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2016微積 I.0.1
微積分及び演習 I
数理情報学科・1年次配当・前期学科固有科目・必修・3単位
飯田 晋司 [email protected]
ティーチング・アシスタント (TA)
玉井 数馬 さん b 黒川 孟 さん d 森田 直樹 さん a,d 森本 晃平 さん b
臼井 宏毅 さん 野田 康矢 さん b,c
他の科目の TA a:計算機基礎実習 I,b:線形代数及び演習 I,c:物理数学及び演習 I,d:学科チューター
☆ 教科書は『微分積分入門』桑村雅隆 著,裳華房 です。各自で購入しておいてください。後期の「微積分及び演習 II」でも使います。
プリント中の
§̈ ¥¦桑村 はテキスト,“桑村『微分積分入門』(裳華房) ”を示します。
§̈ ¥¦川薩四 はテキスト,“川野,薩摩,四ツ谷『微分積分+微分方程式』(裳華房) ”を示します。
オフィスアワー: 木曜 6講時 (1-513),金曜 3講時 (1-542)
url: http://www.math.ryukoku.ac.jp/ iida/lecture/lecture.html
2016微積 I.0.2
.
☆成績評価の方法
(1) Placement Test(数学)補習課題 1∼5 (http://maple.st.ryukoku.ac.jp/ ) を提出し,
(2) 演習課題を 9回以上提出したうえで,予定されている 2回の小テストの両方に 60点以上をとるか,あるいは定期試験に 60点以上をとることで合格とします。最終成績は,合格の場合は小テストの平均点と定期試験の点数の高い方,不合格の場合は定期試験の点数,となります。
☆ 演習課題の提出について
• 解答は配布する演習解答用紙に書いてください(丁寧な字で,明らかに暗算で答がわかる場合以外は解答の手順もしっかり書いてください)。
• 解けた問題はTAか担当教員に見せてチェックを受けてください。問題がすべて解ければ,解答用紙を提出し,TAが持っている記録シートに印を記入してもらってください(確かに自分の欄に印が記入されたか必ず確認すること)。
• チェックは演習の時間内に受けてください。月 5の演習時間内に完成できなかった場合は,飯田のオフィスアワー時間 (同じ週の木 6あるいは金 3)にもチェックが受けれます。
• チェックを受ける時間がとれなかった場合,解答用紙を翌週の月曜日の 13:00から 13:30
の間に 1-513の飯田に提出することができます。この場合,解答に誤りが多いときは 1回未満 (0.5回など)の提出回数と数えます。
• TAの人数と演習の時間が限られているので,効率良くチェックを受けられるように各自で工夫してください。昨年までの経験によると,できた問題からどんどんチェックを受けるのがいいでしょう。一気に大量のチェックを受けようとすると効率が悪くなります。
• チェックを受ける問題の順番は自由です。難しい問題は後回しにして,解ける問題から始めるとよいでしょう。
☆ もし「講義が難しくてついていけない」とか「演習問題がどうしても解けない」というときには,講義や演習中にTAや担当教員に質問する以外に以下の方法を試してみてください(他の講義についても同じ)。
• チューター制度を利用:主に大学院生が毎週決まった時間に質問を受け付けてくれます。具体的な時間と場所は掲示されます。
• オフィスアワーを利用:各教員は質問を受け付ける時間を設定しています。これも掲示を参照してください。ちなみに,飯田のオフィスアワーは木曜日の 6講時と金曜日の 3講時です。
• 数理情報基礎演習に参加:金曜日3講時に開講されています。登録をしていない人の参加もOKです。
• 友達を作る:一人で解決しようとして迷路にはまり込んで出られなくなってしまう人が結構います。上級生や教員に質問するのはちょっと,という人はとりあえず同級生の間で教え合う関係を築くことをお勧めします。
2016微積 I.1
1 関数と微分
¶ ³微積分の主役は「関数」です。関数を「極限の計算」を使って調べます。µ ´
1.1 関数とは
例題 1.1 半径 r の球の体積 V を r の式で表しなさい
解説 答えは V = V (r) = 4πr3/3 です。V (r) という書き方は,半径 r の値に体積の値が対応していることを表します。つまり,体積を半径の関数と考えているということです。この場合の r を独立変数,V を従属変数,独立変数の範囲を定義域,従属変数の範囲を値域と言います。
例題 1.2 底面が 1 辺の長さ d の正方形で,高さが h であるような四角柱の表面積 S を d とh の式で表しなさい。
解説 S = S(d, h) = 2d2 + 4dh です。これは,二つの独立変数 d と h に従属変数 S が対応する 2 変数関数の例です。同様に,独立変数の数に応じて 3 変数関数,4 変数関数…が考えられます。2 変数以上の場合を多変数関数と呼びます。
注意 ! 数学では,y = f(x) のように,独立変数は x,従属変数は y とすることが多いです。2 変数関数の場合は z = f(x, y) のように独立変数には x, y が,従属変数には z がよく使われます。しかし,例題のように,x, y, z 以外の文字が使われる場合もあるので,記号に惑わされないように注意しましょう。
例題 1.3 関数 f(x) = x2 − 2x − 3 のグラフを描きなさい。
解説 放物線 y = x2 を x 方向に 1,y 方向に −4 平行移動した図 1.1 の曲線になります。関数のグラフが描ければ,関数の感じがよくわかります。
注意 ! §̈ ¥¦桑村 p.6 定理 1.1より y = x2を x 方向に 1,y 方向に −4 平行移動したグラフを表す関数は
y = (x − 1)2 − 4 = x2 − 2x + 1 − 4 = x2 − 2x − 3 (1.1)
となります。
0 x
y
−3
−1 3
図 1.1 y = x2 − 2x − 3
2016微積 I.2
.
例題 1.4 f(x, y) =√
x2 + y2 は xy 平面上の点 (x, y) に原点からの距離を対応させる 2 変数関数です。z = f(x, y) はどのような曲面を表すか,概形を描きなさい。また,xy 平面に「等高線」を描きなさい。
解説 関数の意味から図 1.2 をイメージしてみましょう。
0
xy
z
図 1.2 z =√
x2 + y2のグラフと「等高線」
1.2 おなじみの関数(その1)~ べき関数 xα~
x2n , n = 1, 2, · · ·,x の偶数べき
� � ��� � �
����
�
� ��
�
x
y
2y x=
4y x=
limx→±∞
x2n = ∞ . (2.1)
m < n の場合,
|x| < 1 なら x2m > x2n ,
|x| > 1 なら x2m < x2n . (2.2)
x2n+1 , n = 0, 1, · · ·,x の奇数べき
� � ��� � �
���
� �
���
�
�
�
x
y3
y x=
5y x=
limx→−∞
x2n+1 = −∞ , limx→∞
x2n+1 = ∞ . (2.3)
m < n の場合,
|x| < 1 なら |x2m+1| > |x2n+1| ,|x| > 1 なら |x2m+1| < |x2n+1| . (2.4)
1
x2n, n = 1, 2, · · ·
� � ��� ��� � � �
�
�
�
�
x
y
2
1
x
y =
4
1
x
y =
2
1
x
y =
4
1
x
y =
limx→0
1
x2n= ∞ , lim
x→±∞
1
x2n= 0 . (2.5)
m < n の場合,
|x| < 1 なら1
x2m<
1
x2n,
|x| > 1 なら1
x2m>
1
x2n. (2.6)
2016微積 I.3
1
x2n+1, n = 0, 2, · · ·
� � ��� ��� � � �
� �
���
���
�
�
�
x
y
1
xy =
3
1
x
y =
1
xy =
3
1
x
y =
limx→0−0
1
x2n+1= −∞ , lim
x→0+0
1
x2n+1= ∞ ,
limx→±∞
1
x2n+1= 0 . (3.1)
m < n の場合,
|x| < 1 なら1
|x2m|<
1
|x2n|,
|x| > 1 なら1
|x2m>
1
|x2n|. (3.2)
x1/n , n = 1, 2, · · ·,(x ≥ 0) §̈ ¥¦桑村 §1.6
���� � � �� �
��� � �
����
��� ���
�
� � � �
� ��
x
y
1/2xy x ==
31/3xy x ==
limx→∞
x1/n = ∞ . (3.3)
m < n の場合,
x < 1 なら x1/m < x1/n ,
x > 1 なら x1/m > x1/n . (3.4)
1.3 おなじみの関数(その2)~指数関数と対数関数~
例題 1.5 指数関数について復習しなさい(→ §̈ ¥¦桑村 §1.8,§̈ ¥¦川薩四 §5.1)。
解説 指数関数とは,a を正の数( a 6= 1 で,底と呼びます)として,f(x) = ax の形の関数で,f(1) = a1 = a です。指数関数の基礎をまとめておきましょう。
(1) 底が a > 1 なら単調増加関数で, limx→∞
ax = ∞, limx→−∞
ax = 0 となります。
(2) 0 < a < 1 なら単調減少関数で, limx→∞
ax = 0, limx→−∞
ax = ∞ となります。
(3) 指数法則
ax+y = ax ay , axy = (ax)y , a−x =1
ax, a0 = 1 (3.5)
が成り立ちます。
(4) 微積分での指数関数の代表が f(x) = ex です( e は自然対数の底と呼ばれる無理数で,e = 2.718281828459045 · · · です)。なぜ代表なのかはまたいずれ。
注意 ! exを exp(x)と書く場合があります。
指数関数は数学以外にもいろんな所に登場します。例を探してみましょう。
2016微積 I.4
例題 1.6 対数関数について復習しなさい(→§̈ ¥¦桑村 §1.9,§̈ ¥¦川薩四 §5.2)。
対数関数とは,a を正の数( a 6= 1 で,やはり底と呼びます)として,独立変数 x に x = ay となる y を対応させる関数で,loga x と書きます。つまり,指数関数の逆関数(後出)です。指数関数の値が必ず正であることに対応して,対数関数の定義域は x > 0 です。対数関数の基礎をまとめておきましょう。
(1) a > 1 なら単調増加関数で, limx→∞
loga x = ∞, limx→+0
loga x = −∞ となります。
(2) 0 < a < 1 なら単調減少関数で, limx→∞
loga x = −∞, limx→+0
loga x = ∞ となります。
(3) 指数法則に対応して,
loga xy = loga x + loga y , loga xy = y loga x , loga a = 1 , loga 1 = 0 (4.1)
が成り立ちます。
(4) 底が e の対数を自然対数と呼び,単に log x と書きます( ln x と書くこともあります)。
対数関数もいろんな所に登場します。例を探してみましょう。
例題 1.7 対数関数の底の変換公式 §̈ ¥¦桑村 p.26
loga c =logb c
logb a(4.2)
を導きなさい。
解説 a = blogb aなので,
c = aloga c =(blogb a
)loga c= blogb a loga c より logb c = logb a loga c . (4.3)
1.4 おなじみの関数(その3)~三角関数~
例題 1.8 三角関数について復習しなさい(→§̈ ¥¦桑村 §1.7,§̈ ¥¦川薩四 §5.3)。
解説 三角関数 cos x, sin x は単位円上の点について,点 (1, 0) から反時計回りに測った弧長(逆回りは負の値とする)にその点の座標を対応させる関数です。なお,単位円の弧長というのは弧度法での角度のことです(単位はラジアン,微積分での角度は弧度法で表すのが標準です)。三角関数について基礎の基礎をまとめておきましょう。
注意 ! cos x , sin xは cos(x) sin(x)のことです。誤解の余地のない場合は括弧を省略してもかまいません。cos xyのように cos(xy)か cos(x)yのどちらか迷う可能性のある場合は括弧を使った方がよいでしょう。
(1) 三角関数 cos x と sin x は以下の関係で結ばれています。
cos2 x + sin2 x = 1 (4.4)
注意 ! cos2 xは(
cos(x))2
のことです。
(2) 三角関数 cos x, sin x は周期が 2π の周期関数です。
2016微積 I.5
(3) 加法定理と呼ばれる関係が成り立ちます(指数関数についての指数法則と関係あるのですが,それはまた別の話)。
cos(x ± y) = cos x cos y ∓ sin x sin y , (5.1)
sin(x ± y) = sin x cos y ± cos x sin y . (5.2)
特に,x = y とすると,2倍角の公式が得られます:
cos(2x) = cos2 x − sin2 x = 2 cos2 x − 1 = 1 − 2 sin2 x , (5.3)
sin(2x) = 2 sin x cos x , (5.4)
(4) 三角関数は他にもありますが,すべて cos x と sin x から作られます。
tan x =sin x
cos x, cot x =
cos x
sin x, sec x =
1
cos x, cosec x =
1
sin x(5.5)
例題 1.9
y = 2 sin(πx − π
5
)(5.6)
のグラフの山の位置 (y = 2となる x の値),谷の位置 (y = −2となる x の値),および x軸を横切る位置 (y = 0となる x の値)をそれぞれ求めなさい。また,−2 ≤ x ≤ 1 の範囲でのグラフの概形を描きなさい。
解説 山の位置は
πx − π
5=
π
2+ 2πn より x =
1
5+
1
2+ 2n
(= 0.7 + 2n
), n = 0 , ±1 , ±2 · · · (5.7)
を満たす x となります。谷の位置は
πx − π
5=
3π
2+ 2πn より x =
1
5+
3
2+ 2n
(= 1.7 + 2n
), n = 0 , ±1 , ±2 · · · (5.8)
を満たす x となります。y = 0となるのは
πx − π
5= πn より x =
1
5+ n
(= 0.2 + n
), n = 0 , ±1 , ±2 · · · (5.9)
を満たす x となります。以上より,−2 ≤ x ≤ 1でのグラフの概形は以下のようになります:
-2 -1.5 -1 -0.5 0.5 1
-2
-1
1
2
x
y
2016微積 I.6
.
1.5 合成関数と逆関数
・合成関数 §̈ ¥¦桑村 §1.4.1
{y = f(u),u = g(x)} あるいは y = f(g(x)
)で定義される関数。
例えば f(u) = e−u, g(x) = x2 の場合,y = f(g(x)) は y = e−x2= exp(−x2) のことを意味
します。
y = e−x2
-4 -2 2 4x
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
y
u = x2
-4 -2 2 4x
-2
2
4
6
8
10u
y = e−u
0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4y
-2
2
4
6
8
10u
注意 ! 2つの関数,f と g を用いて作られる g(f(x))や f(g(x))のような関数を合成関数と呼びます。g(f(x))の代わりに (g ◦ f)(x)と書く場合があります。(§̈ ¥¦桑村 §1.4.1,p.7 )
・逆関数 §̈ ¥¦桑村 §1.4.2
任意の x について g(f(x)) = x である場合,g(x) を f(x) の逆関数と呼び,f−1(x) と書きます。
注意 ! f−1(x) 6= 1
f(x)
関数 y = exと逆関数 y = log xの図
-4 -2 2 4x
-4
-3
-2
-1
1
2
3
4y
例えば ax と loga(x) は互いに逆関数。
y = f(x) のグラフと y = f−1(x) のグラフは直線 y = x に対して線対称となります。
関数 y = x2 − 1と逆関数 y = ±√
x + 1の図
� ��� � � � ��� � � � �� � ���� �
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� �
��� � �
� ��
�
����
�
x
y
交 点 の 座 標 は (−1, 0),(0,−1),(1 −√
5
2,1 −
√5
2
),
(1 +√
5
2,1 +
√5
2
)。
2016微積 I.7
1.6 連続関数¶ ³例えば
√x, x3 といった関数は連続関数です。連続性のおかげで,
√4.001 はほぼ 2 に等
しい,(1.999)3 はほぼ 8 に等しい,といった近似計算が可能になります。µ ´関数の極限値 §̈ ¥¦桑村 §3.2 §̈ ¥¦川薩四 §1.2
実数 x が限りなく a に近づくとき,f(x) がある実数 α に限りなく近づくならば
x → a のとき f(x) の 極限値 は α である
あるいは
x → a のとき f(x) は α に 収束 する
とかいい,limx→a
f(x) = α (7.1)
と表します。
(参考) 上の 限りなく近づく とは『任意の (どんな小さな)正の数 ε に対しても,適当な正の数 δ をとると,0 < |x− a| < δ のすべての x に対して |f(x) − α| < ε となる』ということを意味します。
なお,x を左から (x < a ) aに近づけた場合の極限を左側極限と呼び
limx→a−0
f(x) (7.2)
と表します。また,x を右から (x > a ) aに近づけた場合の極限を右側極限と呼び
limx→a+0
f(x) (7.3)
と表します。§̈ ¥¦桑村 p.52 §̈ ¥¦川薩四 §1.4 x → a のとき f(x) の 極限 が存在する場合は
limx→a−0
f(x) = limx→a+0
f(x) = limx→a
f(x) (7.4)
となっています。
関数の連続 §̈ ¥¦桑村 §3.3 §̈ ¥¦川薩四 §1.5
関数 f(x) が x = a で連続であるとは, x → a のとき f(x) の極限が存在し,その値が f(a)
に等しいことを意味します:
関数 f(x) が x = a で連続 ⇔ limx→a
f(x) = f(a) . (7.5)
2016微積 I.8
これは,x を a にどんどん近くすると関数の値の方も f(a) にいくらでも近くできる,という「近似の可能性」を表したものです。
(例) f(x) =1
x2は x = 0 で連続ではありません。
limx→−0
f(x) = ∞ , limx→+0
f(x) = ∞ (8.1)
となり,左極限も右極限も発散し,極限が存在しません。
(例) f(x) =x
|x|は x = 0 で連続ではありません。§̈ ¥¦桑村 例題 3.5
limx→−0
f(x) = limx→−0
x
−x= −1 , lim
x→+0f(x) = lim
x→+0
x
x= 1 (8.2)
となり,左極限および右極限はそれぞ存在しますが,一致しません。
例題 1.8 次のように定義された関数 f(x) が x = 1 で連続となるように定数 c の値を定めなさい。
f(x) =
c (x = 1 のとき)
x3 − 1
x − 1(x 6= 1 のとき)
解説
limx→1
f(x) = limx→1
x3 − 1
x − 1= lim
x→1(x2 + x + 1) = 3
なので,c = 3 であれば x = 1 で連続になることがわかります。
例題 1.9 次のように定義された関数 f(x) が x = 0 で連続となるように定数 c の値を定めなさい。
f(x) =
c (x = 0 のとき)
sin(2x)
x(x 6= 0 のとき)
解説
limx→0
sin(2x)
xを求めるために,教科書§̈ ¥¦桑村 p.70の例題 3.19
limx→0
sin x
x= 1 §̈ ¥¦川薩四 (5.9) (8.3)
を用います:
limx→0
f(x) = 2 limx→0
sin(2x)
2x= 2 (8.4)
より c = 2 とすれば f(x) は x = 0 で連続となります。
(参考) 次のように定義された関数 f(x) が x = 0 で連続となるように定数 c の値を定めなさい。
f(x) =
c (x = 0 のとき)
x sin(1
x
)(x 6= 0 のとき)
(8.5)
2016微積 I.9
解説∣∣∣∣sin (1
x
)∣∣∣∣ ≤ 1なので
limx→0
∣∣∣∣x sin(1
x
)∣∣∣∣ ≤ limx→0
|x| = 0 . (9.1)
従って, c = 0 とすれば f(x) は x = 0 で連続となります。
-1 -0.5 0 0.5 1-0.2
0
0.2
0.4
0.6
0.8
x
y
-0.1 -0.05 0 0.05 0.1
-0.075
-0.05
-0.025
0
0.025
0.05
x
y
-0.01 -0.005 0 0.005 0.01
-0.005
0
0.005
0.01
x
y
x sin(1
x
)の x = 0付近でのグラフ
多変数関数の場合も同様です。例えば,ある 2 変数関数 f(x, y) が (x, y) = (a, b) で連続か不連続かどうかは,
lim(x,y)→(a,b)
f(x, y) = f(a, b) (9.2)
となっているかを確認すればわかります(→§̈ ¥¦桑村 p.167)。ただし,(x, y) → (a, b) というのは,点 (x, y) を点 (a, b) にどんどん近づけるということを意味します。(9.2)は (x, y)をどのように(a, b)に近づけても,f(x, y)が f(a, b)に近づくことを意味します。
