係わる土質調査の項」

を準用したものである。

岩盤に関しては,山岳トンネルを考慮したもので,ボーリングに限らず現場の実情に合った

調査を行うこととしたものである。

土の物理的試験及び力学的試験も併せて行うことが適切である。

(参考)「市街地土木工事公衆災害防止対策要綱」の「土留工に係わる土質調査の項」

(2) 地下埋設物調査

地下埋設物には,水道,下水道,ガス,電話,電力等の施設があるが,これらの地下埋設物

に直接ボーリングによって損傷を与えないように,また地下埋設物内に薬液が流入しないよう

に,更に薬液の圧力によって変形を与えないように注意しなければならない。

工事箇所及びその周辺の地域にある地下埋設物については,その位置,規格,構造及び老朽

度に関して,その所有者及び関係機関から資料を収集し,また必要に応じ,つぼ掘によって確

認しておかなければならない。

工事の施工によって,これらの地下埋設物等が受ける影響を充分把握しておく必要がある。

また,保安上必要な措置,防護方法,事故時の対策等を検討しておく必要がある。

(3) 地下水位調査

地下水位調査は現場周辺の地下水の状況,河川等の公共用水域等の状況を知るために不可欠

の調査である。

代替工法としての地下水位低下工法等の検討に必要であるばかりでなく,薬液注入工事にお

ける水質監視に関する資料を得るために必要である。従って,水質検査も当然行っておくべき

である。

(参考)公害対策基本法,水質汚濁防止法,水道法,下水道法,各環境基準

( 解 説 )

薬液注入工法に使用できる薬液については,暫定指針制定の趣旨に記載のとおり,安全性重視の

観点に立って,毒物及び劇物に指定されている薬剤を除き,さらに毒性に関する資料がなく安全性

が確認されにくい薬剤をも除いて,劇物又は弗素化合物を含まない水ガラス系の薬液を使用できる

こととしたものである。

水ガラスは劇物に指定されている物質ではなく,健康被害に関係のある重金属を含まないもので

ある。硫酸,苛性ソーダ等の強酸,強アルカリは一定の濃度以上になると劇物に指定されているの

に対し,水ガラスはアルカリ性物質であるが劇物には指定されていない。そのため施工管理及び水

質監視を充分に行って使用できることとした。

また,硅ふっ化ソーダ,硅ふっ化マグネシウム等の弗素化合物を硬化剤として使ってはならない

こととした理由は,劇物に指定されていなくとも弗素は上水道の水質基準に関する省令で許容量が

定められている物質であるからである。

2-3 使用できる薬液

薬液注入工法に使用する薬液は,当分の間水ガラス系の薬液(主剤がけい酸ナトリウムである

薬液をいう。以下同じ。)で劇物又は弗素化合物を含まないものに限るものとする。

- 529 -

リグニン又はその誘導体を含む薬液は,重クロム酸カリを硬化剤として用いるものがあるがクロ

ム酸カリは劇物であるので使用できないこととした。

ポリイソシンアネートを含む薬液は,ウレタン系と称されているもので,他の薬液と反応の仕方

が違い水と反応して重合物を作るものである。混合反応については,他の二液混合のものに比べて,

確実性が高いと考えられているが,反応の実態が解明されておらず,また最近開発されたものであ

るため,使用実績が少なく不明な点が多いので,使用できないこととした。

尿素系は,発生強度が大きいことが特徴である。主剤としてメチロール尿素,ホルマリン,助剤

として尿素,また硬化剤として無機酸類を使用している。この縮合反応の過程でホルマリンが遊離

するホルムアルデヒドは劇物に指定されているので使用できないこととした。

アクリルアミド系薬液は,アクリルアミドモノマーが劇物に指定されたので使用できないことと

した。

(参考)毒物劇物取締法,水道法(水質基準)

( 補 足 )

また,暫定指針施行後に開発されたシリカゾル系薬液の主材であるシリカゾルは,水ガラス中の

アルカリを取り除くため酸性液材(主成分 50~75%程度の希硫酸で医薬用外劇物に指定)を用いる

が,その使用量は硫酸分として数%(10%以下の硫酸水溶液は医薬用外劇物から除外され普通物)

であるので使用に差し支えがない。

更にシリカゾルにアルカリ剤を反応させた配合液中の硫酸分は殆んど皆無となるので全く劇物の

対象にはならない。

第3章 設計及び施工

( 解 説 )

薬液注入工法による工事の設計及び施工に当っては,注入箇所周辺の地下水及び公共用水域等に

おいて「別表-1」の水質基準が維持されるよう工事目的,注入箇所周辺の地盤の性質,地下埋設物,

地下水の状況及び公共用水域等の状況に応じて適切なものとなるように,薬液の種類,注入方法及

び注入に必要な諸元を決定しなければならない。従って設計及び施工の詳細については,各工事ご

とに定めることとし,ここでは一般的な事項のみを記した。地下水のあるところ全て井戸水として

使用される可能性があり,井戸水は一般的に飲用,浴用等に使用される機会があるので,地下水等

の水質を飲用水の水質基準に相当するレベルに維持されるよう設計及び施工に当たり考慮すること

を基本としたものである。

(参考)水道法,厚生省令(水質基準)

3-1 設計及び施工に関する基本的事項

薬液注入工法による工事の設計及び施工については,薬液注入箇所周辺の地下水及び公共用水

域等において,別表-1の水質基準が維持されるよう,当該地域の地盤の性質,地下水の状況及

び公共用水域等の状況に応じ適切なものとしなければならない。

3-2 現場注入試験

薬液注入工事の施工に当たっては,あらかじめ,注入計画地盤又はこれと同等の地盤において

設計どおりの薬液の注入が行われるか否かについて,調査を行うものとする。

- 530 -

( 解 説 )

薬液注入工事の施工に当たっては,あらかじめ注入計画地盤又はこれと同等の地盤において,薬

液の注入範囲,注入量等が設計どおり注入されることを確認するため,現場注入試験を行うことと

している。大規模な注入工事(注入薬液の量 500m3以上)の場合,付近に飲用水源がある場合,地

盤の土質が複雑な場合,又は透水係数が大きく地下水が豊富な場合には必ず実施しなければならな

い。

現場注入試験では,注入箇所の土質試験,水質試験を実施したうえ,注入圧,注入量,注入速度

等の試験を行うものとする。また,本工事の最初の部分を充分注意して注入試験に用いてもよい。

( 解 説 )

薬液の注入に当たっては,主剤と硬化剤が十分混合するようにしなければならない。

混合方式には 1.0・1.5 及び 2.0 ショット方式等がある。各方式に従って薬液が十分混合するよう

必要な措置を講ずるようにしなければならない。

注入作業中には注入圧力と注入量を計器により常時監視し,異常な変化を生じた場合には直ちに

注入を中止し,その原因を調査しなければならない。

注入時には,注入圧力と注入量の管理のほか,使用機械の管理及び地下水等の水質の監視を行わ

なければならない。

また,施工中には,たえずパトロールを行って地表面の隆起,クラックの発生,薬液の地上への

噴出等が起こらないかを監視しなければならない。

( 解 説 )

ここでいう,労働安全衛生法その他の法令とは,労働安全衛生法,労働基準法,消防法及びそれ

らの関連法令のことである。

(参考)労働安全衛生法,特定化学物質等障害予防規則,労働基準法,消防法(危険物)

( 解 説 )

薬液の保管,流出,盗難等の防止は当然のことで慎重を期すべきである。

毒物及び劇物取締法,あるいは消防法にも保管,流出等の防止が明示されている。

3-3 注入に当たっての措置

(1)薬液の注入に当たっては,薬液が十分混合するように必要な措置を講じなければならない。

(2)薬液の注入作業中は注入圧力と注入量を常時監視し,異常な変化を生じた場合は,直ちに注

入を中止し,その原因を調査して,適切な措置を講じなければならない。

(3)地下埋設物に近接して薬液の注入を行う場合においては,当該地下埋設物に沿って薬液が流

出する事態を防止するよう必要な措置を講じなければならない。

3-4 労働災害の発生の防止

薬液注入工事及び薬液注入箇所の掘削工事の施工に当たっては,労働安全衛生法その他の法令

の定めるところに従い,安全教育の徹底,保護具の着用の励行,換気の徹底等労働災害の発生の

防止に努めなければならない。

3-5 薬液の保管

薬液の保管は,薬液の流出,盗難等の事態が生じないように厳正に行わなければならない。

- 531 -

( 解 説 )

水ガラス系薬液の成分で,いわゆる健康項目に該当する物質は使用しないので,生活環境項目と

して,影響が考えられる検査項目として,pH,BODを採りあげたものである。

排出水が「別表-2」の基準に適合しない場合には,排水の処理施設を設けて稀釈,沈殿,中和等

の処置をし,水質基準に適合したものを排出しなければならない。また,残土の処分地からの排水

についても同様である。

排水施設に発生した泥土は,廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の定めるところに従って適切

に処分しなければならない。

(参考)公害対策基本法,水質汚濁防止法,水道法,下水道法,廃棄物の処理及び清掃に関する

法律

( 解 説 )

トンネル工事に薬液注入を用いる場合には,薬液を注入した地盤を掘削し,掘削残土を処理しな

ければならないが,この残土に薬液が含まれているので,この残土が原因として地下水及び表流水

等を汚染することがないようにしなければならない。この残土処分には地下水を使用することがな

い場所に埋立て,薬液を含まない土で表面を覆うなどの処置をし,また残土からの排水処理は 3-6

に従って適切に行わなければならない。

残土とは現場において再使用(埋戻等)するものではなく,不用物として現場外で措置するもの

をいう。(参考)3-6

第4章 地下水等の水質の監視

( 解 説 ) 人体の健康被害を防止するためには水質監視が最も重要である。従って薬液注入箇所周辺の

地下水等の水質の状況を監視しなければならない。これを事業主体が行うこととしたのは,事

業主体である発注者が水質の状況を充分把握しておかなければならないためであり,全ての作

業を事業主体が行うということではなく,事業主体の責任で行うことを示している。

3-6 排出水等の処理

(1) 注入機器の洗浄水,薬液注入箇所からの湧水等の排出水を公共用水域へ排出する場合におい

ては,その水質は,別表-2の基準に適合するものでなければならない。

(2) (1)の排出水の排出に伴い排水施設に発生した泥土は,廃棄物の処理及び清掃に関する法律

その他の法令の定めるところに従い,適切に処分しなければならない。

3-7 残土及び残材の処分方法

(1) 薬液を注入した地盤から発生する掘削残土の処分に当たっては,地下水及び公共用水域等を

汚染することのないよう必要な措置を講じなければならない。

(2) 残材の処理に当たっては,人の健康被害が発生することのないよう措置しなければならな

い。

4-1 地下水等の水質の監視

(1) 事業主体は,薬液の注入による地下水及び公共用水域等の水質の汚濁を防止するため,薬液

注入箇所周辺の地下水及び公共用水域等の水質の汚濁の状況を監視しなければならない。

(2) 水質の監視は,4-2 に掲げる地点で採水し,別表-1 に掲げる検査項目について同表に掲

げる検査方法により検査を行い,その測定値が同表に掲げる水質基準に適合しているか否かを

判定することにより行うものとする。

(3) (2)の検査は,公的機関又はこれと同等の能力及び信用を有する機関において行うものとす

る。

- 532 -

水質検査は,都道府県の保健所,公害試験所,衛生試験所,学校の試験室等所謂公的機関,又は

これと同等の信用と能力のある民間の試験機関で行うこととし,検査の結果には検査実施機関名,

実施者名を記載することとなる。

( 解 説 )

「3-1」に述べている基本的事項の趣旨に従い,4-2(1)の基本的な考え方により採水地点を定め

るべきである。

注入箇所から概ね 10m以内に少なくとも数箇所の採水地点を設けなければならないと定めたの

は,従来の経験と安全性重視の観点に基づいたものである。

地下水の流向が明確な場合には勿論下流側のみでよく,箇所数も実情に応じ減じられる場合もあ

る。

( 解 説 ) 採水回数は,水質監視の目的が達成されるように,各現場の実情に応じて定めるべきであるが,

従来の経験と安全性重視の観点から定めたものである。

工事着手前は 1回としたが,試験値に変動があると予測される場合には 2回以上採水するがよい。

工事終了後半年間の水質監視を義務付けたのは,安全性重視の観点から万一固結しない薬液

があって,長時間にわたってそれが流出する場合があっても確認できるようにしたものである。

また,基準に適合している場合でも工事によって水質が大きく変化したときは厳重な監視が

必要である。

4-2 採水地点

採水地点は,次の各号に掲げるところにより選定するものとする。

(1) 地下水については,薬液注入箇所及びその周辺の地域の地形及び地盤の状況,地下水の流向

等に応じ,監視の目的を達成するため必要な箇所について選定するものとする。この場合にお

いて,注入箇所からおおむね 10m以内に少なくとも数箇所の採水地点を設けなければならな

い。

なお,採水は,観測井を設けて行うものとし,状況に応じ既存の井戸を利用しても差し支え

ない。

(2) 公共用水域等については,当該水域の状況に応じ,監視の目的を達成するため必要な箇所に

ついて選定するものとする。

4-3 採水回数

採水回数は,次の各号に定めるところによるものとする。

(1) 工事着手前 1回

(2) 工 事 中 毎日 1回以上

(3) 工事終了後 (イ) 2 週間を経過するまで毎日 1 回以上(当該地域における地下水の状況に

著しい変化がないと認められる場合で,調査回数を減じても監視の目的が

十分に達成されると判断されるときは,週 1回以上)

(ロ) 2 週間経過後半年を経過するまでの間にあっては,月 2回以上

4-4 監視の結果講ずべき措置

監視の結果,水質の測定値が別表-1に掲げる水質基準に適合していない場合,又はそのおそ

れのある場合には,直ちに工事を中止し,必要な措置をとらなければならない。

- 533 -

( 解 説 ) 水質監視の結果,水質の測定値が「別表-1」の水質基準に適合していない場合,又は従来の測定

値から適合しないと予測される場合には直ちに工事を中止し,必要な措置をとらなければならない。

この場合の必要な措置とは,個別の事例により定めるべきである。 例えば水質基準に適合しない井戸については,適切でない用途に使用しないようにその使用者に

要請し,必要に応じ代替処置を講じ,また注入工法を再検討し,必要に応じて土質調査を追加して

実施し,それらに基づいて,工法の改善を図るなどの措置をとることである。

別表-1 【 水 質 基 準 】 薬液の種類 検 査 項 目 検 査 方 法 水 質 基 準

有機物を含ま

ないもの

水素イオン濃度 水質基準に関する省令

(昭和 41 年厚生省令第

11 号。以下「厚生省令」

という。)又は日本工業規

格K0102の8に定める方

pH 値 8.6 以下(工事直前

の測定値が 8.6 を超える

ときは,当該測定値以下)

