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第 8章 ひずみエネルギーとエネルギー原理
8.1 ひずみエネルギー
8.1.1 線形弾性体の場合
弾性体が一定温度で釣合いを保ちながら変形する場合,外力の成した仕事はひずみエネルギー(strain
energy)となって弾性体に蓄積される.線形弾性体に対して単独の外力 P が作用する場合,図 8-1 に示す
ように,外力の成す仕事は P と外力作用点変位 uの関係である直線の下の面積であり,これがひずみエネ
ルギーUに等しくなる.
2
PuU (8-1)
また,線形弾性体に対して単独の集中モー
メント Mが作用する場合は,図 8-2 に示す
ように,M とその作用点の回転角の関係
である直線の下の面積がモーメントの成
す仕事=ひずみエネルギーU となる.
2
MU
(8-2)
一方,物体全体に蓄えられるひずみエネルギーUは,単位体積当たりのひずみエネルギーU0を体積積分
したものとしても表示できる.
0 1 2 3 0 1 2 3
d d d d , d d dU U x x x U U x x x (8-3)
この単位体積当たりのひずみエネルギーU0はひずみエネルギー関数(strain energy function),あるいはひず
みエネルギー密度と称される.一般に,U0は物体中で位置によって変化する座標の関数である.弾性体の
場合,ひずみエネルギー関数 U0は次式のように応力・ひずみと関係づけられる.
工学ひずみを用いた場合:
0 11 11 22 22 33 33 23 23 31 31 12 12
1( )
2U (8-4)
テンソルひずみを用いた場合:
0 11 11 22 22 33 33 23 23 31 31 12 12
1( 2 2 2 )
2U (8-4)
式(8-4)は,一種類の応力成分だけが作用する場合のひずみエネルギー関
数は,図 8-3 に示すようにその応力成分と対応する工学ひずみ成分との
関係が示す直線の下の面積であり,多軸応力下では 6個の独立な応力成
分に関するその面積の和であることを意味している.
式(4-12)の応力-ひずみ関係を用いて式(8-4)あるいは式 (8-4)からひ
ずみ成分を消去し,ひずみエネルギー関数 U0 を応力成分だけで表すと
次式が得られる.
2 2 2 2 2 20 11 22 33 22 33 33 11 11 22 23 31 12
1 12 ( ) ( )
2U
E E
(8-5)
また,ひずみ成分だけで表したひずみエネルギー関数 U0は以下のようになる.
2 2 2 2 2 2 20 11 22 33 11 22 33 23 31 12
2 2 2 2 2 2 211 22 33 11 22 33 23 31 12
1( ) ( )
2(1 )(1 2 ) 2(1 ) 2
( ) 2( ) 2(1 )(1 2 ) 2(1 )
E EU
E E
(8-6)
第 8章 ひずみエネルギーとエネルギー原理
- 83 -
式(8-4)の導出
図 8-4(a)に示すような各方向の長さが dx1,dx2,dx3の微小直方体要素を考え,その表面に作用する応力,
および重心に作用する物体力が成す仕事量を計算する.ここで,力の釣合いが成り立っている場合は (そ
の方向の力の和) = 0 であり,ひずみを生じないその方向の剛体的な変位に対する仕事も打ち消し合ってそ
の和も (その方向の力の和)×(剛体変位)/2 = 0 となるから,剛体変位の寄与は無視することができる.
まず,図 8-4(b)に示すように左側面が支持され剛体変位が生じていない状態とし,右側面に作用する x1
方向の垂直応力11と重心に作用する物体力f1の成す仕事 dU11を考える.垂直応力11については
応力: 11, その作用面面積: dx2dx3, 作用面の変位: 11dx1
である.力の成す仕事は図 8-1 に示すように (力×変位)/2であるから,応力11が成す仕事は
応力11が成す仕事: 11dx2dx3×11dx1/2
となる.また物体力については
単位体積当たりの物体力: f1, その作用体積: dx1dx2dx3, 重心の変位: 11dx1/2
だから,その仕事は
物体力が成す仕事: (f1dx1dx2dx3×11dx1/2)/2
したがって両者の和は
11 11 2 3 11 1 1 1 2 3 11 1
1 1 1d d d d d d d d
2 2 2U x x x f x x x x
上式から物体力の項は応力の項より高次の微小量となって無視できることが解る.このとき,単位体積当
たりの仕事量(ひずみエネルギー関数)を U0(11)とすると
11 1111 11 11 1 2 3 0 1 2 3 0 11 11( ) ( )1 1
d d d d d d d 2 2
U x x x U x x x U (8-7)
となって式(8-4)の右辺第 1 項が得られる.同じように垂直応力22と33による単位体積当たりの仕事も次
式のように導かれる.
22 330 22 22 0 33 33( ) ( )1 1
, 2 2
U U (8-7)
次に,図 8-4(c)のように下面が支持され剛体変位が生じていない状態とし,せん断応力12による仕事 dU12
を考える.このとき上下方向の変位が生じていないから,左右両側面に作用するせん断応力(下向きある
いは上向き)は仕事をしない.このため上面に作用するせん断応力による仕事だけを考えると
上面のせん断応力: 12, その作用面面積: dx3dx1, 作用面の変位: 12dx2
であるからその仕事 dU12と単位体積当たりの仕事量(ひずみエネルギー関数)U0(12)は
12 1212 12 3 1 12 2 12 12 1 2 3 0 1 2 3 0 12 12( ) ( )1 1 1
d d d d d d d d d d 2 2 2
U x x x x x x U x x x U (8-8)
となって式(8-4)の右辺第 6 項が得られる.同じようにせん断応力23と31による単位体積当たりの仕事も
次式のように導かれる.