1.7 中間値の定理
§̈ ¥¦桑村 p.56 §̈ ¥¦川薩四 p.15
例題 1.10 方程式 x2 − 2 = 0 は 1 ≤ x ≤ 2 の範囲に少なくともひとつ実数解をもつことを示しなさい。
解説 f(x) = x2 − 2とおくと f(x) は連続関数です。f(1) = −1 < 0, f(2) = 2 > 0 なので,中間値の定理より方程式 f(x) = 0は x = 1と x = 2の間に少なくとも一つの解を持つことがわかります。グラフをイメージすれば直感的に区間 (1, 2)の内部に実数解が存在することがわかると思います(数学的にちゃんとした解説は→ 教科書)。実数解が具体的な式で求められない場合でも,中間値の定理を使えば,実数解があるかどうかは確認できるのです。
(参考) 解の存在する区間,(1, 2),の中点 x = 3/2 での関数の値 f(3/2) = 1/9 > 0を調べることにより,解の存在する範囲を更に狭めることができます。この例の場合,f(1) < 0 , f(3/2) > 0なので,区間 (1, 3/2)内に少なくとも一つの解が存在することがわかります。この手順を繰り返すことで,方程式 f(x) = 0の数値解を好みの精度で求めることができます。(→ 2年の科目「数値計算法」2分法)
2016微積 I.10
(参考) 実数の厳密な定義は省略します。(無限の)小数
m. a1 a2 a3 · · · , m 整数 , ak = 0 ∼ 9 (10.1)
と思って下さい。ただし0.999 · · · = 1.000 · · · (10.2)
等が成り立っています。
例題 1.11 方程式 2 cos x − x = 0 は 0 ≤ x ≤ π/2 の範囲に少なくともひとつ実数解をもつことを示しなさい。
解説 f(x) = 2 cos x − x とおくと f(0) = 2 > 0, f(π/2) = −π/2 < 0 なので,方程式 f(x) = 0
は x = 0と x = π/2の間に少なくとも一つの解を持つことがわかります。
� � ����� � ���� �
���
��
��
( )f x
/x π
例題 1.12 直線状のゴムを図のように引きのばすとき,引きのばす前後で位置の変わらない点が存在することを示しなさい。
x
x
0
0
1
1
0x
0( )f x
解説 図のように x軸上にゴムを置き,ゴムの左端の座標を x = 0,右端の座標を x = 1とします。ゴムの座標 x (0 ≤ x ≤ 1)の点が,引きのばされた後には座標 f(x)に移動したとします。図より,f(0) < 0,f(1) > 1なので,g(x) = f(x) − xとすると,
g(0) = f(0) < 0 , g(1) = f(1) − 1 > 0 (10.3)
となります。関数 f(x) は [0 , 1]で連続と考えられるので,g(x)も連続。従って,g(x0) = 0となる x0 ∈ (0 , 1)の存在がわかります。f(x0) = x0なので,座標 x = x0 の点がゴムを引きのばす前後で位置が変わらない点となります。
2016微積 I.11
1.8 微分係数,導関数¶ ³次のやりとりを数学的に解説できますか? 微分の概念の理解の第一歩です。
ある日の京滋バイパス瀬田付近,白バイ警官の「その乗用車,止まりなさい ! 」の声,ブレーキを踏むドライバー:
警官「90 キロ出てましたよ。速度超過違反 30 キロで免許停止です。」ドラ「90 キロって時速 90 キロ,つまり 1 時間で 90 キロですか ? 」警官「そうですが,何か ? 」ドラ「1 時間って,運転してまだ 5 分なので 90 キロも走ってません。」警官「いえ,このままいけば 1 時間で 90 キロ走る,ということです。」ドラ「あと 10 分で自宅に着くのでそんなに走りません。」µ ´
微分係数 §̈ ¥¦桑村 p.45 §̈ ¥¦川薩四 p.20
limh→0
f(a + h) − f(a)
h(11.1)
この値が定まるとき,関数 y = f(x) は x = a で微分可能であるといいます。また,この極限値を関数 y = f(x) の x = a における微分係数とよび
f ′(a), y′|x=a とかdf(x)
dx
∣∣∣∣x=a
,dy
dx
∣∣∣∣x=a
(11.2)
と表します。関数によっては極限が定まらないこともあり,その場合は微分不可能であると言います。
導関数 §̈ ¥¦桑村 p.59 §̈ ¥¦川薩四 p.21
関数 y = f(x)を考えます。各 xの値にこの xにおける微分係数を対応させる関数を y = f(x)
の 導関数とよび
f ′(x), y′ とかdf(x)
dx,
dy
dx(11.3)
と表します。すなわち
f ′(x) = limh→0
f(x + h) − f(x)
h(11.4)
です。
注意 ! 微分係数を示す記号 (11.2) に現れた |x=a は x に a を代入するという操作を意味します。つまり,微分係数 f ′(a) は導関数 f ′(x) の x = a における値のことです。。
2016微積 I.12
式 (11.1)でいきなり h = 0 を代入すると分子と分母がともに 0 になるため,h → 0の極限をとる必要があります。定義 (11.1)に従って,微分係数を数値計算した例を示します:
(例) f(x) = x2,a = 1,f ′(1) = 2
h 0.5 0.1 0.01 0.001
f(a + h) − f(a) 1.25 0.21 0.0201 0.002001
(f(a + h) − f(a))/h 2.5 2.1 2.01 2.001
(例) f(x) = sin(x),a = 0,f ′(0) = 1
h 0.5 0.3 0.1 0.01
f(a + h) − f(a) 0.479 0.296 0.0998 0.001
(f(a + h) − f(a))/h 0.959 0.985 0.998 1.0
(微分可能でない例) f(x) = x sin
(1
x
),a = 0
h 0.5 0.1 0.01 0.001 0.0001
f(a + h) − f(a) 0.455 -0.0544 -0.00506 0.000827 -0.0000306
(f(a + h) − f(a))/h 0.909 -0.544 -0.506 0.827 -0.306
例題 1.13 微分の定義 (11.4) にしたがって,関数 x2 と√
x (x > 0) の導関数をそれぞれ求めなさい。
解説
limh→0
(x + h)2 − x2
h= lim
h→0
2xh + h2
h= 2x . (12.1)
また,
limh→0
√x + h −
√x
h= lim
h→0
(√
x + h −√
x)(√
x + h +√
x)
h(√
x + h +√
x)
= limh→0
h
h(√
x + h +√
x)=
1
2√
x(12.2)
なので,いずれも微分可能で,導関数はそれぞれ 2x,1
2√
xとなります。
例題 1.14 例題 1.13 と同じ計算を他の関数に変えて,極限の計算を練習しなさい。
解説 例えば,x3 や 1/x は比較的簡単に計算できます。とりあえず自力でトライしてみましょう。答えはそれぞれ 3x2, −1/x2 です。
2016微積 I.13
接線;微分係数の図形的意味
x = a で微分可能な関数 f(x) で表される曲線 y = f(x) は x = a の近くでは直線で近似できます。その直線を曲線 y = f(x)の点 (a, f(a)) での接線と呼び,接線の傾きが x = aでの微分係数 f ′(a) となります。
・f(x) = x2,a = 1,接線 y = 2x − 1
-1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2-3
-2
-1
0
1
2
3
4
x
y
0.6 0.8 1 1.2 1.40
0.5
1
1.5
2
0.9 0.95 1 1.05 1.10.8
0.9
1
1.1
1.2
・f(x) = sin(x),a = 0,接線 y = x
-3 -2 -1 0 1 2 3-3
-2
-1
0
1
2
3
x
y
-1 -0.5 0 0.5 1-1
-0.5
0
0.5
1
x
y
-0.4 -0.2 0 0.2 0.4
-0.4
-0.2
0
0.2
0.4
x
y
・(微分可能ではない例) f(x) = x sin
(1
x
)は x = 0 で微分可能ではないので,x = 0 の近
くをどれだけ拡大してもグラフは直線に近づきません。
-1 -0.5 0 0.5 1-0.2
0
0.2
0.4
0.6
0.8
x
y
-0.1 -0.05 0 0.05 0.1
-0.075
-0.05
-0.025
0
0.025
0.05
x
y
-0.01 -0.005 0 0.005 0.01
-0.005
0
0.005
0.01
x
y
注意 ! x = 0 以外では微分可能。例えば x = 0.01 の充分近くでは直線で近似できます。
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x
y
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x
y
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x
y
2016微積 I.14
『曲線 y = f(x)が x = a の近くでは直線で近似できる』という文の意味を,関数
f(x) = x3 + x2 + x + 1 (14.1)
について,a = 1 の場合に考えてみます。x = 1 の近くの領域のみを考えるということは,x = 1 + h として,|h|が小さい場合を考えるということです。f(x)を h のべきでまとめると
f(x) = f(1 + h) = (1 + h)3 + (1 + h)2 + (1 + h) + 1 = 4 + 6h + 4h2 + h3 (14.2)
となります。(14.2) の最初の 2項,
4 + 6h = 4 + 6(x − 1) = −2 + 6x , (14.3)
が曲線 y = f(x)を近似する直線で,残りの 2項,4h2 + h3,は直線で近似しきれない誤差を表しています。曲線を近似する直線と元の曲線との差が h より小さい h2 のオーダーの量であることが重要です。もし,直線の傾きが 6ではなく,例えば 5 なら式 (14.2)は
f(1 + h) = 4 + 5h + h + 4h2 + h3 (14.4)
となり,元の曲線との差が h1 のオーダーの量になります。つまり,直線−2 + 6xは,元の曲線y = f(x)との差が x = 1 の近くで最も小さくなるように傾きを選んだ直線になります。
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�
�
( )y f x=
xa a h+
( )O h
2( )O h
一般に,曲線 y = f(x)上の点 (x = a , y = f(a)) を通る傾き A の直線は次の式
y = f(a) + A (x − a) (14.5)
で表されます。傾き A をうまく選んで,曲線 y = f(x) との差が x = a の近くで h2 のオーダーの量になる場合,直線 (14.5)を曲線 y = f(x)の点 (a, f(a)) での接線と呼びます:
f(a + h) = f(a) + A h + O(h2) . (14.6)
ここで O(h2) は大きさが h2 のオーダーの量を表します。
注意 ! ランダウ (Landau)の記号 §̈ ¥¦桑村 付録 E §̈ ¥¦川薩四 p.114
limh→0
∣∣∣∣g(h)
hn
∣∣∣∣ ≤有限の値 (14.7)
2016微積 I.15
であるとき,g(h)を hnで抑えられる無限小といい
g(h) = O(hn) (15.1)
と書きます。O がランダウの記号でO(hn) と表される部分が,h → 0 のとき hn と少なくとも同程度に小さい量であることを示しています。O(hn) = (何らかの係数) × hn と思ってよいでしょう。O は「程度」を表す “order” の頭文字です。ランダウの記号は,具体的に h のどんな式かはわからなくても,極限や収束を考えるとき「どのくらい小さいか」の程度を表せる便利な記号です。
微分係数の定義の式 (11.1)に式 (14.6)を代入すると
f ′(a) = limh→0
f(a + h) − f(a)
h= lim
h→0
A h + O(h2)
h= lim
h→0(A + O(h)) = A (15.2)
となり, x = a での微分係数 f ′(a) が 点 (x = a, y = f(a)) を通る接線の傾きを与えることがわかります。
接線の式 §̈ ¥¦桑村 p.79 §̈ ¥¦川薩四 p.21'
&
$
%
h が小さいときf(a + h) = f(a) + f ′(a) h + O(h2) (15.3)
となります。(15.3)右辺の最初の 2項は x = a,y = f(a) を通る,曲線 y = f(x) の接線を表す式となります:
y = f(a) + f ′(a) (x − a) . (15.4)
注意 ! h= x − a → 0 のとき,点 (x = a, y = f(a)) を通るどんな直線でも曲線 y = f(x) との差は 0 に近づくが,直線の傾きが f ′(a) でなければその差は O(h) となります。この意味で,接線は x = a の近くで曲線を一番良く近似する直線といえます。
注意 ! 式 (15.3)より,さらに近似を進めるとどうなるかについては,後のテイラー (Taylor)
展開のところで説明します。
(参考)微分係数の定義の式 (11.1),f ′(a) = limh→0
f(a + h) − f(a)h
,を書き換えた式
limh→0
f(a + h) −(f(a) + f ′(a)h
)h
= 0 (15.5)
は,元の関数の値 f(a+h)と接線の値 f(a)+ f ′(a)h との差が h より早く 0に近づくことを意味しています。このような量を hよりも高次 (高位)の無限小と呼び,o(h)と書きます。(15.3)右辺中の h2のオーダーの量,O(h2),は確かに hよりも高次の無限小ですが,例えば h3/2なども hより高次の無限小となります。従って,(15.3)は,より正確には
f(a + h) = f(a) + f ′(a) h + o(h) (15.6)
と書くべきです。しかし,f(x)が何回でも微分可能な場合は (15.3)が成り立つので,ここでは説明を簡略にするためこのように表しました。
2016微積 I.16
.
曲線と接線の差∆(h) = f(a + h) − f(a) − f ′(a) hの計算例を示します。。(例) f(x) = x2,a = 1,f ′(1) = 2
h 1 × 10−1 1 × 10−2 1 × 10−3 1 × 10−4
∆(h) 1 × 10−2 1 × 10−4 1 × 10−6 1 × 10−8
∆(h)/∆(10h) 1 × 10−2 1 × 10−2 1 × 10−2
(例) f(x) = sin(x),a = 0,f ′(0) = 1
h 1 × 10−1 1 × 10−2 1 × 10−3 1 × 10−4
∆(h) −1.67 × 10−4 −1.67 × 10−7 −1.67 × 10−10 −1.67 × 10−13
∆(h)/∆(10h) 1 × 10−3 1 × 10−3 1 × 10−3
(例) f(x) = x sin
(1
x
),a = 0.01,f ′(0.01) = −86.7 · · ·
h 1 × 10−3 1 × 10−4 1 × 10−5 1 × 10−6
∆(h) 9.40 × 10−2 3.65 × 10−3 2.67 × 10−5 2.55 × 10−7
∆(h)/∆(10h) 3.88 × 10−2 7.32 × 10−3 9.53 × 10−3
例題 1.15 (例題 1.10)で考えた方程式,
f(x) = 0 , ただし f(x) = x2 − 2 , (16.1)
は区間 (1 , 2)内に解を持つことがわかっています。また,関数 f(x)は x = 2の近くで接線
g(x) = f(2) + f ′(2)(x − 2) (16.2)
で近似できます。方程式 g(x) = 0を解いて,方程式 f(x) = 0の近似解を求めなさい。なお,このように,ある点の関数の値と微分係数から方程式の数値解を計算する方法をニュートン (Newton)法と呼びます。(→ 2年の科目「数値計算法」)
解説 f(x)の導関数は f ′(x) =df(x)
dx= 2x なので,f(x) の x = 2 での接線の方程式は
g(x) = 2 + 4(x − 2) = 4x − 6 (16.3)
となります。従って g(x) = 0 より x =3
2= 1.5 が方程式 f(x) = 0 の近似解となります (図
17-1)。正確な解は x =√
2 = 1.4142 · · ·となります。正確な解の近くに近似解が得られた場合は,この手続きをもう一度くり返すことで,近似の精度を上げる (近似解と正確な解の誤差を減らす)ことができます。f(x) の x = 3/2 での接線の方程式は
h(x) =1
4+ 3
(x − 3
2
)= 3x − 17
4(16.4)
となるので,h(x) = 0 より x =17
12= 1.4166 · · · が方程式 f(x) = 0 のより精度の高い近似解と
なります (図 17-2)。
2016微積 I.17
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x
( )f x
( )g x
2
3
2
図 17-1
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x
( )f x
( )g x
( )h x
2
17
12 3
2
図 17-2
1.9 微分の基本的公式'
&
$
%
(1)関数の和,差や定数との積の微分 §̈ ¥¦桑村 p.62 §̈ ¥¦川薩四 (p.22)
d
dx
(a f(x) + b g(x)
)= a
df(x)
dx+ b
dg(x)
dx, a, bは定数 , (17.1)
あるいは (a f(x) + b g(x)
)′= a f ′(x) + b g′(x) , a, bは定数 . (17.2)
(2)関数の積の微分 §̈ ¥¦桑村 p.62 §̈ ¥¦川薩四 (p.22)
d
dx
(f(x) g(x)
)=
df(x)
dxg(x) + f(x)
dg(x)
dx, (17.3)
あるいは (f(x) g(x)
)′= f ′(x) g(x) + f(x) g′(x) . (17.4)
(3)合成関数 y = f(g(x)) の微分 §̈ ¥¦桑村 p.66 §̈ ¥¦川薩四 (p.25)
df(g(x))
dx=
df(u)
du
∣∣∣∣u=g(x)
dg(x)
dx, あるいは
(f(g(x))
)′= f ′(g(x)) g′(x) . (17.5)
・(2)の解説x = a の近くで
f(a + h) = f(a) + f ′(a) h + O(h2) , (17.6)
g(a + h) = g(a) + g′(a) h + O(h2) (17.7)
となります。これより以下が得られます
f(a + h) g(a + h) = f(a) g(a) +(f ′(a) g(a) + f(a) g′(a)
)h + O(h2) . (17.8)
2016微積 I.18
.
ε [epsilon] イプシロン
一方 F (x) = f(x) g(x) とすると,
F (a + h) = F (a) + F ′(a) h + O(h2) (18.1)
となります。ただし,F (a) = f(a) g(a)。式 (17.8)と式 (18.1)の h の 1次の係数を比べて
F ′(a) = f ′(a) g(a) + f(a) g′(a) (18.2)
となることがわかります。
・(3)の解説y = f(u),u = g(x) とします。x = a の近くでは関数 u = g(x) は次の直線 (1次関数)
u = g(a) +dg(x)
dx
∣∣∣∣x=a
(x − a) (18.3)
とほぼ等しくなります。また, b = g(a) とすると,u = b の近くでは関数 y = f(u) は直線
y = f(b) +df(u)
du
∣∣∣∣u=b
(u − b) (18.4)
とほぼ等しくなります。1次関数と 1次関数の合成は 1次関数となります。実際,式 (18.3)と式(18.4)より合成関数は
y = f(b) +df(u)
du
∣∣∣∣u=b
([g(a) +
dg(x)
dx
∣∣∣∣x=a
(x − a)
]− b
)(18.5)
b=g(a)= f(b) +
df(u)
du
∣∣∣∣u=g(a)
dg(x)
dx
∣∣∣∣x=a
(x − a) (18.6)
となります。この直線の傾き,df(u)
du
∣∣∣∣u=g(a)
dg(x)
dx
∣∣∣∣x=a
, が合成関数 y = f(g(x))の x = a で
の微分係数を表します。
注意 ! 関数 f や gと,それらの接線の差まで考慮すると以下のような導出となります;
g(a + h) = g(a) +dg(x)dx
∣∣∣∣x=a
h + O(h2) , (18.7)
f(b + ε) = f(b) +df(u)du
∣∣∣∣u=b
ε + O(ε2) (18.8)
より,ε =dg(x)dx
∣∣∣∣x=a
h + O(h2) と考えて
f(g(a + h)) = f
(g(a) +
dg(x)dx
∣∣∣∣x=a
h + O(h2))
(18.9)
= f(g(a)) +df(u)du
∣∣∣∣u=b
(dg(x)dx
∣∣∣∣x=a
h + O(h2))
+ O(ε2) (18.10)
= f(g(a)) +df(u)du
∣∣∣∣u=g(a)
dg(x)dx
∣∣∣∣x=a
h + O(h2) (18.11)
が得られます。上の式 (18.11)の h の一次の係数から合成関数 y = f(g(x)) の x = a での微分係数がわかります。
2016微積 I.19
2 微分の計算
.
