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社会情報学研究, Vo l. U 13-26 2005 独占的競争と総需要 大槻智彦* Monopolistic Competition and Aggregate Demand Tomohiko Otsuki The results of this paper are tantalizingly c1 0se to those of traditional Keynesian models. Under monopolisticcompetitionoutputistoolow becauseof an aggregatedemandextemality.This extemality together with small menu costs implies that movements in demand can affect outpu t. The scope for small menu costs to lead to large output effects in our models depends critically on the elasticity of labor with respects to the real wage being large enough. 1n particular increases in nominal money can increase both ou utand welfare.Section2 builds a simple general equilibrium model with goods labor and money and monopo 1i stic competition in boththe goods andthe labormarkets. It then characterizes the equilibrium. Section3 characterizestheinefficiencyassociatedwithmonopolisticcompetitionandshowsthatitis associatedwithanaggregatedemandsextemality.Section4studiestheeffectsof menucosts" when combined with monopolistic competition. 1t shows the c1 0se relation between this result and aggregate demands extema 1i ty identified inSection3.We believe these results to be important to the understanding of macroeconomic fluc ations. KeyWords (キーワード) New Keynesian (ニュー・ケインジアン), Monopolistic competition (独占的競争), Monopolistic Competition equilibrium (独占的競争均衡), Aggregate demand extemality (総需要の外部性), Menu cost (メニュー・コスト) 1.はじめに 独占的競争理論はジョーン・ロビンソン(1)及び チェンバリン(2) によって展開された.この理論の 目的はマーシャル AlfredMarshallの残した問題, すなわち費用逓減の状態と一方における競争の存 続ないし残存,過剰生産設備の問題,いくらか異 なった生産物を販売しているという現実等を説明 することにあった.すでにマーシャルは,多くの 産業において,生産者は独特の特殊市場を有して おり,生産者自身の特定市場の特殊な需要曲線を 使用する方法を示唆していた. チェンバリンは,彼の理論はマーシャル批判か ら生まれたものでないといっているが,チェンパ リン理論の起源,スピリット及び方法はマーシャ ルにあるという異説もある. さて,チェンバリンが主張する命題は,たいて いの価格は競争独占的な力とがいっしょに働いて いる状態(独占的競争 monopolisticcompetition)決定されているということであり,そしてこの現 実認識を分析する理論が独占と競争の混在的理論 すなわち独占的競争の理論 theoryofmonopolistic competition である. かつて大学院生の時に,ご指導をいただいた思 師千種義人先生から独占についてどう思うかと質 問を受けた.私は,資源の最適配分の観点から, 本呉大学社会情報学部 (PacultyofSocial In formation Science Kure University)

独占的競争と総需要 - Hiroshima Universityharp.lib.hiroshima-u.ac.jp/hbg/file/8238/20140326151933/KJ00004440304.pdf · New Keynesian (ニュー・ケインジアン),Monopolistic

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社会情報学研究, Vol.U, 13-26,2005

独占的競争と総需要

大槻智彦*

Monopolistic Competition and Aggregate Demand

Tomohiko Otsuki牢

The results of this paper are tantalizingly c10se to those of traditional Keynesian models. Under

monopolistic competition output is too low, because of an aggregate demand extemality. This

extemality, together with small menu costs, implies that movements in demand can affect output.

The scope for small menu costs to lead to large output effects in our models depends critically on

the elasticity of labor with respects to the real wage being large enough.

1n particular, increases in nominal money can increase both ouゆutand welfare. Section2 builds

a simple general equilibrium model, with goods, labor, and money, and monopo1istic competition

in both the goods and the labor markets. It then characterizes the equilibrium. Section3

characterizes the inefficiency associated with monopolistic competition and shows that it is

associated with an aggregate demands extemality. Section4 studies the effects of “menu costs"

when combined with monopolistic competition. 1t shows the c10se relation between this result and

aggregate demands extema1ity identified in Section3. We believe these results to be important to

the understanding of macroeconomic fluc血ations.

KeyWords (キーワード)

New Keynesian (ニュー・ケインジアン),Monopolistic competition (独占的競争), Monopolistic

Competition equilibrium (独占的競争均衡), Aggregate demand extemality (総需要の外部性),

Menu cost (メニュー・コスト)

1.はじめに

独占的競争理論はジョーン・ロビンソン(1)及び

チェンバリン(2)によって展開された.この理論の

目的はマーシャル AlfredMarshallの残した問題,

すなわち費用逓減の状態と一方における競争の存

続ないし残存,過剰生産設備の問題,いくらか異

なった生産物を販売しているという現実等を説明

することにあった.すでにマーシャルは,多くの

産業において,生産者は独特の特殊市場を有して

おり,生産者自身の特定市場の特殊な需要曲線を

使用する方法を示唆していた.