第 8章 ひずみエネルギーとエネルギー原理
- 84 -
23 310 23 23 0 31 31( ) ( )1 1
, 2 2
U U (8-8)
以上の式(8-7), (8-7),(8-8), (8-8)をすべて合わせることによって式(8-4)が得られる.なお,この導出で
は微小要素内に作用する応力を一定と考えたが,位置の変化に伴う応力の微小変化を考慮しても同じ結論
が得られる.
例 8-1: 第 7章演習問題 7.3(図 7-35)の二方向曲げを受ける長方形平板におけるひずみエネルギー.
たわみの解は次式の通り.
)1(2
})(){(
2
22AB
21BA
3
D
xMMxMMu
薄板の曲げでは厚さ方向の応力成分は33 =23 =31 = 0 と無視し,残りの応力・ひずみ成分の寄与を考える.
上式のたわみを式(7-2)と(7-9)に代入するとひずみ成分が得られる.
2 2 23 3 3A B B A
11 3 3 22 3 3 12 32 2 2 21 21 2
, , 2 0(1 ) (1 )
u u uM M M Mx x x x x
x xx D x D
また,たわみを式 (7-5)と(7-11)に代入すると次の応力成分を得る(11と22は式 (7-5)からも得られる).
A B11 3 22 3 123 3
12 12, , 0
M Mx x
h h
これらを式(8-4)に代入して整理すると
2 22A B A B
0 33 2
6( 2 )
(1 )
M M M MU x
Dh
これを平板全体(x1 = 0~a,x2 = 0~b,x3 = h/2~h/2)に対して積分すると次式のひずみエネルギーが得ら
れる. /2 /22 2
2A B A B0 1 2 3 3 33 2
/2 0 0 /2
2 2 2 23A B A B A B A B
3 2 2
6( 2 )d d d d
(1 )
6( 2 ) ( 2 )
12(1 ) 2 (1 )
h b a h
h h
M M M MU U x x x ab x x
Dh
M M M M M M M Mhab ab
Dh D
例 8-2: 第 7章,例 7-5(図 7-28)の集中外力を受ける円板におけるひずみエネルギー.
集中外力を受ける中心点の変位は
2 2 2 2
00
2 ln( / )16 16
z rr
P Pu b r r r b b
D D
したがって円板に蓄えられるひずみエネルギーは
22 2
2
8
2 32
P P DU b
D b
2
16
DP
b
8.1.2 非線形弾性体の場合
非線形弾性体の場合,ひずみエネルギー関数は次の積分形で表示される(線形弾性体に対する式(8-4),
(8-4)はその特別な場合に相当).
工学ひずみの場合:
11 22 33 23 31 12
0 11 11 22 22 33 33 23 23 31 31 12 12 0 0 0 0 0 0
d d d d d dU
(8-9)
テンソルひずみの場合:
第 8章 ひずみエネルギーとエネルギー原理
- 85 -
11 22 33
23 31 12
0 11 11 22 22 33 33 0 0 0
23 23 31 31 12 12 0 0 0
d d d
2 d 2 d 2 d
U
(8-9 )
単軸応力の場合は図 8-5の OCAに囲まれた面積に相当する.上式を微分形
で書くと
0 11 11 22 22 33 33 23 23 31 31 12 12
11 11 22 22 33 33 23 23 31 31 12 12
d d d d d d d
d d d 2 d 2 d 2 d
U
(8-10)
一方で,ひずみエネルギー関数がひずみの関数であると仮定すると
0 0 11 22 33 23 31 12
0 11 22 33 23 31 12
( , , , , , )
( , , , , , )
U U
U
(工学ひずみ)
(テンソルひずみ) (8-11)
上式の全微分をとると
0 0 0 0 0 00 11 22 33 23 31 12
11 22 33 23 31 12
0 0 0 0 0 011 22 33 23 31 12
11 22 33 23 31 12
d d d d d d d
d d d d d d
U U U U U UU
U U U U U U
(8-12)
式(8-10)と式(8-12)との比較から以下の関係が得られる.
0 0 011 22 33
11 22 33
0 0 0 0 0 023 31 12
23 23 31 31 12 12
, , ,
, , 2 2 2
U U U
U U U U U U
(8-13)
なお,式(8-12)と(8-13)は第 4 章付録の式(4-28),(4-29)と同じものである.
8.2 補足ひずみエネルギー
式(8-9),(8-9)で応力とひずみを入れ換えた次式の V0を補足ひずみエネルギー関数(complementary strain
energy function)という.
工学ひずみの場合:
11 22 33 23 31 12
0 11 11 22 22 33 33 23 23 31 31 12 12 0 0 0 0 0 0
d d d d d dV
(8-14)
テンソルひずみの場合:
11 22 33 23 31 12
0 11 11 22 22 33 33 23 23 31 31 12 12 0 0 0 0 0 0
d d d 2 d 2 d 2 dV
(8-14)
単軸応力の場合は図 8-5の OBC に囲まれた面積に相当する.また,前節と同様の考え方により次の関係が
導かれる.