α [alpha] アルファ exp(f(x)) = ef(x)
2.1 基本的な関数の導関数'
&
$
%
・ x のべき §̈ ¥¦桑村 p.78 §̈ ¥¦川薩四 p.76
dxα
dx= α xα−1 , α は実数 . (19.1)
ただし x > 0 (α が整数の場合は x 6= 0)。
・ 三角関数 §̈ ¥¦桑村 p.73 §̈ ¥¦川薩四 p.72
d sin(x)
dx= cos(x) ,
d cos(x)
dx= − sin(x) . (19.2)
・ 指数関数 §̈ ¥¦桑村 p.76 §̈ ¥¦川薩四 p.66dex
dx= ex . (19.3)
・ 対数関数 §̈ ¥¦桑村 p.76 §̈ ¥¦川薩四 p.68
d log(|x|)dx
=1
x. (19.4)
例題 2.1 指数関数と対数関数が互いに逆関数ということから成り立つ恒等式
f(x) = elog f(x) (19.5)
を用いると,xα = exp
(α log(x)
)(19.6)
となります。これを用いて xαの導関数を求めなさい。ただし α は実数で,x > 0 とします。
解説 f(u) = eu,g(x) = α log(x) とすると exp(α log(x)
)= f(g(x))となります。合成関数
の微分の式 (17.5)より
d exp(α log(x)
)dx
=deu
du
∣∣∣∣u=α log(x)
d(α log(x))
dx= eu|u=α log(x) α
d log(x)
dx
= eα log(x) α1
x= xα α
1
x= α xα−1 (19.7)
となります。これより任意の実数 α について (19.1)が成り立つことがわかります。
2016微積 I.20
例題 2.2
ax = ex log a (20.1)
の導関数を求めなさい。ただし a > 0 とします。
解説
d exp(x log a
)dx
=deu
du
∣∣∣∣u=x log a
dx log a
dx= eu|u=x log a log a
= ex log a log a = ax log a (20.2)
となります。これより,一般の底 a の指数関数の微分
d
dxax = ax log a §̈ ¥¦桑村 p.78 §̈ ¥¦川薩四 p.77 (20.3)
が得られます。
例題 2.3 次の関数を微分しなさい。また, x = 1 での接線を表す式を書きなさい。
y = sin(√
x2 + 1)
解説
d sin(√
x2 + 1)
dx=
d sin u
du
∣∣∣∣u=
√x2+1
du
dx= cos u|u=
√x2+1
d(x2 + 1)1/2
dx
= cos(√
x2 + 1) dv1/2
dv
∣∣∣∣v=x2+1
dv
dx= cos
(√x2 + 1
) 1
2v−1/2
∣∣∣∣v=x2+1
d(x2 + 1)
dx
= cos(√
x2 + 1) (x2 + 1)−1/2
22x =
x√x2 + 1
cos(√
x2 + 1)
(20.4)
となります。従って,x = 1での微分係数は1√2
cos(√
2)となることがわかります。また,x = 1
でのこの関数の値は sin(√
2)なので,接線をは以下の式となります;
y = sin(√
2) +cos(
√2)√
2(x − 1) (20.5)
-4 -2 0 2 4 6 8 10
-1
-0.5
0
0.5
1
1.5
x
y
-0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1
1.1
x
y
2016微積 I.21
.
sin(a ± b) = sin a cos b ± cos a sin b cos(a ± b) = cos a cos b ∓ sin a sin b
・3角関数の微分の補足
(8.3)と加法定理から導きます:
limh→0
sin(x + h) − sin(x)
h= lim
h→0
sin(x + h
2+ h
2
)− sin
(x + h
2− h
2
)h
= limh→0
2cos
(x + h
2
)sin
(h2
)h
= limh→0
cos(x +
h
2
)limh→0
sin(
h2
)h2
= cos(x) (21.1)
limh→0
cos(x + h) − cos(x)
h= lim
h→0
cos(x + h
2+ h
2
)− cos
(x + h
2− h
2
)h
,
= limh→0
−2 sin(x + h
2
)sin
(h2
)h
= − limh→0
sin(x +
h
2
)limh→0
sin(
h2
)h2
= − sin(x) .(21.2)
・指数関数の微分の補足
dex
dx= lim
h→0
ex+h − ex
h= ex lim
h→0
eh − 1
h= ex lim
h→0
eh − e0
h(21.3)
であるが,上式右辺の limh→0
(eh − e0
)/h は関数 y = ex の x = 0 での微分係数,すなわち x = 0
での接線の傾きを表します。e(ネイピア数) はこの接線の傾きが 1であるように定義されています。
y = 2x,y = ex,y = 4x
-1 -0.5 0.5 1x
0.5
1
1.5
2y
e = limt→0
(1 + t)1t = 2.7182 · · · §̈ ¥¦桑村 p.75
注意 ! ex を exp(x) と書く場合があります。exponential
y = 2x と
(x, y) = (0, 1) での接線
-1 -0.5 0.5 1x
0.5
1
1.5
2y
y = ex と
(x, y) = (0, 1) での接線
-1 -0.5 0.5 1x
0.5
1
1.5
2y
y = 4x と
(x, y) = (0, 1) での接線
-1 -0.5 0.5 1x
0.5
1
1.5
2y
2016微積 I.22
(参考) ネイピア数の表現 e = limt→0
(1 + t)1t より上を導くこともできます。eh − 1 = t とおくと
h = log(1 + t) となるので
limh→0
eh − 1
h= lim
t→0
t
log(1 + t)= lim
t→0
1
log(1 + t)1t
=1
log(
limt→0(1 + t)1t
)=
1
log e= 1 (22.1)
となります。
・対数関数の微分の補足
x > 0 の場合を考えます。
limh→0
log(x + h) − log(x)
h= lim
h→0
log x+hx
h= lim
h→0
x
hlog
(1 +
h
x
) 1
x=
1
xlimt→0
log(1 + t)
t. (22.2)
上で,t = h/x。上式右辺の limt→0
log(1 + t)
tは関数 y = log(x) の x = 1 での微分係数,すなわ
ち x = 1 での接線の傾きを表します。対数関数と指数関数が互いに逆関数で y = x の直線に対して対称であることから,この傾きは 1であることがわかります。
(参考) ネイピア数の表現からも
limt→0
log(1 + t)
t= log
(limt→0
(1 + t)1t
)= log e = 1
となることがわかります。
注意 ! x < 0 の場合は y = −x とおいて,合成関数の微分を用います;
d log(y)
dx=
d log(y)
dy
dy
dx= −1
y=
1
x. (22.3)
2016微積 I.23
2.2 逆関数の導関数
§̈ ¥¦桑村 p.68 §̈ ¥¦川薩四 p.26
f(x) と g(x) が互いに逆関数である場合は
x = f(g(x)) (23.1)
となっています。上の式の両辺を x で微分すると
1 =df(u)
du
∣∣∣∣u=g(x)
dg(x)
dx(23.2)
が得られます。これより g(x) が f(x) の逆関数である場合,次の関係式
dg(x)
dx= 1
/df(u)
du
∣∣∣∣u=g(x)
(23.3)
が得られます。
例題 2.4 Arcsin(x) は −1 ≤ x ≤ 1 で定義された sin(x) の逆関数であり−π
2≤ Arcsin(x) ≤ π
2の値をとります。(§̈ ¥¦桑村 §1.7.6 Sin−1(x) などと書くこともあります。) y = Arcsin(x) の導関数を求めなさい。また,x = 1/
√2 での接線を表す式を書きなさい。
解説 f(u) = sin(u),g(x) = Arcsin(x) とおいて式 (23.3) を用いると
dArcsin(x)
dx= 1
/d sin(u)
du
∣∣∣∣u=Arcsin(x)
=1
cos(u)
∣∣∣∣u=Arcsin(x)
(23.4)
となります。sin(u) = x なので (cos(u))2 + (sin(u))2 = 1より cos(u) = ±√
1 − (sin(u))2 =
±√
1 − x2 となります。u = arcsin(x) は −π/2 から π/2 の範囲の値をとるので cos(u) ≥ 0。従って cos(u) =
√1 − x2であることがわかります。これを式 (23.4)に代入して
dArcsin(x)
dx=
1√1 − x2
, −1 ≤ x ≤ 1 §̈ ¥¦桑村 p.74 §̈ ¥¦川薩四 (5.15) (23.5)
が得られます。x = 1/√
2での微分係数の値は上より√
2となります。また sin(Arcsin(1/√
2)) =
1/√
2 より,Arcsin(1/√
2) = π/4 であることがわかります。以上より, x = 1/√
2 での接線は次の式で表されます;
y =π
4− 1 +
√2 x . (23.6)
-1 -0.5 0 0.5 1
-1.5
-1
-0.5
0
0.5
1
1.5
x
y
細い線が接線を示します。
2016微積 I.24
.
θ [theta] シータ
2.3 2変数関数の微分
ここでは 2変数関数 z = f(x, y)について考えます。
・連続性 §̈ ¥¦桑村 §5.4
(x, y)を点 (a, b)に近づけるとき,f(x, y)が f(a, b)に近づく場合,すなわち
lim(x,y)→(a,b)
f(x, y) = f(a, b) (24.1)
がなりたつとき,f(x, y)は (a, b)で連続であるといいます。
注意 ! 1変数の関数 f(x)の場合,xの aへの近づけ方は左から (x < a)と右から (a < x)の 2通りでしたが,(x, y)の点 (a, b)への近づけ方は無数にあります。式 (24.1)はどんな近づけ方をしても,f(x, y) が f(a, b) に近づくことを意味します。
例題 2.3.1 次の関数が原点で連続かどうかを調べなさい;
(1) f(x, y) =xy
x2 + y2, (2) f(x, y) =
xy√x2 + y2
, (x, y) 6= (0, 0) . (24.2)
ただし,f(0, 0) = 0とします。
解説 x軸から θ の角度の直線に沿って (x, y) を原点に近付けてみます;
x = r cos θ , y = r sin θ , r → 0 (24.3)
(1)
f(x, y)|x=r cos θ,y=r sin θ = cos θ sin θ (24.4)
となり,値が θによって変わるので,この関数は原点で連続ではありません。
(2)
limr→0
f(x, y)|x=r cos θ,y=r sin θ = limr→0
r cos θ sin θ = 0 (24.5)
となり,θがどんな値でも (,あるいは θが rの関数であっても) 極限値は 0 となるので,この関数は原点で連続となります。
・偏微分 §̈ ¥¦桑村 §5.5 §̈ ¥¦川薩四 §3.1
f(x, y)を,仮に xのみの関数と考えて,(xについての)導関数を求めることを x で偏微分す
る,といいます。導関数は∂f
∂xなどと書き,xについての偏導関数と呼びます。同様に,f(x, y)
を,仮に yのみの関数と考えて,(yで微分して)もとめた yについての偏導関数を∂f
∂yなどと書
きます;
∂f(x, y)
∂x= lim
h→0
f(x + h, y) − f(x, y)
h,
∂f(x, y)
∂y= lim
h→0
f(x, y + h) − f(x, y)
h. (24.6)
注意 !∂f(x, y)
∂xを fx(x, y) ,
∂f(x, y)
∂yを fy(x, y) と書く場合があります。
2016微積 I.25
.
α [alpha] アルファ β [beta] ベータ ∆ [Delta] デルタ (大文字)
・(全)微分可能性 §̈ ¥¦桑村 §5.6
1変数関数 f(x)の場合,f(x) が x = aで微分可能な場合,x = a の近くで
f(a + h) = f(a) + f ′(a) h + O(h2) (15.3)
が成り立ちました。同様に,
全微分可能'
&
$
%
2変数関数 f(x, y)が,(x, y) = (a, b)で全微分可能とは:∆xと∆yが小さいとき,
f(a + ∆x, b + ∆y) = f(a, b) + α ∆x + β ∆y + O(r2) §̈ ¥¦桑村 (6.4) (25.1)
が成り立つことが定義です。ここで,r =√
(∆x)2 + (∆y)2で,αと βは偏導関数に (x, y) =
(a, b)を代入した偏微分係数となります:
α =∂f(x, y)
∂x
∣∣∣∣x=a,y=b
, β =∂f(x, y)
∂y
∣∣∣∣x=a,y=b
. (25.2)
注意 ! 偏微分可能でも,全微分可能とは限りません (→§̈ ¥¦桑村 p.173 )。例えば (例題 2.3.1)の (2)
の場合,f(x, 0) = f(0, y) = 0より,
∂f(x, y)
∂x
∣∣∣∣x=0,y=0
= 0 ,∂f(x, y)
∂y
∣∣∣∣x=0,y=0
= 0 (25.3)
なので,もし全微分可能で (25.1)が成り立つなら
f(x, y) = O(r2) (25.4)
となるはずですが,実際は
f(x = r cos θ, y = r sin θ) = r cos θ sin θ = O(r) (25.5)
となります。これは x = yでの関数形が f(x, x) =x2
√2|x|
=|x|√
2となり,原点で折れ曲がった線
になることからも予想できます。
(25.1)右辺の最初の 3項は点 (x, y) = (a, b)の近くで曲面 z = f(x, y)を最も良く近似する平面 (接平面)を表す式となります:
接平面の式 §̈ ¥¦桑村 §5.7 §̈ ¥¦川薩四 p.46Â
Á
¿
À点 (a, b)を通る曲面 z = f(x, y)の接平面を表す式:
z = f(a, b) +∂f(x, y)
∂x
∣∣∣∣x=a,y=b
(x − a) +∂f(x, y)
∂y
∣∣∣∣x=a,y=b
(y − b) §̈ ¥¦桑村 (7.1) . (25.6)
2016微積 I.26
例題 2.3.2 §̈ ¥¦桑村 p.200
曲面 z =√
3 − x2 − y2 (半径√
3の球面の上半分)の (x, y) = (0, 0)と (x, y) = (1, 1)における接平面を表す式を求めなさい。
解説
∂z
∂x=
∂(3 − x2 − y2)1/2
∂x=
du1/2
du
∣∣∣∣u=3−x2−y2
∂(3 − x2 − y2)
∂x=
1
2u−1/2
∣∣∣∣u=3−x2−y2
(−2x)
= − x√3 − x2 − y2
(26.1)
∂z
∂y=
∂(3 − x2 − y2)1/2
∂y=
du1/2
du
∣∣∣∣u=3−x2−y2
∂(3 − x2 − y2)
∂y=
1
2u−1/2
∣∣∣∣u=3−x2−y2
(−2y)
= − y√3 − x2 − y2
(26.2)
より,
z|x=0,y=0 =√
3 ,∂z
∂x
∣∣∣∣x=0,y=0
= 0 ,∂z
∂y
∣∣∣∣x=0,y=0
= 0 (26.3)
となります。従って (25.6)より,(x, y) = (0, 0)での接平面を表す式は
z =√
3 . (26.4)
また,
z|x=1,y=1 = 1 ,∂z
∂x
∣∣∣∣x=1,y=1
= −1 ,∂z
∂y
∣∣∣∣x=1,y=1
= −1 (26.5)
より,(x, y) = (1, 1)での接平面を表す式は
z = 1 − 1(x − 1) − 1(y − 1) = −x − y + 3 . (26.6)
� �
����
�� � �
���
�
�
�
������
� ���
� �
����
�
x
y
z
半径√
3 の半球面と (x, y, z) = (1, 1, 1)での接平面
2016微積 I.27
.
直線や平面を表す式 §̈ ¥¦桑村 付録 C'
&
$
%
空間上の点 (x, y, z) = (x0, y0, z0)を通って,ベクトル ~v = (A,B, C)に垂直な平面は次の式
A(x − x0) + B(y − y0) + C(z − z0) = 0 (27.1)
あるいはAx + By + Cz = D , ただし D = Ax0 + By0 + Cz0 (27.2)
で表されます。~vはこの平面の法線ベクトルと呼ばれます。
また,x-y 平面上の,点 (x, y) = (x0, y0)を通って,ベクトル ~v = (A,B)に垂直な直線は次の式で表されます;
A(x − x0) + B(y − y0) = 0 あるいは Ax + By = D. (27.3)
ここで,D = Ax0 + By0。
注意 ! 条件 (27.1)はベクトルの内積を用いると
~A · (~r − ~r0) = 0 (27.4)
と書けます。ここで,~r0 = (x0 , y0 , z0)は平面上のある点を表す位置ベクトル,~r = (x , y , z)は平面上の任意の点を表す位置ベクトルです。
ベクトルの内積 §̈ ¥¦川薩四 A.7'
&
$
%
2つの 3次元ベクトル ~A, ~B に対して, 次の式で計算されるスカラー ~A · ~B のことを内積といいます:
~A · ~B = | ~A| | ~B| cos(θ) , 0 5 θ 5 π . (27.5)
ここで,| ~A|,| ~B|はそれぞれ ~Aと ~Bの大きさです。また,θは ~Aと ~Bの間の角度を表します。とくに,2つのベクトルが直交する場合 (θ = π/2)は,~A · ~B = 0となります。~A,~Bの成分が
~A = (A1 , A2 , A3) , ~B = (B1 , B2 , B3) (27.6)
の場合,次の式が成り立ちます;
~A · ~B = A1B1 + A2B2 + A3B3 . (27.7)
注意 ! ベクトルの内積にはいろいろな記法が使われます。こ
こでは,「物理数学及び演習 I」の記法を用いました。 ~A · ~Bの
ことを教科書 (§̈ ¥¦桑村 p.245 )では 〈 ~A, ~B〉,「線形代数及び演習 I」では ( ~A, ~B)と書いています。(§2.3)
(参考) 直線や平面をパラメータを用いて表す方法もあります。(「線形代数及び演習 I」, §2.4)
2016微積 I.28
2.4 2変数関数の合成関数の微分
§̈ ¥¦桑村 §5.8 §̈ ¥¦川薩四 §3.2
2変数関数 f(x, y) の x に g(t)を,y に h(t) を代入して,変数 t の関数 F (t)と考えます;
F (t) = f(x, y)|x=g(t),y=h(t) = f(g(t), h(t)
). (28.1)
F (t)の t = t0での微分係数を考えます。g(t),h(t)は t = t0で微分可能であり,また,x0 = g(t0),y0 = h(t0)としたとき,f(x, y) は (x, y) = (x0, y0)で全微分可能とします。t = t0の近くで
g(t0 + ∆t) = x0 + g′(t0)∆t + O((∆t)2
), (28.2)
h(t0 + ∆t) = y0 + h′(t0)∆t + O((∆t)2
)(28.3)
となります。ここで∆t = t − t0です。また,f(x, y) は (x, y) = (x0, y0)の近くで
f(x0 +∆x, y0 +∆y) = f(x0, y0)+∂f(x, y)
∂x
∣∣∣∣x=x0,y=y0
∆x+∂f(x, y)
∂y
∣∣∣∣x=x0,y=y0
∆y+O(r2) (28.4)
となります。ここで∆x = x − x0,∆y = y − y0,r =√
(∆x)2 + (∆y)2です。(28.2),(28.3)
より
∆x = g(t0 + ∆t) − x0 = g′(t0)∆t + O((∆t)2
)(28.5)
∆y = h(t0 + ∆t) − y0 = h′(t0)∆t + O((∆t)2
)(28.6)
r = O(∆t
)(28.7)
となります。これらを (28.4)に代入すると
F (t + ∆t) − F (t0) = f(x0 + ∆x, y0 + ∆y
)− f(x0, y0)
=
{∂f(x, y)
∂x
∣∣∣∣x=x0,y=y0
g′(t0) +∂f(x, y)
∂y
∣∣∣∣x=x0,y=y0
h′(t0)
}∆t + O
((∆t)2
)(28.8)
が得られます。この式の∆tの係数から F (t)の t = t0での微分係数が得られます;
F ′(t0) =∂f(x, y)
∂x
∣∣∣∣x=x0,y=y0
g′(t0) +∂f(x, y)
∂y
∣∣∣∣x=x0,y=y0
h′(t0) . (28.9)
2変数関数の合成関数の微分 §̈ ¥¦桑村 定理 5.5 §̈ ¥¦川薩四 (3.3)'
&
$
%
g(t),h(t)は微分可能,f(x, y)は全微分可能とすると,次の式が成り立ちます;
d
dt
(f(x, y)|x=g(t),y=h(t)
)=
d
dtf(g(t), h(t)
)=
∂f(x, y)
∂x
∣∣∣∣x=g(t),y=h(t)
dg(t)
dt+
∂f(x, y)
∂y
∣∣∣∣x=g(t),y=h(t)
dh(t)
dt. (28.10)
2016微積 I.29
.例題 2.4.1 2 変数関数 f(x, y) = 2x2 −xy を考えます。x, y が t の関数であり,(x(t), y(t)) =(cos(2t), sin(4t)
)であるとき,f(x(t), y(t)) を t で微分しなさい。
解説∂f(x, y)
∂x= 4x − y ,
∂f(x, y)
∂y= −x . (29.1)
dx(t)
dt=
d cos(2t)
dt= −2 sin(2t) ,
dy(t)
dt=
d sin(4t)
dt= 4 cos(4t) . (29.2)
(28.10)より
df(x(t), y(t))
dt=
(4x − y
)∣∣∣x=cos(2t),y=sin(4t)
(−2 sin(2t)) +(− x
)∣∣∣x=cos(2t),y=sin(4t)
4 cos(4t)
= (4 cos(2t) − sin(4t)) (−2 sin(2t)) − cos(2t) (4 cos(4t))
= −8 cos(2t) sin(2t) + 2 sin(2t) sin(4t) − 4 cos(2t) cos(4t) (29.3)
となります。
(参考) 確認のために,まず,x(t), y(t) を f(x, y)に代入してみると,
f(x(t), y(t)) = 2 cos2(2t) − cos(2t) sin(4t) (29.4)
となるので,
df(x(t), y(t))dt
=d
dt
(2 cos2(2t) − cos(2t) sin(4t)
)= 4 cos(2t)
(− 2 sin(2t)
)+ 2 sin(2t) sin(4t) − cos(2t)
(4 cos(4t)
)(29.5)
と,確かに (29.3)と同じ結果になります。
注意 ! 普通の微分の記号(
d
dtなど
)と偏微分の記号
(∂
∂xなど
)が混在していますが,微分される変
数が微分する変数だけの関数の場合は普通の微分,そうでない場合は偏微分です。区別を意識するようにしてください。
例題 2.4.2 (参考) 直交座標から極座標 (§̈ ¥¦桑村 p.222 ,§̈ ¥¦川薩四 §7.4 ) への変数変換平面上の点 (x, y) を極座標 (r, θ) で表す。すなわち,(x, y) と (r, θ) に
x = x(r, θ) = r cos θ, y = y(r, θ) = r sin θ (29.6)
という関係があるとします。このとき,x, y についての 2 変数関数 z = f(x, y) を考えると,z = f(x(r, θ), y(r, θ)) なので,z は x と y を仲介として,r と θ の関数と考えることができます。このとき,次が成り立つことを示しなさい;
∂z
∂r=
∂z
∂xcos θ +
∂z
∂ysin θ , §̈ ¥¦桑村 p.183,(8.1) (29.7)
∂z
∂θ= −∂z
∂xr sin θ +
∂z
∂yr cos θ . §̈ ¥¦桑村 p.183,(8.2) (29.8)
2016微積 I.30
解説 (28.10)で,f → z,t → rとすると,
∂x
∂r= cos θ,
∂y
∂r= sin θ (30.1)
より,(29.7)が得られます。ただし,zは rと θの関数なので,左辺が偏微分,∂z
∂r,となりま
す。同様に,f → z,t → θとすると,
∂x
∂θ= −r sin θ,
∂y
∂θ= r cos θ (30.2)
より,(29.8)が得られます。一般に(極座標とは限らない),2種類の座標 (x, y), (u, v) に対して,
x = x(u, v), y = y(u, v) (30.3)
の関係が成り立っているとき,x, y についての 2 変数関数 z = f(x, y) を u, v についての 2 変数関数,z = f(x(u, v), y(u, v)) と考えると,
∂z
∂u=
∂z
∂x
∂x
∂u+
∂z
∂y
∂y
∂u,
∂z
∂v=
∂z
∂x
∂x
∂v+
∂z
∂y
∂y
∂v §̈ ¥¦桑村 p.182 定理 5.6 (30.4)
という関係が成り立ちます。ベクトルと行列を用いれば,
(∂z
∂u
∂z
∂v
)=
(∂z
∂x
∂z
∂y
) ∂x
∂u
∂x
∂v∂y
∂u
∂y
∂v
(30.5)
とも書けます。ここで現れた行列を,対応 (u, v) 7→ (x, y) に対するヤコビ行列 (§̈ ¥¦桑村 p.218 ,
§̈ ¥¦川薩四 p.153 )と言います。
2.5 陰関数の微分
§̈ ¥¦桑村 §5.12 §̈ ¥¦川薩四 §3.3
例題 2.5.1 円 x2 + y2 = 1 上の点 (a, b) における接線の方程式を求めなさい。
解説 y > 0 のとき,円の方程式は y =√
1 − x2 と書けて,(a, b) における接線の傾きは,
dy
dx
∣∣∣∣x=a
=d(1 − x2)1/2
dx
∣∣∣∣x=a
= − x√1 − x2
∣∣∣∣x=a
= − a√1 − a2
= − a√b2
= −a
b(30.6)
となります。同様に,y < 0 のときには y = −√
1 − x2 で,接線の傾きは,
dy
dx
∣∣∣∣x=a
= − d(1 − x2)1/2
dx
∣∣∣∣x=a
=x√
1 − x2
∣∣∣∣x=a
=a√
1 − a2=
a√b2
b<0= −a
b(30.7)
となります。まとめると,接線を表す式は,以下となります;
y = −a
b(x − a) + b, すなわち b y + a x = 1 . (30.8)
2016微積 I.31
.
