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2 物理学序論2 (電磁気学入門) 第13160108 マクスウェルの方程式と波動方程式

物理学序論2 (電磁気学入門) 第13講 160108osksn2.hep.sci.osaka-u.ac.jp/~naga/kogi/handai-buturi...2 物理学序論2 (電磁気学入門) 第13講 160108 マクスウェルの方程式と波動方程式

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物理学序論2 (電磁気学入門)

第13講 160108

マクスウェルの方程式と波動方程式

波とは, 媒体の変化がその形状を維持しつつ空間を移動する現象。

ポイント: 波はエネルギーを輸送する。

ただし、媒質は各地点で振動するのみで、媒質を構成する物質が移動するわけではない。

関数 y= f(x-vt) はt=0 で持っていた波形 f(x) を t 秒後は x = vt の場所で保持する。

すなわち この関数は 速度 v で進行する

波を表す。同様に y=g(x+vt) は逆方向に

進む波を表す。

関数 y= f(x-vt) + g(x+vt) の従う

微分方程式は?

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波とは? まず進行波と後退波 (電磁波学習のための準備)

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任意の(周期)関数は、三角関数によるフーリエ級数で展開できるので、

波動現象の本質解明は、正弦波動関数の持つ性質を理解することが基本である。

y = A sin

·2¼

µt

T¡ x

¸

¶+ Á

¸= A sin(!t¡ kx+ Á) = A sin

h!³t¡ x

v

´+ Á

i

k =2¼

¸; v =

!

k= º¸

進行波

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振動の変数

wt = 位相

w = 2pn =2p/T

= 角振動数 (角速度)

n = 1/T 振動数 (周波数)

T = 周期

振動と波動: 言葉の定義

波の変数

wt – kx + f = 位相

f = 初期位相

l = 波長

k = 2p/l = 波数

v = w/k = nl = 波の速度

波長 l

波源

最大振幅 A 波面

単振動の振幅は円運動の射影に等しい

平面波 : 1次元表現 2次元表現 3次元表現

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波の種類

u0 sin(!t¡ kxx¡ kyy)u= u0 sin(!t¡ kx)

波形を描けない

位相を色で示す

k

u = u0 sin(!t¡ k ¢ r)= u0 sin(!t¡ kxx¡ kyy ¡ kzz)

x y x y

x 方向進行波 x-y 方向進行波

球面波から平面波、そしてまた球面波

縦波: 媒質の振動が波の進行方向に一致

密と疎の部分があるので粗密波ともいう。音波など

横波: 媒質の振動が波の進行方向と直角

k

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2016/1/30 物理学序論2 8

マクスウェルの方程式:積分型と微分型

A は 体積V を囲む閉2次曲面

A’ は閉回路 C を境界とする開2次曲面

物質中では 源 (電荷と電流)のある式の中の

e0 E D = e E, B/m0 H = B/m に置き換える

ガウスの法則 (電場)

Z

A

E ¢ dA =Q

²0=

1

²0

Z

V

½dV

Z

A

B ¢ dA = 0

I

C

E ¢ ds = ¡ d

dt

Z

A0B ¢ dA

Z

C

B ¢ ds = ¹0X

j

(i+ id)j

= ¹0

Z

A0

µJ + ²0

dE

dt

¶¢ dA

アンペール・マクウスェルの法則

ファラデーの法則

ガウスの法則 (磁場)

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マクスウェルの方程式の物理的意味

ガウスの法則: 電気力線は正電荷から出発し、負電荷で終わる

系: ガウスの法則からクーロンの法則が導ける。すなわち、電気力の強さは

電荷の双乗積に比例し、距離の2乗に反比例する。

磁気力線には始めも終わりもない。連続である。

磁荷(モノポール)は存在しない。

ファラデーの法則:

変動磁場がなければ、電場は渦なしで電位(ポテンシャル)が定義できる。

時間的に変動する磁場があるときは、磁場の方向に垂直な面に

電場の渦巻きが発生する。 向きは磁場の変化を妨げる方向(レンツの法則)

別表現: 起電力(電気力線の閉回路線積分)は閉回路を貫く磁束の変化率に等しい。

アンペール・マクスウェルの法則

アンペールの法則: 実電流があるときは、電流の方向に垂直な面に

磁場の渦巻きができる。向きは右手則に従う。

別表現: 起磁力(磁力線の閉回路線積分)は閉回路を貫く電流の和に等しい。

マクスウェルの誘導法則: 時間的に変動する電場は変位電流。

変位電流についてアンペールの法則と同じ法則が成立する。

課題: マクスウェルの方程式から波動方程式を導く

(1) Ampere's law

r£B = ¹0J

(2) Faraday's law

r£E = ¡@B

@t

(3) Maxwell's law of induction

r£B = ¹0²0@E

@t

電磁波の発生

1)アンテナに高周波交流を流す

2)アンペールの法則で磁場が発生

3)磁場も時間的に変動するから

ファラデーの法則で電場が発生

4)電場もまた時間的に変動するから

(変位電流) マクスウェルの誘導法則で

磁場が発生

5)3)に戻って再び電場が発生

以下繰り返し

最初のアンテナ以外は真空( r = J = 0)で考える。

アンテナを流れる電流は、左右に振動する電気双極子と同等。

電場は振動軸を中心に円形(紡錘状)に広がる。

電場の向きは振動軸に平行。振動軸上に電場は発生しない

この説明では、電場と磁場の位相がずれるような印象を

受けるが、磁気誘導と電場誘導は同時に起きているので、

電場と磁場が同期した進行波となる (右図 )。

磁場から電場誘導の際、電場は磁場に垂直な面内に

発生し、逆も真であるから磁場と電場の直交性は

上記二つの法則に織り込み済み。

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縦波は電場の進行方向 (x) 成分が振動することを意味する。