0 0 011 22 33
11 22 33
0 0 023 23 31 31 12 12
23 31 12
, , ,
2 , 2 , 2
V V V
V V V
(8-15)
補足ひずみエネルギー関数を物体全体に対して体積積分した V を補足ひずみエネルギー(complementary
strain energy)という.
0 1 2 3 0 1 2 3
d d d d , d d dV V x x x V V x x x (8-16)
図 8-5 より明らかなように,線形弾性体の場合,ひずみエネルギー関数と補足ひずみエネルギー関数はま
ったく同一の値となる.
VUVU 00 (線形弾性体) (8-17)
第 8章 ひずみエネルギーとエネルギー原理
- 86 -
8.3 仮想仕事の原理
解析力学における基本原理である仮想仕事の原理(principle of virtual work)は,本質的には釣合い式で
あり,弾性力学を含む固体力学では式(2-20)および (2-20)として示した平衡方程式の別表現にあたる.
8.3.1 剛体・質点に対する仮想仕事の原理
まずは簡単のため変形しない剛体,質点に対する仮想仕
事の原理から説明しよう.図 8-6(a)に示すように外力 F1,
F2,F3,…,を受けて力が釣合っている状態にある剛体を
考える.この力の釣合い式をベクトル形で表すと,外力ベ
クトルの総和が 0ということになる.
1 2 3 0 F F F (8-18)
さて,この状態から図 8-6(b)のように剛体が任意の仮想変位 (virtual displacement) u だけ動いたとしよう
(ここでは簡単のため回転を含まない並進変位を考える).変形しない剛体なのですべての外力の作用点で
変位uは等しい.この変位が生じたとき各外力が成す仕事(仮想仕事)は,外力ベクトルと仮想変位ベク
トルの内積 1 F u, 2 F u, 3 F u,…,であり,これらの仮想仕事の総和は式(8-18)から
1 2 3 1 2 3 0 F u F u F u F F F u (8-19)
つまり,力の釣合いが成り立っている力学系では任意の仮想変位に対する外力仕事(仮想仕事)の総和は
0 である.その逆も真で,任意の仮想変位に対する外力仕事(仮想仕事)の総和が 0 であればその力学系
は釣合い状態にある.これが仮想仕事の原理である(以上では力の釣合いと剛体的な並進変位を考えたが,
モーメントの釣合いと剛体回転変位についても同様で,モーメントの釣合い状態にある場合は任意の仮想
的な剛体回転変位に対して外力の成す仕事は 0となる).
このように,式(8-18)と式(8-19)を比べれば,釣合い式と仮想仕事の原理が等価なのは極めて当然である.
では,仮想仕事の原理を用いることのメリットはどこにあるのか?
まず一つは,釣合い式が式(8-18)のようにベクトルの式であるのに対し,仮想仕事の原理はスカラーの式
になっていることである.ベクトルの式だと異なる座標で表す場合は座標変換が必要だが,スカラーでは
その必要がなくなる.状況によっては並進変位に対する仕事は直交座標で,回転に対する仕事は極座標で
というように座標系を使い分けることもできる.
他のメリットとして,変位の方向に制約がある場合に生じる拘束力
の取り扱いがある.例えば図 8-7に示すように,摩擦のないチューブ
内に入っている剛体に外力 F1,F2,F3,…,が作用している場合を考
える.剛体はチューブの外に出てしまわないようにチューブの内壁に
対して垂直方向の拘束力 R1,R2,…,を内壁から受け,外力と拘束
力の和が 0となって釣合っている(拘束力は未知であることが多い).
1 2 3 1 2 0 F F F R R (a)
ここで仮想変位として,剛体が運動可能な方向の微小な仮想変位u
を考えてみよう.このときの仮想仕事の原理は
1 2 3 1 2 0 F F F u R R u (b)
となるが,拘束力が運動可能な方向に対して垂直に働くことから,拘束力による仮想仕事は
1 2 0 R u R u となり,結局,仮想仕事の原理によれば
1 2 3 0 F F F u (c)
のように,未知の拘束力を含まない式が最初から得られるというメリットがある.
なお,解析力学の本によっては,仮想変位は運動可能な方向に限ると書かれているものがあるようだが,
実際には図 8-7 の u のように運動が不可能な方向,つまり変位の拘束条件に対してあり得ない方向の仮想
運動可能な方向と 不可能な方向の仮想変位
第 8章 ひずみエネルギーとエネルギー原理
- 87 -
変位を考えても間違いではない.しかし.その場合は式(c)のようには拘束力の項が消えないし,そもそも
不自然であるため,変位の拘束条件を満足した運動可能な方向の仮想変位をとることが多いということで
ある.
具体的な例として,図 8-8(a)に示すように,剛体天井から順に質量 m1と m2の質点をそれぞれ長さ L1,
L2の伸びない糸で繋いだ二重振り子をとりあげてみる.ここで質点が動けるのは紙面に平行な平面内とし,
下側の質点 m2に水平方向の外力 Pを与えたときの静的な釣合い状態を考える.
この問題で,糸が伸びないという拘束条件を満足する仮想変位を与えるには,角度1と2を仮想的に変
化させればよい.まず,図 8-8(b)のように,角度2を保ったままで角度1だけを微小角度1変化させてみ
る.このとき質点 1 と質点 2 には同じ仮想変位u1が与えられる.質点 2 に作用する力は外力 P,重力 m2g
および糸の張力 T2,質点 1に作用する力は重力 m1gおよび糸の張力 T1とT2(質点 2に働く T2とは逆向き
なので負号をつける)なので,仮想仕事の原理は次式のようになる.