チェンバリンは,彼の理論はマーシャル批判か

ら生まれたものでないといっているが,チェンパ

リン理論の起源,スピリット及び方法はマーシャ

ルにあるという異説もある.

さて,チェンバリンが主張する命題は,たいて

いの価格は競争独占的な力とがいっしょに働いて

いる状態(独占的競争 monopolisticcompetition)で

決定されているということであり,そしてこの現

実認識を分析する理論が独占と競争の混在的理論

すなわち独占的競争の理論 theoryof monopolistic

competitionである.

かつて大学院生の時に,ご指導をいただいた思

師千種義人先生から独占についてどう思うかと質

問を受けた.私は,資源の最適配分の観点から,

本呉大学社会情報学部 (PacultyofSocial Information Science, Kure University)

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パレート最適が達成されない理由を述べ,否定的

な意見を申し上げた.重ねて先生から,それなら

独占的競争はどう思うかという質問を受け,主に

チェンパリンの主張である,たいていの価格は競

争と独占的な力と一緒に統合して働いている状態

(すなわち独占的競争)で決定されている旨を述べ

た.その後に先生がシュンベーターの独占的競争

の考えを述べられ,産出量の削減という独占の短

所に比べて,独占利潤を資金源とする技術開発の

促進という長所があり,長期の分析では有利に働

く可能性について述べられた (3)

従来は主として一産業に関する理論として評価

されてきた独占的競争は最近になってマクロ経済

学の分析用具としての重要性を増してきでいる.

この理論の興味深い点は,ワルラス型の完全競争

の一般均衡理論とは異なり,収益逓増の現象を説

明できる点である.また,それは寡占理論などと

は異なり,価格,産出量および雇用量の決定に関

して確定的な結果をもたらすという利点も備えて

いる.

1980年代中頃より,ケインズ派経済学をミク

ロ理論的に基礎付け,これを復権させようとするー (4)---I---.! 一連の研究が見られる. 有幼需要管理政策の有

効性を唱えるケインズ派の研究が,ミクロ的基礎

付けという要求のもとに,どのように進展してき

たのか.このような動きは「ニュー・ケインジア

ンの経済学J(N ew Keynesian Economics)と呼ばれ

ているのは周知のことである.

本稿においては, Fisher(1977)(5),Blanchard(1983)(6),

Mankiw(1986)(7), Blanchard and Kiyotaki(1987)

らの,総需要の外部性やメニュー・コストを導入

する独占的競争の考え方を取り上げ,ニュー・ケ

インジアンの経済学が扱う重要な問題のひとつで

ある「名目価格の硬直'性」について,特に独占的

競争と価格調整費用に着目しながら,ミクロ経済

理論的な基礎付けを行うとともに,企業の価格硬

直的行動がマクロ経済学にいかなる影響を与える

かを考察する.この点に関しては,とりわけ

Blanchard and Kiyotakiが優れており,これに基づ

いて Keynes理論の再構築を考察する (9)

14 独占的競争と総需要

我々の興味は,この経済において総需要のシフ

トが産出にどのような影響をもつかということに

ある.

以下,財と労働と貨幣で,簡潔な一般均衡モデ

ルを構築し,本稿の分析の枠組みとしたい.つぎ

に独占的競争と関連する非効率性を特徴づけて,

そしてそれが総需要の外部性と関係していること

を示すとともに,この外部性がなぜ純粋な総需要

の動きが産出に影響するかを説明することができ

ないことを示すが,独占的競争と組み合わせられ

たときのメニュー・コストの影響を考察し,それ

が価格を変える小さな(二次的)コストが名目貨

幣の変化に応じての産出と厚生の大きな(一次的)

変化を導く可能性について示す.つまり,名目値

の変動に関するある特定の見方を前提にして,こ

の疑問にとり組む.

この結果は,総需要の外部性に密接な関係を示

しており,独占的競争は完全競争ではできなかっ

た方法で総需要の影響を生み出すことができるこ

とを示す.

2.独占的競争モデル

まず,経済は労働市場と財市場からなるとしよ

う.そして労働市場と財市場はともに独占的競争

状態である.今経済には m個の企業が存在し,

各企業は差別化された財を生産しているものとし

よう.また経済には n個の家計があり,それは消

費者であり労働者である.

