● 爪白癬は、皮膚糸状菌による爪真菌症で、以下の4つの病型があります。● 爪白癬では、爪に白色や黄色の混濁、肥厚、変形などの症状が現れますが、爪白癬と肉眼所見が酷似した鑑別疾患が多く存在するため、 「見た目」で判断せずに、確定診断することが重要です。● 爪白癬の診断法として代表的なものにKOH直接鏡検法があり、病変部の爪検体をKOH溶液で溶かし顕微鏡で観察することで、 皮膚糸状菌の有無の確認と、カンジダなどとの区別が可能です。● さらに菌種の同定などを行う場合は、真菌培養法（爪検体を寒天培地に接種して培養した真菌を顕微鏡観察する）などの方法があり、必要に応じて行います。

爪白癬の鑑別疾患

爪甲鉤彎症 爪異栄養症 爪扁平苔癬 爪乾癬爪真菌症以外の爪病変

カンジダ性爪真菌症爪白癬以外の爪真菌症

監修帝京大学医学部附属溝口病院皮膚科 教授　清 佳浩 先生爪白癬の病型と鑑別疾患

爪甲の遠位部または側縁部より爪甲下に皮膚糸状菌が侵入して生じる。爪甲の混濁、肥厚、爪甲下角質増殖をきたす。爪白癬の9割はこの型といわれている。

遠位側縁爪甲下爪真菌症（DLSO）

爪表面の傷口から皮膚糸状菌が侵入して生じる。点状ないし斑状の白濁が見られる。DLSOに比べ、症例数ははるかに少ない。

表在性白色爪真菌症（SWO）

近位側の爪上皮より皮膚糸状菌が侵入して生じる。足の爪では極めてまれである。

近位爪甲下爪真菌症（PSO）

DLSO、SWO、PSOが進行し、病変が爪全体へ拡大したもの。

全異栄養性爪真菌症（TDO）

皮膚糸状菌による爪真菌症爪白癬

爪白癬診断のためのKOH直接鏡検法

検体（爪）の採取

活きのよい菌は病変部と正常な角質の境界に存在するので、できるだけその付近から検体採取する

検体（爪）の採取部位

標本作製

検体（爪）を細かく砕く1

検体の上にカバーグラスをかぶせ、KOH溶液を流し込む

2

沸騰しないように注意しながらアルコールランプ（ライターやホットプレートで代用可）で加温して検体を溶解する

3

顕微鏡観察

光学顕微鏡の倍率100倍で皮膚糸状菌を探していき、菌が見つかったら倍率を400倍に上げて観察する。コンデンサー絞りを十分に絞ると、コントラストがついて観察しやすい。

（すべて倍率400倍）

厚い細胞壁（▼）と隔壁（↓）が見られる

白癬菌

▼

▼

大きさ・太さが不均一（　）で壁が薄い（↓）

菌様モザイク

隔壁や分岐がない（↓）。ねじれやループ（　）が見られることがある

繊維

2014年9月作成CLN15-14I-10-CO1

ニッパー型爪切り等で爪甲下角質増殖部の下層から検体採取する

採取

用意するもの