であること。

水素イオン濃度 同 上 同 上

有機物を含む

もの 過マンガン酸カ

リウム消費量

厚生省令に定める方法 10ppm 以下(工事直前の測

定値が 10ppm を超えると

きは,当該測定値以下)で

あること。

(注) 1. 検査方法(水素イオン濃度)

(1) 厚生省令 53-56 号‥‥‥‥‥比色法(水素イオン濃度の変動によって指示薬の

色が変わるのを利用して測定する方法)

(2) 日本工業規格K0102 の 8‥‥ガラス電極法(JIS Z 8802)(pH 測定方法)

2. 検査方法(過マンガン酸カリウム消費量)

厚生省令 53-56 号‥‥‥‥‥酸性法(硫酸酸性において過マンガン酸カリウム

の消費量を測定する方法)

3. 別表1の検査方法

水質基準に関する省令(昭和41年厚生省令11号)は廃止され新たな省令(53年56号)と

読みかえること。

- 534 -

(注) 1. 検査方法

(1) (水素イオン濃度) 日本工業規格K0102 の 8……ガラス電極法

(JIS Z 8802)(pH測定方法)

(2) 生物化学的酸素要求量(BOD)

日本工業規格K0102 の 16 による方法

(3) 化学的酸素要求量(COD)

日本工業規格K0102 の 13 による方法

別表-2 【 排 水 基 準 】 薬液の種類 検 査 項 目 検 査 方 法 排 水 基 準

有機物を含ま

ないもの

水素イオン濃度 日本工業規格K0102 の

8 に定める方法

排水基準に定める総理府

令(昭和 46 年総理府令第

35 号)に定める一般基準

に適合すること。

水素イオン濃度 同 上 同 上

有機物を含む

もの 生物化学的酸素

要求量又は化学

的酸素要求量

日本工業規格K0102 の

16 又は 13に定める方法

排水基準を定める総理府

令に定める一般基準に適

合すること。

- 535 -

薬液注入工法の管理について

昭和 52 年 5 月 19 日 52 構改D第 339 号(設)

構造改善局長から各地方農政局長あて

薬液注入工法は,「薬液注入工法による建設工事の施工に関する暫定指針」(昭和 49年 8月 16

日付け 49地第 1940 号)に基づき使用されているところであるが,その趣旨の一層の徹底を図るた

め,下記事項に留意し,所管の発注工事の管理につき適切な措置を講じられたい。

1.薬液注入工法を使用する場合には,事前に施工者側の現場責任者の経歴書を提出させて,

当該工法の安全な使用に関し十分な技術的知識と経験を有する技術者であることの確認を行

うこと。

2.薬液注入工事の着手前に,施工者に当該工事の詳細な施工計画書を提出させること。

3.薬液注入工事が安全に施工されていることを確認するため発注者,請負者及び薬液注入工

事の施工者で構成する「薬液注入工事管理連絡会」を設けること。

薬液注入工法の管理に関する通達の運用について

昭和 52 年 5月 19 日 簡易文書 52-50

構造改善局建設部長から各地方農政局建設部長あて

昭和52年5月 19日付け52構改D第339号をもって通達した「薬液注入工法の管理について」(以

下「通達」という。)の運用については,下記のとおり取り扱われたい。

1.通達,記第1の「十分な技術的知識と経験を有する技術者」とは,当分の間薬液注入工法

に使用する薬液の性質,薬液注入後の土中における薬液の挙動,注入機械の機能と操作,薬

液注入工事に関する暫定指針等を熟知しており,かつ,薬液注入工事の責任者として現場で

直接施工又は監督した経験を有する者とする。

2.通達,記第3の「薬液注入工事管理連絡会」は,薬液注入工法による人の健康被害の発生

と地下水等の汚染を防止するため,当該工法の施工及び水質の監視が薬液注入工事に関する

暫定指針に基づいて適切に行われているかを確認するものであり,工事請負契約に基づく権

利,義務に影響を及ぼす事項を取り扱うものではない。

- 536 -

《参考-6》

農業農村整備事業等におけるアスベスト(石綿)対応マニュアル

平成18年9月

農林水産省農村振興局整備部

- 537 -

農業農村整備事業等におけるアスベスト(石綿)対応マニュアル

目 次

1.総論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

1-1 マニュアルの位置付け

1-2 適用範囲

2.石綿含有製品の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3~7 2-1 石綿含有製品

2-2 石綿含有製品の種類と特徴

2-3 石綿粉じんによる健康障害

3.石綿粉じんばく露防止対策の基本的な考え方・・・・・・・・ 8~9

3-1 石綿粉じんばく露防止対策の必要性

3-2 石綿粉じんばく露防止対策の基本手順

4.石綿含有製品の使用状況の把握・・・・・・・・・・・・・・・・10~15

5.石綿含有製品の劣化・破損状況の把握・・・・・・・・・・・・・ 16 6.石綿粉じんばく露防止対策の選定・・・・・・・・・・・・・・・17~19

7.石綿含有製品の除去・解体等・・・・・・・・・・・・・・・・・20~23 7-1 除去・解体等の工事発注に当たっての留意点

7-2 除去・解体等に当たっての事前調査

7-3 除去・解体等の工事施工上の留意点

7-4 保管、運搬、処分

8.石綿含有製品の「封じ込め」「囲い込み」・・・・・・・・・ 24

参考1.石綿セメント管の事故率から老朽度ランクを区分した危険度

・・・25~26

参考2.石綿含有製品の除去・解体等の工事と主な関係法令の規定

・・・27~28

【参考資料】

石綿含有製品の除去・解体工事及び囲い込み、封じ込め工事における石綿粉じん

へのばく露防止への留意事項

- 538 -

1.総論 1-1 マニュアルの位置付け 本マニュアルは、農業農村整備事業等で造成された各種施設において、維持管理作業等を

行う職員、作業者等がアスベスト(石綿)にばく露されることがないように、また、使用されている

石綿を含有する製品を、石綿を含有しない製品へ計画的に代替えするに当たって、当該施設の

管理者等が留意しなければならない基本的な事項を示したものである。 (解説)

石綿は、天然に産する鉱物繊維で、日本ではほとんど産出せず、日本に存在するその多くは、

輸入されたものである。石綿輸入量は昭和 30年代から増加し、特に昭和 45年から平成 2年にかけては、年間 30万トン程が輸入されている。石綿は繊維の安定性、加工のしやすさ、安さなどの優れた特性から、その 90%強は建築資材として様々に加工され、使用された。建築資材以外では、石綿セメント管などに加工され、水道、工業及び農業用水等の配管材として利用されている。ま

た、機械類の耐熱材、パッキン材、電気機器の絶縁体としても利用されている。 農業農村整備事業においては、用・排水機場の建屋、水管理施設等の管理事務所、子局など

の建屋に多く利用されてきた。また、ポンプ機器のパッキン類、電源の操作盤のスイッチ類の絶縁

体、ディーゼル機関の耐熱材などに用いられている。 これら、農業農村整備事業で造成された施設等は、国、都道府県、市町村などが管理するもの

の他、大部分は、土地改良区が管理しており、土地改良区の職員等がその作業に従事している。

現在、石綿を含む製品の新規利用は原則として禁止されているが、既に用いられている資材につ

いては、今後劣化すると石綿粉じんが空気中に漂い、維持管理作業に従事する土地改良区の職

員等が石綿粉じんにばく露される危険が予想され、これによる健康被害を受ける可能性が高くな

ることが心配されている。 また、これら石綿を含む製品は、劣化、破損等により石綿粉じんが発生するため、計画的に石

綿を含有しない製品に代替していく必要がある。 本マニュアルは、農業農村整備事業等で造成された各種施設を管理する国、都道府県、市町

村、土地改良区等の管理者及び維持管理に当たる職員等(以下「管理者等」という。)に、石綿粉

じん問題に対処するための基本的な知識と、対処方法の概要を周知するために作成したものであ

る。

1-2 適用範囲 本マニュアルは、農業農村整備事業等で造成された各種施設のうち、石綿を含有している製

品を使用している施設・設備において適用する。

(解説)

(1)適用施設

農村振興局が平成 17年 11月段階で農業農村整備事業等における石綿を含む製品の使用状況を調査したところ、建築用資材関係では用・排水機場を始めとして、水管理施設等の管理

(事務)所、農業集落排水処理場、農村環境改善センター等の施設で約5千カ所(うち、吹き付

け石綿が確認されたもの 156 カ所)、農業用用排水路で約 6,800kmの石綿セメント管が使用されている。 また、調査には含まれていないが、上記各種の施設では、石綿を含有する製品を使用した電

気・機械設備も数多く設置されている。 本マニュアルは、このように石綿を含有している製品を使用している施設・設備に適用する。

- 539 -

(2)適用に当たっての留意点 本マニュアルは、石綿による健康障害の防止のために制定されている各種の法令や指導通

知等の規程から、関係部分をわかりやすく解説した参考資料であり、適用に当たってはこれらの

関係法令等を遵守しなければならない。 なお、現時点での関係法令等では、石綿を含有している製品のうち、石綿の含有量が0.1%

(重量比)を超える製品が規制の対象となっている。最近の各分野での議論はより厳しい規制を

求める傾向もあり、今後の動きに留意しつつ適用する必要がある。

2.石綿含有製品の概要

2-1 石綿含有製品

石綿は、耐熱性、耐摩耗性等に優れ、価格も安価であったことから、建築資材、電気

製品等に広く使用されている。石綿含有製品は、農業農村整備事業等で建設された用・

排水機場等の吸音材・断熱材、内・外装材として、また、農業用用排水用の配管材等と

して広く利用されてきたが、現在は、石綿の健康への有害性から、これら製品の製造、

使用等は禁止されている。

(解説) 石綿は、耐熱性、耐摩耗性、対薬品性、絶縁性、耐久性等に優れ、価格も安価であった

ことから、耐火用吹き付け材、内・外装材、床・天井材等の建築資材、電気製品の絶縁体、

クラッチ、ブレーキ等の自動車部品、配管用の保温材、機械室の吸音材、水道管あるいは

農業用用排水用の配管材等の繊維素材として幅広く使用されてきた。

本マニュアルでは、これら石綿を含む資材・製品を「石綿含有製品」と呼ぶ。

石綿は、天然の繊維状の鉱物で非常に細いものであることから肉眼では見えず、石綿を

吸い込んだことによる肺ガンや中皮腫等の健康障害の恐れが指摘され、昭和50年には吹

き付け石綿が原則禁止された。その後、平成7年には、石綿のうち有害性が高いアモサイ

ト(茶石綿)及びクロシドライト(青石綿)の製造、輸入、使用等が禁止され、平成16

年には、クリソタイル(白石綿)を含めて、石綿含有率が1%(重量比)を超える石綿セ

メント円筒、押出成形セメント板、住宅屋根用化粧スレート、繊維強化セメント板、窯業

系サイディング、クラッチフェーシング、クラッチライニング、ブレーキパッド、ブレー

キライニング及び接着剤の製造、輸入、使用等が禁止されている。また、平成18年9月 の法令改正により、規制の対象が石綿含有率1%超から0.1%超へと見直しされたところである。

(写真:大阪府立公衆衛生研究所 HP より)

農業農村整備事業等で建設され、現在使用されている用・排水機場等の施設でも建築材

料として多く使われている。また、農業用用排水用の配管材として、石綿セメント管が多

く用いられている。今後、このような施設が耐用年数をむかえ、更新整備を必要とする施

設の急増が予想されているところである。

- 540 -

さらには、施設の使用・管理状況によっては、耐用年数経過前であっても、石綿

含有製品の劣化・破損によって、石綿粉じんが空気中へ飛散する危険性が増加する

ことも考えられる。

2-2 石綿含有製品の種類と特徴

石綿含有製品は、吹き付け石綿等の「飛散性石綿含有製品」と、石綿スレート、石綿

セメント管等の「非飛散性石綿含有製品」に大別できる。

(解説)

石綿含有製品には、石綿にセメント等の結合材と水を加えて、撹拌混合し、吹き付け機

を用いて吹き付けた、吹き付け石綿及び石綿含有吹き付けロックウール等、劣化にともな

い石綿繊維が空気中に飛散する危険性を有しているものと、セメントやケイ酸カルシウム

等の原料に、石綿を補強繊維として混合し一体的に成形された、石綿セメント板、スレー

ト、石綿セメント管等通常の使用では石綿繊維が空気中に飛散する可能性は極めて小さい

と考えられるものがある。本マニュアルでは、前者を「飛散性石綿含有製品」と呼び、後

者を「非飛散性石綿含有製品」と呼ぶ。

(1)飛散性石綿含有製品

飛散性石綿含有製品には建築材料としての吹き付け石綿、石綿含有吹き付けロック

ウール、吹き付けひる石、パーライト吹き付け、発泡ケイ酸ソーダ吹き付け石綿等が

ある。

また、飛散性はやや低いものの、比重が小さいことから飛散性に準じた取り扱いが

求められている石綿含有製品としては石綿含有保温材、石綿含有耐火被覆材、石綿含

有断熱材等がある。

これら飛散性石綿含有製品は、多くのメーカーで、多くの製品が作られている。代

表的な飛散性石綿含有製品である吹き付け材等の製品を表―1に示す。

(建物天井への飛散性吹き付け石綿の状況)

- 541 -

表―1 代表的な飛散性石綿含有製品

種類 製品名 備考

吹き付け石綿 (耐火被覆材、断熱材)

ブロベスト オパベスト サーモテックスA トムレックス リンペット

昭和 50 年まで製造

石綿含有吹き付けロック

ウール (耐火被覆材、断熱材)

スプレーテックス スプレーエース

スプレイクラフト

サーモテックス ブロベストR

平成元年まで製造

石綿含有ひる石・パーライ

ト吹き付け (化粧塗材)

アロック ダンコートF

ジュラックスB ミネラックス

ミクライト

平成2年まで製造

(2)非飛散性石綿含有製品

非飛散性石綿含有製品には、建築材料としてスレートボード等の成形板、配管材料

として石綿セメント管、強化プラスチック複合管(㈱クボタ製造の一部)、機械部品

としてパッキン、ガスケットや排気管の断熱材、電気部品として電磁開閉器や変圧器

が挙げられるほか、自動車のブレーキ等がある。このように、非飛散性石綿含有製品

には多種多様のものがあり、これらを表-2に示す。非飛散性石綿含有製品は、石綿

がセメント等で固化あるいは密閉されていることから通常の使用では石綿が飛散する

ことは起こりにくいが、破損、解体、改修等により飛散する可能性があるので、日常

の管理等に気をつけておかなければならない。

(スレートボード)* (ビニル床タイル)** (配管接合用ガスケット)***

- 542 -

表ー2 代表的な非飛散性石綿含有製品 種類 石綿含有製品名 製造期間 建築材料 スレート波板

スレートボード*

ケイ酸カルシウム板第1種

ケイ酸カルシウム板第2種

パーライト板

スラグ石こう板

パルプセメント板

窯業系サイディング

押出成形セメント板

住宅屋根用化粧スレート

ロックウール吸音天井板

ビニル床タイル**

石綿セメント円筒

平成16年まで製造

平成16年まで製造

平成11年まで製造

平成9年まで製造

昭和49年まで製造

平成13年まで製造

平成15年まで製造

平成16年まで製造

平成16年まで製造

平成16年まで製造

昭和62年以降石綿は未使用 昭和62年以降石綿は未使用 平成16年まで製造

石綿セメント管 昭和60年まで製造 配管材料 強化プラスチック複合管 ㈱クボタで過去に製造した種類のみ該当

①昭和 47~61 年製造(管長 4m) φ400、450、500、600、700mmの管 ②昭和60~61年製造(管長6m) φ1000、1200、1500、2000mmの管