1 1 2 1 2 2 1 0m m g T T u P g T u (d)
上式で,1が微小ならば張力 T1と仮想変位u1は直交するので 1 1 0 T u (つまり張力 T1は拘束力にあた
る),さらに質点 1に対する仮想仕事 2 1 T u と質点 2に対する仮想仕事 2 1T u が打ち消し合うから,結局,
図 8-8(b)の仮想変位に対する仮想仕事の原理は次式のようにまとめられる.
1 1 2 1 1 1 1 2 1 1 10 cos sin sin 0m m P m g m g L g u P g u (e)
上式の内積の計算では,仮想変位u1は上向き成分 L1sin11,右向き成分 L1cos11をもつことを用いた.
以上の計算過程で,質点 1 に対する仮想仕事 2 1 T u と質点 2 に対する仮想仕事 2 1T u が打ち消し合うこ
とは,質点 1と質点 2 が繋がっている系において張力 T2は内力にあたり,内力による仕事は打ち消し合っ
て 0となることを意味している.このことも仮想仕事の原理を用いるメリットである.
次に図 8-8(c)のように,今度は角度1を保ったままで角度2だけを微小角度2変化させると,質点 2に
仮想変位u2(上向き成分 L2sin22,右向き成分 L2cos22)が与えられる.この仮想変位に対する仮想仕
事の原理は
2 2 2 0m P g T u (f)
ここで,2が微小ならば張力T2と仮想変位u2は直交するので 2 2 0 T u であり(つまり張力T2は拘束力),
結局,上式は次のようにまとめられる.
2 2 2 2 2 2 20 cos sin 0m P m g L P g u (g)
微小角度変化1と2を同時に与えたときの仮想仕事の原理は,式(e)と式(g)を合わせた
1 1 1 2 1 1 1 2 2 2 2 2cos sin sin cos sin 0P m g m g L P m g L (h)
であり,任意の仮想変位,つまり任意の1と2に対して上式が成り立つことから次式を得る.
1 1 1 2 1 2 2 2cos sin sin 0, cos sin 0P m g m g P m g (i)
第 8章 ひずみエネルギーとエネルギー原理
- 88 -
なお,上の第二式は質点 1 を中心とするモーメントの釣合い式,第一式は剛体天井への結合点を中心とす
るモーメントの釣合い式から第二式を引いたものと同じである.
8.3.2 一般の固体に対する仮想仕事の原理
剛体とは異なり弾性体のような固体では変形が生じるため,図 8-6 のように仮想変位を与えたときに各
外力作用点の変位が同一にはならない.この場合は,仮想変位に対して外力が成す仮想仕事は,仮想変位
によって発生するひずみエネルギーに等しくなる.
以下では弾性体における仮想仕事の原理の数式表示を導こう.
外力が作用し釣合いが保たれている図 8-9 の弾性体を考える.
一般に物体の境界は次のように分類される.
変位成分 uiが与えられる変位境界u
表面力成分 tiが与えられる応力境界t
(ti = 0 の自由表面も含む)
この弾性体に対して,以下のような微小な仮想変位を与える.
・変位境界u上では仮想変位は 0
・u上以外では x1,x2,x3方向にそれぞれu1,u2,u3
・この仮想変位が加わることによって応力と表面力は
変化しない
変位境界では仮想変位を 0 としているから,変位境界条件は仮想変位を与える前の釣合い状態と変わらず
に満足されている.つまり,図 8-7 のところで述べた,拘束条件に対して可能な仮想変位である.
まず仮想変位によって発生する仮想ひずみijは,式(3-7)あるいは式 (3-7)の変位-ひずみ関係を用いて
以下で表される.
31 211 22 33
1 2 3
3 32 123 23 31 31
3 2 1 3
1 212 12
2 1
( )( ) ( ), , ,
( ) ( )( ) ( )2 , 2 ,
( ) ( )2
uu u
x x x
u uu u
x x x x
u u
x x
(8-20)
変位境界u上では仮想変位が 0なので,変位拘束による反力(拘束力)として生じる表面力が仮想変位に
対して成す仮想仕事も 0 である.このため表面力が成す仮想仕事は応力境界tだけ考えればよい.仮想変
位によって表面力が変化しないと考えているので,表面力が成す仮想仕事は次式で表される.
1 1 2 2 3 3
( )dt
tU t u t u t u
(8-21)
ここで t1,t2,t3は表面力の各方向成分である.境界の単位法線ベクトル成分を n1,n2,n3とすると,上式
はコーシーの関係式(2-9)を用いて次のように変形できる.
11 1 12 2 31 3 1 12 1 22 2 23 3 2 31 1 23 2 33 3 3
11 1 12 2 31 3 1 12 1 22 2 23 3 2
31 1 23 2 33 3 3
( ) ( ) ( ) d
( ) ( )
( ) d
t
t
t
t
U n n n u n n n u n n n u
u u u n u u u n
u u u n
境界 = u + t で囲まれた領域では,微分可能な任意のベクトル場 a = (a1 , a2 , a3)に対して Gaussの発散
定理
31 21 1 2 2 3 3
1 2 3
( )d daa a
a n a n a nx x x
(8-22)
が成立するから,u上で ui =0 であることを考慮すると,Uの式が以下のように書き換えられる.
