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前回演習の答え合わせと復習 1.次の化合物の異性体を描いてみよう (1) (2) (3) (4) C4H8 CH7N C3H6O C4H6 3重結合SP炭素はまっすぐ アレン これは不安定分子 バリアの高い コンフォマー

前回演習の答え合わせと復習 - NAIST ISisw3.naist.jp/IS/Kawabata-lab/kensuke-nm/kindai2010/pdf/...相対立体配置と絶対立体配置 不斉炭素が2つ(以上)ある場合

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前回演習の答え合わせと復習

1.次の化合物の異性体を描いてみよう

(1) (2)

(3) (4)

C4H8 C2H7N

C3H6O C4H6

3重結合SP炭素はまっすぐ

アレン

これは不安定分子

バリアの高い  コンフォマー

2.下記のニューマン投影図を見てAとBの間の二面体角を記せ

(1) (2)

(3) (4)

A

B

B

A

B A

B

A

+120°

‐30° -­‐120°

-­‐90°

270°

240° 330°

3.以下の2つの化学構造の関係は、(a)エナンチオマー、(b)ジアステレオマー、    (c)幾何異性体、(d)コンフォーマー、(e)どれでもない、のいずれに当たるか記せ

(1) (2)

(3) (4)

(5) (6)

e) どれでもない(同じもの) a)  エナンチオマー(l-­‐  と d-­‐  のアラニン)

C) 幾何異性体

シス トランス

d)  コンフォーマー

b)ジアステレオマー a)エナンチオマー

炭素についた4つの手の先が  すべて異なる場合に光学活性

シクロヘキサンのコンフォメーション変化

アキシャルとイカトリアルが入れ替わる

面より上に 面より下に

CH3

H CH3

H

相対立体配置と絶対立体配置

不斉炭素が2つ(以上)ある場合

4通りの組み合わせ  (立体異性体)

対掌体

対掌体

ジアステレオマー

と描いたときに

も含めて一対の対称体を  表わしている場合がある

相対立体配置

と描いたときに

そのものだけを表わす場合は

絶対立体配置 (Absolute)

ブリッジヘッドの立体  

3.以下の2つの化学構造のうち、より安定であると思われる方を丸で囲め

(1) (2)

(3) (4)

(5) (6) CH3

CH3

CH3 H CH3

H

H

H

H

H H

H

OH

OH

OH H OH

H

H

H

H

H H

H

イカトリアル アキシャル シス トランス

トランス シス

シス トランス シス トランス

分子内水素結合によりシスが安定化

周囲に何もないか、ヘキサンなど非極性溶媒中では

水溶液など極性溶媒中では  

溶媒との水素結合により  

分子内水素結合による安定化はなく  トランスが安定でありうる  

δ+

δ+ δ-­‐

δ-­‐

計算化学 分子力場計算  MM    -­‐    Force  Field  量子化学計算            QM      -­‐    Quantum  Chemistry  (分子軌道法と密度汎関数法)  MO  /  DFT  分子動力学計算  MD

2010年6月15日  近畿大学農学部  

生命情報学&生命情報学実習  

奈良先端大・情報科学・比較ゲノム講座  中村建介

分子が3次元的なかたちを持っていることを理解する 3次元的な分子構造をChem3D上で構築する

分子が「柔らかさ」を持った形であることを理解する ポテンシャルエネルギー面を理解し、エネルギー最適化を行う

Chem3D上で分子動力学シミュレーションを行う

分子間に働く力について理解する 分子によって電荷の偏りがあり、正電荷と負電荷が引き合う

複数の分子を並べて安定な配向を探索する

ポテンシャルエネルギーを計算する方法が 何種類かあることを認識する

熱 = 分子振動

熱い、冷たい、暑い、寒い  と  

微少な分子の運動の激しさ

分子自身が動き回る運動    気体・液体  

分子内部の振動

周囲との衝突が全く起きない真空(宇宙空間)に  300Kの振動状態にある分子を置くとどうなるか?

a.    そのまま同じ温度で永久に振動を続ける

b.  次第に振動が激しくなる(温度が上がる)

c.  次第に振動が緩やかになる(温度が下がる)

d.  分子がばらばらに分解する

還元論

世界は分けてもわからない?

分けて分かることもある

階層的な分類:要素の理解から全体像を理解する

分子は小さい

Molecular  Biology  of  Cell より

生駒山 若草山

西大寺

大和八木

分子は小さい

さまざまな生体分子 分子のかたち

コレステロール

レチナール

アスコルビン酸  ビタミン C

ジベレリン

モルヒネ

カフェイン

尿酸

テトロドトキシン

コエンザイムQ10

タキソール

カプサイシン

ピレトリン

分子のかたち

計算化学で知りたいこと 1.  低分子の3次元構造やコンフォメーションを正確に決める

分子のかたちと相互作用

トリメトプリムが  外れないので

ジヒドロ葉酸が還元されない 生理機能の阻害  

バクテリアが死ぬ  

2.  タンパク質レセプタと、低分子の結合の強さを計算する

より強く(弱く)結合するもの、をデザインできれば役に立つ

計算化学で知りたいこと

真面目に解く

適切に近似  

MM2  

AM1  

RHF/6-­‐31G  

分子力場  

量子化学  

かたちが決まる原理

B3LYP/6-­‐31G(d)  