機械部品 ポンプ バルブ 電動機

エンジン 減速機 その他

ケーシング接合面のガスケット

グランドパッキン

ケーシング接合面のガスケット

グランドパッキン

電動操作機の接合面ガスケット

コイル絶縁部

配管接合用ガスケット***

機関本体ラギング材

機関各配管接合部のガスケット

付属品用ガスケット(クーラ、

温度計等)

点検窓部のガスケット

附属品用ガスケット

天井クレーンブレーキライニング

平成17年頃まで製造

平成12年頃まで製造

平成17年頃まで製造

平成16年頃まで製造

平成16年頃まで製造

平成17年頃まで製造

- 543 -

電機部品 MCCB(ブレーカ) 電磁開閉器 スペースヒータ 高圧ヒューズ 集合表示灯 ACB(気中遮断器) 変圧器 補助リレー ブレーキモータ 電磁接触器 真空遮断器 流量計 水位計 濃度計 濁度計 圧力計

平成 16 年まで製造 平成 12 年まで製造 平成 14 年まで製造 平成 4 年まで製造 平成 17 年まで製造 平成 7 年まで製造 平成5年まで製造 平成2年まで製造 平成 16 年まで製造 平成 13 年まで製造 平成 10 年まで製造 平成 17 年まで製造 平成 9 年まで製造 平成 17 年まで製造 平成 10 年まで製造 平成11年まで製造

その他 自動車のブレーキ、クラッチ

接着剤

2―3 石綿粉じんによる健康障害 石綿粉じんを吸引すると、肺ガンや中皮腫等の重大な健康障害が発生するおそれがあ

ると指摘されている。これら石綿粉じんによる健康障害には吸引から発症までの潜伏期

間が長いものもある。 (解説) 建築物や工作物に用いられている石綿含有製品が劣化し飛散する状況になると当該施設

及びその周辺が石綿粉じんに汚染される。 石綿粉じんを吸入することにより、次のような健康障害が発生するおそれが指摘されて

いる。 ① 石綿肺(じん肺の一種) 肺が繊維化するものでせき等の症状を認め、重症化すると呼吸機能が低下する。 ②肺癌 肺にできる悪性の腫瘍である。 ③胸膜、腹膜等の中皮腫(癌の一種)

肺を取り囲む胸膜等にできる悪性の腫瘍である。

これらの疾病は、石綿粉じんを少量吸入しても発症する可能性があり、また石綿

粉じんのばく露から発症までの期間が相当長いものもある。

さらに石綿を直接取り扱っていない場合でも、例えば、維持管理作業等に従事す

る職員等が、用・排水機場の建屋内において、石綿含有製品の劣化・破損によって

発散した石綿粉じんを吸引してしまう可能性があり、注意が必要である。

- 544 -

3.石綿粉じんばく露防止対策の基本的な考え方 3―1 石綿粉じんばく露防止対策の必要性

石綿含有製品を使用している施設を使用・管理する組織の管理者は、石綿による職員

等の健康障害を防止するため、石綿含有製品を石綿を含有しない製品に計画的に代替え

するよう努めなければならない。また、石綿含有製品の劣化、損傷等により石綿粉じん

の発散の恐れがあるときは、除去、封じ込め、囲い込み等の石綿粉じんばく露防止対策

を行わなければならない。このため施設の管理者は、管理する施設での石綿含有製品の

種類、使用状況等を適切に把握する必要がある。

(解説) 「石綿粉じんによる健康障害」を回避又は防止するため、「石綿障害予防規則」

(以下「石綿則」という。)第1条及び第10条では、事業者の責務として次のこ

とが規定されている。

第1は、「事業者は、石綿による労働者の健康障害を防止するため、石綿含有製品の使

用状況等を把握するとともに、石綿含有製品を計画的に石綿を含有しない製品に代替えす

るよう努めなければならない(石綿則第1条関係)」である。第2は、「壁・柱・天井等

に吹き付けられた石綿等が損傷、劣化等で粉じんを発生させる恐れがある場合は、その石

綿等の除去、封じ込め、囲い込み等を行わなければならない(石綿則第10条関係)」で

ある。

この場合の事業者とは、労働安全衛生法では「事業を行う者で労働者を使用するもの」

と定義されており、農業農村整備事業で造成された施設等の管理を業務内容とする土地改

良区の組織に例えれば、事業を行う者は土地改良区であり、労働者は土地改良区の職員で

あって、土地改良区が事業者として石綿則第1条及び第10条を遵守しなければならない

ことになる。

「除去」、「封じ込め」、「囲い込み」の定義は以下の通りである。

「除 去」:吹き付けられた石綿等をすべて除去し、他の石綿を含有しない代替品と

交換することをいう。この方法は、吹き付けられた石綿等からの粉じん発散

を防止する方法としてもっとも効果的な方法であり、損傷や劣化により石綿

の脱落、繊維の垂れ下がりがある場合、基層材との接着が悪く吹き付け層が

浮き上がっている場合、振動や漏水部で使われている場合等では原則として

この方法による。

「封じ込め」:吹き付けられた石綿等から、石綿粉じんの飛散を防止するために固化す

ることをいう。吹き付けられた石綿の表面に固化剤を吹き付け塗膜を形成す

る方法や、吹き付けられた石綿等の内部に固化剤を浸透させ、石綿繊維の結

合力を強化する方法がある。

「囲い込み」:吹き付けられた石綿等を石綿を含有しない製品で覆い、石綿粉じんが発

散しないようにすることをいう。

3-2 石綿粉じんばく露防止対策の基本手順 施設の管理者は、石綿含有製品の使用状況を把握し、使用されている場合には、その劣化、

破損状況に応じた、適切な石綿粉じんばく露防止対策を講じなければならない。

(解説) 石綿を含有する製品を使用している施設の管理者は、その管理している諸施設に、どのような

石綿含有製品が、どのような場所に、どのような形で利用されているかをまず把握し、次にその劣

化、破損状況を把握するとともに、石綿粉じんの飛散のおそれに応じた、適切な粉じんばく露防止

- 545 -

対策を講じなければならない。 石綿粉じんばく露防止対策の基本的な手順を次に示す。

①石綿含有製品の使用状況の把握

石綿含有製品が使用されているか否か、また使用されている場合はその場所及び範囲、

さらにそれら製品が飛散性石綿含有製品か非飛散性含有製品かを把握する。 ②石綿含有製品の劣化、破損状況の把握

飛散性石綿含有製品については、劣化、破損又は飛散の状況、及びその程度等を把握

する。 非飛散性石綿含有製品については、劣化又は破損の状況、及び飛散のおそれを把握す

る。 ③石綿粉じんばく露防止対策の選定

①、②の調査結果に基づき、「除去・解体」、「封じ込め」、「囲い込み」、「製品

・部品交換」等の対策のうちから適切な方式を選定する。劣化又は破損がなく安定して

いる場合は定期的に「監視・記録」を行うようにする。 ④石綿含有製品の除去、解体等の対策工事の発注

選定した防止対策に応じた工事の施工を発注する。なお、設計等の発注は必要に応じ

て行う。

①石綿含有製品の使用状況の把握

②劣化・破損状況の把握

③石綿粉じんばく露防止対策の選定

除去・解体 封じ込め 囲い込み 製品・部品交換 監視・記録

④対策工事等の発注(廃棄物処理を含む。)

図―1 石綿粉じんばく露防止対策の基本手順

- 546 -

4.石綿含有製品の使用状況の把握

農業農村整備事業等で造成された各種施設には石綿含有製品が数多く使用されている

が、これら石綿含有製品のすべてを目視のみによって確認することは困難であり、設計

図書等でも確認するとともに、必要に応じて、施設造成時の関係者への聞き取りやメー

カーへの確認を行うことが望ましい。また、使用状況の調査結果は保存しておくことが

必要である。

(解説)

農業農村整備事業で造成された各種施設には石綿含有製品が数多く使用されている。 これら、石綿含有製品の使用場所の事例をあげることは容易であるが、実際に土地改良

区等で管理している諸施設で具体的にどこにどのようなものが使用されているのかを特定

することは、造成時から長期間が経過していることが多く極めて困難である。また、造成

時の図面等が入手できたとしても、材料名が商品名であったり、単に工法が記されていた

りするケースも多く、メーカー名や製作年月日を知ることは困難なことが多い。施設を目

視して疑わしい場所が分かる場合もあるが、天井裏や壁裏など若干の作業を伴わなければ

目視できない場合も多い。さらに、石綿セメント管の使用状況などの目視は、大口径管で

は管内部から行えるものの、小口径管では管の埋設深度まで掘削を行う必要がある。 このように、石綿含有製品の使用状況のすべてを、正確に確認することには困難な面も

多いが、造成時の図面等の設計・施工資料を収集するとともに、必要に応じて当時を知る

関係者への聞き取り、メーカーへの確認、除去、解体等を専門とする事業者等への意見聴

取を行うことが望ましい。 なお、これら石綿含有製品の使用状況の調査結果は、石綿含有製品の除去、解体等を建

設業者等に依頼する場合に、工事の発注者として請負者に通知しなければならないため、

適正に保管しておく必要がある。 用・排水機場で使用されている主な石綿含有製品とその使用場所を図―2に示す。

- 547 -

図―2 用・排水機場で使用されている主な石綿含有製品

石綿セメント

【盤類】 変圧器(ガスケット) スペースヒータ(断熱材) 電磁開閉器(サーマルヒータ絶縁紙) 電磁接触器(スロスバー成型材料) 補助リレー(リレー内部の接着剤)

内装材 (石膏ボード)

床材 (ビニル床タイル、フリーアクセスフロア)

・仕切弁軸封部:(グランドパッキン) ・仕切弁ケーシング合わせ面:(シートガスケット) ・仕切弁駆動部ギヤケース合わせ面

:(シートガスケット) ・逆止弁ケーシング合わせ面:(シートガスケット)

・ポンプ軸封部:(グランドパッキン) ・ポンプケーシング合わせ面:((シートガスケット) ・配管フランジ接合面:(シートガスケット) ・電動機:(絶縁材)

内装材 (吸音断熱材)

ホイスト (ブレーキライニング)

天井材 (吹付け石綿、吹付ロックウール)

シートガスケットシートガスケット

グランド

パッキン

ガスケット

- 548 -

(1)目視による調査

建築物等の石綿含有製品の使用の有無を目視

だけで判断することは非常に困難であるが、飛散

性の吹き付け石綿等については、その外見上から

表―3に示した特徴を勘案して概ねの判断が可

能である。

(天井への飛散性の吹き付け石綿の状況)

表―3 吹き付け石綿等の外見上の特徴

種類 外見上の特徴 吹き付け石綿 表面は、青色、灰色、白色及び茶色に仕上がっている。2層吹

き付け(下吹きが青色又は灰色、上吹きが白色)になっている

場合もある。

針で突いてみると容易に貫入する。 吹き付けロックウール 吹き付け石綿に酷似している。上段の吹き付け石綿の特徴でな

い場合はこの吹き付けである可能性が高い。

吹き付け石綿同様、針で突くと容易に貫入する。 吹き付けひる石

(バーミキュライト) 黄金色で光沢のある雲母状の鉱石が確認できる。

針で突いても容易に貫入しない。

(2)設計図書等での調査

建築物等の設計図(施工図)及び仕様書(以下「設計図書」という。)で石綿含有

製品の使用状況を調査する。ただし、発注時の設計図書で石綿を含有する商品名が記

載されている場合でも、実際の施工においては同様の性能を持った石綿を含有しない

商品が使用されている場合や、同一商品名でも石綿が含有しているものと、含有して

いないものがあるので、不明な場合は製造元に確認する必要がある。 石綿セメント管については設置時期が相当古いものが多いため、配管図等の設計図

書の収集に困難が予想されるが、当時の工事の関係者等に聞き取りを行う等の努力が

必要である。また、劣化の程度等を知るため、調査地区での破裂、漏水事故等の記録

を収集し、設計図書と重ね合わせて劣化の程度を調査することも必要である。

石綿含有製品は、前述の通り製品の製造、使用時期が制限されていることから、建

築物等の施工時期を確認し、設計図書での調査を行うと効率的である。

(3)分析による調査

目視及び設計図書等で調査しても石綿含有製品の使用が確認できない場合は、当該

製品から試料を採取し、石綿含有量等の分析を行わなければならない。 石綿含有量の分析方法等は、「建築物の耐火等吹き付け材の石綿含有量の判定方法

について」(平成8年3月29日付け労働省(現厚生労働省)労働基準局長通知)及

び「建材中の石綿含有率の分析方法について」(平成17年6月22日付け厚生労働

省労働基準局安全衛生部化学物質対策課長通知)で示されているが、高度な技術を要

するので、専門的な分析機関に依頼することが必要である。

(4)建築材料の留意点

農業農村整備事業等においては、主に用・排水機場、管理事務所及び機材置

場、車庫等の付属建物、子局、あるいは孫局等、水管理施設の建屋等が調査対

象となる。石綿の使用量の約90%は建築材料と言われており、これらの施設

では石綿含有建築材料が多数使用されているとの認識が必要である。表―4に

- 549 -

主たる使用例を示す。

表―4 建築材料としての使用例

使用部位 石綿含有建築材料の種類 製造期間

内壁、天井 スレートボード

けい酸カルシウム板第一種

パーライト板

スラグせっこう板

パルプセメント板

平成16年まで製造

平成14年まで製造

昭和49年まで製造

平成13年まで製造

平成15年まで製造

内壁・天井

の吸音・断

石綿含有ロックウール吸音天井板*

吹き付け石綿

石綿含有吹き付けロックウール

石綿含有ひる石・パーライト吹き付け

昭和62年まで製造

昭和50年まで製造

平成元年まで製造

平成2年まで製造

天 井 の 結

露防止

屋根用折板裏断熱材 平成元年まで製造

ビニル床タイル**

フロア材

昭和62年まで製造

平成2年まで製造

外壁、軒天

窯業系サイディング***

押出成形セメント板

スレートボード

スレート波板

けい酸カルシウム板第一種

石綿発泡体

平成16年まで製造

平成16年まで製造

平成16年まで製造

平成16年まで製造

平成14年まで製造

不明

鉄 骨 の 耐

火被覆

吹き付け石綿

石綿含有吹き付けロックウール

石綿含有耐火被覆板

けい酸カルシウム板第二種

昭和50年まで製造

平成元年まで製造

平成12年まで製造

平成9年まで製造

屋根

スレート波板

住宅屋根用化粧スレート****

平成16年まで製造

平成16年まで製造

煙突 石綿セメント円筒

石綿含有煙突用断熱材

平成16年まで製造

平成4年まで製造

(天井 吸音材)* (ビニール床タイル)**

(住宅屋根スレート)**** (サイディング)***

- 550 -

(5)配管材料の留意点

石綿セメント管は農業農村整備事業等において,昭和20年代後半から昭和40年代前半

にかけて用・排水施設の管路(パイプライン)やサイホンに主に使用されている。製造期間や

使用条件については表―5に示すとおりであるが、口径はφ1000mm 以下、静水圧が

0.75MPa 以下の管路が多い。また、設計図書では、石綿セメント管、石綿管などの名称のほかに、記号で ACP やAPなどと記載されていることも多い。 強化プラスチック複合管は、FRPM管などとも呼称されるが,石綿を含有している製品は昭