ϕ [phi] ファイ
この例題で x2 + y2 − 1 = 0 から y = ±√
1 − x2 が得られたように,方程式 f(x, y) = 0 からy が x の関数 y = ϕ(x) として定まるとき,これを陰関数と言います。例題は円の方程式から定まる陰関数の微分を計算する問題ですが,微分や接線の方程式を求めるだけなら,x について解かなくても計算できます。つまり,x2 + y2 − 1 = 0 の両辺を x で微分すれば,
2x + 2ydy
dx= 0 (31.1)
となります。この式に (x, y) = (a, b)を代入すると
2a + 2bdy
dx
∣∣∣∣x=a
= 0 (31.2)
が得られ,(a, b) における接線の傾きが −a
bとなることがわかります。
一般に f(x, y) = 0 という方程式の場合,点 (a, b) のまわりで,陰関数 y = ϕ(x) が定まっているとします。上の円の例のようにϕ(x)が容易に得られる場合もあれば,ϕ(x)を書き下すのが難しい場合もあります。しかし,ϕ(x)がわからない場合にも,点 (x, y) = (a, b) での微分係数
の値dϕ(x)
dx
∣∣∣∣x=a
や接線を表す式は以下のようには計算できます。まず,ϕ(a) = bとなります。
また,ϕ(x) の定義より,(x = aの近くの)全ての x について
0 = f(x, ϕ(x)) (31.3)
が成り立っています。この式の両辺を x で微分します。左辺は定数なので微分すると 0 になります。右辺の微分は,2変数関数の合成関数の微分の式 (28.10)で t = x として
∂f(x, y)
∂x
∣∣∣∣y=ϕ(x)
+∂f(x, y)
∂y
∣∣∣∣y=ϕ(x)
dϕ(x)
dx(31.4)
となるので,x = a, y = b を代入して得られる式
0 =∂f(x, y)
∂x
∣∣∣∣x=a,y=b
+∂f(x, y)
∂y
∣∣∣∣x=a,y=b
dϕ(x)
dx
∣∣∣∣x=a
(31.5)
より x = a での微分係数の値が
dϕ(x)
dx
∣∣∣∣x=a
= − ∂f(x, y)
∂x
∣∣∣∣x=a,y=b
/ ∂f(x, y)
∂y
∣∣∣∣x=a,y=b
(31.6)
と得られます。
上では,f(x, y) = 0より定まる陰関数,y = ϕ(x),の存在を仮定して微分係数を求めましたが,一般に,f(a, b) = 0 を満たす点 (a, b) において,
∂f(x, y)
∂y
∣∣∣∣x=a,y=b
6= 0 (31.7)
が成り立っているなら,x = a の近くで微分可能な陰関数 y = ϕ(x) が定まることが知られています。これを陰関数定理(→§̈ ¥¦桑村 p.195 定理 5.11)と言います。
2016微積 I.32
(x, y) = (a, b) での接線を表す式は
y = ϕ(a) + ϕ′(a)(x − a) = b − (x − a)∂f(x, y)
∂x
∣∣∣∣x=a,y=b
/∂f(x, y)
∂y
∣∣∣∣x=a,y=b
(32.1)
となりますが,少し書きかえると xと y が同じように現れる式も得られます:
∂f(x, y)
∂x
∣∣∣∣x=a,y=b
(x − a) +∂f(x, y)
∂y
∣∣∣∣x=a,y=b
(y − b) = 0 . §̈ ¥¦桑村 (12.1) (32.2)
3変数の関数 f(x, y, z)を用いた方程式
f(x, y, z) = 0 (32.3)
より定まる陰関数 z = ϕ(x, y)の (x, y, z) = (a, b, c)での微分係数も,同様の手順で計算することができます。((x, y) = (a, b)の近くの)全ての x,y について成り立つ式
0 = f(x, y, ϕ(x, y)) (32.4)
の両辺を x や y で微分して得られる式
0 =∂f(x, y, z)
∂x
∣∣∣∣z=ϕ(x,y)
+∂f(x, y, z)
∂z
∣∣∣∣z=ϕ(x,y)
∂ϕ(x, y)
∂x, (32.5)
0 =∂f(x, y, z)
∂y
∣∣∣∣z=ϕ(x,y)
+∂f(x, y, z)
∂z
∣∣∣∣z=ϕ(x,y)
∂ϕ(x, y)
∂y(32.6)
より,以下の式が得られます:
∂ϕ(x, y)
∂x
∣∣∣∣x=a,y=b
= − ∂f(x, y, z)
∂x
∣∣∣∣x=a,y=b,z=c
/ ∂f(x, y, z)
∂z
∣∣∣∣x=a,y=b,z=c
, (32.7)
∂ϕ(x, y)
∂y
∣∣∣∣x=a,y=b
= − ∂f(x, y, z)
∂y
∣∣∣∣x=a,y=b,z=c
/ ∂f(x, y, z)
∂z
∣∣∣∣x=a,y=b,z=c
. (32.8)
(x, y, z) = (a, b, c)での接平面を表す式は
z = c−
{∂f(x, y, z)
∂x
∣∣∣∣x=a,y=b,z=c
(x − a) +∂f(x, y, z)
∂y
∣∣∣∣x=a,y=b,z=c
(y − b)
}/ ∂f(x, y, z)
∂z
∣∣∣∣x=a,y=b,z=c
,
(32.9)
あるいは
∂f(x, y, z)
∂x
∣∣∣∣x=a,y=b,z=c
(x − a) +∂f(x, y, z)
∂y
∣∣∣∣x=a,y=b,z=c
(y − b)
+∂f(x, y, z)
∂z
∣∣∣∣x=a,y=b,z=c
(z − c) = 0 §̈ ¥¦桑村 p.199 (32.10)
となります。
2016微積 I.33
注意 ! 陰関数の接線を表す式 (32.2)はベクトルの内積を用いると(∂f(x, y)
∂x,
∂f(x, y)∂y
)∣∣∣∣x=a,y=b
· (x − a , y − b) = 0 (33.1)
と表せます。(23.3)と比べると,f(x, y) = 0 で表される陰関数の点 (x, y) = (a, b)での接線は
ベクトル(
∂f(x, y)∂x
,∂f(x, y)
∂y
)∣∣∣∣x=a,y=b
に垂直であることがわかります。
同様に,陰関数の接平面を表す式 (28.10)はベクトルの内積を用いると(∂f(x, y, z)
∂x,
∂f(x, y, z)∂y
,∂f(x, y, z)
∂z
)∣∣∣∣x=a,y=b,z=c
· (x − a , y − b , z − c) = 0 (33.2)
と表せます。(23.1)と比べると,f(x, y, z) = 0 で表される陰関数の点 (x, y, z) = (a, b, c)での
接平面はベクトル(
∂f(x, y, z)∂x
,∂f(x, y, z)
∂y,
∂f(x, y, z)∂z
)∣∣∣∣(x,y,z)=(a,b,c)
に垂直であることが
わかります。
(参考) 上で出てきたベクトルの形をした関数(
∂f(x, y, z)∂x
,∂f(x, y, z)
∂y,
∂f(x, y, z)∂z
)は関数
f(x, y, z)の勾配と呼ばれ,gradf や∇f と書かれます。(→ 2年の科目「ベクトル解析」)
例題 2.5.2 原点を中心とする半径√
3の球面x2 +y2 +z2 = 3上の点 (a, b, c)(ただし,c 6= 0)における接平面を表す式を求めなさい。
解説 円のときと同様です。(例題 2.5.1)のように,z の正負で場合分けして,
z(x, y) = ±√
3 − x2 − y2 (33.3)
としてから計算することもできますが,ここでは陰関数 z(x, y) が方程式
f(x, y, z) = 0 , ただし f(x, y, z) = x2 + y2 + z2 − 3 (33.4)
で定義されていると考えてみましょう。xと yについての恒等式
x2 + y2 + z(x, y)2 − 3 = 0 (33.5)
の両辺を x と y でそれぞれ偏微分して得られる式
2x + 2z(x, y)∂z(x, y)
∂x= 0 , 2y + 2z(x, y)
∂z(x, y)
∂y= 0 (33.6)
より∂z(x, y)
∂x= − x
z(x, y),
∂z(x, y)
∂y= − y
z(x, y)(33.7)
が得られます。(x, y, z) = (a, b, c)を代入した式
∂z(x, y)
∂x
∣∣∣∣x=a,y=b
= −a
c,
∂z(x, y)
∂y
∣∣∣∣x=a,y=b
= −b
c(33.8)
2016微積 I.34
を (25.6)に代入して,接平面を表す式
z = c − a
c(x − a) − b
c(y − b) (34.1)
が得られます。(32.9)を用いても同じ内容の式が得られます。
a(x − a) + b(y − b)c(z − c) = 0 より ax + by + cz = 3 (34.2)
ここで,a2 + b2 + c2 = 3を用いました。
2.6 パラメータで表された関数の微分
§̈ ¥¦桑村 §3.15 §̈ ¥¦川薩四 p.28
y を x で直接表すのではなく,パラメータ t を用いて,x と y の関係を間接的に表す場合があります。例えば,半径 R の円を
y =
{ √R2 − x2
−√
R2 − x2(34.3)
やx2 + y2 = R2 (34.4)
と表すのではなくx(t) = R cos t , y(t) = R sin t , 0 ≤ t < 2π (34.5)
と表すようなやり方です。
いま,x と y がパラメータ t によって
x = f(t) , y = g(t) (34.6)
と表されている場合を考えましょう。t = c の近くで関数 x = f(t),y = g(t) はそれぞれ次のようになります:
x(c + ∆t) = f(c) +df(t)
dt
∣∣∣∣t=c
∆t + O((∆t)2
), (34.7)
y(c + ∆t) = g(c) +dg(t)
dt
∣∣∣∣t=c
∆t + O((∆t)2
). (34.8)
∆x = x(c + ∆t) − x(c) = x(c + ∆t) − f(c) とすると,df(t)
dt
∣∣∣∣t=c
6= 0 の場合,式 (34.7)より
∆t = ∆x/ df(t)
dt
∣∣∣∣t=c
+ O((∆x)2
)(34.9)
2016微積 I.35
が得られます。ここで,∆t = O(∆x)を用いました。(2.189) を式 (34.8)に代入して x と y の関係式,
y = g(c) +
[dg(t)
dt
/df(t)
dt
]t=c
∆x + O((∆x)2
)(35.1)
が得られます。∆xの係数,[
dg(t)
dt
/df(t)
dt
]t=c
が x = f(c) での微分係数を与えます。
パラメータで表された関数の微分係数'
&
$
%
x と y がパラメータ t によって
x = f(t) , y = g(t) (35.2)
と表されているとします。y を x の関数と考えたときの x = f(c) での微分係数は以下で表されます;
dy
dx
∣∣∣∣x=f(c)
=
[dg(t)
dt
/df(t)
dt
]t=c
. §̈ ¥¦桑村 p.103 §̈ ¥¦川薩四 (2.11) (35.3)
ただし,df(t)
dt
∣∣∣∣t=c
6= 0 とします。
注意 ! 逆関数の微分の式を用いた (35.3)の導出は以下のようになります;x = f(t) の逆関数を t = h(x) と書きます。y = g(h(x)) の導関数は合成関数の微分の式 (17.5)より
dy
dx=
dg(h(x))
dx=
dg(t)
dt
∣∣∣∣t=h(x)
dh(x)
dx(35.4)
となります。さらに逆関数の微分の式 (23.3)よりdh(x)
dx= 1
/ df(t)
dt
∣∣∣∣t=h(x)
なので
dy
dx=
dg(h(x))
dx=
dg(t)
dt
/df(t)
dt
∣∣∣∣t=h(x)
(35.5)
がえられます。
例題 2.6.1 パラメータ t を用いて表された曲線
x = cosh(t) , y = sinh(t) (35.6)
の t = log 2 での接線を表す式を書きなさい。
2016微積 I.36
解説dx(t)
dt= sinh(t) ,
dy(t)
dt= cosh(t) (36.1)
となります。elog 2 = 2より,
cosh(log 2) =2 + 1
2
2=
5
4, sinh(log 2) =
2 − 12
2=
3
4(36.2)
となるので,t = log 2 で x = 5/4 , y = 3/4となります。
また,この点での微分係数 dy/dx|x=5/4は式 (35.3)より
dy
dx
∣∣∣∣x=5/4
=cosh(t)
sinh(t)
∣∣∣∣t=log 2
=5
3(36.3)
となります。従ってこの点での接線は次の式で表されます;
y =3
4+
5
3
(x − 5
4
)=
5x − 4
3. (36.4)
� ��� � ���� � ���� � ����
�
� �
� �
�
�
x
y
細い線が接線を示します。
注意 ! 指数関数を組み合せた関数
cosh x =ex + e−x
2, sinh x =
ex − e−x
2(36.5)
を双曲線関数と呼びます。(§̈ ¥¦桑村 p,109 §̈ ¥¦川薩四 p.87 ) 3角関数,cos xや sin x,と似た記号が使われていますが,関数の性質も似ています;
・sinh xと cosh xの間の関係式cosh2x − sinh2x = 1 . (36.6)
・加法定理
cosh(x + y) = cosh x cosh y + sinh x sinh y , (36.7)
sinh(x + y) = sinh x cosh y + cosh x sinh y . (36.8)
・ 微分公式d cosh x
dx= sinh x,
d sinh x
dx= cosh x . (36.9)
(参考) 3角関数に性質が似ているのは,後に紹介する3角関数と指数関数をつなぐ関係式 (オイラーの公式)があるためです;
eix = cos x + i sin x . §̈ ¥¦桑村 p.100 §̈ ¥¦川薩四 p.169 (36.10)
2016微積 I.37
注意 ! パラメータ t が時刻を表す変数で (x(t) , y(t))が時刻 t の物体の座標の場合,ベクトル
~v(t) =(dx(t)
dt,
dy(t)
dt
)(37.1)
を物体の速度ベクトルと呼びます (§̈ ¥¦桑村 p.106 ) t = cでの接線を表す式 ((35.1)の右辺の第 3項を無視した式)
∆y =
[dg(t)
dt
/df(t)
dt
]t=c
∆x (37.2)
より
∆x : ∆y =df(t)
dt
∣∣∣∣t=c
:dg(t)
dt
∣∣∣∣t=c
=dx(t)
dt
∣∣∣∣t=c
:dy(t)
dt
∣∣∣∣t=c
(37.3)
となるので,点 (x(c) , y(c))での接線は,時刻 t = c での速度ベクトルの向き ~v(c) を向いていることがわかります。
例題 2.6.2 パラメータ t を用いて表された曲線
x = et cos(t) , y = et sin(t) (37.4)
の t = π/2 での接線を表す式を書きなさい。なお,この曲線は “対数らせん”と呼ばれます。
解説dx(t)
dt= et
(cos(t) − sin(t)
),
dy(t)
dt= et
(sin(t) + cos(t)
)(37.5)
となります。t = π/2 で x = 0 , y = eπ/2 なので,この点での微分係数 dy/dx|x=0は
dy
dx
∣∣∣∣x=0
=et
(sin(t) + cos(t)
)et
(cos(t) − sin(t)
)∣∣∣∣∣∣t=π/2
=eπ/2(1 + 0)
eπ/2(0 − 1)= −1 (37.6)
となります。従ってこの点での接線は次の式で表されます;
y = eπ/2 − 1(x − 0) = eπ/2 − x . (37.7)
-25 -20 -15 -10 -5 0 5
-2.5
0
2.5
5
7.5
10
x
y
細い線が接線を示します。
2016微積 I.38
3 微分の応用
3.1 平均値の定理¶ ³平均値の定理を使うと,
√1.001
.=. 1 という概算に加えて,誤差は 0.0005 未満である,
という情報が得られます。µ ´平均値の定理 §̈ ¥¦桑村 定理 3.13,p.81 §̈ ¥¦川薩四 定理 2.2,p.31'
&
$
%
関数 f(x) が [a, b]で連続,(a, b)で微分可能な場合,
f(b) − f(a)
b − a= f ′(c) (38.1)
をみたす c (a < c < b) が (すくなくとも1つ)存在する。
注意 ! 平均値の定理は a > bの場合にも成り立ちます。その場合は,(38.1)をみたす c
(b < c < a)が (すくなくとも1つ)存在するということになります。
導出の手順
(1) [a, b]で連続で,f(a) = f(b)となる,定数でない関数 f(x) は区間 (a, b) 内で最大値あるいは最小値をとる。
(2) 更に,f(x) が (a, b) で微分可能な場合,関数が最大値あるいは最小値をとる点 x = c で微分係数は 0となる;f ′(c) = 0。これをロル (Rolle)の定理 (§̈ ¥¦桑村 定理 3.14 §̈ ¥¦川薩四 定理 2.1 )と呼びます。
(3)
F (x) = f(x) −{
f(b) − f(a)b − a
(x − a) + f(a)}
(38.2)
とし,F (x)に対してロルの定理を用いると,f(x)についての平均値の定理が得られる。
例題 3.1.1 関数の近似値平均値の定理を用いて,(0.9999)8 の近似値を 1 としたときの誤差を見積りなさい。
解説 (38.1)を分母を払った形で書くと
f(b) = f(a) + f ′(c) (b − a), ∃ c ∈ (a , b)(あるいは ∃ c ∈ (b , a)
)(38.3)
となります。f(b) を真の値,f(a) を近似値と考えると,右辺の第2項,f ′(c) (b − a),が誤差を表すことになります。
f(x) = x8,a = 1 , b = 0.9999とすると,f ′(x) = 8x7なので,誤差を表す部分の絶対値に対して,次の不等式が成り立ちます:
|f ′(c)(b − a)| = 8c7 × 0.0001 < 0.0008 . (38.4)
2016微積 I.39
ここで c < 1 を用いました。これより誤差の大きさ (絶対値)が 0.0008 より小さいことがわかります。
(0.9999)8 = 0.9992002799 · · · (39.1)
なので 1 との差は 0.000799720 · · ·となり,誤差の見積もりが正しいことがわかります。実は,2 階微分,3 階微分 · · · を使うとさらに詳しい情報を得ることができます。その究極が「テイラー展開(後出)」です。
例題 3.1.2 平均値の定理を用いて,√
1.001 の近似値を 1 としたときの誤差を見積りなさい。
解説 f(x) =√
x,a = 1 , b = 1.001として,平均値の定理を用います。f ′(x) =1
2√
xなので,
誤差を表す部分の絶対値に対して,次の不等式が成り立ちます:
|f ′(c) (b − a)| =0.001
2√
c<
0.001
2= 0.0005 . (39.2)
ここで 1 < cより,1√c
< 1となることを用いました。これより,誤差の大きさが 0.0005より
小さいことがわかります。実際に√
1.001 を計算すると√
1.001 = 1.000499875 · · · (39.3)
となるので,1との差は 0.000499875 · · ·となり,誤差の見積りが正しいことがわかります。
例題 3.1.3 不等式の証明平均値の定理を用いて,x > 0 なら log x ≤ x − 1 であることを示しなさい。
解説 (38.3) で f(x) = log x, b = x, a = 1 とすると,f ′(x) =1
xなので,x > 1 のときは,
log x =1
c(x − 1), ∃ c ∈ (1, x)
となります。ここで,1/c < 1, x − 1 > 0 であることを用いると例題の不等式が得られます。0 < x < 1 のときも同様,x = 1 のときは等号が成り立ちます。
平均値の定理を少し拡張した形で覚えておきましょう:
コーシー (Cauchy)の平均値の定理 §̈ ¥¦桑村 定理 3.17, p.88'
&
$
%
f(t),g(t)がともに [a, b] で連続,(a, b) で微分可能で,かつ f ′(t) 6= 0の場合
g(b) − g(a)
f(b) − f(a)=
g′(c)
f ′(c)(39.4)
をみたす c (a < c < b) が (すくなくとも1つ)存在する。ただし,f(b) 6= f(a)とする。
2016微積 I.40
注意 ! (プリント p.35の “パラメータで表された関数の微分係数” の式 (35.3)にあわせて) 教科書の式で,x を t に変え, f と g を入れ替えました。
注意 ! (39.4)で f(t) = tとすると,平均値の定理 (38.1)(で xを tに,f を gに置き換えた式)
になります。
注意 !