代表的企業 iのテクノ口ジーは

α

、、‘.. ,,J σ

,S置、、,,, σ

/,E‘、¥、

ll11ノ

σ

σ H

ツN

nヤム-F

/fill--¥

一一Y勺

、‘,J

12A

〆'目、、

のように表されるものとしよう.ここで Y

は企業 iの産出を示し,Nijは産出 iの生産におい

て使われるタイプjの労働の量を示す. Q =1,・・,

n)の異なるタイプの労働がある.

パラメーター σは生産における投入の代替の弾

力性であり,均衡の存在を証明するために σを 1

よりも大きな値と仮定する. αは規模に関する収

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である.家計jの効用防は家計jの消費の大きさ

を示す消費 Cと実質貨幣残高u・グの増加関数で

あり,Njの減少関数である.

Gjは個人jの第 i番目の財の消費とすると, 0

の関数として表される.全ての財は対称的に効用

関数に入っている.ここでは各財の代替の弾力性

が一定であるような関数形を使っている.パラ

メータ-(}が大きければ,各財は,密接な代替財

である.均衡が存在するためには0は1より大き

くなければならない.もしそうでなければ,すな

わち 0が1より小なら各生産者は,直面する需要

関数の弾力性が l未満となり,各生産者は無限大

の価格を選択する.

15 彦智槻

穫度の逆数であり, 1と等しいかまたは大きいと

する,すなわち α一lは産出に関する限界費用の

弾力性, (つまり短期の限界費用の弾力性)であ

る.

総費用は Gは

Ci=芦IFF71Vj九=n1・σw-r

dC τ0'

.~~FY-l M仁三一ーム=n1σ.W.dYU -'

, dC

MCiのおに関する弾力性は

dMCj 王 dMCj 王MCj dr; dr; MCj

再= n1-O'o Woα(α-1)γ-2 σ

MC=n1-0'W}アP

(1)式は企業 iの産出指標 Eを怖の fCES生産関

数」として定義したもので,すべての投入が生産

関数に対称的に入ってくることになる.企業は利

潤を最大化するように行動し,企業 iの名目利潤

に次のようになる.

σ

n1σ・w-r-1

=α-1

である.

図1町二昭-EIFRNU(2)

需要の価格弾力性は

一空 Pi 生星空ー{一θ}dPi Yi dlogPi

ここでRは企業iの産出の名目価格,日クはタイ

プjの労働の賃金である.さて,独占的競争下の

各企業は他の企業の生産する財の価格と賃金を不

変とみなし,自らが生産する財の価格及び生産量

を利潤が最大になる水準に決めるのである.

一方,代表的な家計jの効用関数は 限界収入 MRは

胤ニ守二(日+告)Yi dPi = Pi+Pi.2.:...・ニLー

Pi dYi

匂=(m1/(1 θ)0)ア(M.iタ )l-Y_Njβ

AV

AV

¥11111ノ

θ

、‘.,Fθ

りC

mvu-M

/11111、¥

一一,J

C

ここで

(3)

>0 もしくは=P{I-~)<。P=(tiffI そして

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16 独占的競争と総需要

(3)式の匂の前の定数は0が財の種類の数m に依 いと仮定する.

存しないようにするための便宜的なものである. 予算制約式は次のように書かれる.

Pi MR

。>1なら

fi

。く1なら

MR

図 2

(3)式において,実質貨幣残高は,効用関数に

直接影響を及ぼすと仮定されている.貨幣を多く

持っているほどより多くの財を購入できるという

ことであるが,動学モデルを用いなければならな

いため,ここでは細かい議論を避けて,このよう

な近道をとることにする.貨幣は財を購入するた

めに用いられるのだから,それを実質化するには

名目貨幣残高は財 0に付随した名目物価指数に

よってデフレートされる.それがここで与えられ

る物価水準 Pである.項β-1は労働の限界不効

用の弾力性であり,。は 1に等しいか,あるいは

それより大きいと仮定され この値が以下の議論

で重要な役割を果たす.なお,限界不効用は,以

下のようになり,その弾力性は8一1である.な

おβは0とlの間のパラメーターである.

限界不効用は,

dUi __ ~ fJ 1

J 7=-mpi

dN.J

である.

家計は予算制約のもとで効用を最大にする.

個々の家計は価格と他の賃金を所与とする.再び

(4)12RQ +Mlニ FRNJ+Ml +tEF2

名目消費支出と名目貨幣需要の和は,名目所得と

期首の貨幣残高の和に等しい.Mjは期首の貨幣

の賦存量であり均は家計jにいく企業iの利潤の

シェアである.

均衡は,実質貨幣残高と総需要の関係,一対の

財と労働の需要関数および一対の価格・賃金ルー

ルによって特徴づけられる.実質貨幣残高と総消

費支出の問の関係,つまり総需要の関係は次のよ

うに与えられる.