和 61年までに(株)クボタで製造された表―5に示す一部の口径のものに限られる。

表―5 石綿セメント管と石綿含有強化プラスチック複合管の製造期間と使用条件 石綿含有製品名 製造期間と使用条件

石綿セメント管

昭和 60 年まで製造

昭和 7 年~昭和 60 年 日本エタニット(株)

昭和 13 年~昭和 54 年 秩父セメント(株)

昭和 29 年~昭和 50 年 久保田鉄工(株)

(社名は当時のもの)

口径 φ50~φ1500mm

最大使用静水圧 1種 0.90MPa 2種 0.65MPa

3種 0.50MPa 4種 0.30MPa

呼称の例 石綿セメント管(パイプ)

石綿管(パイプ)

アスベスト管(パイプ)

アスベストセメント管(パイプ)

ACP

AP

エタニットパイプ(エタパイ)

強化プラスチック複合管 ㈱クボタ(旧社名:久保田鉄工(株))で過去に製造した以下の

種類のみ該当

①昭和 47~61 年製造(管長 4m)

φ400、450、500、600、700mm の管

②昭和 60~61 年製造(管長 6m)

φ1000、1200、1500、2000mm の管

最大設計水圧 1 種 1.3MPa 2 種 1.05MPa

(静水圧+水撃圧) 3 種 0.7MPa 4 種 0.5MPa

5 種 0.25MPa

呼称の例 強化プラスチック複合管

FRPM 管

FW 管(パイプ)

(石綿セメント管とその継ぎ手)

- 551 -

小配管フランジ用ガスケット

ハンドホール用

ガスケット

2つ割り面 (ひも状

ガスケット)

グランドパッ

キン

固定子コイル(メーカ

により異なる)

(6)機械、電気部品の留意点

機械については、主として、ポンプ設備のパッキン、ディーゼル機関本体及

び配管(排気管、冷却水等)の保温・断熱材として使用されている。電気部品

については、ポンプ機械の配電盤、各種制御機器の絶縁関係への使用が中心で

ある。

これらの使用状況の把握については、ユーザーである管理者ではわかりにく

いものが多いので、必要に応じてメーカーへの確認を行うか、あるいは修理・

メンテナンスに当たる専門技術者の助言を受ける必要がある。

変圧器 配管フランジ部のパッキン及びバル

ブ軸部のシールガスケット

気中遮断器 消弧室

パワーヒューズ ヒューズ管(スペーサ)

スペースヒータ 断熱材

- 552 -

5.石綿含有製品の劣化、破損状況の把握

石綿含有製品の劣化、破損状況は、当該製品の使用場所等に応じて、目視その他の方

法で把握する。

(解説) 非飛散性石綿含有製品は、当該製品に含まれる石綿が飛散しない「封じ込め」の

状況にあるとの認識が必要である。また、飛散性石綿含有製品でも、当該製品が、

石綿を含有していない製品で覆われている場合は、「囲い込み」による対策済みと

同様と判断される。

このため、石綿含有製品の劣化、損傷状況の把握は、主に露出している石綿含有

製品を目視する方法で行うことになる。

ただし、振動を発生する施設においては、飛散性石綿含有製品が囲い込み状況で

あっても損傷している場合も考えられることから、空気中の石綿濃度測定により石

綿粉じんの発生状況を確認することが望ましい。

(1)飛散性石綿含有製品の劣化、破損の程度

飛散性石綿含有製品は、劣化、破損状況の程度で、石綿が飛散する可能性が大き

く違うので、飛散防止対策も、その状況に応じて行う必要がある。 このため、劣化、破損の程度を次の3つの区分に分類する。

区分1:劣化、破損の程度が大きく、

吹き付け面等にくずれ、垂れ

下がりが見られたり、床面に

製品の一部の飛散、基盤面と

の剥離等が見られる等、石綿

の飛散のおそれが大きいも

の 区分2:製品の一部に、劣化、破損は

見られるものの、その程度は

小さく、石綿の飛散のおそれ (天井への吹き付け石綿の劣化状況) が小さいもの

区分3:製品に、劣化、破損は見られず、安定しているもの (2)非飛散性石綿含有製品の劣化、破損の程度

非飛散性石綿含有製品は、前述のとおり、一般的に安定しており、破損等が生じ

た場合でも、当該破損箇所等の部分的な補修や囲い込み等で、石綿粉じんの発生を

一時的に防止できる場合も多い。このような場合は、飛散性石綿含有製品の区分2

に分類することで足りると考えられる。しかし、相当激しく破損していたり、耐用

年数を超えて破損している場合にあっては、石綿の飛散のおそれが大きいことから

区分1に分類することが必要である。 なお、石綿セメント管及び電気、機械製品は、いずれも非飛散性石綿含有製品で

あるが、地下埋設及び部品の一部として使用されており、通常の目視では劣化、破

損の状況を確認することは困難であることから、次に述べる点に注意する必要があ

る。

① 配管材(石綿セメント管)の場合

配管材として使用されている石綿セメント管は、一般に土中で安定した状態にあるが、

管の補修・更新の工事の際に飛散のおそれがあるため、注意が必要である。また、供用の

長期化による老朽化にともない、管継ぎ手パッキンの劣化や道路状況の変化等による管体

の破損によって漏水事故が発生している。さらに、酸性土壌や遊離炭酸等の多い地下水な

- 553 -

どにより中性化が進行し、セメント分が溶出することにより強度が低下する場合もある。

劣化の判定方法は、「水道用石綿セメント管診断マニュアル」((財)水道管路技術セ

ンター、平成元年)に詳細に記されている。しかし、現在では先述のマニュアル刊行当時

から 20 年近く経過しており、既存の石綿セメント管の大半が耐用年数 25 年を経過してい

る。したがって、石綿セメント管はほぼすべてが代替えすべき時期に至っているものと考

えられる。ただし、その中でも更に代替の優先順位を付ける場合は、管路の呼び径 300mm

以下を対象とした「石綿セメント管の事故率から老朽度ランクを区分した危険度推定法」

を参考1(p.25)に示しているので参考とし、また、管路の重要性とあわせて判断すること

が考えられる。

② 電気部品の場合

電気部品に使用されている石綿含有製品には、変圧器のパッキン、ガスケット、スペー

スヒータの断熱材等があるが、これらは電気部品の1材料として組み込まれており、また、

これらに含まれる石綿も、ゴム、レジン、セメント等により固化あるいは密閉されており、

目視のみで石綿含有の有無、劣化状況の判断を管理者等が行うことは一般に困難である。

さらに、石綿を含まない部品への代替化が完了した時期は部品メーカーによりまちまちで

ある。このようなことから、使用されている電気部品が石綿含有部品であるか否かは、部

品名、製造記号・番号等を基に、発注したプラントメーカーに対し問い合わせることが望

ましい。 なお、配電盤等に使用されている電気部品を、石綿を含まない製品に交換する場合、こ

れら電気部品は年々小型化、高機能化、集約化されており、古い機器においては製造中止

等により簡単な交換では対応できず、場合によっては、改造又は更新が必要となることも

あり、点検整備を通じて更新計画を策定するなど、計画的な非石綿含有製品への代替化を

進めることが必要である。

③ 機械部品の場合 用・排水ポンプ設備に使用されている石綿を含有する機械部品には、ポンプ本体のガス

ケット、グランドパッキン、小配管用フランジガスケット・保温材、エンジン本体断熱材、

エンジン排気用断熱材、天井クレーン用ブレーキ等がある。 これらは、電気部品と同様に、固化あるいは密閉等の加工がなされており、管理者等が

その劣化の程度等を目視のみで判断することは一般に困難である。また、機械部品の非石

綿含有製品への代替化も、機器や部品等の各メーカーによりまちまちであるため、用・排

水ポンプ設備の請負業者に対し、工事単位での石綿含有部品について問い合わせすること

が望ましい。 なお、電気部品と同様、使用されている石綿含有部品は飛散性ではないので、破損等の

状況に注意し、点検整備等を通じて、更新計画を策定するなど、計画的な非石綿含有製品

への代替化を進めることが必要である。 6.石綿粉じんばく露防止対策の選定

石綿粉じんばく露防止対策は石綿含有製品の劣化、破損等の状況に応じた対応が必要

であり「区分1」と判断される場合は「除去」、「区分2」と判断される場合は「除去」、

「封じ込め」及び「囲い込み」の石綿粉じんばく露防止対策のうちから適切な方法を選

定する。 また、「区分3」の破損・剥離等が見られず安定している状態と判断される場合は、

継続的な「監視・記録」を行う必要がある。 (解説) 石綿粉じんばく露防止対策は、石綿含有製品の劣化、破損等の程度等により、その対策

- 554 -

を選定する必要がある。 飛散性石綿含有製品は、衝撃や振動等による破損、剥離等により石綿粉じんが発生する

とともに、劣化によっても同様の状況が生じることに留意して石綿粉じんばく露防止対策

を選定しなければならないことから、原則として劣化、破損の程度等に応じて適切な対策

を選定する。 ① 現に、破損、剥離等が見られ、飛散の

恐れが大きい「区分1」の場合は、直ちに

立入禁止等の措置をとるとともに、原則と

して「除去」する。 ② 破損、剥離等が一部に見られるものの、

飛散の恐れは小さい「区分2」の場合は、

「封じ込め」又は「囲い込み」を行い、そ

の後は監視・記録を継続する。 ② 破損、剥離等は見られず、安定している「区分3」の場合は、現状維持としてその

状況を記録し、その後は監視・記録を継続

する。 (石綿除去作業(手作業によるかき落とし))

なお、除去以外の方法で対応したものは一時的な対策であり、最終的には石綿含有製品

は除去しなければならないこと、また、封じ込めや囲い込みで使用した材料等も新たな石

綿含有製品となることから、②又は③の場合でも①の方法を選定した方がよい場合もある。 石綿粉じんばく露防止対策の選定手順を図―3に示す。 非飛散性石綿含有製品は、現に破損等を生じている場合には、当該箇所を囲い込み等の

対策を行う必要があるが、通常の使用においては石綿粉じんが発生することはないため、

目視又は設計図等で使用場所、設置時期、使用状況等を確認しておき、その後の使用状況

等を監視・記録することで、施設や設備等の更新に併せて除去を行う方法が選定できる。 なお、囲い込み等の対策を実施した場所は、その後の監視・記録を行わなければならな

い。

- 555 -

飛散性,非飛散性の判断

劣化、破損、飛散状況の把握 劣化,破損状況の把握

劣化、破損、飛散の有無、程度

封じ込め 又は囲い込み

監視・記録

(飛散のおそれ)

除去 ・ 解体

監視・記録

除去・解体

有り、程度小

劣化、破損小

飛散のおそれ小

「区分2」

飛散性 非飛散性

無 「区分3」

有「区分2」

監視・記録

飛散のおそれ

おそれ大

補修、又は

囲い込み

有り、程度大 劣化、破損 大 飛散のおそれ 大 「区分1」

「区分3」

劣化、破損の有無

おそれ小「区分2」

除去・交換

(飛散のおそれ)

監視・記録

注)

除去・解体

石綿含有製品の使用状況の調査・把握

図-3石綿ばく露防止対策の選定手順

- 556 -

7.石綿含有製品の除去・解体等

7-1 除去・解体等の工事発注に当たっての留意点

建築物等の除去・解体等を建設業者等に依頼する場合、工事の発注者は工事の請負者

に当該建築物等における石綿含有製品の使用状況の記録を通知するよう努めなければな

らない。また、契約条件等で解体方法、費用等について法令の規定の遵守を妨げるよう

な条件を付さないよう配慮しなければならない。 (解説) 建築物等の除去・解体等の工事は、特別な場合を除き、施設の管理者自らが直接行うこ

とはなく、建設業者等に依頼することになる。 石綿則では、このような場合、工事の発注者に、①工事の請負者に対して、工事

を行う建築物等における石綿含有製品の使用状況を通知するよう努めること(第8

条関係)、及び②石綿含有製品の調査、解体等の作業方法、費用又は工期について

法令の規定の遵守を妨げるおそれのある条件を付さないよう配慮すること(第9条

関係)を求めている。

これらは、工事の請負者が石綿含有製品が使用されている、あるいは使用されていると

考えられる建築物等の解体等の工事を安全かつ適正に行えるよう設けられたものであり、

工事の発注者として十分考慮しなければならない。 なお、工事の発注に当たっては以下に留意する。 ① 石綿含有製品の使用状況の通知内容は、「4.石綿含有製品の使用状況の把握」

及び「5.石綿含有製品の劣化・破損状況の把握」で述べた事項を指すと考えてよ

い。なお、使用状況を把握していない場合は通知の必要はない。

② 石綿の除去・解体工事等を建設業者等が行う場合、後述するとおり関係法令に

おいて各種の届出事項等がある。これらは、建設業者等の責任で行われるもので

あるが、石綿が飛散性であることを踏まえ、発注者としてもこれら届出の内容等

を確認しておくことが望ましい。

・特定粉じん排出作業実施届出書

・除去・解体等の作業計画書

・石綿作業主任者(特定化学物質等作業主任者技能講習修了者)証

・作業場での注意事項等の掲示状況

7-2 除去・解体等に当たっての石綿含有製品の使用状況調査

建築物や工作物の解体、改修、破砕等を行う事業者は、石綿による労働者の健康障害

を防止するため、当該施設での石綿含有製品の使用の有無を調査しなければならないこ

とから、これら建築物等の管理者等はこれに協力する必要がある。

(解説)