分子力場 MM2  

Sp3混成

Sp2混成

Sp混成

4つ全部混ざる

2py以外が混ざる

2sと2pxが混ざる

2pyはそのままの形  

2pyと2pzはそのままの形  

1

3 2

4

1

1

2

2 3

4つのσ軌道ができる  

3つのσ軌道ができる  

2つのσ軌道ができる  

原子軌道 2s,  2px,  2py,  2pzの重ね合わせで  

σ    軌道(結合性軌道)を作る

分子軌道

分子力場 MM2  

sp3

sp2

sp

180°

観測された形を受け入れる

C C

H H

H H

結合長ポテンシャル 分子力場 MM2  

安定構造からずれるとエネルギーが上昇する

C C

C C

C C エネルギー

距離 1.5

エネルギー

距離 1.7

エネルギー

距離 1.3

結合長ポテンシャル

1.5

MM2  分子力場 MM2  

O

H H

結合角ポテンシャル

分子力場 MM2  

エネルギー

結合角 104

エネルギー

結合角 120

エネルギー

結合角 100

結合角ポテンシャル

O

H H

O

H H

O

H H

120度

分子力場 MM2  

H O HH

OH

H

O

HH

O

HH

O

H

ポテンシャルエネルギー面

104.5度180度 90度

エネルギー

二面体角

0° 60° 120°

±180° 240°  = -­‐120°

300°  = -­‐60°

手前から奥へ時計回りがプラスの向き  =右ねじの進む方向

分子力場 MM2  

エチレン一重結合の、二面体角ポテンシャル

0° 60° 120° ±180° ±180° 240°  -­‐120°

300°  -­‐60°

分子力場 MM2  

分子間力 ファンデルワールス(vdw) 分子力場 MM2  

Ne Ne 電気的に中性な二つの原子・分子

遠く離れても一定以上には  不安定化しない

ある程度の距離で  極小点がある

原子間距離がゼロに近づくと  エネルギーは無限大に、、

原子間距離

エネルギー

化学結合は無い

分子間力 静電力 分子力場 MM2  

δ-­‐  

δ+  

δ+  

δ+  δ-­‐  

δ-­‐  

分子内の電子の分布のかたより、によって  正電荷を帯びている部分(δ+)と負電荷を  帯びている部分(δ-­‐)がある

二つの分子の(δ+)と(δ-­‐)が引き合って分子同士の配向が  決まる  

水素の(δ+)とヘテロ原子の相互作用は特に強く水素結合と呼ぶこともある  

分子の個々の原子についての(δ+)と(δ-­‐)の値は  あとで述べる分子軌道計算で求めることができる

分子間力 静電力 (クーロン力) 分子力場 MM2  

q1:  原子1の電荷  

q2:  原子2の電荷  

r:  原子間距離  

ε0:  原子間距離  

符号が同じなら斥力、逆符号なら引力

δ-­‐ δ+

δ-­‐ δ-­‐ δ-­‐

δ+

δ+

δ-­‐

結合距離 分子力場 MM2  

C C

原子間距離

エネルギー

分子間力 (vdW曲線)

真の結合ポテンシャル

MM2の近似ポテンシャル

MM2は平衡距離付近  では良い近似

MM2  

結合長 結合角 二面体角

非結合性相互作用  静電項

非結合性相互作用  ファンデルワールス項

非結合性相互作用  ファンデルワールス項・静電項

結合長 結合角 二面体角

ポテンシャルエネルギー面を計算する方法

分子力場  バネモデル

MM2  

MMFF  

AMBER  

分子軌道計算  電子の運動状態を考慮  

半経験的  実験パラメータに依存  

非経験的  Ab  inieo  

MOPAC  AM1  

PM3  MNDO

GAMESS  GAUSSIAN  

RHF/3-­‐21G  

B3LYP/6-­‐31G(d,p)  

計算が早い 計算時間がかかる

おおよその値 精密な構造・エネルギー

+1

分子軌道計算

水 = 3つの原子核と10個の電子

HΨ=EΨ

+8 原子核だけだと正電荷間の反発力で  バラバラになる

+8 -­‐

+1

+1

+8 -­‐

+1 +1

-­‐ -­‐

-­‐ -­‐

-­‐

-­‐ -­‐ -­‐

-­‐

原子核の間に負電荷をもつ電子が存在すれば  静電引力で原子核間がつなぎとめられる

10個の電子が最も安定に収まる配置  (実際には分布)とそのエネルギーを計算する

原子核の配置を少し変えてエネルギーを求めながら  最もエネルギーの低くなる原子核配置=分子構造を求める  

電子の分布が求まれば、力場計算で用いる原子電荷(δ+, δ-­‐)も計算できる  

同じ化合物が複数の立体構造をとりうる  コンフォメーション変化

例えばシクロヘキサンには以下の  三つのコンフォメーションがある

チェア型

ボート型

ツィスト  ボート型

炭素間の一重結合は熱的に回転  出来るので、いくつものコンフォメ  ーションをとることができる。  

トランスブタン シスブタン

トランスブテン シスブテン

二重結合は熱的には回転できない  ので以下の違いは異性体と呼ばれる  

極小構造最適化 (構造オプティマイズ)