(5) Y=K (MIP)

、, 、,..~ヲ官

'-'-L

何)Y=(2121m/P)(6)式は需要関数の導出である.総需要 Yを全て

の財と消費者に関する消費需要の和として定義し

ている.もし効用関数が消費と実質貨幣残高に関

し一次同次であり,加えて一方で消費と実質貨幣

残高が加法的に分離可能か 他方で消費と余暇が

加法的に分離可能であるならば所得効果は除かれ

る.

3.独占的競争の一つのモデル

ここでm個の企業と n人の家計からなり,企業

は個々の差別化された財を生産し,企業と労働者

は何らかの独占力を持つ経済を考える.第一番目

の効用関数は,

(7) 匂i=(ml!(l -e) Cj)Y (Mjタ)1-y _ Njβ

我々は nが十分に大きいので,他の賃金を所与と のように表されるものとしよう.

することは名目賃金水準を所与とすることに等し

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大槻智彦

f~ \(θ/(θー 1)) r ~" (θー1)/θ|

ここで Cj=1きcb |

AO

¥Ili--ノ

AO P

I

mZ一同

l一m

/Illl--¥

一一P

てしそ

効用関数匂は消費0と実質貨幣保有高Mjタの増

加関数であり,財jの労働供給の減少関数となっ

ている.さらに家計jの消費 Oは第 i番目の財の

消費を Cijとするとき,CijのCES関数として表さ

れる.全ての財が対称的な形で効用関数に入って

いる.パラメーター0は,効用における財の代替

の弾力性であり,均衡が存在するためにはOは l

より大きくなければならない(もしそうでなけれ

ば,以下で示されるように各企業が直面する需要

関数の弾力性が 1未満となり,各企業は無限大の

価格を選択するに

。と生産物 m の数に依存する Oの前の定数は

最適化後に生産物の数の増加が限界効用に影響し

ないという便利な正規化である.実質貨幣保有高

は効用関数に影響を及ぼす仮定されている.γ は

0と1との間のパラメーターである.

貨幣は財を購入するのに用いられるから,それ

を実質化するには 0・とその消費財の名目物価指

数によってデフレートされなければならない.そ

れがここで与えた物価水準Pである.効用関数の

第 3項は労働の不効用を与え効用関数に負に働

く.Njは家計jの供給する労働量である.項β-

lは労働の限界不効用の弾力性であり,この値が

以下の議論で重要な役割を果たす.これは限界不

効用の労働弾力性と労働の産出量弾力性(すなわ

ち,産出量の労働弾力性の逆数)との積であると

考えられる.もしも労働の限界不効用が定数であ

り,労働生産性が一定であれば, β-1は Oとな

る.また,労働の限界不効用が逓増するか労働生

産性が逓減するならばβ一1は正となるだろう.

さて家計は予算制約のもとで効用を最大化す

る.予算制約は

m

(8)ZRQ +Ml =FRNJ +Ml +tEF:

17

ここですでに述べたように,M;・は初期の貨幣の

賦存を示し ηは家計jにいく企業iの利潤のシェ

アである.名目消費需要は名目所得 WjNjに等し

いことが示される.

需要関数

総需要 Yを全ての財と消費者について消費需要

の和をとったものと定義する.

さらに総需要 Yと貨幣供給Mとの間には Y=K(M

/p)という単純な関係が見られるものとしよう.

この仮定により貨幣供給が財の需要にいかなる影

響を及ぼすかを表現することが可能になる.

Y=(ih)/P また各企業が直面する需要関数は

ト ;lq=KY(R/P)一θ

労働需要の関数は

←(iNlj =九時/W))

なお

MR= ~T'(乃巧)=乃・+笠・万dY} , J / J , J dYj

十五号J=Pi(l-~ 。<1なら MR<O また e<l なら需要

の価格弾力性は

dY}. Pj d万 Pj

Yj dP} 伺iyj

=KcY叫Y件巾←θベ併相(将明与引釘ザJB了一イ+V8ト一~ p )

対称的均衡

企業も家計も対称的なら,均衡では全ての相対

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18 独占的競争と総需要

価格と全ての相対賃金は lにならなければならな

い.すなわち,この場合どの企業も同一の価格設

定を行うことが意味されるから均衡において選択

される相対価格は全ての企業について同じになる

はずである.つまり各企業が完全に対称的な市場

の均衡では各財の価格は平均価格に一致し,相対

価格は 1になる.