第 8章 ひずみエネルギーとエネルギー原理
- 89 -
11 1 12 2 31 3 12 1 22 2 23 3 1 2
31 1 23 2 33 33
( ) ( )
( ) d
U u u u u u ux x
u u ux
これを計算すると
31 23 31 23 3311 12 12 221 2 3
1 2 3 1 2 3 1 2 3
31 211 22 33
1 2 3
223
d
( )( ) ( ) d
( )
U u u ux x x x x x x x x
uu u
x x x
u
x
3 3 1 1 2
31 12 3 2 1 3 2 1
( ) ( ) ( ) ( ) ( )d
u u u u u
x x x x x
ここで式 (2-20)の平衡方程式と式(8-20)を用いると
1 1 2 2 3 3
11 11 22 22 33 33 23 23 31 31 12 12
( ) ( ) ( ) d
( )d
U f u f u f u
これが式(8-21)の Uに等しいことから,仮想仕事の原理として次式が得られる.
1 1 2 2 3 3 1 1 2 2 3 3
11 11 22 22 33 33 23 23 31 31 12 12
( )d ( )d
( )d
t
tt u t u t u f u f u f u
(8-23)
式(8-23)をテンソルひずみで表記すると
1 1 2 2 3 3 1 1 2 2 3 3
11 11 22 22 33 33 23 23 31 31 12 12
( )d ( )d
( 2 2 2 )d
t
tt u t u t u f u f u f u
(8-23)
式(8-23),(8-23)ともに,左辺第 1項の応力境界tに関する表面積分は表面力が仮想変位に対して成す仮想
仕事,左辺第 2項の領域に関する体積積分は物体力が仮想変位に対して成す仮想仕事,右辺の領域に関
する体積積分は仮想変位によって発生するひずみエネルギーを意味する.
本節の冒頭で述べたように,この仮想仕事の原理は,本質的には式(2-20)および (2-20)として示した平
衡方程式の別表現である.また,以上の導出の過程では応力とひずみの関係を一切使用していないので,
線形弾性体だけでなく塑性や粘弾性を示す一般の固体に適用できる.仮想仕事の原理は次節で述べる最小
ポテンシャルエネルギーの原理とともに,固体材料の応力・ひずみ・変位の数値解析法として最もよく用
いられる有限要素法(FEM: Finite Element Method)の基礎式となる.これについては第 9 章で述べる.
8.4 最小ポテンシャルエネルギーの原理
弾性体のようにひずみエネルギー関数 U0が存在する材料の場合,その変分U0は式(8-10)より
0 11 11 22 22 33 33 23 23 31 31 12 12
11 11 22 22 33 33 23 23 31 31 12 122 2 2
U
(8-24)
と書くことができる.これを用いると仮想仕事の原理の式(8-23)を次のように書き直すことができる.
0 1 1 2 2 3 3 1 1 2 2 3 3
d ( )d ( )d 0t
tU t u t u t u f u f u f u (8-25)
ここで,次式で定義される系のポテンシャルエネルギー(potential energy)を導入する.
0 1 1 2 2 3 3 1 1 2 2 3 3
1 1 2 2 3 3 1 1 2 2 3 3
d ( )d ( )d
( )d ( )d
t
t
t
t
U t u t u t u f u f u f u
U t u t u t u f u f u f u
(8-26)
第 8章 ひずみエネルギーとエネルギー原理
- 90 -
このとき式(8-25)は,仮想変位 u1,u2,u3によって生じるの変分が
0 (8-27)
となること,つまり正しい応力・ひずみ・変位の解に対しては系のポテンシャルエネルギーが最小値と
なることを意味する.これを最小ポテンシャルエネルギーの原理(principle of minimum potential energy)と
いう.この節の初めに述べたように,最小ポテンシャルエネルギーの原理はひずみエネルギー関数 U0が存
在する材料だけが適用対象となるものの,それ以外の点は仮想仕事の原理と本質的に同じである.
式(8-26)の右辺第 2 項のように,表面力成分 tiを含む面積分は本章でこれまでも度々出てきたが,この表
現は表面に作用する集中外力も含んでいる(表面の集中外力は,単位面積当たりの強さが無限大の表面力
である).ここで特別に,表面の点 A, B, C, …にそれぞれ集中外力 P(A),P
(B),P(C),… が作用する場合に
ついて,集中外力をそれ以外の表面分布力とは分けて式(8-26)を記述し直すと,次のようになる.
A,B,C,
( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )1 1 2 2 3 3
1 1 2 2 3 3 1 1 2 2 3 3
( )d ( )dt
j j j j j j
j
t
U P u P u P u
t u t u t u f u f u f u
(8-26)
ここで ( ) ( ) ( )1 2 3, ,
j j jP P P は点 jに作用する集中外力の x1, x2, x3方向成分,
( ) ( ) ( )1 2 3, ,
j j ju u u はその点の変位の x1, x2,
x3方向成分である.また,式 (8-26)において t1,t2,t3は集中外力の分を除いた表面分布力成分となる.
例 8-3:
最小ポテンシャルエネルギーの原理を用いて図 8-10 に示す片持は
りのたわみ曲線を求める.ただし物体力は 0 とする.ここでは図に示
した座標系に対して,x1,x2方向の変位を u1 = u2 = 0 と仮定し,さらに
x3方向の変位(たわみ)を次のように仮定する.