F (x) = g(x) − g(a) − g(b) − g(a)
f(b) − f(a)
(f(x) − f(a)
)(40.1)
に対して,Rolleの定理を用いると (39.4)が導けます。
注意 ! (39.4)は次の形に書けます:
f(b) − f(a) : g(b) − g(a) = f ′(c) : g′(c) . (40.2)
t を時刻を表す変数,x = f(t) , y = g(t)を時刻 tでの物体の座標と考えると (40.2)は,平面上を運動する物体の時刻 t = a から時刻 t = b までの位置の変化を表すベクトル(変位ベクトル)
−→AB =
(f(b) − f(a) , g(b) − g(a)
)(40.3)
と同じ向きの速度ベクトル ~v(c) =(f ′(c) , g′(c)
)が運動の途中 (a < c < b)に必ず存
在することを示しています。
t a=
t b=
t c=
A
B
ABuuuuur
( )cvr
(参考) 物体が空間を運動する場合は上は成り立ちません。例えば物体が x軸の正の向きにらせん運動をする場合;
~r(t) =(x(t) , y(t) , z(t)
)=
(2t , cos(t) , sin(t)
), (40.4)
なので~r(2π) − ~r(0) =
(4π , 0 , 0
)(40.5)
は x 軸方向を向くベクトルですが,速度ベクトルは
~v(t) =d~r(t)dt
=(2 , − sin(t) , cos(t)
)(40.6)
となり,x 軸方向を向く時刻はありません。
2016微積 I.41
.
3.2 関数の増減と極値
平均値の定理により,導関数の符号と関数の増減を関係づけることができます。
導関数の符号と関数の増減 §̈ ¥¦桑村 §3.10 §̈ ¥¦川薩四 §7.1
'
&
$
%
・区間 I で f ′(x) > 0 =⇒ f(x)は I で (単調に)増加する。
・区間 I で f ′(x) < 0 =⇒ f(x)は I で (単調に)減少する。
・ x = a で f ′(a) = 0の場合
x < a で f ′(x) < 0 かつ x > a で f ′(x) > 0 =⇒ f(x) は x = a で極小となる。
x < a で f ′(x) > 0 かつ x > a で f ′(x) < 0 =⇒ f(x) は x = a で極大となる。
注意 ! f(x) が x = a で極小値あるいは極大値をとるならば,f ′(a) = 0となりますが,逆はかならずしも成り立ちません。例えば,f(x) = x3は x = 0で f ′(0) = 0となりますが,x = 0
は極値 (極小値と極大値をまとめてこう呼びます。) ではありません。(x3は単調増加関数。)
例題 3.2.1 関数のグラフの概形次の関数
f(x) = (x − 1) e−x2
(41.1)
の導関数の符号から,−∞ < x < ∞ での関数の増減を調べ,y = f(x) のグラフの概形を描きなさい。極値の位置と値を明記してください。
解説 導関数は以下のようになります;
df(x)
dx=
d
dx
((x − 1) e−x2
)=
d(x − 1)
dxe−x2
+ (x − 1)d e−x2
dx
= e−x2
+ (x − 1) (−2x) e−x2
= −(2x2 − 2x − 1
)e−x2
. (41.2)
e−x2
> 0 なので df(x)/dxの正負は
−(2x2 − 2x − 1
)= −2
(x − 1 −
√3
2
)(x − 1 +
√3
2
)(41.3)
で決まります。導関数の符号と 0となる点を表 (増減表)にまとめると
x · · · 1−√
32
· · · 1+√
32
· · ·df(x)dx
− 0 + 0 −f(x) ↘ −
√3+12 exp
“
−1 +√
32
” ↗ √3−12 exp
“
−1 −√
32
” ↘極小 極大
となります。これより極小値を与える x 座標は x =1 −
√3
2,極大値を与える x 座標は x =
1 +√
3
2である
ことがわかります。 limx→±∞
f(x) = 0なので,y = f(x) の
グラフの概形は右図のようになります。
� � ��� � �
����� �
���
���� �
����
2016微積 I.42
.
3.3 不定形の極限
コーシーの平均値の定理を用いて,不定形の極限計算に便利なロピタルの定理を導くことができます。
ロピタル (l’Hospital)の定理 §̈ ¥¦桑村 p.89 §̈ ¥¦川薩四 p.116
'
&
$
%
・0/0 型の不定形関数 f(t),g(t)は t < c で微分可能であり, lim
t→c−0f(t) = 0 , lim
t→c−0g(t) = 0とする。こ
のとき,
もし limt→c−0
dg(t)
dt
/df(t)
dt= A ならば lim
t→c−0
g(t)
f(t)= A (42.1)
となる。
・∞/∞ 型の不定形関数 f(t),g(t)は t < c で微分可能であり, lim
t→c−0f(t) = ∞ , lim
t→c−0g(t) = ∞とする。
このとき
もし limt→c−0
dg(t)
dt
/df(t)
dt= A ならば lim
t→c−0
g(t)
f(t)= A (42.2)
となる。
ここで,cが ∞の場合や,A = ±∞の場合にも (42.1)や (42.2)は成り立ちます。c < t で微分可能な場合は,左極限 lim
t→c−0のかわりに右極限 lim
t→c+0を考えます。
(参考) f(t),g(t) を t をパラメータとする x-y 平面上の曲線 {x = f(t) , y = g(t)} を表す関数と考えると,(42.1)や (42.2)は,この曲線の傾きが原点 (0, 0)の近く (0/0型の場合)や,無限遠 (∞/∞型の場合)で A に近づく場合,
y = A x + o(x) (42.3)
という関係式が成り立つことを主張しています。ここで o(x) は,0/0型の場合は limx→0
o(x)x
= 0 となる
量,つまり,x より速く 0 に近づく無限小を表しています。また∞/∞型の場合は limx→∞
o(x)x
= 0 とな
る量,つまり,x より遅く ∞ に近づく無限大を表しています。
ロピタルの定理の証明は,最も基本的な場合 (0/0型の不定形で c が ∞ でない場合)については教科書 (§̈ ¥¦桑村 p.89 ),それ以外の場合は,例えば “ 笠原晧司,「微分積分学」(サイエンス社), §3-1,§3-2” などを参考にしてください。
注意 ! ロピタルの定理は,必ず limt→c−0
f(t) = 0 , limt→c−0
g(t) = 0 等となっていることを確かめ
てから使いましょう。例えば,以下の様な間違いをしてはいけません;
limx→0
x2 + 1
cos x
まちがい= lim
x→0
2x
− sin x= − lim
x→0
2
cos x= −2 . (42.4)
2016微積 I.43
(参考) 次のような間違いにも気をつけましょう。0/0 型の不定形の極限,
limx→0 + 0
x2 sin(
1x
)ex − 1
, (43.1)
を求めるために,分子の導関数と分母の導関数の比の極限
limx→0+0
2x sin(
1x
)− cos
(1x
)ex
= − limx→0+0
cos(
1x
)(43.2)
を考えた。この関数は x → 0 + 0で−1と+1の間を振動して極限値をもたないので,(43.1)は極限値をもたないと (誤って)判断した。実際には
limx→0 + 0
x2 sin(
1x
)ex − 1
= limx→0 + 0
x
ex − 1× lim
x→0 + 0x sin
(1x
)= 1 × 0 = 0 (43.3)
と,極限値は 0となります。ロピタルの定理は (42.1)や (42.2)の右辺が極限値Aを持つ (,あるいは±∞に発散する) 場合には,左辺が極限値Aを持つ (,あるいは±∞に発散する)という定理で,右辺が振動して極限値を持たない場合には左辺も極限値を持たない,という定理ではありません。
例題 3.3.1 ロピタルの定理を用いて limx→∞
x3/2
exを求めなさい。
解説 式 (42.2)で c が ∞ の場合と考えましょう。
limx→∞
x3/2
ex= lim
x→∞
dx3/2
dxdex
dx
= limx→∞
3
2
x1/2
ex=
3
2lim
x→∞
dx1/2
dxdex
dx
=3
4lim
x→∞
x−1/2
ex= 0 . (43.4)
注意 ! 上の例題のように,ロピタルの定理を複数回使うと,任意の α > 0について
limx→∞
xα
ex= 0 (43.5)
を示すことができます。つまり,x → ∞ のとき ex は どんな xα (α > 0) よりも速く大きくなることがわかります。
例題 3.3.2 ロピタルの定理を用いて limx→∞
log(x)
xαを求めなさい。ただし α > 0とします。
解説 やはり,(42.2)で c が ∞ の場合と考えます。
limx→∞
log(x)
xα= lim
x→∞
d log(x)dx
d xα
dx
= limx→∞
1x
αxα−1=
1
αlim
x→∞
1
xα= 0 . (43.6)
上の式より,x → ∞ のとき log(x) は どんな xα (α > 0) よりも遅く大きくなることがわかります。
例題 3.3.3 ロピタルの定理を用いて limx→∞
(x − 1
x + 1
)x
を求めなさい。
2016微積 I.44
解説(
x − 1
x + 1
)x
= ey,すなわち
y = log
(x − 1
x + 1
)x
= x log
(x − 1
x + 1
)=
log(
x−1x+1
)1x
(43.7)
とおいて,0/0型の極限 limx→∞
y を考えてみます。
limx→∞
y = limx→∞
log(x − 1) − log(x + 1)1x
ロピタル=
1x−1
− 1x+1
− 1x2
= − limx→∞
2x2
x2 − 1ロピタル
= − limx→∞
4x
2x= −2 . (44.8)
なお,上ではロピタルの定理を 2回使いましたが,
− limx→∞
2x2
x2 − 1= − lim
x→∞
2
1 − 1/x2= − 2
1 − 0= −2 (44.9)
と考えてもかまいません。以上より,
limx→∞
(x − 1
x + 1
)x
= limx→∞
ey = exp(
limx→∞
y)
= e−2 (44.10)
となります。なお,上式の 2番目の等式で,指数関数が連続であることを使いました。
3.4 高次の微分
導関数や偏導関数が微分可能な場合,高次の導関数や偏導関数を計算することができます。
・高次導関数 §̈ ¥¦桑村 §3.12 §̈ ¥¦川薩四 §2.5
関数 y = f(x) の導関数df(x)
dxが微分可能なとき導関数の導関数
d
dx
(df(x)
dx
)を
d2f(x)
dx2,
d2
dx2f(x) ,
d2y
dx2, y′′ , f ′′(x)
などと書き (第)2次導関数とか (第)2階導関数と呼びます。同様に関数 y = f(x) を n 回微分して得られる関数を
dnf(x)
dxn,
dn
dxnf(x) ,
dny
dxn, y(n) , f (n)(x) (44.11)
などと書き (第)n次導関数とか (第)n階導関数と呼びます。
注意 ! 0次の導関数は元の関数のこととします;
d0f(x)
dx0= f(x) . (44.12)
2016微積 I.45
.
n! = n · (n − 1) · · · · 2 · 1 , n の階乗, 0! = 1
例題 3.4.1 関数 f(x) =1
xの n次の導関数を求めなさい。
解説 規則性を見つけるために,1次,2次,3次の導関数を計算してみましょう;
df(x)
dx=
dx−1
dx= −x−2 ,
d2f(x)
dx2= −dx−2
dx= (−1)(−2)x−3 ,
d3f(x)
dx3= (−1)(−2)
dx−3
dx= (−1)(−2)(−3)x−4 . (45.1)
これより以下が得られます;
dn
dxn
(1
x
)= (−1)(−2) · · · (−n)x−n−1 = (−1)n n!
xn+1. (45.2)
例題 3.4.2 関数 f(x) = sin(2x)の n次の導関数を求めなさい。
解説 規則性を見つけるために,1次 ∼ 4次の導関数を計算してみましょう;
df(x)
dx=
d sin(2x)
dx= 2 cos(2x) ,
d2f(x)
dx2= 2
d cos(2x)
dx= −22 sin(2x)
d3f(x)
dx3= −22d sin(2x)
dx= −23 cos(2x),
d4f(x)
dx4= −23d cos(2x)
dx= 24 sin(2x) . (45.3)
これ以降は 2nをのぞけば繰り返しなので以下が得られます;
dn sin(2x)
dxn=
(−1)` 22` sin(2x) ; n = 2` , ` = 1, 2, · · ·
(−1)` 22`+1 cos(2x) ; n = 2` + 1 , ` = 0, 1, · · ·. (45.4)
・高次偏導関数 §̈ ¥¦桑村 §5.9 §̈ ¥¦川薩四 §3.5
多変数関数の場合も繰り返し偏微分できる場合には高階偏導関数を考えることができます。例えば,3 変数関数 f(x, y, z) を順に x, y, z に関して偏微分したとき,つまり
∂
∂z
(∂
∂y
(∂f(x, y, z)
∂x
))(45.5)
は,∂3
∂z∂y∂xf(x, y, z) または fxyz(x, y, z), (45.6)
などと書きます。また,まず x に関して 2 回,次に z に関して 1 回偏微分したとき,つまり
∂
∂z
(∂
∂x
(∂f(x, y, z)
∂x
))(45.7)
は,∂3
∂z∂x2f(x, y, z) または fxxz(x, y, z) (45.8)
などと書きます。
2016微積 I.46
.
log(AαBβ) = α log A + β log B
注意 ! 何回でも偏微分可能な関数 (つまり “普通”の関数,数学用語ではC∞級関数と呼びます§̈ ¥¦桑村 p.185 )については,微分する独立変数の順序が変わっても偏導関数は同じになります。つまり
∂2
∂x∂yf(x, y) =
∂2
∂y∂xf(x, y) (46.1)
や∂3
∂x2∂yf(x, y) =
∂3
∂x∂y∂xf(x, y) =
∂3
∂y∂x2f(x, y) (46.2)
が成り立ちます。以下,この講義では (特に注意しない限り) 偏微分係数,偏導関数は微分する独立変数の順序が変わっても同じになる場合を扱います。
(参考) (46.1)が成り立つための正確な条件や証明は§̈ ¥¦桑村 p.184 や§̈ ¥¦川薩四 p.47 を参照してください。ま
た,(46.1)が成り立たない例については§̈ ¥¦川薩四 p.49 を参照してください。
例題 3.4.3 次の関数
f(x, y) =x2y
x + y(46.3)
について,2次の偏導関数 fxy(x, y) =∂2f(x, y)
∂y∂x,fyx(x, y) =
∂2f(x, y)
∂x∂y,を求めなさい。
解説 x と y について順番に微分していきます。ここでは,まず (46.3)の両辺の絶対値の対数をとってから微分してみます。対数をとると
log |f(x, y)| = 2 log |x| + log |y| − log |x + y| (46.4)
が得られます。左辺を x で偏微分すると
∂ log |f(x, y)|∂x
=d log |u|
du
∣∣∣∣u=f(x,y)
∂f(x, y)
∂x=
1
u
∣∣∣∣u=f(x,y)
∂f(x, y)
∂x=
∂f(x, y)
∂x
/f(x, y) (46.5)
となります。一方,右辺を x で偏微分すると
2∂ log |x|
∂x+
∂ log |y|∂x
− ∂ log |x + y|∂x
=2
x+ 0 − 1
x + y(46.6)
となります。従って
fx(x, y) =∂f(x, y)
∂x= f(x, y)
(2
x− 1
x + y
)= f(x, y)
x + 2y
x(x + y)=
xy(x + 2y)
(x + y)2(46.7)
が得られます。この例のように,関数がいくつかの因子の積となっている場合,対数をとってから微分すると計算の見通しが良くなる場合があります。これを対数微分法と呼びます。(§̈ ¥¦桑村 p.78 §̈ ¥¦川薩四 p.76 )
2016微積 I.47
同様に,(46.4)の両辺を y で偏微分すると,
fy(x, y)
f(x, y)= 2
∂ log |x|∂y
+∂ log |y|
∂y− ∂ log |x + y|
∂y= 0 +
1
y− 1
x + y=
x
y(x + y)(47.1)
が得られ,これより
fy(x, y) =∂f(x, y)
∂y= f(x, y)
x
y(x + y)=
x2y
x + y
x
y(x + y)=
x3
(x + y)2(47.2)
が得られます。
次に,(46.7)の両辺 (の絶対値)の対数をとった等式
log |fx(x, y)| = log |x| + log |y| + log |x + 2y| − 2 log |x + y| (47.3)
の両辺を y で偏微分すると
fxy(x, y)
fx(x, y)=
∂
∂y
(log |x| + log |y| + log |x + 2y| − 2 log |x + y|
)= 0 +
1
y+
2
x + 2y− 2
x + y
=(x + 2y)(x + y) + 2y(x + y) − 2y(x + 2y)
y(x + 2y)(x + y)=
x(x + 3y)
y(x + 2y)(x + y)(47.4)
が得られ,これより
fxy(x, y) = fx(x, y)x(x + 3y)
y(x + 2y)(x + y)=
xy(x + 2y)
(x + y)2
x(x + 3y)
y(x + 2y)(x + y)=
x2(x + 3y)
(x + y)3(47.5)
となります。同様に,(47.2)の両辺 (の絶対値)の対数をとった等式
log |fy(x, y)| = 3 log |x| − 2 log |x + y| (47.6)
の両辺を x で偏微分すると
fyx(x, y)
fy(x, y)=
∂
∂x
(3 log |x| − 2 log |x + y|
)=
3
x− 2
x + y=
x + 3y
x(x + y)(47.7)
が得られ,これより
fyx(x, y) = fy(x, y)x + 3y
x(x + y)=
x3
(x + y)2
x + 3y
x(x + y)=
x2(x + 3y)
(x + y)3(47.8)
となります。
(参考) (47.5)と (47.8)より,原点や y = −x以外では fxy(x, y) = fyx(x, y)が成り立つことが分かります。一方,原点では,(47.5)が連続ではない (原点 (x, y) = (0, 0)への近付け方で関数の値が異なる)ことを反映して,fxy(0, 0) 6= fyx(0, 0)となります。実際,(46.7)より y軸上で fx(0, y) = 0なので,
fxy(0, 0) = 0。一方,(47.2)より x軸上で fy(x, 0) =x3
x2= xなので,fyx(0, 0) = 1となります。
2016微積 I.48
4 テイラー (Taylor)展開
¶ ³この講義のクライマックスです。以下のような等式をテイラー展開と言います。
f(x) = f(a) + f 0(a)(x − a) +1
2!f 00(a)(x − a)2 + · · ·
· · · +1
n!f (n)(a)(x − a)n + · · ·
いろいろな所で使うので,まずは計算できるようになりましょう。µ ´4.1 関数の多項式近似
§̈ ¥¦桑村 p.96 §̈ ¥¦川薩四 p.98
例題 4.1.1 f(x) = ex とする。以下の関係を満たす 3 次式 g(x) を求めなさい。
g(0) = f(0), g′(0) = f ′(0), g′′(0) = f ′′(0), g′′′(0) = f ′′′(0) . (48.1)
解説 g(x) = a0 + a1x + a2x2 + a3x
3 とおけば,
g(0) = a0, g′(0) = a1, g′′(0) = 2a2, g′′′(0) = 3 · 2 a3 (48.2)
となり,f(0) = f ′(0) = f ′′(0) = f ′′′(0) = 1 なので,a0, a1, a2, a3 を求めて,
g(x) = 1 + x +1
2!x2 +
1
3!x3 (48.3)
となります。これを一般化して,f(x) = ex と,x = 0 での n 次以下のすべての微分係数が一致するような n 次式 gn(x) を考えると,
gn(x) = 1 + x +1
2!x2 +
1
3!x3 + · · · + 1
(n − 1)!xn−1 +
1
n!xn =
n∑k=0
xk
k!(48.4)
となることがわかります。例題の g(x) は g3(x) のことです。なお, k! は k の階乗と呼ばれる次で定義される量です;
k! =
{k · (k − 1) · · · 3 · 2 · 1 ; k = 1, 2, 3 · · · 自然数
1 ; k = 0. (48.5)
また記号n∑
k=0
は kについての 0から nまでの和を意味します;
n∑k=0
c(k) = c(0) + c(1) + c(2) + · · · + c(n − 1) + c(n) . (48.6)
2016微積 I.49
.