Pi=Pそして研守二時F

そして

(9) (PIW)=(8/(8-1))KpYαー l

(10) (W IP) =(σ/(σ -l))KwYα(s-1)

方程式 (9)は産出の関数として価格賃金比率 (p

/附与える.収穫逓減のもとで産出水準の増加関

数である.

同様に実質賃金(彬p) は産出の減少関数であ

る.我々は方程式(9)を集計的価格ルールと呼び,

方程式(10) を集計的賃金ルールと呼ぶ. (9) と

(10)が対数一線型であるので垂直軸で log(WIP)

を水平軸で log(Y)(あるいは logMIP)を計ると均

衡は図 3で特徴づけられる.

log(W/P)

log y( = log(MIP)+constant)

図 3

いう利潤最大化条件が成立する生産水準において

は価格が限界費用を上回り,過少生産の状態にあ

る.すなわち競争均衡と比べて生産量は非効率的

に少ない.このことは独占力の存在から導き出さ

れるが,それについては「総需要の外部性」から

も導き出される.

独占的競争均衡において,他の価格を所与とす

れば,各価格(賃金)設定者には,それ自身の価

格(賃金)を減少させて,その産出(労働)を増

やす誘因がない.

しかしながら,価格設定者が彼らの価格を同時

に減少させると想定しよう.これは実質貨幣残高

と総需要を増加させる.

産出の増加は,過少生産と不完全雇用の初期の

ゆがみを減らして,社会的な厚生を増やす.

独占的競争均衡の定義によって,他の価格と賃

金を所与として,どんな企業もその価格を減少さ

せる誘因がない,そして,労働者にはその賃金を

減少させる誘因がない.

さて,すべての賃金とすべての価格における比

例的な減少すなわち,すべての iとjに関して

(dPil旦;)=(dWilWi) < 0を考えてみよう.そして

それは,全ての相対価格を不変のままにするが,

物価水準を減少させる.

もし独占的な競争的均衡から出発して,企業が

その価格を減少させるなら,このことは価格水準

の小さな減少を導き,かくして総需要の小さな増

加を導く.

産出と雇用の与えられたレベルで,個々の企業

の実質的価値は不変である.

しかしながら,物価水準の減少は,実質貨幣残

高と総需要を増加させる.

4.経済余剰による分析

まず貨幣供給が減少する場合を取り上げる.第

4図には,変化後の新しい需要曲線Dlと限界費用

曲線MCを描いている.ここで,もし生産者余剰

独占的競争均衡と完全競争均衡 の増加分F-Eがメニュー・コストよりも大きけ

独占的競争のもとでは,限界収入=限界費用と れば,企業jは新しい利潤最大点 Cを選び,価格

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大槻智彦

を当初の pjOから Rキに引き下げ,生産量を Eう沖の

水準に決めることになろう.しかしながら,P-

Eがメニュー・コストよりも小さいならば企業は

価格を変更する誘因はない.それゆえ, B点が企

業jにとって最適点になる.

F

MC B

H

、-「,I!l↓

一E一

LIli--p

n

u

*

pzpz

Dl

王y;*

図4

次に貨幣供給が増加する場合を検討しよう.こ

のケースは需要曲線 Dlと限界費用曲線 MCを書

き出すと図 5のようになる.

F

f卜ーーーーーーー曲、c

pOト E iH¥B ,jーーーーーーー-r-ー四ー

G

耳打図5

今度の場合, B点と C点との位置関係が貨幣供

給減少の場合と逆になっている点に,留意する必

要がある.金業jが価格を PiOから丹*に引き上げ

ることから生じる生産者余剰の増加分E-Pがメ

ニュー・コストを上回るならば,利潤最大化を実

現するC点が選択され,企業iの生産量は y/に決

19

められる.けれども反対にE-Pがメニュー・コ

ストよりも小さいという関係が成り立つならば企

業iは当初の価格丹0を変更することなく, B点で

生産を行い,生産量を拡大する.

このように企業 iが価格の引き上げ (C点)でな

く,価格の硬直化(B点)を選択する場合,企業に

とっての価格硬直化の私的費用は生産者余剰の差

E-Pに等しい.ところが,今回のケースでは,

名目価格の硬直性は社会に大きな便益をもたら

す.B点が選ばれることにより,面積Hの消費者

余剰と面積 Fの生産者余剰が実現するからであ

る.この結果も総需要外部性によって説明でき

る.貨幣供給 M の増加にも関わらず各企業が財

の価格を変更しないならば,一般物価水準Pにも

変化はない.それ故,実質貨幣供給MIPの増加

が引き起こされ,全ての財に対する需要が増大

し,マクロの経済厚生が高まることになるのであ

る.