建築物や工作物の解体、改修、破砕等を行う事業者(施設の管理者自らが行う場合は、

当該管理者が事業者となる。)は、石綿による労働者の健康障害を防止するために、当該

施設での石綿含有製品の使用状況を必ず調査しなければならない。 これらの工事が請負工事で発注された場合は、発注者が調査した石綿含有製品の使用状

況が通知されるが、この通知内容を含めて工事を行う前に、当該施設のすべてについて石

綿含有製品の有無を確認しなければならない。 これらの調査方法は、前述の施設の管理者が行う目視及び設計図書等での確認及び分析

- 557 -

の3段階方式に同じであるが、使用中の施設においては業務への影響も生じる可能性があ

ることから、管理者等は、調査の日時、場所、方法等について十分請負者側と調整してお

く必要がある。

また、吹き付け石綿等の飛散性石綿含有製品が使用されていないことが明らかな場合は、

非飛散性石綿含有製品が使用されているとみなして、分析調査を行わないこともできるの

で、みなしの方法をとることで増加すると考えられる廃棄物処理等に要する費用と分析調

査に要する費用を比較し、経済的な方法を選択することができるので調査に当たっては、

十分打ち合わせをすることが重要である。

7-3 除去・解体等の工事施工上の留意点

除去・解体等の工事施工における関係法令の規定の遵守義務は工事の請負者が負って

いるが、石綿含有製品を取り扱う場合は、工事の監督を行う者も石綿粉じんにばく露し

ないよう留意しなければならない。

(解説)

請負契約における工事施工上の安全管理は、すべて工事を請け負った建設業者が関係法

令等の規定を遵守して行うよう契約図書等でも規定されているところであり、請負業者が

事業者として労働者の安全を確保する義務が課されている。

一方、工事を発注する施設の管理者は、当該工事が契約の内容で適正な工事施工が行わ

れているか、また契約どおりの工事が行われたのか監督及び検査する立場にあり、これら

を担当する職員を任命し当該業務を行わせなければならないが、工事内容に石綿含有製品

の取扱いが含まれていた場合、監督、検査を行う職員が石綿粉じんにばく露する危険性が

あるので、請負業者が行う石綿粉じんばく露防止対策と同様な対策の下で業務に従事させ

なければならない。

なお、このような対策を行うための装備を個々の管理者等が備え付けておくことが困難

な場合は、工事請負契約の中に当該対策を行うことを明記するとともに、必要な費用を計

上し、請負業者に必要な装備の貸与を依頼する方法もある。

石綿含有製品の除去・解体等の工事と主な関係法令の規定を参考2(p.27~28)に

示しているが、石綿作業上の主な留意点として一般的に以下のものがある。

① 吹き付け石綿に係る作業を行う場合は、当該

作業場所をプラスチックシート等で覆い周辺との

隔離を行うこと。石綿含有保温材・断熱材に係る作

業を行う場合は、当該作業に従事する労働者以外の

者の立入禁止とその表示を行うこと。その他の石綿

含有製品に係る作業を行う場合は、関係者以外の者

の立入禁止とその表示を行うこと。

② 取り扱う石綿を湿潤なものとする(飛散性石綿含

有製品は薬液により湿潤なものとする)こと。

③ 労働者には、呼吸用保護具(防塵マスク)、作業

衣又は保護衣を着用させること。なお、呼吸用保

護具は、石綿粉じん濃度に応じた機能を持つ機器 (薬液散布による石綿の湿潤化)

とすること。

④ 洗眼、洗身又はうがいの設備、並びに更衣及び洗濯の設備を設けること。なお、飛

散性石綿含有製品に係る作業を行う場合は、これらに併せ、作業場の出入口に前室を

設けること。

- 558 -

⑤ 石綿を湿潤化するために行う散水その他の措置により石綿を含む水を排出すると

きは、ろ過処理その他の適切な処置を講じること。

⑥ 除去作業に使用した工具及び資材等は、付着した石綿を取り除いた後、当該作業場

の外へ搬出すること。なお、飛散性石綿含有廃棄物に係る作業に使用した養生シート

及び保護具等は7-4により廃棄物として処理すること。

⑦ 工事の完了時には、工事現場及びその周辺に、石綿含有製品の破片その他の石綿を

含有するくずが残存しないよう後片付け及び清掃を行うこと。

7-4 保管、運搬、処分

石綿を含む廃棄物の保管、運搬及び処分に当たっては関係法令に基づき適正に行わな

ければならない。なお、石綿を含む廃棄物は、飛散性のものと非飛散性のものでは取扱

いが異なるので注意しなければならない。

(解説)

除去、解体等により廃棄物となった石綿含有製品(以下「石綿含有廃棄物」という。)

の保管、運搬及び処分は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(以下「廃棄物処理法」

という。)の規定に基づき適正に行う必要があり、除去、解体等の工事契約に含めて行う

ことが望ましい。

廃棄物処理法では、石綿含有廃棄物を、吹き付け石綿等の飛散性のものは「特別管

理産業廃棄物」、その他の非飛散性のものは「産業廃棄物(建設廃材、ガラスくず

及び陶磁器くず)」と2種類に区分しており、その取扱いが異なるので注意しなけ

ればならない。表―6に石綿含有廃棄物の保管、運搬及び処分に当たっての留意点

を示す。

- 559 -

表-6 石綿含有廃棄物の保管、運搬、処分に当たっての留意点

区分 事項

飛散性の石綿含有廃棄物(廃石綿)

非飛散性の石綿含有廃棄物

廃棄物としての

区分

特別管理産業廃棄物

産業廃棄物

責任者の配置

特別管理産業廃棄物管理責任者

(不要)

保管場所には、周囲に囲いを設けること

同左

保管場所の見やすい箇所に縦横60cm以上の掲示板を設け、廃棄物の種類が「廃石綿」

であること等を表示すること

左記と同じ規模の掲示板を設

置し、「非飛散性石綿」である

こと等を表示すること

強度のある耐水性材料で二重に梱包し、仕切

りを設け、他の廃棄物と分別すること

他の廃棄物と分別し、シート等

で覆いをすること

保管上の留意点

除去作業等に使用した、廃棄する養生シート

、保護具、作業衣等も「廃石綿」として処理

すること

保護具等を作業場から持ち出

す場合は十分粉じんを取り除

くこと

特別管理産業廃棄物の運搬・処分に係る許可

を得ている業者に委託するとともに、産業廃

棄物管理表(マニフェスト)に必要事項を記

入し、交付すること

産業廃棄物の運搬・処分に係る

許可を得ている業者に委託す

るとともに、産業廃棄物管理表

(マニフェスト)に必要事項を

記入し、交付すること

処理の結果を返送されたマニフェストの写

しで確認すること

同左

運搬に当たっては、他の廃棄物と混載せず、

処理施設に直送すること

運搬に当たっては、他の廃棄物

と混ざらないよう中仕切の設

置等を行うこと

運搬車には、車体の外側に産業廃棄物運搬車

であることが表示され、取り扱い上の注意事

項等が記された文書が携帯されていること

同左

運搬・処理上の

留意点

都道府県条例で、届出を規定している場合が

あるので事前に調査をすること

- 560 -

8.石綿含有製品の「封じ込め」「囲い込み」

石綿含有製品を、「除去・解体」以外の「封じ込め」「囲い込み」で処理する場合に

あっても、その作業に当たっては除去・解体作業に準じた対応をとる必要がある。また

、これらの方法は、やむを得ず吹き付け石綿等を残す、当面の処置であり、「監視・記

録」を継続する必要があるということ等に留意して対処する必要がある。 (解説)

石綿含有製品はいずれは除去し、石綿を含まない製品に代替えしなければならない。 しかしながら、施設の使用を停止して除去・解体工事をすることが困難であり、かつ施

設の更新までの間吹き付け石綿等を「封じ込め」や「囲い込み」の方法で石綿粉じんの飛

散が防止できる場合は、これらの方法によることが効率的な場合もある。 ただし、前述したように「封じ込め」とは、吹き付けられた石綿等の表面に固化剤を吹

き付けたり、その内部に固化剤を浸透させ、石綿を固化する方法であり、また、「囲い込

み」とは、吹き付けられた石綿等を石綿を含有しない製品で覆い、石綿粉じんが飛散しな

いようにする方法である。 したがって、いずれの方法も一時的な対策であり、最終的な除去量が増えることを念頭

におかなければならない。また処置後も「監視・記録」を行い、劣化の状況に注意を払う

必要がある。 なお、石綿含有製品の「封じ込め」「囲い込み」に当たっては、次のことに留意しなけ

ればならない。

① 作業実施前に、既存の石綿含有製品の劣化、損傷、下地との接着の状況等を確認し、必要に応じ石綿が飛散しないよう補修を行うこと。

② 封じ込め作業に当たっては、作業実施前に飛散防止剤の接着性、浸透性等の性能を確認し、適正なものを使用すること。囲い込み作業において石綿の飛散を防ぐため

に飛散防止剤を使用するときも同様とすること

③ 石綿含有製品に、表面の荒れ、剥離した形跡等がある場合には、作業場所の隔離、フィルターの付いた換気装置による換気等、除去・解体作業に準じた措置をとるこ

と。

- 561 -

参考1

石綿セメント管の事故率から老朽度ランクを区分した危険度推定法

1.方法 診断対象管路の呼び径、過去の事故率を、次の老朽度ランク区分に当てはめ、老朽度ラ

ンクを求める。 2.老朽度ランク区分 老朽度ランク区分を事故率(件/km/年)により定めた。 3.留意点 事故率を算出する場合の留意点は次のとおりである。 1)事故件数

管体の事故か、継手の事故かを問わず、また事故の原因の種類を問わずあらゆる事

故の件数を求める。ただし、ボーリング調査による破損等第三者から加えられた被害

は除く。 2)調査期間

短期間での事故率の計算では、偶発性が大きなウェイトを占める可能性があるため

できるだけ長期間のデータを基に算出すべきである。少なくとも3年、できれば5年

以上の事故データから事故率を計算することが望ましい。

- 562 -

危険度推定法による石綿セメント管診断シート 例)

1.事故率(件/km/年) 各管路毎の過去の事故率は次のとおりである。 表1 事故率

2.老朽度ランク区分 表2 老朽度ランク区分

事故率 a (件/km/年) 老朽度ランク

呼び径 50mm 75mm 100mm 125・150mm 200mm以上

Ⅰ a≧8.3 a≧3.7 a≧3.0 a≧1.7 a≧1.3

Ⅱ 8.3>a≧3.3 3.7>a≧2.3 3.0>a≧1.6 1.7>a≧0.7 1.3>a≧0.4

Ⅲ 3.3>a>0 2.3>a>0 1.6>a>0 0.7>a>0 0.4>a>0

Ⅳ 0 0 0 0 0

3.老朽度ランク 表1の事故率を表2に当てはめると次のようになる。 表3 診断結果

管路名または

管路№

呼び径

(mm)

管路延長

(km)

調査期間

(年)

事故件数

(件)

事故率

(件/km/年)

管路名または管路№ 老朽度ランク

- 563 -

参考2

石綿含有製品の除去・解体等の工事と主な関係法令の規定

作業区分 関係法規名 内 容 適 用

労働安全衛生法

・施行令・規則

①作業主任者の選任(法第14条)

②作業環境測定の実施(法第65条)

③健康診断の実施(法第66条)

④作業計画の届出(法第88条第4項)

特定化学物質等作業主任者技能講習修了者

有害業務を行う屋内作業場

耐火、準耐火建築物に係る作業の場合必要

石綿障害予防規

①事前調査・記録(第3条)

②作業計画の策定(第4条)

③作業の届出(第5条)

④作業場所の隔離(第6条)

⑤石綿等使用状況の通知(第8条)

⑥注文者の請負者への配慮(第9条)

⑦発生源の密閉、局所排気装置等の設置(第12条)

⑧切断等作業時の石綿等の湿潤化(第13条)

⑨呼吸用保護具、作業衣の着用(第14条)

⑩関係者以外の立入禁止、表示(第15条)

⑪石綿作業主任者の選任(第19条)

⑫就労時の特別教育の実施(第27条)

⑬洗眼、うがい、更衣等設備の設置(第31条)

⑭運搬、貯蔵時の粉じん発散の防止(第32条)

⑮作業場での喫煙、飲食の禁止(第33条)

⑯石綿等取り扱い上の注意事項の掲示(第34条)

⑰空気中の石綿濃度の測定(第36条)

目視、設計図書、又は分析調査

法88条第4項の届出を行う場合は不要

発注者から請負者に通知

設置が著しく困難、臨時作業の場合を除く

湿潤化が著しく困難な場合を除く

特定化学物質等作業主任者技能講習修了者

容器の使用、確実な包装及び石綿の表示

作業が常時行われる屋内作業場

大気汚染防止法

・施行令・規則

①特定粉じん排出等作業の基準(法第18条の14)

②特定粉じん排出等作業の届出(法第18条の15)

掲示板の設置、作業場所の隔離等

作業開始日の14日前まで

参考:吹き付け石綿の使用の可能性のある

建築物の把握方法について(環境省)

レベル1

(吹き付

け石綿・

石綿含有

吹き付け

ロックウ

ールの除

去、解体

等の作業

廃棄物の処理及

び清掃に関する

法律・施行令・

規則

①特別管理産業廃棄物の処理等の基準(法第12条の

2)

②特別管理産業廃棄物管理責任者の配置(法第12条

の2)

③産業廃棄物管理表の交付(法第12条の3)

特別管理産業廃棄物処理基準・同保管基準

原則として元請業者

最終処分は管理型最終処分場

参考:廃石綿等処理マニュアル(環境省)

- 564 -

作業区分 関係法規名 内 容 適 用

労働安全衛生法

・施行令・規則

レベル1に同じ(但し、④の作業計画の届出を除く

石綿障害予防規

①事前調査・記録(第3条)

②作業計画の策定(第4条)

③作業の届出(第5条)

④作業者以外の者の立入禁止、表示(第7条)

⑤石綿等使用状況の通知(第8条)

⑥注文者の請負者への配慮(第9条)

⑦切断等作業時の石綿等の湿潤化(第13条)

⑧呼吸用保護具、作業衣の着用(第14条)

⑨関係者以外の立入禁止、表示(第15条)

⑩石綿作業主任者の選任(第19条)

⑪就労時の特別教育の実施(第27条)

⑫洗眼、うがい、更衣等設備の設置(第31条)

⑬運搬、貯蔵時の粉じん発散の防止(第32条)

⑭作業場での喫煙、飲食の禁止(第33条)

⑮石綿等取り扱い上の注意事項の掲示(第34条)

⑯空気中の石綿濃度の測定(第36条)

目視、設計図書、又は分析調査

発注者から請負者に通知

湿潤化が著しく困難な場合を除く

特定化学物質等作業主任者技能講習修了者

容器の使用、確実な包装及び石綿の表示

作業が常時行われる屋内作業場

大気汚染防止法

・施行令・規則

レベル1に同じ 作業の種類に応じて作業の基準が違ってい

るので注意が必要(規則別表7)

廃棄物の処理及

び清掃に関する

法律・施行令・

規則

レベル1に同じ

レベル2

(石綿含

有保温材

、断熱材

、耐火被

覆材等の

除去、解

体等の作

業)

労働安全衛生法

・施行令・規則

レベル2に同じ

石綿障害予防規

①事前調査・記録(第3条)

②作業計画の策定(第4条)

③石綿等使用状況の通知(第8条)

④注文者の請負者への配慮(第9条)

⑤切断等作業時の石綿等の湿潤化(第13条)

⑥呼吸用保護具、作業衣の着用(第14条)