−1 0
1
y
x
y = f(x)
y = g (x)1
y = g (x)2
−1 0
1
y
x
y = f(x)
y = g (x)3
y = g (x)4
図 4-1 f(x) = ex と近似多項式 g1(x), g2(x), g3(x), g4(x)
図 4-1 は f(x) = ex と g1(x), g2(x), g3(x), g4(x) のグラフを比較したものです。n が大きくなり,多項式の次数が増えるにつれ,gn(x)は f(x) をより正確に近似していることがわかります。
例題 4.1.2 一般の (何回も微分できる)関数 f(x) について,以下の関係を満たす n 次式 g(x)
を求めなさい。
g(a) = f(a), g′(a) = f ′(a), g′′(a) = f ′′(a), · · · , g(n)(a) = f (n)(a) . (49.1)
解説 n 次式なので g(x) = c0 + c1x + c2x2 + · · · + cnx
n とおいて係数 {c0, · · · , cn} を決めることも可能ですが,微分した後,x = aを代入するので
g(x) = a0 + a1(x − a) + a2(x − a)2 + · · · + an(x − a)n =n∑
k=0
ak(x − a)k (49.2)
とおくほうが便利です。微分する際は,(x − a)k を展開しないようにしましょう;
g′(x) =dg(x)
dx=
d
du
(a0 + a1u + 2a2u
2 + · · · + anun)∣∣∣∣
u=x−a
d(x − a)
dx
=(a1 + 2a2u + · · · + nanun−1
)∣∣∣u=x−a
= a1 + 2a2(x − a) + · · · + nan(x − a)n−1
=n∑
k=1
kak(x − a)k−1 , (49.3)
g′′(x) =d
dxg′(x) =
d
du
(a1 + 2a2u + · · · + nanun−1
)∣∣∣∣u=x−a
d(x − a)
dx
=(2a2 + · · · + n(n − 1)anun−2
)∣∣∣u=x−a
= 2a2(x − a) + · · · + n(n − 1)an(x − a)n−2
=n∑
k=2
k(k − 1)ak(x − a)k−2 , (49.4)
g′′′(x) =d
dxg′′(x) =
d
du
n∑k=2
k(k − 1)akuk−2
∣∣∣∣∣u=x−a
d(x − a)
dx=
n∑k=3
k(k − 1)(k − 2)akuk−3
∣∣∣∣∣u=x−a
=n∑
k=3
k(k − 1)(k − 2)ak(x − a)k−3 , (49.5)
...
g(n)(x) = n(n − 1) · · · 1 an = n! an . (49.6)
2016微積 I.50
上の式に x = a を代入すると,それぞれ,最初の (x − a)0 = 1の項以外は 0になるので,
g(a) = a0 , g′(a) = a1 , g′′(a) = 2 · 1 a2 , g′′′(a) = 3 · 2 · 1 a3 , · · · , g(n)(a) = n! an , (50.1)
つまり,g(k)(a) = k! ak , k = 0, 1, · · · , n (50.2)
が得られます。従って,条件 (49.1)から
ak =f (k)(a)
k!(50.3)
が得られます。以上より,x = a で n次までの微分係数の値が f(x) と一致するような n次の多項式は
g(x) = f(a) + f ′(a)(x − a) +1
2!f ′′(a)(x − a)2 + · · · + 1
n!f (n)(a)(x − a)n
=n∑
k=0
f (k)(a)(x − a)k
k!(50.4)
となることがわかります。
4.2 テイラー展開 (1変数関数)
(50.4)は関数 f(x)の x = a のまわりでの n次の項までの テイラー展開と呼ばれます。テイラー展開と元の関数 f(x) の差については,平均値の定理を拡張した次の式が成り立ちます:
テイラー (Taylor)の公式 §̈ ¥¦桑村 定理 3.21,p.100 §̈ ¥¦川薩四 §6.4'
&
$
%
関数 f(x)の x = a のまわりでの n次の項までのテイラー展開
g(x) = f(a) + f ′(a)(x − a) +1
2!f ′′(a)(x − a)2 + · · · + 1
n!f (n)(a)(x − a)n
=n∑
k=0
f (k)(a)(x − a)k
k!(50.5)
と元の関数 f(x) の差は以下の様に表せる;
f(x) = g(x) + Rn+1 , Rn+1 =(x − a)n+1
(n + 1)!f (n+1)(c) . (50.6)
ただし, c は区間 (a , x)内の適当な数 (a < c < x)である。Rn+1は剰余項と呼ばれる。
注意 ! テイラーの公式は a > xの場合にも成り立ちます。その場合は,(50.6)をみたす c
(x < c < a)が (すくなくとも1つ)存在するということになります。
注意 ! (50.5)で a = 0の場合をマクローリン (Maclaurin)展開と呼ぶ場合があります。
注意 ! (50.6)で n = 0の場合が平均値の定理,f(x) = f(a) + f ′(c)(x − a),になります。
注意 ! 1次の項までのテイラー展開,f(a) + f ′(a)(x − a),は x = a での接線を表す式となります。
2016微積 I.51
(参考) 剰余項はいろいろな表し方があります。例えば積分を使った式もあります:
Rn+1 =1n!
∫ x
a(x − t)nf (n+1)(t)dt . §̈ ¥¦川薩四 (6.9) (51.1)
(参考) (50.6)は,例えば以下のように導出されます;演習問題【8-4】の手続きを進めて,次のような多項式を作ります;
G1(x) = f(a) +f(b) − f(a)
b − a(x − a) ,
Gn+1(x) = Gn(x) + Cn+1(x − a)n (x − b) ,
Cn+1 =1
(b − a)n+1
(f(b) −
n∑k=0
(b − a)k
k!f (k)(a)
). (51.2)
Gn+1(x)は n + 1 次の多項式で,x = a及び x = bでの関数の値と,x = aでの n次までの微分係数の値が f(x)と等しくなります;
Gn+1(b) = f(b) , Gn+1(a) = f(a) , G′n+1(a) = f ′(a) , · · · , G
(n)n+1(a) = f (n)(a) . (51.3)
従って,F (x) = f(x) − Gn+1(x) (51.4)
とすると,F (b) = 0 , F (a) = F ′(a) = F ′′(a) = · · · = F (n)(a) = 0 (51.5)
が成り立ちます。まず,F (a) = F (b) = 0 なので,平均値の定理より,F ′(c1) = 0 となる a < c1 < b が存在します。次に,
F ′(a) = F ′(c1) = 0より,F ′′(c2) = 0となる a < c2 < c1 の存在がわかります。更に,F ′′(a) = F ′′(c2) = 0より,F (3)(c3) = 0となる a < c3 < c2の存在がわかります。このように,平均値の定理をくりかえし使うと,結局,F (n)(a) = F (n)(cn) = 0より
F (n+1)(cn+1) = 0 , a < cn+1 < cn < · · · < c1 < b (51.6)
がわかります。F (n+1)(x) = f (n+1)(x) − (n + 1)! Cn+1 (51.7)
なので,(51.2)より,
f(b) =n∑
k=0
(b − a)k
k!f (k)(a) +
(b − a)n+1
(n + 1)!f (n+1)(cn+1) , a < cn+1 < b (51.8)
が得られます。尚,n次のテイラー展開 g(x) =n∑
k=0
f (k)(a)(x − a)k
k!と Gn+1(x) には次の関係があります;
Gn+1(x) = g(x) + Cn+1 (x − a)n+1 . (51.9)
(50.6) で n → ∞としたとき,剰余項が 0となる ( Rn+1 → 0)場合は
f(x) =∞∑
n=0
f (n)(a)
n!(x − a)n (51.10)
が成り立ちます。(51.10)の右辺の無限べき級数が収束するかどうかは,関数 f(x)の性質や,展開点 x = aの位置,あるいは xと aの間の距離,|x−a|,によって決まります。実は,(51.10)右辺の無限級数は |x−a| < rで収束,|x−a| > rで発散します。この r を収束半径 (§̈ ¥¦川薩四 p.100 )
と呼びます。
2016微積 I.52
例えば,f(x) =1
1 − xの x = 0での n 次のテイラー展開,g(x),を考えてみましょう。演習
問題【8-2】(3)より
f (n)(x) =n!
(1 − x)n+1⇒ f (n)(0) = n! (52.1)
なので,
g(x) =n∑
k=0
xk =1 − xn+1
1 − x(52.2)
となります。上式右辺の 2つ目の等式では等比級数の和の公式を使いました。従って |x| < 1ならば lim
n→∞g(x) = f(x)となることがわかります。この例では収束半径は 1 です。
べき級数の収束半径については次が知られています;
べき級数の収束半径と項別微分 §̈ ¥¦川薩四 p.95, §A.5'
&
$
%
無限のべき級数で定義された関数 f(x) を考える;
f(x) =∞∑
n=0
cn (x − a)n . (52.3)
次の極限
` = limn→∞
∣∣∣∣ cn
cn−1
∣∣∣∣ (52.4)
が存在するとき,(52.3)右辺のべき級数の収束半径は r = 1/`となる。つまり,この無限級数は a − r < x < a + rで収束し,|x − a| > rで収束しない。ただし,` = 0のとき r = ∞,` = ∞のとき r = 0とする。また,f(x)の導関数は無限級数の各項を項別に微分した級数で得られる;
df(x)
dx=
∞∑n=1
cnn (x − a)n−1 . (52.5)
つまり,無限の和をとる操作と微分する操作の順序を交換してもよい。導関数 df(x)/dx の収束半径は f(x) の収束半径と同じになる。
(参考) |x − a| = rでの級数の収束は別に判定する必要があります。また,(52.4)の極限が存在しない場合の収束半径の計算法などについては§̈ ¥¦川薩四 §A.5 を参照してください。
(参考) 実は積分も項別に行えます;∫f(x)dx = (定数) +
∞∑n=0
cn
n + 1(x − a)n+1 . (52.6)
テイラー展開は,一般の (性質のよくわからない)関数を性質のよくわかった関数 (x − a)nの和で表現
するという意味を持っています。
2016微積 I.53
(参考) limn→∞
Rn∗1 = 0なら (51.10)右辺の無限級数が f(x)に収束しますが,(51.10)右辺の無限級数が
収束しても,その値が f(x)にならないような例外的な関数もあります。次の関数,
f(x) =
{0 ; x ≤ 0
e−1
x2 ; x > 0, (53.1)
は,x = 0 での微分係数が全て 0(f (n)(0) = 0),なので,(51.10)右辺 (a = 0の場合)の無限級数は 0となり収束しますが,元の関数 f(x) には一致しません。この講義では (51.10)が収束半径の内部で成り立つような “普通”の関数のみを考えます。(このような関数は解析関数と呼ばれます。)
基本的な関数のテイラー展開 §̈ ¥¦桑村 p.98 §̈ ¥¦川薩四 p.112'
&
$
%
ex =∞∑
n=0
xn
n!= 1 + x +
x2
2+
x3
6+ · · · , r = ∞ . (53.2)
sin x =∞∑
k=0
(−1)k x2k+1
(2k + 1)!= x − x3
6+
x5
120+ · · · , r = ∞ . (53.3)
奇関数なので x の奇数べきしか現れない。(-1)が一つおきに現れる。
cos x =∞∑
k=0
(−1)k x2k
(2k)!= 1 − x2
2+
x4
24+ · · · , r = ∞ . (53.4)
偶関数なので x の偶数べきしか現れない。(-1)が一つおきに現れる。
1
1 − x=
∞∑n=0
xn = 1 + x + x2 + x3 + · · · , r = 1 . (53.5)
初項 1,項比 x の等比級数。
log(1 − x) = −∞∑
n=1
xn
n= −x − x2
2− x3
3+ · · · , r = 1 . (53.6)
d log(1 − x)/dx = −1/(1 − x)から,(53.5)と関係がつく。
ここで r は収束半径を表します。つまり,級数は −r < x < r で収束します。
注意 ! (53.6)の代わりに次式を使ってもよいでしょう:
log(1 + x) =∞∑
n=1
(−1)n−1
nxn = x − x2
2+
x3
3+ · · · , r = 1 . (53.7)
与えられた関数のテイラー展開を,(51.10)右辺の定義に従って求めるには,高次の微分係数,f (n)(a),が必要なので,計算が面倒になる場合があります。上に挙げた基本的な関数のテイラー展開に関係づけれないかを考えましょう。
2016微積 I.54
例題 4.2.1 以下の関数 f(x) の x = a における (無限次の) テイラー展開を求めなさい。また,収束半径を求めなさい。
(1) f(x) =1
1 − x, a =
1
2(2) f(x) =
1
1 − x, a = −1
2(3) f(x) = e3x , a = 1
(4) f(x) = log x , a = 3 (5) f(x) = sin(3x) cos(3x) , a = 0
(6) f(x) =1
(1 − x)2, a = 3 (7) f(x) = sin(4x) , a =
π
12
解説 関数 f(x) の x = a についての無限次のテイラー展開とは f(x) を (x − a)のべきで
f(x) =∞∑
n=0
cn (x − a)n (54.1)
のように表すということです。従って,この問題では係数 cnを計算することが求められています。(50.5)や (51.10)より,
cn =1
n!
dnf(x)
dxn
∣∣∣∣x=a
(54.2)
なので,高次の微分係数が計算できれば,cn を求めることができます。しかし,高次導関数の計算は複雑になることが多いので,ここでは,まず,(53.2) ∼ (53.6) に与えた基本的な関数のテイラー展開に関係づけて∆x = x − aのべき級数の形を求めてみます。
(1)
1
1 − x=
1
1/2 − (x − 1/2)=
2
1 − 2∆x
(53.5)= 2
∞∑n=0
(2∆x)n =∞∑
n=0
2n+1
(x − 1
2
)n
. (54.3)
従って,cn = 2n+1 , n = 0, 1, 2, · · · . (54.4)
級数は,|2∆x| < 1で収束するので,収束半径は1
2,つまりこの級数は 0 < x < 1 で収束
します。
(51.10)に従って計算する場合は,演習問題 8-2の (3),あるいは (52.1),より
f (n)(x) =n!
(1 − x)n+1(54.5)
なので,
cn =f (n)(1/2)
n!=
1
(1/2)n+1= 2n+1 , n = 0, 1, 2, · · · (54.6)
となります。
2016微積 I.55
(2)
1
1 − x=
1
3/2 − (x + 1/2)=
2
3
1
1 − 23∆x
(53.5)=
2
3
∞∑n=0
(2∆x
3
)n
=∞∑
n=0
(2
3
)n+1 (x +
1
2
)n
. (55.1)
従って
cn =
(2
3
)n+1
, n = 0, 1, 2, · · · . (55.2)
級数は,∣∣∣∣2∆x
3
∣∣∣∣ < 1で収束するので,収束半径は3
2,つまりこの級数は −2 < x < 1 で収
束します。
(3)
e3x = e3(1+x−1) = e3e3(x−1) (53.2)= e3
∞∑n=0
(3(x − 1)
)n
n!= e3
∞∑n=0
3n
n!(x − 1)n . (55.3)
従って,
cn = e3 3n
n!, n = 0, 1, 2, · · · . (55.4)
級数は,|3(x − 1)| < ∞で収束するので,収束半径は無限大。
(51.10)に従って計算する場合は,
f (n)(x) =dne3x
dxn= 3ne3x (55.5)
なので,
cn =f (n)(1)
n!=
3ne3
n!, n = 0, 1, 2, · · · (55.6)
となります。
(4)
log x = log(3 + (x − 3)) = log
(3
(1 +
∆x
3
))= log 3 + log
(1 +
∆x
3
)(53.6)= log 3 +
∞∑n=1
(−1)n+1
n
(∆x
3
)n
= log 3 +∞∑
n=1
(−1)n+1
n 3n(x − 3)n . (55.7)
従って,
c0 = log 3 , cn =(−1)n+1
n 3n, n = 1, 2, · · · . (55.8)
級数は,∣∣∣∣∆x
3
∣∣∣∣ < 1で収束するので,収束半径は 3,つまりこの級数は 0 < x < 6 で収束
します。
2016微積 I.56
.
sin(2α) = 2 sin(α) cos(α)
(51.10)に従って計算する場合は,f (n)(x)の計算が必要になります。規則性を見つけるために,低次の導関数を求めてみます;
df(x)
dx=
d log(x)
dx=
1
x= x−1 ,
d2f(x)
dx2=
dx−1
dx= −x−2 ,
d3f(x)
dx3= −dx−2
dx= (−1)22x−3 ,
d4f(x)
dx4= (−1)22
dx−3
dx= (−1)33 · 2 x−4 ,
d5f(x)
dx5= (−1)33 · 2dx−4
dx= (−1)44 · 3 · 2 x−5 . (56.1)
これよりdnf(x)
dxn= −(−1)n (n − 1)!
xn, n = 1, 2, · · · , (56.2)
となります。従って
c0 = f(3) = log 3 , cn =f (n)(3)
n!= −(−1)n (n − 1)!
3n n!= −(−1)n
n 3n, n = 1, 2, · · · (56.3)
が得られます。上式の 3番目の等式で,
n! = n · (n − 1)! , n = 1, 2, 3, · · · (56.4)
を用いました。
(5) 3角関数の積は加法定理を用いて変形してから考えましょう;
sin(3x) cos(3x) =1
2sin(6x)
(53.3)=
1
2
∞∑k=0
(−1)k (6x)2k+1
(2k + 1)!
=1
2
∞∑k=0
(−1)k 62k+1
(2k + 1)!x2k+1 . (56.5)
従って,
c2k = 0 , k = 0, 1, 2, · · · , (56.6)
c2k+1 =(−1)k
2
62k+1
(2k + 1)!, k = 0, 1, 2, · · · . (56.7)
級数は,|6x| < ∞で収束するので,収束半径は無限大。
2016微積 I.57
.
sin(α + β) = sin(α) cos(β) + cos(α) sin(β)
(6)
f(x) =d
dx
1
1 − x(57.1)
なので,まず1
1 − xを x = 3のまわりでテイラー展開します;
1
1 − x=
1
−2 − (x − 3)= −1
2
1
1 + ∆x/2
(53.5)= −1
2
∞∑n=0
(−1)n
(∆x
2
)n
. (57.2)
これより,
1
(1 − x)2= −
∞∑n=0
(−1)n
2n+1
d
dx(∆x)n = −
∞∑n=1
(−1)nn
2n+1(∆x)n−1
= −∞∑
n′=0
(−1)n′+1(n′ + 1)
2n′+2(∆x)n′
=∞∑
n=0
(−1)n(n + 1)
2n+2(x − 3)n . (57.3)
上で,和に現れる変数を nから n′ = n − 1に変え,さらに,n′を nに置き換えました。従って,
cn =(−1)n(n + 1)
2n+2, n = 0, 1, 2, · · · . (57.4)
級数は,∣∣∣∣∆x
2
∣∣∣∣ < 1で収束するので,収束半径は 2,つまりこの級数は 1 < x < 5 で収束
します。
(7)
sin(4x) = sin(4(x − π
12
)+
π
3
)= sin(4∆x) cos
(π
3
)+ cos(4∆x) sin
(π
3
)=
1
2sin(4∆x) +
√3
2cos(4∆x)
(53.3),(53.4)=
1
2
∞∑k=0
(−1)k (4∆x)2k+1
(2k + 1)!+
√3
2
∞∑k=0
(−1)k (4∆x)2k
(2k)!