このようにわずかなメニュー・コストでも価格

の硬直性をもたらす原因となる.そして,短期的

には価格を変えない方が企業にとって有利である

とすると,期待需要の変化に対して企業は生産量

を調整することにより対応することになる.この

ようにして,物価の安定性と数量の変動が理論的

に一層正当化されるのである.

付録

Blanchard and KiyotakiはそのAppendixにおいて

簡単に均衡の導出方法を述べているが,完全な展

開を行っていない.均衡は実質貨幣残高 MIPと

総需要によって与えられる.また,本文の財の需

要関数と労働の需要関数さらには価格ルールと賃

金ルールを用いて均衡の導出を行う.なお, (A

-)と記してあるのは,彼らの Appendixにおける

数式である.

効用^jを最大にするように各家計は所与の総富

水準(totalwealth) 1と生産物価格Pに対して,消費

と貨幣保有の最適な構成を選ぶ.

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20 独占的競争と総需要

【A】 iについてエをとって

B副lancl伽 rd釦制dK阻iy'戸州f冷机O叫t胞a北kiによる家計の効用最大化行 f θ削 lγ1 (MiIr θ仏制…~l~ ((1 一 yけ)エ罰~Cιi} I

動と企業の利潤最大化行動を定式 化しよう:L:Cii8 1 Xlーよ|・1L:Cii8 1= ¥ i 'J ) ¥ P 川'J P

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F

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-

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l

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m守山同

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4

ι

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S

H

4 込旬y唱

dH θ'y (........,壬!-1i B-1 -, e -1 ;-,土!-1

一一一一ニlJ=-'一一12..し θ | 一一一一ーし θ

θCij θ_1¥--1] ) e-I]

よって同という貨幣需要が出てくる

⑬より

Hはラグランジュ関数である

xm吋ラr一所

(対rム -ci (1-r)P;

-~ij

@

両辺に 0を乗じて

表=0=(干cu-f 中中v

〉〉7刊司UUFF司.号与勺η与与司η引'J一yθ〈帆(@

M

l一P

¥1111111ノ

M17

/IUMEmぺl

γ'' ×

m

×

⑦を簡単化して 両辺に Piを乗じて

作ク)石ICu-i×m古 yo( 7C,

x(与r=用れツとを

mヤ臼

i

Yのところに⑪を代入

yO(子cF)-M;JRl-o引ら

=(吋)石J ×0バ争r!xp,

作v守)-l〉〈C21-i件)=(1一

1をかけてm

yθ(子cF)-1凸[jzRlーθ

民7

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¥111111ノ

M17

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j

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C

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¥

=jIR-Mll

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大槻智彦 21

¥11111111ノ

M7

/Illl---、¥

x

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¥1Illi--Iノ

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「Illi--L

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川「m

×

rr・(1-ry-r・Ij MIj 一一一・・・・・ (A-3)

p p

第 i生産物への需要は各個人jの需要を合わせ

二 1ylーθ(1-rtB+B 1/θpθ一lm

y三互cLυ j=1

@

てし

θ

γ|j代

民一

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/till¥

戸、

lz制

=制一θ(手)

ニ(会)一θ(会)51IJι市(与f'}間二一θ

(A -2) をJvfjに代入=(互)θ y ...・ (A-5)

¥ P) m

。長lぃtiメlマθ{~(与f'}[円什1 _ (p y8 __1 =y-viベ子) 0 r

=112I-2M ) P ¥ j=1 J j=1 J)

Cif=(会)(2)-o(A1)

〈ドザxm1~.X=(引 -y

=tSUI-Ml) ¥111111/

日ツc

pt

mTU】吋

nv-F

/FIll--¥

1一P

一一

=yと定義する

(同1)θ=F71(2444)GところでYとM=五MJとPの聞に (Aー 7)の関

係がある

⑧より Yニ(出Ij

(吋)石ニ似).11{ザ

(吋)へい)."1{与Jづi(IJdMl=t(凸)iMl

y= ~(凸rこれとは-2) を⑬に代入

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22 独占的競争と総需要

但し

M三エ1Ml

タイプ jの労働需要については,企業は所与の生

産水準 Yiのもとで生産コストを最小化する

mm n

ι W,N" Nii i:. lj

j=l

王=[[ドJJこれは個人 jの労働投入であり,第 i企業に投入

された総労働の平均が[ ]内である

ー一α寸l111111121111」

σ

一一一¥1I

lll111lIノ

一一一σN

n一ZH

/1111111111¥

「lIll111IIIll111l」

vtt

η,

+

N

Wl

n一ZH

一一IL

Lはラグランジュ乗数である

三ι ニ θ ニ W.-n ・!(~ì・(i N引日 1

dNij αlσ-1 ) ¥ /=1 Ij ノ

σ-1 _ ~土~-1×一一一一_.'̂ .σ - lj

σ σlσ

玖 =η土Ii:.Ni子)話戸一 Nii-a-

vα¥J )

玖l一切lーσ(~)ト

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21玖l-a-= 171

σ-1

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1をかけてn

;子ト2句玖lト一河σ~河=寸イイηゲイバ1ト凶一イイσイ(~日U訂r川r灯lト同可一-~(σ1h(与?