⑦関係者以外の立入禁止、表示(第15条)

⑧石綿作業主任者の選任(第19条)

⑨就労時の特別教育の実施(第27条)

⑩洗眼、うがい、更衣等設備の設置(第31条)

⑪運搬、貯蔵時の粉じん発散の防止(第32条)

⑫作業場での喫煙、飲食の禁止(第33条)

⑬石綿等取り扱い上の注意事項の掲示(第34条)

⑭空気中の石綿濃度の測定(第36条)

目視、設計図書、又は分析調査

発注者から請負者に通知

湿潤化が著しく困難な場合を除く

特定化学物質等作業主任者技能講習修了者

容器の使用、確実な包装及び石綿の表示

作業が常時行われる屋内作業場

レベル3

(非飛散

性石綿含

有製品の

除去、解

体等)

廃棄物の処理及

び清掃に関する

法律・施行令・

規則

①産業廃棄物の処理(法第12条)

②産業廃棄物管理表の交付(法第12条の3)

産業廃棄物処理基準・同保管基準

最終処分は安定型最終処分場

参考:飛散性アスベスト廃棄物の取り扱い

に関する技術指針(環境省)

- 565 -

《参考-7》

事 務 連 絡

平成 17 年 9 月 1 日

各地方農政局整備部設計課長 殿

農村振興局整備部設計課

施工企画調整室長

特殊土壌地帯における調査、設計及び工事の施工に関わる

技術的留意点について

特殊土壌地帯における調査、設計及び工事の施工に関わる技術的留意点につい

て、別紙のとおりとりまとめたので、国営土地改良事業の実施に当たっては遺憾

のないようにされたい。

なお、貴局管内事業(務)所に対しては、貴職から通知願います。

- 566 -

別紙

特殊土壌地帯における調査、設計及び工事の施工に関わる技術的留意点

1 趣旨

土地改良事業の調査、設計は、土地改良事業計画設計基準に基づき行うことと

されており、特に、地域の特性や現場の条件等によって選択性のある検討事項等

については、技術書の中で解説されているところである。また、土地改良事業等

の実施に当たっては、「土地改良事業等における工事の安全対策について」(平

成4年5月27日構造改善局長通知)等に基づき、工事施工の安全確保に努めて

きたところである。

特殊土壌地帯における技術書の適用に当たっては、その土壌の特殊性に鑑みた

入念な検討が必要であることから、このたび、技術的留意点を定めて、計画設計

基準等を補うこととした。なお、特殊土壌はその存在する地域により種別が多岐

にわたり、その特質や特性も一様でないこと、さらに特殊土壌と分類されるもの

以外にも、土地改良事業の調査、設計、及び工事の施工に当たって配慮すべき特

性等を有している土壌があることから、各地方農政局においては、本通知の趣旨

を踏まえ、これら土壌に対する対処方針を検討の上、技術資料を整備されたい。

また、工事施工時の降雨の排水処理については、多くの場合、土木工事共通仕

様書等の規定により、施工業者の義務として、その方法を業者に委ねているとこ

ろであるが、特殊土壌地帯では安全対策上、雨水の浸透防止等適正な排水処理が

重要であることから、設計段階における仮設計画の検討に加え、施工段階におけ

る現場状況の変化に応じた再検討の必要性等についても本通知で明記したところ

であるので、運用に当たっては、遺漏のないよう留意されたい。

- 567 -

2 特殊土壌の特性

特殊土壌は、火山噴出物、花崗岩風化土等特に侵食を受けやすい土壌を指し、

「特殊土じよう地帯災害防除及び振興臨時措置法」により特殊土壌地帯として指

定されている地域は、7種の土壌(表-1)について14県(表-2)に及び、

国土の約 15%を占める。 表-1「特殊土じよう地帯災害防除及び振興臨時措置法」における特殊土壌の種類

名 称 性 状 特 性 分 布

シラス

火砕流堆積物、軽石や岩片を含んだ火山ガラスを主とする火山灰土砂でできた厚い層(数十m~百m)。

乾燥すると凝固し大きな強度を示す。比重が小さいため、流水の影響を受けやすく、また、水分を含むと崩れやすくなるため、大規模な崩壊、地すべり、土砂流出が発生しやすい。

鹿児島県全域、 宮崎県南部、 熊本県の一部

ボラ

桜島周辺に分布する火山噴火に伴い噴出した比較的新しい粗粒の軽石が堆積した層。

軽石を主とするため、空隙が極めて大きく、保水力が低く、透水性が高い。

鹿児島県(大隅半島)

コラ

開聞岳から噴出した細粒の火山噴出物が凝固した不透水性の固い層

噴出直後に固結したと考えられ、非常に固い層を形成する。

鹿児島県 (薩摩半島南部)

赤ホヤ 浮石質の火山噴出物が風化した土壌で極度に空隙が多い。

主として、葉片状の火山ガラスからなり、仮比重が著しく小さく、孔隙にとみ、浸透性が高い。

鹿児島、宮崎、 愛媛、 高知県の大部分と熊本、大分県の一部

花崗岩 風化土 (マサ)

花崗岩が風化した腐植の少ない黄褐色の砂土又は砂礫土で粘質に乏しい。

水に対する抵抗性が小さく、降雨による崩壊、土砂流出が激しい。

中国地方の大部分 九州四国近畿の一部

ヨナ

阿蘇火山からの噴出火山灰で粒子は細かく吸水性が高い。

雨が降れば泥土化し、乾燥すると非常に固くなる。河川の侵食や農地の表土流出が著しい。

熊本県北東部、 大分県西部

富士 マサ

富士山からの噴出火山灰、火山砂、火山礫等が熔岩に堆積し著しく固結したものや黒ボクに混入し風化作用により凝結したもの。

通気性、透水性に乏しく、干害を受けやすい。

静岡県北東部

表-2 「特殊土じよう地帯災害防除及び振興臨時措置法」による指定地域

全県域が特殊土壌地帯 鹿児島、宮崎、高知、愛媛、島根

一部の市町村が特殊土壌

地帯

大分、熊本、福岡、山口、広島、岡山、鳥取、 兵庫、静岡

代表的な特殊土壌地帯である鹿児島県を中心とした南九州地域では、約 26,000年前、姶良カルデラの活動により大規模な噴火と火砕流が発生し、初期噴出物に

よる降下軽石(大隅降下軽石)層と火砕流によるシラス(入戸火砕流堆積物)層が

形成され、約 11,000 年前には桜島の活動による降下軽石(薩摩降下軽石)を主体とする層が形成された。これら降下軽石による層をボラ層と呼んでいる。さらに、

約 6,300 年前に鬼界カルデラからの噴出物による赤ホヤや、その後の火山活動による火山灰が堆積しており、非常に複雑な土壌形態を形成している。

これら火山活動に由来する特殊土壌は、一般的に水分を含むと脆く崩れやすく

なるため、これら地域における土砂災害の原因となっており、特に鹿児島県では、

その大部分を占めるシラスとボラを要因とする災害が多く発生している。

- 568 -

①シラス(火砕流堆積物)

シラスは、大規模な火山活動に伴う火砕流により形成されたことから、旧地

形の谷部や低い所を埋めるように分布しており、厚いところでは100mにも

及ぶシラス台地を形成しているところもある。南九州では幾層もの火砕流堆積

物があり、もっとも大規模なものは入戸火砕流である。 シラスの特徴は、軽石や岩片と、急冷された火山ガラスを主とする火山灰が

混ざり合い粒径が不揃いで、これらが複雑にかみ合っているため、通常の状態

では強い強度を示し、切り立った崖を有するシラス台地を形成する。しかし、

軽石などを含み、全体として比重が小さいため、流水の侵食作用にきわめて弱

いという特徴があり、シラスの切土面等においては表面排水対策を行わなけれ

ば少量の雨でもガリ侵食を起こし、浸食崩壊による災害が生じやすい。また、

崩落したものなど乱されたシラスは強度が著しく低下するため、大量の雨など

で土石流化しやすい。

②ボラ(降下軽石)

ボラ層は火山活動による噴出物が降り積もって形成されるため粒径がそろっ

ており、平地に限らず斜面部等にも旧地形面に平行に積もっていることが多い

が、堆積後の移動により谷部で厚くなっていることもある。

ボラ層は一般的に黄褐色軽石層からなり、透水性が高いため、地下水の通路

となりやすく、水が通ったところでは、脱色され粘土化が進み、指でもつぶれ

るくらいの柔らかな白色軽石となっていることもある。この粘土化が進んだと

ころの間隙水圧が上昇すると、せん断抵抗が著しく低下するため、この部分が

滑り面となり、また、風化していない部分でもパイピング現象を伴った大規模

な地すべりを起こし、土砂災害の大きな要因となっている場合がある。

ボラは、緩い傾斜地でも、地下水の状況によっては容易に滑りや崩壊が発生

するため、斜面上に存在するボラ層の危険性も指摘されている。 このように、特殊土壌は水に弱いという特徴はあるが、代表的な特殊土壌で

あるシラスとボラだけを見ても、その性状と災害の発生状況が大きく異なって

いる。 これらのことから、特殊土壌地帯における土工を伴う工事については、その

対象となる特殊土壌の特性や性状及び分布状況等を的確に把握した上で行うこ

とが重要であり、これらの地域で工事に従事する者は日頃から特殊土壌につい

ての知識の習得に努めるとともに、調査や施工の各段階で、専門家のアドバイ

ス等を受けることが必要である。

- 569 -

3 調査、計画段階における留意点

(1)施設配置計画

○ 特殊土壌地帯のうち特に傾斜地において、開削及び盛土を伴う建造物(道路、

構造物、農地の傾斜改良などを含む)を建設又は造成する場合にあっては、十

分な範囲の現地踏査を行うほか、地質構造及び土質条件を精査し、地盤と建造

物の安定の確保に留意する。 ○ 調査計画時点において、シラスやボラ層など崩壊しやすい特殊土壌の存在が明

らかになった場合、対策工法及び回避策について検討する。 ・ 施設配置計画の策定は、特殊土壌の分布状況など地質調査の結果を踏まえ、

行うものとする。 ・ 安定した法面を設計するためには、余裕をもった適正な法面勾配とするこ

とが基本である。特に特殊土壌地帯では、安全管理上も景観保全上も法面

はできる限り小規模なものとなるよう施設の配置を計画する。 ・ 特殊土壌の存在が明らかになった場合は、土砂崩壊への対策工法を検討す

る。また、土砂崩壊の危険性が高い場合は、施設の配置計画を再検討する

など、柔軟な対応をとるものとする。特殊土壌においても、特に、ボラ層

や乱れたシラス等は崩壊の要因となりやすいため、万一発見された場合は、

十分な対策を行うものとするが、それが困難な場合はボラ層を回避して設

計を行うことも必要である。 (2)地質調査

○ 特殊土壌地帯における調査では、施設を設置する地域周辺の地形・地質を把握

するとともに、特殊土壌については、その分布範囲、工学的性質を可能な限り

把握する。 ①調査範囲 ・ 特殊土壌は、崩壊や地すべり、土砂流出が発生しやすいことを踏まえ、特

殊土壌地帯においては、施設設置予定地及びその周辺を入念に、かつ、通

常よりも広範囲で現地調査を行い、工事による影響を事前に把握すること

が必要である。特に、近隣に人家や公共施設等がある場合は、十分な留意

が必要である。 ②現地踏査 ・ ボーリング調査等の点的な地質調査に先立って現地踏査を十分な範囲で行

い、施設計画地域周辺の地形や植生を俯瞰的に概観して危険箇所を確認す

るとともに、特殊土壌の露頭や湧水箇所の有無等を入念に調査する。切土

や盛土を伴う場合は、その設置予定地ばかりではなく、周辺の既設切土面

などを調べることも重要である。また、周辺における施工中や完成後の法

面安定状況についても調べるものとする。

- 570 -

③ボーリング調査 ・ 施設設置に当たり、特に大きな切土や盛土がある場合は、ボーリング調査

(縦断方向・横断方向ともに実施)及び土質試験等を行い、設計に必要な

地層・地質及び土の力学的性質を可能な限り把握する。さらに、必要に応

じて掘進中の孔内水位計測やボーリング孔を利用した水位観測を実施し、

地下水の分布状況や地下水の降雨応答を把握する。特に、特殊土壌の中で

もボラ層は粗粒でルーズなことから地下水の透水層となるため、ボラ層の

存在が確認された場合は、湧水や地中水の浸出等がないか、再度、現地踏

査で確認することが必要である。また、ボラ層は、堆積する前の谷地形の

ところで厚くなっているところがある。現在の地形との関連は薄いため、

ボーリング調査の実施に際しては、ゆるやかな谷地形のところにおいて、

特に入念に調査を行うことが必要である。盛土の基礎地盤が、ボラ層のほ

か、軟弱地盤であったり、地すべりの危険が認められる場合は、盛土の土

質のみならず、基礎地盤についても入念な調査を行うとともに、降雨の浸

透や地下水の影響についても十分留意しなければならない。 ④調査コスト ・ 調査では、過大なコストがかかることがないよう、調査内容について十分

な検討を行ったうえで実施する。当初から精度の高い調査を行うと不経済

になりやすいため、計画段階、設計段階、施工段階、維持管理段階等に分

け、それぞれの目的に応じた調査を行うものとする。 (3)測量

○ 特殊土壌地帯で大きな切土や盛土を伴う施設を計画した場合、設計のための測

量範囲は広めに行う。 ・ 例えば、農道工事の測量の場合、約 50m幅(積算基準による)で測量を行うのが一般的であるが、特に、大きな構造物が設置される場合や、切土面

や盛土面が万一崩壊すると隣接する人家や施設等に重大な損害を与えるこ

とが懸念される場合等については、これによらず、位置関係を把握するた

めに十分な広さの範囲を測量する。

- 571 -

4 設計段階における留意点

(1)基本的事項

○ 特殊土壌地帯における施設の設計に際しては、特殊土壌の特性を踏まえ、安全

には十分配慮して設計を行う。 ・ 地山は浅いところほど風化が進んでおり、軟らかく強度が小さいのが一般

的であるが、特殊土壌地帯では、深い部分でも強度が大きいとは限らず、

むしろ、地下水の条件等により深い方が強度が小さいことがある。(例えば、

地下水の通り道となっているボラ層下部等は風化が進み粘土化しているこ

とがある。)法面を設計する場合、深部の地質情報が法面の設計に大きな影

響を与える。 ・ 切盛土面の小規模な崩壊は切土材及び盛土材の土質、岩質など物性に支配

されるが、大規模な崩壊や地すべりは地山の地質構造に支配されることが

多い。したがって、すべり面となる可能性がある不連続面や弱線の有無が

法面対策に大きな影響を与えることに留意が必要である。大きな切盛土を

行う場合は、地質調査を行い、地下構造の安全性を確認するものとする。 ・ 法面安定対策には、ア)安定勾配を確保する、イ)法面安定工(抑止工)や保護工を設ける、ウ)地下水を積極的に排除する等の方法がある。いずれを採用するかは、地山条件・土質条件のほかに、経済性、工期や施工性、用地事