上図の粗密をx方向に平行な電場の強さ(ベクトルの長さ)で置き換えて考える。

ガウス面をx方向に平行な四角柱の表面にとり、側面図を青枠で表す (四角柱の左右断面積=A1=A3=A、電場は四角柱に平行なので側面上の法線成分はゼロ)。

A1 面上の電場をE1、A3 面上の電場をE3とすれば、電荷は0なのでガウス積分は、

でなければならないが、この条件は粗密波の存在(E3 ≠ E1)を否定する。

電場の横波成分(y成分)はx方向にまた時間的に振動しても、

y方向の位置には依存しないから、 A2とA4での法線成分は同じであり、

ガウス積分への寄与は相殺するので矛盾はない。

磁場についても同じ議論が適用でき、進行方向成分は振動できない。

Z

A

E ¢ dA = A(E3¡E1) = 0

電磁波は横波: ガウスの法則の要請

x

y

A1 A3

E1 E3

A2

A4

E = (0, Ey , Ez ) sin (wt – kx)

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注: 教科書は、式 (5) だけを

積分型法則から証明している

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科学史における物質観の大きな転換点: ニュートン力学との矛盾:速度が座標系の設定に無関係で常に一定の光速度( v = c )。

1) 電磁波は媒質を持たない: というよりは真空空間そのものが電磁波を伝える性質を持つというアインシュタインの発想。 特殊相対論 空間時間の概念の転換

2) 現代素粒子標準理論: 真空は空虚な空間ではなく未知の物質で詰まった

媒質の性質を持つという認識 (南部他)、その確証がヒッグス発見である。

真空概念の転換

L C w=1/√LC=

基本的に LC 同調回路

出力

ヘルツの実験とは

二つの電極の間に高電圧をかけ火花を飛ばす

金属の輪の狭いギャップに火花が

生じた

電波(電磁波)の存在を確認!

簡易ヘルツの実験装置

www.saga-ed.jp/kenkyu/kenkyu_chousa/h17/buturi/.../Phys2_2.ppt より

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[やってみよう] ヘルツの実験①

発信器

平行 垂直

バチバチ ネオン管

発信器で放電させたら,検出器のネオン管は光るだろうか?

直線型検出器の場合

(a) 結果( ) (b) 結果( )

http://www.saga-ed.jp/kenkyu/kenkyu_chousa/h17/buturi/ji_herzt01.htm

[やってみよう] の答え

直線型検出器(電場Eを受信可能) 発信器

平行 垂直

バチバチ

E E

(a) (b) ネオン管

電磁場を揺らせば電磁波が発生する

光(=電磁波)が飛び出す 電磁波発生の基本は電気双極子振動。

静的な電気双極子の電場

電気双極子が振動すると

電磁波を作る方法

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ダイポールアンテナは振動する電気双極子と同等

電磁波の発信と電場の向く方向

電磁波発生器:

交流電流で振動電磁場を作る

質問:ジャイアンが作る電波の波面はどのような形か?

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積分形:

微分形:

連続の式:

マクスウェルの方程式をうまく操作して

連続の式を充たす S があればそれがエネルギーの流れを表す。

答え: : ポインティング・ベクトル

(Poynting vector)

エネルギー輸送 (まとめ) 。

電磁場はエネルギーを持つ: エネルギー密度は

電磁波は振動する電磁場である。

電磁波はエネルギーを運ぶ:エネルギー輸送(トランスポート) エネルギーの流れ S はどう表されるか?

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http://www.jspec.jaxa.jp/activity/ikaros.html

構造 質量 310kg(打上げ時。膜面重量をむ) 形状 本体形状:直径1.6m×高さ0.8mの円筒形

膜面形状:約14m×約14mの正方形

打ち上げ機関: (JAXA=宇宙航空研究開発機構)

IKAROSは、太陽の放射圧をセイル(帆)に受けて進むソーラーセイル(宇宙帆船)に加え、セイルに

貼り付けられた薄膜の太陽電池で太陽光発電も行うソーラー電力セイルを実証するために開発された。

IKAROS は、2010年5月21日にH-ⅡAロケットで打ち上げられ、14m四方の正方形の

セイルを宇宙空間でスピンの遠心力を用いて展開し、薄膜太陽電池による 発電を確認した。

さらに、太陽の放射圧により加速していることを実証すると同時に、液晶デバイス等によってセイルの

向きを調整することで軌道制御を行 い、ソーラーセイルによる航行技術を獲得した。

これらはいずれも世界初の快挙である。

放射圧例1: 初のソーラーセイル(宇宙帆船)

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塵の尾 :放射圧で流される)

イオンの尾:太陽風(太陽から吹き出す荷電粒子) で流される(plasma tail)

放射圧の例2: 彗星の尾

彗星の尾の説明

経路a,b,cは塵のサイズの差。b が重力と放射圧釣り合いの状態。

(白い)

(青い)

放射圧と恒星風により

星が盛んに形成されつつ

ある領域

鷲星雲: 蛇座距離6500光年

Pillars of Creation (創造の柱)

柱の長さ~10光年

上方からの放射圧を受けて

崩壊しつつある星雲

しかし、濃い塵の中では

多数の星が形成されつつある。

放射圧の例3:星の誕生

10光年

放射圧

鷲星雲内:Stellar Spire

一部の拡大映像

彗星は大きさ数10kmの小天体。

水、CO2となどと塵の氷結体(汚れた雪だるま) 太陽近傍で熱せられて尾を引く

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付録