=1
2
∞∑k=0
(−1)k 42k+1
(2k + 1)!
(x − π
12
)2k+1
+
√3
2
∞∑k=0
(−1)k 42k
(2k)!
(x − π
12
)2k
. (57.5)
従って,
c2k =
√3
2(−1)k 42k
(2k)!, c2k+1 =
1
2(−1)k 42k+1
(2k + 1)!, k = 0, 1, 2, · · · . (57.6)
級数は,|4∆x| < ∞で収束するので,収束半径は無限大。
2016微積 I.58
(51.10)に従って計算する場合は,(45.4)と同様に考えて計算できる高次の導関数,
dn sin(4x)
dxn=
(−1)k 42k sin(4x) ; n = 2k , k = 1, 2, · · ·
(−1)k 42k+1 cos(4x) ; n = 2k + 1 , ` = 0, 1, · · ·. (58.1)
より,
∞∑n=0
f (n)(a)
n!(x − a)n =
∞∑k=0
(−1)k 42k sin(
π3
)(2k)!
(x − π
12
)2k
+∞∑
`=0
(−1)k 42k+1 cos(
π3
)(2k + 1)!
(x − π
12
)2k+1
=
√3
2
∞∑k=0
(−1)k 42k
(2k)!
(x − π
12
)2k
+1
2
∞∑k=0
(−1)k 42k+1
(2k + 1)!
(x − π
12
)2k+1
(58.2)
となります。
例題 4.2.2 以下の関数
f(x) =1
x2 − 3x + 2
の x = 0 における (無限次の) テイラー展開を求めなさい。
解説 まず,f(x)を部分分数分解 (§̈ ¥¦桑村 p.132 §̈ ¥¦川薩四 p.81 ) します;
1
x2 − 3x + 2=
1
(x − 1)(x − 2)=
1
x − 2− 1
x − 1= −1
2
1
1 − x/2+
1
1 − x
(53.5)= −1
2
∞∑n=0
(x
2
)n
+∞∑
n=0
xn =∞∑
n=0
(1 − 1
2n+1
)xn . (58.3)
従って f(x)を
f(x) =∞∑
n=0
cn xn (58.4)
と表した場合の係数は
cn = 1 − 1
2n+1, n = 0, 1, 2, · · · (58.5)
となります。
無限級数∞∑
n=0
(x
2
)n
の収束半径は 2,∞∑
n=0
xnの収束半径は 1ですが,全体の収束半径は,小さ
い方の 1となります。これは,係数の比の極限からもわかります;
limn→∞
cn
cn−1
= limn→∞
1 − 1/2n+1
1 − 1/2n= 1 . (58.6)
2016微積 I.59
例題 4.2.3 以下の無限べき級数
g(x) =∞∑
n=1
cnxn , cn = n2
をp(x)
q(x)の形に表しなさい。ここで,p(x)と q(x)は多項式です。このような
多項式多項式
の形の関数
を有理関数と呼びます。
解説
f(x) =1
1 − x=
∞∑n=0
xn (59.1)
の両辺を微分したり,x を乗除したりして,右辺が問題に与えられた無限級数になるようにしてみましょう; まず,
df(x)
dx=
∞∑n=1
nxn−1 ⇒ xdf(x)
dx=
∞∑n=1
nxn ⇒ d
dx
(x
df(x)
dx
)=
∞∑n=1
n2xn−1 , (59.2)
より
xd
dx
(x
df(x)
dx
)=
∞∑n=1
n2xn . (59.3)
f(x) =1
1 − xを左辺に代入すると,
xd
dx
(x
d(1 − x)−1
dx
)= x
d
dx
(x (1 − x)−2
)= x
((1−x)−2+2x(1−x)−3
)=
x(1 + x)
(1 − x)3. (59.4)
従って,次が得られますx(1 + x)
(1 − x)3=
∞∑n=1
n2xn . (59.5)
尚,
limn→∞
cn+1
cn
= limn→∞
(n + 1)2
n2= lim
n→∞
(1 +
1
n
)2
= 1 (59.6)
より,この級数の収束半径は 1 となります。つまり,この級数は −1 < x < 1で収束します。
2016微積 I.60
.
4.3 関数の増減と凹凸
§̈ ¥¦桑村 §3.13
関数 y = f(x) の x = a での 2次のテイラー展開
g(x) = f(a) + f ′(a)(x − a) +1
2f ′′(a)(x − a) 2 (60.1)
を考えます。x = a での 1次および 2次の微分係数の符号によって決まるこの 2次関数の形から x = a の近くでの関数の増減と凹凸がわかります;
・f ′(a) > 0 , f ′′(a) > 0
( a, f(a) )
x = a で f(x) は増加,下に凸なグラフ
・f ′(a) < 0 , f ′′(a) > 0
x = a で f(x) は減少,下に凸なグラフ
・f ′(a) < 0 , f ′′(a) < 0
x = a で f(x) は減少,上に凸なグラフ
・f ′(a) > 0 , f ′′(a) < 0
x = a で f(x) は増加,上に凸なグラフ
・f ′(a) = 0 , f ′′(a) > 0
x = a で f(x) は極小(下に凸なグラフ)
・f ′(a) = 0 , f ′′(a) < 0
x = a で f(x) は極大(上に凸なグラフ)
2016微積 I.61
・ 極値:極大値と極小値をまとめて極値と呼びます。(§3.2, 微積 I.42)
f ′(a) = 0であり,x = a の前後で f ′(x) の符号が変化する。 → f(a) が極値
・ 変曲点:曲線の凹凸が変わる点
f ′′(a) = 0であり,x = a の前後で f ′′(x) の符号が変化する。 →(a , f(a)
)が変曲点
注意 ! 視覚にたよらない関数の凹凸の定義は§̈ ¥¦桑村 定義 3.4,p.92を参照してください。
1次および 2次の導関数の符号を調べることにより,関数の概形を凹凸を含めて描くことができます。
例題 4.3.1 - 2 ≤ x ≤ 2 での関数 f(x) = −x3
3+ x の増減,凹凸を調べ,y = f(x) のグラフ
の概形を描きなさい。
解説 1次および 2次の導関数は以下のようになります;df(x)
dx= −x2 + 1 ,
d2f(x)
dx2= −2x . (61.1)
� � ��� � � �
2
2
( )d f x
dx
x
� � ��� � � �
( )df xdx
x
1次および 2次の導関数の符号と 0となる点を表にまとめると
x −2 · · · −1 · · · 0 · · · 1 · · · 2
f ′(x) − 0 + 0 −f ′′(x) + 0 −f(x) 2
3 ±- −23(極小) °6 0(変曲点)
²-23(極大) ?̄ −2
3
となります。これから f(x) の概形を以下のように描くことができます:
x
( )f x
1− 10
2016微積 I.62
注意 ! もし 1次の導関数の符号のみを調べた場合は;x = −1 が極小で x = 1 が極大であることはわかります。また, x = −1 の近くで f(x) が下に凸,x = 1 の近くで上に凸であることはわかりますが,どの点で下に凸から上に凸に変わるかはわかりません。
4.4 多変数関数のテイラー展開
§̈ ¥¦桑村 §5.10 §̈ ¥¦川薩四 §6.8
1変数関数 f(x) を x = a のまわりで (x − a)のべき級数で展開したものがテイラー展開でした。同様に,2 変数関数 f(x, y) を (x, y) = (a, b) のまわりで,その点における関数の値や偏微分係数の値を用いて,x − a と y − b のべき級数で表した式がテイラー展開の 2 変数関数版です。
f(x, y) から次のように,独立変数が tの1変数関数 F (t) を定義します;
F (t) = f(a + ht, b + kt) . (62.1)
ただし,h = x − a, k = y − b とします。すると F (t) は F (0) = f(a, b), F (1) = f(x, y) を満たします。F (t) の t = 0 におけるテイラーの展開
F (t) =∞∑
n=0
F (n)(0)
n!tn (62.2)
に t = 1 を代入すると,
F (1) = F (0) + F ′(0) +F ′′(0)
2!+ · · · + F (n)(0)
n!+ · · · (62.3)
となります。ここで,2変数関数の合成関数の微分 (28.10)より
dF (t)
dt=
d
dtf(a + ht, b + kt) = fx(a + ht, b + kt)h + fy(a + ht, b + kt)k , (62.4)
d2F (t)
dt2= h
d
dtfx(a + ht, b + kt) + k
d
dtfy(a + ht, b + kt)
= h(fxx(a + ht, b + kt)h + fxy(a + ht, b + kt)k
)+k
(fyx(a + ht, b + kt)h + fyy(a + ht, b + kt)k
)= fxx((a + ht, b + kt)h2 + 2fxy((a + ht, b + kt)hk + fyy((a + ht, b + kt)k2 (62.5)
などが得られます。これらを (62.3)に代入すると以下が得られます;
2016微積 I.63
.
2変数関数のテイラー展開 §̈ ¥¦桑村 p.187'
&
$
%
2 変数関数 f(x, y) の (x, y) = (a, b) におけるテイラー展開は以下のようになる;
f(x, y) = f(a, b) + fx(a, b) h + fy(a, b) k
+1
2fxx(a, b)h2 + fxy(a, b)hk +
1
2fyy(a, b)k2 + · · · . (63.1)
ここで,h = x − a , k = y − b。
注意 ! (63.1)の右辺の第 1行までの式 (1次のテイラー展開) は,曲面 z = f(x, y) の (x, y) = (a, b) での接平面の方程式 (25.6)
z = f(a, b) + fx(a, b)(x − a) + fy(a, b)(y − b) (63.2)
となっています。
注意 ! (63.1)の右辺の · · · までの式が 2次のテイラー展開となります。これは,x と y の 2 次式
g(x, y) = A00 + A10(x − a) + A01(y − b) + A20(x − a)2 + A11(x − a)(y − b) + A02(y − b)2 (63.3)
で, (x, y) = (a, b) での関数の値と,2次以下のすべての偏微分係数が f(x, y) のそれと一致するように係数を決めたものと同じです;
f(0, 0) = g(0, 0), fx(0, 0) = gx(0, 0), fy(0, 0) = gy(0, 0),fxx(0, 0) = gxx(0, 0), fxy(0, 0) = gxy(0, 0), fyy(0, 0) = gyy(0, 0) . (63.4)
(参考) 2変数関数のテイラー展開の一般項は以下の形になります§̈ ¥¦桑村 定理 5.8, p.187 §̈ ¥¦川薩四 (6.37),p.120;
f(x, y) =∞∑
n=0
1n!
(h
∂
∂x+ k
∂
∂y
)n
f(x, y)∣∣∣∣x=a,y=b,h=x−a,k=y−b
(63.5)
例題 4.4.1 次の関数 f(x, y) =√
2x2 + 3y2 の (x, y) = (1, 2)での 2次のテイラー展開を求めなさい。
解説 1次及び 2次の偏導関数
fx(x, y) =2x√
2x2 + 3y2, fy(x, y) =
3y√2x2 + 3y2
, (63.6)
fxx(x, y) =6y2
(2x2 + 3y2)√
2x2 + 3y2, fyy(x, y) =
6x2
(2x2 + 3y2)√
2x2 + 3y2, (63.7)
fxy(x, y) = fyx(x, y) = − 6xy
(2x2 + 3y2)√
2x2 + 3y2(63.8)
に (x, y) = (1, 2)を代入すると,以下の値が得られます;
f(1, 2) =√
14 , fx(1, 2) =2√14
, fy(1, 2) =6√14
, (63.9)
fxx(1, 2) =12
7√
14, fyy(1, 2) =
37√
14, fxy(1, 2) = − 6
7√
14. (63.10)
以上より,2次のテイラー展開 g(x) は以下となります;
g(x) =√
14 +2√14
((x− 1) + 3(y − 2)
)+
17√
14
(6(x − 1)2 − 6(x − 1)(y − 2) +
32(y − 2)2
). (63.11)
2016微積 I.64
5 複素平面・オイラーの公式
¶ ³複素数とは 2 つ 1 組の実数 x, y で z = x + iy と書かれる数です。これは実数と同じく足し算,引き算,掛け算,0 以外での割り算ができる体系です。µ ´
5.1 複素数の演算
例題 5.1.1 複素数 z1 = x1 + iy1, z2 = x2 + iy2 について次の計算をしなさい。ただし,z2 6= 0
とする。
(1) z1 + z2 (2) z1z2 (3)z1
z2
(4) |z1| (5) z2
解説 複素数の計算は虚数単位 i を文字だと考えて普通に計算し,i2 が出てくれば i2 = −1 と置き換えるだけです。(1) は (x1 + x2) + i(y1 + y2),(2) は (x1x2 − y1y2) + i(x1y2 + y1x2),(3)
は少し工夫して
x1 + iy1
x2 + iy2
=x1 + iy1
x2 + iy2
· x2 − iy2
x2 − iy2
=(x1x2 + y1y2) + i(−x1y2 + y1x2)
x22 + y2
2
となります。(4) は複素数の絶対値,(5) は共役複素数と呼ばれるもので,
|z1| =√
x21 + y2
1, z2 = x2 − iy2 (64.1)
というのが定義です。なお,複素数 z = x + iy の x を z の実部,y を虚部と呼び,それぞれx = Re z,y = Im z と書きます。虚部が 0 の複素数は実数になります。実数でない複素数を虚数,実部が 0 で z = iy の形をした虚数を純虚数と呼びます。複素数の絶対値 |z| =
√x2 + y2
は y = Im z = 0 ならば |z| = |x| となり,実数の絶対値と同じです。また,以下の関係が成り立ちます。
z1
z2
=z1z2
|z2|2, zz = |z|2, z + z
2= Re z,
z − z
2i= Im z
5.2 複素平面
例題 5.2.1 三つの複素数 z1 = 1 +√
3 i, z2 = −2i, z3 = −√
2 +√
2 i を複素平面上に図示しなさい。
解説 複素数 z = x + iy は二つの実数 x, y の組で表される数なので,横軸に x,縦軸に y をとって,平面上の点 (x, y) として表すことができます。複素数をこのように表すとき,この平面を複素平面,横軸を実軸,縦軸を虚軸と呼びます。z1, z2, z3 は図 5 に示されるようにそれぞれ平面上の点 (1,
√3), (0, −2), (−
√2,
√2) として表すことができます。
2016微積 I.65
Re
Im
1z
2z
3z
2
3
2− 1
2−
図 5 複素平面
5.3 複素数の極形式
§̈ ¥¦川薩四 p.168
例題 5.3.1 複素数 z = 2 + 2√
3 i を極形式で表しなさい。
解説 複素数 z = x + iy は複素平面上の点 (x, y) で表せますが,平面上の点 P (x, y) は原点をO として,線分 OP の長さ r と線分 OP が実軸の正方向となす角 θ を指定しても定めることができます(いわゆる極座標)。このとき,
r =√
x2 + y2 = |z|, x = r cos θ, y = r sin θ (65.1)
という関係が成り立つので,複素数 z は
z = r (cos θ + i sin θ) (65.2)
と表すことができます。これを複素数の極形式と呼びます。このとき,r = |z| を z の絶対値(64.1),θ を z の偏角と呼び,θ = arg z と書きます。例題の場合,
r = |z| =√
22 + 22 · 3 = 4, (65.3)
cos θ =1
2, sin θ =
√3
2より θ = arg z =
π
3+ 2nπ (n = 0,±1,±2, . . .) (65.4)
となるので,極形式は次のようになります(角度の範囲が指定されていないときは偏角は一つには定まらないので “+2nπ (n = 0,±1,±2, . . .)” が付いています)。
z = 4{
cos(π
3+ 2nπ
)+ i sin
(π
3+ 2nπ
)}(n = 0,±1,±2, . . .) . (65.5)
2016微積 I.66
5.4 オイラーの公式¶ ³実数の単位 1 と虚数の単位 i と代表的な無理数である π と e が勢ぞろいする不思議な関係式
eiı + 1 = 0
があります。この背景に「オイラーの公式」と呼ばれる公式があります。µ ´指数関数や 3角関数など,もともと実数を変数とする関数を複素数を変数とする関数に拡張するのにキーとなるのがテイラー展開です。例えば,指数関数 ex の x = 0 におけるテイラー展開
ex = 1 + x +1
2!x2 +
1
3!x3 +
1
4!x4 + · · · (66.1)
を考えます。この式の右辺に現われる計算は加減乗除だけです。ということは,x は実数でなく複素数だとしても形式的に右辺の計算はできます。つまり,複素数 z = x + iy に対して,指数関数 ez を
ez = 1 + z +1
2!z2 +
1
3!z3 +
1
4!z4 + · · · (66.2)
のように定義するわけです。ところで,上の式で z = iθ としてみましょう(θ は実数,i は虚数単位, つまり z が純虚数の場合です)。計算過程で i2 が出てきたら i2 = −1 とする以外はふつうに計算を進めれば,
eiθ =
(1 − 1
2!θ2 +
1
4!θ4 − · · ·
)+ i
(θ − 1
3!θ3 +
1
5!θ5 − · · ·
)(66.3)
となります。前に出てきた3角関数のテイラー展開 (53.4),(53.3) と比べると,この式の右辺の実部と虚部が,それぞれ cos θと sin θと一致することがわかります。まったく関係なさそうな指数関数と3角関数は複素数の世界では結びついていたのです。以上より次のオイラーの公式が得られます。
オイラー (Euler)の公式 §̈ ¥¦桑村 p.100 §̈ ¥¦川薩四 p.169®
©ªeiθ = cos θ + i sin θ . (66.4)
(66.4)で,θ → −θとした式e−iθ = cos θ − i sin θ (66.5)
と組み合わせれば,3角関数を指数関数で表す式
cos θ =eiθ + e−iθ
2, sin θ =
eiθ − e−iθ
2i= −i
eiθ − e−iθ
2(66.6)
が得られます。
2016微積 I.67
オイラーの公式は不思議なだけでなく,他の公式を思い出すのに役に立つことがあります。
注意 ! 3角関数の加法定理α, β を実数として
ei(α+β) = cos(α + β) + i sin(α + β) (67.1)
という等式が成り立ちますが,この式の左辺は指数法則により eiα eiβ と等しく,
eiα eiβ = (cos α + i sin α)(cos β + i sin β)
= (cos α cos β − sin α sin β) + i(sin α cos β + cos α sin β)(67.2)
となります。(67.1)と (67.2)の右辺の実部と虚部を比較すると3角関数の加法定理が簡単に(しかも sin, cos の加法定理がまとめて)導けます。
注意 ! 3角関数の微分(66.4)の左辺を θ で微分した式
ieiθ = i(
cos θ + i sin θ)
= − sin θ + i cos θ (67.3)
と右辺を θ で微分した式,d cos θ
dθ+ i
d sin θ
dθ, (67.4)
の実部と虚部を比較すると3角関数の微分の式
d cos θ
dθ= − sin θ ,
d sin θ
dθ= cos θ (19.2)′
が得られます。
注意 ! ド・モアブルの公式 §̈ ¥¦川薩四 p.170
絶対値が 1 の複素数はオイラーの公式より eiθ = cos θ + i sin θ と表されますが,この複素数の n 乗を考えると, (
eiθ)n
= einθ = cos(nθ) + i sin(nθ) (67.5)
となるので,まとめて(cos θ + i sin θ)n = cos(nθ) + i sin(nθ) (67.6)
という関係式が得られます。これをド・モアブル (de Moivre)の公式と言います。
例題 5.4.1 複素数 z = 2 + 2√
3 i に対し,z6 および z1/2 を求めなさい。
解説 例えば,z6 は複素数の掛け算を計算すれば求められますが,面倒です。こんなとき,複素数の極形式とオイラーの公式が威力を発揮します。例題では,
z = 4{
cos(π
3+ 2nπ
)+ i sin
(π
3+ 2nπ
)}(n = 0,±1,±2, . . .) (67.7)
と極形式で表されますが,これはオイラーの公式を使って,さらに
z = 4e i (π3+2nπ) (n = 0,±1,±2, . . .) (67.8)
2016微積 I.68
.