情、景観問題等を加味し、総合的に判断する。 ・ 法面の崩壊や地すべりの発生は、法面を流下する表面水による侵食や洗掘、

浸透水(地下水)によるパイピング、あるいは法面を構成する土のせん断

強さの低減、間隙水圧の増加等が原因となっている事例が多い。したがっ

て、法面の安定を確保するためには水に対する処理が極めて重要で、雨水

の浸入を防止するほか、法面から速やかに表面水、浸透水を処理するとと

もに、大雨時に地山の地下水位を上昇させないことが重要である。 (2)設計段階

○ 設計に際しては、地形や土質など設計条件に十分留意するとともに、施工実績

等を参考に定められている切土、盛土等の標準的な設計値を用いる場合でも、

その妥当性に十分留意する。 ①基本事項 ・ 通常、地質調査等を実施してから詳細設計に入るが、設計段階において、

調査が不十分と判断した場合には、再度入念な調査を行うものとする。 ・ 設計基準等では、土質に応じた切土・盛土高や法面勾配など、これまでの

施工実績を参考に標準的な設計値を例示しているが、これらを用いる場合

でも、その妥当性に十分留意するものとする。

- 572 -

②盛土工 ・ 盛土を行う場合は、盛土本体のみならず、基盤の安全性についても検討す

る。万一崩壊すると、隣接物に重大な損害を与えることが想定される場合

には、標準法勾配を安易に適用することなく、安定計算を含む常時、さら

には必要に応じて地震時の安定の検討を行って、盛土構造、地下水排水工、

法面勾配及び保護工、地震対策を設計する。 ・ ボラ層等特に崩壊しやすい土壌が確認された場合は、盛土を回避すること

を検討するほか、盛土構造等の設計や雨水の浸透防止対策・排水対策等に

ついて検討する。また、必要に応じ専門家で組織する技術検討委員会に助

言を求めるものとする。 ③切土工 ・ 特殊土壌地帯では、雨水や地下水の処理を誤れば、土砂崩壊等の重大な事

故を引き起こすおそれがあることから、雨水の排水計画等、仮設計画につ

いても十分な検討を行う。特に切土等によりボラ層が露頭する場合は、切

土部から雨水が浸入し、土砂崩壊に結びつく可能性があることから、雨水

浸入を防止する対策を講じなければならない。 ・ ボラ層等特に崩壊しやすい土壌が露出し、切土法面に雨水浸入が予測され

る場合は、浸入経路について調査・検討を行うとともに、切土勾配等の設

計や雨水の排水対策・土砂崩壊対策について十分に検討を行う。必要に応

じ専門家による構成される技術検討委員会に助言を求めるものとする。 ④排水施設の計画 ・ 排水施設の計画、設計に当たっては、降雨、地形・地表の状況、土質・地

質、地下水の状況(地下水位、地下水の動き、湧水の状況、透水層の位置、

透水係数、不透水層の深さ等)、排水路系統などを十分調査する。これらの

調査は、法面だけではなく、関連する施設全体の排水を合理的、機能的、

経済的に行うと同時に、施工性及び維持管理に必要な情報を得るためにも

行う。 ・ 湧水が認められる法面では、固結度が低く、高含水状態となり、崩壊の危

険度が高いため、地下水排水工や水抜きボーリングで積極的に湧水を排水

する。

- 573 -

5 施工段階における留意点 (1)基本的事項 ○ 特殊土壌地帯において、開削及び盛土を伴う建造物を建設または造成する場合にあっては、工事着手前のほか、工事中においても、地質構造及び土質条件を確認し、特に地盤の安定の確保と建造物の安定の確保に留意する。

○ 工事の発注に際しては、設計図書等で現場条件、設計条件を明示し、施工時の留意事項・配慮事項を明らかにするとともに、施工中にあっては各条件との相違等を十分把握し、必要がある場合は、すみやかに設計変更等適切な対処を行う。

○ 特殊土壌地帯における工事の施工に当たっては、特殊土壌の特性を十分認識するとともに、各施工段階において安全確保に疑義が生じた場合には、専門家に助言を求めるなど、的確な対応が必要である。

・ 施工前の調査において地質や地盤の全てを把握することは不可能であり、

設計図書に示された地質等に関する情報は、局部的なデータを基に推定さ

れたものであることを認識しておかなければならない。また、実際の地質

や地盤が調査結果や設計条件と異なった場合の対応や発生する問題点など

を可能な限り予測しておくことも重要である。

・ 特殊土壌地帯における土工事にあっては、設計条件と現場条件の相違を的

確にチェックできる特殊土壌に関する知識を持った技術者が配置されてい

るか施工体制台帳提出時に確認する。また、現場技術員を配置する場合に

あっても同様の技術者であることが望ましい。

・ 施工中にあって、設計条件と現場条件に相違が生じた場合には、その影響

を検討し、安全確保に疑義が生じた場合には、必要に応じ専門家により構

成される技術検討委員会に助言を求めるものとする。検討の結果、必要が

ある場合は、設計変更、あるいはその他の安全対策を速やかに講じる。

・ 発注時において想定している設計条件(現場・施工条件等)について明示

するとともに、施工時には想定条件の相違を随時把握し、的確な対応を行

う。

(2)施工計画

○ 工事着手前、請負者から施工計画書の提出があった時には、設計条件等を十分

把握し、設計図書及び事前調査結果に基づき、施工方法、工程、安全対策、環

境対策等について総合的な視点から点検する。

○ 施工時において、事前検討の条件と実際の施工条件の相違や、新たな条件が生

じた場合は、その状況を十分把握するとともに、施工計画の内容に重要な変更

が生じた場合は、その都度当該工事に着手する前に変更施工計画書の提出を求

め、点検を行う。

・ 請負者が作成する施工計画については、工程、資機材、労務等の一般的事

- 574 -

項のほか、工事の難易度を評価する項目(工事数量、地形地質、構造規模、

適用工法、工期、用地等)を考慮し、工事の安全施工が確保されるように、

施工方法、工程、安全対策、環境対策等について総合的な視点から点検を

行う。

・ 請負者が行う工事着手前の調査は、地形、地質、気象、海象等の自然特性、

工事用地、支障物件、交通、周辺環境、施設管理等の立地条件について適

切に行われる必要がある。

また、この際、設計図書等で示した地質調査結果等のほか、安全施工のた

め不足している調査が明らかになった場合には、追加調査を行うよう指示

することが必要である。

・ 請負者が行う工事着手前及び施工中の地質の調査分析に当たっては、特殊

土壌の露頭、湧水個所の有無の把握等について特に入念に行う必要がある。

・ 請負者から提出された施工計画書については、施工計画審査会などを開催

し、安全施工の確保のため発注者・請負者両者で協議及び検討を行う必要

がある。

(3)施工

○ 施工中想定していない特殊土壌が出現した場合は、その開削面に雨水の浸透、

周辺の表流水等の浸入の抑止対策をとるとともに、必要に応じて地質調査、安

全対策、対策工法の検討を速やかに行う。

○ 掘削及び盛土の施工中に、予期しない沈下や変形が観察された場合、または崩

壊が生じるおそれがある場合には、処理方法について速やかに検討し、災害防

止のため必要があると認められる場合には、臨機の措置をとる。

・ 工事施工中においては、予期せぬ特殊土壌の出現、地質条件の相違、湧水

の発生等、施工条件の相違に留意しながら、現場管理を行う必要がある。

・ 工事施工に当たっては、常に現場点検を行い、安全を確保するよう請負者

を指導する。特に降雨や地震の後には入念に点検を行うことが必要である。

・ ボラ層等水に侵食されやすい特殊土壌が出現した場合、地盤の安定を確保

するため、雨水、表流水、地下水・湧水の浸入の抑止対策、排水処理を行

うとともに、早急に調査の実施と対策の検討を行う必要がある。

・ 切土部の山留擁壁、盛土部の法止擁壁等の土留め壁の設置に当たり、壁背

後に特殊土壌の層が介在する場合は、特殊土壌の層が浸透経路になり、壁

による地下水位の上昇が壁及び斜面の安定を損ねるおそれがあることか

ら、安全の検討を行う必要がある。

・ 特にボラ層については、透水性が高いため雨水や地下水が集中しやすく、

さらに比重が軽いために表流水や地下水により容易に侵食され流出する特

性を持つため、雨水、表流水の浸入防止対策、侵食防止対策、排水対策に

より万全を期す必要がある。中でも、斜面の中部や下部にボラ層が存在す

る場合は、地下水がボラ層に集中して斜面上に噴出し、ボラ層の侵食を伴

- 575 -

って斜面が不安定化してより大規模な斜面崩壊を発生させる危険性があ

る。この場合の対策工法の検討に当たっては、専門家に意見を求めるなど

慎重に行う必要がある。

・ 対策工施工の際、例えば、法面の掘削に当たっては、

ⅰ)法肩排水溝を設けて後背地からの表流水の浸入を防止する

ⅱ)法面整形の進行に伴い小段一段ごとに小段排水溝、縦排水溝、法面保

護工を順次遅滞なく施工する

ⅲ)降雨が予想される場合は、雨水の浸入を防止する

など細心の注意をもって実施する必要がある。また、盛土に当たっても同

様の留意が必要である。

・ 法面の異常な現象には次のようなものがある。

ア)決定的に崩壊まで進むとは言えないが要注意の現象 構造物(擁壁・法枠・吹付け・道路舗装など)のクラック、地山のクラッ

ク、法面はらみ出し、湧水、単発落石など

イ)崩壊の前兆として可能性の高い現象 変位の進行、クラックの段差化(滑落崖)、クラックの連続化、はらみ

出しの進行、湧水の濁り、落石・小崩落続発、植物破断音、山鳴りなど

ウ)崩壊し、さらに大きな崩壊に発展する可能性がある現象 小崩落続発、小段の決壊、構造物の破壊など 以上のような異常な現象が認められたときには、その状況に応じて適切に

対処する。

例えば、ア)のような場合には、要注意箇所の工事関係者への周知、日常

点検の強化、計測機器の配置・増設、対策工・設計変更の検討など、イ)で

は立ち入り禁止措置、避難措置、応急対策など、ウ)の場合は、規模の推

定と避難・通行規制、関係機関への連絡などがある。 特に、ウ)のような事態は避ける必要があり、そのためには、日常点検及

び計器を使った地表変位の測定(伸縮計、地盤傾斜計、光波測距儀などに

よる)、地中変位の測定(孔内傾斜計、パイプひずみ計などによる)等の

動態観測によって、進行を早期に把握し、対策を講じる必要がある。 ・ 発注者としては、このような対策が適切に行われるよう、請負者を指導す

る必要がある。

- 576 -

6 技術検討委員会の設置

特殊土壌地帯における調査に当たっては、「3 調査、計画段階における留意

点」で記述したとおり、ボーリング調査等の点的な地質調査に先立ち、施設の計

画地域及びその周辺の地形や植生を俯瞰的に概観して危険箇所を確認するととも

に、計画路線の踏査においては特殊土壌の露頭や湧水箇所の有無などを入念に調

査することが重要であるが、このような調査を正確に行い、特殊土壌の性状等を

把握するためには、特殊土壌の特性に関する知識や経験の蓄積が必要となる。

このため、計画地域周辺に人家や公共施設等があり、土砂崩壊等が生じた場合

に甚大な損害を招くと予測される場合には、調査設計段階から、特殊土壌に関し

て豊富な知識と経験を有する地質の専門家等の参加を得た「特殊土壌技術検討委

員会」を設置して、総合的な検討を行うものとする。

特に、設計段階における検討は、これまでの現場踏査、地質調査結果とその分

析内容等について技術検討委員会で評価するとともに、その上で法面の安定性、

施工方法、仮設計画等の設計内容の妥当性を議論することとする。また、当該工

事の発注に当たっては、農政局等の設計審査において、調査設計段階から技術検

討委員会で議論を重ね、その結果を踏まえた工事内容となっていることを確認す

るものとする。

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《参考-8》

ずい道等建設工事における粉じん対策に関するガイドライン

平成12年12月26日 基発第768号の2

一部改正:平成20年2月26日 基発第0226006号

第1 趣旨

本ガイドラインは、ずい道等建設工事における粉じん対策に関し、粉じん障害防止規則(昭

和54年労働省令第18号)に規定された事項及び粉じん障害防止総合対策において推進するこ

ととしている事項等について、その具体的実施事項を一体的に示すことにより、ずい道等建

設工事における粉じん対策のより一層の充実を図ることを目的とする。

第2 適用

本ガイドラインは、ずい道等(ずい道及びたて坑以外の坑(採石法(昭和25年法律第291号)

第2条に規定する岩石の採取のためのものを除く。)をいう。以下同じ。)を建設する工事(以

下「ずい道等建設工事」という。)であって、掘削、ずり積み、ロックボルトの取付け、コ

ンクリート等の吹付け等、その実施に伴い粉じんが発生する作業を有するずい道等建設工事

に適用する。

ただし、作業の自動化等により、労働者がずい道等の坑内に入らないずい道等建設工事に

は、適用しない。

第3 事業者の実施すべき事項

1.粉じん対策に係る計画の策定

事業者は、ずい道等建設工事を実施しようとするときは、事前に、粉じんの発散を抑制

するための粉じん発生源に係る措置、換気装置等による換気の実施等、換気の実施等の効

果を確認するための粉じん濃度等の測定、防じんマスク等有効な呼吸用保護具の使用、労

働衛生教育の実施、その他必要な事項を内容とする粉じん対策に係る計画を策定すること。

2.粉じん発生源に係る措置

事業者は、坑内の次の作業において、それぞれの定めるところにより、粉じんの発散を

防止するための措置を講じること。ただし、湿潤な土石又は岩石を掘削する作業、湿潤な

土石の積込み又は運搬を行う作業及び水の中で土石又は岩石の破砕、粉砕等を行う作業に

あっては、この限りでないこと。

(1) 掘削作業

イ.発破による掘削作業

(イ)せん孔作業

くり粉を圧力水により孔から排出する湿式型の削岩機(発泡によりくり粉の発散を

防止するものを含む。)を使用すること又はこれと同等以上の措置を講じること。

(ロ)発破作業

発破後は、安全が確認されたのち、粉じんが適当に薄められた後でなければ、発破

をした箇所に労働者を近寄らせないこと。

ロ.機械による掘削作業(シールド工法及び推進工法による掘削作業を除く。)