2 33 2 1 3 1u c x c x
この u3は固定端における変位境界条件 0)( 03 1xu および
13 1 0(d / d ) 0xu x をいずれも満たしている.次に
系のポテンシャルエネルギーを計算する.材料力学で学んだように,位置 x1 の横断面に曲げモーメント
M(x1)が作用しているはり(ここでは曲げ剛性 EIは一定)のひずみエネルギーは
1
2 22 22
3 31 1 12 2
0 0 01 1
( ) d d1 d d d
2 2 2d d
L L Lx u uM EIU x EI x x
EI EI x x
であるから,式 (8-26)のポテンシャルエネルギーは
1
22
31 32
01
2 2 3 2 2 2 2
2 3 1 1 2 3 2 2 3 3 2 3 0
d d ( )
2 d
4( 3 ) d ( ) 2 ( 3 3 ) ( )2
L
x L
L
uEIx P u
x
EIc c x x P c L c L EIL c c c L c L PL c c L
この場合,変位 u3を仮想的に変化させることは未知定数 c2,c3を変化させることに他ならない.このとき
最小ポテンシャルエネルギーの原理から 2 2 3 3( / ) ( / ) 0c c c c であり,これが任意のc2,c3
に対して成り立つためには 2/ 0c , 3/ 0c でなければならない.したがって
2 2 3
2 3 2 32 3
2 (2 3 ) 0, 6 ( 2 ) 0EIL c c L PL EIL c c L PLc c
両式を解いて,次式の定数と変位 u3の解を得る.
2 3, 2 6
PL Pc c
EI EI
22 3 1
3 1 1 1 (3 )2 6 6
PxPL Pu x x L x
EI EI EI
このように,変位境界条件を満たす変位分布を仮定し,最小ポテンシャルエネルギーの原理によって未知
定数を定める手法をレイリー・リッツ(Rayleigh-Ritz)の方法という.
第 8章 ひずみエネルギーとエネルギー原理
- 91 -
例 8-4: 不静定問題への応用
二本の一様断面棒 AC(引張剛性 E1A1,長さ L1)と BC(引張剛性 E2A2,
長さ L2)を面 Cで接合し,図 8-11に示すようにこの接合棒の両端を固定
した上で,接合面 C に集中外力 P を加えた.最小ポテンシャルエネルギ
ーの原理を用いて, 集中力作用面 Cの変位を求める.
まず,引張剛性 EA,長さ L の一様断面棒が引張り力 W を受ける場合
の伸びは,材料力学で学んだように次式で与えられる.
WL
EA
このとき,棒に蓄えられるひずみエネルギーUは
2
2 2
W EAU
L
のように伸びで表される.本問では,接合面 Cの右向き変位を uとすると,棒 ACは u だけ縮み,棒 BC
は uだけ伸びるので,上式より,棒 ACのひずみエネルギーUACと棒 BCのひずみエネルギーUBCは
2 21 1 2 2AC BC
1 2
, 2 2
E A E AU u U u
L L
と表される.集中力作用面の変位が uであることに注意すると,式 (8-26)より,この系のポテンシャルエ
ネルギーは次式のようになる.
2
1 1 2 2AC BC
1 2
2
E A E A uU Pu U U Pu Pu
L L
最小ポテンシャルエネルギーの原理より
1 1 2 2 1 2
1 2 1 1 2 2 2 11 1 2 2
1 2
d 0
d
E A E A PL LPu P u
u L L E A L E A LE A E A
L L
8.5 仮想補足仕事の原理と最小補足エネルギーの原理
8.3節では応力・表面力を変化させない仮想的な変位を考えることで,仮想仕事の原理を導いた.これと
は逆に,変位を変化させない仮想的な表面力ti(ただし応力境界t上で 0),およびそれによって生じる仮
想的な応力 ij を導入して同様に考えると,次のような関係が得られる(ここでは仮想的な物体力は考え
ない).
1 1 2 2 3 3
11 11 22 22 33 33 23 23 31 31 12 12
( )d
( )d
u
uu t u t u t
(8-28)
あるいは
1 1 2 2 3 3
11 11 22 22 33 33 23 23 31 31 12 12
( )d
( 2 2 2 )d
u
uu t u t u t
(8-28)
これを仮想補足仕事の原理(principle of complementary virtual work)という.
さらに 8.4 節において仮想仕事の原理から最小ポテンシャルエネルギーの原理を導いたのと同様の手法
で,式(8-28)の仮想補足仕事の原理より以下の定理が導かれる.
c c 0 1 1 2 2 3 3
0, d ( )du
uV t u t u t u
ただし (8-29)
これを最小補足エネルギーの原理(principle of minimum complementary energy)という.ここで V0は式(8-14)
で与えられる補足ひずみエネルギー関数である.
第 8章 ひずみエネルギーとエネルギー原理
- 92 -
8.6 カスティリアーノの定理
8.6.1 カスティリアーノの第一定理
8.3~8.4 節では,変位境界u上で 0 となる仮想変位を導入した.ここでは応力境界t上だけでなく変位
境界u上でも 0 とならない仮想変位分布u1,u2,u3を考える.8.3~8.4 節と同じように計算すると,式
(8-25)第 2項の境界tに対する積分を全境界= u + tに対する積分に置き換えた次の式が導かれる.