×j×(?NF)σ一寸:)両辺に」ーを乗じて

1-σ

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¥11111ノ

σ Wー

ヤ臼

1

1一n

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l

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¥11111ノ

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n

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1一イ

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ι

1

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N

V

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-

-

j

i

L

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I

l

m

また

W=η土[王l-izNzt111・NJ-・・・・⑦"α¥)

⑦÷⑥より ηを消去する

N

¥111111/

N

VL]l

/Illl--¥

¥141111ノ

1一n

/Illi--¥

YZ

Wσ一w両辺に-8を乗じて

N

¥11111ノ

N

Zl

/fill-¥

¥1Ill--ノ

1一n

/I11111¥

YE 一一

¥IBI--Fノ

wl一w

/lili--、¥

二 γ(7)ENq

N. n 1~0- r互))σy,a ・・・・・ (A-8)ザ lW

そして両辺に玖を乗じて与をとると

L W,N,, =n1去|土|σLW

1σyα

Ij ¥ W) /

~+l = nl-o- ・wσ+lーσ・Eア

σ

=n 1ーσ • wr;α. ・・・・ (A-8)

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大槻智彦

こうしてタイプ jに対する全企業からの需要は

lIll111lll」

α YZ

¥111111ノ

Ilili--J

W一W2

y

f

/Illl--1¥n『

4

P

σ一一一

σ一同

「いL

「いL

mv-一同

n

Nzfi--

mV副司

j

=iw一W

Nljスところで[ ]内は (A-8) より

N 平

「lIll111lll」

苧「Ill11111」

す】

z

vlt

mZM

n

κ= [;1"n-1

【B】

生産者が独占的企業であり,消費者が独占的競争

消費者であるとき,生産者が選ぶ価格と生産量

と,消費者が選ぶ賃金と労働供給量を与える式を

導く.

max >> v=py-ーιW..N白. . . . c-イ)

R毛,-J L lj

S.T.

三-W,N"= n1-crWY ア.・・・・侶1~ υ ・ )

王=(P; I P)ぺYlm)・・・・・の

紅laX _1_

V=PY-n1σWYα PR s t t

S.t. 毛ニ(P;I P)吋Y1m)・・・・・の

ラグランジュ関数を作る

23

、EEEEEEEa

、r'EEEEEE

,ノ

YE

、、.. ,ノm

,,Ff

vt

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a・‘‘、

ov ¥1Illi--ノ

pt一P

/Illi--¥

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μ

+

α 町

一同

n

vtE

P--一FL

すo= y, + w{ -e -( ~ )θ1ド1m)}

• .(3

… ー ム

モ=O=p;-n1αFF1m-μ ・・・・・@αL

②,⑧より

ドμθ{(~)一θーlj(yサμ

α Y2

7αM

1

l

pz代

¥11111111ノ

α Y1

α

W 一一

一n

pI

/IIll111¥

一一YI

⑥,⑬より戸,pjを求める

×θor-' ~(Y/m)

(引Y/m)

十JK(2)一的1)

川 αい(町一l

山)ニ12J咋rαー1)×川イ

唱r(川)

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24 独占的競争と総需要

1={1_nl1a与(;)一θ(αーl)ld/m)αー'}o

n斗 (;)θ(αー1)-b/m)αl

=1-~-θ-1 θθ

(;rθ(α1 )品開 α川 )αー1元

刊誌}n占 ama-1x(~)什-・ (A-13)

【C】

労働の供給について、価格と他の賃金を所与とし

て家計は効用を最大化する自己の賃金と労働供給

を選択する

max x j =八 j - N jβ

WjNj

=μlj I P-Njβ. ・・・・@

S.T.