ポテンシャルエネルギー面

傾きを計算できればどちらに動けばよいか  わかる。  動く幅は難しいのでとりあえず動いてみる

前よりエネルギーが下がり傾きも小さくなった  前より少なめに動いてみる

すこし行き過ぎた。少し戻る方向に移動  エネルギーも傾きも減少しているので、  前の点との間に極小があることがわかる  

局面の二次微係数が  わかれば一回で極小の  位置がわかる  Newton  Raphson  法

一次微係数を用いる方法でも  各ステップの差分をとりながら  2次微係数の情報を  集めてゆく。  Conjugate  Gradient  法

多次元のポテンシャル面  では一般に構造最適化は  難しくなる

最安定構造探索

0° 60° 120° ±180° ±180° 240°  -­‐120°

300°  -­‐60°

2 3

n-­‐ブタンの回転軸状に3つの極小構造(ローカルミニマム)がある

このうち、2と3はエネルギーの等しい極小構造であり、1(トランス型)  がエネルギーの最も低い最安定構造(グローバルミニマム)となっている。

分子は熱揺らぎにより自然に最も安定な構造を見つけるが、  極小構造を求める計算では、最安定構造を見つける工夫をしなければならない。

ボルツマン分布 相互変換可能な化合物間のエネルギー差がわかると、  ボルツマン分布を考慮してそれぞれの存在比を求めることができる。

化合物1と2の存在比(N1/N2)はそのエネルギー差(E2-­‐E1)から上式  を使って、計算できる。Rは気体定数(8.314J/K・mol)1cal=4.18Jであり  温度を常温(27℃=300K)とすると、kcal/molで計算されたΔEに対して 

ΔE    (kcal/mol) N1/N2

0.1 1.2

0.2 1.5

0.5 2.3

1.0 5.3

2.0 28.5

3.0 152

5.0 4337

10.0 19000000

2 1

ΔE

幾つかの値について計算した値を右表に示す  例えば下図で1が2より1kcal/mol安定なら  2の5倍の数の分子が1の状態を占める

注:厳密にはエネルギー面の形状、状態数などを考慮して自由エネルギーを比較する必要がある

遷移状態

2 1

E‡

反応生成物 反応基質 ΔE

活性化  エネルギー

反応(安定化)  エネルギー

反応生成物からの障壁が高ければ  不可逆反応となり反応速度は  活性化エネルギーから求められる

定常状態 平らで  

どちらに動いてもその瞬間は  エネルギーが変化しない構造

エネルギー極小点

遷移状態 : 鞍点

2種類の定常状態

遷移状態:鞍点

どちらに動いてもエネルギーが上がる  二次微分がすべて正  お椀の底のような形

一つだけエネルギーが下がる向きがある  二次微分が一つだけ負=上に凸

反応座標 reaceon  coordinate  上に凸

反応座標と直交する座標  一般にたくさんある

エチレンの構造で言うと  エクリプスに重なり合った  鞍点となる構造がひとつだけあり、  そのとき  1重結合回りの回転方向が反応座標となる、  直交する座標としてはC-­‐C伸縮や、  CCHの結合角変化など

SN2反応の遷移状態

ディールスーアルダー反応の遷移状態

遷移状態のエネルギー差による生成物比の推定

4種類の遷移状態 4種類の生成物

不可逆過程(元に戻らない)ので遷移状態のエネルギー差で生成物比が決まる: 速度論支配

反応基質

生成物 A

生成物 B

反応エネルギーの差 ΔE

活性化エネルギーの差 ΔE‡

経路 A 経路 B

速度論支配: 活性化エネルギーの差でAが有利

不可逆過程: 活性化エネルギーが高い場合

熱力学支配: 反応エネルギーの差で B  が有利

可逆過程: A‐反応基質‐Bの間に平衡が成り立っている

酵素は 活性サイト (ポケット)を持ち、  基質を結合する。

このポケットは遷移状態や生成物も  結合できるが、そのなかで、  遷移状態に一番強く結合する

遷移状態 生成物 反応基質

遷移状態 生成物 反応基質

オリジナルの  活性化  エネルギー

酵素ポケット内での安定化

酵素反応の  活性化エネルギー

Catalyec    Anebody

遷移状態に強く結合するたんぱく質があれば酵素になる。

抗体:体内に入った異物に強く結合して排除するタンパク質

遷移状態に類似した構造を持つ化合物(ハプテン)  をつくり、ウサギに注射して抗体を作らせる

できた抗体を取り出して酵素活性を調べる

hlp://isw3.naist.jp/IS/Kawabata-­‐lab/kensuke-­‐nm/kindai2010/index.html

6月29日小テスト準備用に  講義資料・ 演習課題 などを置いておきます