0 1 1 2 2 3 3 1 1 2 2 3 3
d ( )d ( )d 0U t u t u t u f u f u f u
上式第 1 項はひずみエネルギーUの変分Uに他ならないから
1 1 2 2 3 3 1 1 2 2 3 3
( )d ( )dU t u t u t u f u f u f u
(8-30)
ここで特別に,物体表面の点 A,B,C,… にそれぞれ集中外力 P(A),P
(B),P(C),… が作用し,各点の仮
想変位がu(A),u
(B),u(C),… で表される場合について,集中外力をそれ以外の表面分布力とは分けて式
(8-30)を記述し直すと,次のようになる.
A,B,C,
( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )1 1 2 2 3 31 1 2 2 3 3
1 1 2 2 3 3
( )d
( )d
j j j j j j
j
U P u P u P u t u t u t u
f u f u f u
(8-31)
ここで ( ) ( ) ( )1 2 3, ,
j j jP P P は点 jに作用する集中外力の x1, x2, x3方向成分,
( ) ( ) ( )1 2 3, ,
j j ju u u はその点の仮想変
位の x1, x2, x3方向成分である.上式から次の関係が成り立つ.
( ) ( ) ( )1 2 3( ) ( ) ( )
1 2 3
, , A,B,C,j j j
j j j
U U UP P P j
u u u
(ただし ) (8-32)
これをカスティリアーノの第一定理(Castigliano’s first theorem)という.
なお同様に,外力として点 j に x1, x2, x3軸回りの集中モーメント )(
3)(
2)(
1 , ,jjj
MMM が作用し,この点の各
軸回りの回転角が )(3
)(2
)(1 , ,
jjj である場合は次式が成り立つ.
( ) ( ) ( )1 2 3( ) ( ) ( )
1 2 3
, , j j j
j j j
U U UM M M
(8-33)
8.6.2 カスティリアーノの第二定理
8.5節で導入した応力境界t上で 0となる仮想表面力に代わり,応力境界t上でも 0とならない仮想表面
力分布t1,t2,t3を考える.このとき補足ひずみエネルギーVの変分は式(8-28)でuをに置き換えて
1 1 2 2 3 3
( )dV u t u t u t
(8-34)
前項と同様,表面の点 A,B,C,… にそれぞれ仮想集中力P(A),P
(B),P(C),… が作用し,各点の変位
が u(A),u
(B),u(C),… である場合,仮想集中力をそれ以外の仮想表面力とは分けて上式を記述し直すと
A,B,C,
( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )1 1 2 2 3 31 1 2 2 3 3
( )d
j j j j j j
j
V u P u P u P u t u t u t
(8-35)
したがって
( ) ( ) ( )1 2 3( ) ( ) ( )
1 2 3
, , A,B,C,j j j
j j j
V V Vu u u j
P P P
(ただし ) (8-36)
が成立する.これをカスティリアーノの第二定理(Castigliano’s second theorem)という.同様に,仮想外
力として点 jに x1, x2, x3軸回りの集中モーメント ( ) ( ) ( )1 2 3, ,
j j jM M M が作用し,この点の各軸回りの回転
角が )(3
)(2
)(1 , ,
jjj である場合を考えると次式が成り立つ.
( ) ( ) ( )1 2 3( ) ( ) ( )
1 2 3
, , j j j
j j j
V V V
M M M
(8-37)
線形弾性体の場合は,既に式(8-17)で述べたように U = V であるから,式(8-36)と式(8-37)を次のように書
くこともできる.
第 8章 ひずみエネルギーとエネルギー原理
- 93 -
( ) ( ) ( )1 2 3( ) ( ) ( )
1 2 3
( ) ( ) ( )1 2 3( ) ( ) ( )
1 2 3
, ,
, ,
j j j
j j j
j j j
j j j
U U Uu u u
P P P
U U U
M M M
(8-38)
材料力学で学んだカスティリアーノの定理は上式にあたる.
8.7 相反定理
図 8-12に示すように,同じ物体に作用する二つの外力系を考える.外
力系 Iでは点 B に外力 (B)IP が作用し,このときの点 Aの変位を (A)
Iu とす
る.一方,外力系 II では点 A に外力 (A)IIP が作用し,このときの点 B の
変位を (B)IIu とする.このとき以下の関係が成立する.
(B)II
(B)I
(A)I
(A)II uPuP (8-39)
これを相反定理(reciprocal theorem)という.
相反定理の一般的な表記は以下のようになる.境界で囲まれた物体
において,表面力 (t1, t2, t3) と物体力 (f1, f2, f3) が作用したときに変
位 (u1, u2, u3) が生じ,同じ物体に対して別の表面力 ) , ,( 321 ttt と物体力
) , ,( 321 fff が作用したときに変位 ) , ,( 321 uuu が生じる場合
1 1 2 2 3 3 1 1 2 2 3 3
1 1 2 2 3 3 1 1 2 2 3 3
( )d ( )d
( )d ( )d
t u t u t u f u f u f u
t u t u t u f u f u f u
(8-40)
この相反定理は弾性問題の代表的な数値解析法の一つである境界要素法(BEM: Boundary Element Method)
の基礎となる.