N j = (引σ子@

Ij =~.^久+五乃 +Ml. ・・・・の

ラグランジュ関数を作る

L=μ[町 J・41乃叶/Mlβ

+ト -(~r ~l αL ,uW・ βつァ=o=~ム-βN jP + V • • • • • e aJV j r

ゑ=04-v 十σ作rl.~

-・@

0=竺L+一竺L+BNβ一1 10-(町 .1.fy P'JllWJ Wn

。Njを消去するため⑪を⑬に代入

f間十l-~(手)+βl(じ)伊 )(~)r]

×σ(手)ヲμ(手)一σ

『』

Ill1111tEJ

4

¥111111,ノ

W17

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×

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x

ny ¥lllt/

N一n

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x

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σ

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N一n

rill--L

+

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「llll.ll.El.l11111J

4

¥1Ill111Jノ

W17

/tili--l¥

×

β一W

×

β'

¥1Ill11ノ

N一n

/Illl--¥

σ

+

σ

N一P

N

一D・S-A

μ一n

fN

=PIlli----

0

+

σ(~r :x(~J…)) N μ

=(σ-l)xて× ーr n

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大槻智彦

月Y¥

Ila-ーノ

wl一W

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β一W

¥111111ノ

N一n

/Illi--¥

×

n一μ

×

p一N

×

σ一日

(~ J=[五十lサィ-l「. (A-ll)

【D】市場均衡 貨幣の需要と供給が等しいという

意味での市場均衡が成立するときの労働需要と賃

金の決定を定式化する.

望ましい貨幣残高M'=現実の貨幣残高Mを(A-

7) に代入

ベyμ-)-y-l)P

(A -11)の yjに (A-5)を代入して総雇用 Nは

一一 mN n1ー σ・zYt α

ニ n 1と干(~r{:Jα

=[ん一α]×(2(2)αθ}Yα

もしすべての企業が同じ価格を選ぶなら

~=p

N=n1σmαxmxYα

=[ん

(A一19) を (A-10) に代入して

κ=(予rσ2

25

一σ[ぷ什α

=(手)¥Ill111ノ

W17

/Illl-‘¥

Y

寸1111111-

m

n

「1111111」

Nj

本文の J町が得られる

(A -19) を (A-16) に代入して

Wj

W

-一印V

-+

寸illl111」

nμ' 、lliLei--J

Y

「1115111」

m

n

「Ill111L

fEEl--〈

、EEEls

、、11111j

p一WH

/fIl--、

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寸lll--l」

Qy n

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「lil--,IllL

FSIlli--161111」

一一

」川

1111111」

RY Y

×

、、111111ノ

p一

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/fltlt¥

×

「lIIlli--」

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ucw

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n

「11111111」

¥Ill1ノ

σ一円

/f11111¥

「111111lllL

β'

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+

β'

G Y

、‘Eaノw

jf

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〆,.. ‘、

×

w

k

、‘.,,,、ly

=t-

、‘•..•

,,f

w-σ

叶J

/

/

れ刊

FUV

が導出される

1) J.Robinson, The Economics ofImperfect Competition,

Macmil1an, 1933.

2) E.H.Chamberrin, The theory of Monopo1istic Compe-

tition: A Re-orientation of the Theory of Value, Har-

vard University Press, 1933.

3)独占的競争は完全競争よりも経済的進歩に貢献す

ることを強調するものにシュンベーターやガルプ

レイスがいる.

J.Schumpeter, Capitalism, Socialism, and Democracy,

1942.中山伊知郎・東畑精一訳『資本主義・社会主

義・民主主義』

J.K. Galbreith, American Capitalism, 2nd. ed.CBoston,

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26 独占的競争と総需要

1962).

4) これらの主要な研究をまとめたものに NewKey-

nesian Economics V.1 ,2 edited by N.G

Roma紅rラMI汀TP附re凶ss丸, 1991がある.

5) S. Fisher,“Recent Developments in Macroeconomics"

Economic Journal, Vo1. 98, June 1988.

6) O.J.Blanchard,“PriceAsynchronization, and Price酬

Leve1 Inertia," in Inflation, edited by R, Dombush and

M. Simonsen, MIT Press, 1983.

7) N.G. Mankiw,“A Srnall Menu Costs and Large Busi-

ness Cyc1es:A Macroeconomic Model of Monopoly,"

Quarter1y Joumal ofEconomics, May 1985.

8) O.J.Blanchard and N. Kiyotaki, '、tlonopolisticCom-

petition and the Effects of Aggregate Demand," Ameri-

can Econornic Review, Vo1.77, Sep. 1987.

9)ここでのモデルはBlanchardand Kiyotaki (1987)に

基づいているが,より簡略されたものには Kiyo-

taki (1985)がある.

N.Kiyotaki,“Macroeconornics of Monopolistic Com-

petition," PH.D.dissertation. Harvard University. May

1985.