Journal of Molecular Structure 840(2007) 87-106

Calorimetric determinations and theoretical calculations of polymorphs

of thalidomide

F. Lara-Ochoa, G. Espinosa Perez, F. Mijangos-Santiago

D3 小川俊一

Introduction

NN

O

O O

O

H

サリドマイド(thalidomide)

エイズ、骨髄種、リウマチなどに効果があると期待される薬剤

ラセミ体にはαとβの2種の結晶が存在するが、DSC実験により、も

うひとつの結晶形β*が存在することが示唆された。

IR、Raman、粉末X線測定および計算を用いて、新たな 結晶形β*の同定を行った。

Experimental

結晶形の作り分け方

α:ジメチルホルムアミド(DMF)より結晶化。β:メタノール中にサリドマイドを溶かしたDMFを注いで結晶化。β*:αおよびβをいったん融解させたのち冷却して再固化。

その他の測定

DSC、IR、Raman、固体NMR

計算

分子構造探索・・・モンテカルロ法エネルギー計算・・・理論レベル：DFT-B3LYP 基底関数:6-31G*固体NMRシミュレーション・・・理論レベル:HF 基底関数:6-31G*

Results and Discussion α-form

NN

O

O O

O

H

アミド基による環状結合がある。

b

c

β-form

NN

O

O O

O

H

フェニル基のπ－π相互作用が存在する。

a

c

DSC 実線はα、点線はβ

温度レート

10 °C/min で測定

α・・・275.5 °C β・・・276.6 °C

温度レート

50 °C/min で測定

α・・・273.56 °C β・・・277.56 °C

結晶を一度加熱して溶解後、冷却して固化させたのち温度レート

50 °C/min で測定

α、βともに275 °C付近

→新たな結晶構造の可能性。

IRα

β

β*

3279 cm-1

3192, 3100 cm-1

3280, 3205, 3098 cm-1

αとβとでは3200 cm-1付近で

大きく差がみられた。またβ*は3200 cm-1において、α、βともに異なるスペクトルを

与えた。

Ramanα

β

β*

αとβとでは一部異なるところ

があった。またβ*はα、βともに類似して

いるスペクトルを与えた。

粉末X線測定

α

β

β*

αとβはシミュレーションによる

ものだが、異なる粉末X線パ

ターンを与えた。またβ*はβに類似しているもの

の、α、βとは異なる粉末X線

パターンとなった。→β*は新たな結晶構造である

と推定できる。

β*の分子構造探索

a)・・・αの分子構造d)・・・βの分子構造

b)、c)・・・αの分子構造を初期構造として計

算して得られた分子構造e)、f)・・・βで同様の計算をした場合

→b)とe)は構造もエネルギーも同

じであり、c)とf)も同様に同じであ

るため、β*の分子構造は4種類で

あると考えられる。

固体NMRα

β

β*

c)およびf)の分子構造で固体NMRのシミュレーションをしたところ、β*の実測値

と一致。→β*の分子構造である可能性が高い。

◆:フタルイミドのカルボニル基

●:グルタルイミドのカルボニル基

β*-form・・・

-572208.034 kcal/molα-form・・・-572062.5298 kcal/mol

β-form・・・-572087.3098 kcal/mol

β*は最もエネルギーが低いが、

融点からは結晶の安定性はαとβ の中間であると考えられる。

→分子間相互作用による安定性

の変化の可能性。

α-form

分子間相互作用のエネルギー計算

β-form

β-form

分子数10格子エネルギー:-416.938 kcal/mol

分子数14格子エネルギー:-349.167 kcal/mol

α-form

単位格子のエネルギー計算

βのほうがエネルギーが低い→融点の結果と一致する。

Conclusions

・サリドマイドの新たな結晶形β*をDSC測定、粉末X線測定 などから同定することができた。

・分子構造探索および分子軌道計算からβ*の分子構造を推 定することができた。

・結晶構造の格子エネルギーの計算からαよりβのほうがエ ネルギーが低く、これは融点の測定結果と一致した。