式(8-40)の相反定理は以下のように導出される.左辺の外力 (t1, t2, t3),(f1, f2, f3) について式 (2-20)の
平衡方程式と式(2-9)のコーシーの関係が成立する.これらを式(8-40)の左辺に代入して変形すると
1 1 2 2 3 3 1 1 2 2 3 3
11 1 12 2 31 3 1 12 1 22 2 23 3 2 31 1 23 2 33 3 3
3111 12 12 221
1 2 3 1 2
( )d ( )d
( ) ( ) ( ) d
t u t u t u f u f u f u
n n n u n n n u n n n u
ux x x x x
23 31 23 332 3
3 1 2 3
11 1 12 2 31 3 1 12 1 22 2 23 3 2 31 1 23 2 33 3 3
3111 121 2 3
1 1 1
d
( ) ( ) ( ) d
u ux x x x
u u u n u u u n u u u n
u u ux x x
2312 22
1 2 3 2 2 2
31 23 331 2 3
3 3 3
d
u u ux x x
u u ux x x
ここで n1, n2, n3は表面単位法線ベクトルの成分である.Gauss の発散定理を上式の最後の右辺第 1項に適
用すると
1 1 2 2 3 3 1 1 2 2 3 3
11 1 12 2 31 3 12 1 22 2 23 3 31 1 23 2 33 3 1 2 3
311 121 2
1 1
( )d ( )d
( ) ( ) ( ) d
t u t u t u f u f u f u
u u u u u u u u ux x x
u ux x
1 2312 22
3 1 2 3 1 2 2 2
31 23 331 2 3
3 3 3
d
u u u ux x x x
u u ux x x
第 8章 ひずみエネルギーとエネルギー原理
- 94 -
3 3 31 2 2 1 1 211 22 33 23 31 12
1 2 3 3 2 1 3 2 1
11 11 22 22 33 33 23 23 31 31 12 12
d
( )d
u u uu u u u u u
x x x x x x x x x
同じように式(8-40)の右辺も変形すると
1 1 2 2 3 3 1 1 2 2 2 3
11 11 22 22 33 33 23 23 31 31 12 12
( )d ( )d
( )d
t u t u t u f u f u f u
が得られるから,相反定理の式(8-40)は次のように書き換えられることになる.
11 11 22 22 33 33 23 23 31 31 12 12
11 11 22 22 33 33 23 23 31 31 12 12
( )d
( )d
(8-40)
応力を11→1,22→2,33→3,23→4,31→5,12→6,ひずみを11→1,22→2,33→3,23→4,
31→5,12→6と表記したとき,式(4-8)より線形弾性体の応力-ひずみ関係は対称行列 Cij = Cji を用いて
6
1i ij j
j
C
と書ける.このとき
11 11 22 22 33 33 23 23 31 31 12 12
6 6 6 6 6 6 6 6 6
1 1 1 1 1 1 1 1 1
6
1
i i ij j i ij i j ji i j ji i ji i j i j i j j i
j jj
C C C C
11 11 22 22 33 33 23 23 31 31 12 12
であり,式 (8-40),すなわち相反定理が成立する.
ただし,上記の証明の過程で用いたように,相反定理が成立するのは線形弾性体の場合である.
演習問題
8.1 図 8-13 に示すような直方体の応力分布が
11 2 22 33 23 12 313
12, 0, , 0,
Mx
bh
であるとき,直方体に蓄えられるひずみエネルギーU を求めなさい.ただしヤング率を E,ポアソン
比をとする.
8.2 第 7 章演習問題 7.8(図 7-40)の円板について,たわみの解を利用して,円板に蓄えられるひずみエ
ネルギーU を求めなさい.また,これを集中外力 P を用いずに,代わりに中心点のたわみを用いて
表しなさい.
8.3 図 8-14(a)に示すように,両端支持された長さ L,曲げ剛性 EI(一定)の真直はりの中央に集中外力を
与え,その点のたわみがになった場合,はりに蓄えられるひずみエネルギーUは
第 8章 ひずみエネルギーとエネルギー原理
- 95 -
2
3
24EIU
L
となる.この結果と最小ポテンシャルエネルギーの原理を用いて,図 8-14(b)に示すように一様断面を
もつ二つの両端支持はり AB(長さ L1,曲げ剛性 E1I1)と CD(長さ L2,曲げ剛性 E2I2)の中央を剛体
棒 FG で結合して剛体棒に集中外力 P を与えた場合に生じる剛体棒の変位 u(図(c))を求めなさい.
なお,剛体棒にはひずみエネルギーは蓄えられない.
8.4 図 8-15 に示すように,L字形の剛体棒 ABCDE を支点 B で床にピン結合し,さらにそれぞれ一様断面
をもつ 3 本の弾性棒 AF(ヤング率 E1,断面積 A1,長さ L1),CG(ヤング率 E2,断面積 A2,長さ L2),
DH(ヤング率 E3,断面積 A3,長さ L3)を図のようにピン結合したうえで,剛体棒の右端 Eに下向き
の集中力外 P を与えた.このとき以下の問いに答えなさい.ただし,一様断面をもつヤング率 E,断
面積 A,長さ L の弾性棒を引っ張り,伸びがとなった場合,その弾性棒に蓄えられるひずみエネルギ
ーU は次式で与えられる.
2
2
EAU
L
(1) 点 E の下向き変位を u とするとき,棒 AF の伸びAF,棒 CG の縮みCG,棒 DH の縮みDHを u
で表しなさい.
(2) 最小ポテンシャルエネルギーの原理を用いて uを求めなさい.