と表せます。従ってz6 =
(4e i (π
3+2nπ)
)6= 46 e i (2π+12nπ) (68.1)
となり,z6 = 46 {cos (2π + 12nπ) + i sin (2π + 12nπ)} = 46 (1 + 0i) = 4096 (68.2)
が得られます。この方法を用いれば,z1/2 も同様に,
z1/2 =(4e i (π
3+2nπ)
)1/2=
√4 e i (π
6+nπ) (n = 0,±1,±2, . . .) (68.3)
となるので,オイラーの公式より,
2(cos
π
6+ i sin
π
6
)=
√3 + i または 2
(cos
7π
6+ i sin
7π
6
)= −
√3 − i (68.4)
となります。
注意 ! z6 は n の値によりませんが,z1/2 は n が偶数と奇数の場合を考えて2つの異なる複素数となります。
例題 5.4.2 z3 = 27 を満たす複素数をすべて求めなさい。
解説 27は絶対値が 27,偏角 φがφ = 2nπ (n = 0,±1,±2, . . .)の複素数となります。z = r eiθ
とするとr3e i 3θ = 27e i φ (68.5)
よりr3 = 27 , 3θ = φ (68.6)
が得られます。これより,
r = 3 , θ =φ
3=
2nπ
3(n = 0,±1,±2, . . .) . (68.7)
従って,
z = 3e i 2nπ/3 = 3
(cos
2nπ
3+ i sin
2nπ
3
), (n = 0,±1,±2, . . .) (68.8)
となります。このうち異なる解は n = 0, 1 , 2 から得られます。以上より,解は
z1 = 3 (cos(0) + i sin(0)) = 3 , (68.9)
z2 = 3
(cos
2π
3+ i sin
2π
3
)= −3
2+ i
3√
3
2, (68.10)
z3 = 3
(cos
4π
3+ i sin
4π
3
)= −3
2− i
3√
3
2(68.11)
の3つとなります。ちなみに,複素平面上にこれらを図示すると,原点が中心で,頂点の一つが (1, 0) である正3角形の頂点になっています。
注意 !
z = (27)1/3 =(27e i 2πn
)1/3
= 3e i 2πn/3 (n = 0,±1,±2, . . .) (68.12)
と考えてもかまいません。
2016微積 I.69
.
複素数のまとめ §̈ ¥¦川薩四 第 9章'
&
$
%
x, y, r, θ は実数, r ≥ 0.
実/虚部表示 極表示
複素数 z =x + iy =reiθ
実部 Re z =x =r cos θ
虚部 Im z =y =r sin θ
絶対値 |z| =√
x2 + y2 =r (≥ 0)
偏角 arg z= θ (+2nπ)
(tan θ = yx)
複素共役 z̄ =x − iy =re−iθ
注意 ! z の複素共役を z̄ではなく z∗ と書く場合もあります。
x=Re z
y=Im z
0
z
θr
z-z
izx
y
複素平面
横軸に実部 x, 縦軸に虚部 y を描いたもの
・オイラーの公式 z = x + iy = reiθ, (x, y, r, θ は実数.)
・積と商 z1 = x1 + iy1 = r1eiθ1 , z2 = x2 + iy2 = r2e
iθ2
z1z2 = x1x2 − y1y2 + i(x2y1 + x1y2) = r1r2ei(θ1+θ2) (69.1)
z1
z2
=x1x2 + y1y2 + i(x2y1 − x1y2)
x22 + y2
2
=r1
r2
ei(θ1−θ2) (69.2)
z1 z2 = z1 z2 (69.3)
・ez の性質
e0 = e i 2π = 1 , e i π = −1. (69.4)
|ez| = ex , 特に |eiy| = 1. (69.5)
ez = ez̄ , 特に eiy = e−iy. (69.6)
・微分積分
d
dtezt = zezt. (69.7)∫
eztdt =1
zezt + C. (69.8)
・オイラーの公式を逆に解いたもの
sin θ =eiθ − e−iθ
2i= −i
eiθ − e−iθ
2, (69.9)
cos θ =eiθ + e−iθ
2, (69.10)
・複素共役, −1 倍, 逆数.
z̄ = reiθ = re−iθ, (69.11)
−z = −r(eiθ) = rei(θ+π), (69.12)
1
z=
1
reiθ=
1
re−iθ (69.13)
注意 ! (36.5)で紹介した双曲線関数と3角関数には次の関係があります;
cosh(ix) = cos(x) , sinh(ix) = i sin(x) , cos(ix) = cosh(x) , sin(ix) = i sinh(x) . (69.14)
2016微積 I.70
6 微分の応用 (II)
6.1 2 変数関数の極大・極小
§̈ ¥¦桑村 §5.1 §̈ ¥¦川薩四 §7.2
1変数関数 y = f(x) の場合,1次と 2次の導関数の値から,関数の極大や極小の位置を判定することができました (→微積 I.60);
f ′(a) = 0 ⇒
{f ′′(a) > 0 ; 極小f ′′(a) < 0 ; 極大
. (70.1)
同様に 2変数関数 z = f(x, y)の場合も,極大や極小の位置を 1次と 2次の偏導関数の値から判定することができます。まず,(62.1)で考えた
F (t) = f(a + ht, b + kt) (70.2)
という関数は,点 (a,b)を通り,ベクトル (h, k) と平行な直線上での f(x, y)の値を表します。F (t)の t = 0 での微分係数
dF (t)
dt
∣∣∣∣t=0
= fx(a, b)h + fy(a, b)k (70.3)
は,この直線上での f(x, y)のグラフの,点 (a, b)での傾きを表します。f(x, y)が (x, y) = (a, b)
で極値をとる場合には,どの方向への傾きも 0 に等しくなければならないので,h の係数も k
の係数も 0 に等しくなければなりません。従って,f(x, y) が (x, y) = (a, b) で極値をとるための必要条件として
fx(a, b) = 0 , fy(a, b) = 0 §̈ ¥¦桑村 p.190 §̈ ¥¦川薩四 p.128 (70.4)
が得られます。連立方程式 (70.4)から極値をとる点の候補 (a, b) を(場合によっては複数)求めることができます。この (a, b) を関数 f(x, y) の臨界点と言います。次に,臨界点での 2次までのテイラー展開
f(a + h, b + k) − f(a, b) =1
2
(fxx(a, b) h2 + 2fxy(a, b) hk + fyy(a, b) k2
)+ · · · (70.5)
を考えます。右辺の ()部分が h, k の値によらず常に正であれば,(a, b) の近くの (x, y) で,f(x, y) > f(a, b)となり f(x, y) は (x, y) = (a, b) で極小になります。逆に右辺の ()部分が常に負であれば,(a, b) の近くの (x, y) で,f(x, y) < f(a, b)となり f(x, y) は (x, y) = (a, b) で極大であることがわかります(これが正になったり負になったりする場合は極大でも極小でもありません)。
fxx(a, b) 6= 0 として(fxx(a, b) = 0 の場合は正負は確定しないので),(70.5)右辺の ()内を
fxx(a, b)
(h +
fxy(a, b)
fxx(a, b)k
)2
+fxx(a, b) fyy(a, b) − fxy(a, b)2
fxx(a, b)k2 (70.6)
2016微積 I.71
と平方完成すれば,これが h, k (h2 + k2 6= 0) の値によらず常に正となる条件は,
fxx(a, b) > 0 かつ fxx(a, b) fyy(a, b) − fxy(a, b)2 > 0 (71.1)
であることがわかります。同様に,常に負となる条件は,
fxx(a, b) < 0 かつ fxx(a, b) fyy(a, b) − fxy(a, b)2 > 0 (71.2)
となります。条件 (71.1)や (71.2)の第 2式は行列
H(a, b) =
(fxx(a, b) fxy(a, b)
fxy(a, b) fyy(a, b)
)(71.3)
の行列式が正になっているということです。行列 H(a, b) をヘッセ行列 (Hesse matrix),行列式 det H(a, b) をヘッシアン (Hessian) と言います(教科書 §̈ ¥¦桑村 p.191 で D と書かれている量が,det H(a, b) です。以上の結果をまとめると,以下が得られます;
2変数関数の極大・極小 §̈ ¥¦桑村 p.191定理 5.10 §̈ ¥¦川薩四 p.129定理 7.4'
&
$
%
(x, y) = (a, b)で fx(a, b) = 0 かつ fy(a, b) = 0の場合,
・det H(a, b) > 0の場合
fxx(a, b) > 0 あるいは fyy(a, b) > 0のとき,f(x, y)は (x, y) = (a, b)で極小
fxx(a, b) < 0 あるいは fyy(a, b) < 0のとき,f(x, y)は (x, y) = (a, b)で極大
・det H(a, b) < 0 の場合 極大でも極小でもない。(x, y) = (a, b) は鞍点または峠点(§̈ ¥¦川薩四 p.130 )と呼ばれる。
・det H(a, b) = 0 の場合 3次以上の偏微分係数を調べる必要がある。
注意 ! (70.5)右辺の ()内はヘッセ行列とベクトル (h, k)を使って
(h , k) H
(h
k
)(71.4)
と表せます。H は実対称行列なので,「線形代数及び演習 I」の第 6章で説明のあったように,直交行列 P で対角化でき,P で変換された新しい変数(
h
k
)= P
(u
v
)(71.5)
を用いると
(h , k) H
(h
k
)= (u , v)
(λ1 0
0 λ2
) (u
v
)= λ1u
2 + λ2v2 (71.6)
となります。ここで,λ1とλ2 は H の固有値です。(71.6)から,固有値が共に正なら (a, b)は極小を与え,固有値が共に負なら (a, b)は極大を与えることがわかります。上の条件 det H = λ1λ2 > 0
は固有値の符号が同じという条件を表しています。
2016微積 I.72
.
例題 6.1.1 2 変数関数
f(x, y) = −(x2 + y2)2 + 7(x2 + y2) − 6(x + y) (72.1)
の極値と,極値をとる点を求めなさい。
解説 まず,偏導関数が 0 となる条件から,極値をとる可能性のある点を求めます。(偏導関数は問題 11-1で計算しています。) 条件は
fx(x, y) = −4x(x2 + y2) + 14x − 6 = 0 , fy(x, y) = −4y(x2 + y2) + 14y − 6 = 0 (72.2)
となります。上の 2式の差,(x − y)
(2(x2 + y2) − 7
)= 0 (72.3)
より,x = yか x2 + y2 = 7/2となることがわかります。x2 + y2 = 7/2は (72.2)を満たさないので,x = yを (72.2)に代入して
0 = 4x3 − 7x + 3 = (x − 1)(2x − 1)(2x + 3) (72.4)
より,(x, y) = (1 , 1) , (1/2 , 1/2) , (−3/2 , −3/2) (72.5)
が極値をとる可能性のある点となります。2次の偏導関数は
fxx(x, y) = −12x2 − 4y2 + 14 , fyy(x, y) = −12y2 − 4x2 + 14 , fxy(x, y) = −8xy (72.6)
なので,それぞれの点でのヘッセ行列とその行列式は
H(1, 1) =
(−2 −8
−8 −2
), det H = −60 (72.7)
H(1/2, 1/2) =
(10 −2
−2 10
), det H = 96 , fxx = 10 > 0 (72.8)
H(−3/2,−3/2) =
(−22 −18
−18 −22
), det H = 160 , fxx = −22 < 0 (72.9)
となります。以上より,f(x, y) は (x, y) = (1/2,1/2) で極小値 f(1/2, 1/2) = −11/4,(x, y) =
(−3/2,− 3/2) で極大値 f(−3/2,−3/2) = 117/4,をとることがわかります。また,(1, 1)は鞍点となります。
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x
y
f(x, y) = −(x2 + y2)2 + 7(x2 + y2) − 6(x + y)
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x
y
f(x, y) の等高線
2016微積 I.73
6.2 条件付極値(ラグランジュの未定係数法)
§̈ ¥¦桑村 §5.13 §̈ ¥¦川薩四 §7.3
例題 6.2.1 斜辺の長さが√
2 である直角3角形で,面積が最大のものを求めなさい。
解説 直交する 2辺の長さをそれぞれ x と yとすると,この例は,(x, y) が条件
g(x, y) = x2 + y2 − 2 = 0 (73.1)
を満たしながら動くとき,関数
f(x, y) = xy , 3角形の面積の 2倍 (73.2)
が極値 (最大値)をとる点 (a, b) を求めるという問題になります。このような問題を条件付き極値問題と呼びます。一つの解法は,条件 g(x, y) = 0を y について解いた
y = ϕ(x) =√
2 − x2 (73.3)
を,f(x, y)に代入して,x だけの関数
F (x) = f(x, ϕ(x)) = x√
2 − x2 (73.4)
の極値を求める問題にしてしまうというやり方です;
0 =dF (x)
dx=
√2 − x2 − x2
√2 − x2
=2 − 2x2
√2 − x2
⇒ x = y = 1 . (73.5)
しかし,g(x, y) = 0を y について解くのが難しかったり,x と y を対等に扱いたい場合もあります。陰関数 ϕ(x)を陽に使わないで計算する方法を考えましょう。まず,(a, b)が f(x, y)の条件付きの極値を与えるとしましょう。gy(a, b) 6= 0であれば,x = a
の周りで陰関数 y = ϕ(x) が定まります。これを f(x, y) の式に代入した 1 変数関数 F (x) =
f(x, ϕ(x)) が x = a で極値をもつ必要条件は,微分係数を 0 とおいて,
0 =dF (x)
dx
∣∣∣∣x=a
=df(x, ϕ(x))
dx
∣∣∣∣x=a
= fx(a, b) + fy(a, b) ϕ′(a) (73.6)
となります。上式の 3番目の等式では,2変数関数の合成関数の微分の式 (28.10) を使いました。一方,ϕ′(a)は,x = a の近くの x について恒等的に成り立つ等式
g(x, ϕ(x)) = 0 (73.7)
を微分して得られる式gx(x, ϕ(x)) + gy(x, ϕ(x)) ϕ′(x) = 0 (73.8)
に x = a,ϕ(a) = b を代入して
ϕ′(a) = −gx(a, b)
gy(a, b)(73.9)
2016微積 I.74
となります (陰関数の微分の式 (31.6))。(73.9)を (73.6)に代入した式,
0 =fx(a, b)gy(a, b) − fy(a, b)gx(a, b)
gy(a, b). (74.1)
より,fx(a, b)gy(a, b) − fy(a, b)gx(a, b) = 0 (74.2)
が得られますが,この式は,g と f の偏微分係数の比が等しい,つまり,
gx(a, b) : fx(a, b) = gy(a, b) : fy(a, b) (74.3)
であることを示しています。比の値を λ(
= fx(a, b)/gx(a, b) = fy(a, b)/gy(a, b))とすれば,連
立方程式fx(a, b) − λgx(a, b) = 0, fy(a, b) − λgy(a, b) = 0 (74.4)
が得られます。また,最初の仮定が成り立たない,すなわち gy(a, b) = 0の場合には,gx(a, b) 6= 0
であれば g(x, y) = 0 を x について解いた式 x = ψ(y) を f(x, y)に代入して同様の手順で同じ式 (74.4)に到達します。
ラグランジュ(Lagrange)の未定係数法 §̈ ¥¦桑村 p.201定理 5.12 §̈ ¥¦川薩四 p.132'
&
$
%
条件 g(x, y) = 0のもとで f(x, y)が点 (a, b)で極値をとり,gx(a, b)と gy(a, b)の少なくとも一方が 0でなければ,ある定数 λ が存在して,{a, b, λ}は以下の連立方程式を満たす;
fx(a, b) − λgx(a, b) = 0, fy(a, b) − λgy(a, b) = 0 , (74.5)
g(a, b) = 0 . (74.6)
極値を与える点 (の候補)の計算手順は以下のようになります;
(1) 連立方程式 (74.5)をとりあえず λ は未定として解き a と b を λ で表す。
(2) g(a, b) = 0 に代入して λ の値を求める。
(3) 求められた λ の値より a と b の値を求める。
この計算手順をラグランジュの未定係数法 (未定乗数法)と呼びます。
注意 ! 上の手順で得られた (a, b)は極値を与える点の候補で,これが適当な解であるかは確かめる必要があります。
注意 ! gx(a, b) = gy(a, b) = 0 となる場合,すなわち,点 (a, b) が g(x, y) の特異点である場合は別に考えなければなりません。しかし,gx(a, b) = gy(a, b) = 0 となる (a, b)がさらに,条件 g(a, b) = 0を満たすことは稀なので,多くの場合,あまり気にする必要はありません。
2016微積 I.75
注意 ! x,y,と λ の関数L(x, y, λ) = f(x, y) − λg(x, y) (75.1)
を用いると,(74.5)と (74.6) は
Lx(x, y, λ) = 0 , Ly(x, y, λ) = 0 , Lλ(x, y, λ) = 0 (75.2)
と書けます。§̈ ¥¦川薩四 p.133, 注意 3
例題 6.2.1をラグランジュの未定係数法で解いてみましょう。
L(x, y) = f(x, y) − λg(x, y) = xy − λ(x2 + y2 − 2) (75.3)
とおいて,Lx = 0 , Ly = 0より
y − 2λx = 0 , x − 2λy = 0 . (75.4)
この式は (0 1/2
1/2 0
)(x
y
)= λ
(x
y
)(75.5)
と表せます。x = y = 0 は条件式を満たさないので,λ と (x, y) が行列(0 1/2
1/2 0
)(75.6)
の固有値と固有ベクトルであることがわかります。固有値は次の行列式が 0になるという条件
0 = det
(−λ 1/2
1/2 −λ
)= λ2 − 1
4=
(λ − 1
2
)(λ +
1
2
)(75.7)
より,λ = ±1/2となります。
固有値 λ = 1/2に対応する固有ベクトルは (x , y) = t(1 , 1)。これを条件 x2 + y2 = 2に代入して t = ±1より,(x, y) = (±1 , ±1)が極値を与える座標の候補となります。(例題では x とy は直角3角形の辺の長さなので x > 0 , y > 0でないと意味が付けれないのですが,ここでは元の意味を忘れて,条件 g(x, y) = 0 のもとで,f(x, y)の極値を求めるという問題と考えましょう。)
同様に固有値λ = −1/2に対応する固有ベクトルは (x , y) = t(1 ,−1)。これを条件x2 +y2 = 2
に代入して t = ±1より,(x, y) = (±1 , ∓1)が極値を与える座標の候補となります。
上で得られた座標を f(x, y) に代入して得られる値を比較して,(x, y) = (±1 , ±1)で f(x, y)
は最大値 1 をとることがわかります。また,(x, y) = (±1 , ∓1)で f(x, y) は最小値 -1 をとります。
注意 ! 行列や行列式を用いないで解答してもかまいません。例えば (75.4 )の 2番目の式より得られる y =
x
2λを 1番目の式に代入して整理した式(
4λ2 − 1)x = 0 (75.8)
2016微積 I.76
より x = 0 以外の解があるためには,(75.7)が成り立つ必要があることがわかります。以下は同じ。
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2 2 2x y+ =
x
y
( , ) 1f x y =
( , ) 1f x y = ( , ) 1f x y = −
( , ) 1f x y = −
f(x, y) の等高線と x2 + y2 = 2のグラフ
上の図より,極値を与える点では,f(x, y) =定数を満たす曲線 (f(x, y)の等高線)と,g(x, y) =
0により決まる曲線が接していることがわかります。
(参考) 2つの条件,g1(x, y, z) = 0 , g2(x, y, z) = 0 , (76.1)
のもとで f(x, y, z) の極値を求めたい場合は,2つの未定係数,λ1 , λ2,を含んだ次の関数
L(x, y, z, λ1, λ2) = f(x, y, z) − λ1g1(x, y, z) − λ2g2(x, y, z) (76.2)
を用います。Lx = 0 , Ly = 0 , Lz = 0 , Lλ1 = 0 , Lλ2 = 0 (76.3)
より極値を与える点の候補が得られます。例えば
f(x, y, z) = x + y − z , g1(x, y, z) = x2 + y2 + z2 − 1 , g2(x, y, z) = x + y + z (76.4)
の場合0 = Lx = 1 − 2λ1x − λ2 , 0 = Ly = 1 − 2λ1y − λ2 , 0 = Lz = −1 − 2λ1y − λ2 , (76.5)
より,
x =1 − λ2
2λ1, y =
1 − λ2
2λ1, z = −1 + λ2
2λ1. (76.6)
これを g2 = 0 に代入して,λ2 = 1/3が得られます。さらに g1 = 0に代入して,λ1 = ±√
23が得られます。これ
より,極値を与える点の候補として
(x, y, z) =(± 1√
6, ± 1√
6, ∓ 2√
6
)(76.7)
が得られます。f(x, y, z)に代入して,
f
(1√6
,1√6
, − 2√6
)=
4√6が最大値 ,
f
(− 1√
6, − 1√
6,
2√6
)= − 4√
6が最小値 (76.8)
となることがわかります。