次に掲げるいずれかの措置又はこれと同等以上の措置を講じること。

(イ)湿式型の機械装置を設置すること。

(ロ)土石又は岩石を湿潤な状態に保つための設備を設置すること。

ハ.シールド工法及び推進工法による掘削作業

- 578 -

次に掲げるいずれかの措置又はこれと同等以上の措置を講じること。

(イ)湿式型の機械装置を設置すること。

(ロ)密閉型のシールド掘削機等切羽の部分が密閉されている機械装置を設置すること。

(ハ)土石又は岩石を湿潤な状態に保つための設備を設置すること。

(2) ずり積み等作業

イ.破砕・粉砕・ふるいわけ作業

次に掲げるいずれかの措置又はこれと同等以上の措置を講じること。

(イ)密閉する設備を設置すること。

(ロ)土石又は岩石を湿潤な状態に保つための設備を設置すること。

ロ.ずり積み及びずり運搬作業

土石を湿潤な状態に保つための設備を設置すること又はこれと同等以上の措置を講

じること。

(3) ロックボルトの取付け等のせん孔作業及びコンクリート等の吹付け作業

イ.せん孔作業

くり粉を圧力水により孔から排出する湿式型の削岩機(発泡によりくり粉の発散を防

止するものを含む。)を使用すること又はこれと同等以上の措置を講じること。

ロ.コンクリート等の吹付け作業

次に掲げる措置を講じること。

(イ)湿式型の吹付け機械装置を使用すること又はこれと同等以上の措置を講じること。

(ロ)必要に応じ、コンクリートの原材料に粉じん抑制剤等を入れること。

(ハ)吹付けノズルと吹付け面との距離、吹付け角度、吹付け圧等に関する作業標準を定

め、労働者に当該作業標準に従って作業させること。

(4) その他

イ.たい積粉じんの発散を防止するため、坑内に設置した機械設備、電気設備等にたい積

した粉じんを定期的に清掃すること。

ロ.建設機械等の走行によるたい積粉じんの発散を少なくするため、次の事項の実施に努

めること。

(イ)走行路に散水すること、走行路を仮舗装すること等粉じんの発散を防止すること。

(ロ)走行速度を抑制すること。

(ハ)過積載をしないこと。

ハ.必要に応じ、エアカーテン等、切羽等の粉じん発生源において発散した粉じんが坑内

に拡散しないようにするための方法の採用に努めること。

ニ.坑内で常時使用する建設機械については、排出ガスの黒煙を浄化する装置を装着した

機械を使用することに努めること。

なお、レディミクストコンクリート車等外部から坑内に入ってくる車両については、

排気ガスの排出を抑制する運転方法に努めること。

3.換気装置等(換気装置及び集じん装置をいう。以下同じ。)による換気の実施等

(1) 換気装置による換気の実施

事業者は、坑内の粉じん濃度を減少させるため、次に掲げる事項に留意し、換気装置

による換気を行うこと。

イ.換気装置(風管及び換気ファンをいう。以下同じ。)は、ずい道等の規模、施工方法、

施工条件等を考慮した上で、坑内の空気を強制的に換気するのに最も適した換気方式の

ものを選定すること。

なお、換気方式の選定に当たっては、発生した粉じんの効果的な排出・希釈及び坑内

全域における粉じん濃度の低減に配慮することが必要であり、送気式換気装置、局所換

気ファンを有する排気式換気装置、送・排気併用式換気装置、送・排気組合せ式換気装

置等の換気装置が望ましいこと。

ロ.送気口(換気装置の送気管又は局所換気ファンによって清浄な空気を坑内に送り込む

- 579 -

口のことをいう。以下同じ。)及び吸気口(換気装置の排気管によって坑内の汚染された

空気を吸い込む口のことをいう。以下同じ。)は、有効な換気を行うのに適正な位置に

設けること。

また、ずい道等建設工事の進捗に応じて速やかに風管を延長すること。

ハ.換気ファンは、風管の長さ、風管の断面積等を考慮した上で、十分な換気能力を有し

ているものであること。

なお、風量の調整が可能なものが望ましいこと。

ニ.送気量及び排気量のバランスが適正であること。

ホ.粉じんを含む空気が坑内で循環又は滞留しないこと。

ヘ.坑外に排気された粉じんを含む空気が再び坑内に逆流しないこと。

ト.風管の曲線部は、圧力損失を小さくするため、できるだけ緩やかな曲がりとすること。

(2) 集じん装置による集じんの実施

事業者は、必要に応じ、次に掲げる事項に留意し、集じん装置による集じんを行うこ

と。

イ.集じん装置は、ずい道等の規模等を考慮した上、十分な処理容量を有しているもので、

粉じんを効率よく捕集し、かつ、吸入性粉じんを含めた粉じんを清浄化する処理能力を

有しているものであること。

ロ.集じん装置は、粉じんの発生源、換気装置の送気口及び吸気口の位置等を考慮し、発

散した粉じんを速やかに集じんすることができる位置に設けること。

なお、集じん装置への有効な吸込み気流を作るため、局所換気ファン、隔壁、エアカ

ーテン等を設置することが望ましいこと。

ハ.集じん装置にたい積した粉じんを廃棄する場合には、粉じんを発散させないようにす

ること。

(3) 換気装置等の管理

イ.換気装置等の点検及び補修等

事業者は、換気装置等については、半月以内ごとに1回、定期に、次に掲げる事項に

ついて点検を行い、異常を認めたときは、直ちに補修その他の措置を講じること。

(イ)換気装置

a 風管及び換気ファンの摩耗、腐食、破損その他損傷の有無及びその程度

b 風管及び換気ファンにおける粉じんのたい積状態

c 送気及び排気の能力

d その他、換気装置の性能を保持するために必要な事項

(ロ)集じん装置

a 構造部分の摩耗、腐食、破損その他損傷の有無及びその程度

b 内部における粉じんのたい積状態

c ろ過装置にあっては、ろ材の破損又はろ材取付け部分等のゆるみの有無

d 処理能力

e その他、集じん装置の性能を保持するために必要な事項

ロ.換気装置等の点検及び補修等の記録

事業者は、換気装置等の点検を行ったときは、次に掲げる事項を記録し、これを3年

間保存すること。

(イ) 点検年月日

(ロ) 点検方法

(ハ) 点検箇所

(ニ) 点検の結果

(ホ) 点検を実施した者の氏名

(ヘ) 点検の結果に基づいて補修等の措置を講じたときは、その内容

4.換気の実施等の効果を確認するための粉じん濃度等の測定

- 580 -

(1) 粉じん濃度等の測定

事業者は、換気の実施等の効果を確認するため、半月以内ごとに1回、定期に次の事

項について測定を行うこと。

なお、測定は、別紙「換気の実施等の効果を確認するための空気中の粉じん濃度、風

速等の測定方法」に従って実施すること。

また、事業者は、換気装置を初めて使用する場合、又は施設、設備、作業工程若しく

は作業方法について大幅な変更を行った場合にも、測定を行う必要があること。

イ.空気中の粉じん濃度

ロ.風速

ハ.換気装置等の風量

ニ.気流の方向

(2) 空気中の粉じん濃度の測定結果の評価

事業者は、空気中の粉じん濃度の測定を行ったときは、その都度、速やかに、次によ

り当該測定の結果の評価を行うこと。

イ.粉じん濃度目標レベル

粉じん濃度目標レベルは3mg/m3 以下とすること。

ただし、掘削断面積が小さいため、3mg/m3を達成するのに必要な大きさ(口径)の風

管又は必要な本数の風管の設置、必要な容量の集じん装置の設置等が施工上極めて困難

であるものについては、可能な限り、3mg/m3に近い値を粉じん濃度目標レベルとして設

定し、当該値を記録しておくこと。 ロ.評価値の計算

空気中の粉じん濃度の測定結果の評価値は、各測定点における測定値を算術平均して

求めること。

ハ.測定結果の評価

空気中の粉じん濃度の測定結果の評価は、評価値と粉じん濃度目標レベルとを比較し

て、評価値が粉じん濃度目標レベルを超えるか否かにより行うこと。

(3) 空気中の粉じん濃度の測定結果に基づく措置

事業者は、評価値が粉じん濃度目標レベルを超える場合には、設備、作業工程又は作

業方法の点検を行い、その結果に基づき換気装置の風量の増加、作業工程又は作業方法

の改善等作業環境を改善するための必要な措置を講じること 。

また、事業者は、当該措置を講じたときは、その効果を確認するため、(1)の粉じん

濃度等の測定を行うこと。

(4) 粉じん濃度等の測定等の記録

事業者は、粉じん濃度等の測定及び空気中の粉じん濃度の測定結果の評価を行ったと

きは、その都度、次の事項を記録して、これを7年間保存すること。

なお、粉じん濃度等の測定結果については、関係労働者が閲覧できるようにしておく

ことが望ましいこと。

イ.測定日時

ロ.測定方法

ハ.測定箇所

ニ.測定条件

ホ.測定結果

ヘ.測定結果の評価

ト.測定及び評価を実施した者の氏名

チ.評価に基づいて改善措置を実施したときは、当該措置の概要

5.防じんマスク等有効な呼吸用保護具の使用

事業者は、坑内の作業に労働者を従事させる場合には、坑内において、常時、防じんマ

スク、電動ファン付き呼吸用保護具等有効な呼吸用保護具(動力を用いて掘削する場所に

- 581 -

おける作業、動力を用いてずりを積み込み若しくは積み卸す場所における作業又はコンク

リート等を吹き付ける場所における作業にあっては、電動ファン付き呼吸用保護具に限

る。)を使用させるとともに、次に掲げる措置を講じること。

なお、作業の内容及び強度を考慮し、呼吸用保護具の重量、吸排気抵抗等が当該作業に

適したものを選択すること。

(1) 保護具着用管理責任者の選任

保護具着用管理責任者を次の者から選任し、呼吸用保護具の適正な選択、使用、顔面

への密着性の確認等に関する指導、呼吸用保護具の保守管理及び廃棄を行わせること。

イ.衛生管理者の資格を有する者

ロ.その他労働衛生に関する知識、経験等を有する者

(2) 呼吸用保護具の適正な選択、使用及び保守管理の徹底

呼吸用保護具の選択、使用及び保守管理に関する方法並びに呼吸用保護具のフィルタ

の交換の基準を定めること。

また、フィルタの交換日等を記録する台帳を整備すること。

なお、当該台帳については、3年間保存することが望ましいこと。

(3) 呼吸用保護具の顔面への密着性の確認

呼吸用保護具を使用する際には、労働者に顔面への密着性について確認させること。

(4) 呼吸用保護具の備え付け等

呼吸用保護具については、同時に就業する労働者の人数と同数以上を備え、常時有効

かつ清潔に保持すること。

6.労働衛生教育の実施

事業者は、坑内の作業に労働者を従事させる場合には、次に掲げる労働衛生教育を実

施すること。

また、これら労働衛生教育を行ったときは、受講者の記録を作成し、3年間保存する

こと。

(1) 粉じん作業特別教育

坑内の特定粉じん作業(粉じん障害防止規則第2条第1項第3号に規定する特定粉じん

作業をいう。以下同じ。)に従事する労働者に対し、粉じん障害防止規則第22条に基づ

く特別教育を行うこと。

また、特定粉じん作業以外の粉じん作業に従事する労働者についても、特別教育に準

じた教育を実施すること。

(2) 防じんマスクの適正な使用に関する教育

事業者は、坑内の作業に従事する労働者に対し、次に掲げる事項について教育を行う

こと。

イ.粉じんによる疾病と健康管理

ロ.粉じんによる疾病の防止

ハ.防じんマスクの選択及び使用方法

7.その他の粉じん対策

事業者は、労働者が、休憩の際、容易に坑外に出ることが困難な場合において、次に

掲げる措置を講じた休憩室を設置することが望ましいこと。

イ.清浄な空気が室内に送気され、粉じんから労働者が隔離されていること。

ロ.労働者が作業衣等に付着した粉じんを除去することのできる用具が備えられているこ

と。

第4 元方事業者が配慮する事項

1.粉じん対策に係る計画の調整

元方事業者は、上記第3の1の粉じん対策に係る計画の策定について、上記第3により

事業者の実施すべき事項に関し、関係請負人と調整を行うこと。

- 582 -

2.教育に対する指導及び援助

元方事業者は、関係請負人が上記第3の6により実施する労働衛生教育について、当該

教育を行う場所の提供、当該教育に使用する資料の提供等の措置を講じること。

3.清掃作業日の統一

元方事業者は、関係請負人が上記第3の2の(4)のイにより実施する清掃について、清

掃日を統一的に定め、これを当該関係請負人に周知すること。

4.関係請負人に対する技術上の指導等

元方事業者は、関係請負人が講ずべき措置が適切に実施されるように、技術上の指導

その他必要な措置を講じること。

- 583 -

別紙

換気の実施等の効果を確認するための空気中の粉じん濃度、風速等の測定方法

1 . 測定位置

空気中の粉じん濃度及び風速の測定点は、切羽から坑口に向かって50メートル程度離

れた位置における断面において、床上50センチメートル以上150センチメートル以下の

同じ高さで、それぞれの側壁から1メートル以上離れた点及び中央の点の3点とすること。

ただし、設備等があって測定が著しく困難な場合又はずい道等の掘削の断面積が小さ

い場合にあっては、測定点を3点とすることを除き、この限りでないこと。

なお、換気装置等の風量の測定における風速の測定点は、風管等の送気口又は吸気口

の中心の位置とすること。

2 . 測定時間帯

粉じん濃度等の測定は、空気中の粉じん濃度が最も高くなる粉じん作業について、当

該作業が行われている時間に行うこと。

3 . 測定時間

空気中の粉じん濃度の一の測定点における測定時間は、10分以上の継続した時間とす

ること。ただし、測定対象作業の作業時間が短いことにより、一の測定点について10

分以上測定できない場合にあっては、この限りでないが、測定時間は同じ長さとする必

要があること。

4 . 測定方法

(1) 空気中の粉じん濃度の測定

空気中の粉じん濃度の測定は、相対濃度指示方法によることとし、次に定めるところ

により行うこと。

イ. 測定機器は、光散乱方式によるものとし、作業環境測定基準( 昭和51年労働省告

示第46号)第2条第3項第1号の労働省労働基準局長が指定する者によって1年以内ごと

に1回、定期に較正されたものを使用すること。

ロ. 光散乱方式による測定機器による質量濃度変換係数は、当該測定機器の種類に応

じ、次の表にそれぞれ掲げる数値とすること。

なお、次の表に掲げる測定機器以外の機器については、併行測定の実施あるいは過

去に得られたデータの活用等により当該粉じんに対する質量濃度変換係数をあらか

じめ定め、その数値を使用すること。

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測 定 機 器 質量濃度変換係数(mg/m3/cpm)

3451 0.6

P-5L、P-5L2、P-5L3 0.04

LD-1L、3411 0.02

P-5H、P-5H2、P-5H3 0.004

3423 0.003

LD-1H、LD-1H2、LD-3K、LD-3K2 0.002

ハ.粉じん濃度は、次式により計算すること。

粉じん濃度(mg/m3)=質量濃度変換係数(mg/m3/cpm)×相対濃度(cpm)

(2)風速の測定

風速の測定は、熱線風速計を用いて行うこと。

(3)換気装置等の風量の測定

換気装置等の風量は、次式により計算すること。

換気装置等の風量(m3/min)=風速(m/sec)×0.8×60×送気口又は吸気口の断面積(m2)

(4)気流の方向の測定

スモークテスター等により気流の方向の確認を行うこと。